説明

エアゾール製品用の噴射部材およびそれを用いたエアゾール製品

【課題】環状凹部を備えたエアゾール容器に直接取り付けられる噴射部材であって、使用時は、外れるおそれが小さく、脱着時は、容易に取り外したり、取り付けたりすることができる噴射部材を提供する。
【解決手段】筒状の噴射部材本体13と、筒状の押ボタン14と、噴射部材本体13の両側面の下端に設けられた脱着機構とを備えているエアゾール製品用の噴射部材12。脱着機構15は、ヒンジ部25と、係合片29とから構成されている。係合片29は、ヒンジ部より上の押部27と、ヒンジ部より下の係合部28とからなる。押部27を半径方向内側に押すことにより、係合部28が半径方向外側に開き、エアゾール容器の被せ部11aと突起17aとの係合が一部外れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール製品用の噴射部材およびそれを用いたエアゾール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平9−301457号公報
【特許文献2】特開平11−105954号公報
【特許文献3】特開2002−179167号公報
【0003】
耐圧容器およびその開口部に取り付けられたエアゾールバルブからなるエアゾール容器は、そのエアゾール容器の環状凹部に噴射部材を取り付けてエアゾール製品として出荷される。
【0004】
このような噴射部材は、エアゾール容器に強固に取り付けられており、内容物がなくなった後も、エアゾール容器と噴射部材とは一緒にごみとして捨てられるのが一般である。近年、環境問題等の意識が高まる中、合成樹脂製の噴射部材と金属製のエアゾール容器とを分別して捨てる、そして、エアゾール容器を交換することによって噴射部材を再利用することが求められている。
【0005】
特許文献1には、エアゾール容器の肩部に雄ねじを形成し、バルブカバー(噴射部材)にその雄ねじと螺合する雌ネジを形成した機構が開示されている。このものは、バルブカバーを取り付けてエアゾール製品として使用する場合には、バルブカバーが外れるおそれがなく、また、使用後は、バルブカバーをエアゾール容器から容易に脱離することができる。
【0006】
特許文献2には、エアゾール容器の取付環に取付部材を取り付ける取付構造であって、取付部材とねじ嵌合する吐出部材を取り付けることによって、取付部材の挟持片と取付環の内側との係合が得られるものが開示されている。
さらに、特許文献3には、2本のエアゾール容器を連結した2液混合型エアゾール容器用噴射器であって、2本のエアゾール容器を連結する連結部材に噴射器が脱着可能に装着されているものが開示されている。噴射器は、側壁部に設けられた脱着操作面の係止穴が連結部材の側面に設けられた係止爪と係止して装着するように構成されており、脱着操作面の上側部分を指でつまむことにより、下側部分が外方に回動して係止穴が係止爪から外れ、連結部材と噴射器とを脱離することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の取り外し構造は、耐圧性のエアゾール容器の肩部に雄ねじを形成しなければならないため、その加工が困難であり、実用性に乏しい。また、特許文献3の脱着機構は、あくまでも合成樹脂製の連結部材と噴射器との脱着機構であり、エアゾール容器と連結部材との脱着はできない。
本発明は、耐圧容器を備えたエアゾール容器に直接取り付けられる噴射部材であって、使用時は、外れるおそれが小さく、脱着時は、容易に取り外したり、取り付けたりすることができる噴射部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエアゾール製品用の噴射部材は、エアゾール容器の環状凹部と環状に係合する環状突起を備えた噴射部材であって、前記環状凹部と環状突起とが係合した使用状態と、前記環状凹部および環状突起の係合が一部解除された脱着状態とを呈し、操作することによって切り替えることができる脱着機構を備えていることを特徴としている。
【0009】
このような噴射部材であって、下端が係止部と係合片とによって構成された円筒状の噴射部材本体と、押ボタンとからなり、前記係止部の内面に係合突起が形成されており、前記係合片の内面に突起が形成されており、前記係合突起と突起が環状突起を構成し、前記係合片が脱着機構を構成し、前記係合片を操作することにより、前記環状凹部と突起とを係合させた使用状態と、前記環状凹部と突起との係合を外した脱着状態とに切り替えることができるものが好ましい。
また、このような係合片として、半径内外方向に移動可能であるもの、上下方向に移動可能であるものが挙げられる。
さらに、係合片の突起が、係止部の係合突起よりも長いものが好ましい。
【0010】
本発明のエアゾール製品用の噴射部材の第2の態様は、エアゾール容器の環状凹部と環状に係合する環状突起を備えた噴射部材であって、前記環状凹部と環状突起との係合度が強い使用状態と、前記環状凹部と環状突起との係合度が弱い脱着状態とを呈し、操作することによって切り替えることができる脱着機構を備えていることを特徴としている。
【0011】
このような噴射部材であって、前記環状突起が下端に形成された円筒状の噴射部材本体と、押ボタンとからなり、前記噴射部材本体は、下端まで延びるスリットが側面に形成されており、前記噴射部材本体は、その下端径を拡縮する操作部材を備えており、前記操作部材を操作することにより、前記噴射部材本体の下端径を縮径させて、環状凹部と環状突起とを強く係合させた使用状態と、前記噴射部材本体の下端径を拡径させて、環状凹部と環状突起とを弱く係合させた脱着状態とに切り替えることができるものが好ましい。
【0012】
上述した本発明のいずれかの噴射部材であって、噴射部材本体と押ボタンとが一体に成型または連結されたものが好ましい。
【0013】
本発明のエアゾール製品は、上述したいずれかの噴射部材と、その噴射部材に取り付けられる環状凹部を備えたエアゾール容器とからなることを特徴としている。このようなエアゾール製品であって、前記エアゾール容器が、円筒状の胴部と、胴部上端に取り付けられるドーム部とを有する耐圧容器を備えており、前記環状凹部が、胴部上端とドームとを連結する二重巻締部から胴部上部にかけて形成される環状の凹部であり、前記噴射部材本体と胴部とが実質的に同径であるものが好ましい。
【0014】
ここでエアゾール容器の環状凹部として、例えば、従来公知のものとして、図8a、b、cが挙げられる。しかし、エアゾール容器に環状に形成される凹部であれば、特に、これらに限定されるものではない。
図8aに示すエアゾール容器100は、アルミニウムなどの金属を用いて円盤状にしたスラグとインパクト加工や絞り・しごき加工などにより有底筒状に形成し、開口部をカーリング加工して上端にカール部102aを形成した耐圧容器102と、そのカール部102aに取り付けられるエアゾールバルブ103とからなる。つまり、耐圧容器の上端に形成されたカール部102aに、エアゾールバルブのマウンティングカップ104を被せてカシメることによりエアゾール容器の被せ部101を形成する。そして、この被せ部101の外周から耐圧容器の肩部102bにかけて形成される環状の凹部がエアゾール容器100の環状凹部として使用される。
【0015】
図8bに示すエアゾール容器105は、円筒状の胴部108と、その上端に取り付けられるドーム109と、胴部の下端に設けられる底部とからなる耐圧容器と、ドームの上端のカール部107に取り付けられるエアゾールバルブ110とからなる。このエアゾール容器105は、胴部108とドーム109とを二重巻締めすることによって連結された二重巻締め部106が形成されており、二重巻締め部106の外周から胴部上部にかけて形成される環状の凹部が環状凹部となる。また、上述したエアゾール容器100と同様に、カール部107とエアゾールバルブ110のマウンティングカップとによって、被せ部が形成される。このエアゾール容器105では、二重巻締め部106および被せ部のいずれかで形成される環状の凹部を環状凹部として使用できる。
【0016】
図8cに示すエアゾール容器115は、円筒状の開口部を備えた耐圧容器117と、その耐圧容器の開口部を包みこむようにして取り付けられるバルブ用キャップを備えたエアゾールバルブ118とからなる。そして、予め、耐圧容器の上部に形成された環状の係止部116に、バルブ用キャップの下端をカシメ付けて固定する。このエアゾール容器115では、このカシメ部119が、環状凹部として使用される。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエアゾール製品用の噴射部材は、エアゾール容器の環状凹部と環状に係合する環状突起を備えた噴射部材であって、前記環状凹部と環状突起とが係合した使用状態を呈するため、持ち運ぶときや落下したときなどのようにエアゾール製品にどの方向から力が加わっても、噴射部材が不意に外れることがない。そのため、使用者は安心して本発明の噴射部材をエアゾール容器に取り付けて使用することができる。また、前記環状凹部および環状突起の係合が一部解除された脱着状態を呈するため、エアゾール容器を交換するなどにおいて、噴射部材を取り外すのが簡単である。そして、この脱着状態は、噴射部材を破壊したりするものでないため、噴射部材を繰り返し使用できる。さらに、使用状態と脱着状態とを、脱着機構を操作することによって切り替えることができるため、噴射部材の脱着の操作部分が明確である。
【0018】
本発明の噴射部材であって、下端が係止部と係合片とによって構成された円筒状の噴射部材本体と、押ボタンとからなり、前記係止部の内面に係合突起が形成されており、前記係合片の内面に突起が形成されており、前記係合突起と突起が環状突起を構成し、前記係合片が脱着機構を構成し、前記係合片を操作することにより、前記環状凹部と突起とを係合させた使用状態と、前記環状凹部と突起との係合を外した脱着状態とに切り替えることができる場合、噴射部材がいずれの状態であるかの識別が容易である。また、係合が解除された位置も明確であり、係合片に向かって噴射部材を倒すことにより噴射部材は外れやすくなるため、噴射部材を外すときに力を加える方向がわかりやすい。
【0019】
また、円筒状の噴射部材本体と押ボタンとからなる従来の噴射部材の場合、噴射部材を外すために斜め方向に力を加えると、ステムが押ボタンのステム係合部に嵌合した状態で折れやすく、折れたステムの先端がステム係合部に入り込んで取れなくなるため、再利用に適していなかった。特に、内周壁を備えており、押ボタンが内周壁内で上下動する従来の噴射部材の場合、噴射部材を外すとき、押ボタンが内周壁と当接し、ステムが折れやすかった。
しかし、本発明の噴射部材は係合片を操作して係合の一部を解除し、全体の係合力を弱くしてから外すため、無理な方向に力を加える必要がなく、噴射部材本体と押ボタンとから構成されていても、さらには、噴射部材本体が内周壁と外周壁とを備えていても、ステムが折れるおそれが小さい。
【0020】
また、前記係合片が、半径内外方向に移動可能である場合や、上下方向に移動可能である場合は、その操作が容易である。
【0021】
さらに、係合片の突起が、係止部の係合突起よりも長い場合、使用状態と脱着状態との係合力の差が一層大きくなる。そのため、使用状態では、不意に外れることが一層なく、脱着状態では、噴射部材をエアゾール容器から外しやすく、また、装着しやすい。
【0022】
本発明のエアゾール製品用の噴射部材の第2の態様は、エアゾール容器の環状凹部と環状に係合する環状突起を備えた噴射部材であって、前記環状凹部と環状突起との係合度が強い使用状態と、前記環状凹部と環状突起との係合度が弱い脱着状態とを呈し、操作することによって切り替えることができる脱着機構を備えているため、第1の態様と同様の作用が得られる。
【0023】
このような噴射部材であって、前記環状突起が下端に形成された円筒状の噴射部材本体と、押ボタンとからなり、前記噴射部材本体は、下端まで延びるスリットが側面に形成されており、前記噴射部材本体は、その下端径を拡縮する操作部材を備えており、前記操作部材を操作することにより、前記噴射部材本体の下端径を縮径させて、環状凹部と環状突起とを強く係合させた使用状態と、前記噴射部材本体の下端径を拡径させて、環状凹部と環状突起とを弱く係合させた脱着状態とに切り替えることができる場合、切り替え操作が明確であり、また、簡単である。
【0024】
また、前記噴射部材本体と押ボタンとが一体に成型または連結されている場合、噴射部材を新しいエアゾール容器に装着するとき、噴射部材本体を環状凹部に装着することで押ボタンのステム係合部にステムが挿入あるいは案内されるため、押ボタンのステム係合部とステムとの係合が容易である。
【0025】
本発明のエアゾール製品は、上述した本発明の噴射部材と、その噴射部材に取り付けられる環状凹部を備えたエアゾール容器とからなるため、環境にやさしい。
また、このようなエアゾール製品であって、前記エアゾール容器が、円筒状の胴部と、胴部上端に取り付けられるドーム部とを有する耐圧容器を備えており、前記環状凹部が、胴部上端とドームとからなる耐圧容器を連結する二重巻締部から胴部上部にかけて形成される環状の凹部であり、前記噴射部材本体と胴部とが実質的に同径である場合、従来は噴射部材の取り外しが非常に困難であったが、噴射部材のエアゾール容器からの脱着が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に本発明のエアゾール製品用の噴射部材およびエアゾール製品を図面を用いて説明する。図1a、bは、本発明のエアゾール製品の一実施形態を示す斜視図、一部断面側面図;図2aは、図1aの噴射部材本体の下面図、図2bは、噴射部材本体の他の実施形態を示す下面図、図2cは、本発明のエアゾール製品の他の実施形態を示す斜視図;図3a、bは、本発明のエアゾール製品用の噴射部材の他の実施形態を示す状態図;図4a、bは、本発明のエアゾール製品用の噴射部材のさらに他の実施形態を示す斜視図、一部側面断面図;図5aは、図4aの操作片を示す斜視図、図5bは、操作片の他の実施形態を示す斜視図、図5c、dは、脱着機構のさらに他の実施形態を示す斜視図;図6aは、本発明のエアゾール製品用の噴射部材のさらに他の実施形態を示す斜視図、図6bは、その状態の切り替えを示す一部断面側面図、図7a、bは、本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【0027】
図1a、bに示すエアゾール製品10は、エアゾール容器11と、そのエアゾール容器11に取り付けられる噴射部材12とからなる。
エアゾール容器11は、図8aのエアゾール容器100と実質的に同じであり、図1bに示すように、耐圧容器31と、その上端に取り付けられるエアゾールバルブ32とからなり、円弧状の被せ部11aを有するものである。つまり、噴射部材12は、エアゾール容器の被せ部11aから耐圧容器の肩部にかけて形成される環状の凹部に取り付けられる。
【0028】
噴射部材12は、筒状の噴射部材本体13と、筒状の押ボタン14とからなり、噴射部材本体13の両側面の下端に脱着機構15が設けられている。
【0029】
噴射部材本体13は、外周壁18aと内周壁18bとを備え、上部後方13aが開いた円筒状であり、外周壁の前方中心部に噴射窓16が形成されている。上部後方13aが開いているため、指等をこの開口から挿入し、押ボタン14を押すことができる。
また、噴射部材本体13の外周壁の下端は、係止部13bと、スリット26によって形成される係合片29とからなる。そして、係止部13bの内側には、複数の係合突起17が形成されており、係合片29の内側には、突起17aが形成されている。
一方スリット26は、噴射部材本体の外周壁の下端からヒンジ部25を残して長方形状に形成されており、係合片29は、そのスリットによって区分けされ、噴射部材本体の係止部と同一面となるように湾曲している。この係合片29は、ヒンジ部より上の押部27と、ヒンジ部より下の係合部28とからなる。
係合突起17と、突起17aとは、環状に一定の間隔で、かつ、均等な長さで形成されており、環状突起を構成している(図2a参照)。さらに、係合片29は、ヒンジ部25を介して噴射部材本体13の外周壁と一体成形されている。
【0030】
このように構成されているため、押部27を半径方向内側に押すことにより、ヒンジ部25は弾性変形しながら、係合部28が半径方向外側に開く(脱着状態)。そして、押部27の押す操作を止めると、押部27および係合部28は、噴射部材本体の外周壁と平行となるように戻る(使用状態)。つまり、この噴射部材本体のヒンジ部25と係合片29が、脱着機構15を構成している。
【0031】
この係合突起17および突起17aからなる環状突起は不均等な間隔で設けられていても良く、係合突起17同士、または、係合突起17と突起17aの長さが異なっていても良い。また、係合突起17を連続した一個としてもよい。なお、図2bに示すように、係合片の突起17aを係合突起17より長くすることにより、突起17aをエアゾール容器の環状凹部に係合したときと、係合していないときの噴射部材とエアゾール容器の係合力の差が大きくなる。
また、このヒンジ部25は、一体成形で形成されているが、ヒンジ棒とバネとを用いて構成してもよい。
【0032】
押ボタン14は、噴射部材本体の内周壁内で上下動可能に構成されており、断面が矩形であり、上底19を有しており、前方に形成された噴射孔21と、下端に形成されたエアゾール容器のステムと係合するステム係合部22と、噴射孔とステム係合部とを連通する通路23とを備えている。
【0033】
この噴射部材本体13と押ボタン14とは、噴射部材本体の噴射窓16の下部と、押ボタン14の前部下端とが、連結部24でもって一体に連結している。このように噴射部材本体13と押ボタン14とを一体に連結しているため、噴射部材をエアゾール容器の環状凹部に装着するとき、ステム係合部の位置にステムが案内されて嵌合しやすい。しかし、噴射部材本体13と押ボタン14とは、分離していてもよい。
【0034】
このように構成されているエアゾール製品10は、噴射部材12を使用状態にして使用する。つまり、噴射部材本体13の係合突起17および突起17aと、エアゾール容器の環状凹部とが環状に強く係合している。そのため、噴射部材12にいずれの方向から外力を加えても、噴射部材12がエアゾール容器11から容易に外れることがない。また、エアゾール製品を誤って落下させても噴射部材が外れないため、ステムが折れる問題がない。
【0035】
一方、噴射部材12をエアゾール容器11から取り外すときは、押部27を半径方向内側に押し、噴射部材12を脱着状態とする。これにより、係合片29の係合部28の突起17aとエアゾール容器の環状凹部との係合が弱まる、あるいは、係合が外れる(脱着状態)。これにより噴射部材12の環状突起とエアゾール容器11の環状凹部との係合が一部はずれ、不均衡な係合となる。そのため、係合がはずれた部位に向けて噴射部材12を倒すことにより、簡単に噴射部材12をエアゾール容器11から取り外すことができる。また、この状態で新しいエアゾール容器に装着することができる。
【0036】
この噴射部材12は、使用状態と脱着状態を切り替えることができるため、使用状態では、噴射部材が外れるおそれがない、そして、脱着状態では、その切り替え操作する部分が明確であるため、噴射部材の取り外しおよび新しいエアゾール容器への装着が簡単にできる。
【0037】
図2cに示すエアゾール製品35は、二重巻締め部36を備えたエアゾール容器37と、図1の噴射部材12とからなる。つまり、エアゾール容器37は、図8bのエアゾール容器105と実質的に同じものであり、二重巻締め部36と胴部上部との間の環状の凹部を環状凹部として使用している。他の構成は、図1のエアゾール製品10と実質的に同じである。また、この実施形態では、エアゾール容器37の二重巻締め部36に噴射部材12を取り付けるように構成しているが、エアゾールバルブ39の被せ部11bの外周からドーム38にかけて形成される環状の凹部に取り付けてもよい。
この場合も、噴射部材12は、使用状態、脱着状態の両形態をとることができる。
【0038】
なお、この実施の形態では、噴射部材12をエアゾール容器37に装着すると噴射部材の外周壁とエアゾール容器の胴部とが同径の円筒になり、使用状態における噴射部材とエアゾール容器の係合が強い。そのため、従来の噴射部材では、エアゾール容器から外しにくいが、噴射部材12を用いているため、容易に外すことができる。
【0039】
図3a、bに示す噴射部材40は、噴射部材本体41と、押ボタン42と、脱着機構43とからなる。
噴射部材本体41は、外周壁48aと内周壁48bを備え、前方から後方にかけてスリット状に開口(41a)している筒状のものであり、前方の開口が噴射窓として作用し、後方の開口が押ボタン42を押すための指等の挿入部となる。また、噴射部材本体41の外周壁の下端の一部には、切り欠き部41bが設けられている。そして、切り欠き部を除いた噴射部材本体の外周壁の下端(係止部)には、係合突起17が形成されている。
押ボタン42は、図1の押ボタン14と実質的に同じものであり、噴射孔43aと、ステム係合部(図示せず)と、噴射孔とステム係合部とを連通する通路(図示せず)とを備えた上底を有するものである。
【0040】
脱着機構43は、下部に配置された板状の係合片44と、上部に配置された板状の操作片45と、前記切り欠き部の上方に位置し、噴射部材本体41の側面に形成された溝部46とからなる。係合片44は、その下端に突起17aが形成されており、上端が操作片の下部と軸47で連結されている。操作片45は、その下端が噴射部材41の凹部側面(図示せず)と軸で連結されている。
【0041】
このように構成された噴射部材40は、係合突起17と突起17aとによって環状突起を構成する。そして、噴射部材40の使用状態は、図3bに示すように、操作片45が垂直に立てられており、係合片44と操作片45とが噴射部材本体41の外周壁に形成された溝部46内に収容される(使用状態)。なお、係合片44と操作片45とは、使用状態において噴射部材本体と同一面となるように湾曲している。このとき、係合片44の突起17aは、一番高い位置となる。そのため、エアゾール容器の環状凹部と強く係合する。
【0042】
一方、図3aに示すように、操作片45を倒すことにより、係合片44が半径方向外側に、そして、下方に移動する(脱着状態)。つまり、係合片44の突起17aが下方に下がる。そのため、突起17aとエアゾール容器の環状凹部との係合が外れる。
この脱着状態では、噴射部材40とエアゾール容器とによって形成される環状の係合、具体的には、係合片44の係合が、一部解除される。そのため、その部位に向かって噴射部材を倒すようにすることにより、噴射部材40が容易に外れる。
【0043】
このように噴射部材40も、使用状態と脱着状態の両形態をとることができるため、使用状態では、噴射部材が外れるおそれがなく使用でき、脱着状態では、簡単に噴射部材の取り外しができ、さらに、新しいエアゾール容器への装着が容易である。
【0044】
図4に示す噴射部材50は、脱着機構51が、係合片52を上下にスライドさせることによって使用状態と、脱着状態とを切り替えることができる。他の構成は、図1の噴射部材12と実質的に同じであり、噴射部材本体53と、押ボタン54とを備えている。
脱着機構51は、噴射部材本体53の外周壁に形成された溝部56と、その溝部を上下に移動する係合片52とからなる。
係合片52は、図5aに示すように、下端に形成された突起17aと、側面に形成された摺動突起57と、外周面に形成された押部58とからなる。
また、溝部56の側面には、摺動突起57を収容する収容凹部59が形成されている。
【0045】
このように構成されているため、噴射部材の係合片52を下にスライドさせることにより、係合片の突起17aが最も下に配置され、エアゾール容器の環状凹部と係合する(使用状態)。また、係合片52を上にスライドさせることにより、係合片の突起17aが最も上に配置され、突起17aとエアゾール容器の環状凹部との係合が外れる。
【0046】
また、図5bに示す係合片61は、図4に示す脱着機構51に用いられるものであり、側面に噴射部材本体の溝部56の縁(収容凹部59)と摺動する摺動溝62を有している。他の構成は、図4aの噴射部材本体53と実質的に同じものである。このものも、係合片61を上下にスライドさせることにより、噴射部材を使用状態と脱着状態とに切り替えることができる。
【0047】
図5cの脱着機構65は、操作片66を上下にスライドさせるものであって、下方に操作片66をスライドさせることによって、噴射部材本体67の外周壁の下端径を縮小させるものである。
この脱着機構65は、噴射部材本体67の外周壁のスリット68に沿って形成されるL字状の突起69と、その突起69と摺動する操作片66とからなる。
このL字状の突起69は、スリット68の対向する両端部からスリットに沿って半径方向外側に突出する基部71と、それぞれの基部端部からスリットと反対方向に直角に延びる係合部72とからなる。また、この係合部72は、その上面73が下方に向かうにつれて面積が大きくなるようにその側面74がテーパーとなっている。
操作片66は、両突起69を挿入できるように形成された縦方向の挿入孔75を2つ備えている。
【0048】
このように構成されているため、噴射部材の操作片66を下にスライドさせることにより、突起69の係合部72の側面74の下端と操作片の挿入孔75の内側面とが係合し、噴射部材本体のスリット68の間が一番小さくなる。つまり、噴射部材本体の径が最も小さくなる(使用状態)。
一方、噴射部材の操作片66を上にスライドさせることにより、突起の係合部72の側面74の上端と操作片の挿入孔75の内側面とが係合し、噴射部材本体のスリット68の間が一番大きくなる。つまり、噴射部材本体の径が最も大きくなる(脱着状態)。
このように噴射部材本体の径が大きい脱着状態では、噴射部材の係合突起と、エアゾール容器の環状凹部との係合が弱まり、噴射部材の取り外しが容易にできる。つまり、噴射部材の使用状態と脱着状態の切り替えを、操作片を上下させることによりできる。また、新しいエアゾール容器に装着する際には、噴射部材をエアゾール容器の環状凹部に仮係合させ、操作片を下にスライドして係合させる。
【0049】
図5dの脱着機構76は、図5cの脱着機構65と同様に操作片77を下方に移動させることにより、噴射部材本体の径を縮径させるものである。
この脱着機構76は、噴射部材本体67の側面のスリット68に沿って形成される突起78と、その突起78と摺動する操作片77とからなる。
この突起78は、スリット68の対向する両端部からスリットに沿って半径方向内側に突出している。この脱着機構76は、スリット68が、下方につれて隙間が大きくなるように形成されている。
操作片77は、スリットの対向する辺に形成された両突起78を挿入できるように形成された縦方向の挿入孔75を2つ備えている。また操作片77は、噴射部材本体67の内側の部分では、エアゾール容器との干渉を避けるために下部を切り欠いている。
【0050】
このものも脱着機構65と同様に、操作片77を下方に移動させることにより、スリット68の隙間が小さくなり(使用状態)、上方に移動させることにより、スリット68の隙間が大きくなる(脱着状態)。
【0051】
図6a、bに示す噴射部材80は、噴射部材本体81と、押ボタン82と、操作リング83とからなり、操作リングを回転させることにより、噴射部材本体の径を拡縮させ、使用状態と脱着状態とを切り替えるものである。
噴射部材本体81は、図3の噴射部材本体41と同様に、前方から後方にかけてスリット状に開口している筒状のものであり、外周壁の下端内側には、複数の係合突起17が環状に一定の間隔で形成されている(環状突起)。また、噴射部材本体の外周壁の下部には、一定の間隔で上下に延びる複数本のスリット85および雄ねじ86が形成されており、噴射部材本体の外周壁の下部は、山の麓のように、径が広がるように形成されている。
【0052】
押ボタン82は、図1の押ボタン14と同様に、上底を有しており、噴射孔と、ステム係合部と、通路とを備えている。
【0053】
操作リング83は、内周に雌ねじが形成されており、その内径は、噴射部材本体81の外周壁の下端より小さく構成されている。
【0054】
このように構成されているため、図6bに示すように、操作リング83を噴射部材本体81の下端に取り付けることにより、操作リング83が噴射部材本体81の下端の径を縮径させる(使用状態)。そして、操作リング83を回転させて上方に移動させることにより、噴射部材本体81の下端が操作リング83から開放され、噴射部材本体の係合突起17とエアゾール容器の環状凹部との係合が弱まる(脱着状態)。
このようにして操作リング83を回転させて噴射部材80を使用状態と脱着状態とに切り替えるものである。そして、脱着状態では、これまで開示した噴射部材と同様にその取り外しおよび装着が容易にできる。なお、噴射部材本体の下端は円筒状としてもよい。この場合も、操作リング83を上方に移動させると係合力が弱くなる(脱着状態)。
【0055】
図7aに示すエアゾール製品90は、操作リング93を上下にスライドさせることによって、使用状態と脱着状態に切り替えるものである。噴射部材91は、側面にネジが形成されていない以外は、図6の噴射部材80と実質的に同じものである。つまり、操作リング93を下方に移動させることにより、噴射部材91の下端が縮径し、操作リング93を上方に移動させることにより、噴射部材91の下端が開放される。そのため、噴射部材をエアゾール容器92から取り外すときに、噴射部材91の下端を拡径しながら、取り外すことができ、容易である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1a、bは、本発明のエアゾール製品の一実施形態を示す斜視図、一部断面側面図である。
【図2】図2aは、図1aの噴射部材本体の下面図であり、図2bは、噴射部材本体の他の実施形態を示す下面図であり、図2cは、本発明のエアゾール製品の他の実施形態を示す斜視図である。
【図3】図3a、bは、本発明のエアゾール製品用の噴射部材の他の実施形態を示す状態図である。
【図4】図4a、bは、本発明のエアゾール製品用の噴射部材のさらに他の実施形態を示す斜視図、一部側面断面図である。
【図5】図5aは、図4aの操作片を示す斜視図であり、図5bは、操作片の他の実施形態を示す斜視図であり、図5c、dは、脱着機構のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図6】図6aは、本発明のエアゾール製品用の噴射部材のさらに他の実施形態を示す斜視図であり、図6bは、その状態の切り替えを示す一部断面側面図である。
【図7】図7a、bは、本発明のエアゾール製品のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図8】図8a、b、cは、本発明の噴射部材に用いられる従来のエアゾール容器を示す一部側面断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 エアゾール製品
11 エアゾール容器
11a、11b 被せ部
12 噴射部材
13 噴射部材本体
13a 上部後方
13b 係止部
14 押ボタン
15 脱着機構
16 噴射窓
17 係合突起
17a 突起
18a 外周壁
18b 内周壁
19 上底
21 噴射孔
22 ステム係合部
23 通路
24 連結部
25 ヒンジ部
26 スリット
27 押部
28 係合部
29 係合片
31 耐圧容器
32 エアゾールバルブ
35 エアゾール製品
36 二重巻締め部
37 エアゾール容器
38 ドーム
39 エアゾールバルブ
40 噴射部材
41 噴射部材本体
41a 開口
41b 切り欠き部
42 押ボタン
43 脱着機構
43a 噴射孔
44 係合片
45 操作片
46 溝部
47 軸
48a 外周壁
48b 内周壁
50 噴射部材
51 脱着機構
52 係合片
53 噴射部材本体
54 押ボタン
56 溝部
57 摺動突起
58 押部
59 収容凹部
61 係合片
62 摺動溝
65 脱着機構
66 操作片
67 噴射部材本体
68 スリット
69 突起
71 基部
72 係合部
73 上面
74 側面
75 挿入孔
76 脱着機構
77 操作片
78 突起
80 噴射部材
81 噴射部材本体
82 押ボタン
83 操作リング
85 スリット
86 雄ねじ
100 エアゾール容器
101 被せ部
102 耐圧容器
102a カール部
102b 肩部
103 エアゾールバルブ
104 マウンティングカップ
105 エアゾール容器
106 二重巻締め部
107 カール部
108 胴部
109 ドーム
110 エアゾールバルブ
115 エアゾール容器
117 耐圧容器
118 エアゾールバルブ
119 カシメ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器の環状凹部と環状に係合する環状突起を備えた噴射部材であって、
前記環状凹部と環状突起とが係合した使用状態と、前記環状凹部と環状突起の係合が一部解除された脱着状態とを呈し、
操作することによって切り替えることができる脱着機構を備えている、エアゾール製品用の噴射部材。
【請求項2】
下端が係止部と係合片とによって構成された円筒状の噴射部材本体と、押ボタンとからなり、
前記係止部の内面に係合突起が形成されており、
前記係合片の内面に突起が形成されており、
前記係合突起と突起が環状突起を構成し、前記係合片が脱着機構を構成し、
前記係合片を操作することにより、
前記環状凹部と突起とを係合させた使用状態と、
前記環状凹部と突起との係合を外した脱着状態とに切り替えることができる、請求項1記載の噴射部材。
【請求項3】
前記係合片が、半径内外方向に移動可能である、請求項2記載の噴射部材。
【請求項4】
前記係合片が、上下方向に移動可能である、請求項2記載の噴射部材。
【請求項5】
係合片の突起が、係止部の係合突起よりも長い、請求項2記載の噴射部材。
【請求項6】
エアゾール容器の環状凹部と環状に係合する環状突起を備えた噴射部材であって、
前記環状凹部と環状突起との係合度が強い使用状態と、前記環状凹部と環状突起との係合度が弱い脱着状態とを呈し、
操作することによって切り替えることができる脱着機構を備えている、エアゾール製品用の噴射部材。
【請求項7】
前記環状突起が下端に形成された円筒状の噴射部材本体と、押ボタンとからなり、
前記噴射部材本体は、下端まで延びるスリットが側面に形成されており、
前記噴射部材本体は、その下端径を拡縮する操作部材を備えており、
前記操作部材を操作することにより、
前記噴射部材本体の下端径を縮径させて、環状凹部と環状突起とを強く係合させた使用状態と、
前記噴射部材本体の下端径を拡径させて、環状凹部と環状突起とを弱く係合させた脱着状態とに切り替えることができる、請求項6記載の噴射部材。
【請求項8】
前記噴射部材本体と押ボタンとが一体に成型または連結された請求項2または7記載の噴射部材。
【請求項9】
請求項1〜8記載の噴射部材と、その噴射部材に取り付けられる環状凹部を備えたエアゾール容器とからなるエアゾール製品。
【請求項10】
前記エアゾール容器が、円筒状の胴部と、胴部上端に取り付けられるドーム部とを有する耐圧容器を備えており、
前記環状凹部が、胴部上端とドームとを連結する二重巻締部から胴部上部にかけて形成される環状の凹部であり、前記噴射部材本体と胴部とが実質的に同径である、請求項9記載のエアゾール製品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−254739(P2008−254739A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95497(P2007−95497)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(391021031)株式会社ダイゾー (130)
【Fターム(参考)】