説明

エアバッグ装置

【課題】直線状部分を有する係止体をその直線状部分の長手方向に沿って押込むことで、取付プレートに取付ける場合に、その係止体の抜止めを簡易な構成で実現できるようにすることを目的とする。
【解決手段】エアバッグ装置30は、取付部材が突設されたステアリングホイールに取付けられる。エアバッグ装置は、エアバッグと、インフレータと、カバー本体37及び立壁38とを有するカバー36と、立壁38にその開口を塞ぐように取付けられる取付プレート40と、取付部材が係止可能な直線状部分61を有する係止体60とを備える。取付プレート40に、係止体60を支持可能な係止体支持部44が設けられている。立壁38に、直線状部分61の長手方向の少なくとも一方側から係止体60の抜止め規制を行い規制片39が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エアバッグ装置をステアリングホイールに取付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアバッグ装置をステアリングホイールに取付ける構成として、ステアリングホイール及びエアバッグ装置の一方側に突設されたピンを、他方側に設けられたバネに係止させる構成が提案されている。
【0003】
上記バネの取付構成として、特許文献1及び2に開示のものがある。
【0004】
特許文献1では、第1の開口及び第2の開口を有するブラケットに、一対のアームを有するバネが取付けられる。第2の開口は、アームの自由端部を通過挿入できる拡大寸法部分とアームの自由端部を保持する縮小寸法部分とを有している。一対のアームの自由端部が、両者間を狭めるように弾性変形された後、元の形状に戻されると、一対のアームの自由端部が、拡大寸法部分を通って縮小寸法部分に保持される。
【0005】
特許文献2では、J字状又は直線棒状のスプリングワイヤが、開口を通過するようにベースに取付けられる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−238088号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0043786号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、ブラケットのいずれか一方面側に、一対のアームを狭めた後広げるために、大きな作業用スペースを確保する必要がある。これにより、ブラケットを含むエアバッグ装置が大型化する恐れがある。
【0008】
特許文献2に開示の技術では、J字状又は直線棒状のスプリングワイヤをベースに取付けた状態で、スプリングワイヤの長手方向への抜止めを図る必要がある。
【0009】
そこで、本発明は、直線状部分を有する係止体をその直線状部分の長手方向に沿って押込むことで、係止体を取付プレートに取付ける場合において、その係止体の抜止めを簡易な構成で実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、第1の態様は、取付部材が突設されたステアリングホイールに取付けられるエアバッグ装置であって、エアバッグと、前記エアバッグを膨張展開可能なインフレータと、折畳まれた前記エアバッグを覆うカバー本体と、折畳まれた前記エアバッグを囲うように前記カバー本体に突設された立壁とを有するカバーと、前記エアバッグ及び前記インフレータが取付けられた状態で、前記立壁にその開口を塞ぐように取付けられた取付プレートと、弾性変形可能な線状体によって形成され、前記取付部材が係止可能な直線状部分を有する係止体とを備え、前記直線状部分の長手方向に沿って押込まれた前記係止体を、前記直線状部分を、前記取付部材が係止可能な位置に配設した状態で、支持可能な係止体支持部が前記取付プレートに設けられ、前記立壁に、前記係止体が前記係止体支持部に支持された状態で、前記直線状部分の長手方向の少なくとも一方側から前記係止体の抜止め規制を行う規制片が設けられている。
【0011】
第2の態様は、第1の態様に係るエアバッグ装置であって、前記係止体は、前記直線状部分と、前記直線状部分の一端部から折返すU字状部分とを有し、前記取付プレートに、前記取付部材を挿通可能な取付孔が形成され、前記係止体支持部は、前記取付孔を挟むように形成された一対の挿通孔と、前記取付孔に隣設され、前記U字状部分の先端部を挿入固定可能な固定部とを有し、前記係止体が前記直線状部分の長手方向に沿って押込まれることで、前記直線状部分が前記取付孔を横切る位置に配設された状態で、前記U字状部分の先端部が固定部に挿入固定される。
【0012】
第3の態様は、第2の態様に係るエアバッグ装置であって、前記一対の挿通孔は、前記取付孔の周りで、前記直線状部分と交差する方向に長い孔形状に形成されている。
【0013】
第4の態様は、第1〜第3のいずれか1つの態様に係るエアバッグ装置であって、前記取付プレートに、規制片挿通孔が形成され、前記規制片が前記規制片挿通孔に挿通されて突出した状態で、前記直線状部分の長手方向の少なくとも一方側から前記係止体の抜止め規制を行う。
【発明の効果】
【0014】
第1の態様に係るエアバッグ装置によると、カバーの立壁に、前記係止体が前記係止体支持部に支持された状態で、前記直線状部分の長手方向の少なくとも一方側から前記係止体の抜止め規制を行う規制片が設けられているため、係止体の抜止めを簡易な構成で実現できる。
【0015】
第2の態様によると、前記U字状部分の先端部が固定部に挿入固定されているため、その挿入方向とは反対方向へのみ抜止めを図ればよい。
【0016】
第3の態様によると、前記一対の挿通孔は、前記直線状部分と交差する方向に長い孔形状に形成されているため、取付部材を取付孔に挿通する際に、係止体の直線状部分を取付孔から退避する方向に容易に移動させることができる。これにより、取付部材と係止体との係止を円滑に行える。
【0017】
第4の態様によると、規制片は、取付プレートに形成された規制片挿通孔に挿通された突出した状態で、前記直線状部分の長手方向の少なくとも一方側から前記係止体の抜止め規制を行うため、エアバッグ装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係るステアリングホイール及びエアバッグ装置を示す分解斜視図である。
【図2】同上のステアリングホイール及びエアバッグ装置を示す分解斜視図である。
【図3】取付部材を示す斜視図である。
【図4】取付部材を示す平面図である。
【図5】取付部材を示す側面図である。
【図6】図4のVI−VI線断面図である。
【図7】エアバッグ装置を示す背面図である。
【図8】エアバッグ装置を示す斜視図である。
【図9】エアバッグ装置を示す分解斜視図である。
【図10】取付プレート及び係止体を示す背面図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】取付プレート及び係止体を示す部分斜視図である。
【図13】取付プレート及び係止体を示す部分斜視図である。
【図14】取付プレートを示す背面図である。
【図15】係止体を示す斜視図である。
【図16】係止体を示す斜視図である。
【図17】係止体を示す正面図である。
【図18】図17のXVIII−XVIII線断面図である。
【図19】図17のXIX−XIX線断面図である。
【図20】図17のXX−XX線断面図である。
【図21】図17のXXI−XXI線断面図である。
【図22】図17のXXII−XXII線断面図である。
【図23】係止体の分解斜視図である。
【図24】係止体の分解斜視図である。
【図25】係止体を取付部材に取付ける工程を示す説明図である。
【図26】ステアリングホイールとエアバッグ装置との取付部分を示す分解斜視図である。
【図27】ステアリングホイールとエアバッグ装置との取付部分を示す側面図である。
【図28】ステアリングホイールとエアバッグ装置との取付部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態に係るエアバッグ装置について説明する。図1及び図2はステアリングホイール10及びエアバッグ装置30を示す分解斜視図である。
【0020】
<ステアリングホイール10とエアバッグ装置30との全体構成>
このエアバッグ装置30は、車両におけるステアリングホイール10に取付可能に構成されている。ステアリングホイール10及びエアバッグ装置30の全体構成について概略的に説明する。
【0021】
ステアリングホイール10は、車両の操舵を行うためのものであり、ホイール本体12とスポーク14と第1固定部材としての中央部材16とを備えている。ホイール本体12は、リング状に形成されており、人による操舵力を受ける部分である。中央部材16は、円板状部材であり、車体の運転席前方より後方に向けて延出するステアリングシャフトの先端部に連結可能に構成されている。スポーク14は、ホイール本体12の内周部分からその中央に向けて延びる長尺形状(ここでは細長板状)に形成されており、ホイール本体12の中央で中央部材16に連結されている。ここでは、スポーク14は、3本設けられているが、2本等であってもよい。そして、ステアリングホイール10を回転させると、その回転運動がスポーク14及び中央部材16を介してステアリングシャフトに伝達されるようになっている。なお、通常、上記ステアリングホイール10、スポーク14及び中央部材16は、樹脂等で形成された外装部材によって覆われる。
【0022】
上記中央部材16には、取付部材22が突設されている。この取付部材22を用いてステアリングホイール10にエアバッグ装置30が取付固定される。
【0023】
また、取付部材22には、コイルバネ25が外嵌めされている。このコイルバネ25により、中央部材16に対して離れる方向にエアバッグ装置30が付勢される。
【0024】
エアバッグ装置30は、エアバッグ32と、インフレータ34と、カバー36と、第2の固定部材である取付プレート40と、係止体60とを備えている。
【0025】
エアバッグ32は、布等で袋状に形成されており、カバー36内に収容可能なように折畳まれている。
【0026】
インフレータ34は、エアバッグ32を膨張展開可能に構成されている。ここでは、インフレータ34は、短円柱状のインフレータ本体部34aと、インフレータ本体部34aの外周に形成された取付フランジ34bとを有している。インフレータ本体部34aには、点火装置及びガス発生剤等が組込まれている。そして、車両衝突時に衝撃検知部等からの検知信号等を受けると、前記点火装置がガス発生剤を点火する。これにより、ガス発生剤が燃焼し、この燃焼によって発生するガスがエアバッグ32内に供給される。これにより、エアバッグ32が運転手に向けて膨張展開する。取付フランジ34bは、外周縁が方形状をなすように延出する板状に形成され、その4つの角部分に固定孔34cが形成されている。
【0027】
カバー36は、樹脂等により形成された部材であり、カバー本体37と立壁38とを有している。カバー本体37は、なだらかに湾曲するドーム状に形成されている。このカバー本体37の内面側に折畳まれたエアバッグ32の周りを囲う立壁38が突設されている。ここでは、立壁38は、円筒状に形成されているが、その他、角筒状、或は、エアバッグ32の周りを部分的に囲う形状に形成されていてもよい。そして、折畳まれたエアバッグ32が、前記カバー本体37及び立壁38で囲まれる空間内に収容される。なお、カバー本体37には、エアバッグ32の膨張展開力を受けて割れ容易なティアラインが形成されている。
【0028】
取付プレート40は、上記エアバッグ32及びインフレータ34が取付けられた状態で、立壁38に、その開口を塞ぐように取付可能に構成されている。
【0029】
すなわち、取付プレート40は、立壁38の開口を閉塞可能な程度の広がりを有する板状部材に形成されている。ここでは、取付プレート40は、立壁38の開口と同じ形状の円形板部42と、円形板部42の外周囲に形成された周壁48とを有している。そして、円形板部42が立壁38の開口を閉塞した状態で、周壁48が立壁38の開口外周縁部に外嵌めされる。
【0030】
円形板部42の中央部には、開口42hが形成され、この開口42h内にインフレータ34が配設される。
【0031】
また、円形板部42のうち開口42h外周には、ネジ挿通孔42cが形成されており、このネジ挿通孔42cを利用して、インフレータ34及びエアバッグ32が次のようにして取付けられる。すなわち、上記エアバッグ32内であってそのガス導入口32h周りに挟込ブラケット50が配設される。挟込ブラケット50は、金属板等で形成された部材であり、ここでは、略方形板形状に形成されている。挟込ブラケット50の中央部には、インフレータ34を配設可能な開口50hが形成されている。また、挟込ブラケット50の各角部にネジ部51が突設されている。挟込ブラケット50がエアバッグ32内に配設された状態で、各ネジ部51はエアバッグ32のうちガス導入口32h周りに形成された孔を通ってエアバッグ32外に突出している。また、インフレータ本体部34aが取付プレート40の開口42h内に配設されると共に、取付フランジ34bが、その固定孔34cをネジ挿通孔42cと同じ位置に配設した状態で取付プレート40に重ねて配設される。この状態で、各ネジ部51がネジ挿通孔42c及び固定孔34cを通って取付プレート40から突出するように、挟込ブラケット50が取付プレート40に重ね合される。そして、取付プレート40から突出する各ネジ部51に、ナット52を螺合締結する。これにより、インフレータ34が取付プレート40に取付固定されると共に、エアバッグ32が挟込ブラケット50と取付プレート40との間に挟込まれた状態で取付プレート40に取付固定される。この状態では、インフレータ34の少なくとも一部はエアバッグ32内に配設されている。
【0032】
この取付プレート40に対して上記カバー36も取付固定される。その取付構造については後に説明する。
【0033】
また、取付プレート40には、ステアリングホイール10側の取付部材22と対応する位置に取付孔43hが形成されている。取付プレート40のうち各取付孔43hに対応する部分に係止体60が取付けられている。エアバッグ装置30をステアリングホイール10に向けて押込み、各取付部材22を対応する各取付孔43hに挿通すると、各取付部材22に係止体60が係止して、エアバッグ装置30がステアリングホイール10に取付けられるようになっている。
【0034】
<ステアリングホイール10にエアバッグ装置30を取付ける構成>
ステアリングホイール10に上記エアバッグ装置30を取付けるための構成についてより具体的に説明する。
【0035】
図3は取付部材22を示す斜視図であり、図4は取付部材22を示す平面図であり、図5は取付部材22を示す側面図であり、図6は図4のVI−VI線断面図である。
【0036】
図1〜図6に示すように、ステアリングホイール10の中央部材16は、金属等の導電性部材により形成されており、この中央部材16に取付部材22が突設されている。ここでは、中央部材16の中心周りに3つの取付ベース20が設けられ、それぞれの取付ベース20に固定側接点21及び取付部材22が突設されている。
【0037】
より具体的には、取付ベース20、固定側接点21及び取付部材22は、金属等の導電性部材により一体形成されている。
【0038】
取付ベース20は、方形板状に形成されており、その一主面に固定側接点21及び取付部材22が突設されている。なお、取付ベース20は、中央部材16に対して一体形成されたものであっても、ねじ止等で取付けられたものであってもよい。
【0039】
固定側接点21は、短円柱状部分の先端部により細径の端縁長部分が突設された形状とされている。
【0040】
取付部材22は、柱部23と係止突部24とを有している。柱部23は、取付ベース20よりステアリングホイール10の前方側(エアバッグ装置30側)に突出するように形成されている。ここでは、柱部23は、半円柱状に形成されている。この柱部23の先端に係止突部24が突設されている。ここでは、係止突部24は、ステアリングホイール10の中央側に向けて突出するように形成されている。また、この係止突部24のうちエアバッグ装置30側の先端部には、ステアリングホイール10の中心に向けて順次高さ寸法が低くなるように傾斜する傾斜面22aが形成されている。また、この係止突部24を、柱部23の軸方向に沿って視ると円形状をなしている。
【0041】
また、この取付部材22にコイルバネ25が外嵌めされる。コイルバネ25は、胴部26と係止端部27とを有している。胴部26は、上記柱部23に外嵌め可能な内径を有しており、上記柱部23に外嵌めされた状態で柱部23の軸方向に沿って伸縮変形可能とされている。また、係止端部27は、上記係止突部24に係止可能に構成されている。ここでは、係止端部27は、胴部26の端部より延出する部分が胴部26の内周を横切るように折曲げられた構成とされている。もっとも、胴部26の軸方向からみて胴部26と係止端部27との間には柱部23が通過可能な空間が設けられている。従って、コイルバネ25のうち係止端部27が設けられた部分も、柱部23の軸方向に沿って移動できるようになっている。なお、コイルバネ25の自然長は、取付部材22の基端部と係止端部27との間の長さ寸法よりも長く、好ましくは、取付部材22の全体長よりも長い。
【0042】
そして、コイルバネ25が外嵌めされた状態で、係止端部27を係止突部24に対して取付部材22の基端側から係止させることで、コイルバネ25を係止突部24から先端側に突出しないように圧縮状態に維持できるようになっている。
【0043】
図7はエアバッグ装置30を示す背面図であり、図8はエアバッグ装置30を示す斜視図であり、図9はエアバッグ装置30を示す分解斜視図である。なお、図8及び図9において、インフレータ34及びエアバッグ32は省略されている。図10は取付プレート40及び係止体60を示す背面図であり、図11は図10のXI−XI線断面図であり、図12及び図13は取付プレート40及び係止体60を示す部分斜視図であり、図14は取付プレート40を示す背面図である。また、図15及び図16は係止体60を示す斜視図であり、図17は係止体60を示す正面図であり、図18〜図22は図17に示す係止体60の断面図であり、図23及び図24は係止体60の分解斜視図であり、図25は係止体60を取付部材22に取付ける工程を示す説明図である。
【0044】
取付プレート40には、上記各取付部材22に対応して各係止体支持部44が設けられ、それぞれの係止体支持部44に係止体60が取付けられる。
【0045】
係止体60は、弾性変形可能な線状体によって形成されている。より具体的には、係止体60は、弾性変形可能な金属ワイヤを曲げ変形させることによって形成されており、取付部材22が係止可能な直線状部分61を有している。また、ここでは、係止体60は、直線状部分61の一端部から折返すU字状部分62を有している。U字状部分62は、半円弧を描くように折返す円弧状部分62aと、その円弧状部分62aの一端側に直線状に延出する固定端部62bとを有している。固定端部62bは、前記直線状部分61より短く、かつ、直線状部分61に対して平行状態となっている。つまり、係止体60は、全体としてJ字状に形成されている。なお、後述する係止体60の取付作業を実施できる範囲であれば、上記直線状部分61は多少曲っていてもよい。また、固定端部62bと直線状部分61とは斜め姿勢となっていてもよい。
【0046】
また、ここでは、係止体60は樹脂被覆部64により覆われている。樹脂被覆部64は、上記直線状部分61を覆う直線状被覆部分65と、固定端部62bを覆う固定被覆部分66と、円弧状部分62aを覆う曲げ被覆部分67とを有している。これらの直線状被覆部分65、固定被覆部分66及び曲げ被覆部分67は、係止体60の形状に沿ってJ字状に曲るように、樹脂により一体形成されている。
【0047】
直線状被覆部分65は、直線状部分61の中間部及び円弧状部分62a側の部分の内側及び両側方を覆う半管状部分と、当半該管状部分の一端側で直線状部分61の外向き端部の外周囲全体を覆う管状部分とを有する形状とされている。
【0048】
また、固定被覆部分66は、固定端部62bの外周囲全体を覆う管状部分に形成され、その外形は、角柱状をなすように形成されている。また、固定被覆部分66のうち曲げ被覆部分67に連なる部分には、固定被覆部分66の先端側に面する当接面66fを有する位置決め突部66aが形成されている。
【0049】
また、曲げ被覆部分67は、円弧状部分62aに沿って曲りつつ円弧状部分62aの内周側のみを覆う形状に形成されている。
【0050】
そして、直線状部分61を長手方向に沿って直線状被覆部分65に挿入すると、同方向に沿って固定端部62bが固定被覆部分66にも挿入される(図23及び図24参照)。直線状部分61を直線状被覆部分65に完全に挿入すると、曲げ被覆部分67の外周に円弧状部分62aが配設される。これにより、樹脂被覆部64が係止体60に装着される。この樹脂被覆部64は、係止体60の金属部分が取付部材22及び取付プレート40に直接接触することを抑制する役割を果す。これにより、振動等による、係止体60と取付部材22及び取付プレート40との間での異音が抑制される。また、通常状態での取付部材22と取付プレート40とが電気的に絶縁された状態に維持され、ホーンを鳴らすためのオンオフスイッチ構成を組込むことが可能となる。もっとも、本樹脂被覆部64は必須ではない。
【0051】
この係止体60が直線状部分61に沿って係止体支持部44に押込み装着されると、直線状部分61が、取付部材22が係止可能な位置に配設された状態で、係止体支持部44によって支持される。
【0052】
すなわち、取付プレート40の円形板部42のうちステアリングホイール10の取付部材22と対応する各部分が、その周辺部に対して周壁48とは反対側に隆起するようにプレスされた支持段部44sに形成されている。この支持段部44sに取付部材22を挿通可能な取付孔43hが形成されている。
【0053】
係止体支持部44は、取付孔43hを挟むように形成された一対の挿通孔44a、44bと、取付孔43hに隣設され、前記U字状部分62の先端部の固定端部62bを挿入固定可能な固定部45とを有している。
【0054】
ここでは、一対の挿通孔44a、44bは、支持段部44sの周囲の立上がり壁部分のうち前記取付孔43hを取付プレート40の内外方向(取付プレート40の中心に対する放射方向)に対して直交する方向で挟む位置に形成されている。従って、上記直線状部分61を一対の挿通孔44a、44bに挿入すると、係止体60の直線状部分61が取付プレート40の内外方向に対して直交する姿勢で、取付孔43hを横切るように配設される。
【0055】
また、一対の挿通孔44a、44bは、取付孔43hの周りで前記直線状部分61と交差する方向に長い孔形状に形成されている。従って、係止体60の直線状部分61は、取付プレート40の内外方向に変位できるようになっている。
【0056】
固定部45は、上記のように、取付孔43hを横切るように直線状部分61を配設した状態で、固定端部62bが配設される位置に設けられている。固定部45は、上記支持段部44sの周囲の立上がり壁部分の一部に、固定端部62bを挿入可能な挿入孔45aを形成すると共に、その挿入孔45aの内側に固定端部62bを位置決め可能な凹溝45b(図11参照)を形成することにより形成されている。凹溝45bは上記のように配設される直線状部分61の長手方向に沿って延在しており、挿入孔45aは、凹溝45bに対して取付孔43hの反対側に開口している。
【0057】
そして、直線状部分61を一対の挿通孔44a、44bに通しつつ、固定被覆部分66の当接面66fが挿入孔45aの周縁部に当接するまで、固定端部62bを上記固定部45内に押込む(図25参照)。すると、固定端部62bが固定部45によりその挿入方向及び幅方向への位置決めをなされた状態で支持される。この状態で、直線状部分61が一対の挿通孔44a、44b間で取付孔43hを横切るように配設される。
【0058】
なお、係止体60の挿入方向への位置決めは、上記構成の他、係止体60のU字状部分62の内周部或は係止体60の挿入方向の先端側の部分を、取付プレート40等に設けられた部材に押し当てる構成等により実現されてもよい。
【0059】
また、上記取付孔43hには、樹脂製の筒部材54が内嵌めされる。筒部材54の一端部の外周には鍔状部54aが形成され、当該鍔状部54aが取付孔43hの外周に接するまで筒部材54の一端部が取付孔43hに内嵌めされる(図1、図8等参照)。また、筒部材54の外周囲には、上記一対の挿通孔44a、44bの内周側で筒部材54の周方向に沿って延びる挿通溝54bが形成されており、上記直線状部分61は、当該挿通溝54bを通って取付孔43hを横切るように配設される(図1、図8等参照)。この筒部材54は、係止体60が取付プレート40に直接接触することを抑制する役割を果している。これにより、振動等による、取付部材22と取付プレート40との間での異音が抑制される。また、通常状態での取付部材22と取付プレート40とが電気的に絶縁された状態に維持され、ホーンをならすためのオンオフスイッチ構成を組込むことが可能となる。もっとも、筒部材54は必須ではない。
【0060】
上記係止体60の挿入方向反対側への抜止めを図る構成について説明する。
【0061】
すなわち、上記取付プレート40に規制片挿通孔47hが形成されている。より具体的には、上記各挿入孔45aから取付プレート40の周縁方向に沿って離れた位置に規制片挿通孔47hが形成されている。ここでは、規制片挿通孔47hは、取付プレート40の円形板部42の周縁に沿った弧状孔形状に形成されているが、これは必須ではない。
【0062】
立壁38の開口側周縁部のうち上記各規制片挿通孔47hに対応する位置に、規制片39が突設されている。規制片39は、規制片挿通孔47hの延在方向に沿った弧状片形状で、かつ、規制片挿通孔47hの長さ寸法とほぼ同じ長さ寸法に設定されている。もっとも、規制片39は、規制片挿通孔47hに挿通可能な形状であればよい。
【0063】
そして、立壁38の開口側周縁部を取付プレート40の周壁48内に嵌め込み、規制片39を規制片挿通孔47hに挿通させると共に、立壁38の開口側周縁部の他の部分を円形板部42の内面に当接させる。すると、規制片39が取付プレート40のうち係止体60の円弧状部分62aの外周側の位置に突出する。これにより、規制片39が円弧状部分62aの外周側の部分に当接可能な位置に配設され、係止体60の直線状部分61の長手方向の少なくとも一方側(ここでは、係止体60の挿入方向の反対側)から係止体60の抜止め規制が行われる。
【0064】
また、上記規制片挿通孔47hの周縁部にはカバー固定片47haが突設されている。ここでは、規制片挿通孔47hの外周側の長手方向中間部にカバー固定片47haが突設されている。また、規制片39が規制片挿通孔47hに挿通された状態で、カバー固定片47haと対応する位置にカバー固定孔39hが形成されている。上記のように規制片39が規制片挿通孔47hに挿通された状態で、カバー固定片47haがカバー固定孔39h内に配設されることで、カバー36と取付プレート40との固定が行われる。なお、本実施形態では、3つの規制片39の他に、当該規制片39と同様構成のカバー固定片39dが設けられている。また、取付プレート40のうちカバー固定片39dに対応する位置に、規制片挿通孔47hと同様構成のカバー固定片挿通孔47dが形成されている(図7、図8等参照)。
【0065】
このカバー固定片39dも、カバー36と取付プレート40とを固定する役割を有している。なお、カバー36と取付プレート40との固定は、その他、ねじ止、リベット固定等によって行われてもよい。
【0066】
なお、係止体60の挿入方向側への位置規制についても、上記と同様に、立壁38に別途設けられた規制片によって行うようにしてもよい。
【0067】
また、規制片39は、必ずしも取付プレート40に形成された規制片挿通孔47hに挿通された状態で位置規制を行う必要はない。規制片が、取付プレートの外周側から取付プレートに対して突出して係止体の位置決めを図るようにしてもよい。
【0068】
上記エアバッグ装置30は次のようにしてステアリングホイール10に取付けられる。
【0069】
すなわち、上記取付部材22を取付孔43h内に挿入するようにして、エアバッグ装置30をステアリングホイール10に向けて押込む。すると、取付部材22の傾斜面22aが係止体60の直線状部分61に押し当てられる。これにより、直線状部分61がU字状部分62を中心として取付部材22の内側に曲げられる(図28参照)。また、取付部材22に装着されているコイルバネ25の先端部は取付プレート40に筒部材54を介して押し当てられ、圧縮変形する。そして、係止体60の直線状部分61が取付部材22の係止突部24を乗越えると、係止体60の直線状部分61が元の取付孔43hを横切る位置に復帰移動する。また、取付プレート40と取付ベース20との間で圧縮変形したコイルバネ25の弾性力によって、取付プレート40と取付ベース20とが離反方向に付勢される。これにより、取付プレート40と取付ベース20とが離反方向に付勢された状態で、係止体60が係止突部24に取付部材22の基端側より係止し、エアバッグ装置30がステアリングホイール10に対して取付けられる(図26〜図27参照)。
【0070】
なお、上記状態で取付ベース20側の固定側接点21は、支持段部44sに対して離れた位置に配設されている。そして、エアバッグ装置30をステアリングホイール10に向けて押込むと、コイルバネ25の付勢力に抗して取付プレート40がステアリングホイール10側に向けて接近移動し、固定側接点21と取付プレート40とが接触する。これにより、固定側接点21を一方側の接点、取付プレート40を他方側の接点とする、ホーン鳴動回路用のスイッチを組込むことができる。すなわち、本エアバッグ装置30がステアリングホイール10に取付けられた状態では、コイルバネ25の付勢力によって固定側接点21と取付プレート40とは非接触状態となっており、両者は非導通状態となっている。この状態で、運転者がカバー36を押すと、コイルバネ25の付勢力に抗して取付プレート40がステアリングホイール10側に押される。これにより、固定側接点21が他方側の接点としての取付プレート40に接触し、両者が導通状態となり、ホーンが鳴動するように構成することができる。
【0071】
もっとも、この部分にホーンスイッチ構造を組込む必要はなく、カバー36の表面部分にホーンスイッチが組込まれていてもよい。
【0072】
以上のように構成されたエアバッグ装置30によると、係止体60をその直線状部分61の長手方向に沿って挿入することで、係止体支持部44により支持することができる。このため、係止体60を取付けるための作業スペースを小さくすることができ、エアバッグ装置30の小型に貢献する。
【0073】
この場合において、係止体60の抜止めを図る構成としては、係止体60自体に抜止めのための係止構造を付加する構成、或は、取付プレート40に抜止めのための部品を別途取りつけるための構成を付加すること等が想定される。ところが、それらの対策では、形状の複雑か、部品点数増等により、コスト増を招く恐れがある。
【0074】
そこで、本実施形態では、カバー36の立壁38に、係止体60が係止体支持部44により支持された状態で、直線状部分61の長手方向の少なくとも一方側(ここでは挿入方向側)から係止体60の抜止め規制を行う規制片39が設けられている。このため、係止体60の抜止めを簡易な構成で実現できる。
【0075】
しかも、規制片39は、取付プレート40に形成された規制片挿通孔47hに挿通され、取付プレート40から突出した状態で、上記係止体60の抜け止規制を行う。このため、規制片が取付プレートの外周側より突出して係止体の抜け止規制を行う場合と比較して、エアバッグ装置30の小型化を図ることができる。
【0076】
また、係止体60の固定端部62bが固定部45に挿入固定され、その挿入方向への位置決めが図れているため、その挿入方向とは反対方向への抜止めを上記構成によって実現すればよいため、この点でも構成を簡易化できる。
【0077】
また、一対の挿通孔44a、44bは、係止体60の直線状部分61と交差する方向に長い孔形状に形成されているため、取付部材22を取付孔43hに挿通する際に、係止体60の直線状部分61が取付孔43hの中央から退避する方向に容易に移動することができる。これにより、取付部材22と係止体60との係止を円滑に行える。
【0078】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0079】
10 ステアリングホイール
22 取付部材
30 エアバッグ装置
32 エアバッグ
34 インフレータ
36 カバー
38 立壁
39 規制片
40 取付プレート
44 係止体支持部
44a、44b 挿通孔
44s 支持段部
45 固定部
47h 規制片挿通孔
60 係止体
61 直線状部分
62 U字状部分
62a 円弧状部分
62b 固定端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部材が突設されたステアリングホイールに取付けられるエアバッグ装置であって、
エアバッグと、
前記エアバッグを膨張展開可能なインフレータと、
折畳まれた前記エアバッグを覆うカバー本体と、折畳まれた前記エアバッグを囲うように前記カバー本体に突設された立壁とを有するカバーと、
前記エアバッグ及び前記インフレータが取付けられた状態で、前記立壁にその開口を塞ぐように取付けられた取付プレートと、
弾性変形可能な線状体によって形成され、前記取付部材が係止可能な直線状部分を有する係止体と、
を備え、
前記直線状部分の長手方向に沿って押込まれた前記係止体を、前記直線状部分を前記取付部材が係止可能な位置に配設した状態で、支持可能な係止体支持部が前記取付プレートに設けられ、
前記立壁に、前記係止体が前記係止体支持部に支持された状態で、前記直線状部分の長手方向の少なくとも一方側から前記係止体の抜止め規制を行う規制片が設けられている、エアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1記載のエアバッグ装置であって、
前記係止体は、前記直線状部分と、前記直線状部分の一端部から折返すU字状部分とを有し、
前記取付プレートに、前記取付部材を挿通可能な取付孔が形成され、
前記係止体支持部は、前記取付孔を挟むように形成された一対の挿通孔と、前記取付孔に隣設され、前記U字状部分の先端部を挿入固定可能な固定部とを有し、
前記係止体が前記直線状部分の長手方向に沿って押込まれることで、前記直線状部分が前記取付孔を横切る位置に配設された状態で、前記U字状部分の先端部が固定部に挿入固定される、エアバッグ装置。
【請求項3】
請求項2記載のエアバッグ装置であって、
前記一対の挿通孔は、前記取付孔の周りで、前記直線状部分と交差する方向に長い孔形状に形成されている、エアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のエアバッグ装置であって、
前記取付プレートに、規制片挿通孔が形成され、
前記規制片が前記規制片挿通孔に挿通されて突出した状態で、前記直線状部分の長手方向の少なくとも一方側から前記係止体の抜止め規制を行う、エアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−82279(P2013−82279A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222649(P2011−222649)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】