説明

エアゾール容器用噴射装置

【課題】構成部品点数の削減と、組み立て工程数の低減により、製造コストの低減を図ることのできるエアゾール容器用噴射装置を提供する。
【解決手段】エアゾール容器3のバルブステム4に被冠装着される噴射装置本体11と、該噴射装置本体11の上部に回転可能に嵌合装着されてバルブステム4を押下する際の操作部となる蓋体21と、この蓋体21の回転に伴い噴射装置本体11内の連絡口17を開閉することで噴射動作モードと吸引動作モードとを切り替え設定する開閉弁と、を備えるエアゾール容器用噴射装置1において、開閉弁となる板部25を蓋体21に一体形成したことにより、部品点数と組み立て工程数を低減し、製造コストを下げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器のバルブステムに被冠装着することで、エアゾール容器内の気体を外部の目標位置へ噴射する噴射動作モードと、目標位置に対して吸引を行う吸引動作モードと、を切り替えて使用することが可能なエアゾール容器用噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密機械や回路基板などに付着している粉塵等の除去方法としては、粉塵等の付着位置に高圧空気等を吹き付けて、付着している粉塵等を吹き飛ばす噴射除去方法と、粉塵等の付着位置に負圧吸引力を作用させて、付着している粉塵等を吸引回収する吸引除去方法とがある。
【0003】
このような2つの粉塵除去方法を使い分けることのできる簡便な装置として、圧縮気体を収容したエアゾール容器のバルブステムに、改良したエアゾール容器用噴射装置を被冠装着したエアゾール装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この場合のエアゾール容器用噴射装置は、エアゾール容器のバルブステムに被冠装着される噴射装置本体と、噴射装置本体の上部に回転可能に装着されてバルブステムを押下する際の操作部となる蓋体と、噴射装置本体に嵌合装着されると共に蓋体の回転に連動して位置を移動することにより、エアゾール容器内の気体を目標位置に噴射する噴射動作モードと、目標位置に対して負圧吸引する吸引動作モードと、を選択切り替える開閉弁とを備えた構成になっている。
【0005】
また、噴射装置本体は、エアゾール容器のバルブステムから噴射される気体を目標位置に向けて噴射するための噴射用流路と、気体を噴射用流路とは別の排気路から外部に逃がすことで噴射用流路に外部のものを吸い込む吸引力を作用させる連絡口と、を備えた構成であり、蓋体の回転に連動して噴射装置本体内を移動する開閉弁が連絡口を閉じた状態の時には噴射動作モードになり、開閉弁が連絡口を開放した状態の時には吸引動作モードとになる。
【0006】
【特許文献1】特開2007−7579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述したエアゾール容器用噴射装置は、噴射装置本体と、該噴射装置本体内に組み込む開閉弁と、噴射装置本体の上部に組み込む蓋体との3ピース構造になっている。このため、それぞれの部品の嵌合部等から気体が漏れないように、各部品を高精度に製造しなければならない。また、組み立て工程で噴射装置本体への開閉弁の組み込みに手間がかかる。さらに、部品点数を減らして製造コストの削減を図ることが望まれる。
【0008】
そこで、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、エアゾール容器のバルブステムに被冠装着することで噴射動作モードと吸引動作モードとが切り替え使用可能になるエアゾール容器用噴射装置であって、構成部品点数の削減と、組み立て工程数の低減により、製造コストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することのできる本発明は、エアゾール容器のバルブステムから噴射される気体を噴射するための噴射用流路と前記気体を前記噴射用流路とは別の排気路から外部に逃がすことで前記噴射用流路に外部のものを吸い込む吸引力を作用させる連絡口とを備えて前記エアゾール容器のバルブステムに被冠装着される噴射装置本体と、
該噴射装置本体の上部に回転可能に嵌合装着されて前記バルブステムを押下する際の操作部となる蓋体と、を備え、
前記蓋体の回転操作によって前記連絡口の開閉を切り替えて、エアゾール容器内の気体を前記噴射用流路から外部の目標位置へ噴射する噴射動作モードと、エアゾール容器内の気体を前記排気路に逃がして前記噴射用流路に前記目標位置に対して吸引を行わせる吸引動作モードとを切り替え設定する開閉弁が、前記蓋体に一体形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、エアゾール容器用噴射装置は、構成部品としては、噴射装置本体と、該噴射装置本体の上部に組み込む蓋体との2ピース構造になっており、従来の3ピース構造のものと比較すると、部品点数や組み立て工程数の削減により、製造コストの低減を図ることができる。
【0011】
また、本発明のエアゾール容器用噴射装置において、前記噴射装置本体は、エアゾール容器のバルブステムの噴射口に連通する連絡空間を形成する円筒壁と、この円筒壁を貫通して前記連絡空間を外部に連通させた前記噴射用流路と、前記円筒壁の外周の空間を外部に連通させる排気路と、円筒壁上で前記噴射用流路の開口から離れた位置の筒壁を切り欠くことで前記連絡空間を前記円筒壁の外周の空間に連通させた前記連絡口とを備え、
前記蓋体は、前記噴射装置本体の上部を覆う天板に、回転操作時に前記円筒壁の内周又は外周を摺接状態で移動する円弧状の板部が突設され、該板部が前記連絡口の開閉を切り替える開閉弁となっていることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、噴射装置本体の円筒壁や、開閉弁となる円弧状の板部の中心軸を、噴射装置本体に嵌合する蓋体の回転中心に揃えることにより、蓋体の回転動作により噴射装置本体内の連絡口を開閉する高精度な開閉弁を簡単な円筒構造により構成することができ、樹脂の射出成形等による各部品の製造を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るエアゾール容器用噴射装置の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るエアゾール容器用噴射装置の一実施の形態の噴射動作モード時の縦断面図、図2は図1に示したエアゾール容器用噴射装置の分解図、図3は図1のA−A断面図、図4は図2のB−B矢視図、図5は図2のC−C矢視図、図6は図2のD−D矢視図、図7は図1に示したエアゾール容器用噴射装置の吸引動作モード時の縦断面図、図8は図7のE−E断面図である。
【0014】
この一実施の形態のエアゾール容器用噴射装置1は、図1及び図2に示すように、圧縮気体が充填されたエアゾール容器3のバルブステム4に被冠装着される噴射装置本体11と、該噴射装置本体11の上部に回転可能に嵌合装着されてバルブステム4を押下する際の操作部となる蓋体21とで構成されている。
【0015】
(噴射装置本体の構成について)
噴射装置本体11は、図2に示すように、バルブステム4の噴射口に連通する連絡空間12を形成する円筒壁13と、バルブステム4から連絡空間12内に噴射される気体を目標位置に向けて噴射するために、円筒壁13を貫通して連絡空間12を外部に連通させた噴射用流路14と、円筒壁13の下端に連なって設けられてエアゾール容器3のマウンテンカップ部5に嵌合する下部リング部18と、該下部リング部18から上方に延出して設けられて円筒壁13の外周に空間15を形成する外筒部19と、円筒壁13の外周の空間15を下部リング部18側から外部に連通させる排気路16と、円筒壁13上で噴射用流路14の開口から離れた位置の筒壁を切り欠くことで連絡空間12を円筒壁13の外周の空間15に連通させた連絡口17とを備えている。
【0016】
連絡口17は、図3及び図5に示すように、円筒壁13の周壁の上縁部を、全周の3/7程度の範囲に渡って切り欠くことにより形成されている。この連絡口17は、図7に矢印Xで示すように、連絡空間12内に噴射される気体を、空間15を経由して排気路16から外部に逃がすことで、噴射用流路14の開口部付近を流れるジェット気流31を造り、このジェット気流31によって、噴射用流路14に外部のものを吸い込む吸引力を作用させる。
【0017】
本実施の形態の場合、図3から図5に示すように、円筒壁13、下部リング部18、外筒部19は、同軸に設定されている。
【0018】
排気路16は、図4及び図5に示すように、外筒部19と下部リング部18との間を仕切って空間15の底壁となる隔壁部32に貫通形成された複数個(図示例では、5個)の孔であり、連絡口17から空間15に流入した気体を、外部に拡散排気する。
【0019】
空間15は、図2に示すように上部を開放した空間で、その底壁となっている隔壁部32の上には、図7に示すように気流により空間15内にばれる粉塵を捕捉・回収するフィルタ35が載置される。
【0020】
(蓋体の構成について)
蓋体21は、図1に示すように、噴射装置本体11の上部を覆う円板状の天板22と、この天板22の外周から延出して噴射装置本体11の外筒部19に回転可能に嵌合するリング部23とを具備している。
【0021】
蓋体21の天板22の内面の中心部には、図1から図3に示すように、噴射装置本体11に対して蓋体21を回転操作したときに、円筒壁13の外周と接した状態で移動する円弧状の板部25が突設されている。
この円弧状の板部25は、円筒壁13の外周に嵌合する円筒構造の一部で、周方向の長さが、円筒壁13に形成された連絡口17を覆うように設定されている。図6に示すように、円弧状の板部25に対向する位置は、円筒構造が切除された開放部27となっていて、この開放部27が連絡口17に重なることで、連絡口17が開放された状態になる。
【0022】
円弧状の板部25は、蓋体21の回転操作によって、図3に示すように連絡口17を閉じて、連絡空間12と空間15との間を遮断した状態、及び、図8に示すように連絡口17を開いて、連絡空間12と空間15とを連通させた状態にすることができる。
【0023】
エアゾール容器用噴射装置1は、図3に示すように連絡口17が円弧状の板部25により閉じられた状態と、図8に示すように連絡口17が開かれている状態とで、動作モードが切り替わる。
即ち、連絡口17を閉じた状態では、図1に示すように、バルブステム4から連絡空間12内に噴射された気体が噴射用流路14から外部の目標位置へ噴射される噴射動作モードとして作動する。
噴射用流路14の外側には、噴射用流路14の長さを延長する延長チューブ38が着脱可能になっている。
【0024】
また、連絡口17を開いた状態では、図7に示すように、バルブステム4から連絡空間12内に噴射された気体が、連絡口17から空間15及び排気路16を経由して、外部に放散される。このとき、連絡空間12から連絡口17に流れる気流は、図7に示したように、噴射用流路14の開口部付近を流れるジェット気流31を造り、このジェット気流31によって、噴射用流路14に外部のものを吸い込む吸引力を作用させ、噴射用流路14に目標位置に対して吸引を行わせる吸引動作モードとして作動する。
この吸引動作モード時に、外部から吸引した粉塵等は、空間15の底部に装着されているフィルタ35により捕捉回収する。
【0025】
即ち、蓋体21に一体形成された円弧状の板部25は、連絡口17の開閉を切り替える開閉弁として機能している。
【0026】
円弧状の板部25の外周面には、図6に示すように、位置決め用のリブ28が突設されている。このリブ28は、図3に示すように、円弧状の板部25が連絡口17を全閉した状態の時に、円筒壁13と同心の円弧状に噴射装置本体11内に突設されているストッパ壁41の一端41aに当接して、蓋体21の回転を拘束する。
この状態では、蓋体21のリング部23の外周面に刻設された噴射動作モード用のノッチ29aの位置が、外筒部19の外周面に突設された目印突起19a(図5参照)の位置に重なり、噴射動作モードであることが視認できる。
【0027】
図3に示した噴射動作モードから蓋体21を矢印Y方向に回転させると、図8に示すように、リブ28がストッパ壁41の他端41bに当接して、それ以上は矢印Y方向に回転できなくなる。この時は、円弧状の板部25が連絡口17を全開した状態になっていて、吸引動作モードになる。
この状態では、蓋体21のリング部23の外周面に刻設された吸引動作モード用のノッチ29bの位置が、外筒部19の外周面に突設された目印突起19a(図5参照)の位置に重なり、吸引動作モードであることが視認できる。
吸引動作モード状態からは、図8に矢印Zで示す方向に蓋体21を回転操作することで、図3に示した噴射動作モードに切り替える。
【0028】
以上に説明したエアゾール容器用噴射装置1は、エアゾール容器3のバルブステム4に被冠装着して、蓋体21を回転操作することで噴射動作モードと吸引動作モードとを切り替えるが、動作モードの切り替えを行う開閉弁としての円弧状の板部25が蓋体21に一体形成されているため、構成部品としては、噴射装置本体11と、該噴射装置本体11の上部に組み込む蓋体21との2ピース構造になっている。
そのため、従来の3ピース構造のものと比較すると、部品点数や組み立て工程数の削減により、製造コストの低減を図ることができる。
【0029】
また、本実施の形態のエアゾール容器用噴射装置1において、噴射装置本体11は、エアゾール容器3のバルブステム4の噴射口に連通する連絡空間12を形成する円筒壁13と、この円筒壁13を貫通して連絡空間12を外部に連通させた噴射用流路14と、円筒壁13の外周の空間を外部に連通させる排気路16と、円筒壁13上で噴射用流路14の開口から離れた位置の筒壁を切り欠くことで連絡空間12を空間15に連通させた連絡口17とを備えた構成になっている。
また、蓋体21は、噴射装置本体11の上部を覆う天板22に、回転操作時に円筒壁13の外周を摺接状態で移動する円弧状の板部25が突設され、該板部25が連絡口17の開閉を切り替える開閉弁となっている。
従って、噴射装置本体11の円筒壁13や、開閉弁となる円弧状の板部25の中心軸を、噴射装置本体11に嵌合する蓋体21の回転中心に揃えることにより、蓋体21の回転動作により噴射装置本体11内の連絡口17を開閉する高精度な開閉弁を簡単な円筒構造により構成することができ、樹脂の射出成形等による各部品の製造を容易にすることができる。
【0030】
なお、上記の実施の形態では、連絡口17を開閉する開閉弁となる円弧状の板部25は、蓋体21の回転操作に伴い、円筒壁13の外周に接した状態で移動する構造としたが、円筒壁13の内周に接した状態で移動する構造としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るエアゾール容器用噴射装置の一実施の形態の噴射動作モード時の縦断面図である。
【図2】図1に示したエアゾール容器用噴射装置の分解図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図2のB−B矢視図である。
【図5】図2のC−C矢視図である。
【図6】図2のD−D矢視図である。
【図7】図1に示したエアゾール容器用噴射装置の吸引動作モード時の縦断面図である。
【図8】図7のE−E断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1:エアゾール容器用噴射装置、3:エアゾール容器、4:バルブステム、5:マウンテンカップ部、11:噴射装置本体、12:連絡空間、13:円筒壁、14:噴射用流路、15:空間、16:排気路、17:連絡口、18:下部リング部、19:外筒部、19a:目印突起、21:蓋体、22:天板、23:リング部、25:円弧状の板部(開閉弁)、27:開放部、28:リブ、29a:噴射動作モード用のノッチ、29b:吸引動作モード用のノッチ、31:ジェット気流、32:隔壁部、35:フィルタ、41:ストッパ壁、41a:一端、41b:他端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器のバルブステムから噴射される気体を噴射するための噴射用流路と前記気体を前記噴射用流路とは別の排気路から外部に逃がすことで前記噴射用流路に外部のものを吸い込む吸引力を作用させる連絡口とを備えて前記エアゾール容器のバルブステムに被冠装着される噴射装置本体と、
該噴射装置本体の上部に回転可能に嵌合装着されて前記バルブステムを押下する際の操作部となる蓋体と、を備え、
前記蓋体の回転操作によって前記連絡口の開閉を切り替えて、エアゾール容器内の気体を前記噴射用流路から外部の目標位置へ噴射する噴射動作モードと、エアゾール容器内の気体を前記排気路に逃がして前記噴射用流路に前記目標位置に対して吸引を行わせる吸引動作モードとを切り替え設定する開閉弁が、前記蓋体に一体形成されていることを特徴とするエアゾール容器用噴射装置。
【請求項2】
前記噴射装置本体は、エアゾール容器のバルブステムの噴射口に連通する連絡空間を形成する円筒壁と、この円筒壁を貫通して前記連絡空間を外部に連通させた前記噴射用流路と、前記円筒壁の外周の空間を外部に連通させる排気路と、円筒壁上で前記噴射用流路の開口から離れた位置の筒壁を切り欠くことで前記連絡空間を前記円筒壁の外周の空間に連通させた前記連絡口とを備え、
前記蓋体は、前記噴射装置本体の上部を覆う天板に、回転操作時に前記円筒壁の内周又は外周を摺接状態で移動する円弧状の板部が突設され、該板部が前記連絡口の開閉を切り替える開閉弁となっていることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器用噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−51535(P2009−51535A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220277(P2007−220277)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000141118)株式会社丸一 (47)
【Fターム(参考)】