説明

エアバッグ装置のカバー体

【課題】製造コストを低減しエンブレムを保護しつつ扉部を所望の挙動で展開できるエアバッグ装置のカバー体を提供する。
【解決手段】装飾部材24のエンブレム55をバックプレート56により第1の扉部31に固定する。バックプレート56の突出部56aが、第1の扉部31がステアリングホイール10のリム部15に向けて展開した状態でリム部15に当接して、開口B3へのエンブレム55の進入を阻止する。仮に剛性が相対的に低い部分を有するエンブレム55であっても、高価な材料などを用いてエンブレム55の剛性を向上させることなく、製造コストを低減しエンブレム55を保護しつつ扉部30を所望の挙動で展開できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のハンドルに備えられるエアバッグ装置のカバー体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両のハンドルの固定部に備えられるエアバッグ装置が用いられている。このエアバッグ装置は、袋状のエアバッグと、このエアバッグにガスを供給するインフレータと、エアバッグを非展開時に覆って収納するカバー体とを備えている。このカバー体には、折り畳んだ状態で収納されたエアバッグを覆うカバー本体に、容易に破断するテアライン(破断予定部)が形成されている。そして、車両が例えば衝突などにより衝撃を受けた際に、インフレータからエアバッグへとガスが供給されることでエアバッグが膨張し、このエアバッグの膨張によりカバー体のカバー本体がテアラインに沿って破断して扉部が形成され、この扉部が展開することにより、エアバッグが乗員側に展開して、乗員を拘束して保護するように構成されている。
【0003】
このようなエアバッグ装置のカバー体について、カバー体の略中央部に装飾体としてのエンブレム(オーナメント)を取り付けるとともに、このエンブレムに沿ってテアラインを配置した構成が知られている。この構成では、カバー本体の表面側に配置するエンブレムの裏側に突設した固定ピンをカバー本体に挿通し、このカバー本体の裏面側に配置する取付部材の略中央部に、エンブレム側へと突出する膨出部を形成するとともに、この膨出部の裏面側に凹部を形成し、この膨出部に貫通孔を形成し、膨出部の裏面側の凹部に固定ピンの先端の係止部を収容して、取付部材により係止部を係止することで、エンブレムと取付部材とでカバー本体を挟み込んでいる。このように構成することで、エンブレムの取付部分の厚さを薄くしてカバー体の全体の厚さを均一化しつつ、エンブレムをカバー本体に対して確実に固定している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−255362号公報 (第3頁、図1−4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したようなエンブレムは、その形状によっては剛性が相対的に低い低剛性部を有する場合がある。このような場合、エンブレムが固定された扉部が展開した際に、このエンブレムがハンドルのリム部と固定部との間で、かつ、これらリム部と固定部とを連結する連結部であるスポークの間に入り込み変形したりしないように、カバー本体やエンブレムの材料をそれぞれの特性に適合した高価なものを使用しなければならず、製造コストの低減が容易でない。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、製造コストを低減し装飾体を保護しつつ扉部を所望の挙動で展開できるエアバッグ装置のカバー体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のエアバッグ装置のカバー体は、エアバッグが配置される固定部及びこの固定部の周囲に位置するリム部を備えるハンドルの前記固定部に取り付けられて前記エアバッグを覆うカバー本体と、このカバー本体を区画し前記エアバッグの膨張展開時に開裂して前記リム部に向けて展開する扉部を形成するテアラインと、前記扉部に位置して前記カバー本体に設けられた装飾部材とを具備し、前記装飾部材は、前記扉部の表面側に位置する装飾体と、この装飾体とは別体で設けられ、前記扉部の裏面側に位置し、この扉部を介して前記装飾体と連結されてこの装飾体を前記扉部に固定する取付部材とを備え、前記取付部材は、前記扉部の展開状態で前記リム部に当接して前記固定部と前記リム部との隙間への前記装飾体の進入を阻止する突出部を有しているものである。
【0008】
請求項2記載のエアバッグ装置のカバー体は、請求項1記載のエアバッグ装置のカバー体において、前記取付部材は、前記扉部と前記カバー本体とが連接する部分に対向する位置に、この連接する部分に沿って縁辺部を有しているものである。
【0009】
請求項3記載のエアバッグ装置のカバー体は、請求項1または2記載のエアバッグ装置のカバー体において、前記装飾体は、相対的に剛性が低い低剛性部を形成する複数の切込み部を備えているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のエアバッグ装置のカバー体によれば、装飾体を扉部に固定する取付部材の突出部が、扉部がハンドルのリム部に向けて展開した状態でハンドルのリム部に当接して、ハンドルの固定部とリム部との隙間への装飾体の進入を阻止することにより、仮に剛性が相対的に低い部分を有する装飾体であっても、高価な材料などを用いて装飾体の剛性を向上させることなく、製造コストを低減し装飾体を保護しつつ扉部を所望の挙動で展開できる。
【0011】
請求項2記載のエアバッグ装置のカバー体によれば、請求項1記載のエアバッグ装置のカバー体の効果に加え、前記取付部材の前記扉部と前記カバー本体とが連接する部分に対向する位置に、この連接する部分に沿う縁辺部を有することにより、扉部とカバー本体とが連接する部分をヒンジ部として扉部が展開する際に、この展開を取付部材の剛性によって妨げることがなく、扉部の円滑な展開を確保できる。
【0012】
請求項3記載のエアバッグ装置のカバー体によれば、請求項1または2記載のエアバッグ装置のカバー体の効果に加え、前記装飾体が複数の切込み部により形成された低剛性部を有するものであっても、製造コストを低減しつつ扉部の展開時の装飾体の変形を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のエアバッグ装置のカバー体の一実施の形態のエアバッグの展開状態の一部を示す斜視図である。
【図2】同上エアバッグの展開状態の一部を示す断面図である。
【図3】(a)は同上エアバッグ装置のカバー体の装飾部材の装飾体を示す正面図、(b)は装飾体を示す背面図である。
【図4】(a)は同上エアバッグ装置のカバー体の装飾部材の取付部材を示す正面図、(b)は取付部材を示す背面図である。
【図5】同上エアバッグ装置のカバー体を示す正面図である。
【図6】同上エアバッグ装置を備えたハンドルの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態の構成を図面を参照して説明する。
【0015】
図6において、10は車両である自動車のハンドルとしてステアリングホイールで、このステアリングホイール10は、ハンドル本体であるステアリングホイール本体12と、このステアリングホイール本体12の乗員側に装着されるエアバッグ装置14とを備えている。なお、ステアリングホイール10は、通常傾斜した状態で車両に備えられるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、車両の直進状態を基準とし、ステアリングシャフト側を背面側、乗員側を正面として、フロントガラスに向かう方向(矢印A方向)を上側として説明する。
【0016】
ステアリングホイール本体12は、円環状をなす湾曲状の把持部、すなわちグリップ部であるリム部15と、このリム部15の内側に位置する固定部としての本体部(ボス部)であるハブ部16と、これらリム部15とハブ部16とを連結する複数、例えば3つの連結部としてのスポーク部17とを有している。ここで、インストルメントパネルに設けられたメータ類に対する良好な視認性を確保するため、スポーク部17は、自動車の直進状態で、ハブ部16の両側と下側とに配置されている。したがって、リム部15とハブ部16との間で、かつ、スポーク部17間には、それぞれ隙間すなわち空間部である開口B1,B2,B3が形成されている。
【0017】
ここで、上側に位置する開口B1は、下側の左右両側に位置する開口B2,B3よりも大きく形成されており、開口B2,B3は略等しい大きさに形成されている。
【0018】
また、ハブ部16は、背面部に形成された図示しない円筒状のボスなどを介してステアリングシャフトに嵌着固定されている。また、このハブ部16とスポーク部17とは、芯金が一体形成され、スポーク部17の芯金にリム部15の芯金が溶接されて一体的に構成されている。そして、これらハブ部16、スポーク部17及びリム部15の芯金は、軟質の表皮部により覆われている。また、両側のスポーク部17には、それぞれスイッチなどが配置されたガーニッシュ18が取り付けられている。
【0019】
また、エアバッグ装置14は、エアバッグモジュールとも呼ばれ、ステアリングホイール本体12のハブ部16の正面側を覆うように配置されるものである。そして、このエアバッグ装置14は、図示しないが、金属板などからなる被取付部材としての図示しないベースプレート、袋状のエアバッグ、ガスを噴射するインフレータなどを備えるとともに、図5に示す樹脂製のカバー体20を備えている。そして、ベースプレートは、ホーンプレートあるいはブラケット部などを介してステアリングホイール本体12に取り付けられ、このベースプレートに、エアバッグ、インフレータ、及びカバー体20が取り付けられ、小さく折り畳まれたエアバッグがカバー体20により覆われている。
【0020】
そして、カバー体20は、ケース体、パッド、あるいはモジュールカバーなどとも呼ばれるもので、ハブ部16及びスポーク部17の一部を覆う表板部21と、この表板部21の背面から正面視略角筒状などの筒状に突設された周壁である周板部22とが合成樹脂などにて一体に形成されている。さらに、カバー体20の表板部21と周板部22とに囲まれた部分が、折り畳んだエアバッグを収納するエアバッグ収納部となり、このエアバッグ収納部の正面側に臨む部分がカバー本体としての正面板部23となるとともに、この正面板部23の中央部に位置して、装飾部材24が備えられている。なお、表板部21は、意匠上種々の構成を採り得るものであるが、この実施の形態では、表板部21は、ほぼハブ部16の形状に沿って、正面視で周板部22よりも若干大きく形成されている。また、本実施の形態では、エアバッグ装置14は、ホーンスイッチの操作部を兼ねるもので、ホーンプレートにより弾性的に支持され、正面板部23はホーンパッドとして機能するようになっている。
【0021】
さらに、正面板部23には、エアバッグ収納部に臨み、テアライン28が形成され、このテアライン28の開裂によりエアバッグの展開時に複数の扉部30が形成される。そして、扉部30は、左右非対称の第1ないし第4の扉部31,32,33,34の4枚が設定され、装飾部材24が配置される第1の扉部31は、他の3枚の扉部32,33,34よりも大きく、一側(図5及び図6における右側)の下方に配置されている。
【0022】
また、これら扉部30を形成するテアライン28は、予定線部あるいは破断予定部となどとも呼び得るもので、正面板部23の背面側を溝状に凹設し、正面板部23の他の部分より脆弱な弱部として形成されている。より詳細には、テアライン28は、正面板部23の外周部に沿って両側部に形成された両側の外周テアライン部41,41と、正面板部23の外周部に沿って下側部に形成された下側の外周テアライン部42と、装飾部材24の他側(図5及び図6における左側)に沿って形成された半円弧状の迂回テアライン部44と、この迂回テアライン部44の上側の端部から一側の外周テアライン部41まで延設された直結テアライン部45と、迂回テアライン部44の下側の端部から屈曲され直線状に下側の外周テアライン部42まで延設された第1の連結テアライン部46と、迂回テアライン部44の中間位置である他側部から他側の外周テアライン部41まで直線状に延設された第2の連結テアライン部47と、迂回テアライン部44の中間位置である上側部から正面板部23の外周部の上端部まで直線状に延設された第3の連結テアライン部48とを備えている。
【0023】
そして、迂回テアライン部44は、半円より僅かに長い円弧状に形成され、直結テアライン部45は、一側の下方に向かって傾斜して形成されている。
【0024】
さらに、互いに隣接する外周テアライン部41,41,42同士の間の部分は、扉部30が正面側に展開する際の回動軸となる連接部としてのヒンジ部51となっている。すなわち、正面板部23の外周部のテアライン28が形成されていない部分が、展開した扉部30を、非展開部である周板部22及び表板部21の外周部に連接する部分となっている。なお、このヒンジ部51については、容易に屈曲するように他の部分より厚さ寸法を小さく形成することもできるが、本実施の形態では他の部分と同じ厚さ寸法に形成されている。
【0025】
また、両側の外周テアライン部41,41の下側の端末部41aと、下側の外周テアライン部42の両側の端末部42aとは、開裂の進行を抑止するため、内周側に折り返すように湾曲されている。さらに、両側の外周テアライン部41,41の上側の端末部41bと、第3の連結テアライン部48の上端の端末部48aとは、カバー体20の周板部22に突き当たるように形成され、さらに、必要に応じて、周板部22にも弱部が連続的に形成されている。
【0026】
そして、装飾部材24は、例えば装飾体としてのアッパプレートであるエンブレム55(図3)と、このエンブレム55を嵌合保持する取付部材としてのロアプレートであるバックプレート56(図4)とを備え、図1及び図2に示すように、これらエンブレム55とバックプレート56とのそれぞれの背面側でカバー体20の正面板部23を挟み込んで固着されている。
【0027】
図3(a)及び図3(b)に示すエンブレム55は、オーナメントとも呼ばれるものであり、例えばABS樹脂中にポリカーボネートを含む、いわゆるポリカABSなどの硬質樹脂により一体形成され、適宜塗装やメッキなどの表面処理が施されている。すなわち、このエンブレム55は、カバー体20よりも硬質の部材により形成されている。また、このエンブレム55は、本実施の形態では、全体として正面視で例えば六角形状の形状に形成されており、その互いに対向する2つの辺部55a,55aに対して交差するように細長い切込み部55b,55bが直線状に形成されることにより、例えば3つの細片部55c,55c,55cがジグザグ状に連続するZ字状(逆S字状)の意匠をなしている。すなわち、これら細片部55c,55c,55cは、細長い帯状に形成されていることにより、エンブレム55の他部と比較して相対的に剛性(強度)が低い低剛性部(弱部)となっている。
【0028】
また、このエンブレム55の背面(裏面)には、各細片部55cの略中央部から円柱状の突起としての固定ピンである脚部55dがそれぞれ突出して一体形成されている。したがって、これら脚部55dは、全体として一直線上に並んで配置されている。さらに、これら脚部55dの先端には、基端側に対して段差状に径大となる係止突部である係止部55eが一体形成されている。そして、これら脚部55dは、エンブレム55を正面板部23(図1)に取り付ける際に、この正面板部23(図1)の表面側から裏面側に亘って貫通された図示しない取付孔にそれぞれ挿入される。これら取付孔は、図5に示す上下方向に対して傾斜した直線に沿って形成されている。
【0029】
また、図4(a)及び図4(b)に示すバックプレート56は、例えばエンブレム55と同様に、いわゆるポリカABSなどの硬質樹脂により一体形成されており、例えばエンブレム55よりも厚みが大きく形成されている。すなわち、このバックプレート56は、カバー体20よりも硬質の部材として形成されている。さらに、このバックプレート56は、一側に突出(延出)する当接部としての突出部56aを有し、他側に直線状の縁辺部としての平坦部56bを有する、略凸字状に形成されている。また、このバックプレート56の略中央部には、エンブレム55の脚部55dがそれぞれ挿入されて係止される例えば3つの係止孔部56cが形成されている。さらに、このバックプレート56の背面(裏面)には、周縁を枠状に囲む補強用のリブ部である外周リブ部56dと、この外周リブ部56dの内部に位置する補強用のリブ部である複数の直線リブ部56eとがそれぞれ形成されている。すなわち、バックプレート56は、これら外周リブ部56dと直線リブ部56eとの位置で、その他の部分よりも厚みが大きくなっている。そして、このバックプレート56は、全体として、エンブレム55よりも大きい面積を有しており、その外郭(最大外形)が、エンブレム55の外郭(最大外形)をほぼ包括する、換言すれば、バックプレート56の外郭(最大外形)の略全体がエンブレム55の外郭(最大外形)以上の大きさとなるように形成されている。但し、正面視でエンブレム55のエッジ部などの一部がバックプレート56の外部から突出しても良い。また、このバックプレート56の外郭(最大外形)は、平坦部56bから突出部56aまでの寸法L1が、開口B3の短手寸法L2以上とすることができ、この場合、バックプレート56が開口B3に正対した状態のままでは開口B3を通過できない大きさとなっている。また、場合によっては、バックプレート56の外郭(最大外形)を、開口B3の短手寸法L2と等しくするか、あるいはそれよりも若干小さくすることもできる。
【0030】
突出部56aは、例えば基端側から先端側へと徐々に幅寸法が狭くなるように形成されており、平面視で台形状に形成されている。
【0031】
平坦部56bは、突出部56aの突出方向と交差(直交)する方向に沿って形成されている。この平坦部56bは、エンブレム55が正規の方向となるように(図5などに示す状態となるように)取り付けたときに、第1の扉部31のヒンジ部51に対向し、このヒンジ部51と略平行になるように位置する。すなわち、この平坦部56bは、第1の扉部31のヒンジ部51に沿った形状となっている。
【0032】
また、係止孔部56cは、円形状に形成されており、平坦部56bと略平行に一直線上に並んで形成されている。さらに、これら係止孔部56cの内縁部には、エンブレム55の係止部55eが係止される複数、本実施の形態では3つの係止片56fが中心側へと突出して形成されている。これら係止片56fは、扇形状に形成され、周方向に略等間隔に配置されている。また、これら係止片56fは、先端側が自由端状に形成されており、弾性的に変形可能となっている。さらに、係止片56f,56f,56fの先端間には、丸孔状の係合孔56gが形成されている。この係合孔56gは、図2に示すように、係止孔部56cに挿入されたエンブレム55の係止部55eが挿入係止される孔部である。
【0033】
また、図4(b)に示すように、外周リブ部56dは、突出部56a及び平坦部56bに亘って環状に連続している。
【0034】
また、各直線リブ部56eは、平坦部56bに対して交差(直交)する方向に沿ってそれぞれ形成されており、両端部が外周リブ部56dと連続して一体となっている。すなわち、これら直線リブ部56eは、外周リブ部56dの互いに対向する一側と他側とを連結するように形成されている。そして、これら直線リブ部56eは、エンブレム55とバックプレート56とを互いに固定した状態で細片部55cと略平行となっている。
【0035】
そして、図5に示すように、バックプレート56は、カバー体20の正面板部23の背面(裏面)側の第1の扉部31に対応する部分に形成された一方及び他方の位置決め部としての一方及び他方の位置決めリブ部58,59間に配置されるように構成されている。
【0036】
一方の位置決めリブ部58は、バックプレート56の突出部56a側の位置を決めるもので、迂回テアライン部44の湾曲形状に沿って(図5中の左上側位置に沿って)形成されている。
【0037】
また、他方の位置決めリブ部59は、バックプレート56の平坦部56b側の位置を決めるもので、一方の位置決めリブ部58に対して対向した位置に形成されている。
【0038】
次に、上記一実施の形態の装飾部材24の取り付け作業について説明する。
【0039】
装飾部材24の取り付けの際には、まず、エンブレム55の各脚部55dをカバー体20の正面板部23の表面から取付孔に挿入する。
【0040】
次いで、カバー体20の背面側において、バックプレート56を、位置決めリブ部58,59間に嵌合させることにより、カバー体20の正面板部23の取付孔に挿入されたエンブレム55の各脚部55dとバックプレート56の各係止孔部56cとが位置合わせされ、各脚部55dが各係止孔部56cにそれぞれ挿入される。
【0041】
各係止孔部56cに挿入された各脚部55dは、それらの先端に径大に形成された係止部55eが各係止孔部56cの係止片56f,56f,56fを弾性的に変形させ、これら係止片56f,56f,56fの変形により拡大した係合孔56gを通過すると、係止片56f,56f,56fが復帰変形して係合孔56gが縮小され、係止部55eよりも径寸法が小さい各脚部55dの基端側の周囲に係止片56f,56f,56fが位置することとなる(図2)。この結果、エンブレム55の各脚部55dの係止部55eがバックプレート56の各係合孔56gに係止されることにより、エンブレム55がバックプレート56に、カバー体20の正面板部23を挟み込んだ状態で嵌合保持され、エンブレム55が図5に示す向きでカバー体20の正面板部23の所定位置に固定される。すなわち、エンブレム55とバックプレート56とは、エンブレム55の各脚部55d(係止部55e)をバックプレート56の各係止孔部56c(係合孔56g)に挿入するだけで、短時間で容易に取り付けでき、作業性が良好である。
【0042】
次に、上記一実施の形態の動作について説明する。
【0043】
図6に示す装飾部材24を固定した上記カバー体20を備えたエアバッグ装置14をステアリングホイール10に備えた自動車が衝突などすると、制御装置がインフレータを作動させ、エアバッグにガスを供給する。すると、エアバッグが急速に膨張展開し、この膨張展開する圧力でカバー体20をテアライン28に沿って破断し、扉部30、本実施の形態では4枚の第1ないし第4の扉部31,32,33,34を形成する。さらに、各扉部31,32,33,34は、ヒンジ部51を軸として回動してエアバッグを膨出させる開口である突出口を形成し、この突出口からエアバッグが乗員の前方に展開し、乗員を保護する。
【0044】
これら扉部31,32,33,34の展開の際、装飾部材24を取り付けた第1の扉部31は、装飾部材24を取り付けていない第2ないし第4の扉部32,33,34に対して重量があり、展開挙動の開始が遅れやすい傾向があり、また、いったん展開が始まると大きな慣性で同一方向に移動しようとする傾向がある。
【0045】
この点、本実施の形態では、装飾部材24を取り付けた第1の扉部31は、装飾部材24を取り付けていない第2ないし第4の扉部32,33,34とは形状を異ならせ、これら第2ないし第4の扉部32,33,34よりも面積を大きくしたため、この第1の扉部31は他の扉部32,33,34よりもエアバッグが展開する力を大きく受け、他の扉部32,33,34から遅れることなく、他の扉部32,33,34と同様にバランス良く展開する。
【0046】
そして、扉部30は、リム部15に向けて、第1の扉部31が開口B3へと展開し、第2の扉部32が開口B2へと展開し、第3及び第4の扉部33,34が開口B1へと展開する。すなわち、扉部30は、スポーク部17を外した位置へと展開する。
【0047】
そして、図1及び図2に示すように、第1の扉部31が展開すると、この第1の扉部31の取り付けられた装飾部材24のバックプレート56をあてがった部分のうち、突出部56aに対応する部分が、カバー体20を介して、あるいはカバー体20及びエンブレム55を介してステアリングホイール10のリム部15に当接する。
【0048】
したがって、第1の扉部31は、バックプレート56により補強された状態となっているため、リム部15と当接した際の衝撃によって湾曲状に弾性変形することがない。すなわち、相対的に軟質の部材(軟質樹脂)で形成されたカバー体20の第1の扉部31と、相対的に硬質の部材(硬質)で形成されたエンブレム55との変形差によって第1の扉部31からエンブレム55が浮き上がることがない。さらに、バックプレート56がリム部15に当接した状態では開口B3を通過できない大きさに形成されているだけでなく、第1の扉部31が弾性変形しないことで、エンブレム55が開口B3に入り込んでこの開口B3を通過することが阻止され、突出したエンブレム55のエッジ部分がステアリングホイール10の段差や隙間などに引っ掛かったり、細片部55cのいずれかがリム部15などの剛性部分に局所的に当接したりして、エンブレム55に外力が加わって変形する(図2の想像線I)ことがない。
【0049】
なお、上述したが、バックプレート56の外郭(最大外形)を開口B3の短手寸法L2と等しくするか、それよりも若干小さくした場合には、第1の扉部31がステアリングホイール10のリム部15に当接したとき、バックプレート56はリム部15と当接しないものの、第1の扉部31のリム部15との当接した位置の近傍にバックプレート56の突出部56aを配置していることで、第1の扉部31のリム部15と当接する位置の剛性が補強された状態となり、第1の扉部31がリム部15と当接した際の衝撃によって湾曲状に弾性変形することがない。したがって、バックプレート56の外郭(最大外形)を開口B3の短手寸法L2と等しいか、それより若干小さくしても、第1の扉部31が弾性変形しないことで、エンブレム56が開口B3に入り込んでこの開口B3を通過することを阻止する。
【0050】
以上のことから、バックプレート56の外郭(最大外形)が開口B3の短手寸法L2よりも若干小さいとは、第1の扉部31がリム部15に当接したときにエンブレム56が開口B3に入り込んでこの開口B3を通過しない大きさであってもよい。
【0051】
このように、エンブレム55を第1の扉部31に固定するバックプレート56の突出部56aが、第1の扉部31がステアリングホイール10のリム部15に向けて展開した状態でリム部15に当接して、ステアリングホイール10のハブ部16とリム部15との間の開口B3へのエンブレム55の進入を阻止することにより、仮に剛性(強度)が相対的に低い部分を有するエンブレム55であっても、高価な材料などを用いてエンブレム55の剛性(強度)を向上させることなく、製造コストを低減しエンブレム55を保護しつつ扉部30を所望の挙動で展開できる。
【0052】
具体的に、エンブレム55が、複数の切込み部55b,55bにより形成された低剛性部である細片部55c,55c,55cを有するものであっても、製造コストを低減しつつ扉部30の展開時のエンブレム55の変形を効果的に防止できる。
【0053】
また、エンブレム55は、一直線上に並ぶ脚部55dを用いてバックプレート56に嵌合保持することにより、バックプレート56には、脚部55dを挿入するための係止孔部56cが一直線上に並び、これら係止孔部56cが形成されている部分がバックプレート56の弱部となる。そのため、バックプレート56に各リブ部56d,56eなどを形成してバックプレート56を補強することにより、一直線上に係止孔部56cが並ぶ形状としても、バックプレート56の剛性(強度)を確保できる。したがって、扉部30(第1の扉部31)の展開時に突出部56aがカバー体20を介してリム部15と当接した場合でも、バックプレート56が過度に変形することがなく、エンブレム55をより確実に保護しつつ扉部30(第1の扉部31)を所望の挙動で展開できる。
【0054】
しかも、エンブレム55とバックプレート56とは、エンブレム55の各脚部55d(係止部55e)をバックプレート56の各係止孔部56c(係合孔56g)に挿入するだけで短時間で容易に取り付けできる簡単な構成であるため、これらエンブレム55とバックプレート56とを成形するための金型なども簡単な構造とすることができる。したがって、エンブレム55とバックプレート56とは、製造が容易となり、製造コストをより抑制できる。
【0055】
さらに、バックプレート56の第1の扉部31と正面板部23とが連接する部分であるヒンジ部51側の位置を、このヒンジ部51に沿う平坦部56bとすることにより、第1の扉部31がヒンジ部51を中心として展開する際に、この展開をバックプレート56の剛性(強度)によって妨げることがなく、扉部30(第1の扉部31)の円滑な展開を確保できる。すなわち、扉部30(第1の扉部31)は、展開する際にヒンジ部51にて円滑に変形して扉部30(第1の扉部31)を所望の挙動で展開させ、扉部30(第1の扉部31)の展開時のエネルギーを効果的に吸収できる。
【0056】
なお、上記の一実施の形態において、エンブレム55とバックプレート56とは、同一の合成樹脂などの材質によって形成し、溶着によって固定しても良いし、エンブレム55とバックプレート56とを溶着可能な材質によって形成して溶着固定しても良く、また、かしめ固定しても良い。すなわち、エンブレム55とバックプレート56との固定構造は、上記構成に限定されるものではない。
【0057】
また、バックプレート56を例えば金属などの材質によって形成しても良い。
【0058】
さらに、エンブレム55は、上記の一実施の形態の形状だけでなく、様々な形状とすることができる。
【0059】
また、扉部30は、少なくとも装飾部材24を備えるものであれば、複数でなくても良い。
【0060】
そして、上記の一実施の形態では、3本のスポーク部17を備えたステアリングホイール10について説明したが、この構成に限られず、1本あるいは2本のスポーク部17を備えた構成や、4本のスポーク部17を備えたハンドルに備えるエアバッグ装置14に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、例えば、自動車のハンドルに用いられるエアバッグ装置の他、種々の車両のハンドルその他の部位に備えられるエアバッグ装置に適用できる。
【符号の説明】
【0062】
10 ハンドルとしてのステアリングホイール
14 エアバッグ装置
15 リム部
16 固定部としてのハブ部
20 カバー体
23 カバー本体としての正面板部
24 装飾部材
28 テアライン
30 扉部
55 装飾体としてのエンブレム
55b 切込み部
55c 低剛性部である細片部
56 取付部材としてのバックプレート
56a 突出部
56b 縁辺部としての平坦部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグが配置される固定部及びこの固定部の周囲に位置するリム部を備えるハンドルの前記固定部に取り付けられて前記エアバッグを覆うカバー本体と、
このカバー本体を区画し前記エアバッグの膨張展開時に開裂して前記リム部に向けて展開する扉部を形成するテアラインと、
前記扉部に位置して前記カバー本体に設けられた装飾部材とを具備し、
前記装飾部材は、
前記扉部の表面側に位置する装飾体と、
この装飾体とは別体で設けられ、前記扉部の裏面側に位置し、この扉部を介して前記装飾体と連結されてこの装飾体を前記扉部に固定する取付部材とを備え、
前記取付部材は、前記扉部の展開状態で前記リム部に当接して前記固定部と前記リム部との隙間への前記装飾体の進入を阻止する突出部を有している
ことを特徴とするエアバッグ装置のカバー体。
【請求項2】
前記取付部材は、前記扉部と前記カバー本体とが連接する部分に対向する位置に、この連接する部分に沿って縁辺部を有している
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ装置のカバー体。
【請求項3】
前記装飾体は、相対的に剛性が低い低剛性部を形成する複数の切込み部を備えている
ことを特徴とする請求項1または2記載のエアバッグ装置のカバー体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−86697(P2012−86697A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235679(P2010−235679)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】