説明

エアブラストインジェクタ

【課題】加圧空気と液体燃料との混合ムラを抑えて、燃料の微粒化を向上させることのできるエアブラストインジェクタを提供する。
【解決手段】第2ニードル9は、上下方向へ伸びる中心孔14、環状空間よりなる燃料溜15、中心孔14から燃料溜15へ燃料を導く径方向連通路16、燃料溜15の燃料をベンチュリー部12の全周へ導く微細スリットよりなる噴出孔17を設ける。これにより、ベンチュリー部12を通過する全ての加圧空気に液体燃料を供給することができ、液体燃料と空気の混合ムラを抑えることができる。その結果、加圧空気に混入した状態で第2噴射孔7から噴射される液体燃料の微粒化を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧された液体燃料の噴射を行なう第1インジェクタと、この第1インジェクタから噴射された液体燃料とともに、外部から供給された加圧空気を一緒に噴射する第2インジェクタとを備えるエアブラストインジェクタに関する。
なお、以下では、エアブラストインジェクタに対して「第2噴射孔(加圧空気とともに液体燃料を噴射させる第2インジェクタの噴射孔)が設けられる側を下」と称して説明するが、実際の搭載方向を限定するものではない。
【背景技術】
【0002】
エンジン(燃料の燃焼エネルギーにより回転トルクを発生する内燃機関)に搭載される燃料噴射装置では、燃費向上およびエミッション低減を目的として、液体燃料を微粒化してインジェクタより噴射する技術が望まれる。
液体燃料の微粒化を達成するインジェクタとして、エアブラストインジェクタが知られている。エアブラストインジェクタは、液体燃料の噴射を行なう第1インジェクタと、この第1インジェクタから噴射された液体燃料と加圧空気を一緒に噴射させる第2インジェクタとから構成される複合インジェクタであり、加圧空気が第2噴射孔(第2インジェクタの噴射孔)を通過する際に音速化することで、加圧空気とともに噴射される液体燃料を微粒化するものである。
【0003】
(従来技術)
エアブラストインジェクタの従来技術を、図11を参照して説明する(例えば、特許文献1参照)。
なお、背景技術において使用する符号は、後述する[発明を実施するための形態]および[実施例]と同一機能物に対して同一符号を付したものである。
【0004】
第1インジェクタ1の第1噴射孔3(燃料噴射孔)は、第2インジェクタ2の第2ニードル9に設けられた中心孔14の上端に対して対向配置されており、第1噴射孔3は中心孔14の上端部に向けて燃料の噴射を行なう。
一方、第1インジェクタ1の第1噴射孔3が燃料噴射を行なう空間(第1インジェクタ1の下部空間)には、エア導入通路43を介して外部から加圧された空気(エアポンプで加圧された空気)が供給される。
これにより、第2インジェクタ2の上部には、第1インジェクタ1から噴射燃料が供給されるとともに、エア導入通路43を介して加圧空気が供給される。
【0005】
エア導入通路43を介して第2インジェクタ2の上部に供給された加圧空気は、第2ニードル9の周囲のエア流路11内に充填供給される。
一方、第1インジェクタ1から第2インジェクタ2の上部に噴射供給された燃料は、主に第2ニードル9の軸芯に形成された中心孔14を通り、中心孔14の下端から径方向連通路16を通って、エア流路11に導かれる。
そして、第2噴射孔7が開弁すると、エア流路11に充填された加圧空気とともに、径方向連通路16を通過した液体燃料が第2噴射孔7から噴射される。
【0006】
(従来技術の問題点)
エア流路11は、第2ノズルボディ8と第2ニードル9との間の環状空間により形成される。このため、第2噴射孔7が開弁すると、加圧空気は第2ニードル9の全周において下方(第2噴射孔7)に向かって流れる。
これに対し、加圧空気に液体燃料を供給するための径方向連通路16の燃料出口(径方向外側の開口部)は、第2ニードル9の周方向の一部(例えば、周方向の4箇所)でしか開口しない。
【0007】
このため、第2噴射孔7が開弁すると、
(i)径方向連通路16の燃料出口の近傍を通過する加圧空気には液体燃料が大量に混ざり合うが、
(ii)径方向連通路16の燃料出口から離れた部位を通過する加圧空気には液体燃料が混ざらない。
その結果、第2噴射孔7から噴射される液体燃料と空気の混合ムラが大きくなってしまう。すると、エアブラストインジェクタであっても、第2噴射孔7から噴射された液体燃料の微粒化効果を十分に発揮することができず、噴霧粒径のバラツキが大きくなってしまう。
【0008】
(参考技術)
一方、噴射初期の噴霧粒径を小さくする技術として、図12(a)に示す参考例が提案されている(この技術は周知技術ではない)。
この図12(a)に示す技術は、エア流路11の通路途中に加圧空気の流路面積を絞るベンチュリー部12を設けるとともに、中心孔14の下端からベンチュリー部12に通じる径方向連通路16を設けるものであり、ベンチュリー効果(エジェクタ効果)によって、中心孔14の液体燃料を、ベンチュリー部12を通過する加圧空気に吸い出させ、噴射初期から噴霧粒径を微粒化するものである。
【0009】
この技術であっても、加圧空気に液体燃料を供給するための径方向連通路16の燃料出口(径方向外側の開口部)は、図12(b)に示すように、第2ニードル9の周方向の一部(図面では周方向の4箇所)でしか開口しない。
このため、「上述した従来技術の問題点」と同様、第2噴射孔7が開弁すると、
(i)径方向連通路16の燃料出口の近傍を通過する加圧空気には液体燃料が大量に混ざり合うが、
(ii)径方向連通路16の燃料出口から離れた部位を通過する加圧空気には液体燃料が混ざらない。
その結果、第2噴射孔7から噴射される燃料と空気の混合ムラが大きくなり、噴霧粒径のバラツキの要因になってしまう。
【0010】
また、径方向連通路16を介して燃料を吸い出すことで、噴射初期の微粒化を行なうものであるため、径方向連通路16は内径寸法が小さい細孔として設けられるものであり、径方向連通路16の通路面積の総和(4本の通路面積の和)が小さい。
その結果、中心孔14内に溜まった液体燃料をエア流路11に供給する能力が低くなり、「吸出し速度の低下」が発生する懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−325383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加圧空気と液体燃料との混合ムラを抑えて、燃料の微粒化を向上できるエアブラストインジェクタの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[請求項1の手段]
請求項1のエアブラストインジェクタは、燃料溜と噴出孔によって「第2ニードルの周囲を通過する加圧空気」の広い周方向範囲に燃料を供給できる。
具体的には、「径方向連通路の燃料出口から離れた部位を通過する加圧空気」にも液体燃料の供給を行なうことが可能になり、第2ニードルの周囲の広い範囲の加圧空気に対して液体燃料を供給できる。
その結果、第2噴射孔から噴射される液体燃料と空気の混合ムラを抑えることができ、第2噴射孔から加圧空気に混入した状態で噴射された液体燃料の微粒化を向上させることができる。
【0014】
[請求項2の手段]
請求項2のエアブラストインジェクタは、
径方向連通路の通路面積の総和をA、
噴出孔の通路面積の総和をBとした場合、
A≧B
の関係に設けられるものである。
このA≧Bの関係を満足することにより、「径方向連通路における燃料の通過能力」を「噴出孔における燃料の通過能力」以上にできるため、「燃料溜の全周に燃料を満たした状態」で、全ての噴出孔から加圧空気に液体燃料を供給することができる。
このように、噴出孔における燃料の供給ムラが抑えられることで、第2噴射孔から噴射される燃料と空気の混合ムラを抑えることができる。
【0015】
[請求項3の手段]
請求項3の第2ニードルは、ニードル本体とニードル装着筒を備えて構成されるものであり、
(i)ニードル本体とニードル装着筒との径方向間に、環状空間による燃料溜が形成され、
(ii)ニードル本体とニードル装着筒との軸方向間に、スリットによる噴出孔が形成されるものである。
【0016】
[請求項4の手段]
請求項4の第2ニードルは、中心孔が形成される上部ニードルと、弁傘が形成される下部ニードルを軸方向に接合して設けられるものであり、
(i)上部ニードルと下部ニードルとの径方向間に、環状空間による燃料溜が形成され、(ii)上部ニードルと下部ニードルとの軸方向間に、スリットによる噴出孔が形成されるものである。
【0017】
[請求項5の手段]
請求項5において噴出孔を成すスリットは、周方向において一定幅に設けられるものである。
このように、噴出孔を成すスリットが、周方向に一定幅であるため、製造が容易になり、コストを抑えることができる。
【0018】
[請求項6の手段]
請求項6において噴出孔を成すスリットは、
(i)径方向連通路の燃料出口に近い側のスリット幅が小さく、
(ii)径方向連通路の燃料出口から離れるに従ってスリット幅が大きく設けられるものである。
これにより、
(i)径方向連通路の燃料出口に近い側におけるスリットの通路抵抗が大きくなり、
(ii)逆に、径方向連通路の燃料出口から離れるに従ってスリットの通路抵抗が小さくなる。
これにより、噴出孔への燃料の供給ムラが抑えられ、第2噴射孔から噴射される燃料と空気の混合ムラを抑えることができる。
【0019】
[請求項7の手段]
請求項7のエアブラストインジェクタは、噴出孔がベンチュリー部に連通して、ベンチュリー効果によって燃料が「ベンチュリー部を通過する加圧空気」に吸い出されるものであり、噴射初期から噴霧粒径を微粒化することができる。
【0020】
第2噴射孔が開弁する直前、燃料溜の内部に供給された液体燃料がエア流路へ漏れ出ないようにするために、噴出孔を狭く(または細く)設けても、噴出孔を周方向の広い範囲に設けることで、噴出孔の通路面積の総和(B)を大きくすることができる。
一方、径方向通路を太く設けても、噴出孔を狭く(または細く)設けることで、噴出孔から燃料が漏れ出ないため、径方向連通路の通路面積の総和(A)を大きく設けることができる。
【0021】
これにより、「ベンチュリー部を通過する加圧空気」によって液体燃料を吸い出す構成であっても、「径方向連通路の通路面積の総和(A)」および「噴出孔の通路面積の総和(B)」を大きくすることができ、中心孔の液体燃料をエア流路に供給する能力を高めることができる。
即ち、「吸出し速度の向上」を図ることができる。
【0022】
[請求項8の手段]
請求項8のエアブラストインジェクタにおける噴出孔は、燃料溜の全周に亘って設けられるものである。
これにより、第2噴射孔が開弁すると、「環状形成された燃料溜の燃料」が「環状の噴出孔」を通って「第2ニードルの周囲の全範囲の加圧空気」に導かれる。
【0023】
[請求項9の手段]
請求項9のエアブラストインジェクタは、径方向連通路の正面に位置する噴出孔を閉塞する閉塞壁を備えるものである(図4参照)。
径方向連通路を通過した液体燃料が閉塞壁に衝突することで、液体燃料の微粒化効果を促進させることができる。
【0024】
[請求項10の手段]
請求項10のエアブラストインジェクタにおける閉塞壁は、径方向連通路に対して傾斜して設けられるものである(図5参照)。
これにより、傾斜した閉塞壁に衝突した液体燃料に、旋回流を生じさせることができる。その結果、旋回する燃料と加圧空気の混合性を促進させることができる。
即ち、衝突による微粒化効果に加え、旋回する燃料と加圧空気との混合を促進できることができ、第2噴射孔から噴射される液体燃料の微粒化を向上させることができる。
【0025】
[請求項11の手段]
請求項11のエアブラストインジェクタにおける噴出孔の全てあるいは一部には、噴出孔を通過する燃料に旋回流を生じさせるフィンが配置されるものである(図6参照)。
これにより、噴出孔を通過する液体燃料に、旋回流を生じさせることができ、旋回する燃料と加圧空気の混合性を促進させることができる。その結果、第2噴射孔から噴射される液体燃料の微粒化を向上させることができる。
【0026】
[請求項12の手段]
請求項12のエアブラストインジェクタにおける燃料溜の内部には、燃料溜を通過する燃料に旋回流を生じさせるフィンが配置されるものである(図7参照)。
これにより、燃料溜を通過する液体燃料に、旋回流を生じさせることができる。即ち、噴出孔を通過する燃料に旋回流を生じさせることができ、旋回する燃料と加圧空気の混合性を促進させることができる。その結果、第2噴射孔から噴射される液体燃料の微粒化を向上させることができる。
【0027】
[請求項13の手段]
請求項13のエアブラストインジェクタにおける径方向連通路は、第2ニードルの軸芯に対して偏心配置される偏心孔として設けられる(図8参照)。
これにより、燃料溜の内部に液体燃料による旋回流を生じさせることができる。即ち、噴出孔を通過する燃料に旋回流を生じさせることができ、旋回する燃料と加圧空気の混合性を促進させることができる。その結果、第2噴射孔から噴射される液体燃料の微粒化を向上させることができる。
また、燃料溜の内部に液体燃料の旋回流が生じることで、燃料溜の広範囲に液体燃料を分散供給することができ、噴出孔への燃料の供給ムラが抑えられる。その結果、第2ニードルの周方向に燃料の濃淡が発生する不具合を回避することができる。
【0028】
[請求項14の手段]
請求項14のエアブラストインジェクタにおける径方向連通路は、第2ニードルの径方向に対して斜めに配置される傾斜孔である(図9参照)。
これにより、上記請求項13と同様、燃料溜の内部に液体燃料による旋回流を生じさせることができる。即ち、噴出孔を通過する燃料に旋回流を生じさせることができ、旋回する燃料と加圧空気の混合性を促進させることができる。その結果、第2噴射孔から噴射される液体燃料の微粒化を向上させることができる。
また、燃料溜の内部に液体燃料の旋回流が生じることで、燃料溜の広範囲に液体燃料を分散供給することができ、噴出孔への燃料の供給ムラが抑えられる。その結果、第2ニードルの周方向に燃料の濃淡が発生する不具合を回避することができる。
【0029】
[請求項15の手段]
請求項15のエアブラストインジェクタにおける径方向連通路の全部または一部には、第2ニードルの内径側から外径側に向かって通路面積が拡大するテーパ拡張部が設けられるものである(図10参照)。
これにより、径方向連通路内を燃料が流れる際に、テーパ拡張部の壁面に押し付けられた液体燃料が、液膜状になってテーパ拡張部の拡径に沿って広がることで、液膜状の燃料の剪断面積が大きくなって、周囲の空気が液体燃料に混合する。このようにして、テーパ拡張部において燃料と空気の混合が促進される。即ち、径方向連通路内を燃料が流れる際に、燃料と空気の混合が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)は第2インジェクタの要部断面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である(実施例1)。
【図2】エアブラストインジェクタの断面図である。
【図3】第1インジェクタと第2インジェクタの駆動例を示すタイムチャートである。
【図4】(a)は第2ニードルの要部側面図、(b)は第2インジェクタの要部断面図である(実施例4)。
【図5】(a)は第2ニードルの要部側面図、(b)は第2インジェクタの要部断面図である(実施例5)。
【図6】(a)は第2ニードルの要部側面図、(b)(c)は第2インジェクタの要部断面図である(実施例6)。
【図7】(a)(b)は第2インジェクタの要部断面図である(実施例7)。
【図8】(a)は第2ニードルの要部側面図、(b)は第2インジェクタの要部断面図である(実施例8)。
【図9】(a)は第2ニードルの要部側面図、(b)は第2インジェクタの要部断面図である(実施例9)。
【図10】(a)は第2ニードルの要部側面図、(b)は第2インジェクタの要部断面図である(実施例10)。
【図11】エアブラストインジェクタの要部断面図である(従来例)。
【図12】(a)は第2インジェクタの要部断面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である(参考例)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面を参照して実施形態におけるエアブラストインジェクタの基本構成を説明する。
エアブラストインジェクタは、加圧された液体燃料の噴射を行なう第1インジェクタ1と、この第1インジェクタ1から噴射された液体燃料とともに、加圧空気を一緒に噴射する第2インジェクタ2とを備える。
【0032】
第1インジェクタ1は、外部より内部へ加圧供給された液体燃料を噴射する第1噴射孔3を有する第1ノズルボディ4と、この第1ノズルボディ4内に収容されて第1噴射孔3の開閉を行なう第1ニードル5とを備えるものであり、第1ニードル5を駆動する第1電磁駆動部6(第1インジェクタ1を駆動するアクチュエータの一例)を備える。
第2インジェクタ2は、外部より加圧供給された空気とともに第1インジェクタ1から噴射された液体燃料を噴射する第2噴射孔7を備える。また、第2インジェクタ2は、第2噴射孔7の開閉を行なう第2ニードル9、この第2ニードル9を収容する第2ノズルボディ8を備えるものであり、第2ニードル9を駆動する第2電磁駆動部10(第2インジェクタ2を駆動するアクチュエータの一例)を備える。
【0033】
そして、第2インジェクタ2は、以下の構成を採用する。
第2ニードル9と第2ノズルボディ8との間には、第2噴射孔7の開弁時に加圧空気が第2噴射孔7に向かって流れるエア流路11が設けられる。
エア流路11の通路途中には、第2噴射孔7の開弁時に第2噴射孔7に向かって流れる加圧空気を絞るベンチュリー部12を形成するベンチュリー形成部13が設けられる。
第2ニードル9は、次の構成を備える。
第2ニードル9の内部には、第2ニードル9の上部から下側まで延びる中心孔14が設けられる。
【0034】
第2ニードル9の外周側(具体的には、ベンチュリー部12の近傍の第2ニードル9の外周側)には、環状空間よりなる燃料溜15が設けられる。
第2ニードル9には、中心孔14から燃料溜15へ燃料を導く径方向連通路16が設けられる。
第2ニードル9には、ベンチュリー部12を通過する加圧空気に燃料溜15の燃料を導く噴出孔17が設けられる。この噴出孔17は、周方向の広い範囲に燃料供給可能なもので、例えば燃料溜15の全周(即ち、第2ニードル9の全周)に亘って設けられることが望ましいが、限定されるものではない。
【0035】
さらに、
径方向連通路16の通路面積の総和をA、
噴出孔17の通路面積の総和をBとした場合、
A≧B
の関係に設けられる。
【0036】
本実施形態のエアブラストインジェクタは、上記の構成を採用することにより、ベンチュリー部12の広い範囲の加圧空気に対して液体燃料を供給することができ、第2噴射孔7から噴射される燃料と空気の混合ムラを抑えることができる。
【実施例】
【0037】
以下において本発明が適用された具体的な一例(実施例)を、図面を参照して説明する。実施例は具体的な一例を開示するものであって、本発明が実施例に限定されないことはいうまでもない。
なお、以下の実施例において、上記[発明を実施するための形態]と同一符号は、同一機能物を示すものである。
また、以下の実施例において、図2の上側を上、図2の下側を下と称して説明するが、実際のエンジンへの搭載方向を限定するものではない。
【0038】
[実施例1]
エアブラストインジェクタは、直噴エンジンに搭載されるものであり、例えばガソリン等の燃料をエンジンの気筒内(燃焼室内)に直接噴射供給するものであって、各気筒毎に搭載される。
エアブラストインジェクタは、液体燃料の噴射を行なう第1インジェクタ1と、この第1インジェクタ1から噴射された液体燃料とともに、加圧空気を一緒に噴射する第2インジェクタ2とを備える。
【0039】
(第1インジェクタ1の説明)
実施例1の第1インジェクタ1は、燃料ポンプにより加圧された燃料が、燃料供給管を介して第1インジェクタ1の上端に設けられた燃料導入口21より内部に供給される。
燃料ポンプは、燃料タンクから第1インジェクタ1に燃料を導く燃料供給管の途中に配置されるものであり、燃料タンク内の燃料を吸引して所定圧力へ加圧し、第1インジェクタ1に向けて圧送するものである。また、燃料ポンプは、第1インジェクタ1に向けて吐出される燃料の圧力を、所定の目標圧力(例えば、550kPa)に調圧する調圧装置(プレッシャレギュレータ等)を備えている。
【0040】
第1インジェクタ1は、略円筒形状を呈するものであり、上端から燃料を受け、内部の燃料通路を経由して下端から燃料を噴射する。
第1インジェクタ1は、燃料の噴射と停止を実行する第1噴射ノズル22、この第1噴射ノズル22に閉弁力(燃料噴射を停止させる力)を付与する第1スプリング23、この第1スプリング23の閉弁力に抗して開弁力(燃料噴射を実行させる力)を付与する第1電磁駆動部6、略筒状を呈して第2インジェクタ2の上部に挿入固定される第1ロアボディ24、略筒状を呈して第1ロアボディ24の上部に同軸上に配置される第1アッパーボディ25を備えており、第1アッパーボディ25の上端に設けられた燃料導入口21から内部に流入した燃料は、第1ロアボディ24を通って第1噴射ノズル22の下端に向けて供給される。
【0041】
第1噴射ノズル22は、第1ロアボディ24の下部に固定されて第2インジェクタ2の内部に挿入配置される第1ノズルボディ4と、この第1ノズルボディ4の内部に挿入されて上下方向へ摺動自在に支持される第1ニードル5とを含んで構成される。
第1ノズルボディ4の軸中心には、上方から下方へ向けて燃料を導く第1ノズル孔26が穿設されており、第1ノズル孔26の下端に設けられた弁座の中心には、第1ノズルボディ4の先端部から第2インジェクタ2の内部に向けて燃料を噴射するための第1噴射孔3が形成されている。
【0042】
第1ノズル孔26は、第1ニードル5との間に燃料通路を形成して、上方から供給された燃料を弁座側へ導くものである。
第1噴射孔3は、第1ノズルボディ4の下端の軸中心において上下方向に貫通する1つの貫通穴であり、弁座の上面に入口が開口して、出口が第1ノズルボディ4の先端部の外面に開口している。
【0043】
第1ニードル5は、上下方向へ延びるシャフト形状を呈するものであり、第1ノズル孔26の中心部において上下方向へ摺動自在に支持されている。
具体的に、第1ニードル5の上端は、第1ロアボディ24の内周面によって上下方向に摺動自在に支持される第1可動コア27(第1電磁駆動部6におけるアーマチャ)の中心に結合されており、その結果、第1ニードル5の上端が第1ロアボディ24の内部において上下方向へ移動可能に支持される。なお、第1可動コア27には、上下方向を連通する燃料通路27aが形成されており、第1可動コア27の上側の燃料を、第1可動コア27の下側へ導くように設けられている。
【0044】
一方、第1ニードル5の下側には、径方向外側へ膨出する第1大径摺動部28が形成されており、この第1大径摺動部28が第1ノズル孔26の内周面によって摺動自在に支持される。なお、第1大径摺動部28には、上下方向を連通させる連通部(面取部、溝部)28aが設けられており、第1大径摺動部28の上側の燃料を、第1大径摺動部28の下側へ導くように設けられている。
【0045】
第1ニードル5の下端には、第1ノズル孔26の下端に設けられた弁座に着座可能なシート部が設けられている。このシート部が弁座に着座することにより、第1ノズル孔26と第1噴射孔3との連通を遮断し、シート部が弁座から離座することにより、第1ノズル孔26と第1噴射孔3とを連通して、第1噴射孔3から燃料の噴射を行なう。
ここで、弁座とシート部との当接部(着座部分)には、シート部が弁座に着座した際に噴射を停止するための線シール部(油密機能部)が設けられている。
なお、シート部の形状は、略円錐形状に限られるものではなく、略円錐台形状、あるいは略半球状など、線シールが可能な形状であればいずれの形状であっても良い。また、弁座とシート部のシール方法としては、線シールに限らず、面でシールするものであっても良い。
【0046】
第1スプリング23は、第1ニードル5を下方へ押し付けて、シート部を弁座に着座させる力(閉弁力)を発生するものであり、この実施例1では圧縮コイルスプリングを用いている。具体的に、第1スプリング23は、第1可動コア27と、筒状を呈する第1バネストッパ29との間で圧縮された状態で組付けられたものである。ここで、第1バネストッパ29は、第1アッパーボディ25の内周面に固定された第1磁気吸引筒34(後述する)の内周面に圧入あるいはネジ込み等により固定されたものである。
【0047】
第1電磁駆動部6は、磁力によって第1ニードル5を上方(開弁方向)に駆動するものであり、通電により磁力を発生する円筒形状に巻回された第1コイル31、この第1コイル31の内周に配置されて上下方向へ摺動自在に支持される第1可動コア27、この第1可動コア27を上方へ磁気吸引するための磁路を形成する第1固定子を備える。
【0048】
第1固定子は、第1ロアボディ24と第1アッパーボディ25の間に挟まれて配置される第1非磁性筒32と、この第1非磁性筒32の下部において第1可動コア27と径方向の磁気の受け渡しを行なう第1磁気受渡筒33と、第1可動コア27を上方へ磁気吸引する第1磁気吸引筒34と、第1コイル31の周囲を覆う第1ヨーク35とを備える。
なお、第1固定子を構成する部材のうち、第1非磁性筒32を除く他の部材(第1磁気受渡筒33、第1磁気吸引筒34、第1ヨーク35)は、全て磁性体金属(例えば、鉄)によって形成されるものである。
ここで、第1固定子は、第1ロアボディ24および第1アッパーボディ25の一部を利用したものであり、第1ロアボディ24の上部が第1磁気受渡筒33として利用され、第1アッパーボディ25が第1磁気吸引筒34と第1ヨーク35の磁気結合を行なう部材として利用されている。
【0049】
第1非磁性筒32は、第1アッパーボディ25と同径の筒体であり、第1磁気吸引筒34と第1磁気受渡筒33(第1ロアボディ24の一部)とが、第1可動コア27を介さずに直接的に磁気結合(磁路形成)するのを防ぐためのものである。
第1磁気吸引筒34は、第1アッパーボディ25の内周面に結合された筒状を呈し、第1磁気吸引筒34の下面と第1可動コア27の上面との間にメインギャップ(磁気吸引ギャップ)を形成する部材である。即ち、第1コイル31が通電されると、第1磁気吸引筒34が第1可動コア27を磁気吸引するものである。
【0050】
第1ヨーク35は、第1コイル31の外周を覆って、第1コイル31の周囲に磁路を形成する部材であり、第1コイル31が通電されると、第1ヨーク35→第1アッパーボディ25および第1磁気吸引筒34→第1可動コア27→第1磁気受渡筒33(第1ロアボディ24の一部)→再び第1ヨーク35に戻る磁気経路(磁束の流れ方向は逆であっても良い)が形成される。
【0051】
第1ヨーク35は、絶縁性の第1樹脂部材36によりモールドされており、第1ヨーク35をモールドする第1樹脂部材36の一部には、外部接続用の第1コネクタ37が設けられている。この第1コネクタ37は、第1インジェクタ1の作動制御を行なうECU(エンジン・コントロール・ユニットの略:図示しない)と接続線を介して電気的な接続を行なう接続手段であり、その内部には第1コイル31の両端にそれぞれ接続される端子37aがモールドされている。
【0052】
(第2インジェクタ2の説明)
実施例1の第2インジェクタ2は、エアポンプにより加圧された空気が、圧縮空気供給管を介して第2インジェクタ2の上部の側面より内部に供給される。
エアポンプは、大気中の空気を吸引して所定圧力へ加圧し、第2インジェクタ2に向けて圧送するものである。また、エアポンプは、第2インジェクタ2に向けて吐出される空気の圧力を、所定の目標圧力(燃料ポンプから第1インジェクタ1へ供給される燃料圧力よりも低い圧力:例えば、300kPa)に調圧する調圧装置(プレッシャレギュレータ等)を備えている。
【0053】
第2インジェクタ2は、第1インジェクタ1の下側において、第1インジェクタ1と同軸に配置された略円筒形状を呈するものであり、上部に配置された第1インジェクタ1から噴射燃料の供給を受けるとともに、エアポンプから加圧空気の供給を受ける。そして、第2インジェクタ2は、この第2インジェクタ2の上部に供給された加圧空気と液体燃料(以下では、第2インジェクタ2に供給された加圧空気と第1インジェクタ1から噴射された液体燃料とを合わせて「エア混合燃料」と称して説明する)を、内部通路を経由させて下端へ導き、下端から噴射させるものである。
【0054】
第2インジェクタ2は、エア混合燃料の噴射と停止を実行する第2噴射ノズル38、この第2噴射ノズル38に閉弁力(燃料噴射を停止させる力)を付与する第2スプリング39、この第2スプリング39の閉弁力に抗して開弁力(燃料噴射を実行させる力)を付与する第2電磁駆動部10、略筒状を呈してエンジンのシリンダヘッド等に挿入固定される第2ロアボディ40、略筒状を呈して第2ロアボディ40の上部に同軸上に配置される第2アッパーボディ41を備えている。
【0055】
第2アッパーボディ41は、上述したように略筒形状を呈するものであり、その上部に第1インジェクタ1の下部が挿入配置される。第1インジェクタ1を第2アッパーボディ41に固定する一例として、この実施例では、第1ロアボディ24の外周にフランジ部24aを設け、第2アッパーボディ41の上面と、第2アッパーボディ41の上面に締結される取付プレート42との間でフランジ部24aを挟み付けることで、第1インジェクタ1を第2アッパーボディ41に固定している。なお、第1インジェクタ1の固定手段は、適宜変更可能なものである。
また、第2アッパーボディ41の側面には、エアポンプで加圧された空気を内部に導くエア導入通路43が形成されている。そして、第2アッパーボディ41の内部に供給された加圧空気は、第2噴射ノズル38まで充填供給される。
【0056】
第2噴射ノズル38は、第2ロアボディ40の下部にリテーニングナット44を用いて締結固定される第2ノズルボディ8と、この第2ノズルボディ8の内部に挿入されて上下方向へ摺動自在に支持される第2ニードル9とを含んで構成される。
第2ノズルボディ8は、先端部が気筒内に露出するように挿入配置されるものであり、その軸中心には、上方から下方へ向けて貫通する筒形状の第2ノズル孔45が形成されている。
第2インジェクタ2は、第2ノズルボディ8の下端に、エア混合燃料を気筒内に噴射供給する第2噴射孔7を備える。この第2噴射孔7は、第2ノズル孔45の下端(下方に向けて拡径したテーパ形状を呈し、外部と連通する開口穴)と第2ニードル9との間に形成されるものであり、第2ニードル9によって開閉される。
【0057】
第2ノズル孔45は、第2ニードル9との間に上下方向を連通する筒状のエア流路11を形成するものであり、エア流路11に供給された加圧空気を第2噴射孔7へ導くものである。
第2ニードル9は、上下方向へ延びるシャフト形状を呈するものであり、第2ノズル孔45の中心部において上下方向へ摺動自在に支持されている。
【0058】
具体的に、第2ニードル9の上端は、第2アッパーボディ41の内周面によって上下方向に摺動自在に支持される第2可動コア46(第2電磁駆動部10におけるアーマチャ)の中心に結合されており、その結果、第2ニードル9の上端が第2アッパーボディ41の内部において上下方向へ移動可能に支持される。なお、第2可動コア46には、上下方向を連通するための通路は形成されておらず、第2ニードル9の外周に何らかの要因で付着した液体燃料は、第2可動コア46の外周面の摺動クリアランスを介して下方へ伝わることで下方のエア流路11へ導かれる。
【0059】
一方、第2ニードル9の中間部には、径方向外側へ膨出する第2大径摺動部47が形成されており、この第2大径摺動部47が第2ノズル孔45の内周面によって摺動自在に支持される。なお、第2大径摺動部47には、上下方向を連通させる連通部(溝部等)47aが設けられており、第2大径摺動部47の上側に供給された加圧空気を下側へ導くように設けられている。
【0060】
第2ニードル9の内部には、第1インジェクタ1が噴射した燃料と、エア導入通路43から第2アッパーボディ41の内部に供給された加圧空気とを下方へ導く中心孔14が設けられている。
中心孔14の上端は、第1インジェクタ1の第1噴射孔3と同一軸線上に開口し、第1インジェクタ1の噴射した液体燃料と、外部から供給された加圧空気とを、中心孔14の内部に導く導入口として機能する。
なお、第2ニードル9の内部において、中心孔14の下端からエア流路11(具体的には、ベンチュリー部12)へ燃料を導くための燃料通路については後述する。
【0061】
ここで、第1噴射孔3から中心孔14の内部に燃料を供給する手段として、この実施例の第1インジェクタ1には、第1噴射孔3から噴射された全ての液体燃料を積極的に中心孔14へ供給する燃料ノズル48が設けられている。この燃料ノズル48は、第1噴射孔3から中心孔14の内部まで伸びる中空の細いパイプであって、燃料ノズル48の下端が中心孔14の内部まで伸びて配置されている。
そして、第1インジェクタ1から噴射された液体燃料は、燃料ノズル48を通って中心孔14に供給され、エア導入通路43から第2アッパーボディ41の内部に供給された加圧空気は、燃料ノズル48の外壁と中心孔14の内壁との間に形成される環状通路を通って中心孔14に供給される。
【0062】
燃料ノズル48には、第1ノズルボディ4の下端に装着される略カップ形状のキャップ部が一体に設けられており、このキャップ部の中心部に燃料ノズル48が下方へ伸びて設けられている。そして、キャップ部を第1ノズルボディ4の下端に嵌め合わせて、溶接等の固定技術で第1ノズルボディ4に固定することで、燃料ノズル48が第1噴射孔3に連通した状態で第1インジェクタ1に取り付けられる。
【0063】
このように、キャップ部を第1ノズルボディ4の端部に固定することで、第1噴射孔3の周囲が全周に亘ってキャップ部と第1ノズルボディ4との間でシールされる。これにより、第1インジェクタ1から噴射された燃料が、燃料ノズル48の先端(中心孔14に差し込まれている端部)とは別の箇所から漏れ出る不具合を回避できる。
なお、この実施例では、第1ノズルボディ4に燃料ノズル48を取り付ける手段として略カップ形状のキャップ部を用いる例を示したが、他の形状の固定手段を用いて第1ノズルボディ4に燃料ノズル48を固定しても良い。
【0064】
燃料ノズル48の内部の通路面積は、第1噴射孔3の通路面積より大きく設けられる。これにより、第1インジェクタ1から噴射される噴射燃料に燃料ノズル48が影響を与える不具合を回避することができる。
なお、中心孔14と燃料ノズル48の軸方向のオーバーラップ量は、第1インジェクタ1から噴射された燃料が、中心孔14の上端開口から外部へ吹きこぼれない長さを確保するものである。しかるに、オーバーラップ量を長く設定することで、環状通路を通過する加圧空気の通過抵抗が増すことになるため、中心孔14と燃料ノズル48の軸方向のオーバーラップ量は、必要以上に長くしないように設定されるものである。
【0065】
この燃料ノズル48を用いることにより、第1インジェクタ1から噴射される全ての液体燃料を、中心孔14を介して第2噴射孔7へ安定して導くことができ、第1インジェクタ1から噴射された全ての燃料が第2噴射孔7へ導かれるまでの時間と量が安定する。その結果、第2噴射孔7の開弁中に高い精度の燃料を噴射することができ、燃料の噴射精度を高めることができる。
【0066】
この実施例に示す第2インジェクタ2は、第2アッパーボディ41内に供給された加圧空気をエア流路11に導く手段として、第2可動コア46に上下貫通穴を設けずに済むように、第2可動コア46の内側の中心孔14を用いるものである。
具体的に、第2ニードル9には、第2可動コア46よりも下方に、中心孔14における上下方向の通路途中と、エア流路11(第2ニードル9の外側空間)とを連通する横穴49が設けられている。この横穴49は、中心孔14の内部に供給された加圧空気を分岐させてエア流路11へ供給するエア分岐穴であり、加圧空気は中心孔14および横穴49を通ってエア流路11内に充填供給される。
【0067】
なお、エア流路11を流れる加圧空気量が横穴49で絞られないように、横穴49の内径寸法が大きく設定されている。
また、横穴49よりも下側における中心孔14の内部容積は、1回の燃料噴射量(最大噴射量)よりも大きく設けられ、第1インジェクタ1から噴射された液体燃料を、横穴49より下側の中心孔14の内部に貯溜できるように設けられている。
これにより、最大噴射時であっても、横穴49からエア流路11に液体燃料が溢れ出る不具合がなく、噴射開始初期に、エア流路11から溢れだした液体燃料がまとまって第2噴射孔7から外部に噴射される不具合がない。
【0068】
第2ニードル9の下端には、第2噴射孔7を開閉する弁傘51が設けられている。この弁傘51の外径寸法は、第2噴射孔7の外径寸法より大径に設けられており、弁傘51が第2噴射孔7の開口縁に着座することにより、エア流路11と外部(気筒内)との連通が遮断され、弁傘51が第2噴射孔7の開口縁から離座することにより、エア流路11と外部が連通して、第2噴射孔7からエア混合燃料が気筒内に噴射される。
ここで、弁傘51と当接する第2噴射孔7の開口縁には、弁傘51が第2噴射孔7の開口縁に着座した際に噴射を停止するための線シール部(油密機能部)が設けられている。なお、第2噴射孔7の形態、および第2ニードル9における弁体(第2噴射孔7を開閉するバルブ部)の形態は、図面に示すものに限定されるものではなく、適宜変更可能なものである。
【0069】
第2スプリング39は、第2ニードル9を上方へ押し上げて、弁傘51を第2噴射孔7の開口縁に着座させる力(閉弁力)を発生するものであり、この実施例1では圧縮コイルスプリングを用いている。具体的に、第2スプリング39は、第2ニードル9の外周面に取り付けられた第2バネストッパ52と、第2ノズルボディ8の上端面との間で圧縮された状態で組付けられたものである。なお、第2バネストッパ52は、第2ニードル9の外周面に取り付けられるクリップリング(Eリング、Cリング等)52aによって支持されるものである。
【0070】
第2電磁駆動部10は、磁力によって第2ニードル9を下方(開弁方向)に駆動するものであり、通電により磁力を発生する円筒形状に巻回された第2コイル53、この第2コイル53の内周に配置されて上下方向へ摺動自在に支持される第2可動コア46、この第2可動コア46を下方へ磁気吸引するための磁路を形成する第2固定子を備える。
【0071】
第2固定子は、第2ロアボディ40と第2アッパーボディ41の間に挟まれて配置される第2非磁性筒54と、この第2非磁性筒54の上部において第2可動コア46と径方向の磁気の受け渡しを行なう第2磁気受渡筒55と、第2可動コア46を下方へ磁気吸引する第2磁気吸引部56と、第2コイル53の周囲を覆う第2ヨーク57とを備える。
なお、第2固定子を構成する部材のうち、第2非磁性筒54を除く他の部材(第2磁気受渡筒55、第2磁気吸引部56、第2ヨーク57)は、全て磁性体金属(例えば、鉄など)によって形成されるものである。
ここで、第2固定子は、第2ロアボディ40および第2アッパーボディ41の一部を利用するものであり、第2ロアボディ40の上部が第2磁気吸引部56として利用され、第2アッパーボディ41の下部が第2磁気受渡筒55として利用されている。
【0072】
第2非磁性筒54は、第2アッパーボディ41の下部と同径の筒体であり、第2磁気吸引部56(第2ロアボディ40の一部)と第2磁気受渡筒55(第2アッパーボディ41の一部)とが、第2可動コア46を介さずに直接的に磁気結合(磁路形成)するのを防ぐためのものである。
第2磁気吸引部56は、第2可動コア46の下面と対向配置され、第2可動コア46の下面との間にメインギャップ(磁気吸引ギャップ)を形成する部材である。即ち、第2コイル53が通電されると、第2磁気吸引部56が第2可動コア46を磁気吸引するものである。
【0073】
第2ヨーク57は、第2コイル53の外周を覆って、第2コイル53の周囲に磁路を形成する部材であり、第2コイル53が通電されると、第2ヨーク57→第2磁気吸引部56(第2ロアボディ40の一部)→第2可動コア46→第2磁気受渡筒55(第2アッパーボディ41の一部)→再び第2ヨーク57に戻る磁気経路(磁束の流れ方向は逆であっても良い)が形成される。
【0074】
第2ヨーク57は、絶縁性の第2樹脂部材58によりモールドされており、第2ヨーク57をモールドする第2樹脂部材58の一部には、外部接続用の第2コネクタ59が設けられている。この第2コネクタ59は、第2インジェクタ2の作動制御を行なうECUと接続線を介して電気的な接続を行なう接続手段であり、その内部には第2コイル53の両端にそれぞれ接続される端子59aがモールドされている。
【0075】
ECUは、制御処理、演算処理を行なうCPU、各種プログラムおよびデータを保存する記憶装置(ROM、RAM、SRAMまたはEEPROM等のメモリ)、入力回路、出力回路、電源回路などを含んで構成された周知構造のマイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータの指示により第1コイル31および第2コイル53の通電制御を実施するインジェクタ駆動回路とを含んで構成される。
マイクロコンピュータには、ECUに読み込まれたセンサ類の信号(エンジンパラメータ:乗員の運転状態、エンジンの運転状態等に応じた信号)に応じて第1、第2コイル31、53の通電を制御するインジェクタ制御プログラムが搭載されている。
【0076】
このインジェクタ制御プログラムは、ECUに読み込まれた車両の運転状態から、運転状態に応じた噴射形態、噴射タイミング、燃料の噴射量の算出を行なうとともに、算出された噴射形態、噴射タイミング、燃料の噴射量が得られるように、第1、第2コイル31、53の通電制御を実施するものである。
具体的に、インジェクタ制御プログラムは、算出された噴射量が得られるように第1コイル31の通電期間を制御するとともに、算出された噴射タイミングで燃料噴射が実施されるように第2コイル53の通電開始時期を制御する。即ち、第2インジェクタ2において、第1インジェクタ1から噴射された液体燃料とともに加圧空気を一緒に噴射するように、第1、第2インジェクタ1、2の通電制御を行なうものである。
【0077】
一例を示すと、図3に示すように、先ず第1コイル31へ第1インジェクタ1の駆動信号を出力して第1インジェクタ1から第2インジェクタ2内に燃料の供給を行ない、続いて第2コイル53へ第2インジェクタ2の駆動信号を出力してエア混合燃料を第2インジェクタ2から気筒内へ噴射させるものである。
なお、図3は一例を示すだけであって、図3とは異なり、第1インジェクタ1と第2インジェクタ2とが同時に駆動されるオーバーラップ期間があっても良いし、第1インジェクタ1と第2インジェクタ2とが同時に駆動開始されるものであっても良い。
【0078】
(実施例1の背景技術)
本発明が適用されていない「従来技術」のエアブラストインジェクタは、図11に示すように、第1インジェクタ1から中心孔14の内部に噴射供給された液体燃料が、中心孔14の下端に形成された複数(例えば4本)の径方向連通路16を通ってエア流路11に導かれる。
そして、第2噴射孔7が開弁すると、エア流路11に充填された加圧空気とともに、径方向連通路16を通過した液体燃料が第2噴射孔7から噴射される。
【0079】
第2噴射孔7が開弁した際、加圧空気は第2ニードル9の全周において下方(第2噴射孔7)に向かって流れる。
しかし、径方向連通路16の燃料出口は、第2ニードル9の周方向の一部(例えば、周方向の4箇所)でしか開口しない。
【0080】
このため、第2噴射孔7が開弁すると、
(i)径方向連通路16の燃料出口の近傍を通過する加圧空気には大量の液体燃料が混ざり合うが、
(ii)径方向連通路16の燃料出口から離れた部位を通過する加圧空気には液体燃料がほとんど混ざらない。
その結果、第2噴射孔7から噴射される液体燃料と空気の混合ムラが大きくなり、噴霧粒径のバラツキが大きくなってしまう。
【0081】
(参考例)
一方、上記の従来技術とは異なり、噴射初期の噴霧粒径を小さくすることのできる「参考例」が提案されている。
この図12(a)に示す参考例は、エア流路11の通路途中に加圧空気の流路面積を絞るベンチュリー部12を設けるとともに、中心孔14の下端からベンチュリー部12に通じる複数(例えば、4本)の径方向連通路16を設けるものであり、ベンチュリー効果によって、中心孔14の液体燃料を、ベンチュリー部12を通過する加圧空気に吸い出させ、噴射初期から噴霧粒径を微粒化するものである。
【0082】
この参考例であっても、加圧空気に液体燃料を供給するための径方向連通路16の燃料出口(径方向外側の開口部)は、図12(b)に示すように、第2ニードル9の周方向の一部(周方向の4箇所)でしか開口しない。
このため、第2噴射孔7が開弁すると、
(i)径方向連通路16の燃料出口の近傍を通過する加圧空気には大量の液体燃料が混ざり合うが、
(ii)径方向連通路16の燃料出口から離れた部位を通過する加圧空気には液体燃料がほとんど混ざらない。
その結果、第2噴射孔7から噴射される液体燃料と空気の混合ムラが大きくなり、噴霧粒径のバラツキが大きくなってしまう。
即ち、図11に示す従来技術であっても、図12に示す参考例であっても、同様の問題点(液体燃料と空気の混合ムラ)を有していた。
【0083】
(実施例1の特徴技術)
この実施例1のエアブラストインジェクタは、
(i)ベンチュリー効果を用いて第2インジェクタ2の噴射初期の微粒化を達成するとともに、
(ii)加圧空気と液体燃料との混合ムラを抑えて、燃料の微粒化を向上させるものである。
【0084】
この実施例1のエアブラストインジェクタは、上記を達成するために、次の構成を採用している。
(a)第2ニードル9と第2ノズルボディ8との間には、第2噴射孔7の開弁時に加圧空気が第2噴射孔7に向かって流れるエア流路11が設けられる。
(b)エア流路11の通路途中には、加圧空気を絞るベンチュリー部12を形成するためのベンチュリー形成部13が設けられる。
(c)第2ニードル9の内部には、第1インジェクタ1の噴射燃料が供給される中心孔14が設けられる。
(d)第2ニードル9の外周側(具体的には、ベンチュリー部12の近傍の第2ニードル9の外周側)には、環状空間よりなる燃料溜15が設けられる。
(e)第2ニードル9には、中心孔14から燃料溜15へ燃料を導く径方向連通路16が設けられる。
(f)第2ニードル9には、ベンチュリー部12を通過する加圧空気に燃料溜15の燃料を導く噴出孔17が設けられる。この噴出孔17は、燃料溜15の全周(即ち、第2ニードル9の全周)に亘って設けられる。
【0085】
上記の構成を具体的に説明する。
ベンチュリー形成部13は、第2大径摺動部47より下方における第2ニードル9の外周面において径方向外側へ膨出することで、第2ノズルボディ8の内周面との間にエア流路11の流路絞りとして機能するベンチュリー部12を形成するものである。
なお、ベンチュリー形成部13の上側は、上方からベンチュリー部12の最大絞り部へ向かう加圧空気を徐々に絞るテーパ面に設けられている。また、ベンチュリー形成部13の下側は、ベンチュリー部12の最大絞り部で絞られた加圧空気を徐々に拡張するテーパ面に設けられている。
【0086】
中心孔14は、第2ニードル9の軸中心において、第2ニードル9の上端から下側(ベンチュリー部12の近傍)まで穿設された軸穴であり、第1インジェクタ1が噴射した燃料と、第2ニードル9の上部に充填供給された加圧空気とを、第2ニードル9内の下方へ導くものである。
【0087】
燃料溜15は、ベンチュリー部12の近傍に形成される環状空間であり、この実施例1ではニードル装着筒62を用いて形成される。
具体的に、この実施例1の第2ニードル9は、中心孔14および径方向連通路16が形成されるニードル本体(第2ニードル9の主要部)61と、このニードル本体61の外周に装着され、スポット溶接等の接合技術によってニードル本体61の外周面に固定される略円筒形状を呈したニードル装着筒62とを用いて構成される。
そして、このニードル装着筒62は、ベンチュリー形成部13の上側の一部(上側テーパ部)を構成するものであり、ニードル本体61とニードル装着筒62との径方向間に、周方向に連続する環状空間よりなる燃料溜15を形成する。
【0088】
径方向連通路16は、中心孔14の下端と燃料溜15の内部とを連通させる径方向に伸びる連通路であり、この実施例では図1(b)に示すように、中心孔14から径方向外側へ向けて放射状に4本設けられるものである。
なお、図1(a)とは異なり、中心孔14の最下端部が、径方向連通路16と連通するように設けても良い。即ち、第2ニードル9の上端からドリルで中心孔14を穿設した際に形成される円錐形状の底端を、径方向連通路16と連通させても良い。このように、中心孔14の最下端部を径方向連通路16に連通させることにより、第2インジェクタ2の作動時に、中心孔14の最下端部の液体燃料を径方向連通路16を介して吸い出させることができ、第2噴射孔7の噴射後に、中心孔14の内部に液体燃料が貯溜する不具合を回避することができる。
【0089】
噴出孔17は、燃料溜15とベンチュリー部12とを連通して、ベンチュリー部12を通過する加圧空気に燃料溜15の燃料を吸い出させるための連通部であり、この噴出孔17は、燃料溜15の全周(即ち、ベンチュリー部12の全周)に亘って設けられる。
具体的に、この実施例1の噴出孔17は、上述したニードル装着筒62を用いて形成されるものであり、ニードル本体61とニードル装着筒62との軸方向間に、周方向に連続したスリットとして形成される。
なお、噴出孔17を成すスリットの隙間は、第2噴射孔7が開弁する直前において、燃料溜15内に導かれた液体燃料がベンチュリー部12へ漏れ出ないように、狭く設けられるものである。
【0090】
また、この実施例1のエアブラストインジェクタは、
径方向連通路16の通路面積の総和をA、
噴出孔17の通路面積の総和をBとした場合、
A≧B
の関係に設けられるものである。
【0091】
具体的な一例(数値)を用いて説明する。
1本の径方向連通路16の内径寸法(直径)が0.45mmの場合、
スリット(噴出孔17を成すスリットが周方向において一定幅に設けられる場合)の隙間を0.058mmとすることで、
A=Bになるとする。
【0092】
(i)その場合、1本の径方向連通路16の内径寸法(直径)が0.45mmの場合に、スリットの隙間を0.058mm以下に設けることで、
A≧B
の関係に設けることができる。
(ii)あるいは、スリットの隙間が0.058mmの場合に、1本の径方向連通路16の内径寸法(直径)を0.45mm以上に設けることで、
A≧B
の関係に設けることができる。
【0093】
次に、上記構成を採用するエアブラストインジェクタの作動を説明する。
(第1インジェクタ1の作動)
ECUは、エンジンの気筒内に燃料噴射を実施する際に、第1インジェクタ1を作動させる。
ECUによって第1コイル31の通電が開始されると、磁力により第1可動コア27が上方へ磁気吸引される。そして、第1可動コア27を上方へ駆動する磁気吸引力が、第1ニードル5に加わる閉弁方向荷重に打ち勝つと、第1可動コア27が上方に移動し、第1可動コア27に結合されている第1ニードル5がリフトアップを開始する。そして、第1ニードル5が弁座から離座すると、第1ノズルボディ4の第1ノズル孔26に供給された加圧燃料が第1噴射孔3から噴射される。
第1噴射孔3より噴射された燃料は、燃料ノズル48を通って、第2インジェクタ2の中心孔14の内部に噴射供給される。即ち、燃料ノズル48によって、第1インジェクタ1の噴射燃料が第2インジェクタ2の中心孔14の内部のみに注入される。
【0094】
ECUによって第1コイル31の通電が停止されると、第1可動コア27を上方へ磁気吸引していた磁力が喪失する。すると、第1スプリング23の付勢力により第1可動コア27と第1ニードル5が下降を開始する。そして、第1ニードル5が下降して弁座に着座すると、第1ノズル孔26と第1噴射孔3の連通が遮断されて、第1噴射孔3からの燃料噴射が停止し、中心孔14の内部への燃料供給(燃料注入)が停止される。
【0095】
(第2インジェクタ2の作動)
ECUは、エンジンの気筒内に燃料噴射を実施する際に、第1インジェクタ1の他に第2インジェクタ2を作動させる。
ECUによって第2コイル53の通電が開始されると、磁力により第2可動コア46が下方へ磁気吸引される。そして、第2可動コア46を下方へ駆動する磁気吸引力が、第2ニードル9に加わる閉弁方向荷重に打ち勝つと、第2可動コア46が下方に移動し、第2可動コア46に結合されている第2ニードル9が下降を開始する。そして、第2ニードル9の下端に設けられた弁傘51が第2噴射孔7の開口縁から離座すると、エア流路11の下端とエンジンの気筒内とが連通し、第2インジェクタ2内に充填されていた加圧空気とともに、中心孔14に溜められた液体燃料が、第2噴射孔7を介してエンジンの気筒内に噴射する。
【0096】
この状態(中心孔14に溜められた液体燃料の噴射)を、図1を参照して説明する。
第2噴射孔7が開かれると、エア流路11内に充填された加圧空気が第2噴射孔7を介して気筒内に流れる。このため、エア流路11には、ベンチュリー部12の上側から下方の第2噴射孔7に向かう加圧空気の流れが生じ、加圧空気がベンチュリー部12で絞られる。
【0097】
ベンチュリー部12を通過する加圧空気は、ベンチュリー部12による流体圧縮によって流速が増すとともに、圧力が低下する。
このベンチュリー部12における圧力低下によって、燃料溜15に供給された液体燃料が、噴出孔17を介してベンチュリー部12を通過する加圧空気に吸い出される。
【0098】
噴出孔17から吸い出された液体燃料は、ベンチュリー部12を通過する加圧空気によって連続的に分断されながら加圧空気に混ざり合い、加圧空気とともに第2噴射孔7を通って気筒内へ噴射される。
このように、噴出孔17から吸い出した液体燃料が加圧空気に混ざり合った状態で第2噴射孔7から噴射されるため、第2インジェクタ2の噴射初期から噴霧粒径を微粒化することができる。
【0099】
第2インジェクタ2に供給された液体燃料の噴射が終了すると、ECUによって第2コイル53の通電が停止される。すると、第2可動コア46を下方へ磁気吸引していた磁力が喪失する。その結果、第2スプリング39の付勢力により第2可動コア46と第2ニードル9が上昇を開始する。そして、第2ニードル9が上昇して弁傘51が第2噴射孔7の開口縁に着座すると、エア流路11とエンジンの気筒内との連通が遮断されて、第2噴射孔7からエンジンの気筒内への噴射が停止される。
【0100】
(実施例1の効果1)
実施例1のエアブラストインジェクタは、上述したように、ベンチュリー部12を通過する加圧空気に液体燃料を供給するための燃料溜15と噴出孔17が、第2ニードル9の全周に亘って設けられている。
これにより、「径方向連通路16の燃料出口の近傍を通過する加圧空気」であっても、「径方向連通路16の燃料出口から離れた部位を通過する加圧空気」であっても、噴出孔17から同様に液体燃料の供給を行なうことができる。即ち、ベンチュリー部12を通過する全ての加圧空気に対して液体燃料を供給することができる。
その結果、第2噴射孔7から噴射される燃料と空気の混合ムラを抑えることができ、第2噴射孔7から加圧空気に混入した状態で噴射される液体燃料の微粒化を向上させることができる。
【0101】
(実施例1の効果2)
実施例1のエアブラストインジェクタは、上述したように、
径方向連通路16の通路面積の総和をA、
噴出孔17の通路面積の総和をBとした場合、
A≧B
の関係に設けられる。
これにより、「径方向連通路16における燃料の通過能力」を「噴出孔17における燃料の通過能力」以上にできる。このため、「燃料溜15の全周に燃料を行き渡らせた状態」で、全ての噴出孔17からベンチュリー部12を通過する加圧空気に液体燃料を供給することができる。
【0102】
(実施例1の効果3)
実施例1のエアブラストインジェクタは、噴出孔17を成すスリットが、周方向に一定幅に設けられる。
これにより、ニードル本体61およびニードル装着筒62の製造が容易になり、第2ニードル9のコスト上昇を抑えることができる。
【0103】
(実施例1の効果4)
実施例1のエアブラストインジェクタは、上述したように、噴出孔17がベンチュリー部12に連通して、ベンチュリー効果によって燃料が「ベンチュリー部12を通過する加圧空気」に吸い出される。このため、噴射開始初期から液体燃料の噴霧粒径を微粒化することができる。
【0104】
(実施例1の効果5)
実施例1のエアブラストインジェクタは、上述したように、第2噴射孔7が開弁する直前、燃料溜15の内部に供給された液体燃料がエア流路11へ漏れ出ないようにするために、噴出孔17を成すスリットの幅が狭く設けられている。
しかるに、噴出孔17は第2ニードル9の全周(具体的には、ベンチュリー形成部13の全周)に設けられるため、噴出孔17の通路面積の総和Bを大きくすることができる。
一方、径方向連通路16の内径寸法を大きく設けても、噴出孔17を成すスリットの幅を狭く設けることで、噴出孔17から燃料が漏れ出ないため、径方向連通路16の通路面積の総和Aを大きく設けることができる。
【0105】
これにより、「ベンチュリー部12を通過する加圧空気」によって液体燃料を吸い出す構成であっても、「径方向連通路16の通路面積の総和A」および「噴出孔17の通路面積の総和B」を大きくすることができ、中心孔14に溜まった液体燃料をエア流路11に供給する能力を高めることができる。
その結果、短時間に中心孔14の液体燃料をベンチュリー部12に吸い出すことができる。また、中心孔14の内部に液体燃料が残留する不具合を回避することができる。
【0106】
[実施例2]
次に、実施例2を説明する。なお、以下の各実施例の説明において、上記実施例1と同一符号は同一機能物を示すものである。
上記の実施例1の第2ニードル9は、ニードル本体61にニードル装着筒62を装着することで、燃料溜15を成す環状空間と、噴出孔17を成すスリットとを設ける例を示した。
【0107】
これに対し、実施例2の第2ニードル9は、中心孔14が形成される上部ニードルと、第2噴射孔7の開閉を行なう弁傘51が形成される下部ニードルとを軸方向に接合することで、燃料溜15を成す環状空間と、噴出孔17を成すスリットとを設けるものである。
なお、上部ニードルと下部ニードルとは、溶接などの接合技術で接合されるものであっても良いし、ネジなどの締結手段で接合されるものであっても良い。
【0108】
[実施例3]
次に、実施例3を説明する。
上記の実施例1において噴出孔17を成すスリットは、周方向に一定幅に設けられる例を示した。
これに対し、この実施例3における噴出孔17を成すスリットは、
(i)径方向連通路16の燃料出口に近い側のスリット幅を小さく、
(ii)径方向連通路16の燃料出口から離れるに従ってスリット幅を大きく設けるものである。
【0109】
このように設けることにより、
(i)径方向連通路16の燃料出口に近い側における噴出孔17の通路抵抗が大きくなり、
(ii)逆に、径方向連通路16の燃料出口から離れるに従って噴出孔17の通路抵抗が小さくなる。
このため、「第2ニードル9の全周から均一量の液体燃料」をベンチュリー部12を通過する加圧空気に供給することができ、第2噴射孔7から噴射される燃料と空気の混合ムラを、より小さく抑えることができる。
【0110】
[実施例4]
実施例4を、図4を参照して説明する。
実施例1では、図1(b)に示すように、噴出孔17を燃料溜15の全周に亘って設ける例を示した。
これに対し、実施例4は、図4に示すように、径方向連通路16の正面に、噴出孔17を閉塞する閉塞壁63を設けるものである。
【0111】
具体的に、上記の実施例1では、噴出孔17を燃料溜15の全周に設けていたため、径方向連通路16の正面に位置する噴出孔17の通過燃料量が多くなる。その結果、第2ニードル9の周方向に燃料の濃淡が発生し、燃料の濃い部分、即ち径方向連通路16の正面の噴出孔17を通過した液体燃料の微粒化が悪化する懸念がある。
この不具合を回避するために、この実施例4では、ニードル装着筒62の下端に閉塞壁63を設けている。そして、ニードル本体61にニードル装着筒62を装着することで、径方向連通路16の正面に、噴出孔17を閉塞する閉塞壁63が配置されるように設けられている。
【0112】
このように、径方向連通路16の正面に閉塞壁63を設けることにより、径方向連通路16の正面の噴出孔17を通過した粒径の大きい液体燃料がそのまま加圧空気と混合して微粒化が悪化する不具合を回避することができる。
具体的には、径方向連通路16を通過した液体燃料が閉塞壁63に衝突することで、液体燃料が左右に分散して、液体燃料の微粒化を達成でき、微粒化した液体燃料が加圧空気と混合することで、燃料と加圧空気との混合性を向上できる。
その結果、第2噴射孔7から噴射される液体燃料の微粒化を促進することができる。
【0113】
[実施例5]
実施例5を、図5を参照して説明する。
実施例4では、図4(b)に示すように、径方向連通路16に対して閉塞壁63を垂直に設ける例を示した。
これに対し、この実施例5は、図5(b)に示すように、各径方向連通路16に対して各閉塞壁63を同方向に傾斜して設けるものである。
【0114】
具体的に、この実施例5の閉塞壁63は、上記実施例4と同様、ニードル装着筒62の下端に設けられるものであり、プレス加工等により、各閉塞壁63が同方向へ傾斜して設けられている。そして、ニードル本体61にニードル装着筒62を装着することで、径方向連通路16の正面に、傾斜した閉塞壁63が配置されるものである。
【0115】
これにより、径方向連通路16から外径方向へ向かって流れた液体燃料が傾斜した閉塞壁63に衝突することで、衝突した燃料の流れの向きをコントロールして、液体燃料に旋回流を生じさせることができる。その結果、旋回する燃料(衝突により微粒化された燃料)と加圧空気との混合が促進される。
即ち、上記実施例4の効果に加え、旋回する燃料と加圧空気との混合が促進されることで、第2噴射孔7から噴射される液体燃料の微粒化を促進することができる。
【0116】
[実施例6]
実施例6を、図6を参照して説明する。
この実施例6は、噴出孔17の全てあるいは一部に、噴出孔17を通過する燃料に旋回流を生じさせる多数のフィン(実施例では、噴孔フィン64と称す)を配置するものである。
【0117】
具体的に、この実施例6の噴孔フィン64は、ニードル装着筒62の下端に設けられるものであり、プレス加工等により形成されている。そして、ニードル本体61にニードル装着筒62を装着することで、スリット形状を成す噴出孔17の全周に亘って噴孔フィン64が配置されるものである。なお、この実施例では、噴出孔17の全周に噴孔フィン64を配置する例を示すが、上述したように、噴出孔17の一部(径方向連通路16の正面を含むことが好ましい)に噴孔フィン64を配置するものであっても良い。
【0118】
これにより、噴出孔17を通過する液体燃料に、旋回流を生じさせることができ、旋回する燃料と加圧空気の混合性を促進させることができる。その結果、第2噴射孔7から噴射される液体燃料の微粒化を向上させることができる。
【0119】
[実施例7]
実施例7を、図7を参照して説明する。
この実施例7は、燃料溜15の内部に、燃料溜15を通過する燃料に旋回流を生じさせる多数のフィン(実施例では内部フィン65と称す)を配置するものである。
この実施例7の内部フィン65は、薄い金属板をプレス加工したものであり、ニードル本体61とニードル装着筒62の間に装着される。なお、内部フィン65は、別体に設けられるものに限定されるものではなく、ニードル装着筒62と一体に設けても良いし、ニードル本体61と一体に設けても良い。
【0120】
燃料溜15の内部は、内部フィン65が配置される空間と、内部フィン65が配置されない空間とが存在する。
内部フィン65が配置される空間は、噴出孔17に通じる下部空間であり、内部フィン65によって流れの向きが変更された液体燃料を噴出孔17を介して外部に導く。
内部フィン65が配置されない空間は、径方向連通路16に連通する環状の上部空間であり、径方向連通路16から供給される燃料を、燃料溜15の全周へ導くものである。
【0121】
このように、燃料溜15の内部に配置した内部フィン65によって、燃料溜15を通過する液体燃料に旋回流を生じさせることができる。即ち、噴出孔17を通過する燃料に旋回流を生じさせることができ、旋回する燃料と加圧空気の混合性を促進させることができる。その結果、第2噴射孔7から噴射される液体燃料の微粒化を向上させることができる。
なお、この実施例7は、上述した実施例1〜実施例6のいずれとも組み合わせることができるものである。
【0122】
[実施例8]
実施例8を、図8を参照して説明する。
この実施例8の径方向連通路16は、第2ニードル9の軸芯に対して偏心した偏心孔66として設けられるものである。
具体的に、ニードル本体61に形成される複数の径方向連通路16が、軸方向から見て同方向に偏心して配置されるものであり、燃料溜15の内部に燃料による周方向の旋回流を生じさせるものである。
【0123】
このように、偏心して設けた複数の径方向連通路16(偏心孔66)によって、燃料溜15の内部に液体燃料による旋回流を生じさせることにより、噴出孔17を通過する燃料に旋回流を生じさせることができ、旋回する燃料と加圧空気の混合性を促進させることができる。その結果、第2噴射孔7から噴射される液体燃料の微粒化を向上させることができる。
また、燃料溜15の内部に液体燃料の旋回流が生じることで、燃料溜15の広範囲に液体燃料を分散供給することができ、噴出孔17への燃料の供給ムラが抑えられる。その結果、第2ニードル9の周方向に燃料の濃淡が発生する不具合を回避することができる。
なお、この実施例8は、上述した実施例1〜実施例7のいずれとも組み合わせることができるものである。
【0124】
[実施例9]
実施例9を、図9を参照して説明する。
この実施例9の径方向連通路16は、第2ニードル9の径方向に対して斜めに傾斜した傾斜孔67として設けられるものである。
具体的に、この実施例9における複数の径方向連通路16は、燃料溜15の内部に強い旋回流を生じさせるように、同方向へ湾曲して設けられている。
【0125】
これにより、上記実施例8と同様、燃料溜15の内部に液体燃料による旋回流を生じさせて、噴出孔17を通過する燃料に旋回流を生じさせることができ、旋回する燃料と加圧空気の混合性を促進させることができる。その結果、第2噴射孔7から噴射される液体燃料の微粒化を向上させることができる。
また、燃料溜15の内部に液体燃料の旋回流が生じることで、燃料溜15の広範囲に液体燃料を分散供給することができ、噴出孔17への燃料の供給ムラが抑えられる。その結果、第2ニードル9の周方向に燃料の濃淡が発生する不具合を回避することができる。
なお、この実施例9は、上述した実施例1〜実施例8のいずれとも組み合わせることができるものである。
【0126】
[実施例10]
実施例10を、図10を参照して説明する。
この実施例10は、径方向連通路16の全部または一部に、第2ニードル9の内径側から外径側に向かって通路面積が拡大するテーパ拡張部68を設けたものである。
具体的に、ニードル本体61に形成される全ての径方向連通路16は、内径端部(中心孔14との開口部)から外径端部(燃料溜15との開口部)に至って通路面積が連続的に拡大するテーパ拡張部68として設けられている。
【0127】
これにより、径方向連通路16内を燃料が流れる際に、テーパ拡張部68の壁面に押し付けられた液体燃料が、液膜状になってテーパ拡張部68の拡径に沿って広がることで、液膜状の燃料の剪断面積が大きくなって、周囲の空気が液体燃料に混合する。このようにして、テーパ拡張部68において燃料と空気の混合が促進される。即ち、径方向連通路16内を燃料が流れる際に、燃料と空気の混合が促進され、結果的に第2噴射孔7から噴射される液体燃料の微粒化を向上させることができる。
なお、この実施例10は、上述した実施例1〜実施例9のいずれとも組み合わせることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0128】
上記の実施例では、噴出孔17の一例としてスリットを用いる例を示したが、多数の穴(燃料溜15と外部を連通する貫通穴)に代えても良い。即ち、スリットに代えて多数の穴を環状に配置しても、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0129】
上記の実施例では、第2可動コア46を加圧空気が通過せず、第2ニードル9の中心孔14の内部と横穴49を通って加圧空気が第2可動コア46の下側に導かれる例を示したが、加圧空気の供給経路は限定されるものではなく、第2可動コア46の内部または外周部に上方の加圧空気を下方へ導く流路や溝部を形成し、第2可動コア46を介して加圧空気を下方のエア流路11に導くものであっても良い。
【0130】
上記の実施例では、噴出孔17の燃料出口をベンチュリー部12に連通させる例を示したが、ベンチュリー部12を通過して高速に流れる加圧空気に噴出孔17の燃料出口を開口させても良い。即ち、噴出孔17の燃料出口はベンチュリー部12に限定されるものではない。
【0131】
上記の実施例では、ベンチュリー形成部13を第2ニードル9に設けたが、第2ノズルボディ8に設けても良い。具体的には、第2ノズルボディ8の内周面に内側へ膨出するベンチュリー形成部13を設けることで、エア流路11の途中にベンチュリー部12を設けても良い。
【0132】
上記の実施例では、エアブラストインジェクタを直噴エンジンに用いる例を示したが、気筒内に吸気を供給する吸気通路(シリンダヘッドに形成された吸気ポート等)の内部に燃料を噴射するインジェクタに、本発明が適用されたエアブラストインジェクタを用いても良い。
【0133】
上記の実施例では、第1インジェクタ1の駆動手段として電磁アクチュエータ(第1電磁駆動部6)を用いる例を示したが、第1インジェクタ1の駆動手段は電磁アクチュエータに限定されるものではなく、ピエゾアクチュエータなど他の駆動手段を用いても良い。同様に、上記の実施例では、第2インジェクタ2の駆動手段として電磁アクチュエータ(第2電磁駆動部10)を用いる例を示したが、第2インジェクタ2の駆動手段は電磁アクチュエータに限定されるものではなく、ピエゾアクチュエータなど他の駆動手段を用いても良い。
【符号の説明】
【0134】
1 第1インジェクタ
2 第2インジェクタ
3 第1噴射孔
4 第1ノズルボディ
5 第1ニードル
7 第2噴射孔
8 第2ノズルボディ
9 第2ニードル
11 エア流路
12 ベンチュリー部
13 ベンチュリー形成部
14 中心孔
15 燃料溜
16 径方向連通路
17 噴出孔
51 弁傘
61 ニードル本体
62 ニードル装着筒
63 閉塞壁
64 噴孔フィン(噴出孔に設けられるフィン)
65 内部フィン(燃料溜の内部に配置されるフィン)
66 偏心孔
67 傾斜孔
68 テーパ拡張部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部より加圧供給された液体燃料を噴射する第1噴射孔(3)を有する第1ノズルボディ(4)、この第1ノズルボディ(4)内に収容されて前記第1噴射孔(3)の開閉を行なう第1ニードル(5)を備える第1インジェクタ(1)と、
外部より加圧供給された空気とともに前記第1インジェクタ(1)から噴射された液体燃料を噴射する第2噴射孔(7)、この第2噴射孔(7)の開閉を行なう第2ニードル(9)、この第2ニードル(9)を収容する第2ノズルボディ(8)を備える第2インジェクタ(2)と、
を具備するエアブラストインジェクタにおいて、
前記第2ニードル(9)は、
当該第2ニードル(9)の中心部に形成されて外部から燃料の供給を受ける中心孔(14)と、
前記第2ニードル(9)の外周部において環状形成された燃料溜(15)と、
前記中心孔(14)から前記燃料溜(15)へ燃料を導く径方向連通路(16)と、
前記第2ニードル(9)の周囲を通過する加圧空気に前記燃料溜(15)の燃料を導く噴出孔(17)と、
を備えることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記径方向連通路(16)の通路面積の総和をA、
前記噴出孔(17)の通路面積の総和をBとした場合、
A≧B
の関係に設けられることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記第2ニードル(9)は、前記中心孔(14)および前記径方向連通路(16)が形成されるニードル本体(61)と、このニードル本体(61)の外周に全周に亘って装着されるニードル装着筒(62)とを備え、
前記ニードル本体(61)と前記ニードル装着筒(62)との径方向間に、環状空間による前記燃料溜(15)が形成されるとともに
前記ニードル本体(61)と前記ニードル装着筒(62)との軸方向間に、スリットによる前記噴出孔(17)が形成されることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記第2ニードル(9)は、前記中心孔(14)が形成される上部ニードルと、前記第2噴射孔(7)の開閉を行なう弁傘(51)が形成される下部ニードルとを軸方向に接合して設けられ、
前記上部ニードルと前記下部ニードルとの径方向間に、環状空間による前記燃料溜(15)が形成されるとともに
前記上部ニードルと前記下部ニードルとの軸方向間に、スリットによる前記噴出孔(17)が形成されることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記噴出孔(17)を成すスリットは、周方向において一定幅に設けられることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記噴出孔(17)を成すスリットは、
前記径方向連通路(16)の燃料出口に近い側のスリット幅が小さく、
前記径方向連通路(16)の燃料出口から離れるに従ってスリット幅が大きく設けられることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のエアブラストインジェクタにおいて、
このエアブラストインジェクタは、前記第2ニードル(9)と前記第2ノズルボディ(8)との間に、前記第2噴射孔(7)の開弁時に加圧空気が前記第2噴射孔(7)に向かって流れるエア流路(11)を備え、
このエア流路(11)の通路途中には、前記第2噴射孔(7)の開弁時に前記第2噴射孔(7)に向かって流れる加圧空気を絞るベンチュリー部(12)が設けられ、
前記噴出孔(17)における径方向外側の燃料出口は、前記ベンチュリー部(12)に連通し、当該ベンチュリー部(12)を通過する加圧空気によって前記燃料溜(15)の燃料が吸い出されることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記噴出孔(17)は、前記燃料溜(15)の全周に亘って設けられていることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載のエアブラストインジェクタにおいて、
このエアブラストインジェクタは、前記径方向連通路(16)の正面に位置する前記噴出孔(17)を閉塞する閉塞壁(63)を備えることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項10】
請求項9に記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記閉塞壁(63)は、前記径方向連通路(16)に対して傾斜して設けられることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項11】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記噴出孔(17)の全てあるいは一部には、当該噴出孔(17)を通過する燃料に旋回流を生じさせるフィン(64)が配置されることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記燃料溜(15)の内部には、当該燃料溜(15)を通過する燃料に旋回流を生じさせるフィン(65)が配置されることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項13】
請求項1〜請求項12のいずれかに記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記径方向連通路(16)は、前記第2ニードル(9)の軸芯に対して偏心配置される偏心孔(66)であることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれかに記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記径方向連通路(16)は、前記第2ニードル(9)の径方向に対して斜めに配置される傾斜孔(67)であることを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項15】
請求項1〜請求項14のいずれかに記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記径方向連通路(16)の全部または一部には、前記第2ニードル(9)の内径側から外径側に向かって通路面積が拡大するテーパ拡張部(68)が設けられることを特徴とするエアブラストインジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−47167(P2012−47167A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234928(P2010−234928)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】