説明

エアゾール容器

【課題】 エアゾール容器に特有の噴出音を低減させ得るエアゾール容器を提供すること。
【解決手段】 充填ガスの圧力で内容物が吐出口7から噴出するエアゾール容器1であって、吐出口7に連なり且つ内容物が噴出時に通過する噴出流路9の流路壁が消音材8で形成されており、噴出流路9の形状が実質的に変形しないように構成されている。容器1は、容器本体2のステムに嵌合する押釦4と、押釦3内に配された消音材からなる消音部材とを備える。消音部材にその軸線方向に延びる噴出流路9が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアゾール容器に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール容器の内容物を噴出させると、容器内の圧力、内容物の噴出速度や噴出量に応じて、エアゾール容器に特有の噴出音が発生する。場合によっては噴出音が不快に感じられることがあり、また使用場面によっては周囲の人にエアゾール容器を使用していることを気付かれたくないこともある。そこで、噴出する内容物の噴出音を低減させるエアゾール容器が提案されている。例えば、噴出音の反射部材を備えており、噴出音の波と反射部材で反射された波とが、互いに反対の波形を有するようにしたエアゾール容器が提案されている(特許文献1参照)。しかし、このエアゾール容器は構造が複雑であり製造経費が高くなることから、一般に使い切りの製品であるエアゾール容器にはなじまない。
【0003】
このエアゾール容器とは別に、エアゾール容器における押釦の吐出口に、連続した多孔を備えた焼結体が装着固定されたエアゾール容器が知られている(特許文献2参照)。焼結体としては、連続した微細な孔が形成された金属系のものやセラミックス系のものあるいはプラスチック系のものが使用されている。このエアゾール容器は、噴出音の低減を目的とするものではなく、流量の抑制やスプレーパターンのソフト化、詰まりの防止を目的とするものである。
【0004】
【特許文献1】特開2001−293402号公報
【特許文献2】特開平10−329879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得るエアゾール容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、充填ガスの圧力で内容物が吐出口から噴出するエアゾール容器であって、該吐出口に連なり且つ内容物が噴出時に通過する噴出流路の流路壁が消音材で形成されており、該噴出流路の形状が実質的に変形しないように構成されているエアゾール容器を提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のエアゾール容器によれば、エアゾール容器に特有の噴出音を低減させることができる。従って噴出音による不快感を与えることを減じることができ、また周囲の人にエアゾール容器を使用していることが気付かれにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1及び図2に示す実施形態のエアゾール容器1は、充填ガスの圧力で内容物が吐出口から噴出するものである。容器1は、内容物が収納される容器本体2と押釦3とを備えている。容器本体2には、その開口部を塞ぐようにバルブ4が取り付けられている。バルブ4の周縁部が、容器本体2の開口部に、かしめによって締結されている。図2に示すように、押釦3にはバルブ4のステム(図示せず)との嵌合部5が形成されている。押し釦が押し下げられることによってバルブが作動し、内容物がステムよりガスと共に噴出する。
【0009】
押釦3にはその略中央部に縦孔6が形成されている。縦孔6はステムの噴出口と連通している。押釦3内には消音材からなる柱状(消音)部材8が配されている。柱状部材8は円柱状であり、その軸線方向が容器1の高さ方向とほぼ直交するように配されている。柱状部材8には、その軸線方向に向かって一方向に延びる貫通孔9が形成されている。
【0010】
貫通孔9はその横断面(延びる方向と直交する面における断面)が略円形をしている。貫通孔9はその一端が吐出口7に連なっている。一方、貫通孔9の他の一端は、押釦3に形成された縦孔6に連なっている。これによって押釦3内には、縦孔6及び貫通孔9からなり、ステムと吐出口7とをつなぐ内容物の噴出流路が形成される。
【0011】
押釦3にはチップカバー10が取り付けられている。チップカバー10は、押釦3に嵌合し且つ嵌合することで柱状部材8を押釦3に固定している。チップカバー10には内容物の吐出口7が形成されている。
【0012】
先に述べた通り、柱状部材8は消音材から構成されている。柱状部材8に形成された貫通孔9は、内容物の噴出流路の一部を構成するものであるから、該噴出流路の流路壁の一部が消音材で形成されていることになる。従って、押釦3を押し下げて内容物を噴出させるときに生じる噴出音は、内容物が噴出流路を通過する間に消音材によって減殺される。その結果、噴出音による不快感を与えることを減じることができ、また周囲の人にエアゾール容器を使用していることが気付かれにくくなる。
【0013】
柱状(消音)部材8に形成された貫通孔9はその形状が実質的に変形しないように構成されている。実質的に変形しないとは、内容物の噴出圧力が多少変動しても貫通孔9が変形しないこと、及びエアゾール容器1の通常の使用場面において加えられる外力では貫通孔9が変形しないことをいう。本実施態様では実質的に変形しないように、柱状部材8の周囲を変形防止手段たるチップカバー10で覆い外力による変形を防止すると共に、内容物の噴出圧力により変形しないように変形防止手段たるチップカバー10の内面を柱状部材8の外面の面積の半分以上に当接するように構成している。このように構成されていることで、噴射開始時から噴射中にわたって内容物の噴出圧力が変動した場合であっても安定した消音効果が得られる。なお、本実施態様の如く変形防止手段としてチップカバーを設ける場合も完全に柱状部材を覆わなくともよく、内面において柱状部材と当接する面積や位置も変形防止手段として機能する限りにおいて適宜変更してよい。すなわちチップカバーに横穴を設けたり、チップカバー全体をネット状のものとすることもできる。
【0014】
消音材としては、各種分野において消音材として用いられているものを特に制限なく用いることができる。例えば多孔質ポリウレタン、合成樹脂粉末の焼結体、繊維材料、ゴム材料、多孔質セラミックス材料などを用いることができる。
【0015】
消音効果を一層高める観点から、消音材は多孔質材料から構成されていることが好ましい。多孔質材料としては、例えば多孔質ポリウレタン、合成樹脂粉末の焼結体、繊維材料などが挙げられる。
【0016】
多孔質ポリウレタンとしては、発泡しているスポンジ状のものを用いることができる。
【0017】
合成樹脂粉末の焼結体としては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂の粉末を圧縮成形し焼結させたものを用いることができる。斯かる焼結体の細孔はクローズドセル、オープンセル何れも用いることが出来るる。
【0018】
繊維材料としては、天然繊維、合成繊維、ステンレスウール、グラスウール、セラミックウールなどのウエブ、トウ、フェルト、クロスなどを用いることができる。
【0019】
多孔質材料は、その材質や製造方法に応じて細孔がオープンセルになる場合と、クローズドセルになる場合とがある。本実施形態の容器1においては何れのタイプの多孔質材料を用いることもできる。特に、消音効果が高い点からオープンセルの多孔質材料を用いることが好ましい。
【0020】
消音部材8における貫通孔9の長さ及び横断面積は、消音効果に影響を与えると考えられる。本発明者らは、貫通孔9の長さを5〜20mm、貫通孔9の横断面積を0.7〜4mm2とした範囲で実験を行い、消音効果が得られたことを確認している。
【0021】
本実施形態の容器1に収納される内容物としては、液体及び粉体の何れもが用いられる。内容物としては、人体に噴霧されるものとして、育毛剤、ヘアースプレーなどの頭髪用品、制汗剤などの消臭・制汗剤、シェービングクリーム、アフターシェーブローションなどの化粧品、筋肉消炎剤などがある。家庭用品として、トイレ消臭剤・芳香剤、ガラスクリーナー、衣服の消臭剤、殺虫剤、家庭用塗料などがある。内容物は、噴射剤としての液化プロパンガスや、これとイソペンタンとの混合ガスなどと共に容器1に充填される。ガスは内容物との関係で他にも種々のものを選択でき、炭酸ガス、窒素ガス、亜酸化窒素の圧縮ガスやDMEなどを用いることもある。
【0022】
次に、本発明の第2の実施形態について図3を参照しながら説明する。第2の実施形態に関し特に説明しない点については、先の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図3において、図1及び図2と同じ部材に同じ符号を付してある。
【0023】
本実施形態においては、押釦3に消音部材8が取り付けられている点は、先に説明した実施形態と同様である。しかし本実施形態においては消音部材8を固定するチップカバーが取り付けられておらず、消音部材8の先端部が外部に露出している。従って本実施形態においては、消音部材8の貫通孔9の一端から内容物が噴出するようになっている。
【0024】
本実施形態においては、消音部材8は接着剤等を用いた接着や、嵌合等の手段によって押釦3に固定されている。消音部材8の先端部が外部に露出していることから、該消音部材8は、エアゾール容器の通常の使用場面において該消音部材8に加わる外力では変形しない程度の剛性を有していることが好ましい。消音材は一般に軟質の材料であることが多いから、そのような軟質の材料から消音部材8を構成する場合には、該消音部材8を、それぞれ軸方向に延びる硬質の外殻部と該外殻部よりも軟質のコア部とを有する二重構造となし、該コア部に貫通孔9を形成することが好ましい。この硬質の外殻部は上述のチップカバーと同様に変形防止手段として機能することとなる。外殻部を硬質にするためには、例えば外殻部を構成する材料として硬質の材料を用い且つコア部に消音作用を有する材料を用いて二色成形の技術によって外殻部及びコア部を同時に成形すればよい。別法として、軟質の材料から消音部材8と同形の前駆部材を形成し、該前駆部材における側面部に化学的処理を施して、該側面部から一定深さの部分までが硬質になるようにしてもよい。更に別法として、硬質材料からなる所定肉厚の筒状部材内に軟質の消音材をはめ込んで二重構造の消音部材8となしてもよい。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は斯かる実施例に制限されるものではない。
【0026】
〔実施例1〕
図1及び図2に示す構造のエアゾール容器1を製造した。押釦3内に配される消音部材8として、円筒型の多孔質ポリウレタンを用いた。消音部材8は長さ10mm、直径5.4mmであり、中心軸に沿って、直径1mmの貫通孔が設けられていた。消音部材8を押釦3に固定するチップカバー10に設けられている吐出口の直径は1mmであった。エアゾール容器1には、噴射剤としての液化プロパンガスと共に制汗剤が充填された。容器1の初期内圧は0.25MPaとなるようにした。
【0027】
〔比較例1〕
市販のエアゾール容器(ニベア花王製のエイトフォーパウダースプレー)の押し釦を用いた。この釦はワンピースタイプのものであり、消音材は取り付けられていなかった。吐出口の直径は0.5mmであった。内容物及び充填圧は実施例1と同様にした。
【0028】
〔比較例2〕
市販のエアゾール容器(ニベア花王製のニューメンエイトフォー爽快ジェットスプレー)を用いた。この容器は、押釦にチップカバーが取り付けられたツーピースタイプのものであり、消音材は取り付けられていなかった。吐出口の直径は0.5mmであった。内容物及び充填圧は実施例1と同様にした。
【0029】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られたエアゾール容器について、1.5〜2.5g/5秒にて内容物を噴出させた。噴出音を容器から10cm離れた位置に設置された騒音計で計測した。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に示す結果から明らかなように、消音材が取り付けられている実施例1のエアゾール容器は、各比較例の容器に比較して噴射音が低減化されていることが判る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のエアゾール容器の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す押釦の縦断面図である。
【図3】本発明のエアゾール容器の第2の実施形態における押釦の縦断面図(図2相当図)である。
【符号の説明】
【0033】
1 エアゾール容器
2 容器本体
3 押釦
4 マウンティングカップ
5 嵌合部
6 流路
7 吐出口
8 消音部材
9 貫通孔
10 チップカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填ガスの圧力で内容物が吐出口から噴出するエアゾール容器であって、該吐出口に連なり且つ内容物が噴出時に通過する噴出流路の流路壁が消音材で形成されており、該噴出流路の形状が実質的に変形しないように構成されているエアゾール容器。
【請求項2】
容器本体のステムに嵌合する押釦と、該押釦内に配された前記消音材からなる消音部材とを備え、該消音部材に一方向に延びる前記噴出流路が形成されており、該噴出流路の一端から内容物が噴出すると共に他端が前記ステムに連なる請求項1記載のエアゾール容器。
【請求項3】
前記押釦に嵌合し且つ嵌合状態で前記消音部材を前記押釦に固定するチップカバーを更に備え、該チップカバーに前記吐出口が備えられており、前記消音部材に形成された前記噴出流路の一端が該吐出口に連なっている請求項2記載のエアゾール容器。
【請求項4】
前記消音材が多孔質材料からなる請求項1ないし3の何れかに記載のエアゾール容器。
【請求項5】
多孔質材料が、多孔質ポリウレタン、合成樹脂粉末の焼結体又は繊維材料からなる請求項4又は5の何れかに記載のエアゾール容器。
【請求項6】
前記消音部材は、それぞれ軸方向に延びる硬質の外殻部と該外殻部よりも軟質のコア部とを有しており、該コア部に前記噴出流路が形成されている請求項2ないし6の何れかに記載のエアゾール容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−167596(P2006−167596A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−363729(P2004−363729)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】