説明

エアバッグ装置

【課題】インフレータをエアバックに取り付ける際の部品点数を削減し、取り付け作業を簡素化する。
【解決手段】エアバッグ2は、インフレータ10が吐出する気体によって膨張して展開する展開部26と、インフレータ10を収容するインフレータ収容部25とを備えている。インフレータ収容部25は、その長さ方向の一側部に舌片状のシール片29を突出させ、このシール片29を、インフレータ収容部25の基部に形成してある切欠28に入り込ませてインフレータ10の後端部10b付近のインフレータ収容部25に巻き付ける。インフレータ10の後端部10b付近には、取付ボルト11を設けてあり、シール片29を巻き付けたときに、取付ボルト11をボルト挿入孔29a,30aに挿入して貫通させ、車体側の取付ブラケットに締結固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ内に気体を吐出するインフレータを備えたエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などに搭載されるエアバッグ装置は、衝突時などの緊急時にインフレータで発生させた気体によりエアバッグを膨張させて展開するように構成されている。この種のエアバッグ装置として、従来、インフレータの先端に、気体吐出口を備えた金属製のパイプ材を取り付け、このパイプ材をエアバッグの流入口部に挿入し、この流入口部の後端付近に外装されるクランプを利用してパイプ材をエアバッグに固定するとともに、インフレータ自体も取付ブラケットを利用して車体のインナパネルに固定している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第4019927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のエアバッグ装置では、インフレータにパイプ材を設けて該パイプ材をクランプによりエアバッグに固定し、さらにインフレータ自体も取付ブラケットにより車体に固定するという、極めて煩雑な取付構造となっており、したがって、インフレータを取り付ける上で部品点数が多く、取り付け作業も煩雑なものとなっている。
【0005】
そこで、本発明は、インフレータをエアバックに取り付ける際の部品点数を削減し、取り付け作業を簡素化することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、袋状のエアバッグ内に気体吐出口から気体を吐出して前記エアバッグの展開部を展開させるインフレータを有し、このインフレータ全体を収容するインフレータ収容部を、前記展開部に連通させつつ前記エアバッグに一体的に設けるとともに、前記インフレータ収容部に前記インフレータを挿入するための開口部を、前記インフレータの気体吐出口と反対側の端部付近に設け、前記インフレータ収容部に、少なくとも前記開口部を含む延出部を前記インフレータ収容部から一体的に外方へ延出して設け、この延出部を前記インフレータ収容部に重ね合わせて前記開口部を塞ぎつつ、前記インフレータを前記エアバッグに取り付けることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のエアバッグ装置であって、前記延出部に対応する位置の前記インフレータ収容部と前記展開部との間に、これら相互間の気体の流通を遮蔽する遮蔽部を設けて、前記インフレータの気体吐出口と反対側の端部付近の周囲を囲む筒状部を形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のエアバッグ装置であって、前記インフレータ収容部は、前記展開部に対して長手方向全長にわたり連続していることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2に記載のエアバッグ装置であって、前記遮蔽部は、前記インフレータ収容部と前記展開部とを離間させる空隙であり、この空隙に前記延出部を入り込ませたことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエアバッグ装置であって、前記延出部を、前記インフレータの気体吐出口と反対側の端部付近に設け、この延出部を前記インフレータ収容部の長手方向に沿って重ね合わせたことを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項3に記載のエアバッグ装置であって、前記延出部を、前記インフレータ収容部の全長にわたり設け、この延出部の基部側における前記インフレータの気体吐出口に対応する位置に封止部を設けて、前記インフレータの気体吐出口と反対側の端部付近に前記開口部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、インフレータを、エアバッグの展開部に連通するインフレータ収容部に挿入配置するとともに、インフレータをインフレータ収容部に挿入するための開口部を有する延出部を、インフレータ収容部に重ね合わせて開口部を塞ぐようにしたので、インフレータ自体を車体に直接取り付ける必要もなく、インフレータを挿入した状態のインフレータ収容部を車体に取り付ければよく、インフレータを取り付ける際の部品点数を削減して取付構造も簡素化でき、取り付け作業性も向上する。
【0013】
請求項2の発明によれば、エアバッグ内に気体が吐出されて展開室が展開する際に、筒状部分によってインフレータの揺動が規制され、エアバッグの展開姿勢が安定化する。また、展開室内の気体のインフレータ収容部への特に延出部に向かう流れが遮蔽部によって遮蔽されるので、延出部に設けてある開口部に対するシール性が向上する。
【0014】
請求項3の発明によれば、エアバッグ内に気体が吐出されて展開室が展開する際に、展開室がインフレータ収容部の長方向全長にわたって支持された形となるので、展開室の展開姿勢が安定化する。
【0015】
請求項4の発明によれば、延出部を空隙に入り込ませることで、延出部を二重もしくは三重と、複数回インフレータ収容部に巻き付けることができ、延出部に設けてある開口部に対するシール性をより高めることができる。
【0016】
請求項5の発明によれば、延出部の長さをインフレータ収容部の長さに合わせてより長く設定できるので、エアバッグが展開する際の耐圧性が向上する。
【0017】
請求項6の発明によれば、封止部によってインフレータの気体吐出口近傍の耐圧性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係わるエアバッグ装置の要部を示す正面図である。なお、ここでは、上記エアバック装置を、車室内側面上方に収納されるカーテンエアバッグ装置として実施した場合について例示する。
【0020】
カーテンエアバッグ装置は、一般に知られるように、側突時や横転時などの緊急時に自動車の車室内側面、つまり、フロントドアガラスやリヤドアガラスの内側を覆って展開し、乗員を側方衝突から保護する。
【0021】
このようなカーテンエアバッグ装置は、エアバッグ2の展開部26が展開した状態では、図2に示すフロントドアガラス101やリヤドアガラス102を覆う形状となって、車両前後方向の寸法が上下方向の寸法に比較して長くなる。
【0022】
また、上記した本実施形態のエアバッグ2は、2枚の基布の周縁同士を縫合部24で縫合することで袋状に形成している。
【0023】
図3は、エアバッグ2を収納した状態の車室内上部のセンタピラー103を中心とした車室内から見た図であり、図4(a)は、図3のB−B断面図、図4(b)は図3のC−C断面図である。
【0024】
エアバッグ2の展開部26を、上下方向に折り畳むなどして前後方向に細長くして、それをルーフサイドレールの車室内側に沿って取り付ける。なお、図4中の符号104は閉断面に構成されるルーフサイドレールのインナパネルであり、符号105はエアバッグ装置を車体に取り付けるための取付ブラケットである。
【0025】
また、図4中、符号106はルーフライニングであり、折り畳んだエアバッグ2の展開部26をルーフライニング106の側縁部の裏側に収納する。そして、エアバッグ2の展開時には、膨張するエアバッグ2がルーフライニング106の側縁部を押し下げて隙間を作り、その隙間を広げつつエアバッグ2が下方に展開する。なお、このルーフライニング106は、図3では省略してある。
【0026】
図1に示すように、エアバッグ2は、展開部26の前後方向(図1中では左右方向)のほぼ中央部の上縁に、インフレータ収容部25を上方に向けて突出するよう一体的に備えている。そして、このインフレータ収納部25内にインフレータ10を挿入配置する。なお、図1中の符号40は信号線であり、この信号線40は、インフレータ10とともにインフレータ収納部25内に一旦挿入した後、インフレータ収納部25の適宜位置に形成した孔から外部に引き出す。
【0027】
インフレータ10は、緊急時に瞬時に気体を発生して、その気体をエアバッグ2の展開部26内に供給することにより、当該エアバッグ2を膨張させて展開する。このインフレータ10は、車両前後方向が長手方向(軸方向)となる細長い円筒状に形成され、そのインフレータ10の周方向の側面には、図4に示すように固定具としての取付ボルト11が突出し、その取付ボルト11を、エアバッグ2並びに取付ブラケット105を貫通させ、サイドレールインナパネル104裏面のウエルドナット12に螺着する。
【0028】
ここで本実施形態では、前記図1に示すように、インフレータ収納部25が展開部26の側縁から突出するようにして一体化し、ほぼ円柱形状のインフレータ10の形状に対応して図1中で左右方向に長い形状としている。
【0029】
インフレータ10は、その図1中で左側の先端部に気体吐出口10aを有し、この気体吐出口10aに対応する位置に、インフレータ収容部25と展開部26とを連通する連通部となる連通口27を設けている。これによりインフレータ収容部25は、この連通口27に対応する部位にてインフレータ収容部25と展開部26とが一体化する一方、インフレータ10の気体吐出口10aと反対側の後端部10bに対応する位置においては、インフレータ収容部25と展開部26との間に空隙としての切欠28を形成してこれらが互いに離間している。この切欠28は、インフレータ収容部25の図1中で右側の端縁部側が開放している。
【0030】
そして、上記したインフレータ収容部25は、インフレータ10の気体吐出口10aと反対側に対応する位置に、インフレータ収容部25に連続して外方へ延出する舌片状の延出部としてのシール片29を設けている。このシール片29の幅寸法hは、前記した切欠28の幅寸法Hとほぼ同じか小さくしてある。
【0031】
上記したシール片29は、その先端部に、エアバッグ2を構成する前記した2枚の基布のうち一方(図1中で紙面表側)のみをさらに延出させて折り返し部30を設けている。したがって、2枚の基布のうち他方(図1中で紙面裏側)の先端部に、インフレータ収容部25内の空間が外部に開口する開口部31が形成されることになる。
【0032】
この開口部31を通してインフレータ10をインフレータ収容部25に挿入位置する。すなわち、上記したシール片29は、開口部31を含むインフレータ収容部25から一体的に外方へ延出している。
【0033】
また、シール片29は、インフレータ10から突出してインフレータ収容部25を貫通する前記した取付ボルト11を挿入するためのボルト挿入孔29a及び、折り返し部30に設けたボルト挿入孔30aとをそれぞれ備えている。
【0034】
図2(a)は、上記したシール片29を、図1の状態から紙面裏側に折り曲げるようにして切欠28に入り込ませつつ、図2のA−A断面図である図2(b)のように、インフレータ10の後端部10bの周囲に対応する位置のインフレータ収容部25に重ね合わせるようにして巻き付けている。この際、前記したボルト挿入孔29aとボルト挿入孔30aに、上記の取付ボルト11が挿入された状態となる。
【0035】
図2(b)のようにシール片29をインフレータ収容部25に巻き付けることによって、開口部31を塞ぐことができ、この際、開口部31は巻き付け内側に位置するように巻き付けているので、開口部31をより確実に塞ぐことができる。これにより、開口部31に対するシール性が高まり、エアバック2内のより高圧保持化に対応可能となる。
【0036】
ここで取付ボルト11は、図2(b)に示すように、インフレータ収容部25のボルト挿入孔25aに挿入されて外部に突出しており、この取付ボルト11を、上記したボルト挿入孔29a,30aに挿入した状態で、図4(b)に示すように、取付ブラケット105に挿入してナット12を締結する。また、取付ブラケット105は、図4(a)に示すように、ファスナなどの留め具32を用いて車体側のインナパネル104に固定している。
【0037】
このような第1の実施形態によるエアバッグ2は、インフレータ10を、エアバッグ2の展開部26に連通するインフレータ収容部25に挿入配置するとともに、インフレータ10をインフレータ収容部25に挿入するための開口部31を有する延出部であるシール片29を、インフレータ収容部25に重ね合わせて開口部31を塞ぐようにしている。
【0038】
このため、インフレータ10自体を車体に直接取り付ける必要もなく、インフレータ10を挿入した状態のインフレータ収容部25を車体のインナパネル104に取り付ければよく、したがってインフレータ10を取り付ける際の部品点数を削減して取付構造も簡素化でき、取り付け作業性も向上するものとなる。
【0039】
この際、本実施形態では、インフレータ10から突出させた取付ボルト11を、インフレータ収容部25に重ね合わせたシール片29のボルト挿入孔29a,30aに挿通して車体のインナパネル104に固定しているので、本エアバッグ装置を車体に取り付ける際に、クランプなどの取付部品を別部品として用いる必要がなく、したがってエアバッグ装置の車体への搭載作業が簡単な構造で容易に行うことができる。
【0040】
なお、車体側の取付ブラケット105から突出して設けた取付ボルトを、インフレータ10側に設けたねじ孔に締結する構造としてもよい。
【0041】
また、第1の実施形態によれば、開口部31を、インフレータ10の気体吐出口10aと反対側に対応する位置に設けている。これにより、インフレータ収容部25には、図1に示すように、連通口27を間に挟んで展開部26と反対側に連通口背後部33が形成され、気体吐出口10aから連通口27を通して展開部26に向けて吐出した気体の吐出圧を受け止めることになり、気体吐出口10a近傍の耐圧性が向上する。
【0042】
この際、シール片29をインフレータ10の気体吐出口10aと反対側に対応する位置に設け、このシール片29を図2のようにインフレータ収容部25に巻き付けるようにしている。これにより、気体吐出口10a側の耐圧性を損なうことなく、インフレータ10の収容性を得ることができる。
【0043】
また、本実施形態では、インフレータ10の気体吐出口10aと反対側に対応する位置のインフレータ収容部25と展開部26との間に、空隙である切欠28を設け、この切欠28にシール片29を挿入している。これにより、シール片29を二重もしくは三重と、複数回インフレータ収容部25に巻き付けることができ、開口部31をより確実に閉塞してシール性を高めることができ、エアバック2内のより高圧保持化に有効となる。
【0044】
この際、切欠28は、インフレータ収容部25の端縁部側が開放しているので、シール片29の挿入及び巻き付け作業が容易である。
【0045】
また、上記した切欠28によって、シール片29に対応する位置のインフレータ収容部25と展開部26との間に、これら相互間の気体の流通を遮蔽する遮蔽部を設けたことになる。さらに、シール片29をインフレータ収容部25に重ね合わせる(巻き付ける)ことによって、インフレータ収容部25に、インフレータ10の気体吐出口10aと反対側の後端部10b付近の周囲を囲む筒状部を形成したことになる。
【0046】
これにより、エアバッグ2内に気体が吐出されて展開室26が展開する際に、上記した筒状部によってインフレータ10の揺動が規制され、エアバッグ2の展開姿勢が安定化する。また、展開室26内の気体のインフレータ収容部25への特にシール片29に向かう流れが上記した遮蔽部(切欠28)によって遮蔽されるので、シール片29に設けてある開口部31に対するシール性が向上する。
【0047】
また、本実施形態では、シール片29に、開口部31を閉塞する折り返し部30を設けているので、開口部31をより確実に塞ぐことができる。
【0048】
図5は、本発明の第2の実施形態に係わる、前記図1に相当するエアバッグ装置の要部を示す正面図である。第2の実施形態は、図1に示した切欠28に代えて、空隙である貫通孔34を設けている。
【0049】
すなわち、この貫通孔34にシール片29を挿入し、第1の実施形態の図2(b)と同様にしてインフレータ10の後端部10bの周囲に対応する位置のインフレータ収容部25に重ね合わせるようにして巻き付ける。
【0050】
第2の実施形態においては、シール片29が貫通孔34に挿入した状態となるので、巻き付け状態の保持がより確実となり、インフレータ10の固定保持がより安定化し、シール性をより一層高めることができる。
【0051】
図6は、本発明の第3の実施形態に係わる、前記図1に相当するエアバッグ装置の要部を示す正面図である。第3の実施形態は、前記図1における切欠28を設けずに、インフレータ収容部25を展開部26に対して全長にわたり連続する構成としている。
【0052】
この際、インフレータ10の気体吐出口10aと反対側に対応する位置には、インフレータ収容部25と展開部26との連通を遮断する遮蔽部としての縫合部35を設けている。したがって、インフレータ10の気体吐出口10aに対応する位置には、インフレータ収容部25と展開部26とを連通する連通口27が形成される。
【0053】
また、第3の実施形態では、折り返し部30をその基端部に相当する開口部31付近で折り曲げてシール片29に重ね合わせ、このときボルト挿入孔29aとボルト挿入孔30aとが互いに整合した状態となる。この状態で、この重ね合わせたシール片29を、図6中で紙面裏側に折り曲げるようにしてインフレータ収容部25に重ね合わせることで、ボルト挿入孔29a,30aに取付ボルト11を挿入する。
【0054】
以後は、前記図4(b)と同様にして、取付ブラケット105に対しナット12を締結することにで、本エアバッグ装置を車体に取り付ける。
【0055】
上記した第3の実施形態によれば、インフレータ収容部25が、展開部26に対して全長にわたり連続しているので、前記図1に示した第1の実施形態におけるような切欠28を設けた場合に比較して、エアバッグ2内に気体が吐出されて展開部26が展開する際に、展開部26がインフレータ収容部25の長方向全長にわたって支持された形となるので、展開部26の展開姿勢が安定化する。
【0056】
このような展開姿勢の安定化という効果は、前記図5に示した第2の実施形態においても、第1の実施形態の切欠28とは異なる貫通孔34を設けた構成であるので、同様に得ることができる。
【0057】
また、インフレータ収容部25と展開部26との連通を遮断する遮蔽部としての縫合部35を設けることで、インフレータ収容部25は、インフレータ10の後端部10b側の周囲を包囲するような筒状部が形成される。これにより展開部26は、膨張して展開する際に揺動が規制され安定した展開姿勢を得ることができる。
【0058】
また、縫合部35によって膨張気体の展開部26からインフレータ収容部25への流れを規制できるので、開口部31を塞ぐシール片29に対する負荷を軽減することができる。
【0059】
図7(a)は、本発明の第4の実施形態に係わる、前記図1に相当するエアバッグ装置の要部を示す正面図である。第4の実施形態は、上記した第3の実施形態と同様に、インフレータ収容部25を展開部26に対して全長にわたり連続する構成とするとともに、シール片29を、インフレータ収容部25の全長にわたり連続して設けている。つまり、シール片29は、展開部26から連続して突出するインフレータ収容部25から、その幅寸法をほぼそのままとしてさらに連続して突出していることになる。
【0060】
そして、この実施形態では、図6と同様にインフレータ10の気体吐出口10aと反対側に対応する位置に、インフレータ収容部25と展開部26との連通を遮断する遮蔽部としての縫合部35を設けるとともに、インフレータ10の気体吐出口10a側に対応する位置のシール片29側に、封止部としての縫合部36を設けている。
【0061】
縫合部36を設けることによって、インフレータ10の気体吐出口10aと反対側に対応する位置に、インフレータ10をインフレータ収容部25に挿入するための開口部31が形成されることになる。
【0062】
また、シール片29には2つのボルト挿入孔29aを設けている。なお、本実施形態では、シール片29における2枚の基布の先端は互いに揃えてあって、前記図6に示したような折り返し部30を設けていないが、2枚の基布の一方をシール片29の全長にわたりさらに延出して折り返し部を設けてもよい。
【0063】
上記したシール片29を、図7(a)中で紙面裏側に折り曲げるようにしてインフレータ収容部25に重ね合わせ、図7(b)に示すように、インフレータ10の取付ボルト11を利用して取付ブラケット105に取り付ける。
【0064】
なお、図7(b)の符号37は、インフレータ10に取り付けてある断面ほぼL字型のインフレータ固定具で、本実施形態ではこのインフレータ固定具37に取付ボルト11を設けている。また、符号38はガス分配布で、ガス分配布38は、エアバッグ2の展開時に筒状に膨張することにより、インフレータ10で発生したガスをガス分配布38の両端開放部38a,38bから車両前後方向に噴出する。このガス分配布38は、外周縁部が図7に示すように、エアバック2の2枚の基布と一緒に縫製されるとともに、シール片29に対応する部分をシール片29とともにボルト11により固定される。
【0065】
第4の実施形態によれば、シール片29を、インフレータ収容部25の全長にわたり設け、このシール片29の基部側のインフレータ10の気体吐出口10aに対応する位置に封止部である縫合部36を設けて、気体吐出口10aと反対側に対応する位置に開口部31を形成している。
【0066】
このため、第3の実施形態と同様に、展開部26の展開姿勢を安定化できるとともに、縫合部35によって膨張気体の展開部26からインフレータ収容部25への流れを規制でき、また縫合部36によって図1に示す第1の実施形態の連通口背後部33と同様の機能を発揮して気体吐出口10a近傍の耐圧性を向上させることができる。
【0067】
この際、本実施形態では、シール片29を、展開部26から連続して突出するインフレータ収容部25からその幅寸法そのままでさらに連続して突出させているので、前記した各実施形態のように、インフレータ収容部25の幅方向一部位を突出させてシール片29を形成する場合に比較して、製造が容易となる。
【0068】
図8(a)は、本発明の第5の実施形態に係わる、前記図1に相当するエアバッグ装置の要部を示す正面図である。第5の実施形態は、前記図6に示した第3の実施形態に対し、シール片29をその先端まで2枚の基布で構成し、折り返し部を設けていない。
【0069】
そして、本実施形態では、シール片29をその基端部の傾斜している折り曲げ線39で折り曲げて、図8(b)に示すように、インフレータ収容部25の長手方向に沿って重ね合わせる。以後は、前記図4(b)と同様にして取付ブラケット105に対してナット12を締結することにより取り付ける。
【0070】
上記した第5の実施形態によれば、シール片29をインフレータ収容部25のほぼ全長にわたって重ね合わせることができるので、シール片29の長さを長くすることができ、展開部26が膨張する際の耐圧性を高めることが可能となる。
【0071】
なお、前記図6に示した第3の実施形態の場合にシール片29の長さを長く設定しても、先端側が展開部26に達してしまい、シール片29の固定が困難となる。
【0072】
図9は、本発明の第6の実施形態に係わるエアバッグ装置の要部を示す斜視図である。第6の実施形態は、前記した各実施形態と同様に、インフレータ10全体をエアバッグ2のインフレータ収容部25に収容している。そして、図10の分解斜視図で示すようにシール片29は、前記図8に示したものと同様に、その先端まで2枚の基布で構成してあるが、その突出長さを図8のシール片29よりも短くし、図8のように斜めに折り曲げずに先端の開口部31が展開部26側に向くように直角に折り曲げてインフレータ収容部25に重ね合わせる。
【0073】
インフレータ収容部25に収容したインフレータ10は、図10及び、図9のD−D断面図である図11に示すように、ベース板41及びリテーナバー43を用いて車体側のインナパネル104に取り付けている。したがって、ここでのインフレータ10には取付ボルト11などの固定具を設定しておらず、これに対応してシール片29にもボルト挿入孔29aを設けていない。
【0074】
なお、上記ベース板41及びリテーナバー43は取付具を構成し、リテーナバー43は押さえ具を構成している。
【0075】
ベース板41は、大略長方形状の平板部42の中央に、インフレータ10を収容した状態のインフレータ収容部25を配置して位置決めするための凹部42aを形成するとともに、図10中の上部側縁の長手方向ほぼ中央にインフレータ押さえ片44を形成している。インフレータ押さえ片44は、インフレータ10を収容した状態のインフレータ収容部25の長手方向ほぼ中央部を覆うように、弾性変形可能なように湾曲形成してあり、その先端43aを上記湾曲方向とは逆方向に屈曲させつつ平板部42における図10中の下部側縁付近に対向させている。
【0076】
このような構成のベース板41は、インフレータ押さえ片44の先端44aを平板部42から離れる方向に弾性変形させてインフレータ押さえ片44と平板部42との間の空間を広げた状態で、インフレータ10を収容した状態のインフレータ収容部25を凹部42aにて位置決めするようにして配置する。これにより、インフレータ10を収容した状態のインフレータ収容部25は、インフレータ押さえ片44により押さえ付けられた状態となる。
【0077】
この状態でさらに、図9及び図11に示すように、リテーナバー43を、インフレータ押さえ片44の先端44aにおける屈曲部位内側に整合させつつ、前記折り曲げたシール片29の先端を抑えるようにして、ベース板41にブラインドリベット45を用いて固定する。
【0078】
そして、ベース板41における上端の左右2箇所の角部に設けた取付孔42bに、図11に示すねじ45を挿入して車体のインナパネル105に締結固定する。
【0079】
このように、第6の実施形態においても、インフレータ10を、エアバッグ2の展開部26に連通するインフレータ収容部25に挿入配置するとともに、インフレータ10をインフレータ収容部25に挿入するための開口部31を有するシール片29を、インフレータ収容部25に重ね合わせて開口部31を塞ぐようにしたので、インフレータ10自体を車体に直接取り付ける必要もなく、インフレータ10を挿入した状態のインフレータ収容部25を車体のインナパネル104に取り付ければよく、インフレータ10を取り付ける際の部品点数を削減して取付構造も簡素化でき、取り付け作業性も向上する。
【0080】
この際、第6の実施形態では、インフレータ収容部25を取り付けた取付具であるベース板41及びリテーナバー43を車体に固定することで、エアバッグ装置の車体への搭載作業を簡単な構造で容易に行うことができる。
【0081】
なお、上記実施形態では、エアバック装置として、フロントドアガラスやリヤドアガラスの内側を覆って展開するサイドエアバックとして説明したが、例えばミニバンやワンボックスカーのような傾斜のきつい(立っている)リアウインドウガラスの内側を覆って展開するエアバックとしても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わるエアバッグ装置の要部を示す正面図である。
【図2】(a)は図1のシール片をインフレータ収容部に巻きつけた状態を示す正面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【図3】エアバッグを収納した状態の車室内上部のセンタピラーを中心とした車室内から見た側面図である。
【図4】(a)は図3のB−B断面図、(b)は図3のC−C断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係わるエアバッグ装置の要部を示す正面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係わるエアバッグ装置の要部を示す正面図である。
【図7】(a)は、本発明の第3の実施形態に係わるエアバッグ装置の要部を示す正面図、(b)は(a)のシール片を巻き付けた状態を示す断面図である。
【図8】(a)は、本発明の第5の実施形態に係わるエアバッグ装置の要部を示す正面図、(b)は(a)のシール片を折り曲げた状態を示す正面図である。
【図9】本発明の第6の実施形態に係わるエアバッグ装置の要部を示す斜視図である。
【図10】図9の分解斜視図である。
【図11】図9のD−D断面図である。
【符号の説明】
【0083】
2 エアバッグ
10 インフレータ
10a インフレータの気体吐出口
25 エアバッグのインフレータ収容部
26 エアバッグの展開部
28 切欠(空隙)
29 シール片(延出部)
30 折り返し部
31 シール片の開口部
34 貫通孔(空隙)
35 縫合部(遮蔽部)
36 縫合部(封止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状のエアバッグ内に気体吐出口から気体を吐出して前記エアバッグの展開部を展開させるインフレータを有し、このインフレータ全体を収容するインフレータ収容部を、前記展開部に連通させつつ前記エアバッグに一体的に設けるとともに、前記インフレータ収容部に前記インフレータを挿入するための開口部を、前記インフレータの気体吐出口と反対側の端部付近に設け、前記インフレータ収容部に、少なくとも前記開口部を含む延出部を前記インフレータ収容部から一体的に外方へ延出して設け、この延出部を前記インフレータ収容部に重ね合わせて前記開口部を塞ぎつつ、前記インフレータを前記エアバッグに取り付けることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記延出部に対応する位置の前記インフレータ収容部と前記展開部との間に、これら相互間の気体の流通を遮蔽する遮蔽部を設けて、前記インフレータの気体吐出口と反対側の端部付近の周囲を囲む筒状部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記インフレータ収容部は、前記展開部に対して長手方向全長にわたり連続していることを特徴とする請求項1または2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
前記遮蔽部は、前記インフレータ収容部と前記展開部とを離間させる空隙であり、この空隙に前記延出部を入り込ませたことを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記延出部を、前記インフレータの気体吐出口と反対側の端部付近に設け、この延出部を前記インフレータ収容部の長手方向に沿って重ね合わせたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記延出部を、前記インフレータ収容部の全長にわたり設け、この延出部の基部側における前記インフレータの気体吐出口に対応する位置に封止部を設けて、前記インフレータの気体吐出口と反対側の端部付近に前記開口部を形成したことを特徴とする請求項3に記載のエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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