説明

エアバッグ装置

【課題】展開初期においてエアバッグを一旦ピラートリムに当接させる動作を無くし、エアバッグの展開速度を減速させず展開・膨張を迅速に行う。
【解決手段】車室内側壁の上方部に車両前後方向に沿って取り付けられる折り畳まれた状態のエアバッグ10と、車両下方に向けて膨張展開させるインフレータとを備えたエアバッグ装置であって、エアバッグ10は、取付側と反対側の一端側からロール折りしたロール折り部10Rと、ロール折り部10Rに続く蛇腹折りした蛇腹折り部10Jを有し、蛇腹折り部10Jは、ロール折り部10Rを二つ折りして、前記二つ折りした部分からロール折り部10Rの二つ折りした幅Lに相当する幅で蛇腹折りして形成され、前記蛇腹折り部10Jが前記ロール折り部10Rの側方に位置するように折り畳まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に搭載されて、乗員を保護するエアバッグ装置に関し、例えば、車室内で車両の前後方向に沿ってエアバッグをカーテン状に展開させるエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、折り畳まれたエアバッグを車室内側壁の上方部に収納して車内側をエアバッグカバーで覆うとともに、上下側でエアバッグの折り畳み方を変えて、その膨張展開時における車内側への突出を抑えつつ、エアバッグを車室内側壁に沿って迅速に膨張展開するようにしたエアバッグ装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図5は、この従来の頭部保護エアバッグ装置における、エアバッグの折り畳み状態を示す概略断面図である。
前記従来のエアバッグ装置は、車室内側壁の上方部に車両前後方向に沿って取り付けられる折り畳まれた状態のエアバッグ111と、エアバッグ111の車室内側を覆うエアバッグカバー108と、エアバッグ111にガスを供給して車室内下方に向けて膨張展開させるインフレータ(図示せず)と、を備えている。
エアバック111は、ピラーガーニッシュ107の上部と車体側のインナーパネル102と、エアバッグカバー108で囲まれた空間内に、ラッピング材で包んで折り畳まれた形状を維持して収納されている。エアバッグ111は、その上縁部側に取付ブラケット130を備えた取付部125を有し、この取付ブラケット130に取付ボルト131を挿通させてインナーパネル102に固着されている。
【0004】
エアバッグ111は、図示の収納状態では、下縁部側からロール折りしたロール折り部138と、ロール折り部138に続く供給路部115を有している。
供給路部115は上縁部側が車両の前後方向に沿うように配設されており、エアバッグ111の膨張初期に膨張用ガスが流入する部分である。供給路部115には、図示のように、ロール折り部138の上部を覆う逆U字状になるよう折り曲げた逆U字状部141が設けられている。
供給路部115の逆U字状部141は、その展開膨張完了時の上部側となる部位115bが車外側Oに、また展開膨張完了時の下部側となる部位115cが車内側Iにそれぞれ位置するように形成されている。
【0005】
エアバッグカバー108は、折り畳まれて収納されたエアバッグ111の車内側Iを覆うように配置されており、図中破線で示すように、エアバッグ111の膨張初期に展開する供給路部115に押されて車内側Iへ開き、エアバッグ111を車内側Iへ通過させる。
【0006】
従来のエアバッグ111は以上のように構成されているため、その膨張展開時にインフレータから供給路部115に膨張用ガスが供給されると、先ずロール折り部138の上部を包むようにして配置された逆U字状部141が膨張展開する。逆U字状部141が展開膨張すると、その圧力でロール折り部138は図中下方に押されてピラーガーニッシュ107の傾斜した上端107aに当たり、続いて膨張展開する逆U字状部141により押し開かれたカバー108を通して車室内に出たロール折り部138は、車外側Oに向かうようにロール折りされたロール折りを解消しながら、ピラーガーニッシュ107に沿って展開されていく。
【0007】
しかし、このエアバッグ装置は、展開初期に膨張する供給路部115は、既に述べたように、その初期の膨張展開時にロール折り部138を下方に強く押してピラーガーニッシュ107の傾斜した上端107aに当てる、つまり、ロール折り部138を車内側Iに出す前に、ピラーガーニッシュ107の傾斜した上端107aに当てる構成を採っているため、車室内に出ていく速度がその分減速されるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−58848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来のエアバッグ装置の前記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、従来のように、展開初期においてエアバッグを下方に押し出し一旦ピラートリム(又はピラーガーニッシュ)に当接させる動作を無くし、エアバッグの展開速度を減速させることがなく、エアバッグを迅速に車内へ展開させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車室内側壁の上方部に車両前後方向に沿って取り付けられるエアバッグと、折り畳まれたエアバッグを車室下方に向けて膨張展開させるインフレータと、を備えたエアバッグ装置であって、前記エアバッグは、前記上方部へ取り付けられる上縁部側と反対側の一端側からロール折りしたロール折り部と、ロール折り部に続く蛇腹折りした蛇腹折り部を有し、前記蛇腹折り部は、前記ロール折り部を二つ折りした部分の車外側の側方で、前記ロール折り部の二つ折りした幅に相当する幅で折り返した折り返し部として形成され、前記蛇腹折り部が前記ロール折り部の側方に位置するように折り畳まれたエアバッグ装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エアバッグの展開時に蛇腹折り部でロール折り部を二つ折りしたコンパクトな状態で収納部から車室内側へ車両幅方向に直接押し出すことができる。つまり、エアバッグの展開初期の段階で下向きの圧力を受けることがない。したがって、従来のようにエアバッグの収納部における下方(ピラートリムの上端部等)に押しつけられることがないため展開初期において展開速度が低減されることがなく、迅速な展開が可能である。また、ピラートリムやピラートリムの取付けにエアバッグの展開する方向を変化させることを前提とした強度的制約や、形状的な制約がない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1Aは、本発明の一実施形態に係るエアバッグ装置の正面図であり、車両の側壁とエアバッグ装置を、車両の後方側を省略して車両の内面を透視して示している。図1Bは図1のエアバッグ装置のエアバッグの全体を示す正面図であり、エアバッグはいずれも展開された状態で示している。
【図2】本実施形態に係るエアバッグ装置のエアバッグの折り畳み手順を模式的に示す図である。
【図3】図3Aは、本発明の実施形態に係るガス導入部近傍を示す図1Bの一部拡大図である。図3B、3Cは、いずれも他の実施形態のガス導入部を示す図3Aと同様の図である。
【図4ABC】蛇腹折り部とロール折り部が横に並んだ形状のエアバッグを車両に取り付けた状態を模式的に示す図である。
【図4DEF】蛇腹折り部とロール折り部が横に並んだ形状のエアバッグを車両に取り付けた状態を模式的に示す図である。
【図4GH】蛇腹折り部とロール折り部が横に並んだ形状のエアバッグを車両に取り付けた状態を模式的に示す図である。
【図5】従来のエアバッグの折り畳み手順を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のエアバッグ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態に係るエアバッグ装置は、車室内側壁の上方部(上縁部)からエアバッグを車室内側壁に沿って下方に向けて膨張展開させる形式のものであり、所定状態に折り畳まれた膨張可能なエアバッグと、車両緊急時の衝撃検知時などにガスを発生してエアバッグに供給するインフレータとを備えている。
以下の説明では、車室内側壁上方から、エアバッグをカーテン状に膨張展開させ、運転席及び助手席から車両後方側の後席までの車室内側壁の車内側の所定範囲にエアバッグを展開させ、前後席の乗員を、頭部を中心に保護する側面用のエアバッグ装置を例に採り説明する。
【0014】
図1Aは、本発明の一実施形態に係るエアバッグ装置1の正面図であり、車両の側壁とエアバッグ装置1を、車両の後方側を省略して車両の内面を透視して示している。図1Bは図1のエアバッグ装置1のエアバッグ10全体を示す正面図であり、エアバッグ10はいずれも展開された状態で示している。
【0015】
エアバッグ装置1は、エアバッグ10とインフレータ2とを備えている。エアバッグ(ここでは、カーテンエアバッグ)10は、収納状態では後述するように細長く折り畳まれている。
エアバッグ装置1は、車両90に搭載され、作動信号を受信したときにインフレータ2を作動させてガスを発生させる。このガスを、エアバッグ10内の膨張部30へ供給して、後述するようにエアバッグ10の折り畳み形状を解消させ、カーテン状に膨張展開した図1Aに示す状態にする。
【0016】
車両90は、図示のように、車室内の側壁91に、上方のルーフレール92、前方のフロントピラー(Aピラー)93、前後方向の中間のセンターピラー(Bピラー)94、及び、後方のリアピラー(Cピラー)(図示せず)を有し、側壁91に、前方の前部ドア95と、後方の後部ドア96とを有している。
側壁91には、ピラートリム91A(図4参照)及びヘッドライニング92Aが取り付けられており、ピラートリム91Aは車両90内の表面部材(内装材)を構成する。ヘッドライニング92Aは、ルーフ(図示せず)とルーフレール92を覆っている。
【0017】
エアバッグ10は、車室内の側壁91の上方部(上縁部)に沿ってリアピラーからフロントピラー93まで延在配置されている。エアバッグ10は、図1Bに示すように、展開された状態では矩形状の袋体であり、例えば、樹脂を被覆した布からなる基布により製造される。エアバッグ10は、乗員側の表側基布(表パネル)12と、側壁91側の裏側基布(裏パネル)13とを有する。また、エアバッグ10は、ガス供給口14とベルト状の連結部材20と複数(図1Bでは、6つ)の固定布21〜26を有している。
【0018】
連結部材20の一端は、エアバッグ10の前方端に取り付けられ、他端はフロントピラー93に取り付けられる。複数の固定布21〜26は矩形状をなし、エアバッグ10の上縁部に一体に形成されている。また、固定布は21〜26は、エアバッグ10の上縁部全体に配置されている。連結部材20と固定布21〜26は、ボルト等からなる固定手段(図示せず)により、フロントピラー93とルーフレール92の所定位置に固定され、それによってエアバッグ10が車体上部に取り付けられる。
【0019】
表側基布12と裏側基布13は、通常のエアバッグと同様に同じ形状に形成され、重ね合わせて外縁接合部15に沿って接合される。エアバッグ10は、外縁接合部15により区画されて、両基布12、13の間に膨張部30が形成されている。即ち、外縁接合部15は、膨張部30の外縁形状を規定し、基布12、13は、外縁接合部15に沿って縫合される、もしくは縫合した部分が接着剤によりシールされる等により、基布12、13は、外縁接合部15で気密状に接合される。
【0020】
エアバッグ10には、外縁接合部15で区画された前膨張部31、後膨張部32、及び、連結膨張部33が形成されている。前膨張部31は、膨張部30中で前後方向に最も長く形成されており、前部ドア95の窓部とセンターピラー94の側方で膨張して、主に前席の乗員を受け止める。
【0021】
後膨張部32は、前膨張部31よりも前後方向に短く形成されて、エアバッグ10内で後方に配置され、後部ドアの上方で膨張して、主に後席の乗員を受け止める。連結膨張部33は、エアバッグ10の上縁部で、前膨張部31と後膨張部32の間に設けられ膨張部31、32を連結する。
3つの膨張部30(31、32、33)の間には、非膨張部34が、エアバッグ10の下縁部から上方に向かって形成されている。エアバッグ10の非膨張部34は、膨張部30外に設けられており、エアバッグ10が膨張しても膨張しない状態に維持される。
【0022】
ガス供給口14は、インフレータ2をエアバッグ10内に挿入するための開口部(挿入口)であり、エアバッグ10の前後方向の略中間に形成されている。基布12、13は、ガス供給口14において、エアバッグ10の上縁部から斜め上方に突出し、両側縁が外縁接合部15から連続して接合され、これにより、ガス供給口14は、エアバッグ10の上縁部に一体に形成される。
【0023】
エアバッグ10は、外縁接合部15で区画した膨張部30内に、第1〜第4の内部接合部16〜19を有している。基布12、13は、複数の内部接合部16〜19で縫製及び接着により接合されており、内部接合部16、17、19は、それぞれ外縁接合部15から膨張部30内へ向かって延び、膨張部30内の先端が環状(環状部16A、17A、19A)に接合されている。また、内部接合部18は先端がいずれも膨張部30内で環状(環状部18A)に接合されている。
内部接合部16〜19の環状部16A〜19Aは、エアバッグ10の下縁部側の外縁接合部15との間に、所定の距離を開けて配置されている。内部接合部16〜19は、膨張部30を区画する隔壁として機能すると共に、膨張部30の車両幅方向の膨張を抑制して、エアバッグ10を所定形状に膨張させる。
膨張部30は、本実施形態では、内部接合部16〜19により第1〜5の気室35〜39に区画されている。
【0024】
インフレータ2は、円筒形状のシリンダタイプのガス発生装置であり、長さ方向の一端部にガスの噴出部を有する。
インフレータ2とエアバッグ10とは、筒状に縫製されてエアバッグ10に形成されたガス導入部(ディフューザ)35Cを介して連結されており、センターピラー94の上方で連結手段である取付ブラケット(図示せず)により、ヘッドライニング92A内でルーフレール92に取り付けられている。
ガス供給口14は、クランプ又はバンド(図示せず)により外側から締め付けられて、インフレータ2に気密状に固定される。インフレータ2が発生するガス(膨張用ガス)は、ガス供給口14から第1〜5の気室35〜39に流入する。このうち第1の気室35は、他の気室36、37が膨張を完了した後の所定のタイミングで完全に膨張する。また、第4と第5の気室38、39は、ガスの流入する順序に応じてその順に膨張する。
【0025】
図2A〜2Dは、以上で説明したエアバッグ10の折り畳み手順を模式的に示す図である。
図2Aは折り畳む前の表側基布12と裏側基布13とからなるエアバッグ10を示す。
図中、エアバッグ10の左側を車外側、同右側を車内側とする。図2Aに示すように、先ず非膨張状態のエアバッグ10を広げて両基布12、13を重ね合わせて平らに展開する。次に、エアバッグ10の下縁部側を上縁部に向けて、かつ車外側となる側に巻きつけるように一定幅Lで複数回M1方向に折り返して、車外側に図2Bの状態になるまで所定回数ロール折りする。なお、図2中のaは、エアバッグ10における蛇腹折り部10Jの起点を示す。
【0026】
次に、図2Bにおけるエアバッグ10のロール折りした部分(ロール折り部)10Rの反対面のロール幅(L)方向の中心部cを中心に反時計方向(M2の方向)に折り返し、次に、その中心部cのところでU字状に二つ折り(谷折り)する(図2C)。その後、二つ折りしたロール折り部10Rの中間から直線状に延びたエアバッグ部分を、車外側のロール折り部10Rに沿ってM3の方向にエアバッグ10の下縁部側に向かって曲げ、二つ折りしたロール折り部10Rのロール幅Lと同じ幅(縦幅)のところの部位(折り返し部b)でM4の方向にエアバッグ10の上縁部側に折り返す(つまり蛇腹折りする)(図2D)。図2Dはこのようにして得られた、横に並んで配置された左側の蛇腹折り部10Jとその右側のロール折り部10Rとから成る折り畳んだ状態のエアバッグ10を示している。
【0027】
ここで、図2Dのdは蛇腹折り部10Jの終点であり同時にロール折り部10Rの起点であり、dからeまでの区域(ロール折り部の二つ折りした最も上側部分間の区域)は、蛇腹折り部10Jに連続したロール折り部10Rのロール折り初期膨張部10RSである。
また、図中fは、二つ折りしたロール折り部10Rの室内側面におけるロール幅Lの略中間部位であってロール折り部10Rの最も車室内側の部分を示す。
【0028】
以上の様に折り畳んだ後、エアバッグ10の長手方向の所定箇所に、従来と同様に折り畳み形状の崩れを防止するための破断可能なラッピング材(図示せず)を適宜巻き付けて折り畳み作業を終了する。
【0029】
次に、エアバッグの蛇腹折り部10J及びロール折り部10Rに関連して図2において示した各部位a〜fと、展開状態におけるエアバッグ10との関係について図3を参照して説明する。
図3Aは、図1Bの一部拡大図であって、本発明の実施形態のエアバッグ10におけるガス導入部(ディフューザ)35Cの近傍を示す。
【0030】
まず、図中エアバッグ10におけるインフレータからのガス供給口14は、インフレータが作動したとき、インフレータからのガスによりエアバッグが前記蛇腹折り部から膨張展開するように、エアバッグ10の上縁部で前記蛇腹折り部の前記ロール折り部と反対側端部となる部分に形成されている。また、エアバッグ10の膨張部30の上縁部30Hは、図2中の折り返し部(折曲部位)bよりもエアバッグ10の上縁部側の位置、望ましくは蛇腹折り部10Jの起点aの位置に略一致する位置になるようにする。即ち、蛇腹折り部10Jの起点aは、エアバッグ10の膨張部30の上縁部30Hに一致させることが望ましい。
【0031】
また、本実施例のように、インフレータ2からのガスをエアバッグ10の膨張部30に流入させるのにガス導入部35Cを用いる場合は、ガス導入部35Cのガス放出口35Dの上端部35DHは、図2中の折曲部位bよりもエアバッグ10の上縁部側の位置、望ましくは蛇腹折り部10Jの起点aの位置に略一致し、ガス放出口35Dの下端部35DLは、ロール折り初期膨張部10RSの位置(図2中dからe)、望ましくはロール折り初期膨張部10RSにおける図2中前記cからeの間の部位になるようにする。
【0032】
このように蛇腹折り及びロール折りの起点や終点或いは前記各部位を、エアバッグの上縁部30Hまたはガス放出口35Dの上端部35DH、及びガス放出口35Dの下端部35DLに関連付けて位置決めすることで、エアバッグ10が膨張を開始する際に、先ず蛇腹折り部10Jから確実に膨張が始まると共に、ガス放出口35Dから噴出するガスにより、とくにガス放出口35D周辺において、蛇腹折り部10Jからロール折り初期膨張部10RSまでの領域をより迅速に膨張させることができる。
【0033】
また、ガス導入部35Cのガス放出口35Dの下端部35DLを、ガス導入部35Cを延長する等により、図2中前記eの位置を越えて図2中前記fの部位に配置することで、とくにガス放出口35D周辺において、蛇腹折り部10Jからロール折り部10Rにおけるロール折り初期膨張部10RSを越えた下縁部側(図2Dのeからfの部分)までの領域を、より迅速に膨張させることができる。
これによって、エアバッグをより迅速に、ピラートリム91A(図4)を越えて車内側へ展開して、ロール折りを解きながらピラートリム91A(側壁91)に沿うようにして下方に展開させることができる。
【0034】
図3B及び3Cは、ガス導入部35Cの形状が図3Aのものと異なる実施形態を示す。
即ち、図3Bのガス導入部35Cは正面視略逆T字型をなし、ガス放出口35Dは図3Aと同様に、図示左右の側面に設けられており、ガス導入部35Cの下端部に当たったガスをその側面、即ち図中左右に略水平に分流する。
図3Cのガス導入部35Cは、図3Aに示したものと同様に正面視略I字型をなすが、ガス放出口35Dは、その底部と一方の側面(図示例では右側面)に設けられており、導入されたガスをその下端及び右側面方向にそれぞれ分流する。
いずれのガス導入部35Cにおいても、ガス放出口35Dの上端部35DH及び下端部35DLは図示のとおりであり、図2Dの部位a〜fとの関係は図3Aについて説明したとおりである。
【0035】
次に、以上で説明したエアバッグ10の展開について説明する。
図4A〜4Hは、本実施形態のエアバッグ10が展開する状態を順に示している。
図4Aは、図2Dの状態に折り畳んだ、つまり蛇腹折り部10Jとロール折り部10Rが車両幅方向に並んだ形状のエアバッグ10を、車両に取り付けた状態を模式的に示す図であり、車両のBピラーにおける各断面を概略的に示している。
エアバッグ10は、折り畳んだ状態で、その上端(固定布)が、例えばボルトナットから成る固定手段82によりルーフレール92(図1A)に固定されている。また、エアバッグ10は、ルーフレール92に、車内側を覆う部分(即ちエアバッグカバー)が車内側I(車室内側)に開放可能に取り付けられ、例えば合成樹脂製のヘッドライニング92Aと、ピラートリム91Aの上端部で囲まれた収納部に収納されている。
【0036】
車両に搭載されたエアバッグ装置1は、車両の衝突時等にインフレータ2(図1)を作動させて膨張用ガスを発生させ、その膨張用ガスをエアバッグ10内(第1〜5気室35〜39)に供給する。これにより、エアバッグ10を蛇腹折り部10Jからロール折り部10Rの順に、順次その折り畳み形状を解消させつつ、第1〜第5気室35〜39内に膨張用ガスを流入させて各気室35〜39を膨張させ、固定布21〜26側の車両側壁上方部から、車両の下方向の車室内に向かってカーテン状に膨張展開させる。
【0037】
即ち、車両の衝突時等でインフレータ2が作動して膨張用ガスが発生すると、発生した膨張用ガスは、エアバッグ10のガス供給口14を介してエアバッグ10の蛇腹折り部10Jに導入される。これによりエアバッグ10はインフレータ2からの膨張用ガスにより膨張を開始し、折り畳んだエアバッグ10に巻き付けたラッピング材が外れると、蛇腹折り部10Jが先ず膨張しつつ展開して、その車内側Iに配置されたロール折り部10Rを、ヘッドライニング92A側に押し出す。ヘッドライニング92A側に押し出されたロール折り部10Rはヘッドライニング92Aに当たる。ロール折り部10Rがヘッドライニング92Aに当たると、エアバッグ10(ロール折り部10R)はヘッドライニング92Aからの反力を受けて二つ折り状態からの展開が抑制され、結果としてコンパクトな形状を維持しながらエアバッグカバーであるヘッドライニング92Aを押し開いて室内側に飛び出す(図3B)。それと共に、ロール折り初期膨張部10RS(図2Dのdからeの部分)が膨張し始めることで、拘束を解かれたエアバッグ10のU字状に二つ折りされたロール折り部10Rは、ロール折り初期膨張部10RSで押し開かれてほぼ元のロール折り幅L(図2参照)に戻る(図4C、4D)。なお、その際に、逆U字状の折り畳み部を有する前記従来のエアバッグのようにロール折り部を下方に押し出す力は発生しない。
【0038】
ほぼ元のロール折り幅Lに戻ったロール折り部10Rは、膨張するロール折り初期膨張部10RS、および膨張し始めるその下端側の部分(図2Dのeからfの部分)に押されて車外側O方向、つまり、ここでは反時計方向に回転しつつ元のロール折り返し幅Lに戻りながらピラートリム91Aを越える(図4D、4E、4F)。ロール折り部10Rがピラートリム91Aを越えると、ロール折り部10Rはロール折り初期膨張部10RSに続く部分から順に膨張しつつ、膨張する部分に押されて巻きつけ方向と逆方向(車外側O方向)に回転して車外側O方向に向かいながら下方に展開する(図4G)。つまり、ロール折り部10Rは、ピラートリム91Aの上端部を越えると、ピラートリム91A(側壁91)に沿うようになり、以降はピラートリム91A(側壁91)に沿って膨張しつつ車外側O方向の回転を繰り返し、ロール折りを解きながら下方に展開する(図4H)。
【0039】
なお、エアバッグ10は、蛇腹折り部10Jが膨張展開中の状態でロール折り部10Rがピラートリム91Aから車両内側I内に飛び出すように、蛇腹折り部10Jの長さが設定されている。
既に述べたように、エアバッグ10は、膨張展開時において、収納部(ピラートリム91A)内では蛇腹折り部10Jだけが展開し、ロール折り部10Rはほぼ二つ折りした上下方向にコンパクトな状態で横方向に押し出される。
車室内に飛び出したエアバッグ10は、乗員の側面と窓との間で車外側O及び下方に向かって、つまり乗員の頭部と車両の窓との間に展開し、その膨張した第1から第5の気室35〜39により乗員を確実に保護することができる。
【0040】
本実施形態によれば、エアバッグ10は展開初期においてまず横方向に展開し、その際、二つ折りされたエアバッグ10のロール折り部10Rは、ほぼ二つ折りされたコンパクトな状態を維持しつつエアバッグカバーであるヘッドライニング92Aを押し開き、二つ折りを解きながらピラートリム91Aの上端を越えるため、従来のように蛇腹折り部10Jが展開する過程で、ロール折り部10Rがピラートリム91Aに当たることがない。
したがって、エアバッグ10の展開する過程でエアバッグ10(ロール折り部10R)が展開初期においてピラートリム91Aに当たってその展開速度が減速される虞はない。加えて、二つ折りが開放されるとロール折り初期膨張部10RSからロール折り部10Rがスムーズに展開するため、その展開速度を速めることができる。
【0041】
また、蛇腹折りが解けた後は、車外側に向けてロール折りを解きながら展開するため、乗員と窓ガラスの間に容易に展開・膨張して乗員を確実に保護することができる。さらに、ロール折りした後二つ折りするため、ロール折りの回数を二つ折りしない場合に比して少なくすることができ、生産性の向上及び折り畳んだエアバッグの断面サイズを小さくするなどの利点が得られる。
【符号の説明】
【0042】
1・・・エアバッグ装置、2・・・インフレータ、10・・・エアバッグ、10J・・・蛇腹折り部、10R・・・ロール折り部、10RS・・・ロール折り初期膨張部、12・・・表側基布、13・・・裏側基布、14・・・ガス供給口、15・・・外縁接合部、16〜19・・・内部接合部、20・・・連結部材、21〜26・・・固定布、30・・・膨張部、30H・・・膨張部30の上縁部、31・・・前膨張部、32・・・後膨張部、34・・・非膨張部、35C・・・ガス導入部、35D・・・ガス放出口、35DH・・・ガス放出口の上端部、35DL・・・ガス放出口の下端部、35〜39・・・第1〜第5気室、82・・・固定手段、90・・・車両、91・・・側壁、91A・・・ピラートリム、92・・・ルーフレール、92A・・・ヘッドライニング、93・・・フロントピラー、94・・・センターピラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内側壁の上方部に車両前後方向に沿って取り付けられるエアバッグと、折り畳まれたエアバッグを車室下方に向けて膨張展開させるインフレータと、を備えたエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、前記上方部へ取り付けられる上縁部側と反対側の一端側からロール折りしたロール折り部と、ロール折り部に続く蛇腹折りした蛇腹折り部を有し、前記蛇腹折り部は、前記ロール折り部を二つ折りした部分の車外側の側方で、前記ロール折り部の二つ折りした幅に相当する幅で折り返した折り返し部として形成され、前記蛇腹折り部が前記ロール折り部の側方に位置するように折り畳まれたエアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたエアバッグ装置において、
前記ロール折り部が車外側に展開するようにロール折りされた状態で、さらに全体がU字型に二つ折りされているエアバッグ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたエアバッグ装置において、
エアバッグの膨張部の上縁部は、前記折り返し部よりも、エアバッグの上縁部側に配置されるように折り畳まれているエアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
前記エアバッグにおけるインフレータからのガス供給口は、インフレータが作動したとき、インフレータからのガスによりエアバッグが前記蛇腹折り部から膨張展開するように、前記蛇腹折り部の前記ロール折り部と反対側端部となる部分に形成されているエアバッグ装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
前記ロール折り部の前記蛇腹折り部に連続する部分の一部は、ロール折り部の前記二つ折りされた部分の間に収納されるエアバッグ装置。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
前記エアバッグは、膨張展開する前記蛇腹折り部により押されて、前記ロール折り部が二つ折りされた状態で、エアバッグの車室内側を覆うエアバッグカバーを押し開けて、エアバッグの収納位置から車室内に出ることが可能であるエアバッグ装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
前記エアバッグにおけるガス導入部のガス放出口の上端部は、前記蛇腹折り部の前記折り返し部よりも、エアバッグの上縁部側に位置するように折り畳まれるとともに、前記ガス放出口の下端部は前記ロール折り部の二つ折りした最も上側部分間の区域に配置されているエアバッグ装置。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載されたエアバッグ装置において、
前記エアバッグにおけるガス導入部のガス放出口の上端部は、前記蛇腹折り部の前記折り返し部よりも、前記エアバッグの上縁部側に位置するように折り畳まれているとともに、ガス放出口の下端部はロール折り部の最も車室内側の部分に配置されているエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4ABC】
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【図4DEF】
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【図4GH】
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【図5】
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