説明

エアバッグ用基布およびエアバッグ

【課題】軽量性、柔軟性、コンパクト性に優れ、コーティング樹脂の塗布量が20g/m2以下の如き少量であっても、FMVSS302が定める燃焼速度を満足するエアバッグ用基布及びエアバッグを提供すること。
【解決手段】(A)25℃における粘度が8000センチポイズ以下の、末端単位にSiC結合したビニル基を有するオルガノポリシロキサン、(B)Si結合した水素原子少なくとも3個を有するオルガノポリシロキサン、(C)脂肪族多重結合へのSi結合した水素原子の付加を促進する触媒、(D)有機ケイ素化合物、(E)シリコーン樹脂、および(F)カルボキシセルロースナトリウム塩を含有しているコーティング組成物が塗布されていることを特徴とするエアバッグ用基布、並びに該基布からなるエアバッグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車衝突時に乗員の安全確保のために設置されるエアバッグの基布に関するものであり、更に詳しくは、軽量性、柔軟性、コンパクト性に優れ、コーティング樹脂の塗布量が20g/m2以下の如き少量であっても、FMVSS302が定める燃焼速度を満足するエアバッグ用基布、及びエアバッグ用コーティング組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の乗員保護安全装置としてエアバッグの装着が進んできている。このエアバッグは、通常、ステアリングホイールやインストルメントパネルなどの狭い場所にインフレーターケースを含めたモジュールとして装着されているため、エアバッグの収納容積は小さいことが望ましい。そのために、収納容積をコンパクトにするために、織物に使用する繊維として細い繊度のものを使用することや、エアバッグの気密性保持のために基布に塗布するエラストマーの種別および量を変更することなどが行われている。
【0003】
例えば、織物に使用する繊維は940dtexから470dtexの基布へと変更されている。また、塗布するエラストマー樹脂および塗布量は、クロロプレンを90〜120g/m2塗布することから、シリコーン樹脂を40〜60g/m2塗布することに変更され、現在は470dtexのシリコーン組成物塗布タイプの基布が使用され、更には、コンパクト性の向上およびコーティング加工経費の経済性から、微少通気性を持たせたノンコートタイプのものが使用されている。
【0004】
しかしながら、最近の市場では、更なるエアバッグの軽量化、コンパクト化のために、そのエアバッグ用基布の軽量化、風合いのソフト化が求められると共に、コーティング加工の低コスト化およびコーティング布の軽量化のために、塗布量を減らしたいという要望がある。
しかし、シリコーン組成物の塗布量を減少すると燃焼速度が大きくなり、FMVSS302が定める燃焼速度を満たさないという問題が発生する。
【0005】
この問題を解決しようとした従来の代表的な技術としては、特開平7−195990号公報、特開平7−300774号公報、などがある。
これらの技術では、コーティング組成物に含まれる末端単位にSiC結合したビニル基を有するオルガノポリシロキサンの粘度が大きく、末端2重結合が少ないために、架橋密度が低い。したがって、コーティング組成物に膜充填剤である微粉末シリカおよび膜増強剤であるシリコーン樹脂を加えることで、FMVSS302燃焼試験時におけるコーティング樹脂膜の破れを抑制している。しかしながら、20g/m2以下の如き少量の塗布量で、FMVSS302燃焼試験に合格するためには、膜充填材として多量の微粉末シリカを含有する必要があるため、微粉末シリカの固定性に問題があるのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−195990号公報
【特許文献2】特開平7−300774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、軽量性、柔軟性、コンパクト性に優れ、コーティング樹脂の塗布量が20g/m2以下の如き少量であっても、FMVSS302が定める燃焼速度を満足するエアバッグ用基布、及びエアバッグ用コーティング組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、末端単位にSiC結合したビニル基を有するオルガノポリシロキサンの粘度を10000センチポイズ以下にすることで、末端ビニル基を増やし、加硫後の架橋密度を多くして、FMVSS302燃焼試験におけるシリコーン樹脂膜の破れを防止し、燃焼ガスの拡散を抑制して、コーティング樹脂の塗布量が20g/m2以下の如き少量でもFMVSS302が定める燃焼速度を満足するエアバッグ用基布を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は下記の通りである。
(1)(A)25℃における粘度が8000センチポイズ以下の、末端単位にSiC結合したビニル基を有するオルガノポリシロキサン、(B)Si結合した水素原子少なくとも3個を有するオルガノポリシロキサン、(C)脂肪族多重結合へのSi結合した水素原子の付加を促進する触媒、(D)有機ケイ素化合物、(E)シリコーン樹脂、および(F)カルボキシセルロースナトリウム塩を含有しているコーティング組成物がナイフコーターにより基布に5〜15g/m2塗布されていることを特徴とするエアバッグ用基布。
(2)基布を構成する繊維の総繊度が200dtex以下である上記1項に記載のエアバッグ用基布。
(3)基布を構成する繊維の織繊度が16000以下である上記1または2項に記載のエアバッグ用基布。
(4)FMVSS302が定める燃焼速度を満足する上記1〜3項のいずれか一項に記載のエアバッグ用基布。
(5)上記1〜4項のいずれか一項に記載のエアバッグ用基布からなるエアバッグ。
【発明の効果】
【0010】
本発明よれば、軽量性、柔軟性、コンパクト性に優れ、コーティング樹脂の塗布量が20g/m2以下であっても、FMVSS302が定める燃焼速度を満足するエアバッグ用基布を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき詳述する。
本発明において、末端単位にSiC結合したビニル基を有するオルガノポリシロキサン(A)は、下記一般式で示されるジオルガノポリシロキサンである。
(CH2=CH)XSiR3-X−O(SiR2O)nSiR3-X(CH=CH2X
〔式中、Rは、同じであるかもしくは異なる炭化水素基であり、置換されていてもよく、有利には、炭素原子1〜18個を有する炭化水素基を表す。Xは1、2又は3であり、有利には1である。nは、ジオルガノポリシロキサンが25℃で平均粘度10000センチポイズ以下となるような重合度であるときの(SiR2O)の数を表わす〕
【0012】
(A)の25℃における粘度は、好ましくは8000センチポイズ以下であり、更に好ましくは、50〜5000センチポイズである。8000センチポイズを越えると、末端ビニル基が少なく、加硫後の架橋密度が少ないために、塗布により形成された樹脂膜が弱くなり、20g/m2以下の塗布量では燃焼試験時に膜が破れて、FMVSS302が定める燃焼速度を満足することが出来ない。また、粘度が低すぎると、コーティング組成物が織物に浸透してしまい、膜形成が困難になる傾向がある。
【0013】
Rとしての炭化水素基の例は、有利には、アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、オクチル基、テトラデシル基もしくはオクタデシル基;脂環式炭化水素基、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基もしくはメチルシクロヘキシル基;アリール基、例えば、フェニル基;アルカリール基、例えば、トリル基;アラルキル基、例えば、ベンジル基、もしくはフェニルエチル基である。
【0014】
Rとしての置換された炭化水素基の例は、有利には、ハロゲン化された基、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基もしくはクロロフェニル基を挙げることができる。シアノアルキル基、例えば、シアノエチル基は含まれていてもよい。不飽和脂肪族基を有する基、例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基もしくはシクロヘキセニル基も、同様に含有されていてもよい。
【0015】
Rとしては、炭素原子1〜10個を有する炭化水素基が好ましく、更に好ましくは、Rとして示される有機基の少なくとも80%がメチル基であることである。
上記オルガノポリシロキサンは、同じ共重合体であってもよいし、それぞれ同じ重合度もしくは異なる重合度を有する異なる共重合体からなる混合物であってもよい。ジオルガノポリシロキサンが異なるジオルガノポリシロキサン単位を有している場合には、ランダムな分布が存在していてもよいし、ブロックによる分布が存在していてもよい。
【0016】
本発明のコーティング組成物中に、オルガノポリシロキサン(A)は10〜80wt%の量で含有するのが好ましく、更に好ましくは20〜50wt%の量で含有する。
本発明において、Si結合した水素原子を少なくとも3個を有するオルガノポリシロキサン(B)は、下記の一般式で示されるオルガノポリシロキサンである。
(CH33SiO−(SiHRO)O−(SiR2O)P−Si(CH33
〔式中、Rは前記と同じであり、oとpは1:0〜1:20、有利には1:0〜1:7の比で存在する〕
oとpの合計は、10〜1000の範囲であることができ、好ましい合計は、20〜200であり、更に好ましい合計は、30〜100である。1分子につきSi結合した水素原子を少なくとも3個有するオルガノポリシロキサンの場合には、水素原子及びシロキサン酸素原子によって飽和されたケイ素原子価を有していないオルガノポリシロキサンは、好ましくはメチル基、エチル基もしくはフェニル基によって飽和されたものである。しかしながら、上記でRとして記載した基の全てを含有してよい。
【0017】
本発明のコーティング組成物中に、オルガノポリシロキサン(B)は、1〜40wt%の量で含有するのが好ましく、更に好ましくは3〜15wt%の量で含有する。
本発明において、脂肪族多重結合へのSi結合した水素原子の付加を促進する触媒(C)としては、公知である反応を促進する任意の触媒を使用することができる。この種の触媒の例は、微粉砕した金属の白金(白金ゾル)、ルテニウム、ロジウム、パラジウム又はイリジウムである。これらの金属は、固体担体、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムもしくは活性炭、セラミック材料又は酸化物混合物ないしは水酸化物混合物上に施与されていてもよい。
【0018】
これら金属の化合物ないしは錯体、例えば、白金−オレフィン−錯体、白金−アルコール−錯体、例えば、スパイヤーズ触媒(Speyers Catalyst)、白金−アルコラート−錯体、白金−エーテル−錯体、白金−アルデヒド−錯体、白金−ケトン−錯体、例えば、シクロヘキサンとヘキサクロロ白金酸からの反応生成物、白金−ビニルシロキサン−錯体、特に、有機結合したハロゲン原子を含有しているかもしくは含有していない白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン−錯体、ビス−(γ−ピコリン)−白金ジクロリド、トリメチレンピリジン白金ジクロリド、ジシクロペンタジエン白金ジクロリド、ジメチルスルホキシジエチレン白金(2)ジクロリド、並びに1−オクテン中に溶解された白金テトラクロリドと第二ブチルアミンからの反応生成物もまた、該触媒の例である。白金化合物は、本発明による生成物中の触媒として特に好ましい。上記触媒は、1種類のみもしくは混合物として使用することもできる。
【0019】
本発明において、シリコーン組成物中に、触媒は、白金触媒の場合には、本発明による組成物中の白金含量がポリシロキサン含量に対して3〜500ppmの範囲の量で使用することができ、好ましくは、使用されるポリシロキサンに対する白金含量は10〜200ppmである。
本発明において、有機ケイ素化合物(D)は、付着助剤として適当なものであればよい。その例として、加水分解可能な基を有するシラン及び炭素原子を介してケイ素原子に結合したビニル−、アクリルオキシ−、メタクリルオキシ−、エポキシ−もしくは酸無水物基を使用することができる。このようなシランの部分加水分解物及び/又は加水分解物混合物を使用することもできる。好ましくはビニルトリアセトキシシランと下記式
【化1】

で示されるシランからの反応生成物が使用される。(D)としては、1種類を使用することもできるし、しかしまた、2種類もしくはそれ以上のシランの混合物又はこれらの反応生成物、ないしは部分加水分解物もしくは加水分解物混合物を使用することもできる。これら付着助剤としての(D)は、シリコーン組成物中に1〜20wt%の量で含有するのが好ましく、更に好ましくは2〜8wt%含有する。
【0020】
本発明のコーティング組成物は、一般式:(R3SiO1/2a(R3SiO3/2bで示されるシリコーン樹脂(E)、即ち一般式:(R3SiO1/2a(R3SiO3/2bで示される、いわゆるMT樹脂及び/又はMQ樹脂の水性エマルジョンを含有していてもよく、この場合、Rは、前記と同じであり、かつ有利に、メチル基、フェニル基、ビニル基又は水素原子である。aとbの比は、シリコーン樹脂が30〜300000センチポイズの粘度範囲内にあるように選択され、好ましくは、50〜30000センチポイズの粘度範囲内であり、更に好ましくは50〜10000センチポイズの粘度範囲内のシリコーン樹脂が選択される。
【0021】
本発明のコーティング組成物は、上記(A)、(B)、(C)、(D)、(E)成分を含有していれば良く、無溶媒の系、水系エマルジョンとした系、または、トルエン系の有機溶媒で希釈した系で使用することができるが、作業の安全性、環境汚染の面から、無溶媒の系または水系エマルジョンとした系が好ましい。
水性エマルジョンとして使用する場合、通常、オルガノポリシロキサンエマルジョンの製造に使用される任意の乳化剤を使用することが可能である。この乳化剤の例は、スルホン酸及び、乳化剤として作用することができるその塩並びにアルキルスルホネート、例えば、ナトリウムラウリルスルホネート、脂肪族炭化水素基で置換されたベンゼンスルホネート、例えば、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、脂肪族炭化水素基で置換されたナフタレンスルホネート、ポリエチレングリコールスルホネート及びラウリルホスフェート、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシドとプロピレンオキシドからの共重合体、ステアレート及びホスフェートである。
【0022】
また、本発明のコーティング組成物には、本発明の効果を損なわない範囲の量の公知の増粘剤、難燃剤、充填剤、顔料及び安定剤を含有していてもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシセルロースナトリウム塩((F)成分)が挙げられる。
本発明のエアバッグ用基布において、コーティング組成物の塗布量は、固形分で20g/m2以下であり、好ましくは5〜15g/m2である。20g/m2を越えると、エアバッグ用基布の軽量化、風合いのソフト化が不十分になると共に、コーティングのコストが高くなる。また、塗布量が少なすぎると難燃性が不十分になる。
【0023】
本発明のエアバッグ用基布を構成する繊維は特に限定されないが、ポリヘキサメチレンアジパミドを主体とする繊維が好ましく、特に融点が215℃以上であるポリヘキサメチレンアジパミド(以下、単にナイロン66という)繊維、ナイロン66コポリマー(ナイロン66/6、ナイロン66/6I、ナイロン66/610等)をブレンドしたナイロン66繊維、及びポリアミド系ポリマー(ナイロン6、ナイロン610等)をブレンドしたナイロン66繊維が耐熱性の点で特に好ましい。
【0024】
このナイロン66を主体とする繊維の硫酸相対粘度ηrは2.5〜3.3が望ましい。ηrが2.5未満では高強度繊維を安定的に得ることが難しく、ηrが3.3を越えると、高粘性による流動性の低下に伴うゲル化の進行により紡糸性が不良となる傾向がある。このナイロン66を主体とする繊維の硫酸相対粘度ηrの測定方法は、95.5%硫酸100ccに油剤が付着していない繊維1gを溶解して25℃恒温槽内でオストワルド粘度計にて測定したものである。
【0025】
本発明のエアバッグ用基布は、エアバッグ作動時に必要な引張や引裂強力等の機械特性を満たさなければならないため、エアバッグ用基布を構成する繊維の単糸繊度、総繊度、引張強度および織繊度(経糸または緯糸の全繊度(dtex)と織密度(本/2.54cm)の積)は重要な要件である。
このエアバッグ用基布を構成する繊維の単糸繊度は特に制限は受けないが、好ましくは、単糸繊度は0.5〜7dtexであり、更に好ましくは、1.1〜3.3dtex以下である。7dtexを越えると基布が硬くなりソフトな風合いが劣る傾向があり、0.5dtex未満では、繊維製造時の毛羽や高密度製織時に停台等による製織稼働率低下を発生し易くなる。
【0026】
繊維の総繊度とは、織物を構成する時に使用する経方向、緯方向の繊維の1本単位当たり合計繊度を指すもので、1ヤーンでもよいし複数のヤーンを撚糸、合糸、引き揃え糸とした状態でもよいが、総繊度として200dtex以下が好ましく、更に好ましくは50〜200dtexである。200dtexより大きいと、エアバッグのコンパクト性が損なわれるし、総繊度が小さすぎるとエアバッグ作動時の耐圧機械特性を得られない恐れがある。
【0027】
また、繊維の引張強度もエアバッグ作動時の耐圧機械特性に大きく影響する。繊維の引張強度は5.7cN/dtex以上が好ましい。
エアバッグ用基布の織繊度(経糸または緯糸の全繊度(dtex)と織密度(本/2.54cm)の積)は16000以下であることが好ましく、更に好ましくは10000〜16000である。織繊度が16000を越えると超高密度織物となり、製織時の停台が多く安定的な製織ができず、織繊度が小さすぎると、得られる基布の引張および引裂特性が低くなり、エアバッグとして必要な引張および引裂強力を得られない恐れがある。
【0028】
本発明における基布形態としては、織物が好ましい。織物組織としては、平織、格子織、綾織、朱子織などの織物が使用される。織物の経、緯方向の打ち込み本数の割合は経、緯が同数が望ましいが、数本前後してもよい。織物の製織は、既存のエアージェット製織、ウォータージェット製織、レピア製織等を使用してよく、特に制限を受けないが、製織後の工程の簡便性からノンサイジングでエアージェット製織を行うのが好ましい。
【0029】
本発明のコーティング組成物を塗布する方法としては、既存のコーティング装置、スプレー装置を適用してよく、特に制限を受けるものではない。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
なお、部は、質量部を表す。
また、エアバッグ用基布の燃焼速度は、FMVSS302法(水平法)に準じた方法で評価した。
【0031】
〔実施例1〕
25℃における粘度が5000センチポイズの末端単位にSiC結合したビニル基を有するオルガノポリシロキサン、脂肪族多重結合へのSi結合した水素原子の付加を促進する触媒、シリコーン樹脂、乳化剤、水を含有するシリコーン水性エマルジョン(旭化成−ワッカー株式会社製「DEHENSIVE 38197 VP」)52部、Si結合した水素原子少なくとも3個を有するオルガノポリシロキサン(旭化成−ワッカー株式会社製「V20」)6部、付着助剤として適当な有機ケイ素化合物(旭化成−ワッカー株式会社製「HF86」)4部、水37.5部を攪拌混合した混合液に、カルボキシセルロースナトリウム塩(和光純薬)0.5部を添加し、攪拌混合して、コーティング組成物とした。
【0032】
上記コーティング組成物を、ナイロン66からなる総繊度155dtexの繊維を用いた織密度(経×緯)91×91本/2.54cmの基布に、ナイフコーターを用いて、塗布量8g/m2 となるようにコーティングした。コーティング後、130℃×2分で水分を除去し、更に、180℃×1分で加硫した。得られたコーティング布のシリコーンは均一に塗布されていた。
【0033】
〔比較例1〕
25℃における粘度が50000センチポイズの末端単位にSiC結合したビニル基を有するオルガノポリシロキサン、脂肪族多重結合へのSi結合した水素原子の付加を促進する触媒、シリコーン樹脂を含むシリコーン組成物(旭化成−ワッカー株式会社製「SLM45572」)50部、Si結合した水素原子少なくとも3個を有するオルガノポリシロキサン(旭化成−ワッカー株式会社製「CrosslinkerW」)1.5部、付着助剤として適当な有機ケイ素化合物(旭化成−ワッカー株式会社製「HF86」)1.5部に、トルエン47部を加え、攪拌混合して、コーティング組成物とした。
【0034】
上記コーティング組成物を、ナイフコーターを用いて、塗布量10g/m2となるように実施例1と同様の基布にコーティングした。130℃×2分でトルエンを除去し、更に、180℃×1分で加硫した。得られたコーティング布のシリコーンは均一に塗布されていた。
【0035】
〔比較例2〕
比較例1のコーティング組成物を、ナイフコーターを用いて、塗布量30g/m2となるように実施例1と同様の基布にコーティングした。コーティング後、130℃×2分でトルエンを除去し、更に、180℃×1分で加硫した。得られたコーティング布のシリコーンは均一に塗布されていた。
以上の実施例、比較例についての評価結果をまとめて表1に示す。
【0036】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明よれば、軽量性、柔軟性、コンパクト性に優れ、コーティング樹脂の塗布量が20g/m2以下であっても、FMVSS302が定める燃焼速度を満足するエアバッグ用基布を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃における粘度が8000センチポイズ以下の、末端単位にSiC結合したビニル基を有するオルガノポリシロキサン、(B)Si結合した水素原子少なくとも3個を有するオルガノポリシロキサン、(C)脂肪族多重結合へのSi結合した水素原子の付加を促進する触媒、(D)有機ケイ素化合物、(E)シリコーン樹脂、および(F)カルボキシセルロースナトリウム塩を含有しているコーティング組成物がナイフコーターにより基布に5〜15g/m2塗布されていることを特徴とするエアバッグ用基布。
【請求項2】
基布を構成する繊維の総繊度が200dtex以下である請求項1に記載のエアバッグ用基布。
【請求項3】
基布を構成する繊維の織繊度が16000以下である請求項1または2に記載のエアバッグ用基布。
【請求項4】
FMVSS302が定める燃焼速度を満足する請求項1〜3のいずれか一項に記載のエアバッグ用基布。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のエアバッグ用基布からなるエアバッグ。

【公開番号】特開2010−144322(P2010−144322A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22999(P2010−22999)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【分割の表示】特願2000−106925(P2000−106925)の分割
【原出願日】平成12年4月7日(2000.4.7)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】