説明

エアゾール組成物及びそれを含むエアゾール製品

【課題】ストッキングを着用したままスキンケアができるエアゾール組成物及びそれを含むエアゾール製品の提供。
【解決手段】本発明のエアゾール組成物は、スキンケア剤原液と噴射剤とを含み、前記スキンケア剤原液は水、界面活性剤、及び保湿剤とを含むエアゾール組成物であって、ストッキングに覆われた皮膚への塗布に用いるものである。また、本発明のエアゾール製品は、本発明のエアゾール組成物がエアゾール容器に充填されているエアゾール製品であって、ストッキングに覆われた皮膚への塗布に用いるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール組成物及びそれを含むエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚のうるおいや滑らかさなどには、皮膚角質層に保持された水分が、大きな役割を果たしている。この角質層の水分保持は通常天然保湿因子(NMF)と皮脂膜とによってコントロールされている。しかし、角質層の水分保持機能は、老化や外界からの刺激などで容易に低下する。特に、空気が乾燥する冬場には、肌がかさかさするなどいわゆる乾燥肌の状態が生じ、不快感を覚えることがある。美容のためのスキンケアの観点からも、このような状態を放置することは好ましくない。
【0003】
従来、皮膚の保湿などのスキンケアを目的とした、化粧品や化粧水などのスキンケア剤は、様々な種類のものが様々な形態で開発されている(例えば、特許文献1、2)。また、スキンケアを目的とした繊維製品の開発も、同様に多く行われている。例えば、アミノ酸組成としてセリンを付着させたスキンケア繊維製品(特許文献3)やアルギニンを付着させたスキンケア繊維製品(特許文献4)が開発されている。
【特許文献1】特開2007−514030
【特許文献2】特開2003−342116
【特許文献3】特許第2992802号
【特許文献4】特許第3858143号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスキンケア剤は、肌の上にスキンケア剤を直接塗布させることにより保湿効果を発揮するものである。そのため、脱衣しなければ使用することができず、特に職場や外出先などで、ストッキングを着用したまま簡単に使用することはできない。また、従来のスキンケア繊維製品は、着用しても保湿などのスキンケア効果を実感するには数日から数週間の長期間を要するため、ストッキング着用時に、特に職場や外出先などで肌の乾燥などが気になったときには即効性がない。とりわけ、冬場は乾燥肌が生じやすく、ストッキングを着用したままの保湿などのスキンケアの必要性は高い。
【0005】
そこで、本発明は、ストッキングを着用したままスキンケアができるエアゾール組成物及びそれを含むエアゾール製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエアゾール組成物は、スキンケア剤原液と噴射剤とを含むものであって、前記スキンケア剤原液は、水、界面活性剤、及び保湿剤を含み、ストッキングに覆われた皮膚への塗布に用いるエアゾール組成物である。
【0007】
本発明のエアゾール製品は、本発明のエアゾール組成物がエアゾール容器に充填されているものであって、ストッキングに覆われた皮膚への塗布に用いるエアゾール製品である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、例えば、ストッキングを着用したまま使用しても外観を損ねることがなく、簡便にスキンケアができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ストッキング着用時におけるストッキングに覆われた皮膚のスキンケアには様々な問題がある。例えば、従来のスキンケア剤を使用する場合には脱衣が必要となり、職場や外出先などでは容易ではない。また、例えば、従来のスキンケア繊維製品では効果が発揮されるまで数週間を必要とするため、即効性が無い。これらの問題は、乾燥肌を生じやすい冬場には、さらに重大となる。
【0010】
本発明は、水、界面活性剤及び保湿剤を含むスキンケア剤であれば、ストッキングを容易に透過(浸透)して皮膚に到達可能であり、さらに、ストッキングの上から使用することで、皮膚のうるおい(保湿効果)が、直接皮膚に使用するよりも長期間維持されるという知見に基づく。
【0011】
また、本発明は、スキンケア剤がミスト(霧)状又はムース(泡)状であれば、ストッキングの上からスキンケア剤を塗布しても、美観や外観などの見た目を損ねることなく、塗布時の冷却感やべたつき感を低減できるという知見に基づく。
【0012】
さらに、本発明は、ストッキングの上からスキンケア剤を使用すると、スキンケアと同時に、好ましくは、静電気の帯電防止若しくは除電ができるという知見に基づく。
【0013】
本発明のエアゾール組成物は、スキンケア剤原液と噴射剤とを含み、前記スキンケア剤原液は、水、界面活性剤、及び保湿剤を含み、ストッキングに覆われた皮膚への塗布に用いるエアゾール組成物である。
【0014】
まず、スキンケア剤原液の各成分について説明する。本発明においてスキンケア剤原液とは、本発明のエアゾール組成物に含まれるスキンケア剤であって、水、界面活性剤、及び保湿剤を含む。スキンケア剤原液は、さらに、その他のスキンケア成分などを含んでもよい。
【0015】
(水)
スキンケア剤原液における水は、ストッキング生地の繊維間及び皮膚の角質層に水分を補給するための重要な成分である。本発明において使用する水は、特に制限されず、例えば、精製水、イオン交換水、蒸留水、及びその他の当該分野で通常用いられる水などが挙げられる。スキンケア剤原液における水の含有量は、保湿効果及びその即効性の観点から、例えば30重量%以上であり、好ましくは50重量%以上である。
【0016】
(界面活性剤)
スキンケア剤原液における界面活性剤は、皮膚刺激が少なく安全性が高いものであれば特に限定されないが、エアゾール組成物として使用できるものが好ましい。例えば、非イオン界面活性剤、アニオン(陰イオン)界面活性剤、カチオン(陽イオン)界面活性剤、及び両性界面活性剤などが挙げられる。非イオン界面活性剤としては、例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレン水素添加ステロール、及びポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンステアリルエーテルなど)、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(Na,K,アンモニウム塩など)、C12〜C20のアルキルエーテルカルボン酸塩、C12〜C20高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩(例えばスルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウムなど)、C12〜C20のアルキルリン酸塩、C12〜C20のアルキル硫酸塩、アシルアミノ酸塩、C12〜C20の高級アルコール硫酸エステル塩などが挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウムなどのアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインなどのアミドベタイン型両性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの酢酸ベタイン型両性界面活性剤、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウムなどのイミダゾリン型両性界面活性剤などが挙げられる。本発明に用いる界面活性剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。スキンケア剤原液における界面活性剤の含有量は、スキンケア剤成分の混合及びスキンケア剤の繊維への浸透効果の点から、例えば0.01〜10重量%であって、好ましくは0.5〜2重量%である。
【0017】
スキンケア剤原液における界面活性剤は、ストッキングへ水や保湿剤などを浸透させる機能を有することが好ましい。ストッキングは、主に合成繊維を編成して製造される。一般的に合成繊維は濡れ性に乏しく水を接触させても表面で弾いてしまい、水分がストッキングの繊維間、ストッキングの繊維と皮膚の間及び皮膚の角質層に到達することが妨げられる。界面活性剤は、好ましくは、スキンケア剤の表面張力を下げるように作用して、ストッキングの繊維の濡れ性を向上させ、ストッキングの繊維間、ストッキングの繊維と皮膚の間及び皮膚の角質層に水分などが補給されるようにする。
【0018】
噴射されるエアゾール組成物(以下、エアゾール噴射物ともいう)をミスト状(霧状)とする場合には、界面活性剤としては、HLB(Hydrophilic−Lipophilic Balance)値が8未満のものが好ましい。スキンケア剤原液が油中水(W/O)乳化となり、霧状で噴霧でき、広い範囲に噴射するのに有効であるからである。また、エアゾール噴射物をムース状(泡状)とする場合には、界面活性剤としては、HLB値が8以上のものが好ましい。スキンケア剤原液が水中油(O/W)乳化となり、泡状で噴射され、手に取って使用することができ、飛び散りも抑制できるからである。
【0019】
(保湿剤)
スキンケア剤原液における保湿剤は、皮膚刺激が少なく安全性が高い従来公知のものを使用できる。本発明におけるスキンケア剤原液は、保湿剤として少なくとも油剤を含むことが好ましい。保湿剤は、油剤に加えて多価アルコールを含んでもよい。これらの組み合わせは、保湿性能や安全性において化粧品や化粧水などで実績があるからである。油剤は水分の蒸散を抑制する成分として多用されており、また、多価アルコールは角質層に浸透して水分を保持する成分として多くの化粧品などに使用され、安全性も実証されている。
【0020】
スキンケア剤原液に含まれる油剤は、皮膚の水分の蒸散を防ぎ保湿効果があるものを使用できるが、そのなかでも、皮膚を滑らかにするエモリント効果を有するものが好ましい。油剤としては、例えば、アボガド油、つばき油、月見草油、タートル油、マカデミアナッツ油などの液状油脂;カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂などの固体油脂;ミツロウ、綿ロウ、鯨ロウ、ラノリンなどのロウ類;流動パラフィン、スクワレン、プリスタン、パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素油;ラウリン酸、ミリスチン酸などの高級脂肪酸(例えばC8〜C24程度);合成エステル油;鎖状ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなど)、環状ポリシロキサン(デカメチルポリシロキサンなど)、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴムなどのシリコーン、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)メチルポリシロキサン共重合体などのポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。これらの中では、アボガド油、つばき油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油などの液状油脂、流動パラフィン、スクワレン、パラフィン、ワセリンなどの炭化水素油、ポリエーテル変性シリコーンなど常温で液状のものが好ましい。本発明に用いる油剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
スキンケア剤原液における油剤の含有量は、保湿効果の点から、例えば、0.1重量%以上であり、0.5重量%以上が好ましく、見た目などの外観やべたつき感などの点から、例えば、50重量%以下であり、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がさらに好ましい。従って、スキンケア剤原液における油剤の含有量は、例えば、0.1〜50重量%であり、0.1〜30重量%が好ましく、0.1〜20重量%がさらに好ましい。また、エアゾール噴射物が霧状の場合、スキンケア剤原液における油剤の含有量は、冷却感(冷たさ)の抑制などの点から、例えば、20重量%以下であり、15重量%以下が好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。従って、エアゾール噴射物が霧状の場合、スキンケア剤原液における油剤の含有量は、例えば、0.1〜20重量%であり、0.1〜15重量%が好ましく、0.1〜10重量%がさらに好ましい。
【0022】
多価アルコールとしては、皮膚刺激が少なく安全性が高いものであれば特に限定されず、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコールなどを幅広く使用できる。本発明に用いる多価アルコールは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。多価アルコールのスキンケア剤原液における含有量は、水分保持及びべたつき感の低減の点から、例えば、0.1〜20重量%であり、好ましくは2〜5重量%である。
【0023】
スキンケア剤原液に用いられる油剤及び多価アルコール以外の保湿剤の成分としては、天然保湿因子(NMF)の構成要素であるアミノ酸・ピロリドンカルボン酸・乳酸、真皮層の保湿にかかわりの深いヒアルロン酸・コンドロイチン硫酸などのムコ多糖葵質、アロエなどの植物から抽出される成分、可溶性コラーゲン・コラスチン・ケラチンなどのタンパク質加水分解物、牛胎盤エキスより抽出するプラセンターエキスや哺乳動物の胃粘膜・唾液腺で生成・分泌される糖タンパク質であるムチン、カニやエビの殻を主原料とするキチン・キトサン・ビフィズス菌代謝物・酵母抽出物などが挙げられる。スキンケア剤原液における保湿剤の全体としての含有量は、好ましくは0.1重量%〜50重量%であり、さらに好ましくは0.5重量%〜20重量%である。
【0024】
(その他のスキンケア成分)
本発明におけるスキンケア剤原液には、上記に記載した成分以外の1種又は2種以上の他のスキンケア用成分を配合することができる。例えば、モモ葉エキス、ゆずエキス、ハマメリスエキス、アスナロエキス、アロエエキス、オウバクエキスなどの植物エキス、天然セラミドや擬似セラミドなどのセラミド類、コラーゲン、ヒアルロン酸塩、アミノ酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸などのスキンケア用成分を本発明の効果を損なわない限度において配合することができる。また、低級アルコールも界面活性剤と同様に表面張力を下げる効果があり、浸透剤として低級アルコールを用いることもできる。低級アルコールの種類は特に限定されるものではないが、炭素数1〜3の低級アルコールが好ましく、化粧品で多く使用されるエタノール、イソプロパノールを使用することがさらに好ましい。また、低級アルコールの含有量は特に限定されるものではないが、例えば、スキンケア剤原液に対して、70重量%以下であり、好ましくは50重量%以下である。
【0025】
スキンケア剤原液の一実施形態としては、水を30〜99.89重量%、界面活性剤を0.01〜10重量%、保湿剤を0.1〜50重量%含有するものが挙げられる。ここで、前記保湿剤が油剤及び多価アルコールを含む場合、スキンケア剤原液における含有量としては、例えば、それぞれ、0.1〜30重量%及び0.1〜20重量%である。
【0026】
本発明におけるスキンケア剤原液の製造方法は特に限定されないが、例えば、水に界面活性剤を添加して溶解したのち、保湿剤を添加することにより調製できる。
【0027】
(噴射剤)
エアゾール組成物における噴射剤としては、公知のエアゾール用噴射剤を使用することができる。例えば、1種又は2種以上の、炭酸ガス、窒素、亜酸化窒素、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、フロンガス、圧縮空気などを使用することができる。エアゾール組成物における噴射剤の配合割合(重量比)により、エアゾール噴射物を霧状又は泡状に調整できる。エアゾール噴射物を霧状とする場合のスキンケア剤原液と噴射剤の配合割合は、塗布量、見た目や冷却感(冷たさ)の抑制などの点から、30:70〜80:20が好ましく、より好ましくは40:60〜60:40である。また、エアゾール噴射物を泡状にする場合は、噴射剤はエアゾール組成物に対して、冷却感(冷たさ)の抑制の点から40重量%以下が好ましく、発泡の点から4重量%以上が好ましい。従って、エアゾール噴射物を泡状にする場合、スキンケア剤原液と噴射剤の割合は、例えば、60:40〜96:4が好ましい。
【0028】
(任意成分)
本発明におけるエアゾール組成物は、上記のスキンケア剤原液及び噴射剤に加え、化粧料又は皮膚外用剤の組成に用いる他の成分、例えば、抗菌剤、紫外線吸収剤、美白剤、鎮痛剤、ひきしめ剤、防腐剤、pH調整剤などを含むことができる。
【0029】
本発明におけるエアゾール組成物の一実施形態としては、水を30〜99.89重量%、界面活性剤を0.01〜10重量%、保湿剤を0.1〜50重量%含有するスキンケア剤原液と噴射剤とを含み、スキンケア剤原液と噴射剤との配合割合(重量比)が30:70〜80:20(噴射物が霧状の場合)又は60:40〜96:4(噴射物が泡状の場合)の範囲にあるものが挙げられる。
【0030】
(エアゾール製品)
本発明のエアゾール製品は、本発明のエアゾール組成物がエアゾール容器に充填されているものであって、ストッキングを着用したままストッキングに覆われた皮膚の保湿などのスキンケアに用いられるものである。本発明のエアゾール製品は、例えば、保湿スプレー、皮膚加湿スプレー、スキンケア用スプレーなどの形態を含む。さらに、本発明において、後述のとおり、ストッキングは、パンティストッキング、タイツ、ガーターストッキング、オーバーニー、ハイソックス、ソックスなどの靴下類を含むから、本発明のエアゾール製品は、例えば、ストッキング用保湿スプレー、靴下用保湿スプレーなどの形態を含みうる。
【0031】
エアゾール容器としては特に限定はなく、例えば通常エアゾール用耐圧容器として用いられる金属、ガラス、合成樹脂等の円筒容器等が挙げられ、好ましくはアルミ缶やブリキ缶などの金属缶が挙げられる。
【0032】
本発明におけるエアゾール製品は、上述のとおりエアゾール組成物におけるスキンケア剤原液と噴射剤の配合割合によって、エアゾール噴射物を霧状又は泡状に調整できる。
【0033】
本発明のエアゾール製品の製造方法は特に限定されず、スキンケア剤原液と噴射剤をエアゾール容器に充填すればよい。エアゾール容器に充填する方法も特に限定されず、当該分野で通常用いられる方法であればよく、例えばスキンケア剤原液をエアゾール容器に充填した後、エアゾールバルブをクリンチし、バルブ先端より噴射剤を充填する方法などが挙げられる。
【0034】
本発明のエアゾール製品は、ストッキングを着用したまま、ストッキングに覆われた脚部や足部などの保湿などのスキンケアに使用することができる。本発明のエアゾール製品を、ストッキングを着用したままの保湿などのスキンケアに使用する方法は以下のとおりである。エアゾール噴射物が霧状のエアゾール製品である場合には、着用したストッキングの上から肌に向けて直接スキンケア剤を噴射することができる。細かい霧状のスキンケア剤が広範囲に噴射されるため、一様に適量を付着させることができる。また、泡状である場合には、同様にストッキングの上に噴射して、手で塗り伸ばすことができ、又は、一度手にとってストッキングを着用した肌に塗り伸ばすこともできる。この場合にも、泡の作用により、スキンケア剤を薄く塗り伸ばすことができ、一様に適量を付着させることができる。本発明のエアゾール製品は、このようにスキンケア剤を一様に適量付着させることが可能であるため、むら付きによって見た目を害することはなく、冷たさやべたつき感などの不快感も抑制できる。
【0035】
本発明におけるストッキングとは、形状を問わず、パンティストッキング、タイツ、ガーターストッキング、オーバーニー、ハイソックス、ソックスなどを含む靴下類をいい、スパッツなどの脚部に密着するパンツ類も含みうる。ストッキングの素材は、例えば、ナイロン、ポリウレタンなどの合成繊維や、再生繊維、天然繊維、またはこれらを混合したものであってよい。ストッキングの脚部を覆う主要部分の生地は、厚みの増加にともなう保持される水分(スキンケア剤)の増加による冷たさやべたつき感を抑制する点から、シングルニットで構成されることが好ましい。また、ストッキング生地の糸(フィラメントヤーン、スパンヤーンを含む)の太さは、例えば、5〜210デニール(D)であり、好ましくは10〜140Dであり、さらに好ましくは、10〜70Dである。具体的には、例えば、パンティストッキングとしては、例えば15Dポリウレタン糸に10Dのナイロン糸をカバーしたシングルカバードヤーン(SCY)を用いたSCYゾッキタイプ、30Dポリウレタン糸に7Dのナイロン糸をカバーしたダブルカバードヤーン(DCY)を用いたDCYゾッキタイプ、20Dポリウレタン糸に12Dのナイロン糸をカバーしたSCYと12Dのナイロン糸を交編したSCY交編タイプ、20Dポリウレタン糸に10Dのナイロン糸をカバーしたDCYと20Dのナイロン糸を交編したDCY交編タイプ、及びポリウレタン糸を使用せずに20Dウーリーナイロン糸のみを使用したウーリータイプなどの市販のストッキングが挙げられる。
【0036】
また、本発明のエアゾール製品は、上記と同様の生地素材からなる製品、例えば、インナー、下着などの衣類に適用してもよい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例について説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0038】
下記表1の各成分を同表の組成になるように配合して、実施例1〜5及び比較例1〜7を作製した。下記表1のスキンケア剤原液は、精製水に界面活性剤を添加して溶解したのち、保湿剤を添加することにより調製した。実施例1〜5及び比較例1〜5は、エアゾールスプレーであり、上記のとおり調製したスキンケア剤原液をエアゾール容器に充填した後、エアゾールバルブをクリンチし、バルブ先端より噴射剤を充填することにより作製した。なお、比較例6は、ポンプ式スプレーであり、上記のとおり調製したスキンケア剤原液をポンプ(Z−35−S01:三谷バルブ製、1プッシュ45mg吐出)にいれて作製した。また、比較例7は、スキンケア剤原液からなるクリーム状液体組成物であり、上記スキンケア剤原液の調製方法に従って作製した。下記表1に示すスキンケア剤原液における各成分の含有量の単位は、スキンケア剤原液に対する重量%であり、噴射剤の各成分については、噴射剤に対する重量%である。また、スキンケア剤原液と噴射剤の配合割合は重量比である。なお、下記表2には、表1の界面活性剤と油剤についての詳細を示す。各成分については、以下のものを使用した。ペンタイソステアリン酸デカグリセリル(日光ケミカルズ製、商品名:ニッコールDecaglyn 5−IS)、POE(20)セチルエーテル(日光ケミカルズ製、商品名:ニッコールBC−20TX )、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウムトリエタノールアミン液(旭化成ケミカルズ製、商品名:アミノサーファクトACMT−L)、スクワラン(マルハ製、商品名:スクワラン)、メチルポリシロキサン(信越化学工業製、商品名:KF−96 350CS)、ミリスチン酸イソプロピル(花王製、商品名:エキセパールIPM)、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(信越化学工業製、商品名:KF−6011)、1、3ブチレングリコール(協和発酵ケミカル製、商品名:1,3ブチレングリコール)、エタノール(日本アルコール販売製、商品名:99度合成無変性アルコール)、1%ヒアルロン酸Na水溶液(キューピー製、商品名:ヒアルロンサンHA−LQ1)。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
下記各性能試験及び官能試験に用いたストッキングは、タイプはゾッキ、糸構造はSCYシングルカバードヤーン、ウレタン糸太さは20デニール、カバリング糸(ナイロン)太さは15デニール、ループ長は1.9mm、厚さは0.21mm、編目密度のウェールは18本/cm、コースは59本/cmである。
【0042】
(塗布量及び塗布時間の測定)
実施例1、2、4のエアゾールスプレー、比較例5のエアゾールスプレー、比較例6のポンプ式スプレー、及び比較例7のクリーム状液体組成物を試験試料とし、各試験試料のストッキングの上から均一に塗布するのに必要となるスキンケア剤の量と時間を下記の測定方法で測定して、塗り伸ばしやすさ(薄く均一な塗布のしやすさ)を評価した。その結果を下記表3に示す。
測定方法
長方形のストッキングの生地裏面(ストッキングの内側)を板状の人工皮膚(ビューラックス社製、バイオスキン頬20代)の表面に密着させて測定材料を作成した。8cm×15cmの大きさの生地全面にスキンケア剤を均一に塗り延ばすのに必要な塗布量と塗布時間を測定した。なお、各試験試料に1重量%の青色1号1%水溶液(ダイワ化成製 青色1号)を1重量%の精製水の代わりに配合し、生地全面に目視で色のむらがなくなる状態を均一に塗り伸ばせた状態と判断した。塗布方法は、想定される使用方法を考慮して、実施例1、4のエアゾールスプレー(霧状)及び比較例6のポンプ式スプレーは、生地から20cmの距離から直接噴射し、実施例2のエアゾールスプレー(泡状)、比較例5のエアゾールスプレー(泡状)、及び比較例7のクリーム状液体組成物は、一度手にとって生地の上から塗り伸ばした。なお、試験試料の塗布量は、噴射剤を含むものである。
【0043】
【表3】

【0044】
上記表3に示すとおり、実施例1、2、及び4のエアゾールスプレー(霧状)は短時間で均一に薄く塗り延ばすことができたが、比較例7のクリーム状液体組成物は塗り伸ばしにくく、比較例6のポンプ式スプレーは1プッシュの噴射時間が短く、噴射して均一に塗布するのに時間が掛かった。また、比較例ではいずれも、均一に塗布するために必要な量が多く、冷却感(冷たさ)やべたつきなどの不快感の原因となり得ることが分った。比較例5のエアゾールスプレー(泡状)においても泡密度が大きく発泡が小さいので、比較例6のポンプ式スプレーとほぼ同様の結果となった。以上の結果は、噴射剤を含むエアゾールスプレーによって霧状又は泡状にしたことと、界面活性剤を配合したこととが、ストッキングの上からスキンケア剤を適量かつ均一に塗布する効果を奏することを示した。また、泡密度が小さい方が、容易に薄く塗り伸ばせることも示された。
【0045】
(均一性と見た目)
測定方法
13cm×25.5cm、厚さ5mmの長方形の発泡スチロール板の中央に、8cm×15cmの長方形の穴をあけて作成した枠にストッキング生地をかぶせて試験材料とした。図1は、実施例4のエアゾールスプレー(霧状)と比較例7のクリーム状液体組成物との塗布の均一性の差を撮影した写真である。写真上側は白色、下側は黒色のストッキングからなる試験材料について比較を行ったものである。写真中、試験材料の左側には実施例4のエアゾールスプレーを霧状に噴射して均一に塗布し、試験材料の右側には前記実施例4のエアゾールスプレーと同量の比較例7のクリーム状液体組成物を均一になるよう手で塗り伸ばした。
結果
図1に示すとおり、噴射剤を含んでいる実施例4のエアゾールスプレーを噴射して塗布した場合には、均一で変色も少なく、見た目上使用に弊害はないことが確認できた。一方、噴射剤を含まない(エアゾールスプレーを用いない)比較例7のクリーム状液体組成物は均一に塗り伸ばすことは困難であり、部分的に白っぽくなっており、使用に耐えなかった。
【0046】
(べたつきの評価)
スキンケア剤によってストッキングと肌との間に粘着が生じると、べたつき感が生じ使用者に不快感を与える。実施例4のエアゾールスプレー(霧状)と比較例7のクリーム状液体組成物の粘着性を下記測定方法で測定したストッキングと人工皮膚との剥離抵抗力によって評価した。その結果を下記表4に示す。
測定方法
試験材料は以下のとおり作製した。水平の板上に直径50mm、厚さ5mmの人工皮膚(ビューラックス社製、バイオスキン頬20代)を両面テープで固定し、上記ストッキングの生地を150mm×70mmの長方形に裁断したものを人工皮膚とストッキング裏面とが接触する向きに人工皮膚上面に載置した。なお、人工皮膚とストッキングとの水平方向の相対位置は、上方から見て両者の図心が一致するようにした。次に、1gの実施例4のエアゾールスプレー(噴射剤を含む)及び比較例7のクリーム状液体組成物を上記の試験材料に均一に塗布し、ストッキングの上から1Nの荷重を10秒間付加してストッキングを人工皮膚に密着させた。塗布方法は上記の塗布量及び塗布時間の測定と同様である。次にインストロン社製材料試験機(5569型)を用いて、ストッキングの一方の短片を300mm/minの速度で垂直上方に引き上げるときに生じる抵抗力を測定した。なお、織物引張試験用のつかみ具を用いて、試験中にストッキングにしわが生じないようにした。下記表4の結果は、ストッキングが人工皮膚から剥離する位置が、円形の人工皮膚の中心に達する前10mmから、中心通過後10mmまでの20mmの区間の抵抗力の平均値で表したものである。スキンケア剤を塗布しないこと以外は、同様の方法および条件により測定したものをブランクとする。
【0047】
【表4】

【0048】
上記表4に示されたように、実施例4のエアゾールスプレーは比較例7のクリーム状液体組成物と比較して粘着性が極めて小さく、使用者に対してべたつきによる不快感を与えないことが分った。即ち、噴射剤によりスプレーして塗布するとべたつきを抑える効果があることが示された。
【0049】
(保湿効果の測定)
実施例3、5のエアゾールスプレー及び比較例1、2のエアゾールスプレーを20代女性の脚の太股部に20cm離れた所から1秒間噴射(肌に直接噴射とストッキングの上から噴射)して、皮表角層水分量測定装置SKICON−200EX(アイ・ビィ・エス(株)製)で各時間における電導度を測定した。この時、肌に直接噴射したものはその上からの3点の平均、ストッキングの上から噴射したものはストッキングをめくって、肌の上から3点の平均を測定した。その結果を下記表5に示す。なお、電導度が高いほど水分量が多いことを表す。
【0050】
【表5】

【0051】
上記表5に示すとおり、実施例3及び5のエアゾールスプレーをストッキングの上から噴射した場合は、120分後でも噴射の直前より電導度が20μs以上高いが、肌に直接噴射した場合は、120分後では、噴射の直前の電導度とほとんど差がなかった。一方、比較例1のエアゾールスプレーは、保湿剤を含んでないため、ストッキングの上から又は肌に直接噴射しても保湿効果が得られなかった。また、保湿剤として油剤を含んでない比較例2のエアゾールスプレーも、ストッキングの上から又は肌に直接噴射してもほとんど保湿の効果が得られなかった。以上の結果は、ストッキングの上から塗布することと、保湿剤として少なくとも油剤を含むこととにより、皮膚の保湿及び保湿状態の持続に相乗効果が奏されることを示した。
【0052】
(透湿度試験)
水分蒸散量の測定により皮膚からの水分の蒸散を抑制する効果を図2の概略図に示す装置を用いて検証した。ろ紙(東洋濾紙社製、定性ろ紙No.2)に上記ストッキングを履かせたものをモデル基質3とし、実施例1及び比較例1のエアゾールスプレーの噴射物4をモデル基質3に噴射、塗布して(試料塗布量、0.011g/cm2)30分間自然乾燥させたものを、水1を含む試験容器2(繊維製品の透湿度試験方法 JISL1099 4.1.1(e)に規定される透湿カップ)に取り付けた(図2)。この試験容器2を試験環境(温度30℃、相対湿度35%RH)に放置し、測定時間ごとに試験容器の重量を測定し、水の蒸散5による重量減少を水分蒸散量として評価した。ブランクとして、噴射物4を噴射、塗布しないモデル基質3についても同様に評価した。その結果を下記表6に示す。
【0053】
【表6】

【0054】
上記表6に示すとおり、比較例1のエアゾールスプレーを用いた場合はブランクと比較してほとんど差が認められないのに対し、実施例1のエアゾールスプレーを用いた場合の水分蒸散量は比較例1のエアゾールスプレーを用いた場合の水分蒸散量の62〜70%であり、実施例1エアゾールスプレーは水分の蒸散を抑制できることが確認された。以上の結果より、少なくとも、油剤を含む保湿剤が皮膚からの水分の蒸散を抑制する効果を奏することが示された。
【0055】
以上の保湿効果及び透湿度の測定結果から、ストッキングと油剤によって皮膚の保湿効果が高まる要因として、油剤が皮膚の水分の蒸散を抑制すること、および、ストッキングの繊維間に保持された水分が徐々に皮膚に供給されることが考えられる。
【0056】
(表面温度の測定)
実施例1のエアゾールスプレーと比較例3、4のエアゾールスプレーを用いて、20代女性に上記ストッキングを履いてもらい、20cm離れた所から1秒間噴射して、サーモグラフィ(AGEMA社製THERMO VISION 570)を使用して表面温度を測定した。その結果を下記表7に示す。
【0057】
【表7】

【0058】
上記表7に示すとおり、実施例1のエアゾールスプレーを噴射塗布した場合と比較例3、4のエアゾールスプレーを噴射塗布した場合を比較すると全ての測定時点で温度差が1℃以上あることが分った。また、実施例1のエアゾールスプレーを噴射塗布した場合は240s後には温度が噴射塗布する前の元の温度に戻るのに対して、比較例3、4のエアゾールスプレーを噴射塗布した場合は300s以上経過しても温度が噴射塗布する前の元の温度に比べ2℃下がったままである。以上の結果より、霧状噴射の場合に、不快な冷却感(冷たさ)を与えないためには油剤を20重量%以下にした方が好ましいことが分った。
【0059】
(官能試験)
上記性能試験の結果を踏まえて、官能的にどのような評価が得られるのかを確認するため、下記条件で官能評価を行った。その結果を下記表8に示す。
測定方法
被験者(女性18〜25才までの20名)にストッキングを履いてもらい、ふくらはぎに実施例1〜4及び比較例1、3、4のエアゾールスプレー、比較例6のポンプ式スプレー、並びに比較例7のクリーム状液体組成物を各0.5g塗布したときの官能試験を行った。なお実施例1、3と比較例1、3、4のエアゾールスプレーは霧状に噴射し塗布した。実施例2のエアゾールスプレーは、泡状に噴射し手で塗り伸ばした。比較例6のポンプ式スプレーは、直接噴射によりストッキングに付着したスキンケア剤をさらに指で塗り伸ばした。比較例7のクリーム状液体組成物は、指にとって塗り伸ばした。なお、官能試験は、気温20〜22℃、相対湿度30〜35%RHの恒温恒湿環境下において行なった。
評価基準:各項目で点数をつけて 平均点が1.1点以上を◎、0.1以上1.0以下を○、−1.0以上0点以下を△、−1.1以下を×として評価した。
見た目・・気にならない(+2)、あまり気にならない(+1)、どちらでもない(0)、やや気になる(−1)、気になる(−2)
うるおい感・・良い(+2)、やや良い(+1)、どちらでもない(0)、やや悪い(−1)、悪い (−2)
なお、“良い”の評価はしっとりとすることにより、心地よく感じることをいい、“悪い”の評価はべたつきにより、不快に感じることをいう。
冷たさ(冷却感の抑制)・・良い(+2)、やや良い(+1)、どちらでもない(0)、やや悪い(−1)、悪い(−2)
満足度(使用後の総合評価)・・良い(+2)、やや良い(+1)、どちらでもない(0)、やや悪い(−1)、悪い(−2)
【0060】
【表8】

【0061】
上記表8に示すとおり、実施例1〜4のエアゾールスプレーについては全ての項目について◎又は○の官能評価が得られた。
【0062】
見た目の評価
比較例6のポンプ式スプレー及び比較例7のクリーム状液体組成物は、噴射剤を使用した霧状又は泡状噴射による塗布ではないため、均一に塗布することが困難であり見た目が悪かった。比較例3及び4のエアゾールスプレーは、噴射剤を使用した霧状噴射の塗布ではあるが、見た目が悪かった。比較例3及び4のエアゾールスプレーはともに水が含まれておらず、それぞれ、エタノール及びスクワランの含有量が高いためである(表1参照)。この理由は、エタノールの含有量が高い(比較例3)場合は多量のエタノールによる大きな浸透作用により比較的にスクワラン(油剤)を多く含むスキンケア剤が皮膚とストッキングの間で、圧のかかり方で厚さが変化する、膜を作るためであると考えられる。また、スクワラン(油剤)の含有量が高い(比較例4)場合はストッキングに付着するスキンケア剤の厚みを薄くできないためであると考えられる。一方、スキンケア剤原液に水を含み、噴射剤により霧状又は泡状に噴射し塗布した実施例1〜4のエアゾールスプレーについての見た目の評価は良好であった。
【0063】
うるおい感の評価
比較例1のエアゾールスプレーは、界面活性剤を含まないが、エタノールによって浸透する。しかし、保湿剤が含まれていないため、長時間うるおい感を維持できなかった。前述のとおり、比較例3のエアゾールスプレーは多量のエタノールにより浸透作用が大きく比較的多量の油剤が含まれていることから、皮膚に付着する油剤の量が多くなるため、べたつき感が強く、うるおいを感じる状況ではなかった。また、比較例4のエアゾールスプレーは、多量の油剤によるスキンケア剤の厚さが影響して、べたつき感が強く、うるおいを感じる状況ではなかった。以上により、ストッキングの上からスキンケア剤を使用する本発明において、スキンケア剤に含まれる水がうるおい感を与え、保湿剤がうるおい感を持続させる効果を有することが示された。また、噴射剤を有しない比較例7のクリーム状液体組成物はべたつき感が大きく、うるおいを感じられなかったが、噴射剤以外の組成は比較例7のクリーム状液体組成物と同じで、さらに噴射剤を有する実施例4のエアゾールスプレーのうるおい感は良好であった。なお、ポンプ式スプレーである比較例6は、初期の感触は良いものであるが、噴射剤を有しないので、1箇所に必要以上の量が塗布され、ストッキングの上から使用するスキンケア剤として満足できるものではなかった。これらの結果は、ストッキングの上からスキンケア剤を使用する本発明において、噴射剤により霧状又は泡状にスプレーし塗布することがべたつき感をなくし、うるおい感を与える効果を奏することを示している。
【0064】
塗布時の冷却感(冷たさ)の評価
スプレーでないクリーム状液体組成物の比較例7、ポンプ式スプレーの比較例6、及び、水を含まないエアゾールスプレーの比較例3、4は、塗布量が多すぎるか、又は、一部に固まるため、冷たく感じた。また、比較例3のエアゾールスプレーについては、エタノールの気化熱も影響していると考えられる。
【0065】
(静電気帯電防止試験)
JIS L 1094摩擦帯電減衰測定法により試験を行った。試験試料として実施例1〜3、及び比較例1、3のエアゾールスプレーをポリエステル繊維に2秒間噴射し、30分間乾燥させたものを使用した。ブランクは、スキンケア剤を塗布しないポリエステル繊維について同様の試験を行ったものである。乾燥条件は自然乾燥(温度20℃、相対湿度50%RH)である。その結果を下記表9に示す。
【0066】
【表9】

【0067】
上記表9に示すとおり、実施例1〜3のエアゾールスプレーを噴射塗布した場合はほとんど帯電していないが、比較例1、3のエアゾールスプレーを噴射塗布した場合はブランクに比べて帯電していることが分った。よって、ストッキングの上から水と界面活性剤と保湿剤とを含むスキンケア剤を塗布すると帯電防止効果を奏し、スキンケアに補助効果があることが分った。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、例えば、スキンケア用のエアゾール組成物及びそれを含むエアゾール製品に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、均一塗布性能の結果を表す写真である。
【図2】図2は、透湿度試験の概略図である。
【符号の説明】
【0070】
1・・水
2・・透湿カップ
3・・ろ紙とストッキングからなる試験材料
4・・噴射物
5・・水の蒸散

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール組成物であって、
スキンケア剤原液と噴射剤とを含み、
前記スキンケア剤原液が、水、界面活性剤及び保湿剤を含み、
ストッキングに覆われた皮膚への塗布に用いる、エアゾール組成物。
【請求項2】
前記保湿剤が、少なくとも油剤を含む、請求項1に記載のエアゾール組成物。
【請求項3】
前記スキンケア剤原液に対して、前記水を30重量%以上、前記界面活性剤を0.01〜10重量%、前記保湿剤を0.1〜50重量%含有する、請求項1又は2に記載のエアゾール組成物。
【請求項4】
エアゾール組成物がエアゾール容器に充填されているエアゾール製品であって、
前記エアゾール組成物が、請求項1から3のいずれかに記載のエアゾール組成物であり、
ストッキングに覆われた皮膚への塗布に用いる、エアゾール製品。
【請求項5】
エアゾール噴射物がミスト状(霧状)又はムース状(泡状)である、請求項4に記載のエアゾール製品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−13102(P2009−13102A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−175741(P2007−175741)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(393008821)日進化学株式会社 (16)
【出願人】(591023594)和歌山県 (62)
【出願人】(507226916)
【Fターム(参考)】