説明

エアバッグ装置

【課題】衝撃に応じ乗員の頭部が衝撃箇所側へ移動しても、その頭部をエアバッグによって確実に受け止めて衝撃から保護する。
【解決手段】座席13について乗員P2の衝撃箇所側となる箇所の内部に、非膨張状態のエアバッグ41を収容するとともに、同エアバッグ41について衝撃箇所とは反対側近傍に固定部材を配設する。座席13の背もたれ部15内に設けられている既設のシートフレーム18のサイドフレーム部18Aを固定部材として利用する。非膨張状態のエアバッグ41を、膨張状態となったときの自身の後端41Rがサイドフレーム部18Aの衝撃箇所側の近傍に位置するように配置する。さらに、エアバッグ41を、その後端41Rよりも前方へ離間した箇所においてサイドフレーム部18Aに固定することにより、エアバッグ41の後部に、サイドフレーム部18Aに対する固定箇所よりも後側で膨張する後膨張部46を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の座席が並設された車両に対し、その並設方向の一方から他方に向けて衝撃が加わるときの同車両の衝撃箇所に最も近い座席を除く他の座席に適用されるエアバッグ装置に関し、より詳しくは上記他の座席に着座し、かつ衝撃に伴い衝撃箇所側へ移動する乗員の少なくとも頭部をエアバッグで受け止めて衝撃から保護するエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車幅方向に一対の座席が並設された車両では、側突によりドア等のボディサイド部に衝撃が加わった場合に、その衝撃箇所(ボディサイド部)に近い側の座席に着座した乗員をエアバッグ装置によって保護することが一般的に行われている。このタイプは、通常、サイドエアバッグ装置と呼ばれるものであり、座席の背もたれ部について、乗員の衝撃箇所(ボディサイド部)側となる箇所の内部に、エアバッグとこれに膨張用ガスを供給するインフレータとが配設されている。インフレータは、エアバッグが膨張状態となったときに、同エアバッグ内の後端部に位置するように配置されている。そして、インフレータが、エアバッグを通じ背もたれ部内のシートフレームに締結されることにより、エアバッグがその後端部においてシートフレームに固定されている。
【0003】
上記サイドエアバッグ装置では、ボディサイド部に衝撃が加わると、インフレータから膨張用ガスがエアバッグに供給される。この膨張用ガスによりエアバッグが膨張を開始し、その一部を背もたれ部内に残した状態で、同エアバッグが背もたれ部から前方へ飛び出す。その後は、エアバッグは、乗員とボディサイド部との間を通って前方へ膨張する。そのため、衝撃に伴い乗員が衝撃箇所(ボディサイド部)側へ移動しようとしても、その乗員は膨張したエアバッグによって受け止められる。この受け止めに際し、エアバッグに対し乗員による押圧力が加わる。この押圧力により、エアバッグの固定箇所(後端部)の近傍部分が伸張させられることで、同エアバッグが同後端部を支点として衝撃箇所側へ回転しようとする。しかし、その回転は、エアバッグがボディサイド部に当ることで規制される。
【0004】
さらに、近年では、衝撃箇所(ボディサイド部)から遠い側の座席に着座した乗員の頭部をエアバッグ装置によって保護することも考えられるようになってきている。とはいえ、このタイプのエアバッグ装置は、上記サイドエアバッグ装置ほど開発が進んでいない。そのため、サイドエアバッグ装置の構成を、後者のタイプのエアバッグ装置に適用することが考えられる。図8に示すように、このエアバッグ装置80は、ボディサイド部に衝撃が加わった場合、同図8の実線で示すようにエアバッグ81を、乗員Pの頭部Phの側方で前方へ向けて膨張させ、前記衝撃に伴い衝撃箇所(ボディサイド部)側へ移動する乗員Pの頭部Phを受け止めて衝撃から保護しようとするものである。
【0005】
なお、本発明にかかる先行技術文献としては、下記特許文献1が挙げられる。これについては後述する。
【特許文献1】特開平9−207702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、衝撃箇所(ボディサイド部)から遠い側の座席を基準とし、それよりも衝撃箇所側(図8の右側)には、上記サイドエアバッグ装置とは異なり、ボディサイド部のようなエアバッグ81の回転を規制する部材が存在しない。そのため、側突による衝撃に応じ乗員Pの頭部Phが衝撃箇所側へ移動しようとした場合、エアバッグ81が頭部Phによって衝撃箇所側へ押される。この際の押圧力Fによって、エアバッグ81の固定箇所である後端部82の近傍部分が伸張させられることで、エアバッグ81が後端部82を支点として同図8において二点鎖線で示すように衝撃箇所側へ回転するおそれがある。さらに、押圧力Fが加わっている状況下でエアバッグ81が伸張しきれなくなると、同エアバッグ81は回転できなくなって、後端部82において折れる(屈曲する)おそれがある。こうした回転や折れ(屈曲)が生ずると、エアバッグ81に、乗員Pの頭部Phを受け止める機能を充分に発揮させることが困難となる。
【0007】
なお、こうした問題は、3つ以上の座席が並設された車両においても同様に起こり得る。この場合、座席の並設方向の一方から他方へ向けて衝撃が加わるときの車両の衝撃箇所に最も近い座席を除く他の座席が、エアバッグ装置の適用対象となる。また、上記の問題は、乗員が着座したときに、車両の前後方向とは異なる方向、例えば車幅方向を向くように複数の座席が並設された車両においても同様に起こり得る。この場合、車両に対し前方又は後方から衝撃が加わると、その衝撃が並設方向の一方から他方へ向かう衝撃となる。
【0008】
一方、特許文献1には、衝撃箇所(ボディサイド部)に近い側の座席の背もたれ部について、乗員の衝撃箇所側となる箇所の内部にガイド部材(偏向板)を設け、エアバッグの膨張に際し、そのエアバッグをガイド部材(偏向板)によって前方へガイドするようにしたエアバッグ装置が記載されている。そのため、この特許文献1に記載のものを、上記衝撃箇所から遠い側の座席のエアバッグ装置に適用し、ガイド部材(偏向板)によって、エアバッグの回転・折れ(屈曲)を抑制することも考えられる。しかしながら、特許文献1に記載のものでは、ガイド部材(偏向板)がエアバッグの側方から前方にかけての箇所にしか設けられていない。エアバッグが自身の後端部において固定される点については、上述したサイドエアバッグ装置、及びこれを適用した上記エアバッグ装置(図8参照)と同じである。そのため、特許文献1に記載のエアバッグ装置の構成をたとえ衝撃箇所から遠い側の座席のエアバッグ装置に適用したとしても、エアバッグの回転・折れ(屈曲)を充分抑制することが困難である。なお、特許文献1に記載のものでは、ガイド部材(偏向板)に加え、上述したボディサイド部(サイドドアのドアトリム)も回転・折れ(屈曲)を抑制するため、上述したような問題は特に生じない。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、衝撃に応じ乗員の頭部が衝撃箇所側へ移動しても、その頭部をエアバッグによって確実に受け止めて衝撃から保護することのできるエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の座席が並設された車両に対し、その並設方向の一方から他方へ向けて衝撃が加わるときの同車両の衝撃箇所に最も近い座席を除く他の座席に適用され、同他の座席に着座し、かつ前記衝撃に伴い前記衝撃箇所側へ移動する乗員の少なくとも頭部を、膨張用ガスにより膨張し、かつ自身の一部を前記座席内に残した状態で同座席から前記頭部の前記衝撃箇所側へ飛び出すエアバッグにて受け止めるようにしたエアバッグ装置であって、前記他の座席について前記乗員の前記衝撃箇所側となる箇所の内部には、非膨張状態の前記エアバッグが収容されるとともに、同エアバッグについて前記衝撃箇所とは反対側近傍に固定部材が配設されており、非膨張状態の前記エアバッグは、膨張状態となったときの自身の後端が前記固定部材の前記衝撃箇所側の近傍に位置するように配置され、かつ同エアバッグ自身の前記後端よりも前方へ離間した箇所において前記固定部材に固定されることにより、前記固定部材に対する固定箇所よりも後側で膨張する後膨張部を自身の後部に有することを要旨とする。
【0011】
上記の構成によれば、車両に対し、座席の並設方向の一方から他方へ向けて衝撃が加わると、他の座席に適用されたエアバッグ装置のエアバッグに膨張用ガスが供給されて同エアバッグが膨張する。この膨張によりエアバッグは、自身の一部を座席内に残した状態で同座席から乗員の少なくとも頭部の衝撃箇所側へ飛び出す。
【0012】
一方、上記衝撃に伴い乗員の少なくとも頭部が慣性により衝撃箇所側へ移動する。乗員がその頭部において衝撃箇所側の膨張状態のエアバッグに接触した後も衝撃箇所側へ移動しようとすると、同エアバッグに対し、衝撃箇所側へ向かう押圧力が加わる。この際、仮に、膨張状態のエアバッグがその後端部において固定されていると、エアバッグは固定箇所である自身の後端部を支点として衝撃箇所側へ回転したり、その回転の途中で折れたり(屈曲したり)するおそれがある。
【0013】
しかし、請求項1に記載の発明では、エアバッグの膨張に際し、そのエアバッグの固定部材に対する固定箇所よりも後側に設けられた後膨張部も膨張する。乗員による衝撃箇所側へ向かう押圧力は、エアバッグにおいて固定部材に対する固定箇所よりも前側の膨張部分に加わる。この押圧力によりエアバッグが固定部材との固定箇所を支点として回転し、エアバッグの固定箇所よりも前側の部分が固定部材から離れようとするが、後膨張部が固定部材に近づく。そして、後膨張部が固定部材と接触すると、エアバッグがそれ以上回転することが規制される。
【0014】
また、上記のように固定箇所よりも後側の後膨張部が膨張することにより、こうした後膨張部での膨張がない場合に比べ、エアバッグの固定箇所近傍での膨張厚み(膨張したときの座席幅方向の厚み)が増し、それに伴い同固定箇所近傍の剛性が高くなる。その結果、エアバッグの固定箇所を支点とした回転や、折れ(屈曲)が一層生じにくくなる。
【0015】
そのため、衝撃に応じ乗員の頭部が衝撃箇所側へ移動しても、その頭部は、上記のように回転や折れ(屈曲)の生じにくいエアバッグによって確実に受け止められる。
非膨張状態のエアバッグは、例えば、請求項2に記載の発明によるように、前記他の座席の背もたれ部の上部について、前記乗員の前記衝撃箇所側となる箇所の内部に収容されて、同箇所で前記固定部材に固定されていてもよい。
【0016】
エアバッグが配設され、かつ固定部材に固定される箇所である背もたれ部の上部は、エアバッグによる保護対象である乗員の頭部に比較的近い箇所である。そのため、少ない容量(小型)のエアバッグであっても、これを頭部の衝撃箇所側の側方で膨張させて衝撃から保護することが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記固定部材は、前記背もたれ部の内部に配設されて同背もたれ部の骨格をなす既設のシートフレームのサイドフレーム部により構成されるものであることを要旨とする。
【0018】
上記の構成によれば、背もたれ部の内部に配設されたシートフレームは、同背もたれ部の骨格をなすものであって硬質で高い強度を有している。そのため、このシートフレームの一部であるサイドフレーム部を固定部材として利用することで、固定部材のために別部材を新たに設けることなく、エアバッグを容易に固定することが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の発明において、非膨張状態の前記エアバッグ内には、同エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレータが配置されており、同インフレータが前記エアバッグを通じ前記固定部材の前後方向についての中央部近傍に締結されることにより同エアバッグが同固定部材に固定されており、さらに、非膨張状態の前記エアバッグの前記固定部材との固定箇所よりも前側部分は、同固定部材の側方、かつ前記インフレータの前側となる箇所に収容されていることを要旨とする。
【0020】
上記の構成によれば、固定部材においてインフレータが締結された箇所(前後方向についての中央部近傍)よりも後側の部分は、頭部による衝突箇所側へ向かう押圧力がエアバッグに加わったときに後膨張部を受け止めて、同エアバッグの固定箇所を支点とした回転を規制する機能を発揮する。また、固定部材においてインフレータが締結された箇所よりも前側の側方部分は、エアバッグの固定部材との固定箇所よりも前側部分が収容されるスペースとなる。エアバッグの上記前側部分が上記スペースに収容されることで、同前側部分が固定部材の前側に収容される場合に比べ、同前側部分が乗員から後方へ遠ざかることとなり、座席の乗り心地が損なわれにくくなる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1つに記載の発明において、膨張状態となった前記後膨張部の後方近傍には、前後方向に対し交差する方向に延びる受圧面を有する受圧部がさらに設けられていることを要旨とする。
【0022】
上記の構成によれば、膨張状態となった後膨張部が受圧部の受圧面に接触することにより、同後膨張部と受圧面との間に摩擦が生じ、エアバッグの固定箇所を支点とした回転がさらに生じにくくなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のエアバッグ装置によれば、衝撃に応じ乗員の頭部が衝撃箇所側へ移動しても、その頭部をエアバッグによって確実に受け止めて衝撃から保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
図1〜図3の少なくとも1つに示すように、車両における車室11内の前部には、車幅方向に一対の座席(前席)12,13が所定の間隔をおいて並設されている。座席12,13の各々は、略水平状に配置された座部14と、その座部14の後側に配置された背もたれ部15と、その背もたれ部15の上に配置されたヘッドレスト16とを備えている。
【0025】
背もたれ部15内には、その骨格をなすシートフレーム18が配置されている(図1参照)。シートフレーム18の一部は、上記背もたれ部15の幅方向についての両側部21,22の内部に配置されており、この部分(以下「サイドフレーム部18A」という)は、金属板等の板材を曲げ加工することによって形成されている。各側部21,22についてサイドフレーム部18Aの周囲には、ウレタンフォーム等の弾性材からなるシートパッド(図示略)が配置されている。また、シートパッドは表皮(図示略)によって被覆されている。
【0026】
車室11の前部であって車幅方向についての中央部には、前後方向へ延びるセンターコンソール25が設けられている(図1及び図2参照)。センターコンソール25にはシフトレバー、サイドブレーキレバー等の操作部が設けられるほか、カップホルダ、灰皿、小物入れ等の収納スペースが設けられている。センターコンソール25の後部25Rは両座席12,13間に位置している。この後部25Rは、各座席12,13の座部14よりも高くなっている(図2参照)。
【0027】
上記のように一対の座席12,13が並設された車両に対し、側突により、図1及び図2において実線の矢印及び二点鎖線の矢印で示すように、座席12,13の並設方向(車幅方向)の一方から他方へ向けて衝撃が加わる場合がある。こうした衝撃が加わった場合、その衝撃を受けたボディサイド部26,27が車室11の内方(他方のボディサイド部27,26側)へ変形する。ここで、ボディサイド部26,27とは、車両の車幅方向についての両側部に配置された部材を指し、例えば、前席に対応するボディサイド部26,27は、フロントドア、センターピラー(Bピラー)等である。また、上記衝撃により、座席12に着座した乗員P1、及び座席13に着座した乗員P2に対し衝撃箇所(ボディサイド部26,27)側へ向かう慣性力が作用する。この慣性力により、いずれの座席12,13に着座した乗員P1,P2も同衝撃箇所側へ相対移動(以下、単に「移動」という)しようとする。例えば、図1及び図2において実線の矢印で示す方向(右方)から衝撃が加わった場合、乗員P1,P2は右方へ移動しようとし、これとは反対に二点鎖線の矢印で示す方向(左方)から衝撃が加わった場合、乗員P1,P2は左方へ移動しようとする。
【0028】
なお、車室11内には、各座席12,13に着座した乗員P1,P2を拘束するためのシートベルト装置が座席12,13毎に装備されているが、図1〜図3では、このシートベルト装置の図示が省略されている。
【0029】
衝撃箇所に近い側の座席12,13に着座し、かつ衝撃により衝撃箇所側へ移動する上記乗員P1,P2は、側突により車室11内へ変形したボディサイド部26,27と接触するおそれがあるが、この乗員P1,P2については、いわゆるサイドエアバッグ装置30によって保護される。車両に対しては、座席12,13の並設方向の両方から衝撃が加わる可能性があることから、上記サイドエアバッグ装置30は、一対の座席12,13の各々に装備されている。例えば、図1及び図2において実線の矢印で示す方向(右方)から衝撃が加わった場合には、右側の座席12に着座している乗員P1が、実線で示すサイドエアバッグ装置30によって保護される。
【0030】
各サイドエアバッグ装置30は、後述するエアバッグ装置40と同様の構成を有している。そのため、ここでは、サイドエアバッグ装置30の構成について簡単に説明する。各サイドエアバッグ装置30は、エアバッグ31及びインフレータアセンブリ32を備えている。インフレータアセンブリ32は、インフレータ33と、そのインフレータ33の外側に装着されたリテーナ34とを備えている(図3参照)。そして、上記エアバッグ31及びインフレータアセンブリ32は、各座席12,13の背もたれ部15について最寄りのボディサイド部26,27に近い側の側部21内に収容されている。例えば、図1及び図2において右側のボディサイド部26を最寄りのボディサイド部とする右側の座席12では、右側の側部21内に上記エアバッグ31及びインフレータアセンブリ32が収容されている。また、図1及び図2において左側のボディサイド部27を最寄りのボディサイド部とする左側の座席13では、左側の側部21内に上記エアバッグ31及びインフレータアセンブリ32が収容されている。
【0031】
インフレータアセンブリ32は、エアバッグ31内の後端部に配置されており、同インフレータアセンブリ32がエアバッグ31の後端部と一緒に、各座席12,13内の上記サイドフレーム部18Aに締結されている。このエアバッグ31では、サイドフレーム部18Aに対する固定箇所(インフレータアセンブリ32)よりも後方で膨張する部分がないか、又はあったとしても極めて僅かである。そして、非膨張状態のエアバッグ31の後端31Rが、同エアバッグ31が膨張状態となったときにインフレータアセンブリ32の後方近傍に位置している。この膨張状態のエアバッグ31では、サイドフレーム部18Aに対する固定箇所近傍での膨張厚み(膨張したときの座席幅方向の厚み)がさほど大きくならない。これは、上記のように固定箇所よりも後方で膨張する部分がエアバッグ31に実質上なく、サイドフレーム部18Aとの固定が、エアバッグ31の同固定箇所近傍での膨張厚みに及ぼす影響が大きいからである。
【0032】
また、衝撃箇所から遠い側の座席12,13に着座し、かつ上記衝撃箇所側へ移動する乗員P1,P2については、本実施形態のエアバッグ装置40によって保護される。ここで、衝撃箇所から遠い側の座席12,13に着座した乗員P1,P2が、慣性力により衝撃箇所側へ移動しようとすることについては上述したが、センターコンソール25の後部25Rは、この乗員P1,P2の腰部の上記移動を規制する。これに対し、着座姿勢を採った乗員P1,P2の腰部よりも上側部分(上半身Pu)については、衝撃箇所側への移動を規制するものが特段ない。そのため、乗員P1,P2の腰部がセンターコンソール25に当った後は、同乗員P1,P2の上半身Puが上側ほど上記衝撃箇所に近づくように傾斜し、さらに、頭部Phが上側ほど上記衝撃箇所に近づくように傾斜する。これらの傾斜により頭部Phが上記衝撃箇所に最も近づき、隣(衝撃箇所側)の座席12,13や、衝撃により車室11内へ変形したボディサイド部26,27に接触するおそれが出てくる。
【0033】
本実施形態のエアバッグ装置40は、この衝撃箇所側へ変位する少なくとも頭部Phを受け止めて、上記隣(衝撃箇所側)の座席12,13等との接触から保護する。車両に対しては、座席12,13の並設方向の両方から衝撃が加わる可能性があることから、上記エアバッグ装置40は、一対の座席12,13の各々に装備されている。例えば、図1及び図2において実線の矢印で示す方向(右方)から衝撃が加わった場合には、同両図の左側の座席13に着座している乗員P2が、実線で示すエアバッグ装置40によって保護される。
【0034】
各エアバッグ装置40は、上述したサイドエアバッグ装置30と同様にエアバッグ41及びインフレータアセンブリ47を備えている。これらのエアバッグ41及びインフレータアセンブリ47は、各座席12,13の背もたれ部15について、最寄りのボディサイド部26,27から遠い側の側部22の上部内に収容されている。例えば、図1及び図2において右側のボディサイド部26を最寄りのボディサイド部とする右側の座席12では、左側の側部22内に上記エアバッグ41及びインフレータアセンブリ47が収容されている。また、図1及び図2において左側のボディサイド部27を最寄りのボディサイド部とする左側の座席13では、右側の側部22内に上記エアバッグ41及びインフレータアセンブリ47が収容されている。これらの収容箇所は、座席12,13に着座した乗員P1,P2にとっては、衝撃箇所側の後方となる。この収容箇所を有する側部22の上部は、座席12,13の中でも、エアバッグ41による保護対象である乗員P1,P2の頭部Phに比較的近い箇所である。
【0035】
エアバッグ41は、強度が高く、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸やポリアミド糸等によって形成した織布等を基布として用い、この基布の周縁部を縫製糸で縫着すること等によって所定の袋状に形成されている。
【0036】
図1〜図3は、膨張用ガスが充填されて展開膨張させられた状態のエアバッグ41を模式的に示している。図3に示すように、エアバッグ41は、乗員P1,P2の頭部Phの側方に位置する膨張部分42と、それよりも下側において乗員P1,P2の肩部Psよりも後方に位置する膨張部分43とを有している。前者の膨張部分42は、車幅方向に厚みが小さく、乗員P1,P2の頭部Phを衝撃箇所側から保護し得る大きさを有している。後者の膨張部分43の前後方向についての寸法(奥行き)は、前者の膨張部分42のそれに比べて小さく設定されている。
【0037】
図4及び図5の少なくとも一方に示すように、インフレータアセンブリ47は、ガス発生源としてのインフレータ48と、そのインフレータ48の外側に装着されたリテーナ49とを備えて構成されている。インフレータ48は略円柱状をなしており、その内部にはガス発生剤(図示略)が収容されている。インフレータ48は、リテーナ49内において、略上下方向に延びるように配設されている。インフレータ48には、膨張用ガスの生成態様の違いから複数のタイプがあるが、ここでは、パイロタイプと呼ばれるものが用いられている。インフレータ48には、同インフレータ48への制御信号の印加配線となるハーネス(図示略)が接続されている。
【0038】
なお、インフレータ48として、上記パイロタイプとは異なるタイプが用いられてもよい。こうしたタイプとしては、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるストアードガスタイプや、パイロタイプとストアードガスタイプの両者を組み合わせた形態のハイブリッドタイプ等が挙げられる。
【0039】
リテーナ49は、ディフューザとして機能するとともに、上記インフレータ48をエアバッグ41と一緒に背もたれ部15内の固定部材に締結する機能を有する部材である。リテーナ49は、その大部分が金属板等の板材を曲げ加工等することによって略上下方向に細長い略筒状に形成されている。
【0040】
上記固定部材は、背もたれ部15の側部22内において、エアバッグ41について衝撃箇所とは反対側近傍に位置する部材である。ここでは、側部22内に配設された既設のシートフレーム18のサイドフレーム部18Aが固定部材として利用されている。
【0041】
そして、非膨張状態のエアバッグ41(図4参照)は、膨張状態(図5参照)となったときの自身の後端41Rがサイドフレーム部18Aの衝撃箇所側の近傍に位置するように配置されている。また、インフレータアセンブリ47は、エアバッグ41内の後部であって、膨張状態のエアバッグ41自身の後端41Rよりも前方へ離間した箇所に配置されている。リテーナ49からは、ボルト51がインフレータ48の軸線に直交する方向(図4及び図5では左方)へ延びており、このボルト51がエアバッグ41の上記箇所(後端41Rから前方へ離間した箇所)に挿通され、さらに固定部材である上記サイドフレーム部18Aに挿通されている。このボルト51のサイドフレーム部18Aに対する挿通箇所は、同サイドフレーム部18Aの前後方向についての略中央部である。そして、ボルト51にナット52が螺合されることにより、インフレータアセンブリ47がエアバッグ41と一緒にサイドフレーム部18Aに締結されている。こうした態様で固定されたエアバッグ41の前後方向における各部を区別するために、サイドフレーム部18Aに対する固定箇所を基準に、それよりも前側で膨張する部分を「前膨張部44」といい、同固定箇所の側方で膨張する部分を「中膨張部45」といい、同固定箇所よりも後側で膨張する部分を「後膨張部46」というものとする。
【0042】
さらに、サイドフレーム部18Aに対し、衝撃箇所側の側方近傍となる空間、より詳細には、インフレータアセンブリ47よりも前側の空間Sfと、後側の空間Srとが、非膨張状態のエアバッグ41における前膨張部44及び後膨張部46を収容するための空間として利用されている。そして、非膨張状態の後膨張部46が蛇腹状等に折り畳まれることによりコンパクトにされて、上記後側の空間Srに収容されている。また、非膨張状態の前膨張部44が蛇腹状等に折り畳まれることによりコンパクトにされて、上記前側の空間Sfに収容されている。なお、上記前膨張部44及び後膨張部46は、蛇腹状とは異なる態様で、例えばロール状等の態様で折り畳まれてもよい。
【0043】
上述したサイドエアバッグ装置30及びエアバッグ装置40は、共通の構成要素として、加速度センサ等からなる衝撃センサ61,62及び制御装置63をさらに備えている(図3参照)。一方の衝撃センサ61は、ボディサイド部26(図1及び図2参照)等に設けられており、同ボディサイド部26に側方から加えられる衝撃を検出する。他方の衝撃センサ62は、ボディサイド部27(図1及び図2参照)等に設けられており、同ボディサイド部27に側方から加えられる衝撃を検出する。制御装置63は、衝撃センサ61,62からの検出信号に基づき、サイドエアバッグ装置30のインフレータ33、及びエアバッグ装置40のインフレータ48の各作動を制御する。
【0044】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。
両座席12,13にそれぞれ乗員P1,P2が着座している状況のもと、側突により、車両に対し、座席12,13の並設方向(車幅方向)の一方から他方へ向けて衝撃が加わる場合がある。ここでは、一方のボディサイド部26に対し、図1及び図2において実線の矢印で示す方向から衝撃が加わったものとする。このように、一方のボディサイド部26に対し側突による衝撃が加わると、そのボディサイド部26が車室11の内方(他方のボディサイド部27側)へ変形しようとする。
【0045】
また、上記衝撃により、各座席12,13に着座した乗員P1,P2に対して衝撃箇所側(ボディサイド部26側)へ向かう慣性力が作用する。この慣性力により、各乗員P1,P2は、図5において矢印Aで示すように、衝撃箇所側(ボディサイド部26側)へ移動しようとする。
【0046】
一方、ボディサイド部26に所定値以上の衝撃が加わったことが衝撃センサ61によって検出されると、その検出信号に基づき制御装置63から、サイドエアバッグ装置30のインフレータ33、及びエアバッグ装置40のインフレータ48に対し、これらを作動させるための指令信号が出力される(図3参照)。この指令信号に応じてインフレータ33,48から膨張用ガスが対応するエアバッグ31,41に供給され、同エアバッグ31,41が膨張展開する。
【0047】
図1及び図2に示すように、衝撃箇所側の座席12に着座し、かつ上記衝撃箇所側へ移動する乗員P1は、サイドエアバッグ装置30によって保護される。すなわち、サイドエアバッグ装置30では、インフレータ33から膨張用ガスがエアバッグ31内に供給される。この膨張用ガスによりエアバッグ31が膨張を開始し、その一部を背もたれ部15内に残した状態で、同エアバッグ31が背もたれ部15から前方へ飛び出す。その後は、エアバッグ31は、乗員P1とボディサイド部26との間を通って前方へ膨張する。衝撃に伴い乗員P1が衝撃箇所(ボディサイド部26)側へ移動しようとしても、この乗員P1は膨張したエアバッグ31によって受け止められる。この受け止めに際し、エアバッグ31には乗員P1による衝撃箇所側へ向かう押圧力が加わる。この押圧力により、エアバッグ31がその固定箇所である後端部を支点として衝撃箇所側へ回転しようとするが、その回転はボディサイド部26に当ることで規制される。
【0048】
また、側突により車室11内へ変形したボディサイド部26と乗員P1との間に、上記のように膨張した状態のエアバッグ31が介在することとなり、同乗員P1がボディサイド部26と接触することがエアバッグ31によって抑制される。
【0049】
これに対し、衝撃箇所から遠い側の座席13に着座し、かつ上記衝撃箇所側へ移動する乗員P2は、エアバッグ装置40によって保護される。すなわち、エアバッグ装置40では、インフレータ48から膨張用ガスがエアバッグ41内に供給される。この膨張用ガスによりエアバッグ41が膨張を開始する。エアバッグ41は、膨張用ガスの供給開始直後には背もたれ部15の側部22内で膨張展開する。この膨張展開の過程でエアバッグ41は背もたれ部15を破断させ、自身の一部を側部22内に残した状態で背もたれ部15の前方へ飛び出す。
【0050】
一方、上記衝撃に伴い乗員P2の頭部Phが上述したように衝撃箇所側へ移動する。図6に示すように、頭部Phがエアバッグ41に当接した後も移動し続けようとすると、同エアバッグ41に対し頭部Phにより衝撃箇所側へ向かう押圧力Fが加わる。この際、仮に、膨張状態のエアバッグ41が、上記エアバッグ31と同様に、同エアバッグ41の後端部においてサイドフレーム部18Aに固定されているとすると、背景技術の欄で説明したように、エアバッグ41が、自身の固定端である後端部を支点として衝撃箇所側へ回転したり、折れたり(屈曲したり)するおそれがある。
【0051】
しかし、本実施形態では、エアバッグ41の膨張に際し、そのエアバッグ41のサイドフレーム部18Aに対する固定箇所よりも後側に設けられた後膨張部46も膨張する。乗員P2の頭部Phによる衝撃箇所側へ向かう押圧力Fは、エアバッグ41の前膨張部44に加わる。そして、上記押圧力Fによりエアバッグ41の固定箇所の近傍部分が伸張させられることで、同エアバッグ41は、サイドフレーム部18Aに対する固定箇所を支点とし、固定箇所よりも前側の前膨張部44がサイドフレーム部18Aから離れ、同箇所よりも後側の後膨張部46が同サイドフレーム部18Aに近づく。このようにして、エアバッグ41は固定箇所を支点として回転しようとする。しかし、この際、サイドフレーム部18Aにおいてインフレータアセンブリ47が締結された箇所(前後方向についての中央部近傍)よりも後側の部分は、後膨張部46を受け止める機能を発揮する。そのため、この受け止めにより、エアバッグ41がそれ以上回転することが規制される。この規制に伴い、回転を前提とするエアバッグ41の折れ(屈曲)も生じにくくなる。
【0052】
また、上記のように固定箇所よりも後側の後膨張部46が膨張することにより、こうした後膨張部46での膨張がない場合に比べ、エアバッグ41の固定箇所近傍、すなわち中膨張部45の膨張厚みT(図5参照)が増す。これは、1つには後膨張部46を設けることで、インフレータアセンブリ47によるエアバッグ41の固定が中膨張部45の膨張厚みTに及ぼす影響が小さくなることによる。また、後膨張部46が曲面状に膨張しようとすることで、同後膨張部46の膨張厚みが大きくなり、その影響を隣の中膨張部45が受けることにもよる。そして、上記中膨張部45の膨張厚みTの増加に伴い同固定箇所近傍の剛性が高くなる。その結果、エアバッグ41の固定箇所を支点とした回転や、折れ(屈曲)が一層生じにくくなる。
【0053】
そのため、頭部Phの衝撃箇所側への上記移動は、回転・折れ(屈曲)が生じにくくなった上記エアバッグ41によって受け止められる。また、側突により車室11内へ変形したボディサイド部26と乗員P2の頭部Phとの間に、膨張状態のエアバッグ41が介在することとなる。
【0054】
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)座席12,13について乗員P1,P2の衝撃箇所側となる箇所の内部に非膨張状態のエアバッグ41を配設するとともに、同エアバッグ41について衝撃箇所とは反対側近傍の固定部材(サイドフレーム部18A)にエアバッグ41を固定している(図4参照)。この固定に際しては、膨張状態となったときのエアバッグ41の後端41Rが固定部材の衝撃箇所側の近傍に位置するように、非膨張状態のエアバッグ41を配置し、さらに膨張状態のエアバッグ41の後端41Rよりも前方へ離間した箇所において、同エアバッグ41を固定部材に固定している(図5参照)。この固定により、エアバッグ41の後部に、固定部材に対する固定箇所よりも後側で膨張する後膨張部46を設けている(図5参照)。
【0055】
このため、後膨張部46と固定部材との接触により、エアバッグ41の衝撃箇所側への回転を規制するとともに、同エアバッグ41の固定箇所近傍の剛性を高めることができる。
【0056】
その結果、衝撃に応じ乗員P1,P2の頭部Phが衝撃箇所側へ移動してエアバッグ41が押圧されても、同エアバッグ41が固定部材との固定箇所を支点として衝撃箇所側へ回転したり折れたり(屈曲したり)するのを抑制し、頭部Phをエアバッグ41によって確実に受け止めて衝撃から保護することができる。
【0057】
(2)座席12,13のうち、エアバッグ41が配設され、かつ固定部材に固定される箇所である背もたれ部15の上部は、エアバッグ41による保護対象である乗員P1,P2の頭部Phに比較的近い箇所である。この点、本実施形態では、同上部について、乗員P1,P2の衝撃箇所側となる箇所の内部に非膨張状態のエアバッグ41を配設して固定部材に固定している(図1〜図3参照)。そのため、少ない容量(小型)のエアバッグ41であっても、これを頭部Phの衝撃箇所側で膨張させて頭部Phを衝撃から保護することができる。
【0058】
(3)背もたれ部15の内部に配設されて同背もたれ部15の骨格をなし、硬質で高い強度を有している既設のシートフレーム18のサイドフレーム部18Aを固定部材として利用している。そのため、固定部材のために別部材を新たに設けることなく、エアバッグ41を容易に固定することができる。
【0059】
(4)エアバッグ41を仮に固定部材(サイドフレーム部18A)の前側に収容すると、乗員P1,P2の背中の近くにシートパッドよりも硬質の部材(エアバッグ41)が位置することとなり、座席12,13の乗り心地(背もたれ部15の持たれ心地)が損なわれるおそれがある。
【0060】
しかし、本実施形態では、エアバッグ41内に配設されたインフレータアセンブリ47を、固定部材の前後方向についての中央部近傍に締結している(図4参照)。そして、エアバッグ41の固定部材との固定箇所よりも後側部分(後膨張部46)を同固定部材の側方近傍、かつインフレータアセンブリ47の後側近傍の空間Srに収容している。このため、後膨張部46を、固定部材のインフレータアセンブリ47よりも後側部分と接触させることにより、エアバッグ41の回転・折れ(屈曲)を規制することができる。
【0061】
また、エアバッグ41の固定部材との固定箇所よりも前側部分(前膨張部44)を、同固定部材の側方近傍、かつインフレータアセンブリ47の前側近傍の空間Sfに収容している。このため、エアバッグ41の上記前膨張部44を、背もたれ部15において乗員P1,P2の背中から後方へ遠ざかった箇所に位置させることができ、乗り心地(持たれ心地)の低下を少なくすることができる。
【0062】
このように、エアバッグ41の回転・折れ(屈曲)の規制と、乗り心地の低下の抑制とを両立することができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
【0063】
<エアバッグ41について>
・エアバッグ41の膨張時の外形形状を、前記実施形態とは異なる外形形状、例えば、乗員P2の肩部Psから腰部にかけての広い箇所を保護し得る外形形状に変更してもよい。要は、上記外形形状は、乗員P1,P2について、衝撃に伴い衝撃箇所側へ移動する部位のうち、少なくとも頭部Phを含む部位を受け止めることのできるものであればよい。
【0064】
・エアバッグ41を、「乗員P1,P2の衝撃箇所側の後方であること」を条件に、上記実施形態とは異なる箇所に収容してもよい。この箇所としては、座席12,13において背もたれ部15とは異なる箇所であってもよい。
【0065】
・エアバッグ41の前膨張部44を折り畳まない状態でインフレータアセンブリ47よりも前側の空間Sfに収容してもよい。同様に、エアバッグ41の後膨張部46を折り畳まない状態でインフレータアセンブリ47よりも後側の空間Srに収容してもよい。
【0066】
<固定部材について>
・既設のシートフレーム18のサイドフレーム部18Aとは別に、座席12,13内に、エアバッグ41が固定される部材を新たに設け、この部材を固定部材としてもよい。
【0067】
<エアバッグ装置40の適用対象について>
・エアバッグ装置40を車両の後席に適用してもよいし、前席及び後席の両者に適用してもよい。後席に適用した場合、その後席に対応するボディサイド部は、サイドドア(リアドア)の後部、Cピラー、タイヤハウスの前部、リアクォータ等となる。
【0068】
・本発明のエアバッグ装置40は、車幅方向に3つ以上の座席が並設された車両にも適用可能である。この場合、エアバッグ装置40は、車両に対し座席の並設方向の一方から他方へ向けて衝撃が加わるときの同車両の衝撃箇所に最も近い座席を除く他の座席に適用される。
【0069】
・本発明のエアバッグ装置40は、乗員P1,P2が着座したときに、車両の前後方向とは異なる方向、例えば直交する方向(車幅方向)を向くように座席12,13の配置された車両にも適用可能である。この場合、車両に対し前方又は後方から衝撃が加わると、その衝撃が並設方向の一方から他方へ向かう衝撃となる。
【0070】
<その他>
・図7に示すように、膨張状態となったエアバッグ41の後膨張部46の後方近傍に、硬質の受圧部71を設けてもよい。この場合、受圧部71には、前後方向に対し交差する方向、より好ましくは略直交する方向(座席12,13の略幅方向)に延びる受圧面71Aを設ける。この受圧部71は、サイドフレーム部18Aの一部として設けられてもよいし、サイドフレーム部18Aとは別の部材として設けられてもよい。前者の場合、受圧部71がサイドフレーム部18Aに一体形成されてもよいし、同受圧部71がサイドフレーム部18Aとは別に設けられ、その後に溶接等の手段によって受圧部71がサイドフレーム部18Aに固定されてもよい。一体形成の場合、例えば、金属板等の板材によってサイドフレーム部18Aが形成される際に、その板材が曲げられることで受圧部71が形成されてもよい。
【0071】
このようにすると、膨張状態となった後膨張部46が受圧部71の受圧面71Aに接触することにより、同後膨張部46と受圧面71Aとの間に摩擦が生じ、エアバッグ41の固定箇所を支点とした回転がさらに生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明を具体化した一実施形態において、並設された一対の座席と、座席毎に装備されたサイドエアバッグ装置及びエアバッグ装置とを示す部分平断面図。
【図2】同じく正断面図。
【図3】一実施形態において、座席と、その座席に装備されたエアバッグ装置とを示す側面図。
【図4】エアバッグ装置における非膨張状態のエアバッグ及びインフレータアセンブリを示す平断面図。
【図5】乗員と、エアバッグ装置において衝撃に応じて膨張したエアバッグとの関係を示す部分平断面図。
【図6】図5の状態から衝撃箇所側へ移動する乗員と、その乗員によって押圧されるエアバッグとの関係を示す部分平断面図。
【図7】エアバッグの後膨張部の後方近傍に受圧部を設けた別の実施形態を説明する部分平断面図。
【図8】エアバッグを、その後端部において固定した従来のエアバッグ装置において、衝撃箇所側へ移動する乗員によりエアバッグが押圧されて回転する様子を説明する部分平面図。
【符号の説明】
【0073】
12,13…座席、15…背もたれ部、18…シートフレーム(固定部材)、18A…サイドフレーム部(固定部材)、40…エアバッグ装置、41…エアバッグ、41R…後端、46…後膨張部、48…インフレータ、71…受圧部、71A…受圧面、P1,P2…乗員、Ph…頭部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の座席が並設された車両に対し、その並設方向の一方から他方へ向けて衝撃が加わるときの同車両の衝撃箇所に最も近い座席を除く他の座席に適用され、同他の座席に着座し、かつ前記衝撃に伴い前記衝撃箇所側へ移動する乗員の少なくとも頭部を、膨張用ガスにより膨張し、かつ自身の一部を前記座席内に残した状態で同座席から前記頭部の前記衝撃箇所側へ飛び出すエアバッグにて受け止めるようにしたエアバッグ装置であって、
前記他の座席について前記乗員の前記衝撃箇所側となる箇所の内部には、非膨張状態の前記エアバッグが収容されるとともに、同エアバッグについて前記衝撃箇所とは反対側近傍に固定部材が配設されており、
非膨張状態の前記エアバッグは、膨張状態となったときの自身の後端が前記固定部材の前記衝撃箇所側の近傍に位置するように配置され、かつ同エアバッグ自身の前記後端よりも前方へ離間した箇所において前記固定部材に固定されることにより、前記固定部材に対する固定箇所よりも後側で膨張する後膨張部を自身の後部に有することを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
非膨張状態の前記エアバッグは、前記他の座席の背もたれ部の上部について、前記乗員の前記衝撃箇所側となる箇所の内部に収容されて、同箇所で前記固定部材に固定されている請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記固定部材は、前記背もたれ部の内部に配設されて同背もたれ部の骨格をなす既設のシートフレームのサイドフレーム部により構成されるものである請求項2に記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
非膨張状態の前記エアバッグ内には、同エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレータが配置されており、同インフレータが前記エアバッグを通じ前記固定部材の前後方向についての中央部近傍に締結されることにより同エアバッグが同固定部材に固定されており、
さらに、非膨張状態の前記エアバッグの前記固定部材との固定箇所よりも前側部分は、同固定部材の側方、かつ前記インフレータの前側となる箇所に収容されている請求項1〜3のいずれか1つに記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
膨張状態となった前記後膨張部の後方近傍には、前後方向に対し交差する方向に延びる受圧面を有する受圧部がさらに設けられている請求項1〜4のいずれか1つに記載のエアバッグ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate