説明

エアゾール容器用キャップ

【課題】ガス抜き作業性および製造性の良好なエアゾール容器用キャップを提供する。
【解決手段】天板部4の筒状側面部5の下端部をエアゾール容器2に係合させることにより、該エアゾール容器2の噴射部3を覆うエアゾール容器用キャップ1において、前記天板部4に押し下げ部6が設けられるとともに、前記噴射部3を押圧して前記エアゾール容器2の内容物を噴出させる突出部7が、前記押し下げ部6の下面側に形成され、前記押し下げ部6がその中心部を中心とした対称位置で天板部4より下方に設けられた板片状の連結部8によって前記天板部4に連結され、その連結された部分以外の連結部8及び前記押し下げ部6は前記天板部4と一体の部分に対して離間され、その連結部8と前記押し下げ部6および前記天板部4に繋いでいる境界部9,10および前記連結部8を前記筒状側面部5に繋いでいる境界部9,10が屈曲自在に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮ガスを内容物と共に充填したエアゾール容器のキャップに関し、特に残留しているガスを排出するために噴射ヘッドなどの噴射部を押し下げ状態に維持する機能を備えたキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアゾール容器を廃棄する場合、残留ガスを予め可及的に排出しておくことが求められており、そのためのスプレー缶用蓋が特許文献1に記載され、またガス抜き治具が特許文献2に記載されている。これらの特許文献に記載された蓋もしくは治具は、上面部に、噴射ノズルもしくはステムを嵌合させる凹部を形成するとともに、その凹部に噴射ノズルもしくはステムを嵌合させた状態で、これら噴射ノズルもしくはステムと一体の天板部の巻締部に係合する係止部を設けた構成である。したがって、これらの蓋もしくは治具によっていわゆるガス抜きを行う場合、噴射ノズルもしくはステムに取り付けてある噴射ボタン(もしくは噴射ヘッド)を抜き取って噴射ノズルもしくはステムを露出させ、この状態で反転させた上記の蓋あるいは治具をスプレー缶の上部に嵌着させると、前記凹部に嵌合した噴射ノズルあるいはステムが押し下げられて内容物が噴出し、またその状態で前記係止部が巻締部に係合するので、噴射ノズルあるいはステムの押し下げ状態すなわち内容物の噴射状態を維持できる。
【0003】
また、特許文献3には、天板部に押圧部を形成するとともに、その押圧部を湾曲した連結部によって天板部に連結した構成のキャップが記載されている。この特許文献3のキャップによれば、通常と同様の状態でエアゾール容器に取り付け、その状態で押圧部を押し下げると、連結部が弾性変形して延びることにより押圧部が噴射ヘッドに向けて下降し、その結果、噴射ヘッドが押圧されて内容物を噴射する状態に維持され、いわゆるガス抜きされる。
【特許文献1】特許第2941761号公報
【特許文献2】特許第2729163号公報
【特許文献3】特開2004−75161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載された蓋および特許文献2に記載された治具は、いずれも、噴射ノズルあるいはステムを凹部に嵌合させて直接押圧するように構成されているので、いわゆるガス抜きを行うにあたって、噴射ヘッドあるいは噴射ボタンを取り外す必要があり、ガス抜きの作業性が悪い問題があった。また、噴射ノズルあるいはステムが一体になっている天板部の巻締部に係合させるように構成されているので、この種の巻締部のないエアゾール容器もしくはスプレー缶には使用することができず、適用できるエアゾール容器の種類が制限される不都合があった。
【0005】
これに対して、特許文献3に記載されたキャップは、噴射ヘッドあるいは噴射ボタンを直接押圧するように構成され、また通常と同様にエアゾール容器に取り付けた状態でガス抜きできるように構成されているので、作業性が改善され、また適用できるエアゾール容器の種類の制限が緩和されている。しかしながら、この種のキャップは、製造するのに容易であり全体に弾性を付与する必要性などから合成樹脂で形成されるのに対して、特許文献3のキャップでは、押圧部を天板部に繋ぐ連結部が湾曲した形状をなしており、しかもその連結部が隙間もしくは薄肉の弱化部によって区画されているから、キャップを射出成形する場合、連結部への樹脂の流動性が悪く、キャビティの全体に樹脂が行き渡らないいわゆるショートモールドなどの成形不良を生じる可能性が高い。
【0006】
さらに、特許文献3に記載されたキャップにおける押圧部は、天板部の中央部を窪ませて形成したものであるから、エアゾール容器の径が小さくなることに伴ってキャップが小径になった場合には、押し下げるべき押圧部が更に小径になる。そのため、押圧部を指で押し下げるとしても指が入りにくく、特に爪を伸ばしている場合には爪が天板部に引っ掛かるなどの事態が生じ、結局、ガス抜き操作性に難点があり、改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、ガス抜き操作性や成型性の良好なエアゾール容器用キャップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、天板部の周辺部から垂下した筒状の側面部を備え、その筒状側面部の下端部をエアゾール容器に係合させることにより、該エアゾール容器の上部に設けられている噴射部を覆うエアゾール容器用キャップにおいて、前記天板部にキャップの内部に移動可能な押し下げ部が設けられるとともに、その押し下げ部を押し下げた場合に、前記噴射部に当接して該噴射部を押圧して前記エアゾール容器の内容物に噴出させる突出部が、前記押し下げ部の下面側に形成され、前記押し下げ部の中心部を中心とした対称位置で天板部より下方に設けられた板片状の連結部によって前記押し下げ部が前記筒状側面部に連結され、その連結された部分以外は連結部及び前記押し下げ部は前記天板部と一体の部分に対して離間され、その連結部と前記押し下げ部に繋いでいる境界部および前記連結部を前記筒状側面部に繋いでいる境界部が屈曲自在に構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記連結部を前記天板部に繋いでいる前記境界部が、前記押し下げ部が前記噴射部から離隔している位置から前記噴射部を押し下げる位置までのストローク範囲での中間部に位置していることを特徴とするエアゾール容器用キャップである。
【0010】
さらに、請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記天板部のうち前記押し下げ部が前記境界部を介して繋がれている部分であって前記連結部に相当する部分が、前記天板部の他の部分に対して窪んでいることを特徴とするエアゾール容器用キャップである。
【0011】
さらに、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記突出部が前記噴射部に当接して該噴射部を押し下げる位置まで前記押し下げ部が下降させられた場合に該押し下げ部が係合してその下降位置に前記押し下げ部を留め置く係止部が設けられていることを特徴とするエアゾール容器用キャップである。
【0012】
またさらに、請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記連結部は、前記押し下げ部および天板部よりも剛性の低い柔軟構造を有していることを特徴とするエアゾール容器用キャップである。
【0013】
そして、請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記柔軟構造は、前記連結部の少なくとも一部が、前記押し下げ部および天板部より薄肉化された構造を含むことを特徴とするエアゾール容器用キャップである。
【0014】
またそして、請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明において、前記押し下げ部もしくは連結部を前記天板部もしくは天板部と一体の部分に連結しかつ前記押し下げ部を押し下げることにより破断するブリッジ部が設けられていることを特徴とするエアゾール容器用キャップである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、キャップをエアゾール容器に係合させた状態でその天板部に設けられた押し下げ部にこれを下降させる荷重をかけると、前記連結部を天板部および押し下げ部に繋いでいる境界部で曲げが生じ、押し下げ部がキャップの内部に向けて下降する。その結果、突出部が噴射部に当接した後、噴射部を押し下げるので、エアゾール容器から残留ガスを排出させることができる。そして、前記連結部は板片状の簡単な形状であるうえに、その連結部の押し下げ部側および天板部側に設けられた境界部は、例えば薄肉化して屈曲可能になっていればよいのでその構成は簡単であり、したがって射出成形するとしてもショートモールドなどの成形不良の可能性が少なく、製造するのに容易であり良好なものとすることができる。また、上記の板片状の連結部が、押し下げ部の中心部を通る直線上に延びて配置されているので、いわゆるガス抜きのために下降する部分のエリアすなわち押し下げ部を加圧するために指を入れるエリアが広くなり、その結果、ガス抜き操作性を向上させることができる。
【0016】
また、請求項2の発明によれば、押し下げ部が押圧されていない通常の位置にある状態では、連結部は、天板部側の端部が下側で、かつ押し下げ部側の端部が上側となるように斜めに傾斜した向きとなる。そのため、押し下げ部に押圧力を加えた場合に連結部が反力を受け、その結果、押し下げ部が不用意に下降させられてガス抜きが生じることを抑制することができる。また反対に、押し下げ部を下降させてガス抜きを行っている状態では、連結部は、押し下げ部側の端部が下側となるように斜めに傾斜した状態となり、噴射部による押し上げ力に対する反力を連結部で受けることができ、その結果、押し下げ部をガス抜き状態の下降位置に保持することが容易になる。
【0017】
さらに、請求項3の発明によれば、前記連結部が設けられている部分が、他の部分に対して窪んでいるので、押し下げ部を押圧する際に指を挿入し易く、したがってガス抜き操作性の良いキャップを得ることができる。
【0018】
そして、請求項4の発明によれば、押し下げ部をガス抜き状態にまで下降させた後は、押圧力を解除してもガス抜きを確実に継続させることができ、したがってガス抜き操作性が良好になる。
【0019】
他方、請求項5あるいは6の発明によれば、キャップをエアゾール容器に被せたまま押し下げ部を押圧すると、前記突出部が噴射部に接触して反力を受け、そのために押し下げ部が突出部と共に傾き、柔軟構造の連結部が捻れる。すなわち、連結部は、押し下げ部や突出部の姿勢を保持するようには作用しないので、キャップをエアゾール容器に取り付けたままでは、押し下げ部を安定して押し下げることができない。その結果、誤って押し下げ部を押圧したり、あるいは押し下げ部を押圧する悪戯を受けたりしても、噴射部が継続的に押し下げられたり、それに伴って内容物が継続的に噴射されたりすることを防止することができる。
【0020】
また、請求項7の発明によれば、押し下げ部がブリッジ部によって天板部に連結されているので、押し下げ部の押し下げ操作に対してブリッジ部が抵抗力を生じ、したがってエアゾール容器を搬送している過程で押し下げ部が上下に動くなどのことを防止して搬送時に押し下げ部が押し下げられて内容物が噴射されるようなトラブルが発生しない。また、エアゾール容器の陳列状態では、ブリッジ部が破断してないことにより、悪戯の有無や未使用状態であること表すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
つぎに、本発明を図に示す具体例を参照して説明する。図1は本発明の一例を示しており、ここに示すキャップ1は、エアゾール容器(スプレー缶)2の上部に係合して噴射部である噴射ヘッド3を覆うように構成されている。すなわち、キャップ1は、天板部4と、その周辺部から垂下した筒状の側面部5とを備えていて、全体として凹形状をなしている。
【0022】
その天板部4の中央部に、押し下げ部6が設けられている。この押し下げ部6は、その上面(外面)を押圧されることによりキャップ1の内部に移動することのできる部分であって、天板部4と上面がほぼ一致する位置に設けられている。また、押し下げ部6の形状は適宜であって、図1に示す例では、ほぼ長円形状もしくはほぼ小判形状をなしている。さらに、押し下げ部6は薄板状の部分であって、その下面の中央部、より正確にはエアゾール容器2の噴射ヘッド3に対向する位置には、下降することにより噴射ヘッド3に当接してこれを押し下げる突出部7が形成されている。
【0023】
押し下げ部6の中心部を中心とした対称位置、より具体的には互いに平行な直線状の外縁部に、連結部8が繋げられている。この連結部8は、押し下げ部6あるいはキャップ1の全体と同材質の部分であって、矩形平板状もしくは板片状をなしている。そして、押し下げ部6とこの連結部8との境界部9は、屈曲自在に構成されている。その屈曲構造は、例えばその境界部9を薄肉化した構造であればよく、結局、境界部9はヒンジ(蝶番)として機能するように構成されている。
【0024】
また、上記の連結部8の他方の端部すなわち上記の境界部9とは反対側の端部は、天板部4の一部に繋がれている。天板部4のうち連結部8が繋がれている部分4Aは、連結部8とほぼ同じ幅の矩形形状の平坦部分であり、連結部8の延長線上に位置している。そして、該部分4Aは、天板部4の他の部分より一段窪んで形成されている。これは、押し下げ部6を押圧する際に指(図示せず)を挿入し易くして操作性を向上させるためである。なお、以下の説明では、上記の部分4Aを段差部4Aと記す。
【0025】
そして、前記連結部8と段差部4Aとの境界部10は、前述した境界部9と同様にヒンジ(蝶番)として機能するものであって、屈曲自在に構成されている。その屈曲構造は、例えばその境界部10を薄肉化した構造であればよい。したがって、押し下げ部6を押圧していない通常の状態では、押し下げ部6が天板部4とほぼ同じ高さに位置する一方、段差部4Aが天板部4の他の部分に対して一段低くなっているので、これら押し下げ部6と段差部4Aとの間に配置されている連結部8は、通常状態では、押し下げ部6側の端部が高くなるように傾斜している。
【0026】
上記の押し下げ部6および連結部8は、ガス抜き操作を行う際にはキャップ1の内側に下降する可動部となる。このような押し下げ部6と連結部8との移動を許容するための構成は適宜選択可能であり、例えば押し下げ部6および連結部8を天板部4に対して、破断の容易な弱化部で連結した構成とすればよい。あるいは押し下げ部6および連結部8と天板部4との間に予め隙間を設けてもよい。
【0027】
上記の押し下げ部6は、噴射ヘッド3に向けて移動する必要があるので、このような移動を確実に行わせるためにガイド壁11が、天板部4の下面(内面)から内部に垂下した状態に設けられている。このガイド壁11は、押し下げ部6および連結部8を挟んだ両側に設けられており、押し下げ部6の円弧状の輪郭に倣った凹曲面状の部分と連結部8の直線状の側部に倣った平面状の部分とから構成されている。また、ガイド壁11と押し下げ部6および/または連結部8とは、押し下げ部6に押し下げ力を加えると、破断可能な状態に連結されていても良い。そして、その凹曲面状の部分の内面には、押し下げ部6をガス抜き位置まで押し下げた場合に押し下げ部6に係合してその上昇移動を阻止する係止部としての突条部12が形成されている。この突条部12は、押し下げ部6を上側から下側に通過させ、かつ下側から上側への移動を阻止するものであるから、その上面および下面が共に斜め下向きに傾斜した面をなすなど、所期の機能を奏する断面形状とすることが好ましい。
【0028】
この突条部12は、押し下げ部6を下降位置に留め置くためのものであり、その下降位置は、前記突出部7が噴射ヘッド3に当接するとともこれを押し下げてエアゾール容器2から内容物を噴射させる位置である。また、押し下げ部6が前記段差部4Aより下がった位置である。したがって、連結部8を前記段差部4Aに繋いでいる境界部10は、押し下げ部6のストローク範囲での中間部に位置している。
【0029】
なお、前記側面部5の内面には、縦方向(軸線方向)に沿う複数条のリブ13が形成されており、それぞれのリブ13の下端部には、エアゾール容器2の上部外面に設けた突起部14に係合する凹部15が形成されている。したがって、これらのリブ13同士の間および突起部14同士の間には隙間が開いており、ここからガスを外部に排出できるようになっている。なお、押し下げ部6および連結部8とガイド壁11との間にも隙間を形成できるので、この隙間からガスをキャップ1の外部に排出することもできる。
【0030】
上記のキャップ1は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂によってその全体が形成されており、そのため各部分が幾分弾性変形可能である。したがって、エアゾール容器2の上部に図1および図2に示すように被せると、前記突起部14によって側面部5が押し広げられ、その後、リブ13に形成した凹部15が突起部14に嵌り込むので、キャップ1がエアゾール容器2の上部に取り付けられ、噴射ヘッド3がキャップ1によって覆われて保護される。
【0031】
エアゾール容器2の内部に残留しているガスを抜く場合には、キャップ1を上記のようにエアゾール容器2に取り付け、すなわち通常時と同様の状態でキャップ1をエアゾール容器2に被せる。その状態では、押し下げ部6およびこれに形成した突出部7が噴射ヘッド3に対向する上部に位置している。この状態では、前述したように、連結部8が押し下げ部6側で上向きとなるように傾斜しているので、押し下げ部6に対する押圧力の反力を連結部8が受けることになる。そのため、通常時に押し下げ部6が不用意に、あるいは意図せずに下降したり、それに伴ってガス抜きが生じてしまうことが抑制される。ガス抜き時に、連結部8による反力に抗して押し下げ部6を押圧すると、押し下げ部6がキャップ1の内部に下降する。その場合、前述したガイド壁11によって押し下げ部6および連結部8が、噴射ヘッド3に向けて案内される。
【0032】
押し下げ部6をこのように下降させる操作は、押し下げ部6の上面に指を添えて押圧することにより行うことができる。その場合、押し下げ部6だけでなくこれに繋がっている連結部8がキャップ1の内部に向けて傾斜するように動作し、しかも段差部4Aが天板部4の他の部分より下がっているので、指を入れるエリアが広くなっており、そのため押し下げ部6の押圧操作を容易に行うことができ、また爪を長く伸ばしている場合であっても同様に押圧操作を容易に行うことができる。
【0033】
押し下げ部6を、図2に示すように、ガイド壁11の内面に形成した突条部12を超える位置まで押し下げると、突出部7が噴射ヘッド3の上面に当接するとともに噴射ヘッド3を押し下げるので、エアゾール容器2の内容物が噴射ヘッド3からキャップ1の内部に噴射される。すなわち、残留ガスが排出される。そして、この残留ガスは、キャップ1とエアゾール容器2との間の隙間や押し下げ部6および連結部8と天板部4との間の隙間などからキャップ1の外部に排出される。
【0034】
この状態では、押し下げ部6が突条部12に係合してその上昇を阻止されているので、噴射ヘッド3の上昇力が押し下げ部6に作用しても押し下げ部6および噴射ヘッド3が上昇することがなく、したがって押し下げ部6に対する押圧力を解除しても噴射ヘッド3を押し下げてガス抜きを継続させることができる。また、連結部8は、前述したように、押し下げ部6側の端部が下側となるように傾斜した状態となるので、噴射ヘッド3による押し上げ力に対する反力を連結部8で受け、押し下げ部6の上昇移動に対する抵抗力を示すので、ガス抜き状態を確実に維持することができる。
【0035】
上述したように、本発明に係るキャップ1によれば、噴射ヘッド3の上面を押圧してガス抜きを行うので、ガス抜きに先行して噴射ヘッド3を取り外す必要がない。そのため、ガス抜きの作業性が良好になり、また噴射ヘッド3を取り外すことのできないエアゾール容器2にも適用することができる。また、本発明に係るキャップ1は、上述したように、湾曲した薄肉部や湾曲して入り組んだ部分などがないので、射出成形する場合であってもキャビティに対する樹脂の充填性が良好になり、その結果、ショートモールドなどの成形不良が生じにくい製造性の良好なキャップとすることができる。
【0036】
そして、上記のキャップ1では、押し下げ部6を中心とした対称位置となる両側に連結部8および段差部4Aが続いた形状となり、これが天板部4のアクセントとなるなど外観のデザイン性が格段に向上する。
【0037】
つぎにこの発明の他の例を説明する。図3に示す例は、連結部8の構造と、キャップ1をエアゾール容器に被せた状態に係止するための構造とを、上述した例とは異ならせた例であり、したがって図3に示す構成のうち上述した図1および図2に示す構成と同様の部分には図3に図1および図2の符号と同様の符号を付してその説明を省略する。図3に示すキャップ1では、その連結部8が図1および図2に示す例におけるよりも長く形成されており、またその連結部8は柔軟構造とされている。すなわち、図3に示すキャップ1における連結部8は、その少なくとも一部が、キャップ1の天板部4や側面部5などのいわゆる本体部分よりも剛性が低くなるように構成されている。具体的には、図4に示すように、連結部8の内面の中央部、すなわち各境界部9,10の中間部で薄肉化され、この部分が柔軟部8aとされている。この柔軟部8aは、押し下げ部6に加えられる押圧力が中心からずれている場合に連結部8の捻れを許容して押し下げ部6やこれと一体の前記突出部7を傾かせるためのものであり、したがって連結部8の全体を薄肉化してもよい。
【0038】
連結部8を上記のように柔軟構造としたことに伴って押し下げ部6を天板部4に繋ぎ止めておく構造が設けられている。その一例を図6および図7に示してある。具体的に説明すると、各連結部8における押し下げ部6側の端部の左右両側に、天板部4もしくは前記ガイド壁11などの天板部4と一体の部分に連結されているブリッジ部17が一体に形成されている。このブリッジ部17は、搬送時の振動などでは破断せずに、押し下げ部6を指などで押圧した場合には破断する程度の強度に設定された幅が1mm程度の微小な繋ぎ部であって、図6および図7に示す例では、天板部4側で幅が狭くなる台形形状もしくは三角形状をなしている。
【0039】
上記の図3ないし図7に示す構成のキャップ1は、図示しないエアゾール容器に被せることにより、その上端部のノズル部を被い、これを保護する。その場合、前述した係止部16がエアゾール容器の上端部に係止し、キャップ1がエアゾール容器に取り付けられた状態を維持する。この状態では、前記連結部8が柔軟であっても、ブリッジ部17が押し下げ部6を天板部4に連結しているので、押し下げ部6が下がることはない。
【0040】
また、キャップ1をエアゾール容器に取り付けた状態で、その押し下げ部6を押圧すると、突出部7がノズル部に接触していないことにより、ブリッジ部17が破断して押し下げ部6がノズル側に押し下げられる。その場合、突出部7がノズル部に当接すると、ノズル部から反力を受けるので、押し下げ部6に対する押圧力とノズル部からの反力とによって押し下げ部6および突出部7を傾ける力が作用する。それに伴って、連結部8が捻れて押し下げ部6や突出部7の傾きが生じ易くなる。そのために、キャップ1をエアゾール容器に被せたまま、押し下げ部6を押圧した場合には上記の傾きなどによってノズル部に対して押圧力が安定して作用しないので、エアゾール容器からガスを安定して噴射させることができない。すなわち、誤って押し下げ部6を押圧したり、悪戯で押し下げ部6を押圧したりしても、内容物が継続もしくは安定して噴射することを防止することができる。言い換えれば、前記突条部12に係合するまで押し下げ部6を押圧することが困難であり、誤操作や悪戯などに対する防止機能が優れている。
【0041】
エアゾール容器からいわゆるガス抜きを行う場合、キャップ1を取り付けたままでは、上記のように、前記押し下げ部6を安定して押し下げることができないので、キャップ1をエアゾール容器から取り外し、その状態で押し下げ部6を押圧する。そうすると、前述したブリッジ部17が破断し、押し下げ部6がキャップ1の内部に押し下げられる。その場合、その押し下げ操作に対する抵抗力が特には作用しないので、押し下げ部6やこれと一体の突出部7が傾くことなく押し下げられる。そして、押し下げ部6の周辺部が、ガイド壁11の内面に形成されている突条部12を押し広げてその下側に係合する。すなわち、突条部12に引っ掛かって上側への移動が阻止された状態となる。
【0042】
押し下げ部6をこのようにキャップ1の内部に押し下げかつ突条部12に係止した状態で、キャップ1をエアゾール容器のノズル側に被せる。その場合、突出部7が押し下げ部6と共に下がっているので、キャップ1をエアゾール容器に完全に被せる前に突出部7がノズル部に当接するので、キャップ1を更に強く押圧することにより、ノズル部が押し下げられ、エアゾール容器の内部からガスが噴出し始める。したがって、押し下げ部6にはノズル部から上向きの力が作用するが、押し下げ部6はそのいわゆる上面部分の半周もしくはそれ以上の周辺部が突条部12に係合しているので、ノズル部を押圧している状態を安定して維持する。
【0043】
また、キャップ1は、その側面部5の内面の下部に形成された係止部16が、前述した図1および図2に示す構成と同様に、エアゾール容器の巻締部などに係合し、エアゾール容器に被せた状態に維持される。なお、キャップ1をエアゾール容器に取り付けた状態を係止部16によって維持できない場合には、キャップ1をエアゾール容器側に押圧して、ノズル部を押し下げた状態を維持し、ガス抜き継続する。なお、エアゾール容器から噴射された残留ガスは、キャップ1とエアゾール容器との間の隙間や押し下げ部6および連結部8と天板部4との間の隙間などからキャップ1の外部に排出される。
【0044】
したがって、図3ないし図7に示すように構成した場合には、押し下げ部6をキャップ1の内部に押し下げた状態で、キャップ1をエアゾール容器に被せることにより、残留ガスを容易かつ確実に排出することができる。すなわち、残留ガスを排出させるためには、キャップ1をエアゾール容器から取り外し、その状態で押し下げ部6を突条部12に係合するまで押し下げ、さらに再度エアゾール容器に被せる操作を行うことになり、前記連結部8を柔軟構造にしたことと相まって、誤操作や悪戯などによる内容物の噴射を防止する機能に優れている。さらに、押し下げ部6をキャップ1の内部に一旦押し下げると、前記ブリッジ部17が破断するので、ブリッジ部17が、未使用状態を表示するピリファープルーフ機能(テンパーエビデンス機能)を奏し、併せて押し下げ部6を天板部4に連結した状態を維持できるので、搬送時に押し下げ部6が上下に動くなどのことを防止して、搬送時に押し下げ部6が押し下げられて内容物が噴射されるようなトラブルなどが発生しない。
【0045】
なお、本発明は上述した具体例に限定されないのであって、押し下げ部によって押圧する噴射部は、上記の噴射ヘッド以外に、噴射ヘッドが取り付けられるノズル部もしくはステムであってもよい。また、押し下げ部の形状は円形もしくは半円形などに限定されず、矩形などの適宜の形状であってよい。また、連結部の形状も必要に応じて適宜の形状とすることができる。さらに、ブリッジ部の位置や数は、上記の具体例で示した位置や数に限られないのであって、デザインや製造性を考慮して適宜の位置に、必要数を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一例を示す断面図である。
【図2】ガス抜きを行っている状態を示す断面図である。
【図3】本発明の他の例を示す断面図である。
【図4】その連結部を拡大して示す部分断面図である。
【図5】図3に示すキャップを90°異なる位置で切断した形状を示す断面図である。
【図6】図3に示すキャップの平面図である。
【図7】ブリッジ部を拡大して示す部分図である。
【符号の説明】
【0047】
1…キャップ、 2…エアゾール容器(スプレー缶)、 3…噴射ヘッド、 4…天板部、 5…側面部、 6…押し下げ部、 7…突出部、 8…連結部、 8a…柔軟部、 9…境界部、 4A…段差部、 10…境界部、 12…突条部、 16…係止部、 17…ブリッジ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部の周辺部から垂下した筒状の側面部を備え、その筒状側面部の下端部をエアゾール容器に係合させることにより、該エアゾール容器の上部に設けられている噴射部を覆うエアゾール容器用キャップにおいて、
前記天板部にキャップの内部に移動可能な押し下げ部が設けられるとともに、その押し下げ部を押し下げた場合に、前記噴射部に当接して該噴射部を押圧して前記エアゾール容器の内容物を噴出させる突出部が、前記押し下げ部の下面側に形成され、前記押し下げ部の中心部を中心とした対称位置で天板部より下方に設けられた板片状の連結部によって前記押し下げ部が前記筒状側面部に連結され、その連結された部分以外の連結部及び前記押し下げ部は前記天板部と一体の部分に対して離間され、その連結部と前記押し下げ部に繋いでいる境界部および前記連結部を前記筒状側面部に繋いでいる境界部が屈曲自在に構成されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップ。
【請求項2】
前記連結部を前記天板部に繋いでいる前記境界部が、前記押し下げ部が前記噴射部から離隔している位置から前記噴射部を押し下げる位置までのストローク範囲での中間部に位置していることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器用キャップ。
【請求項3】
前記天板部のうち前記押し下げ部が前記境界部を介して繋がれている部分であって前記連結部に相当する部分が、前記天板部の他の部分に対して窪んでいることを特徴とする請求項1または2に記載のエアゾール容器用キャップ。
【請求項4】
前記突出部が前記噴射部に当接して該噴射部を押し下げる位置まで前記押し下げ部が下降させられた場合に該押し下げ部が係合してその下降位置に前記押し下げ部を留め置く係止部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のエアゾール容器用キャップ。
【請求項5】
前記連結部は、前記押し下げ部および天板部よりも剛性の低い柔軟構造を有していることを特徴とする請求項4に記載のエアゾール容器用キャップ。
【請求項6】
前記柔軟構造は、前記連結部の少なくとも一部が、前記押し下げ部および天板部より薄肉化された構造を含むことを特徴とする請求項5に記載のエアゾール容器用キャップ。
【請求項7】
前記押し下げ部もしくは連結部を前記天板部もしくは天板部と一体の部分に連結しかつ前記押し下げ部を押し下げることにより破断するブリッジ部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のエアゾール容器用キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−126211(P2007−126211A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266901(P2006−266901)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【出願人】(000220206)東京ライト工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】