説明

エアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置、エアレーション装置の運転方法

【課題】散気膜のスリットにおいて発生した析出物を除去することができるエアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置、エアレーション装置の運転方法を提供する。
【解決手段】被処理水である希釈使用済海水中に浸漬され、希釈使用済海水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、空気122を吐出手段であるブロア(本実施例では4台)121A〜121Dにより供給する空気供給ラインL5と、前記空気供給ラインL5に介装された圧力計125と、前記空気が供給されるスリットを有する散気膜11を備えたエアレーションノズル123とを具備し、前記圧力計125の計測により空気供給圧力が所定の閾値を超えた場合、吐出手段による空気の供給の一時的な停止を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭焚き、原油焚き及び重油焚き等の発電プラントに適用される排煙脱硫装置の排水処理に係り、特に、海水法を用いて脱硫する排煙脱硫装置の排水(使用済海水)をエアレーションにより脱炭酸(暴気)するエアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置、エアレーション装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭や原油等を燃料とする発電プラントにおいて、ボイラから排出される燃焼排気ガス(以下、「排ガス」と呼ぶ)は、該排ガス中に含まれている二酸化硫黄(SO2)等の硫黄酸化物(SOx)を除去してから大気に放出される。このような脱硫処理を施す排煙脱硫装置の脱硫方式としては、石灰石石膏法、スプレードライヤー法及び海水法等が知られている。
【0003】
このうち、海水法を採用した排煙脱硫装置(以下、「海水排煙脱硫装置」と呼ぶ)は、吸収剤として海水を使用する脱硫方式である。この方式では、たとえば略円筒のような筒形状を縦置きにした脱硫塔(吸収塔)の内部に海水及びボイラ排ガスを供給することにより、海水を吸収液として湿式ベースの気液接触を生じさせて硫黄酸化物を除去している。
上述した脱硫塔内で吸収剤として使用した脱硫後の海水(使用済海水)は、たとえば、上部が開放された長い水路(Seawater Oxidation Treatment System;SOTS)内を流れ排水される際、水路の底面に設置したエアレーション装置から微細気泡を流出させるエアレーションによって脱炭酸(爆気)される(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−055779号公報
【特許文献2】特開2009−028570号公報
【特許文献3】特開2009−028572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エアレーション装置で用いるエアレーションノズルは、基材の周囲を覆うゴム製等の散気膜に小さなスリットが多数設けられたものである。一般的には「ディフューザノズル」と呼ばれている。このようなエアレーションノズルは、供給される空気の圧力により、スリットから略均等な大きさの微細気泡を多数流出させることができる。
【0006】
このようなエアレーションノズルを用いて、海水中でエアレーションを連続して行うと、散気膜のスリット壁面やスリット開口近傍に、海水中の硫酸カルシウム等の塩類が析出し、スリットの間隙が狭くなったり、スリットを塞いだりする結果、散気膜の圧力損失を増大させ、散気装置に空気を供給するブロワ、コンプレッサ等の吐出手段の吐出圧高が発生し、ブロワ、コンプレッサ等に負荷がかかるという、問題がある。
【0007】
析出物の発生は、散気膜の外側に位置する海水が、スリットから散気膜の内側へ浸み込み、常時スリットを通過する空気に、長時間に亙って触れて乾燥(海水の濃縮)が促進され、析出に至っている、と推定される。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、散気膜のスリットにおいて発生した析出物を除去することができるエアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置、エアレーション装置の運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、前記空気が供給されるスリットを有する散気膜を備えたエアレーションノズルとを具備し、散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、散気膜に供給する空気の供給を停止又は減少させることを特徴とするエアレーション装置にある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、吐出手段による空気の供給の一時的な停止を行うことを特徴とするエアレーション装置にある。
【0011】
第3の発明は、第1の発明において、散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、現在稼動している複数の吐出手段の一部の空気の供給の一時的な停止を行うことを特徴とするエアレーション装置にある。
【0012】
第4の発明は、第1の発明において、散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、現在稼動している複数の吐出手段に加えさらに別の吐出手段により空気を一時的に供給し、その後一時的に供給した空気の停止を行うことを特徴とするエアレーション装置にある。
【0013】
第5の発明は、第1の発明において、散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、空気供給配管から分岐した分岐ラインに介装された調整弁を操作し、空気の供給の一時的な排出を行うことを特徴とするエアレーション装置にある。
【0014】
第6の発明は、第5の発明において、前記一時的な空気の排出先を、被処理水中に行うことを特徴とするエアレーション装置にある。
【0015】
第7の発明は、第1の発明において、空気供給ラインから複数の分岐ラインを介して散気膜に空気を供給するに際し、散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、散気膜に供給する複数の分岐ラインに介装したバルブの閉塞及び開放の操作を順次行うことを特徴とするエアレーション装置にある。
【0016】
第8の発明は、第1乃至7のいずれか一つの発明において、散気膜に対する圧力損失の上昇有無の判断は、供給空気の圧力若しくは空気量を計測する手段、又は吐出手段の電流値又は回転数を計測する手段の少なくとも一つにより行うことを特徴とするエアレーション装置にある。
【0017】
第9の発明は、第1乃至8のいずれか一つの発明において、前記エアレーションノズルは、内部に空気が導入される支持体を覆う散気膜と、前記散気膜に多数設けられたスリットとからなり、スリットから微細気泡を流出させることを特徴とするエアレーション装置にある。
【0018】
第10の発明は、第1乃至8のいずれか一つの発明において、前記エアレーションノズルは、内部に空気が導入される円筒状の基部側支持体と、基部側支持体よりも径が縮小され、仕切板を介して軸方向に設けられる中空筒体と、該中空筒体の他端に設けられ、前記基部側支持体と略同一径の端部支持体と、前記基部側支持体と前記端部支持体を覆いつつ両端で締結されるチューブ状の散気膜と、前記散気膜に多数設けられたスリットと、前記基部側支持体の側面に設けられ、散気膜の内周面と支持体外周面との間の加圧空間へ導入された空気を仕切板の手前側で流出させる空気出口とを具備することを特徴とするエアレーション装置にある。
【0019】
第11の発明は、第1乃至8のいずれか一つの発明において、前記エアレーションノズルは、内部に空気が導入される円筒状の基部側支持体と、基部側支持体と略同一径の端部支持体と、基部側支持体と端部支持体を覆いつつ締結されるチューブ状の散気膜と、前記散気膜に多数設けられたスリットとを具備することを特徴とするエアレーション装置にある。
【0020】
第12の発明は、海水を吸収剤として使用する脱硫塔と、前記脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路と、前記水路内に設置され、前記使用済海水中に微細気泡を発生して脱炭酸を行う第1乃至11のいずれか一つのエアレーション装置とを具備することを特徴とする海水排煙脱硫装置にある。
【0021】
第13の発明は、被処理水中に浸漬され、被処理水中にスリットから微細気泡を発生させるエアレーション装置を用い、散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、散気膜に供給する空気の供給を停止又は減少させることを特徴とするエアレーション装置の運転方法にある。
【0022】
第14の発明は、第13の発明において、散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、吐出手段による空気の供給の一時的な停止を行う指令を行い、微細気泡を発生するスリットの目詰まりを防止することを特徴とするエアレーション装置の運転方法にある。
【0023】
第15の発明は、第13の発明において、散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、現在稼動している複数の吐出手段の一部の空気の供給の一時的な停止を行うことを特徴とするエアレーション装置の運転方法にある。
【0024】
第16の発明は、第13の発明において、散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、現在稼動している複数の吐出手段に加えさらに別の吐出手段により空気を一時的に供給し、その後一時的に供給した空気の停止を行うことを特徴とするエアレーション装置の運転方法にある。
【0025】
第17の発明は、第13の発明において、散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、空気供給配管から分岐した分岐ラインに介装された調整弁を操作し、空気の供給の一時的な排出を行うことを特徴とするエアレーション装置の運転方法にある。
【0026】
第18の発明は、第13の発明において、空気供給ラインから複数の分岐ラインを介して散気膜に空気を供給するに際し、散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、散気膜に供給する複数の分岐ラインに介装したバルブの閉塞及び開放の操作を順次行うことを特徴とするエアレーションの運転方法にある。
【0027】
第19の発明は、第13乃至18のいずれか一つの発明において、散気膜に対する圧力損失の上昇有無の判断は、供給空気の圧力若しくは空気量を計測する手段、又は吐出手段の電流値又は回転数を計測する手段の少なくとも一つにより行うことを特徴とするエアレーション装置の運転方法にある。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、エアレーション装置の散気膜のスリットにおいて析出物の発生があった場合に迅速に対応して、これを除去することができ、散気膜の圧力損失を減少させ、ブロワ、コンプレッサ等の負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、実施例1に係る海水排煙脱硫装置の概略図である。
【図2−1】図2−1は、エアレーションノズルの平面図である。
【図2−2】図2−2は、エアレーションノズルの正面図である。
【図3−1】図3−1は、エアレーションノズルの内部構造概略図である。
【図3−2】図3−2は、エアレーションノズルの膨張状態を示す内部構造概略図である。
【図4−1】図4−1は、実施例1に係るエアレーション装置の概略図である。
【図4−2】図4−2は、実施例1に係る他のエアレーション装置の概略図である。
【図5】図5は、対策Iの運転時間とブロア操作との関係(上段)、及び空気量との関係(下段)を示す図である。
【図6】図6は、対策IIの運転時間とブロア操作との関係(上段)、及び空気量との関係(下段)を示す図である。
【図7】図7は、実施例1に係る他のエアレーションノズルの内部構造概略図である。
【図8】図8は、実施例1に係る他のエアレーションノズルの内部構造概略図である。
【図9】図9は、実施例1に係るディスク状のエアレーションノズルの概略図である。
【図10−1】図10−1は、実施例2に係るエアレーション装置の概略図である。
【図10−2】図10−2は、実施例2に係る他のエアレーション装置の概略図である。
【図11−1】図11−1は、実施例2に係る他のエアレーション装置の概略図である。
【図11−2】図11−2は、実施例2に係る他のエアレーション装置の概略図である。
【図12−1】図12−1は、実施例3に係るエアレーション装置の概略図である。
【図12−2】図12−2は、実施例3に係る他のエアレーション装置の概略図である。
【図13−1】図13−1は、散気膜のスリットにおける、空気(飽和度の低い湿り空気)の流出と海水の浸入、および濃縮海水の状況を示す図である。
【図13−2】図13−2は、散気膜のスリットにおける、空気の流出と海水の浸入、および濃縮海水の状況を示す図である。
【図13−3】図13−3は、散気膜のスリットにおける、空気の流出と海水の浸入、濃縮海水及び析出物の状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0031】
本発明による実施例に係るエアレーション装置及び海水排煙脱硫装置について、図面を参照して説明する。図1は、本実施例に係る海水排煙脱硫装置の概略図である。
図1に示すように、海水排煙脱硫装置100は、排ガス101と海水103とを気液接触してSO2を亜硫酸(H2SO3)へ脱硫反応させる排煙脱硫吸収塔102と、排煙脱硫吸収塔102の下側に設けられ、硫黄分を含んだ使用済海水103Aを希釈用の海水103と希釈混合する希釈混合槽105と、希釈混合槽105の下流側に設けられ、希釈使用済海水103Bの水質回復処理を行う酸化槽106とからなるものである。
【0032】
海水排煙脱硫装置100では、排煙脱硫吸収塔102において海水供給ラインL1を介して供給される海水103の内の一部の吸収用の海水103を排ガス101と気液接触させて、排ガス101中のSO2を海水103に吸収させる。そして、排煙脱硫吸収塔102で硫黄分を吸収した使用済海水103Aは、排煙脱硫吸収塔102の下部に設けられている希釈混合槽105に供給される希釈用の海水103と混合させる。そして、希釈用の海水103と混合希釈された希釈使用済海水103Bは、希釈混合槽105の下流側に設けられている酸化槽106に送給され、酸化用空気ブロア121より供給された空気122をエアレーションノズル123により供給し、水質回復させた後、排水124として海へ放流するようにしている。
図1中、符号102aは海水を上方に噴出させる液柱用の噴霧ノズル、120はエアレーション装置、122aは気泡、L1は海水供給ライン、L2は希釈海水供給ライン、L3は脱硫海水供給ライン、L4は排ガス供給ライン、L5は空気供給ラインである。
【0033】
このエアレーションノズル123の構成を図2−1、図2−2及び図3−1を参照して説明する。
図2−1は、エアレーションノズルの平面図、図2−2は、エアレーションノズルの正面図、図3−1はエアレーションノズルの内部構造概略図である。
図2−1、図2−2に示すように、エアレーションノズル123は、基材の周囲を覆う散気膜11に小さなスリット12が多数設けられたものであり、一般的には「ディフューザノズル」と呼ばれている。このようなエアレーションノズル123は、空気供給ラインL5から供給される空気122の圧力により散気膜11が膨張すると、スリット12が開いて略均等な大きさの微細気泡を多数流出させることができる。ここで、散気膜11としては、例えばゴム製等の可撓性を有するものが好ましい。
【0034】
図2−1、図2−2に示すように、エアレーションノズル123は、空気供給ラインL5から分岐した複数(本実施例では8本)の枝管(図示せず)に設けられたヘッダ15に対して、フランジ16を介して取り付けられている。なお、希釈使用済海水103B中に設置される枝管及びヘッダ15には、耐食性を考慮して樹脂製パイプ等が使用されている。
【0035】
このエアレーションノズル123の具体的な構成について図3−1を参照して説明する。図3−1に示すように、本実施例に係るエアレーションノズル123Aは、希釈使用済海水103Bに対する耐食性を考慮して樹脂製とした略円筒形状の支持体20を用い、この支持体20の外周を覆うようにして多数のスリット12が形成されたゴム製の散気膜11を被せた後、左右両端部をワイヤやバンド等の締結部材22により固定した構成とされる。
【0036】
また、上述したスリット12は、圧力を受けない通常の状態においては閉じている。なお、海水排煙脱硫装置100においては、常時空気122を供給しているので、常にスリット12は開放状態である。
【0037】
ここで、支持体20の一端20aは、ヘッダ15に取り付けた状態で空気122の導入を可能とすると共に、その他端20bは、海水103が導入可能に開口されている。
このため、一端20a側は、ヘッダ15及びフランジ16を貫通する空気導入口20cを介してヘッダ15内部と連通している。そして、支持体20の内部は、支持体20の軸方向の途中に設けた仕切板20dにより分割され、この仕切板20dにより空気の流通が阻止されている。さらに、この仕切板20dよりヘッダ15側となる支持体20の側面には、散気膜11の内周面と支持体外周面との間に、すなわち、散気膜11を加圧して膨張させる加圧空間11aへ空気122を流出させるための空気出口20e、20fが開口している。従って、ヘッダ15からエアレーションノズル123に流入する空気122は、図中に矢印で示すように、空気導入口20cから支持体20の内部へ流入した後、側面の空気出口20e、20fから加圧空間11aへ流出することとなる。
なお、締結部材22は、散気膜11を支持体20に固定するとともに、空気出口20e、20fから流入する空気が両端部から漏出することを防止するものである。
【0038】
このように構成されたエアレーションノズル123Aにおいて、ヘッダ15から空気導入口20cを通って流入する空気122は、空気出口20e、20fを通って加圧空間11aへ流出することにより、最初はスリット12が閉じているため加圧空間11a内に溜まって内圧を上昇させる。内圧が上昇された結果、散気膜11は加圧空間11a内の圧力上昇を受けて膨張し、散気膜11に形成されているスリット12が開くことによって空気122の微細気泡を希釈使用済海水103B中に流出させる。
このような微細気泡の発生は、枝管L5A〜5H及びヘッダ15を介して空気供給を受ける全てのエアレーションノズル123A〜Cで実施される(図3−1、7、8参照)。
【0039】
以下、本実施例に係るエアレーション装置について説明する。
本発明では、散気膜11に形成されたスリット12に析出物の発生があった場合に、これを迅速に除去する手段を提供する。
本発明では、散気膜11のスリットに付着した析出物により起因する圧力損失の上昇があった場合に、散気膜に対して供給する空気の供給量を一時的に停止又は低減させることにより、圧力損失の上昇により膨張した散気膜を収縮させ、その収縮により付着した析出物を圧壊させ、供給される空気により散気膜の外部に放出させるようにしている。
【0040】
図4−1は、本実施例に係るエアレーション装置の概略図である。図4−2は、本実施例に係る他のエアレーション装置の概略図である。
図4−1に示すように、本実施例に係るエアレーション装置120Aは、被処理水である希釈使用済海水(図示せず)中に浸漬され、希釈使用済海水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、空気122を吐出手段であるブロア(本実施例では4台)121A〜121Dにより供給する空気供給ラインL5と、前記空気供給ラインL5に介装された圧力計125と、前記空気が供給されるスリットを有する散気膜11を備えたエアレーションノズル123Aとを具備し、前記圧力計125の計測により空気供給圧力が所定の閾値を超えた場合、吐出手段による空気の供給の一時的な停止を行うものである。
また、空気供給ラインL5には、2基の冷却器131A、131Bと、2基のフィルタ132A、132Bとが各々設けられている。これにより、空気供給ブロア(以下「ブロア」という)121A〜121Dにより圧縮された空気は冷却され、次いで濾過されている。
なお、ブロアが4基あるのは、通常は2〜3基で運転しており、その内の1〜2基は予備としている。また、冷却器131A、131Bと、フィルタ132A、132Bとが各々2基あるのは、連続して運転する必要から、通常は片方のみで運転し、他方はメンテナンス用としている。
【0041】
ここで、海水の塩分濃度は3.4%程度であり、96.6%の水に3.4%の塩類が溶けている。この塩類は、概ね、塩化ナトリウムが77.9%、塩化マグネシウムが9.6%、硫酸マグネシウムが6.1%、硫酸カルシウムが4.0%、塩化カリウムが2.1%、その他0.2%の構成となっている。
【0042】
この塩のなかで、海水の濃縮(海水の乾燥)につれて、硫酸カルシウムが最初に析出する塩であり、その析出の閾値が海水の塩分濃度で約14%である。
【0043】
ここで、スリット12に析出物が析出するメカニズムを図13−1〜図13−3を用いて説明する。
図13−1は、散気膜のスリットにおける、空気(飽和度の低い湿り空気)の流出と海水の浸入、および濃縮海水の状況を示す図である。図13−2は、散気膜のスリットにおける、空気の流出と海水の浸入、および濃縮海水の状況を示す図である。図13−3は、散気膜のスリットにおける、空気の流出と海水の浸入、濃縮海水及び析出物の状況を示す図である。
ここで、本発明において、スリット12とは、散気膜11に形成される切れ込みをいい、スリット12の間隙は空気が排出される通路となる。
この通路を形成するスリット壁面12aは、海水103が接触しているが、空気122の導入によって乾燥・濃縮され、濃縮海水103aとなり、その後スリット壁面に析出物103bが析出され、スリットの通路を閉塞するものとなる。
【0044】
図13−1は、空気122の相対湿度が低いので、海水が乾燥して海水の塩分濃縮が徐々に増加し、濃縮海水103aが形勢された状況を示している。但し、海水の濃縮が始まっても海水の塩分濃度が概ね14%以下では、硫酸カルシウム等の析出はない。
【0045】
図13−2は、濃縮海水103aの一部において、局所的に海水の塩分濃度が14%を超えた部分に析出物103bが発生している状態である。この状態では析出物103bが僅かであるので、スリット12を空気が通過する際の圧力損失が僅かに上昇するものの、空気122は通過可能である。
【0046】
これに対し、図13−3は、濃縮海水103aの濃縮が進行すると、析出物103bによる閉塞(プラッキング)状態となり、圧力損失が大きくなる状態である。なお、このような状態でも空気122の通路は残っているものの吐出手段にはかなりの負荷がかかるものとなる。
【0047】
本実施例では、このスリット12への析出物103bが発生した場合に、これを迅速に除去して、通常の状態に復帰させるために、圧力計125により空気122の供給圧力を監視し、この圧力計125において、所定の閾値を超えた場合に、制御装置126により指令を発して、ブロア121A〜121Dを操作し、空気122の供給の一時的な停止を行うようにしている。また、本実施例のように制御装置126を用いず、圧力変動の変化に応じて作業員による手動制御を行うようにしてもよい。
ここで、本実施例において散気膜に対する圧力損失の上昇の判断は、供給空気の圧力を圧力計により計測することで、多数ある散気膜の個々における圧力損失を間接的に把握することができるからである。
なお、散気膜の内側と外側との圧力差を計測して個別に圧力損失の上昇の有無を判断するようにしてもよい。
【0048】
ここで、ブロア121A〜121Dの運転は、上流側の脱硫条件により空気の供給量が規定されており、必要量の空気を減らしたくない場合と、多少の間空気を減らしても良い場合とがある。
そこで、本発明は、ブロアの運転状況に応じて適切な対応が可能なようにしている。
【0049】
<対策I>
本実施例の対策Iでは、複数の吐出手段を運転している場合、多少の間空気を減らしても良い場合の操作について説明する。
先ず、4台のブロア121A〜121Dの内、2台のブロア121A、121Bを運転している場合についてのスリットに析出物が発生した場合の対処について説明する。
圧力計125の計測により空気供給圧力が所定の閾値を超えた場合、制御装置126により、現在稼動している2台の吐出手段121A、121Bの内の一台のブロア121Bを停止する指令を行う。これにより、空気の供給を一時的に停止させる(ブロア121BがOFF)。この結果、圧力上昇により膨張していた例えばゴム製の散気膜11は、空気量の減少により、その直径が収縮し、スリット12に付着していた析出物103bが圧壊し、供給される空気により散気膜11の外部に放出される。
【0050】
ここで、図3−2はエアレーションノズルの膨張状態を示す内部構造概略図である。
散気膜11のスリット12に付着物が付着すると、散気膜の圧力損失が上昇し、散気膜12が膨らむ。図3−2に示すように、スリット12に付着物が形成されると、圧力損失が上昇して散気膜11の膨張がさらに助長され、その径が通常の散気状態の膨張状態の直径D0からD1のさらに膨張した状態に増大する。
このさらに膨張した状態で、比較的瞬間的に空気量を減らすと、散気膜11のゴムが急激に収縮する。すなわち、散気膜11の直径がD1の状態からD2の状態となる。
この収縮によりスリット12に付着していた付着物が崩れる。この場合においても、スリット12からは空気の放出が継続されているので、崩れた付着物が散気膜11の外に放出されることとなる。付着物が散気膜11の外に放出されると散気膜の直径は、ほぼD0に戻る。
【0051】
この結果、析出物103bの消滅により、散気膜の圧力損失が低減するので、停止していたブロア121Bの運転を再開する。停止の時間は圧力計125により監視することができるが、凡そ数十秒の1台の運転となる。
運転再開には、停止していたブロア121B以外に、他の予備のブロア121C,121Dを運転するようにしてもよい。これによりブロアの使いまわしが可能となり、メンテナンス上好ましいものとなる。
【0052】
この対策Iでは、例えば数十秒ブロア121Bを停止し、空気が供給されなくとも、停止中においてエアレーション性能に影響が無い場合に可能となる。
【0053】
図5は、対策Iの運転時間とブロア操作との関係(上段)、及び空気量との関係(下段)を示す図である。
図5の上段は、ブロアのON、OFFについての操作図であり、図5の下段は供給空気量を示す図である。
図5に示すように、2台のブロア121A、121Bを運転している場合、ブロア121Aの運転は継続(ON)し、他のブロア121Bの運転を停止(OFF)するので、空気量が一時的に半分となる。所定時間経過した後、再び停止前の状態(ブロア121A及びブロア121BをON)に戻すようにしている。
【0054】
<対策II>
本実施例の対策IIでは、複数の吐出手段を運転している場合、一瞬たりとも空気量を減らしたくない場合の操作について説明する。
先ず、4台のブロア121A〜121Dの内、2台のブロア121A、121Bで必要量の空気の供給をしている場合についてのスリットに析出物が発生した場合の対処について説明する。
【0055】
圧力計125での計測により空気供給圧力が所定の閾値を超えた場合、制御装置126により、現在稼動している2台の吐出手段121A、121Bの運転を継続し(ON)し、さらに別の一台のブロア121Cの運転を開始(ON)する指令を行う。これにより、空気の供給が一時的に以前の1.5倍となる。
【0056】
これにより、圧力上昇により膨張していた散気膜11は、さらに膨張するが、その後追加運転したブロア121Cの運転を停止させる(OFF)。この結果、空気量が減少し、散気膜11の直径が急激に収縮し、スリット12に付着していた析出物103bが圧壊し、散気膜11の外部に放出される。
この結果、析出物103bの消滅により、散気膜の圧力損失が低減する。
ブロアの追加運転はブロア121C以外に、他の予備のブロア121Dを運転するようにしてもよい。
また、停止するブロアは、ブロア121C以外に、他の運低しているブロア121A、121Bとしてもよい。これによりブロアの使いまわしが可能となり、メンテナンス上好ましいものとなる。
【0057】
この対策IIでは、数十秒のブロア121Cの追加運転をし、その後運転を停止しているので、必要量の空気量は常に供給されているので、エアレーションの性能を維持できる。
【0058】
図6は、対策IIの運転時間とブロア操作との関係(上段)、及び空気量との関係(下段)を示す図である。
図6の上段は、ブロアのON、OFFについての操作図であり、図6の下段は供給空気量を示す図である。
図6に示すように、2台のブロア121A、121Bを運転している場合、ブロア121A、121Bの運転を継続(ON)し、さらに別のブロア121Cの運転を追加(ON)するので、空気量が一時的に増大し、その後ブロア121Cを停止し、所定時間経過した後、再び追加前の状態(ブロア121CをOFF)に戻すようにしている。
【0059】
このような操作を行うことにより、通常の圧力損失状態に戻るので、継続してエアレーションを実施するようにすればよい。そして、その後、再び圧力損失の上昇がみられた場合には、上述したような操作を実施することで、散気膜に付着する付着物を除き、通常の状態に復帰させるようにすればよい。
【0060】
次に、本実施例に係るエアレーションノズルについて説明する。本発明では、散気膜11に析出した析出物を容易に脱落させるエアレーションノズルを提供する。
図7は実施例に係る他のエアレーションノズルの内部構造概略図である。
図7に示すように、実施例に係る他のエアレーションノズル123Bは、内部に空気が導入される円筒状の基部側支持体20Aと、基部側支持体20Aよりも径が縮小され、仕切板20dを介して軸方向に設けられる中空筒体20gと、該中空筒体20gの他端に設けられ、前記基部側支持体20Aと略同一径の端部支持体20Bと、前記基部側支持体20Aと前記端部支持体20Bとを覆いつつ両端で締結手段22により締結されるチューブ状の散気膜11と、前記散気膜11に多数設けられたスリット(図示せず)と、前記基部側支持体20Aの側面に設けられ、散気膜11の内周面と支持体外周面との間の加圧空間11aへ導入された空気122を仕切板20dの手前側で流出させる空気出口20e、20fとを具備する。従って、ヘッダからエアレーションノズル123Bに流入する空気122は、図中に矢印で示すように、空気導入口20cから基部側支持体20Aの内部へ流入した後、側面の空気出口20e、20fから加圧空間11aへ流出することとなる。
【0061】
そして、空気122の供給が停止された場合には、図7の破線に示すように、散気膜11が収縮する結果、中空筒体20gの径が小さい部分が変形することとなり、散気膜11のスリット12が変形して、析出物の脱落を助長させることとなる。
【0062】
図8は本実施例に係る他のエアレーションノズルの内部構造概略図である。本実施例に係るエアレーションノズル123Cは、内部に空気が導入される円筒状の基部側支持体20Aと、基部側支持体20Aと略同一径の端部支持体20Bと、基部側支持体20Aと端部支持体20Bを覆いつつ締結手段22により締結されるチューブ状の散気膜11と、前記散気膜11に多数設けられたスリット12とを具備するものである。
【0063】
図3−1に示すようなエアレーションノズル123Aは基部側支持体20の周囲を散気膜11が覆うような構造であるのに対し、図8に示すエアレーションノズル123Cは、散気膜11が自立しており、その先端部側でのみ端部支持体20Bにより支えられている。よって、空気122を供給している際には、散気膜11が膨張しているが、空気122の供給を停止すると、その散気膜11が破線に示すように、収縮・変形するので、スリットに付着している析出物の脱落が容易となる。
【0064】
また、チューブ状のエアレーションノズルに対して、ディスク状、プレート状のエアレーションノズルについて説明する。
図9は、本実施例に係るディスク状のエアレーションノズルの概略図である。図9に示すように、ディスク状のエアレーションノズル133は、例えばゴム製の散気膜11の円筒状の支持体134の底部に析出物の収容部135を設けている。また、収容部135にはパンチングメタル136等の仕切りを設け、空気122の導入の流れを阻害しないようにしている。
よって、空気122を供給している際には、散気膜11が膨張しているが、空気122の供給を停止すると、その散気膜11が破線に示すように、収縮・変形するので、スリットに付着している析出物の脱落が容易となる。
【0065】
次に、実施例1では、散気膜11のスリットに付着した析出物により起因する圧力損失の上昇を圧力計125により把握していたが、本発明はこれに限定されず、電流計を用いてブロアの電流値を計測して、圧力損失の上昇を間接的に把握するようにしてもよい。
【0066】
これは、ブロア121A〜121Dは常に所定量の空気を散気膜11に供給するように設定されているので、スリットに析出物が付着することで、空気供給量が低減すると、ブロア121A〜121Dを駆動するために電流値が上昇する。
そこで、図4−2に示す本実施例に係る他のエアレーション装置120Bのように、各ブロア121A〜121Dの電流値を計測する電流計128A〜128Dを設けるようにしている。そして、運転しているブロアの電流値の上昇の有無を電流計128A〜128Dで確認して、電流値の上昇があった場合には、圧力損失の上昇があったと判断し、前述したようなブロアの運転を行うようにすればよい。
【0067】
ここで、空気吐出手段(ブロア)としては、一定の容積を供給する容積式と非容積式があるが、散気膜の圧力損失の上昇を把握する指標として、上記以外に空気供給系統の空気量、あるいは空気吐出手段の回転数を採用してもよい。散気膜の圧力損失の上昇を把握する指標として、空気量を採用する場合は、散気膜の圧力損失が上昇すると空気量が低下することとなるので、供給空気の空気流量を計測し、空気流量の低下の有無を確認して、空気流量の低下があった場合には、圧力損失の上昇があったと判断し、前述したようなブロアの運転を行うようにすればよい。
また、空気流量の低下はブロアの回転数で把握することもできる。
なお、空気吐出手段としては、ブロア以外に例えば送風機、コンプレッサ等の空気を散気膜に供給する手段を用いるようにしてもよい。
【0068】
本実施例では、散気膜に対する圧力損失の上昇有無の判断としては、例えば供給空気の圧力若しくは空気量を計測する手段、又は吐出手段の電流値又は回転数を計測する手段の少なくとも一つにより行うようにしているが、本発明はこれらの限定されるものではない。
【実施例2】
【0069】
次に、実施例2に係るエアレーション装置について説明する。
本実施例では、散気膜11に形成されたスリット12に析出物の発生があった場合に、これを迅速に除去する手段を提供する。
図10−1、図10−2及び図11−1、11−2は、本実施例に係るエアレーション装置の概略図である。なお、実施例1に示すエアレーション装置120Aと同一の構成部材については、同一の符号を付して重複した説明は省略する。
図10−1に示すように、実施例2に係るエアレーション装置120Cは、被処理水である希釈使用済海水(図示せず)中に浸漬され、希釈使用済海水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、空気122を吐出手段であるブロア(本実施例では4台)121A〜121Dにより供給する空気供給ラインL5と、前記空気供給ラインL5に介装された圧力計125と、前記空気122が供給されるスリットを有する散気膜11を備えたエアレーションノズル123とを具備し、前記圧力計125の計測により空気供給圧力が所定の閾値を超えた場合、空気供給ラインL5から分岐した分岐ラインL6に介装された調整弁127を操作し、空気122の供給の一時的な排出を行うものである。
【0070】
本実施例では、複数の吐出手段を運転している場合、ブロアの運転を変更したくない場合について有益である。
先ず、4台のブロア121A〜121Dの内、2台のブロア121A、121Bを運転している場合についてのスリットに析出物が発生した場合の対処について説明する。
圧力計125の計測により空気供給圧力が所定の閾値を超えた場合、制御装置126により、現在稼動している2台の吐出手段121A、121Bの運転は継続する。
圧力計125の計測により閾値を超えた場合、制御装置126により調整弁127を一時的に開放する制御を行い、外部に空気を一部放出する。
【0071】
これにより、圧力上昇により膨張していた散気膜11は、空気量の減少により、その直径が収縮し、スリット12に付着していた析出物103bが圧壊し、散気膜11の外部に放出される。
【0072】
この結果、析出物103bの消滅により、圧力が低減するので、調整弁127を調整して、通常の空気の供給とする。調整弁127の調整は圧力計125により監視することができるが、凡そ数十秒の程度の空気の放出となる。
【0073】
本実施例の対策では、制御装置126からの指示は調整弁127の調整で良いので、ブロアに対する停止起動操作が不要となり、SOTSの制御が簡易となる。なお、制御装置126を用いず、手動により切り替えるようにしてもよい。
【0074】
また、圧力計125を用いる代わりに、図10−2に示す実施例2に係る他のエアレーション装置120Dは、電流計128A〜128Dを設けている。そして、運転しているブロアの電流値の上昇の有無を電流計128A〜128Dで確認して、電流値の上昇があった場合には、圧力損失の上昇があったと判断し、前述したようなブロアの運転を行うようにすればよい。
【0075】
また、図11−1に示す実施例2に係る他のエアレーション装置120Eは、分岐ラインL6の先端側に排出した空気を放出する散気管128を設置している。この散気管128を設置することで、希釈使用済海水(図示せず)中に空気を放出するようにしてもよい。この際のエアレーションノズルは、空気を均一に放出し低圧力損失のものであれば、特に限定されるものではない。
散気管128は、空気孔を有するものであり、エアレーションノズル123(123A〜123C)よりも圧力損失が低いもので、排出空気を直ちに希釈使用済海水中に放出している。
また、調整弁127を開放した空気の排出先の散気管128の設置位置は、エアレーションノズル123の上流側でも下流側でもいずれでもよい。これにより排出空気もエアレーション用空気として有効利用することができる。
【0076】
また、圧力計125を用いる代わりに、図11−2に示す実施例2に係る他のエアレーション装置120Fは、電流計128A〜128Dを設けている。そして、運転しているブロアの電流値の上昇の有無を電流計128A〜128Dで確認して、電流値の上昇があった場合には、圧力損失の上昇があったと判断し、前述したようなブロアの運転を行うようにすればよい。
【実施例3】
【0077】
次に、実施例3に係るエアレーション装置について説明する。
本実施例では、散気膜11に形成されたスリット12に析出物の発生があった場合に、これを迅速に除去する手段を提供する。
図12−1、図12−2は、本実施例に係るエアレーション装置の概略図である。なお、実施例1に示すエアレーション装置120Aと同一の構成部材については、同一の符号を付して重複した説明は省略する。
図12−1に示すように、実施例3に係るエアレーション装置120Gは、被処理水である希釈使用済海水(図示せず)中に浸漬され、希釈使用済海水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、空気122を吐出手段であるブロア(本実施例では4台)121A〜121Dにより供給する空気供給ラインL5と、前記空気供給ラインL5に介装された圧力計125と、前記空気が供給されるスリットを有する散気膜11を備えたエアレーションノズル123と、空気供給ラインL5から分岐する複数(本実施例では8本)の枝管L5A〜5Hと、枝管L5A〜5Hに介装した開閉バルブVA〜Hとを具備し、前記圧力計125の計測により空気供給圧力が所定の閾値を超えた場合、空気供給ラインL5管から分岐した各枝管L5A〜5Hに介装した各開閉バルブVA〜Hとを順次閉じて開く操作を行い、エアレーションノズル123への空気の供給の一時的な空気の供給量の停止又は低減を行うものである。
【0078】
この枝管L5A〜5Hに介装した開閉バルブVA〜Hとの開閉操作は、順次行うことにより、散気管に供給する全体の空気量を低減させずに、個別に例えばゴム製の散気膜11への空気量を減少させることにより、その直径が収縮させ、スリット12に付着していた析出物103bが圧壊し、供給される空気により散気膜11の外部に放出するようにしている。なお、空気を一時的に停止した場合でも散気管に対する余圧があるので、急激に空気量がゼロとなるわけではないので、脱落した析出物はその余圧空気により外部へ放出される。
【0079】
また、圧力計125を用いる代わりに、図12−2に示す実施例3に係る他のエアレーション装置120Hは、電流計128A〜128Dを設けている。そして、運転しているブロアの電流値の上昇の有無を電流計128A〜128Dで確認して、電流値の上昇があった場合には、圧力損失の上昇があったと判断し、前述したようなブロアの運転を行うようにすればよい。
【0080】
以上、本実施例では被処理水として海水を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば汚染処理における汚染水にエアレーションを行うエアレーション装置において、散気孔(メンブレンスリット)での汚泥成分の析出によるプラッギングを防止でき、長期間に亙って安定して操業することができる。
【符号の説明】
【0081】
11 散気膜
12 スリット
100 海水排煙脱硫装置
102 排煙脱硫吸収塔
103 海水
103A 使用済海水
103B 希釈使用済海水
105 希釈混合槽
106 酸化槽
120A〜120H エアレーション装置
123、123A〜123C、133 エアレーションノズル
125 圧力計
126 制御装置
128 散気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、
空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、
前記空気が供給されるスリットを有する散気膜を備えたエアレーションノズルとを具備し、
散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、散気膜に供給する空気の供給を停止又は減少させることを特徴とするエアレーション装置。
【請求項2】
請求項1において、
散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、吐出手段による空気の供給の一時的な停止を行うことを特徴とするエアレーション装置。
【請求項3】
請求項1において、
散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、現在稼動している複数の吐出手段の一部の空気の供給の一時的な停止を行うことを特徴とするエアレーション装置。
【請求項4】
請求項1において、
散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、現在稼動している複数の吐出手段に加えさらに別の吐出手段により空気を一時的に供給し、その後一時的に供給した空気の停止を行うことを特徴とするエアレーション装置。
【請求項5】
請求項1において、
散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、空気供給配管から分岐した分岐ラインに介装された調整弁を操作し、空気の供給の一時的な排出を行うことを特徴とするエアレーション装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記一時的な空気の排出先を、被処理水中に行うことを特徴とするエアレーション装置。
【請求項7】
請求項1において、
空気供給ラインから複数の分岐ラインを介して散気膜に空気を供給するに際し、
散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、散気膜に供給する複数の分岐ラインに介装したバルブの閉塞及び開放の操作を順次行うことを特徴とするエアレーション装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つにおいて、散気膜に対する圧力損失の上昇有無の判断は、供給空気の圧力若しくは空気量を計測する手段、又は吐出手段の電流値又は回転数を計測する手段の少なくとも一つにより行うことを特徴とするエアレーション装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一つにおいて、
前記エアレーションノズルは、内部に空気が導入される支持体を覆う散気膜と、
前記散気膜に多数設けられたスリットとからなり、
スリットから微細気泡を流出させることを特徴とするエアレーション装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一つにおいて、
前記エアレーションノズルは、
内部に空気が導入される円筒状の基部側支持体と、
基部側支持体よりも径が縮小され、仕切板を介して軸方向に設けられる中空筒体と、
該中空筒体の他端に設けられ、前記基部側支持体と略同一径の端部支持体と、
前記基部側支持体と前記端部支持体を覆いつつ両端で締結されるチューブ状の散気膜と、
前記散気膜に多数設けられたスリットと、
前記基部側支持体の側面に設けられ、散気膜の内周面と支持体外周面との間の加圧空間へ導入された空気を仕切板の手前側で流出させる空気出口とを具備することを特徴とするエアレーション装置。
【請求項11】
請求項1乃至8のいずれか一つにおいて、
前記エアレーションノズルは、
内部に空気が導入される円筒状の基部側支持体と、
基部側支持体と略同一径の端部支持体と、
基部側支持体と端部支持体を覆いつつ締結されるチューブ状の散気膜と、
前記散気膜に多数設けられたスリットとを具備することを特徴とするエアレーション装置。
【請求項12】
海水を吸収剤として使用する脱硫塔と、
前記脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路と、
前記水路内に設置され、前記使用済海水中に微細気泡を発生して脱炭酸を行う請求項1乃至10のいずれか一つのエアレーション装置とを具備することを特徴とする海水排煙脱硫装置。
【請求項13】
被処理水中に浸漬され、被処理水中にスリットから微細気泡を発生させるエアレーション装置を用い、
散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、散気膜に供給する空気の供給を停止又は減少させることを特徴とするエアレーション装置の運転方法。
【請求項14】
請求項13において、
散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、吐出手段による空気の供給の一時的な停止を行う指令を行い、微細気泡を発生するスリットの目詰まりを防止することを特徴とするエアレーション装置の運転方法。
【請求項15】
請求項13において、
散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、現在稼動している複数の吐出手段の一部の空気の供給の一時的な停止を行うことを特徴とするエアレーション装置の運転方法。
【請求項16】
請求項13において、
散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、現在稼動している複数の吐出手段に加えさらに別の吐出手段により空気を一時的に供給し、その後一時的に供給した空気の停止を行うことを特徴とするエアレーション装置の運転方法。
【請求項17】
請求項13において、
散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、空気供給配管から分岐した分岐ラインに介装された調整弁を操作し、空気の供給の一時的な排出を行うことを特徴とするエアレーション装置の運転方法。
【請求項18】
請求項13において、
空気供給ラインから複数の分岐ラインを介して散気膜に空気を供給するに際し、散気膜に対する圧力損失の上昇があった際、散気膜に供給する複数の分岐ラインに介装したバルブの閉塞及び開放の操作を順次行うことを特徴とするエアレーションの運転方法。
【請求項19】
請求項13乃至18のいずれか一つにおいて、
散気膜に対する圧力損失の上昇有無の判断は、供給空気の圧力若しくは空気量を計測する手段、又は吐出手段の電流値又は回転数を計測する手段の少なくとも一つにより行うことを特徴とするエアレーション装置の運転方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13−1】
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【図13−2】
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【図13−3】
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【公開番号】特開2012−152657(P2012−152657A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11412(P2011−11412)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】