説明

エアゾール容器の残留内容物排出装置

【課題】上端を閉鎖した残留噴射連通口を通常噴射連通口とは別個に設けることにより、残留内容物を確実に全量排出可能であるとともに、エアゾール内容物を誤って全量排出してしまう危険が少なく、使用者や周囲のものを汚染するおそれのない安全な製品を得る。
【解決手段】押釦14の外周に係合突起15を突設し、この係合突起15をエアゾール内容物の通常噴射時に於いて挿入するスリット12を内周壁6に形成する。押釦14には、エアゾール内容物を排出可能とする通常噴射連通口18と、上端を天部11として閉鎖した残留噴射連通口20を形成する。押釦14を内周壁6に対して通常噴射時とは異なる位置関係で装着し、押釦14の係合突起15を内周壁6の下端に突当てた状態で残留噴射連通口20にステム16を嵌合し、残留内容物の連続噴射を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール製品を廃棄する際に、残留内容物を全量排出するための、エアゾール容器の残留内容物排出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール容器内に充填された内容物の使用後にエアゾール製品を廃棄する場合、エアゾール容器内に内容物を残留させたまま廃棄すると、噴射剤の膨張による爆発事故を引き起こすなどの問題を生じるおそれがあった。そこで、特許文献1、2に示す如く、エアゾール容器内に残留した内容物を全量排出するための残留内容物排出装置が、従来から提案されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3881187号公報
【特許文献2】特開2007−55648号公報
【0004】
特許文献1に記載の装置は、ワンタッチキャップ内に押釦を挿入配置して形成し、この押釦の外周に係合突起を突設し、この係合突起を挿入係合するスリットをワンタッチキャップの内周壁に形成している。そして、エアゾール容器の通常使用時に於いては、上記スリットに係合突起を上下動可能に挿入係合した状態で押釦を押圧することにより、エアゾール内容物を噴射可能としている。また、エアゾール容器の残留内容物の廃棄噴射時に於いては、係合突起とスリットとの係合を解除するとともに、この係合突起を内周壁の下端縁に突き当てることにより、この突き当て状態でワンタッチキャップをエアゾール容器に固定して押釦を連続的に押圧し、残留内容物を全量排出可能としている。また、この残留内容物の全量排出時に於いては、押釦のノズルの前方を、内周壁の内面により塞ぐこととしている。
【0005】
また、特許文献2に記載の装置は、ワンタッチキャップ内にステムと接続した押釦を配置し、この押釦の上面には押圧片を配置している。そして、エアゾール容器の通常使用時に於いては、上記押圧片の天面を下方に押圧することにより、押釦を介してステムを押圧し、エアゾール内容物を噴射可能としている。また、エアゾール容器の廃棄時に於いては、押圧片を回動して押圧片の一端側を立ち上げ、押圧片の他端側に設けた押圧部で押釦を連続的に押圧することにより、残留内容物を全量排出可能としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す装置に於いては、エアゾール内容物の全量排出時に、上述の如く内周壁によりノズルの前方を塞ぐこととしているため、ノズルから噴射されたエアゾール内容物は、内周壁の内面に衝突して内周壁の上方から不特定方向に飛び散り、使用者や周囲のものを汚染するおそれがあった。
【0007】
また、特許文献2に示す装置に於いては、上述の如く押圧片を回動して押圧片の一端側を立ち上げることにより残留内容物の全量排出を行うため、全量排出の意思がないのに誤って押圧片の一端側を立ち上げてしまった場合には、エアゾール内容物の全量排出が行われる危険があった。
【0008】
そこで、本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、残留内容物を確実に全量排出可能であるとともに、エアゾール内容物を誤って全量排出してしまう危険が少なく、使用者や周囲のものを汚染するおそれのない安全な製品を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、エアゾール容器に下端を固定可能とした外周壁の内方に内周壁を形成したワンタッチキャップと、このワンタッチキャップの内周壁間に挿入する押釦とから成り、また、押釦の外周には係合突起を突設し、この係合突起をエアゾール内容物の通常噴射時に於いて挿入し押釦の上下動を可能とするスリットを内周壁に形成する。
【0010】
また前記押釦には、係合突起がスリットに上下動可能に係合した状態でステムを嵌合しエアゾール内容物のノズルへの導出を可能とする通常噴射連通口を設け、この通常噴射連通口に隣り合う押釦の下端に、上端を天部として閉鎖した残留噴射連通口を形成している。そして、押釦を内周壁に対して通常噴射時とは異なる位置関係で装着した時に、上記残留噴射連通口にステムを嵌合するとともに、押釦の係合突起を内周壁の下端に突当てる。そして、この突当て状態で外周壁の下端をエアゾール容器に固定することにより、ステムを上記残留噴射連通口の天部により継続的に押圧し、残留内容物の連続排出噴射を可能としている。このように、押釦を内周壁に対してエアゾール容器の通常使用時とは異なる位置関係で装着することにより残留内容物の全量排出が可能となる。そのため、上記通常使用時に於いて誤ってエアゾール内容物を全量噴射してしまう危険を防止することができ、エアゾール製品の安全な使用が可能となる。
【0011】
また、上述の如く上端を天部として封鎖した残留噴射連通口にステムを嵌合した状態で残留内容物の全量排出を行うことにより、ステムから噴射された残留内容物は上記天部に突き当たった後、残留噴射連通口の下端からエアゾール容器上に流れ出るものとなる。そのため、エアゾール内容物が不特定方向に飛散して人体や周囲を汚染するおそれがなく、エアゾール内容物の全量排出を安全に行うことが可能となる。
【0012】
また、残留噴射連通口は、ステムの外周よりも径大に形成してステムの外周との間に残留内容物の流出間隔を形成するとともに天部に流出溝を凹設し、ステムから排出された残留内容物を、上記流出溝及び流出間隔を介して排出可能としたものであっても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述の如く構成したものであって、上端を天部として封鎖した残留噴射連通口にステムを嵌合した状態で残留内容物の全量排出を行うため、残留内容物は上記天部に突き当たった後、残留噴射連通口の下端からエアゾール容器上に流れ出るものとなる。そのため、エアゾール内容物が不特定方向に飛散して人体や周囲を汚染するおそれがなく、エアゾール内容物の全量排出を安全に行うことが可能となる。
【0014】
また、押釦を内周壁に対してエアゾール容器の通常使用時とは異なる位置関係で装着することにより、残留内容物の全量排出が可能となる。そのため、上記通常使用時に於いて誤ってエアゾール内容物を全量噴射してしまう危険を防止することができ、エアゾール製品の安全な使用が可能となる。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の一実施例を図面に於いて説明すれば、(1)はワンタッチキャップで、図1〜図5に示す如く、外周壁(2)の内面下端付近に突条(3)を設け、この突条(3)をエアゾール容器(4)のマウンテンカップ(5)の外周に係合することにより、ワンタッチキャップ(1)をエアゾール容器(4)に取り外し可能に係合している。また、本明細書中に於いては説明の便のため、図1に於ける左側を前側、右側を後側とする。
【0016】
尚、本実施例では上記の如く、ワンタッチキャップ(1)をマウンテンカップ(5)の外周に係合しているが、他の異なる実施例では、ワンタッチキャップ(1)の突条(3)を、エアゾール容器(4)を構成する目金部と胴部との間の巻き締め部(図示せず)の外周に係合したり、エアゾール容器(4)を構成する肩カバーに係合したりすることも可能である。
【0017】
また、上記外周壁(2)の内方には円筒状の内周壁(6)を、上部壁(7)を介して外周壁(2)と一定の間隔を介して一体に形成している。また、外周壁(2)には円形の外側開口(8)を形成するとともに、内周壁(6)には、上記外側開口(8)に対応する位置に円形の内側開口(10)を形成している。また、内周壁(6)の両側には、図4に示す如く、内周壁(6)の下端から上部方向に、上端を天部(11)とするスリット(12)を形成している。また、内周壁(6)の上部方向には、手指を挿入するための指掛け凹部(13)を凹設している。
【0018】
また、図3、図4に示す如く、上記ワンタッチキャップ(1)の内周壁(6)間には、押釦(14)を上下動可能に装着している。この押釦(14)の外周面には、下部両側に係合突起(15)を突設している。また、この係合突起(15)は、図4に示すエアゾール内容物の通常使用時に於いて、ワンタッチキャップ(1)の内周壁(6)に前述の如く形成したスリット(12)に挿入し、押釦(14)の上下動を可能としている。また、上記通常使用時から押釦(14)の前後を反転させて、押釦(14)を内周壁(6)に対し上記通常使用時とは異なる位置関係で挿入するエアゾール内容物の全量排出時に於いては、図1、図2に示す如く、上記係合突起(15)をスリット(12)に係合せずに内周壁(6)の下端に突き当て可能としている。
【0019】
また、上記押釦(14)の下端前側には図3に示す如く、通常噴射使用時にステム(16)を接続し連通路(19)を介したエアゾール内容物のノズル(17)への導出を可能とする通常噴射連通口(18)を設けている。この通常噴射連通口(18)は、係合突起(15)がスリット(12)に上下動可能に係合したエアゾール内容物の通常使用状態でステム(16)を嵌合可能な位置に形成する。そのため、上記通常使用時に於いてステム(16)から噴射されたエアゾール内容物を、図5に示す如くノズル(17)から内側開口(10)及び外側開口(8)を介してエアゾール容器(4)の外方に噴射可能としている。
【0020】
また、上記通常噴射連通口(18)の後側で、この通常噴射連通口(18)と隣り合う押釦(14)の下端には、図3に示す如く、上端を天部(11)として閉鎖した残留噴射連通口(20)を形成している。この残留噴射連通口(20)は、図1に示す如く、押釦(14)を内周壁(6)に対して通常噴射時とは異なる位置関係で装着する残留内容物の全量排出状態に於いて、ステム(16)を嵌合可能な位置に形成している。また、上記残留噴射連通口(20)の直径を、図6に示す如くステム(16)の外周よりも径大に形成することにより、残留噴射連通口(20)とステム(16)の外周との間に、残留内容物の流出間隔(21)を形成している。また、残留噴射連通口(20)の天部(11)には、前後方向に流出溝(22)を凹設している。そのため、残留内容物の全量排出時に於いては、ステム(16)から排出された残留内容物を、上記流出溝(22)及び流出間隔(21)を介して、残留噴射連通口(20)の下端からエアゾール容器(4)上に排出可能としている。
【0021】
上述の如く構成したものに於いてエアゾール内容物の通常噴射を行う場合について説明する。まず、この通常使用時に於いては、図3、図4に示す如く、係合突起(15)をスリット(12)に上下動可能に係合した状態で、ワンタッチキャップ(1)下端の突条(3)をエアゾール容器(4)のマウンテンカップ(5)の外周に接続しており、エアゾール容器(4)のステム(16)は通常噴射連通口(18)に嵌合している。そして、この状態に於いて、ワンタッチキャップ(1)の指掛け凹部(13)に手指を掛けて、押釦(14)の天面を下方に押圧する。この押圧により、図5に示す如く押釦(14)を介してステム(16)を下方に押し下げて、エアゾール容器(4)内のバルブ機構(図示せず)を開弁させる。これにより、エアゾール容器(4)内に収納した内容物がステム(16)から噴出し、通常噴射連通口(18)、連通路(19)を通過し、ノズル(17)から内側開口(10)、外側開口(8)を介して外部に噴射される。そして、上記押釦(14)の押圧を解除すると、バルブ機構によりステム(16)が元の位置に復元して閉弁し、内容物の噴射が停止する。
【0022】
次に、上記通常噴射による内容物の使用が終了し、エアゾール容器(4)を廃棄する際の残留内容物の全量排出について以下に説明する。まず、突条(3)とマウンテンカップ(5)との係合を解除して、ワンタッチキャップ(1)及び押釦(14)をエアゾール容器(4)から分離する。そして、押釦(14)をワンタッチキャップ(1)の内周壁(6)間から抜き出し、押釦(14)の前後を反転させて、上記内周壁(6)間に通常噴射時とは異なる位置関係で再度装着する。これにより、図1、図2に示す如く、前記押釦(14)の係合突起(15)がスリット(12)に係合せずに内周壁(6)の下端に突き当たるものとなる。そして、この係合突起(15)の内周壁(6)下端への突き当て状態で、ワンタッチキャップ(1)下端の突条(3)をマウンテンカップ(5)の外周と再度接続して、ワンタッチキャップ(1)の下端をエアゾール容器(4)に固定する。
【0023】
この固定により、図1に示す如く、エアゾール容器(4)のステム(16)が残留噴射連通口(20)と嵌合するとともに、上記残留噴射連通口(20)の天部(11)がステム(16)を下方に押圧して、バルブ機構(図示せず)を開弁させる。そして、残留内容物がステム(16)から連続的に噴出し、残留噴射連通口(20)の天部(11)に突き当たった後、流出溝(22)及び流出間隔(21)を介して、残留噴射連通口(20)の下端からエアゾール容器(4)上に流れ出るものとなる。本実施例に於いてはこのように、上端を天部(11)として封鎖した残留噴射連通口(20)にステム(16)を嵌合した状態で残留内容物の全量排出を行うため、エアゾール内容物が不特定方向に飛散して人体や周囲を汚染するおそれがなく、エアゾール内容物の全量排出を安全に行うことが可能となる。
【0024】
また、本実施例に於いては上述の如く、残留内容物の全量排出を、押釦(14)を内周壁(6)間から抜き出して前後を反転させ、内周壁(6)に対してエアゾール容器(4)の通常使用時とは異なる位置関係で再度装着する作業を介して可能としている。そのため、通常使用時に於いて誤ってエアゾール内容物を全量噴射してしまう危険を防止することができ、エアゾール製品の安全な使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】エアゾール内容物の全量排出状態を示す断面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】エアゾール内容物の通常使用時に於いて、噴射前の状態を示す断面図。
【図4】図3のB−B線断面図。
【図5】エアゾール内容物の通常噴射状態を示す断面図。
【図6】残留噴射連通口の天部を示す拡大底面図。
【符号の説明】
【0026】
1 ワンタッチキャップ
2 外周壁
4 エアゾール容器
6 内周壁
11 天部
12 スリット
14 押釦
15 係合突起
16 ステム
17 ノズル
18 通常噴射連通口
20 残留噴射連通口
21 流出間隔
22 流出溝



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器に下端を固定可能とした外周壁の内方に内周壁を形成したワンタッチキャップと、このワンタッチキャップの内周壁間に挿入する押釦とから成るものに於いて、押釦の外周には係合突起を突設し、この係合突起をエアゾール内容物の通常噴射時に於いて挿入し押釦の上下動を可能とするスリットを内周壁に形成するとともに押釦には、係合突起がスリットに上下動可能に係合した状態でステムを嵌合しエアゾール内容物のノズルへの導出を可能とする通常噴射連通口を設け、この通常噴射連通口に隣り合う押釦の下端に、上端を天部として閉鎖した残留噴射連通口を形成し、この残留噴射連通口には、押釦を内周壁に対して通常噴射時とは異なる位置関係で装着した時にステムを嵌合するとともに、押釦の係合突起を内周壁の下端に突当て外周壁の下端をエアゾール容器に固定した状態でステムを継続的に押圧し、残留内容物の連続噴射を可能としたことを特徴とするエアゾール容器の残留内容物排出装置。
【請求項2】
残留噴射連通口は、ステムの外周よりも径大に形成してステムの外周との間に残留内容物の流出間隔を形成するとともに天部に流出溝を凹設し、ステムから排出された残留内容物を、上記流出溝及び流出間隔を介して排出可能としたことを特徴とする請求項1のエアゾール容器の残留内容物排出装置。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−154930(P2009−154930A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336273(P2007−336273)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】