説明

エアバランスを利用して退避動作を行う位置決め装置

【課題】外部の動力に依存することなく、新たな制御回路を追加することもなく、ブレーキが動作する条件で、確実に垂直軸に退避動作をさせることができる位置決め装置を提供すること。
【解決手段】固定部20に対して可動部21が鉛直方向に対して上下に移動する構造であり、圧力調整装置46はエア源(コンプレッサ)44に接続され、圧縮空気がエア配管60を介してエア源44から圧力調整装置46に供給され、圧力調整装置46に供給された圧縮空気はエアバランスの配管80を介してエアバランスに供給され、制御装置40からの圧力調整を指令する電気信号が圧力調整の信号線80を経由して圧力調整装置46に入力し、圧力調整装置46の動作が制御され、非常停止スイッチ42は手動で緊急停止させるためのスイッチであり、これが押されると制御装置40の制御が切れて非常停止状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械や3次元計測装置などの装置に安全性を考慮して搭載される退避動作を行う位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械や3次元計測装置は、任意の位置決め制御が可能であり、加工時間や計測時間を短縮するため、高速な駆動を行なうことも多い。これらの装置は安全性を考慮して、駆動中であっても非常停止をする機能が搭載されている。装置が非常停止になるのは、非常停止スイッチを押して手動で装置を緊急停止させた場合や、サーボモータの過負荷などで装置がアラームになって自動停止する場合のほか、停電などで電源が失われた場合などである。一般的な非常停止の方法としては、すべての軸を減速動作させ、ブレーキをかけて位置を保持して停止させる。
【0003】
しかし、各軸が高速駆動している最中に非常停止を行なう場合、ブレーキで停止するまでに、ある程度の距離は慣性で移動することになるので、常に安全に停止できるとは限らない。加工中の工作機械であれば工具とワークの衝突、計測中の3次元計測装置であればプローブと測定物の衝突が起きる可能性がある。このような高速駆動時の非常停止の場合にも、装置を安全に停止させるために、各軸が完全に停止するまで、サーボモータの制御を維持する方法が考案されている。
【0004】
図24は、従来の技術における非常停止のフローチャートを示している。停電による非常停止かいなか判断し、非常停止の場合には無停電電源(UPS)から電源供給を開始し、各軸の制御を維持して減速停止し、安全な位置に退避して、全軸にブレーキをかけ、その後に全軸の制御を切り、非常停止が完了する。これは、各軸が完全に停止するまで、サーボモータの制御を維持する方式で、本来の駆動経路の途中で停止させた後、安全な位置に移動して、ブレーキを作動させる。停電などで電源が失われた場合は、別途設置した無停電電源(UPS)および減速動作による回生エネルギーから、一定時間の電源供給を受けることで、安全に停止させる技術である(特許文献1,2参照)。
また、特許文献3や特許文献4には、精密工作機械や精密測定器などにおいて、垂直軸上で移動する可動部の自重を補償する機構に適用されるエアバランス構造の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−54914号公報
【特許文献2】特開平8−227307号公報
【特許文献3】特開2006−177437号公報
【特許文献4】特開2006−214536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に開示されるように非常停止を行う場合、工作機械や3次元計測装置などの装置の各軸の制御を維持して、本来の駆動経路の途中で停止させた後、安全な位置に移動して、ブレーキを作動させる。
【0007】
停電などで電源が失われた場合は、別途設置したバッテリー(無停電電源)および減速動作による回生エネルギーから、一定時間の電源供給を受けることで、安全に停止させる。この方法は、安全性や汎用性に優れている一方で、高価なバッテリーや回生電源の回路が別途必要であり、回生電源の回路等を後付けするためには、大掛かりな制御回路、電源回路の変更が必要となる。また、例えば、加工プログラムの間違いにより、工具がワークに衝突して過負荷アラームとなった場合、間違った工具経路を維持して停止するのでは、被害が大きくなる。さらに、地震などで、各軸の駆動力を上回る大きな加速度が外部から加わった場合は、経路の維持ができないという問題もある。
【0008】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、外部の動力に依存することなく、確実に垂直軸に退避動作をさせることができる位置決め装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に係る発明は、垂直軸を駆動するサーボモータと、該サーボモータを制御する制御装置と、前記垂直軸の自重をキャンセルするエアバランスとを備えた位置決め装置において、前記エアバランスにエアを供給するエア供給源と、該エア供給源から供給されるエアを使用した前記エアバランスの圧力を調整する圧力調整装置と、前記位置決め装置が非常停止、停電、あるいはその他の操作により前記サーボモータの励磁が解除されたとき、前記エアバランスの圧力を変更し、前記垂直軸に付随して移動する構造部が他の構造物と衝突することを回避または衝突を低減する方向に前記垂直軸を移動させるためのエアバランス圧力変更部と、を有することを特徴とする位置決め装置である。
請求項2に係る発明は、前記エアバランス圧力変更部は、エアバランスの圧力変化によって前記サーボモータの推力以上の力を発生させることを特徴とする請求項1記載の位置決め装置である。
請求項3に係る発明は、前記エアバランス圧力変更部は、エアバランスに接続された圧力調整装置であることを特徴とする請求項1記載の位置決め装置である。
請求項4に係る発明は、前記エアバランス圧力変更部は、エアバランスの圧力よりも高いまたは低い圧力のエアを一定量溜めることができるエアタンクと弁で構成されており、該エアタンクは該弁を介して該エアバランスと配管で接続されていることを特徴とする請求項1記載の位置決め装置である。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記垂直軸は、エア圧力を供給するとブレーキが解除され、エア圧力を抜くとブレーキが作動するブレーキ装置を備え、前記ブレーキ装置に供給されるエアは、前記エアバランスの圧力よりも十分高いエア源から弁を介して供給され、前記弁は、弁が閉じたときの残圧を逃がす排気ポートを備え、前記弁が閉じたときに、前記ブレーキ装置の残圧が弁の前記排気ポートを介して前記エアバランスに流入する管路を備えていることを特徴とする請求項1記載の位置決め装置である。
請求項6に係る発明は、前記垂直軸とは別に少なくとも一つの直動軸または回転軸を有し、該直動軸または回転軸はエア圧力を供給するとブレーキが解除され、エア圧力を抜くとブレーキが作動するブレーキ装置を備え、それぞれの弁は同時に開閉し、弁を閉じたときにそれぞれのブレーキの残圧が前記排気ポートを介して、エアバランスに流入する管路を備えていることを特徴とする請求項5記載の位置決め装置である。
請求項7に係る発明は、前記ブレーキ装置と前記弁を接続するエア配管の少なくとも一つは、配管内にエアを溜めることが可能な構造であることを特徴とする請求項6記載の位置決め装置である。
請求項8に係る発明は、前記垂直軸のブレーキ装置は、ブレーキを作動させる時に排出されるエアの管路に絞り弁が取り付けられ、前記排出されるエアの流速を制限することにより垂直軸のブレーキの作動時間が遅延する構造を特徴とした請求項5乃至7のいずれか1つに記載の位置決め装置である。
請求項9に係る発明は、前記弁は、電磁弁であり、該電磁弁の電源がONの時にブレーキ装置にエアが供給されて、ブレーキが解除され、電磁弁がOFFの時にブレーキが作動することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1つに記載の位置決め装置である。
請求項10に係る発明は、前記エアバランスは、精密減圧弁の2次側に接続され、前記エアバランスの圧力が一定になるように圧力調整することを特徴とする請求項1記載の位置決め装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、外部の動力に依存することなく、確実に垂直軸に退避動作をさせることができる位置決め装置を提供できる。
<請求項1>
請求項1に係る発明は、本来,垂直軸の自重をキャンセルするために搭載されているエアバランスを、非常停止時の退避動作にも利用することで、安価に位置決め装置の安全性を高めることができる。
<請求項2>
請求項2に係る発明は、エアバランスは垂直軸の駆動力以上の推力を容易に発生させることができるので、制御で退避動作させるよりも、高速な退避動作を実現でき、また、地震など、制御の駆動力を超える外力が加わった場合にも、安全な退避動作ができる可能性が高い。
<請求項3>
請求項3に係る発明は、エアバランスの圧力変化によって前記サーボモータの推力以上の力を発生させることができる。
<請求項4>
エアバランスの圧力を継続的に変えてしまうと、垂直軸は際限なく動いてしまうが、退避動作があまりに大きいと、安全性が損なわれる可能性もあるので、退避動作は安全確保に必要な距離だけ動くのが望ましい。請求項4に係る発明は、非常停止時において、弁を開くと、エアタンク内がエアバランスと同じ圧力になるまで、垂直軸が退避動作をするが、それ以上は移動しない、つまり、退避動作を一定の距離にすることができる。
<請求項5>
請求項5に係る発明は、ブレーキはエアが抜けた時に作動するため、停電中でもブレーキが保持される。つまり、垂直軸の可動部を固定して、安全を確保するのが本来のブレーキの役割であるが、請求項4の「エアタンク」の役割も兼ねさせることができる。エア駆動のブレーキは、ブレーキ内部または途中の配管に高圧のエア(残圧)がたまっており、ブレーキが作動すると、このエアが排出される。排出されるエアを利用して、エアバランスの圧力を一時的に高くすることで垂直軸の退避動作を行なうので、ブレーキが作動する条件で確実に(電気的な信号処理がないので停電でも)、垂直軸に退避動作をさせることができる。
<請求項6>
請求項6に係る発明は、軸が複数ある場合は、それぞれの軸のブレーキから排出される残圧のエアがすべてエアバランスに導かれることで、ブレーキ作動時により多くのエアがエアバランスに送られ、これにより、垂直軸の退避動作がより高速になるとともに、退避時に発生する力も大きくなる。
<請求項7>
垂直軸の退避動作をより速くするためには、ブレーキ作動時にエアバランスに送られるエアの流量をより多くする必要がある。請求項7に係る発明は、ブレーキと弁の間のエア配管にたまっているエアが弁の排気ポート経由でエアバランスに流入するので、このエア配管が長い、または太いほどエアの量が増える。エア配管の途中にタンクを接続して、エアを蓄積しても、同じ効果となる。
<請求項8>
停電でエア源(コンプレッサ)が停止した場合、エアバランスの圧力はゼロとなる。この場合でも、自重を支えるだけの保持力が垂直軸のブレーキには必要であり、非常に強力な保持力を持つ。したがって、垂直軸のブレーキの動作が速いと、垂直軸の退避動作が不十分な位置で止まってしまう可能性がある。これを解決するために、垂直軸だけは、ブレーキの管路に絞り弁を割り込ませ、ブレーキ動作を遅らせることで、垂直軸が十分な距離を退避する時間を稼ぐことができるようになる。また、高速に垂直軸が退避動作している最中にブレーキでロックすると、可動部やブレーキに衝撃が伝わり、装置の故障や精度劣化につながる可能性があるが、垂直軸のブレーキを遅らせることで、防止できる。
<請求項9>
各軸のブレーキへのエア供給は電磁弁で電気的に制御されるが、電源OFFの時にブレーキが作動する方式であれば、停電時にもブレーキが作動するので、停電になると自動的に垂直軸が退避動作を行なう。
<請求項10>
垂直軸の自重をキャンセルするエアバランスの圧力が変動すると、サーボモータの負荷となるので、常時一定圧力に保つために、精密減圧弁が必要となり、該精密減圧弁は、電源が失われても同じ圧力設定値を保つ装置として、停電時も有効である。さらに、垂直軸の退避動作に対して、迅速にエアバランス室の圧力を静定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る位置決め装置の例である工作機械を示す図である。
【図2】本発明に係る位置決め装置の例である3次元計測装置を示す図である。
【図3】垂直軸の駆動方向では退避できない例を説明する図である。
【図4】請求項1に記載される発明である位置決め装置に搭載される垂直軸の例を説明する図である。
【図5】図4の側面図のA−A断面を示す図である。
【図6】エアバランス室の圧力に対するエアバランスの駆動力の例を説明する図である。
【図7】請求項4に記載される発明の実施形態を説明する図である。
【図8】エアタンクとエアバランスを接続した構成において装置駆動時の弁の中の止め栓の位置を説明する図である。
【図9】エアタンクとエアバランスを接続した構成において非常停止時の弁の中の止め栓の位置を説明する図である。
【図10】請求項5に記載される発明の実施形態に用いられる垂直軸の一実施形態を説明する図である。
【図11】図10のB−B断面図であり、ブレーキ解除時とブレーキ作動時の状態を説明する図である。
【図12】図10のブレーキ用の弁において装置駆動時の状態を説明する図である。
【図13】ブレーキ用の弁について非常停止時の状態を説明する図である。
【図14】請求項6に記載の発明の一実施形態として、X,Y,Zの3つの直動軸を搭載した3次元計測装置を説明する図である。
【図15】請求項7に記載の発明の一実施形態を説明する図である。
【図16】請求項7の記載の発明の一実施形態においてエアタンクを追加した場合を説明する図である。
【図17】非常停止の処理を開始してから、ブレーキが掛るまでの必要とされる順序をフローチャートで説明する図である。
【図18】請求項8に記載の発明の実施形態において図16に示される請求項7に記載の発明の実施形態に絞り弁を追加した構成を説明する図である。
【図19】請求項9に記載の発明の実施形態において用いられる一実施形態の電磁弁の駆動時(弁が開いた状態)を説明する図である。
【図20】非常停止時の電磁弁(弁が閉じた状態)を説明する図である。
【図21】請求項10に記載の発明の実施形態を説明する図である。
【図22】退避動作の距離、可動部の速度、エアバランスの駆動力が正弦波形として変化することを説明する図である。
【図23】精密減圧弁がエアバランスに接続された状態で、退避動作、速度、駆動力の変化を説明する図である。
【図24】従来技術における非常停止のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明の概略を説明する。
工作機械の加工や3次元計測装置の計測は、工具や計測プローブが垂直の姿勢に固定されている装置が多い。このような装置では、垂直軸を上方向に瞬時に退避すれば、安全に停止できる可能性が高い。
垂直軸の自重をキャンセルする機構として、エアバランスを採用している装置においては、エアバランスの圧力を変えることで、非常に大きな力を瞬時に発生させることができる。これを非常停止の際の退避動作として利用する。
非常停止時にエアバランスの圧力を変える方法として、各軸のブレーキにエア圧を利用している装置では、ブレーキの排気エアを利用することができる。ブレーキは安全性を考慮して、動力がない状態でも作動し続けるのが一般的なので、エア圧式のブレーキは、ブレーキを解除している時にエア圧が供給されており、ブレーキが動作する時にエア圧を抜く方式になっている。
【0014】
ブレーキを動作させるエア圧は、電磁弁でON/OFFする。各軸のブレーキが動作する瞬間にブレーキから抜けるエア圧を垂直軸のエアバランスに導くことで、ブレーキが作動する瞬間だけ、エアバランスの圧力が高くなり、垂直軸が上に動く。また、垂直軸が十分退避する前に垂直軸のブレーキ自体がかかってしまうのを防ぐために、垂直軸のブレーキ配管には絞り弁を取り付け、ブレーキの動作(エア圧が抜ける時間)を他の軸よりも遅らせることもできる。この方式であれば、外部の動力に依存することなく、新たな制御回路を追加することもなく、ブレーキが動作する条件で、確実に垂直軸に退避動作をさせることができる。また、新たに追加する部品は配管と絞り弁だけなので、非常に安価であると同時に、装置への後付けも容易である。
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、各図で使用する符号は同じ構成や類似する構成は同じ符号を用いて説明している。
図1は位置決め装置の例として、工作機械を示している。図1の工作機械は、符号2,4,6で示されるX軸,Y軸,Z軸を搭載した直交3軸の構成で、Z軸6が垂直軸である。そして、Y軸4に工具10を取り付けるスピンドル8が固定されている。Z軸6は鉛直方向の垂直軸である。ベッド1上にX軸2、X軸2の上にZ軸6が配置され、ワーク12はZ軸6に固定される。Y軸4の先端にスピンドル8が鉛直方向下向きに取り付けられている。X軸2とY軸4とで工具10をワーク12に対して水平面2軸方向に移動させることができる。そして、Z軸6により工具10をワーク12に対して相対的に移動させる。
【0016】
X軸2,Y軸4,Z軸6の各軸に搭載されるブレーキ(X軸ブレーキ3,Y軸ブレーキ5,Z軸ブレーキ7)は、装置の可動部を固定して、安全を確保するための機構である。特にリニアモータによって各軸が駆動される装置では、リニアモータの制御が切れると、各軸が簡単に動いてしまう状態になるので、装置の安全上、ブレーキが必須である。しかし、ブレーキを搭載していても、工作機械の各軸が駆動している最中に、ブレーキが作動する状況下では、常に装置の各軸が安全に停止するとは限らない。ワーク12を加工中の工作機械であれば、工具10とワーク12の衝突が起きるか可能性がある。衝突の程度にもよるが、工具10やワーク12の破損、場合によってはスピンドル8や工作機械そのものが壊れることもある。
【0017】
工作機械の各軸が駆動中であっても、安全に停止させる方法の一つは、衝突が起きない位置に瞬時に各軸を退避させてからブレーキで停止する方法である。図1の工作機械の軸構成では、工具10の姿勢は常に垂直(鉛直方向下向き)で、変化することがない。したがって、垂直軸であるZ軸6を十分な距離下方向に退避させれば、工具10とワーク12の離間距離が大きくなり、衝突は起きない。
【0018】
図2は位置決め装置の例として3次元計測装置を示している。図2の3次元計測装置は、符号2,4,6で示されるX軸,Y軸,Z軸を搭載した直交3軸の構成で、Z軸6が垂直軸である。そして、Z軸6に計測プローブ14を取り付ける。Z軸6は鉛直方向の垂直軸である。ベッド1上にY軸4、Y軸4の上にX軸2が配置され、測定物16はX軸2に固定される。Z軸6は垂直軸であって、Z軸6に計測プローブ14が鉛直方向下向きに取り付けられている。X軸2とY軸4とで測定物16を計測プローブ14に対して水平面2軸方向に相対移動させることができる。そして、Z軸6により計測プローブ14を測定物16に対して鉛直方向に移動させる。
【0019】
X軸2,Y軸4,Z軸6の各軸に搭載されるブレーキ3,5,7は、装置の可動部を固定して、安全を確保するための機構である。特にリニアモータによって各軸が駆動される装置では、リニアモータの制御が切れると、各軸が簡単に動いてしまう状態になるので、装置の安全上、ブレーキが必須である。
【0020】
3次元計測装置でも、計測中に非常停止させると、計測プローブ14が測定物16に衝突して破損したり、衝突により3次元計測装置の精度が悪化する可能性がある。図2の3次元計測装置は、図1の工作機械とは垂直軸であるZ軸6の搭載位置が異なるので、垂直軸であるZ軸6を上方向(鉛直上向き)に退避させることで計測プローブ14と測定物16の離間距離が大きくなり、安全に停止することができる。
【0021】
図1や工作機械や図2の3次元計測装置は、任意の位置決めだけでなく、回転軸により角度(姿勢)を任意に変えることができる軸構成になっている場合がある。図3は垂直軸の駆動方向では退避できない例を示している。工具10または計測プローブ14が真横を向いた姿勢で、図3のようなワーク12あるいは測定物16の形状を加工または計測している場合は、垂直軸を上,下どちらの方向に退避しても衝突が起きる。このため、図3に示される工具10や計測プローブ14の姿勢は垂直軸では退避できない姿勢、ワーク12や被測定物16の形状は垂直軸では退避できない形状である。この場合は、工具10や計測プローブ14を水平方向に退避する必要がある。
【0022】
斜めの凹形状加工など、姿勢や形状の組み合わせは、様々に考えられるので、そのすべてに対応した退避動作をするためには、機械構造だけでなく制御的にも非常に複雑になる。しかし、実際に使用される工作機械や3次元計測装置では、図1や図2のような工具10や計測プローブ14の姿勢が垂直方向に固定された軸構成が多い。また、姿勢を自由に変えられる軸構成であっても、実際の加工や計測では、垂直姿勢で使用することが多い。そこで、本発明では、垂直方向(鉛直方向)の退避動作に限定し、特にエアバランスを搭載した垂直軸での退避動作を容易に行うことを目的としている。
【0023】
図4は請求項1に記載される発明である位置決め装置の実施形態に搭載される垂直軸の一例を示している。図4(a)は正面図,図4(b)は側面図である。固定部20に対して、可動部21が鉛直方向に対して上下に移動する構造である。圧力調整装置46はエア源(コンプレッサ)44に接続され、圧縮空気がエア配管60を介してエア源44から圧力調整装置46に供給される。圧力調整装置46に供給された圧縮空気はエアバランスに接続される配管70を介してエアバランスに供給される。エアバランスについては図5を用いて説明する。制御装置40からの圧力調整を指令する電気信号が圧力調整の信号線80を経由して圧力調整装置46に入力し、圧力調整装置46の動作が制御される。非常停止スイッチ42は、手動で緊急停止させるためのスイッチであり、これが押されると制御装置40の制御が切れて非常停止状態となる。
【0024】
図5は図4の側面図のA−A断面を示している。垂直軸の可動部21は枡形の形状で、その内面に直方体の形状をした固定部20が挿入された構造になっている。可動部21と固定部20の接する面は、軸受面22となっている。軸受の方式として、例えば空気軸受を採用することで数μmの間隔を保って固定部20に対して、可動部21が支持される(図21参照)。空気軸受の軸受面は、流体のシールとしても機能するので、固定部20と可動部21で囲まれた空間が密閉構造となる。この密閉構造の空間をエアバランスとして使用するために、エアバランス室23は圧力調整装置46にエアバランスに接続するエア配管70を介して接続されている。
【0025】
圧力調整装置46はエア配管60を介してエア源(コンプレッサ)44に接続され、エアバランス室23の圧力を任意に調整できるようになっている。この構造において、エアバランス室23の圧力が可動部21の重量と釣り合うように、圧力調整装置46を調整することで、可動部21の自重を相殺することが可能になる。可動部21はリニアモータ等の駆動装置(図示しない)で鉛直方向の上下に位置決めの駆動ができるようになっており、エアバランスにより無負荷に近い状態での駆動が可能となる。なお、このような構造は先行技術文献として記載した特許文献3や特許文献4に開示されている。
【0026】
請求項3に記載される発明のように、請求項1の「エアバランス圧力変更部」は、図4、図5の実施形態では圧力調整装置46が兼ねており、例えば、図4の非常停止スイッチ42が押された時に、制御装置40から圧力調整装置46に圧力を変える信号が送られることで、エアバランス室23内の圧力が変わり、垂直軸が退避動作をする。このように、退避動作にエアバランスを利用することで、別途装置を追加することなく、安価に位置決め装置の安全性を高めることができる。
【0027】
請求項2に記載される発明のように、退避動作にエアバランスを利用する方式は、通常のサーボモータよりもはるかに大きい力を出せる点も、利点である。より大きな力で退避動作をさせれば、重量(慣性)の大きい可動部21であっても、より高速に退避させることができ、可動部21の衝突防止につながる。
図6は、エアバランス室23の圧力に対するエアバランスの駆動力の例を示している。垂直軸の可動部の重量が100Kg、エアバランス室23の断面積(可動部がエア圧で上方向の力を受ける面積)が500cm2とすると、エアバランス室23の圧力(ゲージ圧)が0.2Kgf/cm2(=0.02MPa)であれば、可動部21を押し上げる力が0.2*500=100[Kgf]となり、可動部21の重量と釣り合う。
【0028】
可動部21を押し上げる力が可動部21の重量と釣り合っている状態では、エアバランスの駆動力はゼロであり、通常のサーボモータによる位置制御は、この状態で行なうことにより、可動部21の自重やエアバランスの駆動力がモータの負荷になることはない。このようにエアバランスは、図6のように大気圧(絶対圧で約1.0Kgf/cm2)よりも20%圧力を高めるだけで、100Kgfという大きな力を発生させることが特徴である。
【0029】
垂直軸に搭載される駆動機構(例えばリニアモータ)の最大推力が5kgfとすると、エアバランスに0.01Kgf/cm2以上圧力を変化させれば、容易に最大推力以上の力を発生できる。例えば、静止している100Kgの可動部を10mm退避させる場合、最大推力の5kgfでは0.2秒かかる。一方、エアバランスで20kgfを発生させれば、0.1秒に短縮することができる。エアバランスで20kgfの力を発生させるときの圧力は、0.24kgf/cm2であり、元のエアバランス圧力に対して、わずか20%圧力を変化させるだけで、駆動装置を制御した場合よりも退避時間を半分にする効果が得られる。
また、地震などで装置に大きな加速度が加わった場合は、容易に制御の最大推力を超える力が加わり、電気的制御では退避動作ができなくなる。こういった場合でも、より大きな力で退避動作が可能なエアバランスであれば、可動部の衝突回避または、衝突の被害を最小限にすることが可能である。
【0030】
ここで、電気的な制御とエアバランスによる退避動作について補足して説明する。
圧力の伝播速度は音速であるが、実際には装置に用いられる途中の管路の抵抗などもあって、流量が制限されるので、エアバランスの圧力が最大になるまでに、0.1秒かかると見積もられる。(途中の配管が十分太く短ければ、音速に近くなる。)
一方、電気的な制御では、瞬時に最大推力を発生させることも可能なので、推力の立ち上がり時間で比較すれば、確実に電気的な制御の方がエアバランスによる退避動作の方より速くなる。しかし、図6の説明にあるように、退避動作の時間は、最大推力にも依存するので、退避する距離が長くなるほど、最大推力の大きいエアバランスの方が有利になる。
【0031】
実際には、いろいろな条件が関係するが、一般的に使用される工作機械や3次元計測装置などの装置では、5〜10mm以上の退避距離ならば、エアバランスの方が速い(換言すれば、退避動作の時間が短い)。
図4,図5に示される請求項1に記載される発明の実施形態では、非常停止時に圧力調整装置46により、エアバランス室23の圧力設定そのものを変えているので、エアバランス室23の圧力を元に戻さない限り、退避動作が継続する。したがって、エアバランスの圧力を変えて、一定距離の退避動作をした後に、必ず、エアバランスを元の圧力に戻すというシーケンスで制御装置40から圧力調整装置46に信号を出力しなければならない。このため、制御装置40からの圧力調整を指令する電気信号が圧力調整の信号線80を経由して圧力調整装置46に入力し、圧力調整装置46の動作が制御される。
【0032】
図7は、請求項4に記載される発明の実施形態であり、この構造では原理的に一定距離の退避動作となる。圧力調整装置46とエアバランス室23とはエアバランスに接続するエア配管70を介して接続されている。圧力調整装置46とエア源44とはエア配管60を介して接続している。弁48はエア源44とエア配管61を介して接続され、エアバランス室23とはエアバランス室23に接続するエア配管71を介して接続されている。また、弁48はエアタンク50とエア配管62を介して接続されている。制御装置40は弁48の開閉制御と圧力調整装置46の制御を行う。圧力調整装置46は、エアバランス室23の圧力を可動部21の重量と釣り合わせる目的でのみ使用し、非常停止時の動作には関与しない。
【0033】
図8に示されるように弁48は止め栓49を有し、エア源44に接続される経路,エアタンク50に接続される経路,エアバランス室23に接続される経路の3つの経路から構成される。エアタンク50に接続された弁48は、図2に示される軸構成の装置の駆動時には、止め栓49が図に示される位置にあり、図8のようにエアタンク50とエア源44を接続しているので、エアタンク内は高圧になっている。
【0034】
非常停止スイッチ42が押されると該非常停止スイッチ42からの信号が信号線81を介して制御装置40に入力し、該制御装置40からの指令信号が信号線82を介して弁48に入力し、該指令信号に従って弁48の中の止め栓49が移動し、エア源44からの高圧のエアの供給を遮断し、図9のようにエアタンク50とエアバランス室23を接続する。エアタンク50内の高圧のエアは弁48,エアバランスに接続するエア配管71を経由してエアバランス室23に流入する。この流入したエアによって、一時的にエアバランス室23の圧力を上げるが、可動部21の退避動作とともに、エアバランス室23の圧力は元に戻り、可動部21の退避動作は一定距離で完了する。例えば、エアタンク50の容量が0.1Lで、エア源44の圧力が0.62Mpa(絶対圧0.72Mpa)であれば、前述のエアバランス室23の値を用いると、エアタンク50のエアが6倍の体積(=0.6L)に膨張した時に、圧力は6分の1に下がり、元のエアバランス室23の圧力と同じ0.02MPa(絶対圧0.12MPa)と同じになる。したがって、エアバランス室23に膨張した体積分のエア0.5L(膨張後の体積―元のタンクの体積)が流れ込み、可動部21は体積の増分10mmだけ上昇することになる。
【0035】
図7の実施形態は、エアタンク50内の圧力をエアバランス室23よりも高くして、可動部21を鉛直方向の上方向に退避させる場合であるが、弁48とエア源44の接続を無くせば、駆動時のエアタンク50の圧力は大気圧となる。この場合は、エアバランス室23よりもエアタンク50の方が圧力が低いので、鉛直下方向に退避し、図1に示される軸構成の装置に対応する。しかし、エアバランス室23とエアタンク50との圧力差が小さい(約0.2MPa)ので、退避動作で10mm下降させるときのエアタンク50の容量は、3L必要である。このように、下方向の退避では、エアタンク50の容量が大きくなる欠点がある。
【0036】
図10は、請求項5に記載される発明の実施形態に用いられる垂直軸の実施形態を示している。ブレーキ装置25は可動部21側に取り付けてあり、ブレーキレール26は固定部20側に取り付けてある。ブレーキはエア圧により作動する方式で、ブレーキ装置25はブレーキ用の弁52とブレーキに接続するエア配管72で接続される。エア源44のエアは分岐配管であるエア配管63を介して圧力調整装置46とブレーキ用の弁52に供給される。また、ブレーキ用の弁52はエアバランスに接続するエア配管71を介してエアバランス室23に接続されている。圧力調整装置46はエアバランス室23とエアバランスに接続する配管70を介して接続されている。制御装置40はブレーキ用の弁52の開閉と圧力調整装置46の圧力制御を行う。ブレーキ用の弁52にはブレーキの信号線83を介して制御装置40からの指令信号が入力する。圧力調整装置46には圧力調整の信号線80を介して制御装置からの圧力調整を指令する信号が入力する。また、制御装置40には、非常停止スイッチ42が押されることにより非常停止信号が信号線81を介して入力する。なお、ブレーキ用の弁52の動作について図12,図13を用いて後述する。
【0037】
図11は、図10のB−B断面図であり、請求項5に記載される発明の実施形態で用いられるブレーキの実施形態を示している。図11(a)はブレーキ解除時、(b)はブレーキ作動時のブレーキ装置の状態を図示している。十分に高圧のエアがエア源44からブレーキ用の弁52を介して供給されると、シリンダー27内のピストン28に圧力がかかり、スプリング29が縮んでブレーキが解除される。逆に、エアがシリンダー27内から排気されるとスプリング29の力でピストン28が押し出され、ピストン28に備わったブレーキシュー30によりブレーキレール26を両側から挟むことで、ブレーキがかかる。
この方式の利点は、停電などでエア源44のコンプレッサが停止しても、スプリング29の力でブレーキが保持されることである。また、ブレーキ装置25が左右対称構造になっているのは、左右からブレーキレール26を同じ力で挟み込むことにより、ブレーキ作動時に軸受に大きな力が加わらないようにするためである。特に前述の空気軸受(図5の説明を参照)は、摩擦がゼロに近い理想的な軸受である一方で、転がり軸受などと比べて軸受の剛性が低いため、ブレーキ作動時に軸受に負荷がかからない方式が望ましい。
【0038】
図12は、図10のブレーキ用の弁52について、工作機械や3次元計測装置の装置駆動時の状態を示している。ブレーキ用の弁52は、止め栓53を有し、エア源44に接続される経路,ブレーキ装置25に接続される経路,エアバランス室23に接続される経路の3つの経路で構成され、止め栓53の位置によって、そのうちの2つの経路のみが通じるようになっている。装置駆動時は、弁が開いた状態であり、排気ポート側が止め栓53でふさがる経路となる。このとき、ブレーキ装置25にはエア源44から高圧のエアが供給され、ブレーキが解除される。
【0039】
図13は、ブレーキ用の弁52について、非常停止時の状態を示している。非常停止時は、弁が閉じた状態となり、止め栓53はエア源44側を塞ぐ位置になる。この状態では、ブレーキ装置25側の残圧が排気ポートから逃げる経路となり、ブレーキ装置25側に溜まっていた高圧のエアは、排気ポートを介して圧力の低いエアバランス室23へ流入する。最終的にブレーキ装置に供給されるエア圧力はエアバランスと同じになるまで下がり、圧力が十分低下するので、ブレーキが作動する。
【0040】
ブレーキ装置25内のシリンダー27の空間と、ブレーキ用の弁52とブレーキ装置25を接続するブレーキに接続するエア配管72(図10参照)は、エアを溜める容積を持っているという意味で、図7の実施形態におけるエアタンク50に相当し、同じ原理で、非常停止時に垂直軸は退避動作を行なう。つまり、図10に示される請求項5に記載の発明の実施形態において、ブレーキ装置25は、垂直軸の可動部21を固定するという本来の役割のほかに、退避動作を行なうためのエアをエアバランス室23に供給する役割も兼ねた構造となっている。この構造の利点は、図7に示される請求項4に記載の発明の実施形態のように退避動作のためのエアタンク50を別途用意する必要がなくなるという点である。
【0041】
そもそも、ブレーキ装置25は可動部21を固定する安全装置として欠かせない装置である。重力の影響を受ける垂直軸だけでなく、特に駆動装置がリニアモータの場合、ブレーキがない状態でモータの励磁が切れると簡単に動いてしまうため、安全上、ブレーキが必須である。本発明の構造は、垂直軸にエアバランス室23を搭載していることが前提であるが、一般的に、エアを使用する装置で使用するブレーキは、エア駆動であり、図11の構造のブレーキが採用されることが多い。したがって、本発明における退避動作のために、エア駆動のブレーキを採用するのではなく、エアバランス室23を搭載している装置には、元々、上述のエア駆動のブレーキが搭載されているので、これを利用するというのが、本発明の趣旨である。
【0042】
また、ブレーキ装置25がエアタンク50を兼ねることのもう一つの利点は、ブレーキが作動するタイミングで、必ず垂直軸が退避動作を行なうという点である。ブレーキを搭載している垂直軸であれば、非常停止スイッチ42を押せば、ブレーキが作動する回路になっている。一般的に、ブレーキは安全を考慮して、停電などで電源が失われた時にも装置を停止させるようになっているので、停電時にもブレーキは動作する。請求項5に記載の発明の実施形態の構造は、ブレーキが作動する条件で、電気的な信号等に頼ることなく、垂直軸を退避することが可能である。つまり、停電でも確実に垂直軸の退避動作が行なわれることになる。
ただし、請求項5に記載の発明の実施形態の構造は、原理的にエアバランス室23の圧力を上げる方向でしか退避動作ができないので、図1のような、Z軸6の下方向への退避が必要な軸構成の装置には対応できない。
【0043】
図14は請求項6に記載の発明の実施形態として、X軸2,Y軸4,Z軸6の3つの直動軸を搭載した3次元計測装置である。垂直軸であるZ軸6に図5と同様のエアバランスを搭載する。各軸は、図11に示されるブレーキと図12,13に示される弁をそれぞれ搭載し、3つの弁(52x,52y,52z)の排気ポートは共通のエア配管(エアバランスに接続される配管71)でエアバランス室23に接続される。非常停止時には、3つの弁(52x,52y,52z)すべてが同時に閉じた状態(図13)になるように制御される。なお、制御装置40(図10参照)は、X軸ブレーキ用の弁52x,Y軸ブレーキ用の弁52y,Z軸ブレーキ用の弁52zの開閉動作を制御する。
【0044】
垂直軸だけの図10と比較すると、3つのブレーキ(X軸ブレーキ3,Y軸ブレーキ5,Z軸ブレーキ7)を搭載し、非常停止時にそれぞれのブレーキの排圧が排気ポートから排出されることにより、エアバランスに接続されるエア配管71を介してエアバランス室23に流入するエアの流量も3倍となる。図7の例で説明したように、エアバランスで垂直軸を上方向に10mm退避させる場合、0.1Lのエアタンクが必要であり、図10のように一つのブレーキとブレーキ配管だけで0.1Lの容量を得るのは難しい。そこで、3軸分を集めることで、1軸のブレーキあたりは約33ccとなり、実現可能な容量となる。
また、請求項6および図14の実施形態ではブレーキ(3,5,7)ごとに弁(52x,52y,52z)が存在するが、非常停止時以外での装置の運用上、個々のブレーキ(3,5,7)を独立して作動させる必要がなければ、一つの弁だけで各軸のブレーキを同時に動作させてもよい。
【0045】
図15は請求項7に記載の発明の実施形態を示している。位置決め装置は図2に示される構成である。前述のように、ブレーキ内とブレーキ配管の容量がエアバランスでの退避動作を行なう上で重要になる。エア駆動式のブレーキは、本来のブレーキ動作のためだけであれば、配管での圧損を考慮する必要がない(ブレーキ解除中、作動中にはエアが流れないので圧損がない)ので、一般的には比較的内径の細いエア配管が使われる。例えば、ブレーキの配管の内径がφ2.5mm、長さ2mとして10ccの容積、図11のシリンダーの有効な容積が両側合わせて3ccの容積とすると、両方の容積を合算すると1軸あたり13ccとなり、3軸あわせても39ccにしかならない。
そこで、図15のようにX軸2,Y軸4,Z軸6の各軸ブレーキの配管72x’,72y’,72z’を太く、長くして、内径4.0mm、長さ2.5mとする。この場合は、1軸あたり40cc、3軸で120ccとなり、前述の必要容量0.1Lを超える容量になる。なお、符号72x’はX軸ブレーキに接続する太く長いエア配管、72y’はY軸ブレーキに接続する太く長いエア配管、72z’はZ軸ブレーキに接続する太く長いエア配管を表す。
【0046】
図16は請求項7に記載の発明の実施形態として、配管の変更ではなく、エアタンク54を追加した場合を示している。図15に図示されるようにブレーキの配管72x’,72y’,72z’を太く長く変更することにより容積を増やす方法は、安価であるが、装置によっては配管を収めるスペースがない場合もある。このため、もっと直接的に、ブレーキの配管の途中にエアタンク54を取り付けることで、容積を増やしてもよい。図16ではY軸4のブレーキに接続するエア配管72yの途中に80ccのエアタンク54を追加している。このタンク54の80ccの容量と、元の39ccの容量とあわせて119ccとなり、必要流量の0.1Lを超える容量となる。
【0047】
図17は、非常停止の処理を開始してから、ブレーキがかかるまでの必要とされる正しい順序をフローチャートで示したものである。請求項6に記載したように、各軸のブレーキの弁は、同時に開閉する。したがって、各軸のブレーキは同時に作動する。ここで問題となるのが、垂直軸のブレーキが作動するまでの時間と垂直軸の退避動作が完了するまでの時間の関係である。図17のフローチャートのように、垂直軸の退避動作が完了してから、垂直軸のブレーキが作動するのが正しい順序である。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSA100]各軸の制御が切れ、ブレーキ用の弁が閉じる。
●[ステップSA102]垂直軸以外のブレーキが作動し、ブレーキの排圧がエアバランスに流入する。
●[ステップSA104]垂直軸の退避動作が完了する。
●[ステップSA106]垂直軸のブレーキが作動する。
【0048】
しかし、前述の退避動作の原理からすると、ブレーキの弁が閉じると同時に退避動作が始まり、同時にブレーキも作動することになるので、退避動作の途中でブレーキが作動することになる。図6で説明したように、エアバランスは非常に大きな力を発生するので、ブレーキの保持力が弱ければ、エアバランスの力が勝って、ブレーキが作動していても退避動作が続行する可能性もある。しかし、垂直軸のブレーキという用途を考えると、停電時にエア源が止まりエアバランスがまったく効かない状況下でも、可動部の重量100Kgを支えるだけの保持力が垂直軸のブレーキには要求される。したがって、垂直軸のブレーキ保持力は強力であり、垂直軸のブレーキが作動すれば、退避動作は不可能となる。
【0049】
また、退避動作の途中で強力なブレーキにより可動部をロックすると、急停止により大きな衝撃が可動部とブレーキに加わることになる。これは、装置の精度劣化やブレーキの故障の原因となりかねないので、確実に垂直軸の退避が完了した後に、垂直軸のブレーキを作動させる手段が必要となる。
【0050】
図18は、請求項8に記載の発明の実施形態として、図16に示される請求項7の発明の実施形態に絞り弁56を追加して設置した構成を示している。絞り弁56の具体例は、スピードコントローラと呼ばれるもので、流速を一定以下に制限できる。ここで流速を制限するとは単位時間あたりに流れる流量を制限することである。この絞り弁56により、垂直軸(Z軸6)のブレーキの弁(Z軸ブレーキ用の弁52z)が閉じた後、ブレーキのシリンダー27(図11参照)から流出するエアの流速を制限する。エアの流速を制限すると、シリンダー27内の圧力は時間をかけて徐々に低下するので、スプリング29がピストン28を押してブレーキを作動させる時間を遅延させることができる。
垂直軸(Z軸6)以外の軸(X軸2,Y軸4)のブレーキ用の配管には、絞り弁56が設置されていないので、ブレーキの弁(X軸ブレーキ用の弁52x,Y軸ブレーキ用の弁52y)が閉じると、すぐにブレーキが作動すると共に、ブレーキの排圧(排気)がエアバランス室23に流入する。この方式であれば、確実に退避動作が完了した後に、垂直軸(Z軸6)のブレーキを作動させることができるので、上述した図17のフローチャートの流れを実現できる。
尚、絞り弁56の取り付け位置が図18のように垂直軸(Z軸6)のブレーキに近ければ、ブレーキ配管内のエアの大部分が垂直軸の退避動作に使われることになるので、無駄にはならない。
【0051】
図19は、請求項9に記載の発明において用いられる一実施形態の電磁弁の駆動時(弁が開いた状態)説明する図である。本実施形態では、ブレーキ用の弁52(図12,図13参照)が電磁弁として構成されている。このブレーキ用の電磁弁52aは、一般的に、内部に搭載したコイル52bに通電して、バルブ52cの開閉を行なう。図19の例では、コイル52bに通電すると、固定鉄心52dが電磁石となり、可動部鉄心52eを引き寄せるため、バルブ52cは左寄りになり、排気ポート52fが閉じる。同時に、エア源44とブレーキ装置25の管路が通じて、破線矢印に示されるようにエア源44からブレーキにエアが供給されることにより、ブレーキが解除される。
【0052】
図20は、非常停止時のブレーキ用の電磁弁52aの弁が閉じた状態を示している。コイル52bの電源が遮断されると、固定鉄心52dは磁力を失うので、内蔵されたスプリング52gでバルブ52cが右よりに引き戻される。このバルブ52cの位置になると、排気ポート52fを介して、ブレーキ装置25の排圧がエアバランス室23に流入する。電源が失われると、電磁弁52aは必ずこの状態になるので、停電時の電磁弁52aは、弁が閉じた状態となる。したがって、停電等で動力や制御装置等の信号がすべて遮断された状態になったとしても、電磁弁52aが閉じて垂直軸は必ず退避動作をすることになる。これは、図17に示される非常停止の一連のプロセスが電源を必要とせずに自動的に実行されることを意味しており、非常に信頼性の高い垂直軸の退避動作が実現できる。
【0053】
図21は、請求項10に記載の発明の実施形態(図5の断面図相当)を示している。エア源44からは配管75を介して可動部21に設けられた配管76にエアを供給する。空気軸受に供給されたエアはエアバランス室23内に排気される。また、エア源44はエア配管73を介し垂直軸のブレーキ用電磁弁52aにエアを供給し、該電磁弁52aは、ブレーキ用のエア配管72を介してブレーキに接続されるとともに、エアバランスと該電磁弁52aの排気ポートが配管74を介して接続されている。精密減圧弁58はエアバランスと減圧弁の2次側58dと配管78を介して接続されている。なお、符号74はエアバランスと電磁弁(52a)の排気ポートを接続する配管である。符号75は空気軸受へのエア供給配管である。符号76は空気軸受の配管である。符号77は空気軸受から(エアバランス室23内へ)の排気を表す。符号78はエアバランスと精密減圧弁(58)の2次側(58d)を接続する配管である。
【0054】
前述の停電時の退避動作に関しては、エアバランスの圧力を制御している圧力調整装置46(例えば、図9,図10の実施形態)が停電時にもエアバランスの圧力を保持しているという前提が必要である。停電と同時にエアバランス室23のエアを排気してしまうような圧力調整装置46では、退避動作ができない。
【0055】
電力を使うことなく圧力を一定に保つ機能を持つ圧力調整装置46としては、精密減圧弁58がある。精密減圧弁58は、1次側58bから高圧のエアを供給し、調整ノブ58aを手動で回して、2次側58dから調圧したエアを出力するのが、一般的な使用方法である。ただし、空気軸受でエアバランスをシールする場合(図5参照)は、常時シール部分からエア(空気軸受の排気)がエアバランス室23に供給されるため、図21のように1次側58bのエア供給は不要となる。つまり、1次側58bは塞いでよい。この場合の精密減圧弁58は、2次側58dのエア圧力が一定になるように、エアバランスの余分なエアを精密減圧弁58の排気ポート58cから排気する動作となる。2次側58dの圧力を精密に制御できるタイプは、特に‘精密減圧弁’と呼ばれ、エアバランスのように、わずかな圧力変化も許されない用途に使用される。尚、垂直軸の可動部の重量が変動するような装置では、この精密減圧弁58の調整ノブ58aにステッピングモータ(図示せず)を取り付け、垂直軸のモータ負荷が最小になるように、自動制御することもできる。ステッピングモータは、その分解能の範囲では、電源を切っても位置が保持されるので、精密減圧弁58の圧力設定が維持される。
【0056】
停電になると、コンプレッサなどのエア源44も停止するが、すぐに供給圧力がゼロになるわけではなく、コンプレッサ本体や途中配管にたまっているエアにより、少なくとも数秒間は供給されると考えてよい。したがって、停電直後のエアバランス室23は、少なくとも数秒間は、精密減圧弁58により一定圧力が保持される。図17の非常停止時の退避動作のプロセスは1〜2秒で完了し、垂直軸のブレーキが作動して以降は、エアバランス圧力が完全にゼロになっても、位置が動くことはない。したがって、精密減圧弁58を備えることで、エア圧力の観点からも、停電時も退避動作が確実に実行される。
【0057】
空気軸受という摩擦のない軸受で保持された可動部21において、エアバランス室23という密閉空間の圧力を瞬間的に変えると、エアバランスは空気バネとしての挙動をする。仮に、垂直軸の可動部21に関して、減衰する要素が全くないとすると、退避動作の距離、可動部21の速度、エアバランスの駆動力は正弦波で変化し、図22のような位相関係になる。図22からわかるように、退避距離が最大になる時に、可動部21の速度はゼロになっているので、この瞬間に垂直軸のブレーキが作動するように、図18の絞り弁56でブレーキの作動時間を遅延させればよいように見える。ただし、正弦波の周期をT秒とすると、実際にはT=0.3〜0.6秒という短い時間であり、前述のブレーキをかけるタイミングはT/2=0.15〜0.3秒後となるので、この瞬間を狙ってブレーキを作動させるのは、現実的ではない。また、T/2秒後のタイミングでは、エアバランスの駆動力が下向き最大となっており、この状態でブレーキを作動させることも好ましくない。
【0058】
図21の構成のように、精密減圧弁58がエアバランスに接続された状態では、退避動作の距離、可動部の速度、エアバランスの駆動力は、図23のようになる。前述のように、精密減圧弁58は、エアバランスの圧力変化を抑える方向に常に動作する。したがって、精密減圧弁58が圧力変動の減衰要素として働くので、T’秒後には、退避動作、速度、駆動力とも静定する(変動の少ない落ち着いた値となる)。実際のT’は、0.5〜2.0秒となるので、垂直軸のブレーキの作動は、2.0秒以上遅らせるように図18の絞り弁を調整すればよい。この調整であれば、容易に可能である。
【0059】
エアバランスの圧力を一時的に変えることで実行されるのが退避動作なので、エアバランスの圧力を一定に保とうする減圧弁は、退避動作の妨げになるようにも思われる。退避動作で最も重要なのが、エアバランスの圧力(駆動力)の立ち上がりであり、この圧力(駆動力)の立ち上がりで、退避速度が決まるといってよい。
図22と図23を比較するとわかるように、非常停止の開始直後の挙動は全く同じであり、減圧弁の有無の影響は見られない。これは、圧力変化に対して、減圧弁の応答速度はやや遅れるためであるが、この応答の遅れにより減圧弁が退避動作を妨げることは、ほとんどない。したがって、減圧弁がエアバランスに接続されていても、退避動作は問題なく行なわれると考えてよい。
【0060】
以上、本発明の位置決め装置は、垂直軸の駆動方向、特に上方向への退避動作に限定することで、高価な装置を付加することなく、シンプルで信頼性の高い非常停止時の退避動作を実現できる。また、原理的に、モータの駆動力よりも大きな力で退避動作をできる点でも、従来の方式よりも優れている。
【符号の説明】
【0061】
1 ベッド
2 X軸
3 X軸ブレーキ
4 Y軸
5 Y軸ブレーキ
6 Z軸
7 Z軸ブレーキ
8 スピンドル
10 工具
12 ワーク
14 計測プローブ
16 測定物

20 固定部
21 可動部
22 軸受面
23 エアバランス室
24 空気軸受面

25 ブレーキ装置
26 ブレーキレール
27 シリンダー
28 ピストン
29 スプリング
30 ブレーキシュー

40 制御装置
42 非常停止スイッチ
44 エア源
46 圧力調整装置
48 弁
49 止め栓

50 エアタンク
52 ブレーキ用の弁
52a ブレーキ用の電磁弁

52x X軸ブレーキ用の弁
52y Y軸ブレーキ用の弁
52z Z軸ブレーキ用の弁

53 止め栓
54 80ccのエアタンク
56 絞り弁
58 精密減圧弁
58a 調整ノブ
58b 1次側
58c 排気ポート
58d 2次側
59 排気ポート
60,61,62,63,64 エア配管

70,71 エアバランスに接続するエア配管
72 ブレーキに接続するエア配管
72x X軸ブレーキに接続するエア配管
72y Y軸ブレーキに接続するエア配管
72z Z軸ブレーキに接続するエア配管
72x’ X軸ブレーキに接続する太く長いエア配管
72y’ Y軸ブレーキに接続する太く長いエア配管
72z’ Z軸ブレーキに接続する太く長いエア配管
73 エア配管
74 エアバランスと電磁弁の排気ポートを接続する配管
75 空気軸受へのエア供給配管
76 空気軸受の配管
77 空気軸受からの排気
78 エアバランスと減圧弁の2次側を接続する配管

80 圧力調整の信号線
81,82 信号線
83 ブレーキの信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直軸を駆動するサーボモータと、該サーボモータを制御する制御装置と、前記垂直軸の自重をキャンセルするエアバランスとを備えた位置決め装置において、
前記エアバランスにエアを供給するエア供給源と、
該エア供給源から供給されるエアを使用した前記エアバランスの圧力を調整する圧力調整装置と、
前記位置決め装置が非常停止、停電、あるいはその他の操作により前記サーボモータの励磁が解除されたとき、前記エアバランスの圧力を変更し、前記垂直軸に付随して移動する構造部が他の構造物と衝突することを回避または衝突を低減する方向に前記垂直軸を移動させるためのエアバランス圧力変更部と、
を有することを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記エアバランス圧力変更部は、エアバランスの圧力変化によって前記サーボモータの推力以上の力を発生させることを特徴とする請求項1記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記エアバランス圧力変更部は、エアバランスに接続された圧力調整装置であることを特徴とする請求項1記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記エアバランス圧力変更部は、エアバランスの圧力よりも高いまたは低い圧力のエアを一定量溜めることができるエアタンクと弁で構成されており、該エアタンクは該弁を介して該エアバランスと配管で接続されていることを特徴とする請求項1記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記垂直軸は、エア圧力を供給するとブレーキが解除され、エア圧力を抜くとブレーキが作動するブレーキ装置を備え、
前記ブレーキ装置に供給されるエアは、前記エアバランスの圧力よりも十分高いエア源から弁を介して供給され、
前記弁は、弁が閉じたときの残圧を逃がす排気ポートを備え、
前記弁が閉じたときに、前記ブレーキ装置の残圧が弁の前記排気ポートを介して前記エアバランスに流入する管路を備えていることを特徴とする請求項1記載の位置決め装置。
【請求項6】
前記垂直軸とは別に少なくとも一つの直動軸または回転軸を有し、該直動軸または回転軸はエア圧力を供給するとブレーキが解除され、エア圧力を抜くとブレーキが作動するブレーキ装置を備え、それぞれの弁は同時に開閉し、弁を閉じたときにそれぞれのブレーキの残圧が前記排気ポートを介して、エアバランスに流入する管路を備えていることを特徴とする請求項5記載の位置決め装置。
【請求項7】
前記ブレーキ装置と前記弁を接続するエア配管の少なくとも一つは、配管内にエアを溜めることが可能な構造であることを特徴とする請求項6記載の位置決め装置。
【請求項8】
前記垂直軸のブレーキ装置は、ブレーキを作動させる時に排出されるエアの管路に絞り弁が取り付けられ、前記排出されるエアの流速を制限することにより垂直軸のブレーキの作動時間が遅延する構造を特徴とした請求項5乃至7のいずれか1つに記載の位置決め装置。
【請求項9】
前記弁は、電磁弁であり、該電磁弁の電源がONの時にブレーキ装置にエアが供給されて、ブレーキが解除され、電磁弁がOFFの時にブレーキが作動することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1つに記載の位置決め装置。
【請求項10】
前記エアバランスは、精密減圧弁の2次側に接続され、前記エアバランスの圧力が一定になるように圧力調整することを特徴とする請求項1記載の位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−41505(P2013−41505A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179117(P2011−179117)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】