説明

エコ運転支援装置

【課題】 車両のエネルギー状態に応じたエコ運転の走行アドバイスが可能なエコ運転支援装置を提供する。
【解決手段】 車両で発生する車両パワーを算出するHV制御部21と、電気負荷の利用状況を検出するパワーマネジメントECU60と、算出された車両パワーに基づいて、車両の運転状態のエコ度合いを表すエコ運転状態量を算出する手段と、算出された車両パワーと検出された電気負荷の利用状況とに基づいて車両の運転状態がエコ運転状態にあると判定するためのしきい値を設定する手段と、算出されたエコ運転状態量が設定されたしきい値以上であることを判定する手段と、判定結果に基づいて、現在の車両パワーがしきい値以上か否かを乗員に報知する手段として機能するエコ判断部22を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバのエコ運転を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点からドライバのエコ運転を支援するエコ運転支援装置が車両に搭載されるようになってきた。エコ運転支援装置は、アクセルの踏み込み量やエンジンとトランスミッションの効率、さらには走行速度や加速度などを考慮したエコ判定しきい値を用意しておき、車両が燃費のよい走行状態(以下、燃費のよい走行状態のことをエコ運転状態と呼ぶ)にあるか否かをエコ判定しきい値を用いて判定している。エコ運転状態にあると判定される場合には、LED(Light Emitting Diode)等を点灯表示させている。
【0003】
しかしながら、エコ運転状態の判定に用いるエコ判定しきい値は、燃料消費量のさらなる削減が可能な、余裕を持たせたしきい値に設定されている。
その理由は、主に、エコ運転実施率を向上させるために、ドライバにエコ運転に伴う煩わしさをできるだけ感じさせないようにするためである。また、登坂路を判定していないので、登坂路で過剰に非エコ判定をしないようにするためでもある。
【0004】
特許文献1では、正確な走行距離を算出するために、現在走行中の道路種別を判断して、道路種別と燃料消費データとから基準燃費を算出している。そして、渋滞情報、道路の勾配等により算出した基準燃費を補正し、補正した基準燃費と燃料残量とから航続可能距離を算出して表示している。
また、特許文献2では、燃料残量の通知タイミングを制御するために、道路種別、地図データ、交通情報、走行履歴データや乗員情報に基づいて判定しきい値を設定し、この判定しきい値と走行可能距離とを比較することで燃料残量通知の必要性を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−203456号公報
【特許文献2】特開2006−199273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドライバーにとっては、燃料残量が少なくなってきたときに、道路状況や渋滞状況に応じたエコ運転のための走行ガイドが表示されれば有効な情報となる。しかしながら特許文献1で開示している技術は、正確な走行距離の算出であり、また特許文献2で開示している技術は、最適なタイミングでの燃料残量の通知である。例えば、燃料の残量が少ない時には、最大限の燃料の切り詰めが可能なエコ運転のアドバイスを提供できれば、最寄りの給油所に車両を到達させることができ、ガス欠等の発生件数を削減することができる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、車両のエネルギー状態に応じたエコ運転の走行アドバイスが可能なエコ運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために本発明のエコ運転支援装置は、車両で発生する車両パワーを算出する車両パワー算出手段と、前記車両パワー算出手段で算出された車両パワーに基づいて、車両の運転状態のエコ度合いを表すエコ運転状態量を算出するエコ運転状態量算出手段と、電気負荷の利用状況を検出する電気負荷検出手段と、前記車両パワー算出手段によって算出された車両パワーと、前記電気負荷検出手段により検出された電気負荷の利用状況とに基づいて、前記車両の運転状態がエコ運転状態にあると判定するためのしきい値を設定するしきい値設定手段と、前記エコ運転状態量算出手段により算出されたエコ運転状態量が前しきい値設定手段によって設定された前記しきい値以上であることを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果に基づいて、現在の車両パワーがしきい値以上か否かを乗員に報知する報知手段とを備える構成としている。
本発明によれば、車両で発生する車両パワーと、電気負荷の利用状況とに基づいて車両の運転状態がエコ運転状態にあると判定するためのしきい値を設定している。従って、実燃費に見合ったしきい値を設定することができ、車両のエネルギー状態に応じたエコ運転の走行アドバイスが可能となる。
【0009】
本発明のエコ運転支援装置は、車速を検出する車速検出手段と、アクセルペダルの踏込み量を示すアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、電気負荷の利用状況を検出する電気負荷検出手段と、前記車速検出手段により検出された車速と、前記電気負荷検出手段により検出された電気負荷の利用状況とに基づいて、前記車両の運転状態がエコ運転状態にあると判定するためのしきい値を設定するしきい値設定手段と、前記アクセル開度検出手段により検出されたアクセル開度が前記しきい値設定手段によって設定されたしきい値値以上であることを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果に基づいて、前記アクセル開度がしきい値以上か否かを乗員に報知する報知手段とを備える構成としている。
本発明によれば、アクセルペダルの踏込み量を示すアクセル開度と、電気負荷の利用状況とに基づいて車両の運転状態がエコ運転状態にあると判定するためのしきい値を設定している。従って、実燃費に見合ったしきい値を設定することができ、車両のエネルギー状態に応じたエコ運転の走行アドバイスが可能となる。
【0010】
上記エコ運転支援装置において、車両の現在位置情報と、車両周辺の地図情報とをナビゲーション装置から取得する取得手段を有し、前記しきい値設定手段は、前記車両の現在位置と、燃料の供給が可能な給油所、又はバッテリの交換又は充電が可能な供給所との距離に基づいて前記しきい値を再設定するとよい。
従って、現在の車両のエネルギー状態と、給油所や供給所までの距離とに基づいて最適なエコ運転支援情報を表示させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両のエネルギー状態に応じたエコ運転の走行アドバイスが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1のエコ運転支援システムの構成を示す図である。
【図2】ECUのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】車速から車両パワーのエコ判定しきい値を算出するマップの一例を示す図である。
【図4】エコバー表示を説明するための図であり、(A)はバー表示をHVエコ運転領域に表示した例であり、(B)はバー表示をエコ運転領域に表示した例であり、(C)はバー表示を非エコ運転領域に表示した例であり、(D)はバー表示を回生運転領域に表示した例である。
【図5】エコ運転状態量の算出用に用意されたマップを示す図である。
【図6】エコ判定しきい値の補正方法を説明するための図であり、補正用マップを複数設ける場合を示す図である。
【図7】エコ判定しきい値の補正方法を説明するための図であり、燃料の切り詰めレベルに応じた補正が施されたマップを用意しておく場合を示す図である。
【図8】エコ判定しきい値の補正方法を説明するための図であり、切り詰めレベルに応じた補正値をテーブルから求める場合を示す図である。
【図9】(A)は高速域でエコ判定しきい値を補正したマップを示し、(B)は低速域でエコ判定しきい値を補正したマップを示し、(C)は高速域と低速域でエコ判定しきい値を補正したマップを示す図である。
【図10】エコ判断部の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】表示内容決定の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】エコ判断部をパワートレインECUに設けたエコ運転支援システムの構成を示す図である。
【図13】車速からアクセル開度のエコ判定しきい値を算出するマップの一例を示す図である。
【図14】メータECUにエコ判断部を設けたエコ運転支援システムの構成を示す図である。
【図15】エコバー表示の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例を説明する。
【実施例1】
【0014】
まず、図1を参照しながら本実施例の構成を説明する。図1には、エコ運転を支援するエコ運転支援システム1Aの構成を示す。
なお、本明細書におけるエコの定義として、エコノミーとエコロジーの両方、又は何れか一方の意味を持つものとする。エコノミーとは、燃料の消費を抑えて燃料を節約(省燃費)することを意味する。また、エコロジーとは、化石燃料の消費を抑えたり、又は化石燃料の燃焼などによって生じる有害物質や二酸化炭素の発生、排出を抑えることを意味する。
【0015】
図1に示すエコ運転支援システム1Aは、エンジン及びトランスミッションの制御を行うパワートレインECU(Electronic Control Unit)10と、ハイブリッドシステムの制御を行うハイブリッドECU(以下、HV−ECUと表示する)20と、インジケータパネル40の表示を制御するメータECU30と、モータ・ジェネレータの制御を行うモータ・ジェネレータECU50と、電源の管理を行うパワーマネジメントECU60と、ナビゲーション装置の制御を行うナビECU70と、バッテリの管理を行うバッテリECU80とを車内通信バスによって接続したシステム構成を有している。なお、ハイブリッドシステムとは、ハイブリッド車両が最も効率よく運行できるようにエンジンとモータとを駆動制御するシステムであって、図1に示すHV−ECU20、パワートレインECU10やモータ・ジェネレータECU50等がこれに含まれる。
また、図1には、車内通信バスに接続するECUとしてパワートレインECU10と、HV−ECU20と、メータECU30と、モータ・ジェネレータECU50と、パワーマネジメントECU60と、ナビECU70と、バッテリECU80とを図示しているが、車内通信バスには、その他にも複数のECUが接続されている。
また、図1に実線で示す矢印は、信号の物理的な接続状態を表しており、図1に点線で示す矢印は、データの流れを表している。
【0016】
パワートレインECU10は、各種センサ2から吸入空気量や空燃比等を表すセンサ信号を取得して、取得したセンサ信号に基づいて燃料噴射量、点火時期、変速タイミング等の制御指令値の演算を行う。また、パワートレインECU10は、この演算結果に基づいてインジェクタや点火コイル等のアクチュエータを制御する。
また、パワートレインECU10は、所定時間毎の走行距離と、この距離の走行に要した燃料消費量との平均値から平均燃費を求めて、この平均燃費と、燃料残量センサによって測定された燃料残量とからエンジンによって走行可能な航続可能距離を算出する。算出した航続可能距離は、HV−ECU20のエコ判断部22に通知する。
【0017】
HV−ECU20は、バッテリECU80やエンジンECU(不図示)、モータ・ジェネレータECU50等を相互に管理制御して、ハイブリッド車両が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステムの全体を制御する。本実施例では、HV−ECU20がエコ運転支援装置としての機能を有しており、HV−ECU20にはHV制御部(車両パワー算出手段)21の他に、エコ判断部22を設けている。
【0018】
HV制御部21は、各種センサ2によって測定されたセンサ信号や、他のECUからの信号を入力して、ハイブリッドシステムを制御する制御信号を生成する。生成した制御信号は、パワートレインECU10やモータ・ジェネレータECU50に出力される。
また、HV制御部21は、ハイブリッドシステムの状態を示すHV状態信号を生成する。このHV状態信号には、車両パワー、車両の限界出力パワー、バッテリの充電許可電力などが含まれる。生成したHV状態信号は、エコ判断部22に出力される。
【0019】
エコ判断部22は、HV制御部21から出力されるHV状態信号と、各種センサ2によって測定されたセンサ信号とを入力する。エコ判断部22に入力されるセンサ信号には、アクセル開度センサ(アクセル開度検出手段)によって測定されるアクセル開度、車速センサ(車速検出手段)によって測定される車速、シフトポジションセンサ(不図示)によって検出されるシフト位置、車両の制御モード(パワーモード、スポーツモード等)を切り替えるスイッチの状態、燃料タンク内の燃料残量を検知する燃料残量センサによって測定された燃料残量などが挙げられる。
エコ判断部22は、入力したHV状態信号と、センサ信号とをもとに車両の運転状態のエコ度合いを表すエコ運転状態量を算出する。エコ運転状態量の詳細については後述する。
また、エコ判断部22は、車両の走行状態がエコ運転状態にあるか否かを判定するエコ判定しきい値を求め、算出したエコ運転状態量と比較することで、車両の運転状態がエコ運転状態にあるのか、非エコ運転状態にあるのかを判定する。この処理の詳細についても後述する。
さらに、エコ判断部22は、センサや他のECUから取得した情報に基づいて、燃料消費量の削減を行う必要があるか否かを判定する。燃料消費量の削減が必要であると判定すると、燃料消費量をさらに削減するためにエコ判定しきい値の補正を行う。この処理の詳細についても後述する。
エコ判断部22は、エコ運転状態量や、車両が現在エコ運転状態にあるか否かを判定した判定結果等を示すエコ状態信号をメータECU30の通知制御部31に出力する。
【0020】
メータECU30は、インジケータパネル40の表示を制御するECUであり、特に、本実施例ではエコ判断部22からエコ状態信号を取得して、エコ状態信号に基づいてインジケータパネル40のエコ表示部41にエコ運転状態の表示をリアルタイムに表示させる。
インジケータパネル40には、車両がエコ運転状態にあるか否かを表示するエコ表示部41が設けられている。エコ表示部41は、通知制御部31の制御に従って、エコ運転の状態をリアルタイムに表示する。エコ表示部41の具体的な表示内容については後述する。
【0021】
モータ・ジェネレータECU50は、HV−ECU20から出力される各種状態信号や各種制御信号に従って、モータ・ジェネレータの駆動を制御する。
【0022】
パワーマネジメントECU(電気負荷検出手段)60は、ディスプレイ、ナビゲーション装置、オーディオ装置、エアコン(A/C)、ライト等の電装品への電源供給を制御する。
またパワーマネジメントECU60は、電装品の使用している電気量の総計を算出し、これを電気負荷利用情報としてHV−ECU20のエコ判断部22に通知する。
【0023】
ナビECU70は、ナビゲーション装置(不図示)を制御する。ナビECU70は、GPS情報受信部(不図示)からのGPS信号によって現在位置情報を割り出し、ナビゲーション装置の地図情報記憶部に記憶した地図情報から、ナビゲーション用の地図画像を作成する。作成した地図画像は表示部(不図示)に表示させる。
また、ナビECU70は、ナビゲーション情報をHV−ECU20に通知する。ナビゲーション情報には、自車位置、給油所情報、地図譲歩、給油所の営業時間情報、道路勾配情報、渋滞情報、現在時刻情報などが含まれる。
【0024】
バッテリECU80は、バッテリ(不図示)の電流値や電圧値を検出することによって、バッテリの容量がどれだけ残っているのかを示すバッテリ残量を算出する。算出したバッテリ残量は、HV−ECU20に通知する。
【0025】
図2には、図1に示すECUのハードウェア構成を示す。これらのECU20、10、30、50、60、70、80には、ECUによる制御処理を実現するためのプログラムを記録したROM26と、ROM26に格納されたプログラムを読み込んで、処理を実行する中央処理装置(CPU)25と、演算に使用するデータ等を保存するRAM28と、データの入出力部27などを有している。CPU25がROM26に格納したプログラムを読み込んで演算を行うことにより、本発明のエコ運転状態量算出手段、しきい値設定手段、判定手段、報知手段、取得手段を備えたエコ判断部22がHV−ECU20に構築される。
【0026】
次に、エコ判断部22で生成されるエコ運転状態量について説明する。
本実施例ではエコ運転状態量を車両パワーに基づいて算出する。ハイブリッド車両においては、電力で駆動されるモータと、エンジンとが設けられているので、モータとエンジンの双方で発生するエネルギーを1つの基準で表すために車両パワーを用いる。車両パワーは、電力量や仕事率と表現され、エンジンのトルクとエンジン回転数との積と、モータのトルクとモータの回転数との積との和で求めることができる。車両パワーは、HV制御部21で生成され、HV制御部21からエコ判断部22に出力される。
エコ判断部22は、まず、各種センサ2から車速を取得すると共に、HV制御部21から車両パワーを取得する。次に、図3に示すエコ判定しきい値マップを参照して、現在の車速において、車両がエコ運転状態にあると判定できる車両パワーの上限値(以下、この値をエコ判定しきい値と呼ぶ)を求める。このエコ判定しきい値マップには、車速に応じて設定されたエコ判定しきい値が記録されている。また、このエコ判定しきい値マップには、車速に応じて設定された、エンジンの始動が必要な車両パワー(以下、エンジン始動しきい値Gと呼ぶ)も記録されている。
エコ判断部22は、図3に示すエコ判定しきい値マップを参照して、車両パワーのエコ判定しきい値とエンジン始動しきい値とを求めると、これらの値とHV制御部21から取得した現在の車両パワーとに基づいてエコ運転状態量を算出する。エコ運転状態量の具体的な算出方法について、図4を参照しながら説明する。
【0027】
図4(A)〜図4(D)には、インジケータパネル40のエコ表示部41に表示されるエコバー表示60の一例を示す。
なお、このエコバー表示60は、エコ判断部22から通知されるエコ状態信号等に基づいて、メータECU30の通知制御部31で表示画像を作成することで、エコ表示部41に表示される。
エコバー表示60は、エコ運転状態量をエコ判定しきい値に対する相対量で図形表示するものである。また、エコ運転状態量をエンジン始動しきい値Gに対する相対量で図形表示するものである。
【0028】
エコバー表示60には、図4(A)〜図4(D)に示すように、ドライバの要求するエコ運転状態量のバー表示61と、HVエコ運転領域62(図4(A)〜図4(D)に示すO−A区間)と、エコ運転領域63(図4(A)〜図4(D)に示すA−B区間)と、非エコ運転領域64(図4(A)〜図4(D)に示すB−C区間)と、回生運転領域(図4(A)〜図4(D)に示すO−P間)65と、エンジンの始動しきい値(図4(A)〜図4(D)に示すG点)と、エコ判定しきい値(図4(A)〜図4(D)に示すB点)とが表示される。
【0029】
図4(A)には、エコ運転状態量のバー表示61をHVエコ運転領域62内に表示した例を示す。エコ運転状態量のバー表示61がHVエコ運転領域62内に表示されている時には、車両がモータで走行している状態を示している。HVエコ運転領域62では、車両で発生する現在の車両パワーの、エンジン始動しきい値Gに対する相対量でエコ運転状態量を表示する。
HVエコ運転領域62でのエコ運転状態量の算出式を以下に示す。
エコ運転状態量=(現在の車両パワー/エンジン始動しきい値)×50[%]・・・(1)
また、HVエコ運転領域62の上限値が、エンジンの始動しきい値Gとなっている。エンジン始動しきい値Gは、ドライバの要求する車両パワーがエンジン始動しきい値Gよりも高くなった場合に、エンジンを始動させるしきい値である。
【0030】
図4(B)には、エコ運転状態量のバー表示61をエコ運転領域63内に表示した例を示す。ドライバの要求する車両パワーがエンジン始動しきい値Gを超えると、エコ運転状態量がエコ運転領域63に表示される。すなわち、エンジンが始動状態にある時には、エコ運転状態量がエンジン始動しきい値Gの境界上、又はエンジン始動しきい値Gよりもエコ度合いが悪い側に位置するように表示される。
エコ運転状態量のバー表示61がHVエコ運転領域62内に表示されている時には、車両がモータとエンジンとで走行し、車両の運転状態がエコ運転状態にあることを示している。
エコ運転領域63では、車両の現在の車両パワーと、エンジン始動しきい値と、エコ判定しきい値とを用いて以下に示す式(2)でエコ運転状態量を求める。
エコ運転状態量={(現在の車両パワー−エンジン始動しきい値)/エコ判定しきい値−エンジン始動しきい値}×50[%]+50[%]・・・(2)
【0031】
図4(C)には、エコ運転状態量のバー表示61を非エコ運転領域64内に表示した例を示す。ドライバの要求する車両パワーがエコ判定しきい値を超えると、エコ運転状態量が非エコ運転領域64内に表示される。エコ運転状態量のバー表示61が非エコ運転領域64内に表示されているときには、車両が非エコ運転状態にあることを示している。
非エコ運転領域64でのエコ運転状態量も上述した式(2)によって求められる。
【0032】
図4(D)には、エコ運転状態量のバー表示61を回生運転領域65内に表示した例を示す。回生ブレーキ等の操作によって車両の運転状態が回生運転状態にあると、エコ運転状態量のバー表示61が回生運転領域65内に表示される。
回生運転領域65でのエコ運転状態量は以下に示す式(3)によって求められる。
エコ運転状態量=(現在の車両パワー/回生限界値)×−100[%]・・・(3)
なお、回生限界値は、回生運転によって発電機が発電可能な発電量の限界値や、バッテリを充電可能な限界値が設定される。
【0033】
図4(A)〜(D)に示すO点は原点位置であり、エコ運転領域63と回生運転領域65との境界線を示している。エコ運転状態量がO点に表示されると、エコ運転状態量が0%であることを示している。
【0034】
なお、エンジン始動しきい値Gは、車速やバッテリ残量等によって変動し、最小値は0[kW]となる。すなわち、エンジン始動しきい値が0[kW]のときには、O点とA点とで同じ0[kW]を表すことになる。
【0035】
また、エコ運転状態量は、図5に示すマップから算出してもよい。マップを利用してエコ運転状態量を算出することで、エコ運転状態量の算出を簡略化することができる。
図5に示すマップは、横軸が車両パワー[kW]を示し、縦軸がエコ運転状態量[%]を表す。マップに示すA’点がエンジンの始動しきい値を示す。また、A点は、バー表示61をHVエコ運転領域62からエコ運転領域63に切り替える表示変更しきい値を表す。A’点とA点でのエコ運転状態量は、50[%]を示す。
また、マップに示すB点がエコ判定しきい値を示す。B点でのエコ運転状態量は、100[%]である。また、C点がエコ運転状態量が150[%]の状態を示し、P点は回生限界値を示す。P点でのエコ運転状態量は、−100[%]を表す。
なお、Px<Ox≦Ax≦A’x≦Bx<Cxとする。Pxはマップに示すP点のX座標値、Oxはマップに示すO(原点)のX座標値、Axはマップに示すA点のX座標値、A’xはマップに示すA’点のX座標値、Bxはマップに示すB点のX座標値、Cxはマップに示すC点のX座標値を示す。
【0036】
本実施例のエコ判断部22は、燃料消費量の切り詰めが必要な状況にあるか否かを判定し、燃料消費量の切り詰めが必要であると判定すると、エコバー表示60の表示状態を変更する。表示状態の切替えは、エコ運転を判定するエコ判定しきい値の切替え、又は補正によって行う。
エコ判断部22は、まず、燃料残量センサから取得した燃料残量と、バッテリECU80から取得したバッテリ残量とから車両の航続可能距離を求める。航続可能距離の算出方法は、燃料残量とバッテリ残量とに基づいて航続可能な距離を記録したマップを参照して求めることができる。
次に、エコ判断部22は、求めた航続可能距離と、ナビゲーション情報として取得した給油可能な給油所までの距離情報とを比較する。これらの距離の比較結果と、渋滞情報、誘導経路の勾配情報や電装品の電気使用状況等をもとに燃料消費量の切り詰めが必要であるか否かを判定する。燃料消費量の切り詰めが必要であると判定した場合には、燃料を切り詰める切り詰めレベルの設定を行う。
【0037】
エコ判断部22は、自車の現在位置から最寄りの給油可能な(又はバッテリの充電又は交換が可能な)給油所までの距離に応じて、燃料の切り詰めレベルを設定する。例えば、現在位置から最寄りの給油可能な給油所までの距離が遠い場合には、燃料消費の切り詰めレベルを大きく設定し、現在位置から最寄りの給油可能な給油所までの距離が近い場合には、燃料消費の切り詰めレベルを小さく設定する。なお、所定距離内に存在する給油可能な給油所の数に応じて燃料の切り詰めレベルを変更してもよい。
また、エコ判断部22は、給油可能な給油所までの誘導経路上に存在する勾配の数に応じて燃料消費の切り詰めレベルを変更する。
例えば、給油所までの間に勾配が多数存在する場合には、燃料消費の切り詰めレベルを大きく設定し、給油所までの間に存在する勾配の数が小数であった場合には、燃料消費の切り詰めレベルを小さく設定する。なお、勾配の数以外に、勾配のレベルや勾配の長さ等によって燃料消費の切り詰めレベルを変更してもよい。
また、エコ判断部22は、電装品の電気利用状況に応じて燃料の切り詰めレベルを変更する。
パワーマネジメントECU60から取得した電装品の電気負荷利用情報に基づいて燃料消費の切り詰めレベルを変更する。例えば、電装品の使用する電気量が多い場合には、燃料消費の切り詰めレベルを大きく設定し、電装品の使用する電気量が少ない場合には、燃料消費の切り詰めレベルを小さく設定する。
【0038】
エコ判断部22は、燃料消費の切り詰めレベルを判定すると、判定した切り詰めレベルに応じて、エコ判定しきい値を補正、又は変更する。
エコ判定しきい値の補正、又は変更方法には、複数の方法がある。これらの方法について、図面を参照しながら説明する。
まず、図6に示す方法では、エコ判定しきい値を補正する補正値を記録した補正用マップを燃料消費の切り詰めレベルに応じて複数用意しておく。これらの補正値用マップは、図2に示すROM26又はRAM28に記録されている。エコ判断部22は、判定した切り詰めレベルに応じて、エコ判定しきい値を補正する補正用マップを選択する(図6に示すA:補正用マップの選択参照)。そして、車速センサからの車速を入力すると、選択した補正用マップを参照して、車速に応じたエコ判定しきい値の補正値を求める(図6に示すB:補正値の取得参照)。
また、エコ判断部22は、車速センサで測定された車速に応じたエコ判定しきい値をエコ判定しきい値マップを参照して求める(図6に示すC:エコ判定しきい値の取得参照)。
エコ判断部22は、求めたエコ判定しきい値を、補正用マップから求めた補正値で補正する(図6に示すD:エコ判定しきい値の補正参照)。図6に示す例では、エコ判定しきい値が30[kW]で、補正値が5[kW]である場合を示す。エコ判断部22は、エコ判定しきい値の30[kW]から5[kW]を減算して、減算した値25[kW]を補正したエコ判定しきい値として出力する。
【0039】
また、図7に示す方法では、補正値を記録したマップを用意しておくのではなく、切り詰めレベルに応じたエコ判定しきい値マップを複数用意しておき、切り詰めレベルに応じたエコ判定しきい値を選択する。これらのマップも、図2に示すROM26又はRAM28に記録されている。
図7に示すエコ判定しきい値マップに記録されたエコ判定しきい値は、燃料の切り詰めレベルに応じた補正が施されたしきい値となっている。
エコ判断部22は、図7に示すように燃料消費の切り詰めレベルを判定すると、判定した切り詰めレベルに応じたエコ判定しきい値マップを選択する(図7に示すA:エコ判定しきい値マップの選択参照)。次に、エコ判断部22は、車速センサから車速を入力し、選択したエコ判定しきい値マップを参照して、入力した車速に応じたエコ判定しきい値を求める(図7に示すB:エコ判定しきい値の取得参照)。
【0040】
また、図8に示す方法では、エコ判定しきい値を補正する補正値を記録したテーブルを用意しておき、切り詰めレベルに応じた補正値をテーブルから求める。これらのテーブルも、図2に示すROM26又はRAM28に記録されている。
エコ判断部22は、燃料の切り詰めレベルを判定すると、判定した切り詰めレベルに応じた補正値をテーブルを参照して取得する(図8に示すA:補正値の取得参照)。図8に示すテーブルに記録される補正値は、車速によらず、燃料の切り詰めレベルに応じて一律の値に設定されている。
エコ判断部22は、車速センサから車速を入力すると、入力した車速に基づいてエコ判定しきい値を求める(図8に示すB:エコ判定しきい値の取得参照)。次に、エコ判断部22は、求めたエコ判定しきい値から補正値を減算して(図8に示すC:エコ判定しきい値の補正参照)、燃料の切り詰めレベルに応じたエコ判定しきい値を求める。
【0041】
なお、車速が高速域と低速域とにある場合には燃費が悪くなるので、エコ判定しきい値の補正は、高速域又は低速域で補正値を大きくするように設定するとよい。また、高速域と低速域との両方で補正値を大きくしてもよい。図9(A)には、高速域で大きく補正したエコ判定しきい値を示し、図9(B)には、低速域で大きく補正したエコ判定しきい値を示し、図9(C)には、高速域と低速域とで大きく補正したエコ判定しきい値を示す。
【0042】
また、本実施例のエコ判断部22は、燃料の切り詰めを開始すると、燃料の切り詰め制御を実施中であることをドライバに通知する。ドライバへの通知方法は、燃料の切り詰めレベルに応じて適宜変更することができる。
例えば、燃料の切り詰めレベルがレベル1からレベル5までの5段階であった場合、各レベルに応じて設定された予兆通知、現状通知、注意喚起、警告、運転サポートの5段階で通知方法を変更する。
レベル1の予兆通知は、燃料消費量の削減を行わなければならない状況が近いことを警告するものであり、このレベル1では、例えば、エコバー表示60の表示色を通常時と変更する。
レベル2の現状通知は、燃料消費量を削減するための制御を開始することをドライバに通知するものであり、エコ運転状態量がエコ判定しきい値よりも大きくなると、警告音で警告を行う。
レベル3の注意喚起は、レベル2の現状通知よりも燃料消費量の削減レベルが一段上がったことを示すものであり、音声案内を行ったり、メッセージを表示部に表示させ、警告音によってドライバに注意を促す。例えば、「ガソリン残量が少なくなりました。」といったメッセージを音声出力したり、表示部に表示して、エコ運転状態量がエコ判定しきい値を超えると、より大きな(又は警報時間の長い)警報音を出力して、ドライバに注意を促す。
レベル4の警告は、レベル3の注意喚起よりも燃料消費量の削減レベルが一段上がったことを示すものであり、レベル3の注意喚起とは異なり、ドライバにエコ運転の徹底を促すメッセージを音声出力したり、表示部に表示する。また、警報音のレベルをレベル3の注意喚起よりもさらに一段大きくする。
レベル5の運転サポートは、燃料消費量の削減レベルを最も高く設定した状態であり、ドライバのアクセル操作に対して、操作指示を行う。例えば、発進時にゆっくりと速度を出すように、単位時間ごとにビープ音を出力して、所定速度に到達するまでの時間を指示できるようにする。一例として、1秒間隔でビープ音を鳴らして、5秒間で20k/m程度の車速となるように指示する。
【0043】
このようにして本実施例は、燃料消費量の削減レベルに応じてドライバへのアドバイスや警告の方法を変更することで、航続可能距離の延長が望め、路上での立ち往生の発生といった問題の発生率を低下させることができる。
【0044】
次に、インジケータパネル40のエコ表示部41にエコバー表示60を表示させるためのエコ判断部22の処理手順について図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。
まずエコ判断部22は、各種センサ2から測定データを入力すると、入力したデータが正常であるか否かを判定する(ステップS1)。エコ判断部22は、入力したデータから各種センサ2が正常に動作しているか否かを判定する。例えば、所定時間以上継続して同一のデータを入力した場合には、各種センサ2に固着異常が発生していると判定する。
エコ判断部22は、測定データが正常ではないと判定すると(ステップS1/NO)、センサ2のフェール時のエコ運転状態量として0%を算出する(ステップS8)。
【0045】
次に、測定データが正常であると判定すると(ステップS1/YES)、エコ判断部22は、車両の状態がエコ運転表示(エコバー表示60)を提供可能な状態にあるか否かを判定する(ステップS2)。シフトレバーがバックやパーキングの位置にあったり、パワースイッチをオンする信号が入力されている場合には、エコ運転表示が可能な状態ではないと判定する。
エコ判断部22は、エコ運転表示が可能な状態ではないと判定すると(ステップS2/NO)、除外時のエコ運転状態量として0%を算出する(ステップS9)。
【0046】
次に、エコ判断部22は、図3に示すマップを参照してエコ判定しきい値を求める(ステップS3)。本実施例ではセンサ2から入力した車速に基づいてエコ判定しきい値を算出する。エコ判断部22は、図3に示すエコ判定しきい値マップをメモリに記憶しており、各種センサ2のうちの車速センサで測定された車速から車両パワーの上限しきい値であるエコ判定しきい値を求める。なお、図3に示すマップは適合によって算出される。
【0047】
次にエコ判断部22は、ステップS3で求めたエコ判定しきい値と、各種センサ2の測定データ等から求めた現在の車両パワーとからエコ運転状態量を算出する(ステップS4)。エコ運転状態量は、上述した式(1)、(2)、(3)のいずれかで求めることができる。
【0048】
次に、エコ判断部22は、車両が現在停車状態にあるか否かを判定する(ステップS5)。各種センサ2のうちの車速センサから入力した車速に基づいて、車両が停車状態にあるか否かを判定する。例えば、車速が2km/hよりも小さくなった場合には、車両が停止状態にあると判定し、車速が4km/hよりも大きくなった場合には、車両が走行状態にあると判定する。また、車速が2km/h以上で4km/h以下の場合には、停車判定を直ちに行わずに、その後、車速の変化があるまで待機する。
車両が停止状態にあると判定した場合には(ステップS5/YES)、車両停止時のエコ運転状態量として0%を算出する(ステップS10)。
【0049】
次に、エコ判断部22は、算出したエコ運転状態量からバー表示61の表示状態を決定する。この処理の詳細については、図11に示すフローチャートを参照しながら後ほど説明する。
エコバー表示60の表示状態を決定すると、エコ判断部22は、エコ運転状態量や、エコバー表示60の表示状態等を表す情報を含んだエコ状態信号をメータECU30に通知する。メータECU30は、エコ判断部22により通知されたエコ状態信号に基づいてエコバー表示60をエコ表示部41に表示させる。
【0050】
次に、図11に示すフローチャートを参照しながらエコバー表示60の表示状態を決定し、表示状態に応じた走行アドバイスを行う手順を説明する。
まず、エコ判断部22は、燃料残量センサから燃料残量を取得すると共に(ステップS11)、バッテリECU80からバッテリ残量を取得する(ステップS12)。また、ナビECU70からナビゲーション情報を取得する(ステップS13)。ナビゲーション情報には、自車位置、給油所情報、地図情報、給油所の営業時間情報、道路の勾配情報、渋滞情報、現在時刻情報などが含まれる。
【0051】
次に、エコ判断部22は、取得した燃料残量と、バッテリECU80から取得したバッテリ残量とから車両の航続可能距離を求める。航続可能距離は、燃料残量とバッテリ残量とから航続可能な距離を記録したマップを参照して求めることができる。
【0052】
次に、エコ判断部22は、取得したナビゲーション情報に基づいて、給油可能な給油所の候補を検出する(ステップS15)。エコ判断部22は、給油所の位置情報と、給油所の営業時間情報と、現在時刻とから給油可能な最寄りの給油所を検出する。
給油可能な給油所を検出すると、エコ判断部22は求めた航続可能距離と最寄りの給油可能な給油所までの距離とを比較して、燃料消費量の切り詰めが必要であるか否かを判定する(ステップS16)。燃料消費量の切り詰めが必要ではないと判定すると(ステップS16/NO)、エコ判断部22はこの処理を終了する。
また、エコ判断部22は、燃料消費量の切り詰めが必要であると判定すると(ステップS16/YES)、燃料の消費を切り詰める切り詰めレベルを設定する(ステップS17)。この切り詰めレベルも航続可能距離と最寄りの給油可能な給油所までの距離とに基づいて設定される。
【0053】
次に、エコ判断部22は、ナビゲーション情報として取得した地図情報を参照して、現在位置から給油可能な給油所までの間にある勾配の数をカウントする(ステップS18)。次に、エコ判断部22は、勾配数とナビゲーション情報として取得した渋滞情報と電装品の電気利用情報とをもとに、切り詰めレベルの補正が必要であるか否かを判定する(ステップS19)。誘導経路において、勾配の数が所定値以上ある場合には、燃費の悪化につながるため、切り詰めレベルを高く再設定する。また、渋滞が発生している場合にも燃費の悪化につながるため、切り詰めレベルを高く設定する。さらに、電装品の消費電力が高い場合には、バッテリの劣化、燃費の悪化につながるため、切り詰めレベルを高く設定する。勾配数と渋滞情報と電装品の電気利用情報とから切り詰めレベルの補正が必要であると判定すると(ステップS19/YES)、エコ判断部22は、切り詰めレベルの補正を行う(ステップS20)。
次に、エコ判断部22は、ドライバへの警告や走行アドバイスを設定した切り詰めレベルに応じたものとなるように設定を変更する(ステップS21)。
次に、エコ判断部22は、エコ判定しきい値の補正を行う(ステップS22)。例えば、図6に示すように切り詰めレベルに応じた補正用マップを選択し、選択した補正用マップを参照し、車速センサで測定した車速から補正値を求める。同様に、エコ判断部22は、エコ判定しきい値マップを参照し、車速センサで測定された車速からエコ判定しきい値を求める。次に、エコ判断部22は、求めたエコ判定しきい値を補正値を用いて補正する。そして、エコ判断部22は、車両パワーの、補正したエコ判定しきい値に対する相対量でエコ表示部41に表示させる。車両パワーがエコ判定しきい値よりも大きくなると、エコ判断部22は、ステップS21の設定に従って、警告表示を表示させたり、警告音を出力する(ステップS23)。例えばエコ判断部22は、警告表示の情報や警告情報を、ナビECU70に通知する。ナビECU70の制御によってナビゲーション装置(不図示)の表示画面に警告表示を表示させたり、警告音を出力させる。
【0054】
このように本実施例は、車両の運転状態がエコ運転状態にあるか否かを判定するエコ判定しきい値を、電気負荷利用状況、燃料残量、バッテリ残量、交通情報、道路情報、最寄りの給油可能な給油所までの距離等によって変更することにより、燃料の切り詰めが必要な場合に切り詰めを行って、航続可能距離の延長が可能となる。このため、路上でのエンスト等の発生を抑制することができる。
また、燃料の切り詰めが必要な場合と、燃料の切り詰めが必要ではない場合とを判定して、エコ判定しきい値の切替えを行うことにより、燃料の切り詰めが必要ない場合には、快適な省燃費運転の走行アドバイスが可能となり、燃料の切り詰めが必要な場合には、燃料消費量を最大限削減するための走行アドバイスを提供することができる。
【実施例2】
【0055】
上述した実施例1では、航続可能距離と、給油所までの距離とを比較した比較結果と、渋滞情報、誘導経路の勾配情報や電装品の電気使用状況等とに基づいて燃料を切り詰める切り詰めレベルを設定していた。
本実施例のエコ判断部22は、パワーマネジメントECU60から取得した電装品の電気負荷利用状況に基づいて燃料消費量の切り詰めレベルを設定する。エコ判断部22は、燃料消費の切り詰めレベルを設定すると、設定した切り詰めレベルに基づいてエコ判定しきい値を補正又は変更する。補正又は変更したエコ判定しきい値を新たなエコ判定しきい値として設定する。エコ判断部13は、エコ判定しきい値を設定すると、設定したエコ判定しきい値と車両のエコ運転状態量とを比較して、車両の運転状態がエコ運転状態にあるか否かを判定する。
【0056】
また、エコ判断部22は、上述した実施例1と同様に、燃料の切り詰めを開始すると、燃料の切り詰め制御を実施中である旨をドライバに通知する。通知方法の具体例も上述した実施例1と同様の方法を用いることができる。
【0057】
本実施例においても、燃料消費の切り詰めが必要と判定した場合に、燃料消費の切り詰めを行って、航続可能距離の延長が可能となる。
【実施例3】
【0058】
上述した実施例1及び2では、エンジンとモータを搭載したハイブリッド車両に搭載されたエコ運転支援システムについて説明した。本実施例では、エンジンだけを搭載した車両にエコ運転支援システムを搭載した場合について説明する。
図12に示すエコ運転支援システム1Bは、エンジン及びトランスミッションの制御を行うパワートレインECU10と、インジケータパネル30の表示を制御するメータECU30と、上述したパワーマネジメントECU60とを車内通信バスによって接続した構成を有している。なお、メータECU30とパワーマネジメントECU60とは上述した実施例1と同様な構成であるため、詳細な説明は省略する。本実施例では、パワートレインECU10にエコ運転支援装置としての機能を設けている。
【0059】
パワートレインECU10は、制御装置としてエンジンの制御を行うエンジン制御部11と、トランスミッションの制御を行うトランスミッション制御部12とを有している。パワートレインECU10は、各種センサ2から吸入空気量や空燃比等を表すセンサ信号を取得して、取得したセンサ信号に基づいて燃料噴射量、点火時期、変速タイミング等の制御指令値の演算を行う。また、この演算結果に基づいてインジェクタや点火コイル等のアクチュエータ3を制御する。
また、エンジン制御部11やトランスミッション制御部12からエコ判断部(後述する)13には、エンジンやトランスミッションの制御状態を表す信号(以下、パワートレイン制御状態信号という)が出力される。より詳細なエコ状態の表示を行うために、生のセンサ情報だけでなく、車両を制御するECUの各種制御情報を送信するようにしている。
また、パワートレインECU10が各種センサ2から入力するセンサ信号には、上述した以外にアクセル開度センサ(不図示)によって測定されるアクセル開度、車速センサ(不図示)によって測定される車速、シフトポジションセンサ(不図示)によって検出されるシフト位置、車両の制御モード(パワーモード、スポーツモード等)を切り替えるスイッチの状態を表すスイッチ状態などが挙げられる。
【0060】
さらにパワートレインECU10には、エコ判断部13が設けられている。エコ判断部13は、車両の運転状態に基づいて、判定しきい値と、この判定しきい値に対する割合を表すエコ運転状態量とを算出する。また、エコ判断部13は、エコ運転状態量を表すエコ状態信号をメータECU30に出力する。
【0061】
図13を参照しながらエコ運転状態量の算出手順及びエコ判定しきい値について説明する。
まず、エコ判断部13は、各種センサ2で車両の現在の車速(km/h)とアクセル開度(%)とを入力する。次に、エコ判断部13は、図13に示すマップを参照して、現在の車速のときにエコ運転状態にあると判定できるエコ判定しきい値をアクセル開度(%)で求める。図13に示すマップには、車速と、エコ運転状態にあると判定できるアクセル開度のしきい値(以下、エコ判定しきい値と呼ぶ)との関係が示されている。エコ判断部13は、マップからエコ判定しきい値を求めると、各種センサ2で測定されたアセクル開度を、マップから求めた判定しきい値で除算し、除算値に100をかけてエコ運転状態量(%)を算出する。
エコ運転状態量=((現在のアクセル開度/判定しきい値)×100)(%)・・・・・(4)
【0062】
エコ判定しきい値を求めたエコ判断部13は、パワーマネジメントECU60から電装品の電気負荷利用状況を取得する。取得した電気負荷利用状況に基づいてエコ判断部13は燃料消費量の切り詰めレベルを設定する。上述した実施例1と同様に、電装品の使用する電気量が多い場合には、燃料消費の切り詰めレベルを大きく設定し、電装品の使用する電気量が少ない場合には、燃料消費の切り詰めレベルを小さく設定する。
エコ判断部13は、燃料消費の切り詰めレベルを設定すると、設定した切り詰めレベルに応じてエコ判定しきい値を補正又は変更する。補正又は変更したエコ判定しきい値を新たなエコ判定しきい値として設定する。エコ判断部13は、エコ判定しきい値を設定すると、設定したエコ判定しきい値と車両のエコ運転状態量とを比較して、車両の運転状態がエコ運転状態にあるか否かを判定する。
【0063】
また、エコ判断部13は、上述した実施例1と同様に、燃料の切り詰めを開始すると、燃料の切り詰め制御を実施中である旨をドライバに通知する。通知方法の具体例も上述した実施例1と同様の方法を用いることができる。
【0064】
このようにエンジンを搭載した車両においても、燃料消費の切り詰めが必要と判定した場合には、燃料消費の切り詰めを行って、航続可能距離の延長が可能となる。
【0065】
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。
例えば、上述した実施例では、HV−ECU20やパワートレインECU10にエコ判断部22(13)を設けていたが、図14に示すようにメータECU30にエコ判断部22を設けることもできる。また、図示していないがナビECU70にエコ判断部22(13)を設けてもよい。
【0066】
また、図4に示すエコバー表示60の例では、回生側の表示領域として、回生運転領域65だけを表示しているが、図15(A)に示すように回生運転領域65側の非エコ運転領域66を表示させてもよい。この非エコ運転領域66は、回生ブレーキだけでなく、機械式のブレーキを使用したブレーキ操作が行われている状態を示している。
また、図15(A)に示すようにエコバー表示60と共に、車両の運転状態がエコ運転状態にあるか否かをLED等のランプの点灯、消灯で表示するエコランプ70の表示を表示させてもよい。
さらに、上述したエコバー表示60に代えて、図15(B)に示すスピードメータのような円表示を採用してもよい。
【0067】
また、上述した実施例では、エコ判断部22(13)を車両の制御装置(HV−ECU)に設けて、車速等に基づいて車両のエコ運転状態量を求めリアルタイムにこれを表示している。これ以外に、エコ判断部22(13)で求めた車速とエコ運転状態量を記録媒体等に記録しておき、降車後にコンピュータ装置に記録媒体の記録内容を読み込んで、エコ運転状態量の経時的な変化を表示させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1A,1B、1C エコ運転支援システム
2 各種センサ
10 パワートレインECU
20 HV−ECU
21 HV制御部
22 エコ判断部
30 メータECU
31 通知制御部
40 インジケータパネル
41 エコ表示部
50 モータ・ジェネレータECU
60 パワーマネジメントECU
70 ナビECU
80 バッテリECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両で発生する車両パワーを算出する車両パワー算出手段と、
前記車両パワー算出手段で算出された車両パワーに基づいて、車両の運転状態のエコ度合いを表すエコ運転状態量を算出するエコ運転状態量算出手段と、
電気負荷の利用状況を検出する電気負荷検出手段と、
前記車両パワー算出手段によって算出された車両パワーと、前記電気負荷検出手段により検出された電気負荷の利用状況とに基づいて、前記車両の運転状態がエコ運転状態にあると判定するためのしきい値を設定するしきい値設定手段と、
前記エコ運転状態量算出手段により算出されたエコ運転状態量が前しきい値設定手段によって設定された前記しきい値以上であることを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果に基づいて、現在の車両パワーがしきい値以上か否かを乗員に報知する報知手段と、
を備えるエコ運転支援装置。
【請求項2】
車速を検出する車速検出手段と、
アクセルペダルの踏込み量を示すアクセル開度を検出するアクセル開度検出手段と、
電気負荷の利用状況を検出する電気負荷検出手段と、
前記車速検出手段により検出された車速と、前記電気負荷検出手段により検出された電気負荷の利用状況とに基づいて、前記車両の運転状態がエコ運転状態にあると判定するためのしきい値を設定するしきい値設定手段と、
前記アクセル開度検出手段により検出されたアクセル開度が前記しきい値設定手段によって設定されたしきい値値以上であることを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果に基づいて、前記アクセル開度がしきい値以上か否かを乗員に報知する報知手段と、
を備えるエコ運転支援装置。
【請求項3】
車両の現在位置情報と、車両周辺の地図情報とをナビゲーション装置から取得する取得手段を有し、
前記しきい値設定手段は、前記車両の現在位置と、燃料の供給が可能な給油所、又はバッテリの交換又は充電が可能な供給所との距離に基づいて前記しきい値を再設定する請求項1又は2記載のエコ運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−167836(P2010−167836A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10329(P2009−10329)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】