説明

エアゾール組成物

【課題】 製剤を塗布した直後から制汗効果を発現させ、かつ、その効果を持続させることにより、皮膚常在菌によって分解される汗や皮脂などの分泌物量を低減させ不快な体臭を抑制するエアゾール組成物を提供する。
【解決手段】 下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有することを特徴とするエアゾール組成物。
(A)成分:水溶性のアルミニウム塩
(B)成分:常温で液体の脂肪酸
(C)成分:ポリオール
(A)成分としては、例えば、クロルヒドロキシアルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム/ジルコニウム、硫酸アルミニウムアンモニウムから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール組成物に関し、更に詳しくは、制汗効果の発現が早く、かつ、その持続性にも優れたエアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、汗による肌のべたつき、不快感などの低減のために制汗デオドラント剤が用いられている。日本における高温多湿の気候からさっぱりとした使用感が好まれ、エアゾール型の制汗剤がその清涼感から広く用いられている。
【0003】
このようなエアゾール型制汗剤組成物には、通常、液化した揮発性噴射剤と、その中に分散している有効成分、また、これらの成分を肌上に付着させるための展着剤として油分が配合されている。その制汗機構は、収斂性アルミニウム化合物を用いることにより、その収斂作用で発汗を抑制している。
【0004】
一方、従来の制汗剤組成物等としては、例えば、粉体状の水溶性制汗有効成分、粉体、シリコーン、多価アルコール類を含有する原液および噴射剤とから成ることを特徴とする非水系粉末エアゾール型制汗剤組成物(例えば、本願出願人による特許文献1参照)や、皮膚化粧料制汗成分と、メントール及びメントール誘導体と、多価アルコールを含有してなることを特徴とする皮膚化粧料(例えば、本願出願人による特許文献2参照)、更に、A成分:水溶性のヒドロキシカルボン酸及び/又は水溶性のアルミニウム塩と、B成分:常温で液体の脂肪酸とを含有するデオドラント組成物(例えば、本願出願人による特許文献3参照)が知られている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2記載の非水系粉末エアゾール型制汗剤組成物や皮膚化粧料は、優れた制汗・防臭効果を有するものであるが、制汗・防臭効果の持続性が若干不十分である点に課題があり、また、上記特許文献3記載のデオドラント組成物は、今までにない制汗効果を有するものであるが、制汗効果の即効性が若干十分ではない点に課題があり、更に、制汗効果の即効性と持続性に優れたエアゾール型の制汗剤の出現が望まれているのが現状である。
【特許文献1】特開平11−246378号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2003−73248号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2004−300132号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、製剤を塗布した直後から制汗効果を発現させ、かつ、その効果を持続させることにより、皮膚常在菌によって分解される汗や皮脂などの分泌物量を低減させ不快な体臭を抑制するエアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記従来の課題等を解決するために、鋭意検討した結果、特定の制汗成分と、特定の脂肪酸、製剤を塗布した直後から制汗効果を発現させる特定成分とを少なくとも含有することにより、上記目的のエアゾール組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明のエアゾール組成物は、下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有することを特徴とする。
(A)成分:水溶性のアルミニウム塩
(B)成分:常温で液体の脂肪酸
(C)成分:ポリオール
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製剤を塗布した直後から制汗効果を発現させ、かつ、その効果を持続させることにより、皮膚常在菌によって分解される汗や皮脂などの分泌物量を低減させ不快な体臭を抑制するエアゾール組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明のエアゾール組成物は、水溶性のアルミニウム塩〔(A)成分〕と、常温で液体の脂肪酸〔(B)成分〕と、ポリオール〔(C)成分〕とを含有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明に用いる(A)成分は、水溶性のアルミニウム塩であることが必要である。
用いることができる水溶性のアルミニウム塩としては、例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、ブロモヒドロキシアルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム/ジルコニウム、硫酸アルミニウムアンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、特に、クロルヒドロキシアルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム/ジルコニウム、硫酸アルミニウムアンモニウムが刺激性が少ないという点から望ましい。
本発明において上記(A)成分は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
これらの(A)成分のうち、水溶性のアルミニウム塩を単独で又は併用で用いる場合、その含有量は、噴射剤を除くエアゾール組成物(原液組成物)全量に対して、5〜40質量%(以下、単に「%」という)とすることが好ましく、更に好ましくは、5〜30%とすることが望ましい。
この(A)成分の含有量が、5%未満であると、制汗効果を十分に発揮することができず、一方、40%を超えると、べたつき等の使用感触の低下、皮膚刺激等の懸念がある。
【0012】
本発明で用いる(B)成分は、常温で(25℃、以下同様)で液体の脂肪酸であることが必要である。
用いることができる常温で液体の脂肪酸としては、例えば、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。これらの中でも、ニオイの点などからイソステアリン酸が好ましい。
本発明において上記(B)成分は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
これらの(B)成分である常温で液体の脂肪酸の含有量は、噴射剤を除くエアゾール組成物(原液組成物)全量に対して、1〜10%とすることが好ましく、更に好ましくは、1〜7%とすることが望ましい。
この(B)成分の含有量が、1%未満であると、本発明の効果を発揮することができず、一方、10%を超えると、脂肪酸の皮膚への刺激が懸念される。
【0014】
本発明で用いる(C)成分は、ポリオールであることが必要である。
用いることができるポリオールとしては、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ソルビトール等の糖アルコール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000等の重量平均分子量が200〜10,000のポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらの中でも、安定性の点から、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール300等がより望ましい。
本発明において上記(C)成分は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
これらの(C)成分であるポリオールの含有量は、噴射剤を除くエアゾール組成物(原液組成物)全量に対して、0.01〜20%が好ましく、更に好ましくは、1〜5%とすることが望ましい。
この(C)成分の含有量が0.01%未満であると、制汗効果の発現を十分に早くすることが困難となる場合があり、一方、20%を越えると、べたつき等の使用感の低下となる。
【0016】
本発明において、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の他に、エアゾール成分となる噴射剤としては、例えば、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ネオペンタン等の炭化水素系ガス(LPG)、及び、ジメチルエーテル(DME)等の液化ガスなどを用いることができる。これらに加えて、炭酸ガス、窒素ガスを用いてもよい。上記の噴射剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を混合して使用することができる。
これらの噴射剤の含有量は、エアゾール容器の構造、エアゾル組成物の用途、使用部位などに異なるものであるが、原液組成物:噴射剤の配合比率としては、含有比(質量基準)で、0.1:99.9〜30:70とすることが好ましく、更に好ましくは、1:99〜30:70、特に好ましくは、1:99〜15:85とすることが望ましい。
【0017】
また、本発明のエアゾール組成物には、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の他に、本発明を損なわない範囲で、エアゾール組成物に常用されている各成分(任意成分)を適宜含有することができる。
本発明に用いることができる任意成分としては、例えば、水溶性ヒドロキシカルボン酸、油脂類、ワックス類、シリコーン類、酸化防止剤、有機粉体、無機粉体、界面活性剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、キレート剤、保湿剤、増粘剤、清涼剤、殺菌剤、抗炎症剤、アミノ酸、植物エキス、包接化合物等が挙げられる。
【0018】
具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、ナイロン末、ポリエチレン末、無水ケイ酸、シリコーンパウダー、セルロース粉体、タルク、カオリン、マイカ等の使用性向上粉体、多孔質マグネシアシリカ粉体、合成層状ピロケイ酸マグネシウム粉体、アルギン酸カルシウム粉体(2次凝集物)、アパタイト粉体等の消臭粉体、メチルパラベン、エチルパラベン、安息香酸ナトリウム、エタノール類等の防腐剤、ベントナイト、グリチルレチン酸ステアリル等の皮膚保護剤、グリセリン、ヒアルロン酸、尿素等の保湿剤、アロエエキス、ユーカリエキス、クワエキス、シラカバエキス等の植物抽出エキス、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等の粘度調整剤、ウロカニン酸、パラアミノ安息香酸、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤、トコフェノール等の抗酸化剤、顔料、香料等が挙げられる。
【0019】
このように構成される本発明のエアゾール組成物では、(A)成分である水溶性のアルミニウム塩で肌を収斂させ、制汗効果を発揮させ、(B)成分の水に難溶な常温で液体の脂肪酸の含有により、その脂肪酸が徐々に溶解することで、肌上で徐々に溶けてそのpH(酸性)を長期間維持でき、しかも、(C)成分のポリオールの含有により、(A)成分である水溶性のアルミニウム塩の皮膚上での水溶性を向上させるため、即効性がでることとなるため、制汗効果の発現が早く、かつ、その持続性にも優れたものとなる。従って、本発明では、製剤を塗布した直後から制汗効果を発現させ、かつ、その効果を持続させることにより、皮膚常在菌によって分解される汗や皮脂などの分泌物量を低減させ不快な体臭を抑制するエアゾール組成物が得られることとなる。
【実施例】
【0020】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、下記実施例等に限定されるものではない。
【0021】
〔実施例1〜9及び比較例1〜3〕
下記表1及び表2に示す組成により原液組成物を調製し、噴射剤として液化石油ガスを用いてエアゾール組成物(製剤)を調製した。
得られた各エアゾール組成物を用いて、下記試験方法により制汗効果の発現性の早さとその持続性について評価した。
これらの試験結果を下記表1及び表2に示す。
【0022】
<制汗効果の評価方法>
皮膚水分蒸散量(TEWL)測定装置(Tewameter TM210 CK electronic社製)を用いて測定を行った。
前腕内側部に2cm×2cmの枠を作り、皮膚から10cm離した位置から2秒間、上記枠の中に製剤をスプレー塗布した。25〜40歳の健常男性パネラー10名を高温条件(室温28℃以上)下で一定の発汗を示すまでおき、下記式で示されるそのときの無塗布部位の平均インピーダンス値に対する塗布部位の平均インピーダンス値で制汗効果を求め、10名の制汗効果(%)の平均を求め、その平均値を下記評価基準に従って評価した。
制汗効果(%)={100−(塗布部位の平均インピーダンス値/無塗布部位の平均インピーダンス値)}×100
<評価基準>
◎:60%以上
○:30%以上60%未満
△:10%以上30%未満
×:10%未満
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【0025】
上記表1及び表2の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1〜9は、本発明の範囲外となる比較例1〜3に較べて、制汗効果の発現が早く、かつ、その持続性にも優れたものとなることが判明した。
これに対して、本願発明の(A)成分、(B)成分及び(C)成分の何れか一つ以上含まないエアゾール組成物では、本発明の効果を発揮できないことが判明した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有することを特徴とするエアゾール組成物。
(A)成分:水溶性のアルミニウム塩
(B)成分:常温で液体の脂肪酸
(C)成分:ポリオール
【請求項2】
(A)成分が、クロルヒドロキシアルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム/ジルコニウム、硫酸アルミニウムアンモニウムから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のエアゾール組成物。


【公開番号】特開2006−298804(P2006−298804A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−121026(P2005−121026)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】