説明

エアゾール式液噴出器

【課題】エアゾール容器Aの上端に噴射ヘッドBを押し下げ可能に嵌着したエアゾール式液噴出器であって、収納液が無くなった後の残存ガスを簡単に排出することができ、構造が簡単で安価に製造できるエアゾール式液噴出器を提案する。
【解決手段】エアゾール容器Aの上面中央に立設した環状突部4に嵌着したカバー枠Cを設け、該カバー枠Cのフランジ状の頂板21の内周縁部を起伏可能な半環状の係止帯24に形成し、該係止帯24を起立させて噴射ヘッドBに係止することにより、噴射ヘッドBの押し下げ噴射状態を維持する如く構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアゾール式液噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール容器に装着されている肩カバーにより、噴射ヘッドを、噴射位置に拘束可能に構成したエアゾール容器が提案されている。(例えば特許文献1参照)
【0003】
上記特許文献1に記載されているエアゾール容器は、円筒状のエアゾール容器の頭部から突出するばね付勢状態のバルブステムに基端部で嵌着する噴射ボタンが、エアゾール容器上部に装着されている肩カバーにより、噴射位置に拘束可能に構成している。
【0004】
その構造を詳述すれば、肩カバーは、エアゾール容器の肩部をカバーする外周面部と、その上端に形成され、かつバルブステムを中心とする環状の上面周辺部とを備えている。また、バルブステムに対して噴射ボタンの周面部の少なくとも両側2箇所に、爪が外側方へ向けて突設されている。更に、前記上面周辺部には、噴射ボタンの押下げ操作に応動する爪の上下動をガイドするように、上下方向へ形成されたガイド溝と、バルブステムを中心とする回転方向への爪上面の滑動をガイドするように、ガイド溝の側面部の下端から回転方向に沿って円弧状に形成されたガイド面部と、バルブステムのばね付勢により上動した爪を噴射位置に拘束するように、ガイド面部の回転方向の終端に連続して上方へ向けて形成され、かつ上端に爪を当接させる当接面部を有する爪拘束溝とが形成されている。
【特許文献1】特開2004−188373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のエアゾール容器は、噴射ボタンを回転させる操作だけで、ガス抜き、手離し噴射或いは全量噴射を行わせるための連続噴射が可能になる。従って、収納液を使い切った後の残ガスを容易に排出できるという利点がある。しかしながら、このエアゾール容器は、この様な作用,効果を達成するために、上記した如き複雑なガイド溝や爪拘束溝を肩カバーに設けなくてはならず、煩雑な構造となる。また、噴射ボタンにも爪を形成しなければならないため、既存の噴射ボタンを使用することができないという不便もある。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、収納液使用後の残ガスの排出を容易に行うことができるとともに、構造が簡単で、既存のエアゾール容器,噴射ヘッドを使用することができるため、安価に製造でき、また、取り扱い操作も簡単なエアゾール式液噴出器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエアゾール式液噴出器は、エアゾール容器と、噴射ヘッドと、カバー枠とを備えている。
【0008】
エアゾール容器は、上面中央部より上方付勢状態で押し下げ可能にステムを突出し、ステムの押し込みにより内蔵吐出弁が開弁してガス圧により収納液をステムより噴出する如く構成した公知の噴出機構を備えたものが使用される。また、エアゾール容器は、カバー枠を嵌合係止させるために、上面中央部所定位置に環状突部を立設したものが好ましく使用できる。
【0009】
噴射ヘッドは合成樹脂等により形成したもので、エアゾール容器のステムに下端の導入口を嵌合させて押し下げ可能に装着し、側面又は上面に噴射口を開口し、内部に導入口から噴射口に到る流路を備えている。
【0010】
カバー枠は合成樹脂等により形成したもので、ステム周囲のエアゾール容器上に嵌合係止するとともに、中央窓孔より押し下げ可能に噴射ヘッドを突出する如く構成したもので、本発明では、エアゾール容器の装飾性の付与、また、エアゾール容器上面のカシメ部分等を被覆することによる安全性の付与、などの従来のこの種のエアゾール式噴出器に於けるカバー枠の機能に加えて、ガス抜きの際に利用できる。カバー枠のエアゾール容器への嵌合係止は、例えば、エアゾール容器上面に立設した環状突部外周或いはエアゾール容器上端部外周に嵌合筒を嵌合させて、螺合或いは突条相互の乗り越え係合等の係止手段により係止させることができる。
【0011】
カバー枠は、その頂板の内周縁部を起伏可能な半環状の係止帯に形成し、この係止帯を起立させて噴射ヘッドに係止することにより、噴射ヘッドの押し下げ噴射状態を維持する如く構成している。換言すれば、噴射状態に押し下げた噴射ヘッドに、回動起立させた係止帯を係合して、噴射ヘッドの噴射状態を維持させる。係止帯による噴射ヘッドの係止形態としては、噴射ヘッドの頂部上に掛け渡す形態、或いは噴射ヘッドに係止帯を係止するための係止部を設ける形態を採ることができる。
【0012】
噴射ヘッドの頂部上に掛け渡す場合には、噴射状態に押し下げた噴射ヘッド頂部上に回動可能であり、しかもその状態で噴射ヘッドの上昇を押さえる如く当接するように、係止帯及び噴射ヘッドの形状,大きさ等を選択する。
【0013】
係止部は噴射ヘッドの側部に上向き段部,突起,凹部,係止孔などの形態で形成したもので、この場合噴射ヘッド上面に係止させる場合と比較して、係止帯の大きさが小さいものであっても充分機能するという利点があるが、反面既存の噴射ヘッドを使用できない不利もある。また、係止帯の外れをより確実に防止する上で、噴射ヘッド周壁との間に隙間を設けた係止片を立設するとよい。さらに、前記係止片を撓み変形可能に形成することにより、係止帯の噴射ヘッドへの取り付けが容易となる。
【0014】
係止帯の具体的形状は、上記要件を満たせば種々採用できるが、一般的には円弧帯状のものが好ましく使用でき、その他多角形状の一部の形状をなす帯状のものなどが使用できる。係止帯の両側基端部は薄肉のヒンジで回動可能に連結しても、別体に形成して回動可能に軸着する等してもよいが、コスト面等を考慮すれば薄肉ヒンジを介して一体に形成するのが好ましい。また、コスト面を更に考慮すれば、カバー枠と噴射ヘッドとを合成樹脂により一体に形成すると良い。この場合、それぞれをエアゾール容器に装着した状態の位置関係で連結すると良い。カバー枠と噴射ヘッドを一体成形することにより、開封明示機能を備えることができる。
【0015】
第1の手段として、上面中央部より上方付勢状態で押し下げ可能にステム5を突出したエアゾール容器Aと、ステム5に下端の導入口を嵌合させて押し下げ可能に装着するとともに、導入口に連通する噴射口12を備えた噴射ヘッドBと、ステム5周囲のエアゾール容器A上に嵌合係止するとともに、中央窓孔23より噴射ヘッドBを押し下げ可能に突出したカバー枠Cとを備え、該カバー枠Cの頂板21内周縁部を起伏可能な半環状の係止帯24に形成し、該係止帯24を回動起立させて噴射ヘッドBに係止することにより、噴射ヘッドBの押し下げ噴射状態を維持する如く構成した。
【0016】
第2の手段として、前記第1の手段に於いて、前記係止帯24を回動起立させて前記噴射ヘッドB上面に係止させることにより、前記噴射ヘッドBの押し下げ噴射状態を維持する如く構成した。
【0017】
第3の手段として、前記第1の手段に於いて、前記噴射ヘッドBの周壁11外面所定位置に形成した上向き段部13上に、周壁11と間隔をあけて係止片14を立設し、前記係止帯24を回動起立させて係止片14と周壁11外面との間に乗り越え係合させることにより、前記噴射ヘッドBの押し下げ噴射状態を維持する如く構成した。
【0018】
第4の手段として、前記第1手段乃至第3の手段のいずれかの手段に於いて、前記噴射ヘッドBとカバー枠Cとを、噴射ヘッドBがステム5に、カバー枠Cが環状突部4に、それぞれ嵌着される位置関係で一体に、且つ、切り離し可能に形成した。
【発明の効果】
【0019】
本発明のエアゾール式液噴射器は、カバー枠Cの係止帯24を起立させて噴射ヘッドBに係止することにより、噴射ヘッドBの押し下げ噴射状態を維持する如く構成しているため、そのガス抜き操作は極めて簡単であり、取り扱いが便利である。また、既存のエアゾール容器,噴射ヘッドを利用できるため、製造も容易であり、安価に得られる利点もある。また、カバー枠Cの構造も簡単であり、その点からも製造が容易で安価に得られる。
【0020】
前記係止帯24を回動起立させて前記噴射ヘッドB上面に係止させることにより、前記噴射ヘッドBの押し下げ噴射状態を維持する如く構成した場合には、既存のエアゾール容器A及び噴射ヘッドBを利用でき、また、係止帯24も噴射ヘッドB上に回動起立させるという極めて簡単な操作でガス抜きを行える。
【0021】
前記噴射ヘッドBの周壁11外面所定位置に形成した上向き段部13上に、周壁11と間隔をあけて係止片14を立設し、前記係止帯24を回動起立させて係止片14と周壁11外面との間に乗り越え係合させることにより、前記噴射ヘッドBの押し下げ噴射状態を維持する如く構成した場合には、係止帯24の係止が確実に行われてガス抜き操作中に外れる等の不都合がなく、また、係止帯24の起立高さが小さくて済むため、エアゾール容器Aや噴射ヘッドBの大きさや径等に制約が少なくなる。
【0022】
前記噴射ヘッドBとカバー枠Cとを、噴射ヘッドBがステム5に、カバー枠Cが環状突部4に、それぞれ嵌着される位置関係で一体に、且つ、切り離し可能に形成した場合には、噴射ヘッドBとカバー枠Cがエアゾール容器Aへの装着時にかならず揃っているため、組み付け操作を効率よく行える。また、カバー枠Cはエアゾール容器Aに抜け出しが困難に嵌着されており、使用に当たり、カバー枠Cから噴射ヘッドBを切り離して使用するため、未使用状態を容易に確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施例の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1乃至図3は本発明エアゾール式液噴出器の一例を示し、該エアゾール式液噴出器1は、エアゾール容器Aと、噴射ヘッドBと、カバー枠Cとを備えている。
【0025】
エアゾール容器Aは、胴部2の上部に肩部3を介して環状突部4を立設し、環状突部4内の上面中央部より上方付勢状態で押し下げ可能にステム5を突出し、該ステム5の押し込みにより内蔵吐出弁(図示せず)が開弁してガス圧によりエアゾール容器A内の収納液をステム5より噴出する如く構成した公知の噴出機構を備えたものである。また、環状突部4外周下部には下向き段部6を周設している。
【0026】
噴射ヘッドBは、合成樹脂により形成され、ステム5に嵌着してその押し下げ及び液の噴射を行うためのもので、ステム5に下端の導入口を密嵌させた縦筒(図示せず)を頂壁10裏面中央より垂設するとともに、頂壁10周縁部より周壁11を垂設した筒状をなし、縦筒上部に基端を開口したノズル筒(図示せず)を側方へ延設し、その先端を周壁11部分に噴射口12として開口し、ステム5からの液を縦筒及びノズル筒内を通して噴射口12から噴射する如く構成している。
【0027】
カバー枠Cも合成樹脂により形成され、前記環状突部4外周に嵌着した円筒状の嵌合筒20上端より内方へフランジ状の頂板21を延設している。嵌合筒20の内周下端部に突周設した係合突条22を環状突部4の下向き段部6下面に強制的に係合させて上方への抜け出しを防止している。更に、頂板21中央に設けた窓孔23より噴射ヘッドBを押し下げ可能に突出している。
【0028】
また、カバー枠Cは係止帯24を備えている。係止帯24は、カバー枠Cの頂板21後部の内周から所定幅の位置に切溝25を形成することにより円弧帯状に画成されたもので、左右の基端部分にはそれぞれ薄肉のヒンジ26を設けている。また、嵌合筒20の後部には上面を下方へ凹ませて、その部分から係止帯24に爪或いは指を掛けるための凹部27を形成している。この係止帯24の内側径は、噴射ヘッドBを噴射可能な位置まで押し下げた際に、噴射ヘッドBの上面に掛け渡し可能な内側径としている。
【0029】
エアゾール式液噴出器1を使用する場合には、図1の状態から噴射ヘッドBを押し下げると収納液が噴射口12から噴射する。収納液を使い切った際には、最初凹部27から爪を係止帯24に引っ掛けて回動起立させ、図2に示す如く、噴射可能な位置まで押し下げた噴射ヘッドB上面に係合させて噴射ヘッドBの下降状態を維持する。その結果、残ガスが噴射口12より外部へ排出される。
【0030】
図4乃至図6は他の例を示し、噴射ヘッドBに係止帯24を係止する係止部を設けた例である。係止部は、噴射ヘッドBの周壁11後部に設けた上向き段部13に、周壁11と間隔をあけて係止片14を立設して構成しており、係止帯24を回動起立させへて係止片14と周壁11外面との間に乗り越え係合させることにより、前記噴射ヘッドBの押し下げ噴射状態を維持する如く構成している。この場合の係止帯24は図1の例と同様形態ではあるが、その長さが短く、従って、回動起立時の高さが図1の例より小さくなる。
【0031】
また、本例の場合には易切断性の連結片30を介して、噴射ヘッドBとカバー枠Cとを一体に形成している。この場合、図4に示す如く、カバー枠Cは環状突部4に嵌着しており、また、噴射ヘッドBはその縦筒下端の導入口をステム5の上端に嵌着した状態である。その他の構成は図1の例と同様であるため、同符号を付して説明を省略する。
【0032】
この場合のエアゾール式液噴出器1は、例えば図4の或いは図5の状態から強制的に噴射ヘッドBを押し下げることにより連結片30の接続部分を切断して使用する。また、ガス抜きに当たり、同様に最初凹部27から爪を係止帯24に引っ掛けて回動起立させ、図6に示す如く、噴射可能な位置まで押し下げた噴射ヘッドBの係止片14を強制的に乗り越えて周壁11との間に係合させ、噴射ヘッドBの下降状態を維持する。その結果、残ガスが噴射口12より外部へ排出される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明噴出器の一部を切り欠いた側面図である。(実施例1)
【図2】本発明噴出器の斜め後方からの斜視図である。(実施例1)
【図3】本発明噴出器のガス抜き状態を示す斜視図である。(実施例1)
【図4】本発明噴出器の一部を切り欠いた側面図である。(実施例2)
【図5】本発明噴出器の斜め後方からの斜視図である。(実施例2)
【図6】本発明噴出器のガス抜き状態を示す斜視図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0034】
A…エアゾール容器,4…環状突部,5…ステム,
B…噴射ヘッド,12…噴射口,13…上向き段部,14…係止片,
C…カバー枠,20…嵌合筒,21…頂板,23…窓孔,24…係止帯,

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面中央部より上方付勢状態で押し下げ可能にステム5を突出したエアゾール容器Aと、ステム5に下端の導入口を嵌合させて押し下げ可能に装着するとともに、導入口に連通する噴射口12を備えた噴射ヘッドBと、ステム5周囲のエアゾール容器A上に嵌合係止するとともに、中央窓孔23より噴射ヘッドBを押し下げ可能に突出したカバー枠Cとを備え、該カバー枠Cの頂板21内周縁部を起伏可能な半環状の係止帯24に形成し、該係止帯24を回動起立させて噴射ヘッドBに係止することにより、噴射ヘッドBの押し下げ噴射状態を維持する如く構成したことを特徴とするエアゾール式液噴出器。
【請求項2】
前記係止帯24を回動起立させて前記噴射ヘッドB上面に係止させることにより、前記噴射ヘッドBの押し下げ噴射状態を維持する如く構成してなる請求項1記載のエアゾール式液噴出器。
【請求項3】
前記噴射ヘッドBの周壁11外面所定位置に形成した上向き段部13上に、周壁11と間隔をあけて係止片14を立設し、前記係止帯24を回動起立させて係止片14と周壁11外面との間に乗り越え係合させることにより、前記噴射ヘッドBの押し下げ噴射状態を維持する如く構成してなる請求項1に記載のエアゾール式液噴出器。
【請求項4】
前記噴射ヘッドBとカバー枠Cとを、噴射ヘッドBがステム5に、カバー枠Cが環状突部4に、それぞれ嵌着される位置関係で一体に、且つ、切り離し可能に形成してなる請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のエアゾール式液噴出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−168860(P2007−168860A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369417(P2005−369417)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】