エキスパンド型、ペール缶、及びペール缶製造方法
【課題】エキスパンダー加工における円筒体の内面への傷の発生を、簡易な方法で従来に比べて低減する、エキスパンド型、ペール缶製造方法、及びペール缶を提供する。
【解決手段】放射状に開き円筒体51の拡径を行うセグメント102を有するエキスパンド型101において、拡径前の円筒体の内面51aに非押圧状態にてエキスパンド型101の周面が接触したときに上記周面が真円を形成するように、各セグメントの円弧面102aを形成した。よって、セグメントの両縁部が上記内面を擦りながら拡径することはなく、上記内面への擦り傷の発生を低減することができる。
【解決手段】放射状に開き円筒体51の拡径を行うセグメント102を有するエキスパンド型101において、拡径前の円筒体の内面51aに非押圧状態にてエキスパンド型101の周面が接触したときに上記周面が真円を形成するように、各セグメントの円弧面102aを形成した。よって、セグメントの両縁部が上記内面を擦りながら拡径することはなく、上記内面への擦り傷の発生を低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、JIS(日本工業規格)Z1620(1995年)に規定されるペール缶の製造に使用されるエキスパンド型、該エキスパンド型を用いたペール缶の製造方法、及び上記エキスパンド型を用いて製造されるペール缶に関する。
【背景技術】
【0002】
上記JIS Z 1620に規定され、図12に示すように、ペール缶胴体部52に対し地板53及び取っ手54を設けた18リットル及び20リットル用の容器は一般的にペール缶50と呼ばれる。該ペール缶50は、その軸方向における缶中央部から底部にかけて先細りに成型されたテーパータイプと、このような先細り成型を施していないストレートタイプ(ネックインタイプを含む)とに大別される。
このようなペール缶では、JIS G 3315に規定されるティンフリースチール(TFSと称することもある。)又はJIS G 3303に規定されるブリキ材が缶材に用いられる。これらの缶材は、まず円筒状に丸められ、その周方向における薄鋼板端部のラップ部をマッシュシーム溶接して、拡径前の円筒体に形成される。このような拡径前の初期状態にある円筒体の内側にエキスパンド型を配置して、該エキスパンド型にて上記円筒体を内側から外側に向けて押圧することで、上記円筒体が拡径され、上記ペール缶胴体部52に成型される。尚、エキスパンド型の形状により、上記テーパータイプ及び上記ストレートタイプが選択される。又、上述のエキスパンダーによる加工前に、上記円筒体の内面には合成樹脂塗装を行う場合もある。
【0003】
図を参照して上述のエキスパンダー加工について説明する。エキスパンダー加工は、図7に示すようなエキスパンド型1を備えかつ図8に示すような構成を有するエキスパンダー10にて行われる。エキスパンド型1は、全体形状が略円筒形であり、該円筒形の周方向1aに沿って分割された円弧面2aを有する複数のセグメント2を有する。よって、セグメント2は、エキスパンド型1の中心軸を中心として例えば16等分された略扇形柱にてなる各々の部材である。尚、図7は、エキスパンド型1を模式図的に記したもので、セグメント数等は、実物に対応していない。
【0004】
エキスパンダー10は、図8に示すように、上述のエキスパンド型1と、エキスパンド型1内にてエキスパンド型1と係合しかつエキスパンド型1の軸方向1cに沿って可動な駆動軸11とを備える。駆動軸11は、くさび状の部材11aを有し、エキスパンド型1内には、くさび状部材11aと係合するテーパー部2bが形成されている。よって、エキスパンダー10は、駆動軸11を軸方向1cに移動させることで、くさび状部材11aとテーパー部2bとの係合状態を変化させ、これによりエキスパンド型1を、図7に示すように各セグメント2が閉じた状態から放射状に開いた状態に、逆に、開いた状態から閉じた状態に、変形可能である。
【0005】
拡径前の初期状態にある円筒体から、拡径後の拡径状態に成型されたペール缶胴体部を作製する、上述のエキスパンダー加工では、閉じた状態にあるエキスパンド型1が上記円筒体の内側に位置するように、エキスパンド型1及び上記円筒体を配置する。そして、上述のように、駆動軸11を移動させて各セグメント2を放射状に移動させてエキスパンド型1を開くことで、円筒体の内面を直径方向に押圧する。これにより円筒体の拡径を行い、上記ペール缶胴体部が成型される。
そして、このように拡径状態に成型されたペール缶胴体部に対し、地板及び取っ手が固定され、又、天板等が取り付けられることもある。このようにして図12に示すようなペール缶50が製造される。
尚、ペール缶の製造における上記拡径動作に関して開示する適当な従来技術文献を見つけることはできないが、飲料缶等の缶胴部の拡径動作に関して、例えば特許文献1に記載がある。
【特許文献1】特開2004−298881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のようにペール缶についてはJIS Z 1620にて寸法等が規定されている。又、上記ペール缶胴体部52は、製品であるペール缶の胴体部として使用されることから、上記円筒体を上記ペール缶胴体部に成型する際も、製品であるペール缶の胴体部として条件を満足するように、規定寸法を含め仕上がり状態を調整するのが好ましい。このような観点から、上述した従来のエキスパンダー10では、図9に示すように、拡径後の拡径状態に成型されたペール缶胴体部52において、即ち、エキスパンド型1の各セグメント2が放射状に広がった状態において、周上に間欠的に存在する各セグメント2の円弧面2aを包括した、エキスパンド型1の全体の周面1bが、真円をなすように、各セグメント2の円弧面2aの曲率が設計され、該曲率となる半径にて各セグメント2の円弧面2aが形成されていた。具体的には、拡径後の拡径状態に成型されたペール缶胴体部52の内径は、φ278mmと規定されていることから、各セグメント2の円弧面2aは、半径139mmの曲率にて形成されていた。説明上、半径139mmを半径R3とする。
尚、図9は、エキスパンド型1を模式図的に記したもので、セグメント数等は、実物に対応していない。
【0007】
一方、拡径前における円筒体の内径は、φ270mm、つまり半径135mmである。説明上、半径135mmを半径R0とする。又、上述のように、各セグメント2を閉じた状態にて、上記円筒体の内側へエキスパンド型1が挿入され、その後、各セグメント2が開かれる。上述のように、半径R3、つまり半径139mmの曲率にて形成されている円弧面2aに対して円筒体51の内面51aの半径は、R0つまり135mmであり、内面51aの方が円弧面2aよりも小さい円となる。よって、各セグメント2が開かれ各セグメント2の円弧面2aが円筒体の内面に接触したときの非押圧の状態を微視的に表すと、図10に示すように、各セグメント2の円弧面2aの両縁部2cが、まず円筒体51の内面51aに接することになる。そして、各セグメント2がさらに開かれるに従い、各セグメント2の円弧面2aの両縁部2cが円筒体51の内面51aをこすりながら円筒体51を拡径する。そして最終的に図9に示すように、各セグメント2の円弧面2aの全面が円筒体51の内面51aに接して、拡径されたペール缶胴体部52を成型する。尚、理解を容易にするため、図10は、形状に関して円弧面2aと内面51aとの関係を実際より誇張して図示している。
【0008】
上述のような構成を有する従来のエキスパンダー10では、以下に説明するような問題が生じる。
即ち、上述のように円弧面2aの両縁部2cが円筒体51の内面51aをこすりながら円筒体51の拡径を行うことから、拡径状態のペール缶胴体部52の内面52aには、図11に示すように、擦り傷53が生じる場合が多い。擦り傷53は、内面52aの内、各セグメント2の円弧面2aの、特に両縁部2cが当接する箇所に多く発生する。又、拡径に伴い円筒体51はその軸方向に縮むことから、擦り傷53は、ペール缶胴体部52の軸方向における両端部、特に製品で天板側となる端部付近にも多く発生する。このような、内面52aにおける擦り傷53は、外観上好ましくなく、ペール缶の商品価値を低下させるという問題がある。
【0009】
尚、このような擦り傷53の発生を防止するために、例えば、拡径を行うに当たり円筒体51の内面51aに潤滑剤を塗布しておく方法も考えられるが、コスト及び工程の増加等の理由から得策ではなく、ペール缶業界では行われていない。
【0010】
又、上述のように円弧面2aの両縁部2cの摩擦量が多くなることから、各セグメント2の円弧面2aにも傷が発生する。円弧面2aにおける傷の発生は、エキスパンド型1の短寿命化につながるという問題がある。一方、缶用途や顧客要求等により、円筒体51の内面51aに合成樹脂塗装を施した円筒体51の場合には、円弧面2aと内面51aとの摩擦が低減することから、擦り傷53は比較的発生し難くなる。又、ブリキ材は、自己潤滑性を有することから、缶材にブリキ材を用いる場合も擦り傷53は比較的発生し難くなる。
しかしながら、円弧面2aに傷を有するエキスパンド型1では、合成樹脂塗装を施した円筒体51であっても、円筒体51の内面51aに擦り傷53を発生させてしまう。又、各セグメント2の円弧面2aにおける傷は、円弧面2aと円筒体51の内面51aとの摩擦をより大きくし擦り傷53の発生を加速させ、又、缶材が上記ティンフリースチールの場合には表面メッキを削りその微粒子が各セグメント2の円弧面2aに付着することにより、擦り傷53の発生を加速させてしまうという問題がある。尚、上述した、円筒体51の内面51aに対する潤滑剤の塗布、合成樹脂塗装、缶材の選択等の事項は、顧客側の要求に応じてなされるものであり、擦り傷53の発生防止のためにペール缶製造者側で勝手に変更可能な事項ではない。
【0011】
又、各セグメント2の円弧面2aにおける傷の発生を低減させるため、セグメント2の材質の改良、例えばハードクロムメッキ、テフロン(登録商標)処理、窒化処理、チタン処理、等を行い、各セグメント2の円弧面2aの滑り性及び耐摩耗性の向上を図っているが、満足する結果が得られるには至っていない。
【0012】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、エキスパンダー加工におけるペール缶胴体部の内面における傷の発生を、簡易な方法で従来に比べて低減する、エキスパンド型、該エキスパンド型を利用したペール缶の製造方法、及び該製造方法にて製造されたペール缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様のエキスパンド型は、全体形状が略円筒形であり、その周方向に分割された円弧面を有する複数のセグメントを有し、拡径前の初期状態にある円筒体の内側に配置され、上記円筒体の直径方向に沿ってそれぞれの上記セグメントを放射状に広げて上記円筒体の内面を押圧することで上記円筒体を拡径して拡径状態のペール缶胴体部に成型するエキスパンド型において、
上記初期状態における上記円筒体の上記内面にそれぞれの上記セグメントの上記円弧面が非押圧にて接触した状態において上記エキスパンド型の周面を真円とする円弧面を有するセグメントを備えたことを特徴とする。
【0014】
又、上記各セグメントの上記円弧面は、上記初期状態における上記円筒体の上記内面を形成する半径に同一で、かつ上記周方向に均一な半径にて形成することができる。
【0015】
さらに又、本発明の第2態様のエキスパンド型は、全体形状が略円筒形であり、その周方向に分割された円弧面を有する複数のセグメントを有し、拡径前の初期状態にある円筒体の内側に配置され、上記円筒体の直径方向に沿ってそれぞれの上記セグメントを放射状に広げて上記円筒体の内面を押圧することで上記円筒体を拡径して拡径状態のペール缶胴体部に成型するエキスパンド型において、
上記各セグメントの円弧面は、第1半径にて形成された、上記周方向におけるセグメント両縁部と、上記第1半径よりも小さい第2半径にて形成された、上記周方向において上記セグメント両縁部に挟まれたセグメント中央部とを有する、
ことを特徴とする。
【0016】
又、上記第2態様において、上記第1半径は、上記初期状態における上記円筒体の内面を形成する半径に同一の半径、又は上記拡径状態にある上記ペール缶胴体部の内面を形成する半径に同一の半径であるようにしてもよい。
【0017】
又、上記第1態様及び上記第2態様において、上記セグメントの上記円弧面は、上記円筒体の拡径を良好に行わせる改善処理層を有するようにしてもよい。
【0018】
又、本発明の第3態様のペール缶は、上記第1態様又は上記第2態様に記載のエキスパンド型にて成型されたペール缶胴体部を備えたことを特徴とする。
【0019】
又、本発明の第4態様のペール缶製造方法は、上記第1態様又は上記第2態様に記載のエキスパンド型を使用して円筒状で拡径前の初期状態の円筒体を拡径状態のペール缶胴体部に拡径成型してペール缶を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
従来、拡径後の拡径状態にエキスパンド型の各セグメントが開いたときに、各セグメントの円弧面にて形成されるエキスパンド型の周面が真円となる半径にて上記円弧面は形成されていた。これに対し、上記第1態様のエキスパンド型によれば、エキスパンド型が拡径前の初期状態にあるときに、各セグメントの円弧面にて形成されるエキスパンド型の周面が真円となる半径にて、各セグメントの円弧面を形成する。よって、拡径される円筒体の内面には、拡径開始当初から各セグメントの円弧面の全面が接触して、拡径動作が進行する。従って、従来のように拡径動作に当たり、各セグメントの円弧面の両縁部と円筒体の内面との摩擦により円筒体の内面に擦り傷が生じるという現象は低減する。
【0021】
又、上記第2態様のエキスパンド型によれば、セグメントの円弧面は、第1半径にて形成されるセグメント両縁部と、第1半径よりも小さい第2半径にて形成されるセグメント中央部とを有する。よって、セグメント中央部は、セグメント両縁部にて形成される円弧面より円筒体の直径方向へ突出した円弧面を形成する。よって、セグメント中央部が円筒体の内面を直径方向に押圧しながら拡径動作が実行される。従って、従来のように拡径動作に当たり、各セグメントの円弧面の両縁部と円筒体の内面との摩擦により円筒体の内面に擦り傷が生じるという現象は低減する。
【0022】
又、第3態様のペール缶によれば、上述した第1態様又は第2態様によるエキスパンド型を用いてペール缶胴体部が成型されることから、製品であるペール缶の内面における擦り傷を従来に比べて低減することができる。
【0023】
又、第4態様のペール缶製造方法によれば、ペール缶胴体部に関する基本的な成型動作は、従来のものと変わるところはなく、変更した部分は、エキスパンド型の各セグメントの円弧面を形成する半径である。よって、従来に比べて簡易な方法にて、円筒体の内面における傷の発生を従来に比べて低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施形態であるエキスパンド型、該エキスパンド型を利用したペール缶の製造方法、及び上記エキスパンド型を用いて製造されるペール缶について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0025】
本実施形態におけるエキスパンド型は、上述のエキスパンド型1と基本的に同様の構造及び機能を有し、図6に示されるペール缶150の製造工程においてペール缶胴体部152を成型するための分割金型である。尚、上記ペール缶150は、以下に説明するように本実施形態におけるエキスパンド型にて成型されたペール缶胴体部152を有するペール缶であり、外観(ペール缶胴体部の内面を除く)、構成、及び機能上、図12に示すペール缶50と変わるところはない。
本実施形態におけるエキスパンド型について、図2を参照して具体的に説明する。本実施形態におけるエキスパンド型101は、全体形状が略円筒形であり、該円筒形の周方向101aに沿って分割された円弧面102aを有する複数のセグメント102を有する。よって、セグメント102は、エキスパンド型101の中心軸を中心として例えば16等分された各々の部材である。尚、図2は、エキスパンド型101を模式図的に記したもので、セグメント数等は、実物に対応していない。
【0026】
このように構成されるエキスパンド型101は、図8に示す上述した従来のエキスパンダー10において、エキスパンド型1に代えて取り付け可能である。よって、エキスパンド型1を除くエキスパンダー10の構成部分は、従来の構成のまま使用することができる。よって、ここでの、エキスパンド型101を取り付けたエキスパンダー10に関する詳しい説明は省略するが、エキスパンド型101を取り付けたエキスパンダー10は、円筒体51の内側にエキスパンド型101を配置した状態にて、円筒体51の直径方向51bに沿って各セグメント102を放射状に広げることで、円筒体51を拡径し、拡径状態のペール缶胴体部152に成型することができる。
【0027】
一方、エキスパンド型101は、以下の点で従来のエキスパンド型1と相違する。
即ち、図9を参照して上述したように、従来のエキスパンド型1では、各セグメント2の円弧面2aは、拡径後の拡径状態にあるペール缶胴体部52を成型したときに真円を形成するような半径、つまり上記半径R3にて形成されていた。これに対し、本実施形態のエキスパンド型101では、図1に示すように、拡径前の初期状態にある円筒体51の内面51aにそれぞれのセグメント102の円弧面102aが接触し、かつ各セグメント102が円筒体51の直径方向51bに内面51aを未だ押圧していない非押圧状態において、エキスパンド型101の周面101bが真円となるような円弧面102aを各セグメント102が有する。尚、上記初期状態にある円筒体51の内面51aに上記非押圧状態にて各セグメント102の円弧面102aが接触した状態では、各セグメント102は放射状に僅かに広げられた状態であることから、エキスパンド型101の上記周面101bとは、間欠的に存在する各セグメント102の円弧面102aを包括した、エキスパンド型1の全体の周面を意味する。
【0028】
各セグメント102の円弧面102aについて、より詳しく説明すると、各セグメント102の円弧面102aは、上記初期状態における円筒体51の内面51aを形成する半径に同一であり、かつエキスパンド型101の周方向101aに均一な、図1に示す、半径R0にて形成されている。具体的に説明すると、上述したように、拡径前における円筒体51の内径は、φ270mm、つまり半径135mmである。よって、各セグメント102の円弧面102aは、半径135mm、つまり上記半径R0=135mmにて形成されている。
尚、図1は、エキスパンド型101を模式図的に記したもので、セグメント数等は、実物に対応していない。
【0029】
このような構成を有するエキスパンド型101は、上述のようにエキスパンダー10に取り付けられ、初期状態における円筒体51から拡径状態におけるペール缶胴体部152への成型を行う。該成型動作について以下に説明する。
即ち、エキスパンダー10に備わる駆動軸11の軸方向1cへの移動による、上記くさび状部材11aと上記テーパー部2bとの係合状態の変化により、エキスパンド型101の各セグメント102は、円筒体51の直径方向51bに沿って放射状に移動する。よって、上記初期状態における円筒体51の内面51aに、円弧面102aの全面で接触していた各セグメント102は、円筒体51を拡径する。本実施形態のエキスパンド型101を使用した拡径動作では、上述のように上記初期状態における円筒体51の内面51aに円弧面102aの全面が接触していることから、従来のように各セグメント2の両縁部2cが内面51aを擦りながら拡径を行うという現象は生じない。よって、円筒体51の内面51aに上記合成樹脂塗装を施していない素地のままの円筒体51であっても、拡径動作にあたり、円筒体51の内面51aに、従来の擦り傷53が生じることを低減することができる。勿論、擦り傷53の発生低減のために、素地の円筒体51の内面51aに潤滑剤を塗布し拡径後に該潤滑剤を洗浄、除去するような、余分な工程を採らなくても擦り傷53の発生を十分に低減可能である。
尚、本実施形態は、上記潤滑剤の塗布を制限、禁止するものではなく、上記潤滑剤を塗布することで、より一層、擦り傷53の発生を低減可能なことは明らかである。
【0030】
上述のように拡径後の拡径状態に成型されたペール缶胴体部152の内径は、φ278mmであり、半径は139mm(半径R3)となる。一方、上述のように、本実施形態のエキスパンド型101のセグメント102の円弧面102aの半径は、135mm(半径R0)である。よって、拡径状態であるペール缶胴体部152では、半径135mmにて形成された各セグメント102の円弧面102aは、図3に示すように、上記半径139mmの真の内周面1521に対してその全面では接触せず、円弧面102aの両縁部1021は接触しないことになる。よって、微視的には、拡径状態に成型されたペール缶胴体部152の内面152aは、図3に示すような半径139mmの真の内周面1521の真円には成型されず、屈曲した周囲面にてなる略正多角形の形状となると考えられる。尚、図3は、理解を容易にするため、セグメント102の円弧面102aと、真の内周面1521との関係を実際に対して誇張して図示している。
しかしながら、実際には、半径135mmにて形成された各セグメント102の円弧面102aにて円筒体51の拡径を行っても、JIS規定上、及び製品上、全く支障のない状態にペール缶胴体部152を仕上げることができることを、出願人は確認している。
【0031】
このように本実施形態のエキスパンド型101によれば、従来のエキスパンド型1に対して非常に簡易な構成の変更にて、ペール缶胴体部の内面における傷の発生を従来に比べて低減することができる。又、各セグメント102の円弧面102aは、以下に説明する変形例における構成に比べて簡易な構成であり、以下の変形例に比べてコスト的に有利である。
【0032】
以下に、第2の実施形態のエキスパンド型について説明する。
上述のようにエキスパンド型101の各セグメント102の円弧面102aは、上記周方向101aに均一な半径にて形成している。一方、従来のセグメント2のように、その円弧面2aが半径R3の半径139mmにて形成されている場合でも、上記初期状態における円筒体51の内面51aに各セグメント2の両縁部2cが当接しないように構成することで、擦り傷53の発生は低減可能と考えられる。
上記「両縁部2cが当接しないような構成」の一例として、図4に示す構成がある。図4は、第2の実施形態のエキスパンド型105を構成するセグメント106の一つを示している。尚、エキスパンド型105は、上述のエキスパンド型101と同様に、エキスパンダー10に取付可能であり上記初期状態の円筒体51を拡径状態のペール缶胴体部152に成型する分割金型である。
【0033】
各セグメント106の円弧面106aは、第1半径R1にて形成された、エキスパンド型105の周方向105aにおけるセグメント両縁部106cと、第1半径R1よりも小さい第2半径R2にて形成された、周方向105aにおいてセグメント両縁部106cに挟まれたセグメント中央部106dとを有する。上記第1半径R1及び上記第2半径R2の関係を有する構成を採ることで、セグメント中央部106dは、図4に示すように、セグメント両縁部106cを含み周方向105aに均一な半径にて形成される円弧面106aよりも円筒体51の直径方向51bへ突出した円弧面106eを形成する。
【0034】
上述したように擦り傷53の発生を低減するためには、上記初期状態における円筒体51の内面51aに各セグメント106の両縁部106cが当接しないような構成を有すればよいという観点からすれば、上記第1半径R1は、特に規定されないが、拡径状態のペール缶胴体部152に成型するという現実的な観点から、例えば上記初期状態における円筒体51の内面51aを形成する半径R0つまり半径135mm、又は、拡径状態のペール缶胴体部152の内面152aを形成する半径R3つまり半径139mmに同じ半径とするのが好ましい。
【0035】
一実施例として、各セグメント106の円弧面106aのセグメント両縁部106cを形成する第1半径R1を半径R0つまり半径135mmとし、セグメント中央部106dを形成する第2半径を上記半径135mmよりも5mm小さくした半径130mmとすることができる。
【0036】
又、各セグメント106の円弧面106aに占める、セグメント中央部106dの円弧面106eの割合について説明する。上記初期状態における円筒体51の内面51aに各セグメント106の両縁部106cが当接しないような構成を各セグメント106が有すればよいという観点からすれば、上記第1半径と相互に関係するものの、円弧面106eの上記割合は、基本的に特に規定されないが、拡径状態のペール缶胴体部152に成型するという現実的な観点から、例えば図4に示すように、一つのセグメント106の中心角を4等分した内の中央部分の2θ分の角度、又はほぼ2θ分の角度に相当するように、セグメント中央部106dの円弧面106eが存在するような割合が好ましい。
【0037】
上述したように各セグメント106に、円弧面106aよりも円筒体51の直径方向51bへ突出した円弧面106eを有するセグメント中央部106dを形成することで、円筒体51の拡径動作に当たり、上記初期状態の円筒体51の内面51aにはセグメント中央部106dが当接して円筒体51が拡径され、拡径状態のペール缶胴体部152に成型される。拡径動作中、常にセグメント中央部106dが円筒体51の内面51aに接触して円筒体51の拡径を行う。よって、従来のように拡径動作に当たり円弧面2aの両縁部2cの摩擦により円筒体51の内面51aに擦り傷53が生じるという現象は低減する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態のエキスパンド型101、105によれば、拡径動作による円筒体51の内面51aへの擦り傷53の発生を低減することができる。又、このことは、エキスパンド型101、105のセグメント102、106の円弧面102a、106aにおける傷の発生も低減することになる。よって、エキスパンド型101、105は、エキスパンド型の長寿命化にも寄与する。
【0039】
さらに又,上述したエキスパンド型101の各セグメント102の円弧面102a、及びエキスパンド型105の各セグメント106の円弧面106aは、図5に示すように、改善処理層103を有するのが好ましい。
改善処理層103は、上述したような擦り傷53が各セグメント102の円弧面102a及び各セグメント106の円弧面106aに生じるのを低減し、円筒体51の拡径を良好に行うための部分である。改善処理層103は、セグメント102、106の材質を改良した部分であり、例えばハードクロムメッキ、テフロン(登録商標)処理、窒化処理、チタン処理、等が行われ、各セグメント102、106の円弧面102a、106aの滑り性及び耐摩耗性を向上させる部分である。
このような改善処理層103を各セグメント102、106の円弧面102a、106aに形成することで、上記滑り性及び上記耐摩耗性が向上することから、本実施形態の上述したエキスパンド型101、105の構成との相乗効果にて、さらに擦り傷53の発生を低減することができる。
【0040】
上述したように構成されるエキスパンド型101、105を用いて成型されたペール缶胴体部152に対し、地板53及び取っ手54が固定され、又、天板55等が取り付けられることもある。このようにして図6に示すようなペール缶150が製造される。従来のペール缶50に比べて、本実施形態におけるペール缶150では、ペール缶胴体部152の内面152aに擦り傷53の発生が少なく、ペール缶の商品価値を低下させることはない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ペール缶の製造に使用されるエキスパンド型、及び該エキスパンド型を利用したペール缶の製造方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態のエキスパンド型を示す平面図である。
【図2】図1に示すエキスパンド型の斜視図である。
【図3】図1に示すエキスパンド型にてペール缶胴体部を成型した状態を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態のエキスパンド型を構成するセグメントの一つを示す平面図である。
【図5】図1に示すエキスパンド型のセグメントに改善処理層を形成した状態を示す断面図である。
【図6】図1及び図4に示すエキスパンド型にて成型されたペール缶胴体部を有するペール缶を示す斜視図である。
【図7】従来のエキスパンド型の斜視図である。
【図8】エキスパンド型を備え円筒体の拡径を行うエキスパンダーを示す正面図である。
【図9】従来のエキスパンド型を示す平面図である。
【図10】従来のエキスパンド型のセグメントが初期状態の円筒体の内面に接触した状態を示す平面図である。
【図11】従来のエキスパンド型による拡径動作により、円筒体の内面に生じた擦り傷を示す概略図である。
【図12】従来のエキスパンド型にて成型されたペール缶胴体部を有するペール缶を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
51…円筒体、51a…内面、51b…直径方向、
101…エキスパンド型、101b…周面、102…セグメント、
102a…円弧面、105…エキスパンド、106…セグメント、
106a…円弧面、106c…セグメント両縁部、103…改善処理層、
150…ペール缶、152…ペール缶胴体部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、JIS(日本工業規格)Z1620(1995年)に規定されるペール缶の製造に使用されるエキスパンド型、該エキスパンド型を用いたペール缶の製造方法、及び上記エキスパンド型を用いて製造されるペール缶に関する。
【背景技術】
【0002】
上記JIS Z 1620に規定され、図12に示すように、ペール缶胴体部52に対し地板53及び取っ手54を設けた18リットル及び20リットル用の容器は一般的にペール缶50と呼ばれる。該ペール缶50は、その軸方向における缶中央部から底部にかけて先細りに成型されたテーパータイプと、このような先細り成型を施していないストレートタイプ(ネックインタイプを含む)とに大別される。
このようなペール缶では、JIS G 3315に規定されるティンフリースチール(TFSと称することもある。)又はJIS G 3303に規定されるブリキ材が缶材に用いられる。これらの缶材は、まず円筒状に丸められ、その周方向における薄鋼板端部のラップ部をマッシュシーム溶接して、拡径前の円筒体に形成される。このような拡径前の初期状態にある円筒体の内側にエキスパンド型を配置して、該エキスパンド型にて上記円筒体を内側から外側に向けて押圧することで、上記円筒体が拡径され、上記ペール缶胴体部52に成型される。尚、エキスパンド型の形状により、上記テーパータイプ及び上記ストレートタイプが選択される。又、上述のエキスパンダーによる加工前に、上記円筒体の内面には合成樹脂塗装を行う場合もある。
【0003】
図を参照して上述のエキスパンダー加工について説明する。エキスパンダー加工は、図7に示すようなエキスパンド型1を備えかつ図8に示すような構成を有するエキスパンダー10にて行われる。エキスパンド型1は、全体形状が略円筒形であり、該円筒形の周方向1aに沿って分割された円弧面2aを有する複数のセグメント2を有する。よって、セグメント2は、エキスパンド型1の中心軸を中心として例えば16等分された略扇形柱にてなる各々の部材である。尚、図7は、エキスパンド型1を模式図的に記したもので、セグメント数等は、実物に対応していない。
【0004】
エキスパンダー10は、図8に示すように、上述のエキスパンド型1と、エキスパンド型1内にてエキスパンド型1と係合しかつエキスパンド型1の軸方向1cに沿って可動な駆動軸11とを備える。駆動軸11は、くさび状の部材11aを有し、エキスパンド型1内には、くさび状部材11aと係合するテーパー部2bが形成されている。よって、エキスパンダー10は、駆動軸11を軸方向1cに移動させることで、くさび状部材11aとテーパー部2bとの係合状態を変化させ、これによりエキスパンド型1を、図7に示すように各セグメント2が閉じた状態から放射状に開いた状態に、逆に、開いた状態から閉じた状態に、変形可能である。
【0005】
拡径前の初期状態にある円筒体から、拡径後の拡径状態に成型されたペール缶胴体部を作製する、上述のエキスパンダー加工では、閉じた状態にあるエキスパンド型1が上記円筒体の内側に位置するように、エキスパンド型1及び上記円筒体を配置する。そして、上述のように、駆動軸11を移動させて各セグメント2を放射状に移動させてエキスパンド型1を開くことで、円筒体の内面を直径方向に押圧する。これにより円筒体の拡径を行い、上記ペール缶胴体部が成型される。
そして、このように拡径状態に成型されたペール缶胴体部に対し、地板及び取っ手が固定され、又、天板等が取り付けられることもある。このようにして図12に示すようなペール缶50が製造される。
尚、ペール缶の製造における上記拡径動作に関して開示する適当な従来技術文献を見つけることはできないが、飲料缶等の缶胴部の拡径動作に関して、例えば特許文献1に記載がある。
【特許文献1】特開2004−298881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のようにペール缶についてはJIS Z 1620にて寸法等が規定されている。又、上記ペール缶胴体部52は、製品であるペール缶の胴体部として使用されることから、上記円筒体を上記ペール缶胴体部に成型する際も、製品であるペール缶の胴体部として条件を満足するように、規定寸法を含め仕上がり状態を調整するのが好ましい。このような観点から、上述した従来のエキスパンダー10では、図9に示すように、拡径後の拡径状態に成型されたペール缶胴体部52において、即ち、エキスパンド型1の各セグメント2が放射状に広がった状態において、周上に間欠的に存在する各セグメント2の円弧面2aを包括した、エキスパンド型1の全体の周面1bが、真円をなすように、各セグメント2の円弧面2aの曲率が設計され、該曲率となる半径にて各セグメント2の円弧面2aが形成されていた。具体的には、拡径後の拡径状態に成型されたペール缶胴体部52の内径は、φ278mmと規定されていることから、各セグメント2の円弧面2aは、半径139mmの曲率にて形成されていた。説明上、半径139mmを半径R3とする。
尚、図9は、エキスパンド型1を模式図的に記したもので、セグメント数等は、実物に対応していない。
【0007】
一方、拡径前における円筒体の内径は、φ270mm、つまり半径135mmである。説明上、半径135mmを半径R0とする。又、上述のように、各セグメント2を閉じた状態にて、上記円筒体の内側へエキスパンド型1が挿入され、その後、各セグメント2が開かれる。上述のように、半径R3、つまり半径139mmの曲率にて形成されている円弧面2aに対して円筒体51の内面51aの半径は、R0つまり135mmであり、内面51aの方が円弧面2aよりも小さい円となる。よって、各セグメント2が開かれ各セグメント2の円弧面2aが円筒体の内面に接触したときの非押圧の状態を微視的に表すと、図10に示すように、各セグメント2の円弧面2aの両縁部2cが、まず円筒体51の内面51aに接することになる。そして、各セグメント2がさらに開かれるに従い、各セグメント2の円弧面2aの両縁部2cが円筒体51の内面51aをこすりながら円筒体51を拡径する。そして最終的に図9に示すように、各セグメント2の円弧面2aの全面が円筒体51の内面51aに接して、拡径されたペール缶胴体部52を成型する。尚、理解を容易にするため、図10は、形状に関して円弧面2aと内面51aとの関係を実際より誇張して図示している。
【0008】
上述のような構成を有する従来のエキスパンダー10では、以下に説明するような問題が生じる。
即ち、上述のように円弧面2aの両縁部2cが円筒体51の内面51aをこすりながら円筒体51の拡径を行うことから、拡径状態のペール缶胴体部52の内面52aには、図11に示すように、擦り傷53が生じる場合が多い。擦り傷53は、内面52aの内、各セグメント2の円弧面2aの、特に両縁部2cが当接する箇所に多く発生する。又、拡径に伴い円筒体51はその軸方向に縮むことから、擦り傷53は、ペール缶胴体部52の軸方向における両端部、特に製品で天板側となる端部付近にも多く発生する。このような、内面52aにおける擦り傷53は、外観上好ましくなく、ペール缶の商品価値を低下させるという問題がある。
【0009】
尚、このような擦り傷53の発生を防止するために、例えば、拡径を行うに当たり円筒体51の内面51aに潤滑剤を塗布しておく方法も考えられるが、コスト及び工程の増加等の理由から得策ではなく、ペール缶業界では行われていない。
【0010】
又、上述のように円弧面2aの両縁部2cの摩擦量が多くなることから、各セグメント2の円弧面2aにも傷が発生する。円弧面2aにおける傷の発生は、エキスパンド型1の短寿命化につながるという問題がある。一方、缶用途や顧客要求等により、円筒体51の内面51aに合成樹脂塗装を施した円筒体51の場合には、円弧面2aと内面51aとの摩擦が低減することから、擦り傷53は比較的発生し難くなる。又、ブリキ材は、自己潤滑性を有することから、缶材にブリキ材を用いる場合も擦り傷53は比較的発生し難くなる。
しかしながら、円弧面2aに傷を有するエキスパンド型1では、合成樹脂塗装を施した円筒体51であっても、円筒体51の内面51aに擦り傷53を発生させてしまう。又、各セグメント2の円弧面2aにおける傷は、円弧面2aと円筒体51の内面51aとの摩擦をより大きくし擦り傷53の発生を加速させ、又、缶材が上記ティンフリースチールの場合には表面メッキを削りその微粒子が各セグメント2の円弧面2aに付着することにより、擦り傷53の発生を加速させてしまうという問題がある。尚、上述した、円筒体51の内面51aに対する潤滑剤の塗布、合成樹脂塗装、缶材の選択等の事項は、顧客側の要求に応じてなされるものであり、擦り傷53の発生防止のためにペール缶製造者側で勝手に変更可能な事項ではない。
【0011】
又、各セグメント2の円弧面2aにおける傷の発生を低減させるため、セグメント2の材質の改良、例えばハードクロムメッキ、テフロン(登録商標)処理、窒化処理、チタン処理、等を行い、各セグメント2の円弧面2aの滑り性及び耐摩耗性の向上を図っているが、満足する結果が得られるには至っていない。
【0012】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、エキスパンダー加工におけるペール缶胴体部の内面における傷の発生を、簡易な方法で従来に比べて低減する、エキスパンド型、該エキスパンド型を利用したペール缶の製造方法、及び該製造方法にて製造されたペール缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様のエキスパンド型は、全体形状が略円筒形であり、その周方向に分割された円弧面を有する複数のセグメントを有し、拡径前の初期状態にある円筒体の内側に配置され、上記円筒体の直径方向に沿ってそれぞれの上記セグメントを放射状に広げて上記円筒体の内面を押圧することで上記円筒体を拡径して拡径状態のペール缶胴体部に成型するエキスパンド型において、
上記初期状態における上記円筒体の上記内面にそれぞれの上記セグメントの上記円弧面が非押圧にて接触した状態において上記エキスパンド型の周面を真円とする円弧面を有するセグメントを備えたことを特徴とする。
【0014】
又、上記各セグメントの上記円弧面は、上記初期状態における上記円筒体の上記内面を形成する半径に同一で、かつ上記周方向に均一な半径にて形成することができる。
【0015】
さらに又、本発明の第2態様のエキスパンド型は、全体形状が略円筒形であり、その周方向に分割された円弧面を有する複数のセグメントを有し、拡径前の初期状態にある円筒体の内側に配置され、上記円筒体の直径方向に沿ってそれぞれの上記セグメントを放射状に広げて上記円筒体の内面を押圧することで上記円筒体を拡径して拡径状態のペール缶胴体部に成型するエキスパンド型において、
上記各セグメントの円弧面は、第1半径にて形成された、上記周方向におけるセグメント両縁部と、上記第1半径よりも小さい第2半径にて形成された、上記周方向において上記セグメント両縁部に挟まれたセグメント中央部とを有する、
ことを特徴とする。
【0016】
又、上記第2態様において、上記第1半径は、上記初期状態における上記円筒体の内面を形成する半径に同一の半径、又は上記拡径状態にある上記ペール缶胴体部の内面を形成する半径に同一の半径であるようにしてもよい。
【0017】
又、上記第1態様及び上記第2態様において、上記セグメントの上記円弧面は、上記円筒体の拡径を良好に行わせる改善処理層を有するようにしてもよい。
【0018】
又、本発明の第3態様のペール缶は、上記第1態様又は上記第2態様に記載のエキスパンド型にて成型されたペール缶胴体部を備えたことを特徴とする。
【0019】
又、本発明の第4態様のペール缶製造方法は、上記第1態様又は上記第2態様に記載のエキスパンド型を使用して円筒状で拡径前の初期状態の円筒体を拡径状態のペール缶胴体部に拡径成型してペール缶を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
従来、拡径後の拡径状態にエキスパンド型の各セグメントが開いたときに、各セグメントの円弧面にて形成されるエキスパンド型の周面が真円となる半径にて上記円弧面は形成されていた。これに対し、上記第1態様のエキスパンド型によれば、エキスパンド型が拡径前の初期状態にあるときに、各セグメントの円弧面にて形成されるエキスパンド型の周面が真円となる半径にて、各セグメントの円弧面を形成する。よって、拡径される円筒体の内面には、拡径開始当初から各セグメントの円弧面の全面が接触して、拡径動作が進行する。従って、従来のように拡径動作に当たり、各セグメントの円弧面の両縁部と円筒体の内面との摩擦により円筒体の内面に擦り傷が生じるという現象は低減する。
【0021】
又、上記第2態様のエキスパンド型によれば、セグメントの円弧面は、第1半径にて形成されるセグメント両縁部と、第1半径よりも小さい第2半径にて形成されるセグメント中央部とを有する。よって、セグメント中央部は、セグメント両縁部にて形成される円弧面より円筒体の直径方向へ突出した円弧面を形成する。よって、セグメント中央部が円筒体の内面を直径方向に押圧しながら拡径動作が実行される。従って、従来のように拡径動作に当たり、各セグメントの円弧面の両縁部と円筒体の内面との摩擦により円筒体の内面に擦り傷が生じるという現象は低減する。
【0022】
又、第3態様のペール缶によれば、上述した第1態様又は第2態様によるエキスパンド型を用いてペール缶胴体部が成型されることから、製品であるペール缶の内面における擦り傷を従来に比べて低減することができる。
【0023】
又、第4態様のペール缶製造方法によれば、ペール缶胴体部に関する基本的な成型動作は、従来のものと変わるところはなく、変更した部分は、エキスパンド型の各セグメントの円弧面を形成する半径である。よって、従来に比べて簡易な方法にて、円筒体の内面における傷の発生を従来に比べて低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施形態であるエキスパンド型、該エキスパンド型を利用したペール缶の製造方法、及び上記エキスパンド型を用いて製造されるペール缶について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
【0025】
本実施形態におけるエキスパンド型は、上述のエキスパンド型1と基本的に同様の構造及び機能を有し、図6に示されるペール缶150の製造工程においてペール缶胴体部152を成型するための分割金型である。尚、上記ペール缶150は、以下に説明するように本実施形態におけるエキスパンド型にて成型されたペール缶胴体部152を有するペール缶であり、外観(ペール缶胴体部の内面を除く)、構成、及び機能上、図12に示すペール缶50と変わるところはない。
本実施形態におけるエキスパンド型について、図2を参照して具体的に説明する。本実施形態におけるエキスパンド型101は、全体形状が略円筒形であり、該円筒形の周方向101aに沿って分割された円弧面102aを有する複数のセグメント102を有する。よって、セグメント102は、エキスパンド型101の中心軸を中心として例えば16等分された各々の部材である。尚、図2は、エキスパンド型101を模式図的に記したもので、セグメント数等は、実物に対応していない。
【0026】
このように構成されるエキスパンド型101は、図8に示す上述した従来のエキスパンダー10において、エキスパンド型1に代えて取り付け可能である。よって、エキスパンド型1を除くエキスパンダー10の構成部分は、従来の構成のまま使用することができる。よって、ここでの、エキスパンド型101を取り付けたエキスパンダー10に関する詳しい説明は省略するが、エキスパンド型101を取り付けたエキスパンダー10は、円筒体51の内側にエキスパンド型101を配置した状態にて、円筒体51の直径方向51bに沿って各セグメント102を放射状に広げることで、円筒体51を拡径し、拡径状態のペール缶胴体部152に成型することができる。
【0027】
一方、エキスパンド型101は、以下の点で従来のエキスパンド型1と相違する。
即ち、図9を参照して上述したように、従来のエキスパンド型1では、各セグメント2の円弧面2aは、拡径後の拡径状態にあるペール缶胴体部52を成型したときに真円を形成するような半径、つまり上記半径R3にて形成されていた。これに対し、本実施形態のエキスパンド型101では、図1に示すように、拡径前の初期状態にある円筒体51の内面51aにそれぞれのセグメント102の円弧面102aが接触し、かつ各セグメント102が円筒体51の直径方向51bに内面51aを未だ押圧していない非押圧状態において、エキスパンド型101の周面101bが真円となるような円弧面102aを各セグメント102が有する。尚、上記初期状態にある円筒体51の内面51aに上記非押圧状態にて各セグメント102の円弧面102aが接触した状態では、各セグメント102は放射状に僅かに広げられた状態であることから、エキスパンド型101の上記周面101bとは、間欠的に存在する各セグメント102の円弧面102aを包括した、エキスパンド型1の全体の周面を意味する。
【0028】
各セグメント102の円弧面102aについて、より詳しく説明すると、各セグメント102の円弧面102aは、上記初期状態における円筒体51の内面51aを形成する半径に同一であり、かつエキスパンド型101の周方向101aに均一な、図1に示す、半径R0にて形成されている。具体的に説明すると、上述したように、拡径前における円筒体51の内径は、φ270mm、つまり半径135mmである。よって、各セグメント102の円弧面102aは、半径135mm、つまり上記半径R0=135mmにて形成されている。
尚、図1は、エキスパンド型101を模式図的に記したもので、セグメント数等は、実物に対応していない。
【0029】
このような構成を有するエキスパンド型101は、上述のようにエキスパンダー10に取り付けられ、初期状態における円筒体51から拡径状態におけるペール缶胴体部152への成型を行う。該成型動作について以下に説明する。
即ち、エキスパンダー10に備わる駆動軸11の軸方向1cへの移動による、上記くさび状部材11aと上記テーパー部2bとの係合状態の変化により、エキスパンド型101の各セグメント102は、円筒体51の直径方向51bに沿って放射状に移動する。よって、上記初期状態における円筒体51の内面51aに、円弧面102aの全面で接触していた各セグメント102は、円筒体51を拡径する。本実施形態のエキスパンド型101を使用した拡径動作では、上述のように上記初期状態における円筒体51の内面51aに円弧面102aの全面が接触していることから、従来のように各セグメント2の両縁部2cが内面51aを擦りながら拡径を行うという現象は生じない。よって、円筒体51の内面51aに上記合成樹脂塗装を施していない素地のままの円筒体51であっても、拡径動作にあたり、円筒体51の内面51aに、従来の擦り傷53が生じることを低減することができる。勿論、擦り傷53の発生低減のために、素地の円筒体51の内面51aに潤滑剤を塗布し拡径後に該潤滑剤を洗浄、除去するような、余分な工程を採らなくても擦り傷53の発生を十分に低減可能である。
尚、本実施形態は、上記潤滑剤の塗布を制限、禁止するものではなく、上記潤滑剤を塗布することで、より一層、擦り傷53の発生を低減可能なことは明らかである。
【0030】
上述のように拡径後の拡径状態に成型されたペール缶胴体部152の内径は、φ278mmであり、半径は139mm(半径R3)となる。一方、上述のように、本実施形態のエキスパンド型101のセグメント102の円弧面102aの半径は、135mm(半径R0)である。よって、拡径状態であるペール缶胴体部152では、半径135mmにて形成された各セグメント102の円弧面102aは、図3に示すように、上記半径139mmの真の内周面1521に対してその全面では接触せず、円弧面102aの両縁部1021は接触しないことになる。よって、微視的には、拡径状態に成型されたペール缶胴体部152の内面152aは、図3に示すような半径139mmの真の内周面1521の真円には成型されず、屈曲した周囲面にてなる略正多角形の形状となると考えられる。尚、図3は、理解を容易にするため、セグメント102の円弧面102aと、真の内周面1521との関係を実際に対して誇張して図示している。
しかしながら、実際には、半径135mmにて形成された各セグメント102の円弧面102aにて円筒体51の拡径を行っても、JIS規定上、及び製品上、全く支障のない状態にペール缶胴体部152を仕上げることができることを、出願人は確認している。
【0031】
このように本実施形態のエキスパンド型101によれば、従来のエキスパンド型1に対して非常に簡易な構成の変更にて、ペール缶胴体部の内面における傷の発生を従来に比べて低減することができる。又、各セグメント102の円弧面102aは、以下に説明する変形例における構成に比べて簡易な構成であり、以下の変形例に比べてコスト的に有利である。
【0032】
以下に、第2の実施形態のエキスパンド型について説明する。
上述のようにエキスパンド型101の各セグメント102の円弧面102aは、上記周方向101aに均一な半径にて形成している。一方、従来のセグメント2のように、その円弧面2aが半径R3の半径139mmにて形成されている場合でも、上記初期状態における円筒体51の内面51aに各セグメント2の両縁部2cが当接しないように構成することで、擦り傷53の発生は低減可能と考えられる。
上記「両縁部2cが当接しないような構成」の一例として、図4に示す構成がある。図4は、第2の実施形態のエキスパンド型105を構成するセグメント106の一つを示している。尚、エキスパンド型105は、上述のエキスパンド型101と同様に、エキスパンダー10に取付可能であり上記初期状態の円筒体51を拡径状態のペール缶胴体部152に成型する分割金型である。
【0033】
各セグメント106の円弧面106aは、第1半径R1にて形成された、エキスパンド型105の周方向105aにおけるセグメント両縁部106cと、第1半径R1よりも小さい第2半径R2にて形成された、周方向105aにおいてセグメント両縁部106cに挟まれたセグメント中央部106dとを有する。上記第1半径R1及び上記第2半径R2の関係を有する構成を採ることで、セグメント中央部106dは、図4に示すように、セグメント両縁部106cを含み周方向105aに均一な半径にて形成される円弧面106aよりも円筒体51の直径方向51bへ突出した円弧面106eを形成する。
【0034】
上述したように擦り傷53の発生を低減するためには、上記初期状態における円筒体51の内面51aに各セグメント106の両縁部106cが当接しないような構成を有すればよいという観点からすれば、上記第1半径R1は、特に規定されないが、拡径状態のペール缶胴体部152に成型するという現実的な観点から、例えば上記初期状態における円筒体51の内面51aを形成する半径R0つまり半径135mm、又は、拡径状態のペール缶胴体部152の内面152aを形成する半径R3つまり半径139mmに同じ半径とするのが好ましい。
【0035】
一実施例として、各セグメント106の円弧面106aのセグメント両縁部106cを形成する第1半径R1を半径R0つまり半径135mmとし、セグメント中央部106dを形成する第2半径を上記半径135mmよりも5mm小さくした半径130mmとすることができる。
【0036】
又、各セグメント106の円弧面106aに占める、セグメント中央部106dの円弧面106eの割合について説明する。上記初期状態における円筒体51の内面51aに各セグメント106の両縁部106cが当接しないような構成を各セグメント106が有すればよいという観点からすれば、上記第1半径と相互に関係するものの、円弧面106eの上記割合は、基本的に特に規定されないが、拡径状態のペール缶胴体部152に成型するという現実的な観点から、例えば図4に示すように、一つのセグメント106の中心角を4等分した内の中央部分の2θ分の角度、又はほぼ2θ分の角度に相当するように、セグメント中央部106dの円弧面106eが存在するような割合が好ましい。
【0037】
上述したように各セグメント106に、円弧面106aよりも円筒体51の直径方向51bへ突出した円弧面106eを有するセグメント中央部106dを形成することで、円筒体51の拡径動作に当たり、上記初期状態の円筒体51の内面51aにはセグメント中央部106dが当接して円筒体51が拡径され、拡径状態のペール缶胴体部152に成型される。拡径動作中、常にセグメント中央部106dが円筒体51の内面51aに接触して円筒体51の拡径を行う。よって、従来のように拡径動作に当たり円弧面2aの両縁部2cの摩擦により円筒体51の内面51aに擦り傷53が生じるという現象は低減する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態のエキスパンド型101、105によれば、拡径動作による円筒体51の内面51aへの擦り傷53の発生を低減することができる。又、このことは、エキスパンド型101、105のセグメント102、106の円弧面102a、106aにおける傷の発生も低減することになる。よって、エキスパンド型101、105は、エキスパンド型の長寿命化にも寄与する。
【0039】
さらに又,上述したエキスパンド型101の各セグメント102の円弧面102a、及びエキスパンド型105の各セグメント106の円弧面106aは、図5に示すように、改善処理層103を有するのが好ましい。
改善処理層103は、上述したような擦り傷53が各セグメント102の円弧面102a及び各セグメント106の円弧面106aに生じるのを低減し、円筒体51の拡径を良好に行うための部分である。改善処理層103は、セグメント102、106の材質を改良した部分であり、例えばハードクロムメッキ、テフロン(登録商標)処理、窒化処理、チタン処理、等が行われ、各セグメント102、106の円弧面102a、106aの滑り性及び耐摩耗性を向上させる部分である。
このような改善処理層103を各セグメント102、106の円弧面102a、106aに形成することで、上記滑り性及び上記耐摩耗性が向上することから、本実施形態の上述したエキスパンド型101、105の構成との相乗効果にて、さらに擦り傷53の発生を低減することができる。
【0040】
上述したように構成されるエキスパンド型101、105を用いて成型されたペール缶胴体部152に対し、地板53及び取っ手54が固定され、又、天板55等が取り付けられることもある。このようにして図6に示すようなペール缶150が製造される。従来のペール缶50に比べて、本実施形態におけるペール缶150では、ペール缶胴体部152の内面152aに擦り傷53の発生が少なく、ペール缶の商品価値を低下させることはない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ペール缶の製造に使用されるエキスパンド型、及び該エキスパンド型を利用したペール缶の製造方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態のエキスパンド型を示す平面図である。
【図2】図1に示すエキスパンド型の斜視図である。
【図3】図1に示すエキスパンド型にてペール缶胴体部を成型した状態を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態のエキスパンド型を構成するセグメントの一つを示す平面図である。
【図5】図1に示すエキスパンド型のセグメントに改善処理層を形成した状態を示す断面図である。
【図6】図1及び図4に示すエキスパンド型にて成型されたペール缶胴体部を有するペール缶を示す斜視図である。
【図7】従来のエキスパンド型の斜視図である。
【図8】エキスパンド型を備え円筒体の拡径を行うエキスパンダーを示す正面図である。
【図9】従来のエキスパンド型を示す平面図である。
【図10】従来のエキスパンド型のセグメントが初期状態の円筒体の内面に接触した状態を示す平面図である。
【図11】従来のエキスパンド型による拡径動作により、円筒体の内面に生じた擦り傷を示す概略図である。
【図12】従来のエキスパンド型にて成型されたペール缶胴体部を有するペール缶を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
51…円筒体、51a…内面、51b…直径方向、
101…エキスパンド型、101b…周面、102…セグメント、
102a…円弧面、105…エキスパンド、106…セグメント、
106a…円弧面、106c…セグメント両縁部、103…改善処理層、
150…ペール缶、152…ペール缶胴体部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体形状が略円筒形であり、その周方向に分割された円弧面を有する複数のセグメントを有し、拡径前の初期状態にある円筒体(51)の内側に配置され、上記円筒体の直径方向(51b)に沿ってそれぞれの上記セグメントを放射状に広げて上記円筒体の内面(51a)を押圧することで上記円筒体を拡径して拡径状態のペール缶胴体部に成型するエキスパンド型において、
上記初期状態における上記円筒体の上記内面にそれぞれの上記セグメントの上記円弧面が非押圧にて接触した状態において上記エキスパンド型(101)の周面(101b)を真円とする円弧面(102a)を有するセグメント(102)を備えたことを特徴とするエキスパンド型。
【請求項2】
上記各セグメントの上記円弧面は、上記初期状態における上記円筒体の上記内面を形成する半径に同一で、かつ上記周方向に均一な半径(R0)にて形成されている、請求項1記載のエキスパンド型。
【請求項3】
全体形状が略円筒形であり、その周方向に分割された円弧面を有する複数のセグメントを有し、拡径前の初期状態にある円筒体(51)の内側に配置され、上記円筒体の直径方向(51b)に沿ってそれぞれの上記セグメントを放射状に広げて上記円筒体の内面(51a)を押圧することで上記円筒体を拡径して拡径状態のペール缶胴体部に成型するエキスパンド型において、
上記各セグメント(106)の円弧面(106a)は、第1半径(R1)にて形成された、上記周方向におけるセグメント両縁部(106c)と、上記第1半径よりも小さい第2半径(R2)にて形成された、上記周方向において上記セグメント両縁部に挟まれたセグメント中央部(106d)とを有する、
ことを特徴とするエキスパンド型。
【請求項4】
上記第1半径は、上記初期状態における上記円筒体の内面を形成する半径(R0)に同一の半径、又は上記拡径状態にある上記ペール缶胴体部の内面を形成する半径(R3)に同一の半径である、請求項3記載のエキスパンド型。
【請求項5】
上記セグメントの上記円弧面は、上記円筒体の拡径を良好に行わせる改善処理層(103)を有する、請求項1から4のいずれかに記載のエキスパンド型。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のエキスパンド型(101,105)にて成型されたペール缶胴体部(152)を備えたことを特徴とするペール缶。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載のエキスパンド型(101,105)を使用して、円筒状で拡径前の初期状態の円筒体(51)を拡径状態のペール缶胴体部(152)に拡径成型してペール缶(150)を製造することを特徴とするペール缶製造方法。
【請求項1】
全体形状が略円筒形であり、その周方向に分割された円弧面を有する複数のセグメントを有し、拡径前の初期状態にある円筒体(51)の内側に配置され、上記円筒体の直径方向(51b)に沿ってそれぞれの上記セグメントを放射状に広げて上記円筒体の内面(51a)を押圧することで上記円筒体を拡径して拡径状態のペール缶胴体部に成型するエキスパンド型において、
上記初期状態における上記円筒体の上記内面にそれぞれの上記セグメントの上記円弧面が非押圧にて接触した状態において上記エキスパンド型(101)の周面(101b)を真円とする円弧面(102a)を有するセグメント(102)を備えたことを特徴とするエキスパンド型。
【請求項2】
上記各セグメントの上記円弧面は、上記初期状態における上記円筒体の上記内面を形成する半径に同一で、かつ上記周方向に均一な半径(R0)にて形成されている、請求項1記載のエキスパンド型。
【請求項3】
全体形状が略円筒形であり、その周方向に分割された円弧面を有する複数のセグメントを有し、拡径前の初期状態にある円筒体(51)の内側に配置され、上記円筒体の直径方向(51b)に沿ってそれぞれの上記セグメントを放射状に広げて上記円筒体の内面(51a)を押圧することで上記円筒体を拡径して拡径状態のペール缶胴体部に成型するエキスパンド型において、
上記各セグメント(106)の円弧面(106a)は、第1半径(R1)にて形成された、上記周方向におけるセグメント両縁部(106c)と、上記第1半径よりも小さい第2半径(R2)にて形成された、上記周方向において上記セグメント両縁部に挟まれたセグメント中央部(106d)とを有する、
ことを特徴とするエキスパンド型。
【請求項4】
上記第1半径は、上記初期状態における上記円筒体の内面を形成する半径(R0)に同一の半径、又は上記拡径状態にある上記ペール缶胴体部の内面を形成する半径(R3)に同一の半径である、請求項3記載のエキスパンド型。
【請求項5】
上記セグメントの上記円弧面は、上記円筒体の拡径を良好に行わせる改善処理層(103)を有する、請求項1から4のいずれかに記載のエキスパンド型。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のエキスパンド型(101,105)にて成型されたペール缶胴体部(152)を備えたことを特徴とするペール缶。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載のエキスパンド型(101,105)を使用して、円筒状で拡径前の初期状態の円筒体(51)を拡径状態のペール缶胴体部(152)に拡径成型してペール缶(150)を製造することを特徴とするペール缶製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−203357(P2007−203357A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27281(P2006−27281)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(595100598)株式会社ジャパンペール (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(595100598)株式会社ジャパンペール (7)
【Fターム(参考)】
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