説明

エイズを処置する方法におけるチトクロームP450により代謝される薬物の薬物動態を改善するためのリトナビル(ABT−538)の使用

【課題】チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物の薬物動態を改善する方法の提供。
【解決手段】チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物またはその製薬上許容され得る塩とリトナビルまたはその製薬上許容され得る塩との組合わせを投与することからなる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物の薬物動態を改善するための新規な組成物および方法に関する。加えて本発明は、レトロウイルスプロテアーゼを阻害するための特にヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロテアーゼを阻害するための新規な組成物および方法、並びにレトロウイルス感染特にHIV感染を阻止するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)として知られているレトロウイルスによる感染は、ヒトの健康の重大な問題であり続けている。HIV感染を処置する方法は、該ウイルスの生活環に必須であるウイルス酵素の活性を阻害する薬剤を投与することを含む。
【0003】
レトロウイルスのゲノムは、polおよびgag遺伝子産物のような1種またはそれ以上のポリ蛋白質前駆体の蛋白質分解プロセッシングを担うプロテアーゼをエンコードする。「ウェリンク,アーク・ヴァイロル(Arch.Virol.),98,1(1988)」参照。レトロウイルスプロテアーゼは、最も普通にはgag前駆体をコア蛋白質にプロセッシングし、またpol前駆体を逆転写酵素およびレトロウイルスプロテアーゼにプロセッシングする。レトロウイルスプロテアーゼは、配列特異性であると知られている。「パール,ネイチャー(Nature),328,482(1987)」参照。
【0004】
レトロウイルスプロテアーゼによる前駆体ポリ蛋白質の正確なプロセッシングが、感染性ヴィリオンの集合にとって必要である。プロテアーゼ欠損ウイルスを生成する試験管内突然変異生成は、感染性を欠く未熟なコア形態の生成に至る、ということが示されている。「クローフォード,ジェイ・ヴァイロル(J.Virol.),53,899(1985)」、「カトウ等,ヴァイロロジー(Virology),145,280(1985)」参照。それ故、レトロウイルスプロテアーゼ阻害は、抗ウイルス治療にとって魅力的目標となる。「ミツヤ,ネイチャー(Nature),325,775(1987)」参照。
【0005】
HIVプロテアーゼ阻害剤リトナビル(ABT−538としても知られている。)がヒトにおいてHIV感染を阻止するために有効である、ということが最近開示された。
【0006】
リトナビルが代謝酵素チトクロームP450モノオキシゲナーゼの阻害剤である、ということも発見された。
【0007】
ある薬物特にあるHIVプロテアーゼ阻害剤はチトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝され、しかしてこのことは不都合な薬物動態並びに最も望ましいよりも頻繁なおよび多量の投与量の必要に至る。チトクロームP450モノオキシゲナーゼによる代謝を阻害する薬剤と共にかかる薬物を投与することは、該薬物の薬物動態を改善する(即ち、半減期を増大し、ピーク血漿濃度までの時間を増大し、血液レベルを増大する。)であろう。
【0008】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼ特にP450・3A4イソ酵素により代謝される薬物とリトナビルの共投与はかかる薬物の薬物動態の改善を引き起こす、ということが発見された。
【0009】
特に、チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝されるHIVプロテアーゼ阻害剤とリトナビルの共投与はかかるHIVプロテアーゼ阻害剤の薬物動態の予期されない改善を引き起こす、ということが発見された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ウェリンク,アーク・ヴァイロル(Arch.Virol.),98,1(1988)
【非特許文献2】パール,ネイチャー(Nature),328,482(1987)
【非特許文献3】クローフォード,ジェイ・ヴァイロル(J.Virol.),53,899(1985)
【非特許文献4】カトウ等,ヴァイロロジー(Virology),145,280(1985)
【非特許文献5】ミツヤ,ネイチャー(Nature),325,775(1987)
【発明の概要】
【0011】
本発明によれば、チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物(またはその製薬上許容され得る塩)の薬物動態を改善する方法であって、リトナビルまたはその製薬上許容され得る塩を共投与することからなる上記方法が開示される。組合わせにて投与されるとき、これらの2種の治療剤は同時にまたは異なる時期に投与される別々の組成物として処方され得、あるいは該2種の治療剤は単一組成物として投与され得る。
【0012】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝されかつリトナビルとの共投与から有益性が得られる薬物には、免疫抑制剤シクロスポリン、FK−506およびラパマイシン、化学療法剤タキソールおよびタキソテール、抗生物質クラリスロマイシン、並びにHIVプロテアーゼ阻害剤A−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478、AG1343、DMP−323、XM−450、BILA2011BS、BILA1096BS、BILA2185BS、BMS186,318、LB71262、SC−52151、SC−629(N,N−ジメチルグリシル−N−(2−ヒドロキシ−3−(((4−メトキシフェニル)スルホニル)(2−メチルプロピル)アミノ)−1−(フェニルメチル)プロピル)−3−メチル−L−バリンアミド)、KNI−272、CGP53437、CGP57813およびU−103017が含まれる。
【0013】
本発明の好ましい具体的態様において、チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝されるHIVプロテアーゼ阻害剤(またはその製薬上許容され得る塩)の薬物動態を改善する方法であって、リトナビルまたはその製薬上許容され得る塩を共投与することからなる上記方法が開示される。リトナビルまたはその製薬上許容され得る塩とチトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝されるHIVプロテアーゼ阻害剤またはその製薬上許容され得る塩とのかかる組合わせは、ヒトにおいてHIVプロテアーゼを阻害するために有用であり、またヒトにおいてHIV感染またはエイズ(後天性免疫不全症候群)の阻止、処置または予防のために有用である。組合わせにて投与されるとき、これらの2種の治療剤は同時にまたは異なる時期に投与される別々の組成物として処方され得、あるいは該2種の治療剤は単一組成物として投与され得る。
【0014】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される好ましいHIVプロテアーゼ阻害剤には、A−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478およびAG1343が含まれる。
【0015】
リトナビルは、(2S,3S,5S)−5−(N−(N−((N−メチル−N−((2−イソプロピル−4−チアゾリル)メチル)アミノ)カルボニル)−L−バリニル)アミノ)−2−(N−((5−チアゾリル)メトキシカルボニル)アミノ)−1,6−ジフェニル−3−ヒドロキシヘキサンまたはその製薬上許容され得る塩である。リトナビルは、1994年7月7日に公開されたPCT特許出願番号WO94/14436および1995年6月6日に出願された米国特許出願シリアル番号08/469,965(それらの両方共ここに参照により組み込まれる。)に開示されている処理操作により合成され得る。
【0016】
VX−478は、
【0017】
【化1】

またはその製薬上許容され得る塩である。VX−478は、1994年3月17日に公開されたPCT特許出願番号WO94/05639(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている処理操作により合成され得る。
【0018】
A−77003は(2S,3R,4S,5S)−2,5−ジ−(N−((N−メチル)−N−((2−ピリジニル)メチル)アミノ)カルボニルバリニルアミノ)−3,4−ジヒドロキシ−1,6−ジフェニルヘキサンまたはその製薬上許容され得る塩であり、そして1992年8月25日に発布された米国特許第5,142,056号(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0019】
A−80987は(2S,3S,5S)−2−(N−(N−((2−ピリジニル)メトキシカルボニル)バリニル)アミノ)−5−(N−(3−ピリジニル)メトキシカルボニル)アミノ)−1,6−ジフェニル−3−ヒドロキシヘキサンまたはその製薬上許容され得る塩であり、そして1994年10月11日に発布された米国特許第5,354,866号(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0020】
MK−639はN−(2(R)−ヒドロキシ−1(S)−インダニル)−2(R)−フェニルメチル−4(S)−ヒドロキシ−5−(1−(4−(3−ピリジルメチル)−2(S)−N′−(t−ブチルカルボキサミド)−ピペラジニル))−ペンタンアミドまたはその製薬上許容され得る塩であり、そして1993年5月12日に公開された欧州特許出願番号EP541168および1995年5月9日に発布された米国特許第5,413,999号(それらの両方共ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0021】
サキナビルはN−tert−ブチル−デカヒドロ−2−[2(R)−ヒドロキシ−4−フェニル−3(S)−[[N−(2−キノリルカルボニル)−L−アスパラギニル]アミノ]ブチル]−(4aS,8aS)−イソキノリン−3(S)−カルボキサミドまたはその製薬上許容され得る塩であり、そして1993年3月23日に発布された米国特許第5,196,438号(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0022】
AG1343は
【0023】
【化2】

またはその製薬上許容され得る塩であり、そして1995年4月13日に公開されたPCT特許出願番号WO95/09843および1996年1月16日に発布された米国特許第5,484,926号(それらの両方共ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0024】
DMP−323は
【0025】
【化3】

またはその製薬上許容され得る塩であり、そして1993年4月15日に公開されたPCT特許出願番号WO93/07128(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0026】
XM−450は
【0027】
【化4】

またはその製薬上許容され得る塩であり、そして1993年4月15日に公開されたPCT特許出願番号WO93/07128(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0028】
BILA2011BSは
【0029】
【化5】

またはその製薬上許容され得る塩であり、そして1993年9月15日に公開された欧州特許出願番号EP560268(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0030】
BILA1096BSは
【0031】
【化6】

またはその製薬上許容され得る塩であり、そして1993年9月15日に公開された欧州特許出願番号EP560268(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0032】
BILA2185BSは
【0033】
【化7】

またはその製薬上許容され得る塩であり、そして1993年9月15日に公開された欧州特許出願番号EP560268(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0034】
BMS186,318は
【0035】
【化8】

またはその製薬上許容され得る塩であり、そして1994年1月26日に公開された欧州特許出願番号EP580402(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0036】
LB71262は
【0037】
【化9】

であり、そして1995年12月20日に公開された欧州特許出願番号EP687675(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0038】
SC−52151は[1S−[1R(R),2S]}−N[3−[[[(1,1−ジメチルエチル)アミノ]カルボニル](2−メチルプロピル)アミノ]−2−ヒドロキシ−1−(フェニルメチル)プロピル]−2−[(2−キノリニルカルボニル)アミノ]−ブタンジアミドまたはその製薬上許容され得る塩であり、そして1992年5月29日に公開されたPCT特許出願番号WO92/08701および1993年11月25日に公開されたPCT特許出願番号WO93/23368(それらの両方共ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0039】
SC−629(N,N−ジメチルグリシル−N−(2−ヒドロキシ−3−(((4−メトキシフェニル)スルホニル)(2−メチルプロピル)アミノ)−1−(フェニルメチル)プロピル)−3−メチル−L−バリンアミド)は
【0040】
【化10】

またはその製薬上許容され得る塩であり、そして1995年3月2日に公開されたPCT特許出願番号WO95/06030(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0041】
KNI−272は
【0042】
【化11】

またはその製薬上許容され得る塩であり、そして1993年12月15日に公開された欧州特許出願番号EP574135(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0043】
CGP53437は
【0044】
【化12】

であり、そして1993年3月17日に公開された欧州特許出願番号EP532466(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0045】
CGP57813は
【0046】
【化13】

であり、そして1994年10月5日に公開された欧州特許出願番号EP618222(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0047】
U−103017は
【0048】
【化14】

であり、そして1994年8月18日に公開されたPCT特許出願番号WO94/418188(ここに参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0049】
用語“S”および“R”立体配置は、「IUPAC1974レコメンデーションズ・フォア・セクションE,ファンダメンタル・ステレオケミストリー,ピュア・アプル・ケム(IUPAC 1974 Recommendations for Section E,Fundamental Stereochemistry,Pure Appl.Chem.)(1976),45,13〜30」により定義される通りである。
【0050】
ここにおいて用いられている用語“Val”は、バリンを指す。“Val”がここにおいて用いられているとき別段記載がなければ、それはL異性体を指す。一般に、ここにおいて用いられているアミノ酸略記は、アミノ酸およびペプチドについての「生化学命名法に関するIUPAC−IUBジョイントコミッション」(「ユア・ジェイ・バイオケム(Eur.J.Biochem.),1984,158,9〜31」)に従う。
【0051】
HIVプロテアーゼを阻害するための化合物の能力は、PCT特許出願番号WO94/14436に開示されている方法に従って示され得る。
【0052】
HIV感染を阻止するためのHIVプロテアーゼ阻害剤の能力は、PCT特許出願番号WO94/14436に開示されている方法に従って示され得る。
【0053】
チトクロームP450の阻害
チトクロームP450モノオキシゲナーゼ活性を阻害するためのリトナビルの能力を、プローブ基質としてテルフェナジンを用いて試験した(「ユン等,ドラッグ・メタボリズム・アンド・ディスポジション(Drug Metabolism & Disposition),Vol.21,403〜407(1993)」)。リトナビルは、0.25μMのIC50でもってヒトの肝臓中に存在する最も豊富な形態のチトクロームP450(CYP3A4)を代表するテルフェナジンヒドロキシラーゼ活性を阻害した。
【0054】
薬物動態の改善
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される化合物の薬物動態を改善するためのリトナビルの能力は、VX−478が例として用いられる下記に記載の試験法により示され得る。
【0055】
ラット(スプラグ−ドーレイ(Sprague−Dawley)由来の雄,0.3〜0.45kg)を投薬に先立って一晩絶食させたが、しかし水は無制限に許した。組合わせ投薬について、リトナビルおよびVX−478(各々5mg/ml)の両方を含有する単一溶液を、20%エタノール:30%プロピレングリコールおよび可溶化を助けるための適切なモル当量数のメタンスルホン酸を有するD5Wの賦形剤中にて調製した。VX−478およびリトナビルの別々の溶液もまた調製し、そしてこれらの溶液を、ラットにおいて単一薬剤として投与されたときのVX−478およびリトナビルの薬物動態を評価するために用いた。2ml/kgの投与容量にて1群のラットに強制栄養法により経口的に投与された該溶液は、各化合物の10mg/kgの投与量を与えた。血液試料を、投薬後0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、6および8時間にて、各ラットの尾の静脈から得た。血漿を遠心分離により赤血球から分離し、そして分析まで凍結(−30℃)した。リトナビルおよびVX−478の両方の濃度を、血漿試料の液−液抽出に続いて低波長UV検出でもって逆相HPLCにより同時に決定した。各ラットについてのピーク血漿濃度(Cmax)およびピーク血漿濃度までの時間(Tmax)を、血漿濃度のデータから直接得た。曲線下の面積を、調査の期間にわたって台形法により算出した。血漿除去半減期は、投薬後の時間の関数として終点血漿濃度の対数線形回帰線からまたはノンリン(NONLIN)84から得た。各組合わせを、少なくとも3匹のラットを含む群にて評価した。報告された値は、各群の動物についての平均である。組合わせから得られたデータを、評価下の化合物の単一の別個の投与量を受けた別個の群のラットから得られたデータと比較した。
【0056】
下記の第1表に、ラットにおけるVX−478および他のHIVプロテアーゼ阻害剤についての薬物動態実験の結果が示されている。最大血漿レベル(Cmax)、最大血漿レベルまでの時間(Tmax)、並びにHIVプロテアーゼ阻害剤単独の投薬対リトナビルとの組合わせでの投薬後8時間の試料採取間隔についての血漿濃度曲線下の面積(AUC)が与えられている。
【0057】
【表1】

【0058】
ヒトにおいてクラリスロマイシンの薬物動態を改善するためのリトナビルの能力は、下記に記載の方法に従って示された。
【0059】
クラリスロマイシン(12時間毎に、500mg/ビアキシン(BIAXIN)(登録商標)タブレット)並びにリトナビル(8時間毎に、200mgの液状処方物)とクラリスロマイシン(12時間毎に、500mg)との組合わせを、4人の健康なヒト志願者の群に投与した。血液試料を、クラリスロマイシンの血漿濃度のHPLC決定のために投薬の4日目に採取した。
【0060】
下記の第2表に、ヒトにおけるクラリスロマイシンについての薬物動態実験の結果が示されている。平均最大血漿レベル(Cmax)、並びにクラリスロマイシン単独の投薬対リトナビルとの組合わせでの投薬の4日目の0〜24時間の時間間隔について非区画法を用いて算出された血漿濃度曲線下の面積(AUC)が与えられている。
【0061】
【表2】

【0062】
本発明の治療剤は、無機または有機酸から誘導された塩の形態にて用いられ得る。これらの塩は次のものを含むが、しかしそれらに制限されない。即ち、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、半硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモエート、ペクチニン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩。また、塩基性窒素含有基が、メチル、エチル、プロピルおよびブチルクロライド、ブロマイドおよびヨーダイドのような低級アルキルハライド、ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミル硫酸のようなジアルキル硫酸、デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルクロライド、ブロマイドおよびヨーダイドのような長鎖ハロゲン化物、ベンジルおよびフェネチルブロマイドのようなアラルキルハライド等のような薬剤で第4級化され得る。それにより、水または油に可溶なまたは分散可能な製品が得られる。
【0063】
製薬上許容され得る酸付加塩を形成させるために用いられ得る酸の例は、塩化水素酸、硫酸およびリン酸のような無機酸並びにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸およびクエン酸のような有機酸を含む。他の塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはマグネシウムのようなアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属とのまたは有機塩基との塩を含む。
【0064】
リトナビルおよび、チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される化合物の投与は、ヒトにおいて、チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される該化合物の薬物動態を改善するために有用である。
【0065】
特に、リトナビルおよび、チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝されるHIVプロテアーゼ阻害剤の投与は、ヒトにおいて、チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される該HIVプロテアーゼ阻害剤の薬物動態を改善するために有用である。
【0066】
リトナビルとチトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝されるHIVプロテアーゼ阻害剤との組合わせはまた、レトロウイルスプロテアーゼ特にHIVプロテアーゼを試験管内でまたは生体内で(特に、哺乳類において特にヒトにおいて)阻害するために有用である。治療剤のこの組合わせはまた、生体内でレトロウイルス特にヒト免疫不全ウイルス(HIV)の阻害のために有用である。治療剤のこの組合わせはまた、ヒトまたは他の哺乳類においてレトロウイルスにより引き起こされる病気特に後天性免疫不全症候群またはHIV感染の処置または予防のために有用である。
【0067】
単一のまたは分割された投与量にてヒトまたは他の哺乳類の宿主に投与されるべきリトナビルの毎日の総投与量は、例えば毎日0.001〜300mg/kg体重一層通常には0.1〜50mg/kg更に一層通常には0.1〜25mg/kgの量であり得る。投与単位型組成物は、かかる量の約数の量を含有して日用量を組成し得る。
【0068】
ヒトまたは他の哺乳類に投与されるべきチトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物の毎日の総投与量は十分知られており、また当業者により容易に決定され得る。投与単位型組成物は、かかる量の約数の量を含有して日用量を組成し得る。
【0069】
個々にまたは組合わせにて各薬物の単一投与形態を作るために担体物質と一緒にされ得る活性成分の量は、処置される宿主および特定の投与態様に依り変わる。
【0070】
しかしながら、特定の患者についての特定の投与量レベルは、用いられる特定の化合物の活性、年令、体重、全般的な健康度、性別、食事、投与の時機、投与の経路、排泄速度、薬物の組合わせおよび治療を受ける特定の病気の重さを含めて種々の因子に左右される、ということが理解されよう。
【0071】
本発明の治療剤の組合わせ(個々の組成物としてまたは単一組成物として)は、経口的に、非経口的に、舌下に、吸入噴霧により、直腸に、または局所に、所望に応じて慣用の無毒の製薬上許容され得る担体、補助剤および賦形剤を含有する投与単位型処方物にて投与され得る。局所投与はまた、経皮性膏薬またはイオン電気導入装置のような経皮投与の使用を伴い得る。ここにおいて用いられている用語非経口は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内の注射または注入技法を含む。
【0072】
注射可能な製剤例えば無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液は、適当な分散または湿潤剤および懸濁剤を用いて公知の技術に従って処方され得る。無菌の注射可能な製剤はまた、例えば1,3−プロパンジオール中の溶液のような、無毒の非経口に許容され得る希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液であり得る。用いられ得る許容可能な賦形剤および溶媒の中には、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌の不揮発性油は、溶媒または懸濁媒質として慣用的に用いられる。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含めていずれの無刺激性不揮発性油も用いられ得る。加えて、オレイン酸のような脂肪酸は、注射可能物の製剤において用いられる。
【0073】
薬物の直腸投与のための座薬は、薬物を、常温において固体であるがしかし直腸の温度において液体でありそしてそれ故直腸中で溶融されて薬物を放出するカカオ脂およびポリエチレングリコールのような適当な非刺激性賦形剤と混合することにより製造され得る。
【0074】
経口投与のための固体投与形態は、カプセル、タブレット、丸剤、粉末および顆粒を含み得る。かかる固体投与形態において、活性化合物は、シュクロース、ラクトースまたはデンプンのような少なくとも1種の不活性希釈剤と混合され得る。かかる投与形態はまた、通常の慣行であるように、不活性希釈剤以外の追加的物質例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤を含み得る。カプセル、タブレットおよび丸剤の場合、投与形態はまた緩衝剤を含み得る。タブレットおよび丸剤は、追加的に腸溶コーティングでもって製造され得る。
【0075】
経口投与のための液体投与形態は、水のような当該技術において普通用いられる不活性希釈剤を含有する製薬上許容され得る乳濁液、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルを含み得る。かかる組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤のような補助剤、並びに甘味料、香味料および香料を含み得る。
【0076】
本発明の治療剤の組合わせ(個々の組成物としてまたは単一組成物として)はまた、リポソームの形態にて投与され得る。当該技術において知られているように、リポソームは一般に、リン脂質または他の脂質物質から誘導される。リポソームは、水性媒質中に分散されている単層または複層ラメラ状水和液晶により形成される。リポソームを形成することが可能で無毒の生理学的に許容され得かつ代謝可能ないずれの脂質も用いられ得る。リポソーム形態の本組成物は、本発明の化合物に加えて、安定剤、保存剤、賦形剤等を含有し得る。好ましい脂質は、天然および合成の、リン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。
【0077】
リポソームを形成させるべき方法は、当該技術において公知である。例えば「プレスコット編,メソッズ・イン・セル・バイオロジー(Methods in Cell Biology),第XIV巻,アカデミック・プレス,ニューヨーク州ニューヨーク,第33頁以下」参照。
【0078】
リトナビルにとって好ましい投与形態は、(a)1994年7月29日に出願された米国シリアル番号08/283,239(今では、1996年1月16日発布の米国特許第5,484,801号)(ここに参照により組み込まれる。)に論じられているような経口投与用液体投与形態、(b)1995年3月23日に公開されたPCT特許出願番号WO95/07696および1995年3月13日に出願された米国シリアル番号08/402,690(それらの両方共ここに参照により組み込まれる。)に開示されているようなカプセル封入された固体または半固体の投与形態および(c)1995年4月13日に公開されたPCT特許出願番号WO95/09614(ここに参照により組み込まれる。)に開示されているようなカプセル封入された固体投与形態を含む。
【0079】
以上の記載は、本発明の単なる説明であって、本発明を開示された化合物に限定するよう意図されていない。当業者に明白である種々の変型および変更は、添付の請求の範囲において定められる本発明の範囲および特質内にあると意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物の薬物動態を改善する方法であって、かかる処置の必要なヒトに治療に有効な量の、該薬物またはその製薬上許容され得る塩とリトナビルまたはその製薬上許容され得る塩との組合わせを投与することからなる方法。
【請求項2】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物が、シクロスポリン、FK−506、ラパマイシン、タキソール、タキソテール、クラリスロマイシン、A−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478、AG1343、DMP−323、XM−450、BILA2011BS、BILA1096BS、BILA2185BS、BMS186,318、LB71262、SC−52151、SC−629、KNI−272、CGP53437、CGP57813およびU−103017から成る群から選択される、請求項1の方法。
【請求項3】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物が、A−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478、AG1343、DMP−323、XM−450、BILA2011BS、BILA1096BS、BILA2185BS、BMS186,318、LB71262、SC−52151、SC−629、KNI−272、CGP53437、CGP57813およびU−103017から成る群から選択される、請求項1の方法。
【請求項4】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物が、A−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478およびAG1343から成る群から選択される、請求項1の方法。
【請求項5】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物がサキナビルである、請求項1の方法。
【請求項6】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物がVX−478である、請求項1の方法。
【請求項7】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物がMK−639である、請求項1の方法。
【請求項8】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物がAG1343である、請求項1の方法。
【請求項9】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物のヒトの血液レベルを増大する方法であって、かかる処置の必要なヒトに治療に有効な量の、該薬物またはその製薬上許容され得る塩とリトナビルまたはその製薬上許容され得る塩との組合わせを投与することからなる方法。
【請求項10】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物が、シクロスポリン、FK−506、ラパマイシン、タキソール、タキソテール、クラリスロマイシン、A−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478、AG1343、DMP−323、XM−450、BILA2011BS、BILA1096BS、BILA2185BS、BMS186,318、LB71262、SC−52151、SC−629、KNI−272、CGP53437、CGP57813およびU−103017から成る群から選択される、請求項9の方法。
【請求項11】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物が、A−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478、AG1343、DMP−323、XM−450、BILA2011BS、BILA1096BS、BILA2185BS、BMS186,318、LB71262、SC−52151、SC−629、KNI−272、CGP53437、CGP57813およびU−103017から成る群から選択される、請求項9の方法。
【請求項12】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物が、A−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478およびAG1343から成る群から選択される、請求項9の方法。
【請求項13】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物がサキナビルである、請求項9の方法。
【請求項14】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物がVX−478である、請求項9の方法。
【請求項15】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物がMK−639である、請求項9の方法。
【請求項16】
チトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝される薬物がAG1343である、請求項9の方法。
【請求項17】
HIVプロテアーゼを阻害するための医薬組成物であって、製薬用担体および治療に有効な量の、リトナビルまたはその製薬上許容され得る塩とチトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝されるHIVプロテアーゼ阻害剤またはその製薬上許容され得る塩との組合わせからなる組成物。
【請求項18】
HIV感染を阻止するための医薬組成物であって、製薬用担体および治療に有効な量の、リトナビルまたはその製薬上許容され得る塩とチトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝されるHIVプロテアーゼ阻害剤またはその製薬上許容され得る塩との組合わせからなる組成物。
【請求項19】
HIVプロテアーゼを阻害する方法であって、かかる処置の必要なヒトに治療に有効な量の、リトナビルまたはその製薬上許容され得る塩とチトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝されるHIVプロテアーゼ阻害剤またはその製薬上許容され得る塩との組合わせを投与することからなる方法。
【請求項20】
HIV感染を阻止する方法であって、かかる処置の必要なヒトに治療的有効な量の、リトナビルまたはその製薬上許容され得る塩とチトクロームP450モノオキシゲナーゼにより代謝されるHIVプロテアーゼ阻害剤またはその製薬上許容され得る塩との組合わせを投与することからなる方法。
【請求項21】
HIVプロテアーゼを阻害するための医薬組成物であって、製薬用担体および治療に有効な量の、リトナビルまたはその製薬上許容され得る塩とA−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478、AG1343、DMP−323、XM−450、BILA2011BS、BILA1096BS、BILA2185BS、BMS186,318、LB71262、SC−52151、SC−629、KNI−272、CGP53437、CGP57813およびU−103017から成る群から選択された化合物またはその製薬上許容され得る塩との組合わせからなる組成物。
【請求項22】
化合物が、A−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478およびAG1343から成る群から選択される、請求項21の組成物。
【請求項23】
化合物がサキナビルである、請求項21の組成物。
【請求項24】
化合物がVX−478である、請求項21の組成物。
【請求項25】
化合物がMK−639である、請求項21の組成物。
【請求項26】
化合物がAG1343である、請求項21の組成物。
【請求項27】
HIV感染を阻止するための医薬組成物であって、製薬用担体および治療に有効な量の、リトナビルまたはその製薬上許容され得る塩とA−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478、AG1343、DMP−323、XM−450、BILA2011BS、BILA1096BS、BILA2185BS、BMS186,318、LB71262、SC−52151、SC−629、KNI−272、CGP53437、CGP57813およびU−103017から成る群から選択された化合物またはその製薬上許容され得る塩との組合わせからなる組成物。
【請求項28】
化合物が、A−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478およびAG1343から成る群から選択される、請求項27の組成物。
【請求項29】
化合物がサキナビルである、請求項27の組成物。
【請求項30】
化合物がVX−478である、請求項27の組成物。
【請求項31】
化合物がMK−639である、請求項27の組成物。
【請求項32】
化合物がAG1343である、請求項27の組成物。
【請求項33】
HIVプロテアーゼを阻害する方法であって、かかる処置の必要なヒトに治療に有効な量の、リトナビルまたはその製薬上許容され得る塩とA−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478、AG1343、DMP−323、XM−450、BILA2011BS、BILA1096BS、BILA2185BS、BMS186,318、LB71262、SC−52151、SC−629、KNI−272、CGP53437、CGP57813およびU−103017から成る群から選択された化合物またはその製薬上許容され得る塩との組合わせを投与することからなる方法。
【請求項34】
化合物が、A−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478およびAG1343から成る群から選択される、請求項33の方法。
【請求項35】
化合物がサキナビルである、請求項33の方法。
【請求項36】
化合物がVX−478である、請求項33の方法。
【請求項37】
化合物がMK−639である、請求項33の方法。
【請求項38】
化合物がAG1343である、請求項33の方法。
【請求項39】
HIV感染を阻止する方法であって、かかる処置の必要なヒトに治療に有効な量の、リトナビルまたはその製薬上許容され得る塩とA−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478、AG1343、DMP−323、XM−450、BILA2011BS、BILA1096BS、BILA2185BS、BMS186,318、LB71262、SC−52151、SC−629、KNI−272、CGP53437、CGP57813およびU−103017から成る群から選択された化合物またはその製薬上許容され得る塩との組合わせを投与することからなる方法。
【請求項40】
化合物が、A−77003、A−80987、MK−639、サキナビル、VX−478およびAG1343から成る群から選択される、請求項39の方法。
【請求項41】
化合物がサキナビルである、請求項39の方法。
【請求項42】
化合物がVX−478である、請求項39の方法。
【請求項43】
化合物がMK−639である、請求項39の方法。
【請求項44】
化合物がAG1343である、請求項39の方法。

【公開番号】特開2012−111775(P2012−111775A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−22128(P2012−22128)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【分割の表示】特願2007−173713(P2007−173713)の分割
【原出願日】平成8年6月28日(1996.6.28)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】