説明

エジェクタ装置およびエジェクタ装置を用いた蒸気圧縮式冷凍サイクル

【課題】気液二相状態の流体を減圧する際にノズル効率を安定して向上させることが可能なノズルを備えるエジェクタ装置およびこのエジェクタ装置を用いた蒸気圧縮式冷凍サイクルを提供すること。
【解決手段】エジェクタのノズル140の末広部145は、冷媒流通方向における中間部147の通路壁面の拡がり角度θ1よりも、中間部147から噴出口142までの出口部148の通路壁面の拡がり角度θ2が大きくなっており、出口部148では、下流側に向かって拡がり角度θ2が漸次増大している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を噴出させるノズルを備えたエジェクタ装置およびエジェクタ装置を用いた蒸気圧縮式冷凍サイクルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば下記特許文献1に開示されたエジェクタ装置がある。このエジェクタ装置では、ノズル本体の噴出口の上流側に2つの絞り部を設け、喉部となる下流側の絞り部から噴出口に向かって末広形状をなす流体通路に冷媒を減圧して導入して、冷媒の圧力エネルギーを速度エネルギーに変換している。そして、圧力エネルギーを速度エネルギーに変換するノズル効率の向上を目的として、流体通路の上流側部の通路壁面の拡がり角度よりも下流側部の通路壁面の拡がり角度を小さくし、通路壁面からの冷媒の剥離および渦流の発生を抑制している。
【特許文献1】特開平11−37577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術のエジェクタ装置では、喉部に導入される流体が気液二相状態である場合には、安定してノズル効率を向上させることが困難であるという問題がある。
【0004】
本発明者らは、この問題点に関して鋭意検討を行い、喉部に導入される流体が気液二相状態である場合には、喉部より下流側の末広部の形状を流体の剥離や渦流の発生のみに着目して決定せずに、減圧に伴うガス発生量に対応した形状とすれば、ノズル効率を安定的に向上することが可能であることを見出した。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、気液二相状態の流体を減圧する際にノズル効率を安定して向上させることが可能なノズルを備えるエジェクタ装置およびこのエジェクタ装置を用いた蒸気圧縮式冷凍サイクルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
内部に円断面の流体通路(143)が形成され、流体通路(143)の途中で通路断面積が最も縮小した喉部(144)と、喉部(144)から下流側に向かうほど通路断面積が拡大する末広部(145)とを有し、喉部(144)に流入する気液二相の流体を減圧して末広部(145)下流側先端の噴出口(142)から噴出するノズル(140)、を備えるエジェクタ装置であって、
末広部(145)は、流体流通方向における中間部(147)の通路壁面の第1拡がり角度(θ1)よりも、中間部(147)から噴出口(142)までの出口部(148)の通路壁面の第2拡がり角度(θ2)が大きくなっていることを特徴としている。
【0007】
気液二相状態で喉部(144)に流入した流体が末広部(145)で減圧される際には、減圧に伴って特に出口部(148)で流体中のガス量が大きく増大する。この増大するガス量に対応するように、出口部(148)の第2拡がり角度(θ2)を上流側の中間部(147)の第1拡がり角度(θ2)よりも大きくして、中間部(147)よりも出口部(148)の通路断面積の拡大率を大きくすることができる。したがって、末広部(145)内で流体を加速し易くなり、ノズル効率を安定して向上することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、末広部(145)の出口部(148)では、下流側に向かって第2拡がり角度(θ2)が漸次増大していることを特徴としている。
【0009】
これによると、出口部(148)を流体流通方向において滑らかな曲面とすることができる。したがって、流体をスムーズに流通して加速することができ、ノズル効率をより安定して向上することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明では、末広部(145)の出口部(148)では、第2拡がり角度(θ2)が一定であることを特徴としている。
【0011】
これによると、出口部(148)を形成するための加工や検査等が容易であり、エジェクタ装置の製造を容易に行うことができる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明のように、中間部(147)の第1拡がり角度(θ1)に対する出口部噴出口(142)における第2拡がり角度(θ2)の比を1.33以上とすることにより、確実に流体を加速し易くなり、ノズル効率を確実に安定して向上することができる。
【0013】
また、請求項5に記載の発明では、末広部(145)は、中間部(147)の通路壁面の第1拡がり角度(θ1)よりも、喉部(144)から中間部(147)までの導入部(146)の通路壁面の第3拡がり角度(θin)が大きくなっていることを特徴としている。
【0014】
気液二相状態で喉部(144)に流入した流体が末広部(145)で減圧される際には、喉部(144)を通過した直後に減圧に伴って流体中のガス量が増大する。この喉部(144)直後で増大するガス量に対応するように、導入部(146)の第3拡がり角度(θin)を下流側の中間部(147)の第1拡がり角度(θ1)よりも大きくして、中間部(147)よりも導入部(146)の通路断面積の拡大率を大きくすることができる。したがって、末広部(145)内で一層流体を加速し易くなり、ノズル効率をより一層安定して向上することができる。
【0015】
また、請求項6に記載の発明では、末広部(145)の導入部(146)では、下流側に向かって第3拡がり角度(θin)が漸次減少していることを特徴としている。
【0016】
これによると、導入部(146)を流体流通方向において滑らかな曲面とすることができる。したがって、流体をスムーズに流通して加速することができ、ノズル効率をより安定して向上することができる。
【0017】
また、請求項7に記載の発明では、末広部(145)の導入部(146)では、第3拡がり角度(θin)が一定であることを特徴としている。
【0018】
これによると、導入部(146)を形成するための加工や検査等が容易であり、エジェクタ装置の製造を容易に行うことができる。
【0019】
また、請求項8に記載の発明では、
内部に流体通路(543)が形成され、流体通路(543)の途中で通路断面積が最も縮小した喉部(144)を有する本体部(540A)と、流体通路(543)内に喉部(144)から流体通路(543)下流側先端の噴出口(142)に向かって突出するニードル弁体(540B)とを具備し、喉部(144)に流入する気液二相の流体を減圧して噴出口(142)から噴出するノズル(540)、を備えるエジェクタ装置であって、
本体部(540A)の喉部(144)より下流側の内面(5401)とニードル弁体(540B)の外面(5402)の間に形成される流体通路(543)の流体流通方向における各部の断面を等価直径の円断面とした仮想流体通路を想定した場合に、
この仮想流体通路は、喉部から下流側に向かうほど通路断面積が拡大する末広形状となっており、流体流通方向における中間部の通路表面の第1拡がり角度(θ1)よりも、中間部から噴出口までの出口部の通路表面の第2拡がり角度(θ2)が大きくなっていることを特徴としている。
【0020】
これによると、ニードル弁体(540B)を有するノズル(540)を備えるエジェクタ装置であっても、中間部よりも出口部の通路断面積の拡大率を大きくして、喉部(144)より下流側で流体を加速し易くなり、ノズル効率を安定して向上することができる。
【0021】
また、請求項9に記載の発明のように、仮想流体通路の出口部では下流側に向かって第2拡がり角度を漸次増大させることにより、流体をスムーズに流通して加速することができ、ノズル効率をより安定して向上することができる。
【0022】
また、請求項10に記載の発明のように、仮想流体通路の出口部では第2拡がり角度を一定とすることにより、出口部に対応する部位を形成するための加工や検査等が容易であり、エジェクタ装置の製造を容易に行うことができる。
【0023】
また、請求項11に記載の発明のように、仮想流体通路中間部の第1拡がり角度に対する噴出口における仮想流体通路の第2拡がり角度(θ2)の比を1.33以上とすることにより、確実に流体を加速し易くなり、ノズル効率を確実に安定して向上することができる。
【0024】
また、請求項12に記載の発明では、仮想流体通路は、中間部の通路表面の第1拡がり角度(θ1)よりも、喉部から中間部までの導入部の通路表面の第3拡がり角度が大きくなっていることを特徴としている。
【0025】
これによると、ニードル弁体(540B)を有するノズル(540)を備えるエジェクタ装置であっても、中間部よりも導入部の通路断面積の拡大率を大きくして、喉部(144)より下流側で流体を加速し易くなり、ノズル効率をより一層安定して向上することができる。
【0026】
また、請求項13に記載の発明のように、仮想流体通路の導入部では下流側に向かって第3拡がり角度を漸次減少させることにより、流体をスムーズに流通して加速することができ、ノズル効率をより安定して向上することができる。
【0027】
また、請求項14に記載の発明のように、仮想流体通路の導入部では第3拡がり角度を一定とすることにより、導入部に対応する部位を形成するための加工や検査等が容易であり、エジェクタ装置の製造を容易に行うことができる。
【0028】
また、請求項8ないし請求項14のいずれかに記載の流体通路を有するノズルは、請求項15に記載の発明のように、流体流通方向において本体部(540A)の内面(5401)の拡がり角度を変更し、流体流通方向においてニードル弁体(540B)の外面(5402)のテーパ角度を一定とすることで得ることができる。
【0029】
また、請求項16に記載の発明のように、流体流通方向において本体部(640A)の内面(5401)の拡がり角度を一定とし、流体流通方向においてニードル弁体(640B)の外面(5402)のテーパ角度を変更することによっても得ることができる。
【0030】
また、請求項17に記載の発明のように、流体流通方向において本体部(540A)の内面(5401)の拡がり角度を変更するとともに、流体流通方向においてニードル弁体(640B)の外面(5402)のテーパ角度を変更することによっても得ることができる。
【0031】
また、請求項18に記載の発明では、
請求項1ないし請求項17のいずれかに記載のエジェクタ装置を用いた蒸気圧縮式の冷凍サイクルであって、
流体は冷媒であり、
エジェクタ装置(14)は、ノズル(140)で気液二相状態の冷媒を減圧膨張させ、ノズル(140)で減圧膨張されて噴射される高速度冷媒流により冷媒が内部に吸引される冷媒吸引口(14b)と、ノズル(140)から噴射される高速度冷媒流と冷媒吸引口(14b)からの吸引冷媒とを混合し、混合した冷媒流の速度エネルギーを圧力エネルギーに変換する昇圧部(14c、14d)とを有し、
エジェクタ装置(14)から導出された冷媒もしくは冷媒吸引口(14b)に吸引される冷媒の少なくともいずれかを蒸発させる蒸発器(15、18)と、
蒸発器(15、18)で蒸発した冷媒を吸入圧縮して吐出する圧縮機(11)と、
圧縮機(11)から吐出された冷媒から放熱して冷却する放熱用熱交換器(12)と、
圧縮機(11)、放熱用熱交換器(12)、エジェクタ装置(14)、および蒸発器(15、18)を接続して、放熱用熱交換器(12)の下流側の冷媒をエジェクタ装置(14)のノズル(140)に導入するとともに、圧縮機(11)が吐出した後再び吸入される前の冷媒の一部をエジェクタ装置(14)の冷媒吸引口(14b)に導く冷媒配管(16、20)と、を備えることを特徴としている。
【0032】
これによると、エジェクタ装置(14)のノズル(140)のノズル効率を向上してエジェクタ効率を向上させ、冷凍サイクルの成績係数を向上することが可能である。
【0033】
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明を適用した実施の形態を図に基づいて説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態におけるエジェクタ装置であるエジェクタ14の概略構造を示す断面図であり、図2は、エジェクタ14のノズル140の構成を示す断面図である。また、図3は、エジェクタ14を用いた蒸気圧縮式の冷凍サイクル10の概略構成を示す模式図である。
【0036】
図3に示す冷凍サイクル10は、本例では車両用冷凍サイクル装置に適用したものであって、冷媒としてHFC134aを用い高圧圧力が臨界圧力を超えない冷媒を用いるものとする。
【0037】
本実施形態の冷凍サイクル10において、冷媒を吸入圧縮する圧縮機11は、電磁クラッチ11a、ベルト(図示略)等を介して車両走行用エンジン(図示略)により回転駆動される。
【0038】
この圧縮機11としては、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整できる可変容量型圧縮機、あるいは電磁クラッチ11aの断続により圧縮機作動の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整する固定容量型圧縮機のいずれを使用してもよい。また、圧縮機11として電動圧縮機を使用すれば、電動モータの回転数調整により冷媒吐出能力を調整できる。
【0039】
この圧縮機11の冷媒吐出側には凝縮器12(放熱用熱交換器に相当)が配置されている。凝縮器12は圧縮機11から吐出された高圧冷媒と冷却ファン(図示略)により送風される外気(車室外空気)との間で熱交換を行って高圧冷媒を冷却する。
【0040】
凝縮器12の出口側には、受液器12aが設けられている。この受液器12aは縦長のタンク形状のものであり、冷媒の気液を分離してサイクル内の余剰液冷媒を溜める気液分離器を構成する。受液器12aは、タンク形状内部の下部側から液冷媒を導出するようになっている。なお、受液器12aは本例では凝縮器12と一体的に設けられている。
【0041】
受液器12aの出口側には、温度式膨張弁13(感温式膨張弁)が配置されている。この温度式膨張弁13は受液器12aからの液冷媒を減圧する減圧手段であって、圧縮機11の吸入側通路に配置された感温部(図示略)を有している。
【0042】
温度式膨張弁13は、圧縮機11の吸入側冷媒(後述の蒸発器出口側冷媒)の温度と圧力とに基づいて圧縮機吸入側冷媒の過熱度を検出し、圧縮機吸入側冷媒の過熱度が予め設定された所定値となるように弁開度(冷媒流量)を調整するものである。
【0043】
温度式膨張弁13に代わる減圧手段として、電動可変式の膨張弁や絞り固定式の膨張弁を採用するものであってもよい。
【0044】
温度式膨張弁13の出口側には、エジェクタ14が配置されている。このエジェクタ14は冷媒を減圧する減圧手段であるとともに、高速で噴出する冷媒流の吸引作用(巻き込み作用)によって冷媒の循環を行う冷媒循環手段(運動量輸送式ポンプ)でもある。
【0045】
図1にも示すように、エジェクタ14には、温度式膨張弁13を通過後の冷媒(中間圧冷媒)の通路面積を小さく絞って、冷媒をさらに減圧膨張させるノズル140と、ノズル140の冷媒噴出口と同一空間に配置され、後述する第2蒸発器18からの気相冷媒を吸引する冷媒吸引口14bが備えられている。
【0046】
さらに、ノズル140および冷媒吸引口14bの冷媒流れ下流側部位には、ノズル140からの高速度の冷媒流と冷媒吸引口14bの吸引冷媒とを混合する混合部14cが設けられている。そして、混合部14cの冷媒流れ下流側に昇圧部をなすディフューザ部14dが配置されている。このディフューザ部14dは冷媒の通路面積を徐々に大きくする形状に形成されており、冷媒流れを減速して冷媒圧力を上昇させる作用、つまり、冷媒の速度エネルギーを圧力エネルギーに変換する作用を果たす。
【0047】
なお、本実施形態のエジェクタ14では、混合部14cも冷媒の通路面積を徐々に大きくする形状に形成されており、混合部14cとディフューザ部14dとからなる構成が本実施形態のエジェクタ14における昇圧部に相当する。
【0048】
エジェクタ14のディフューザ部14dの出口側には、第1蒸発器15が接続され、この第1蒸発器15の出口側は圧縮機11の吸入側に接続されている。
【0049】
一方、圧縮機11、凝縮器12、温度式膨張弁13、エジェクタ14、第1蒸発器15を環状に接続する冷媒循環配管20のエジェクタ14の入口側(温度式膨張弁13の出口側とエジェクタ14の入口側との間の中間部位=分岐点Z)から冷媒分岐配管16が分岐され、この冷媒分岐配管16の下流側はエジェクタ14の冷媒吸引口14bに接続されている。
【0050】
この冷媒分岐配管16には、絞り機構17が配置され、この絞り機構17よりも冷媒流れ下流側には第2蒸発器18が配置されている。本例の絞り機構17には、固定絞りタイプが採用されているが、絞り量可変タイプを採用することも可能である。冷媒循環配管20および冷媒分岐配管16が本実施形態における冷媒配管に相当する。
【0051】
さらに、本実施形態の冷凍サイクル10は、蒸発器15の上流側に配置される電動送風機19を備え、この電動送風機19により空気を矢印の方向(図1において上から下)へ送風し、この送風空気を2つの蒸発器15、18で冷却するようになっている。
【0052】
2つの蒸発器15、18で冷却された冷風を共通の冷却対象空間(図示略)に送り込み、これにより、2つの蒸発器15、18で共通の冷却対象空間を冷却するようになっている。ここで、2つの蒸発器15、18のうち、エジェクタ14下流側の主流路に接続される第1蒸発器15を空気流れの上流側(風上側)に配置し、エジェクタ14の冷媒吸引口14bに接続される第2蒸発器18を空気流れの下流側(風下側)に配置している。
【0053】
なお、本実施形態では、冷凍サイクル10を車両空調用冷凍サイクル装置に適用しているため、車室内空間が冷却対象空間となる。また、本実施形態の蒸気圧縮サイクル10を冷凍車用冷凍サイクル装置に適用する場合は冷凍車の冷凍冷蔵庫内空間が冷却対象空間となる。2つの蒸発器15、18は外部流体である空気流れにおいて上下流の位置関係に限定されるものではなく、異なる空間や領域にそれぞれ送風される空気を冷却するものであってもよい。
【0054】
図2に示すように、本実施形態のエジェクタ14のノズル140は、筒状をなしており、図示左方端の入口141から図示右方端の出口をなす噴出口142にまで繋がる流体通路143が内部に形成されている。流体通路143は直線状に延びており、中心軸に直交する各部の断面は全て円形状をなし、軸線方向において断面積を変化させている。
【0055】
流体通路143の途中には、図2図示中央よりも左方側(入口141側)に、通路断面積が最も縮小した喉部144が形成されている。そして、喉部144よりも図示右方側(噴出口142側)の部分は、喉部144から下流側に向かうほど通路断面積が拡大する末広部145となっている。
【0056】
末広部145は、喉部144から噴出口142側へ向かっては、通路壁面の拡がり角度θ1(第1拡がり角度に相当)が一定である中間部147となっており、中間部147の下流端から噴出口142までは、中間部147よりも通路壁面の拡がり角度が大きい出口部148となっている。
【0057】
出口部148の拡がり角度θ2(第2拡がり角度に相当)は、中間部147の拡がり角度θ1よりも大きくなっている。そして、出口部148上流端における拡がり角度θ2は中間部147の拡がり角度θ1と一致しており、出口部148では下流側(噴出口142側)に向かって漸次増大して、下流端の噴出口142において拡がり角度θ2は最大となっている。
【0058】
すなわち、流体通路143の喉部144よりも下流側の末広部145は、中間部147と出口部148とが滑らかに繋がっており、中心線(軸線)を含む断面(中心線を含み中心線と平行に切断した断面)における流体通路143を形成する通路壁面(内壁面)は、中間部147では直線となっており、出口部148では内側に凸となる湾曲した曲線となっており、両者は滑らかに連続している。
【0059】
また、換言すれば、末広部145では円断面の径が下流側に向かって増大しており、中間部147では軸線方向への移動量に対する径の増加量は一定であり、出口部148では軸線方向への移動量に対する径の増加量は、下流側ほど徐々に大きくなっている。
【0060】
次に、上記構成に基づき冷凍サイクル10の作動を説明する。圧縮機11を車両エンジンにより駆動すると、圧縮機11で圧縮され吐出された高温高圧状態の冷媒は凝縮器12に流入する。凝縮器12では高温の冷媒が外気により冷却されて凝縮する。凝縮器12から流出した高圧冷媒は受液器12a内に流入し、この受液器12a内にて冷媒の気液が分離され、液冷媒が受液器12aから導出され温度式膨張弁13を通過する。
【0061】
この温度式膨張弁13では、第1蒸発器15の出口冷媒(圧縮機吸入冷媒)の過熱度が所定値となるように弁開度(冷媒流量)が調整され、高圧冷媒が減圧されて、液冷媒から気液二相の冷媒となる。この温度式膨張弁13通過後の冷媒流れは、エジェクタ14に向かう冷媒流れと、冷媒分岐配管16から絞り機構17に向かう冷媒流れとに分流する。
【0062】
そして、エジェクタ14に流入した気液二相の冷媒はノズル140の流体通路143で減圧され膨張する。従って、ノズル140で冷媒の圧力エネルギーが速度エネルギーに変換され、このノズル140の噴出口142から冷媒は高速度となって噴出する。この際の冷媒圧力低下により、冷媒吸引口14bから冷媒分岐配管16内の第2蒸発器18通過後の冷媒(気相冷媒)を吸引する。
【0063】
ノズル140から噴出した冷媒と冷媒吸引口14bに吸引された冷媒は、ノズル140下流側の混合部14cで混合してディフューザ部14dに流入する。このディフューザ部14dでは通路面積の拡大により、冷媒の速度(膨張)エネルギーが圧力エネルギーに変換されるため、冷媒の圧力が上昇する。
【0064】
そして、エジェクタ14のディフューザ部14dから流出した冷媒は第1蒸発器15に流入する。そして、第1蒸発器15では、低温の低圧冷媒が電動送風機19による送風空気から吸熱して蒸発する。この蒸発後の気相冷媒は、圧縮機11に吸入され、再び圧縮される。
【0065】
一方、冷媒分岐配管16に流入した冷媒流れは絞り機構17で減圧されて低圧冷媒となり、この低圧冷媒が第2蒸発器18に流入する。そして、第2蒸発器18では、低温の低圧冷媒が、第1蒸発器15通過後の送風空気から吸熱して蒸発する。この蒸発後の気相冷媒は、冷媒吸引口14bを介してエジェクタ14内に吸引される。
【0066】
以上のように構成される蒸気圧縮サイクル10によれば、エジェクタ14のディフューザ部14dの下流側冷媒を第1蒸発器15に供給するととともに、冷媒分岐配管16側の冷媒を絞り機構17を通して第2蒸発器18にも供給できるので、第1、第2蒸発器15、18で同時に冷却作用を発揮できる。そのため、第1、第2蒸発器15、18の両方で冷却された冷風を冷却対象空間に吹き出して、冷却対象空間を冷房(冷却)できるようになっている。
【0067】
上述の構成および作動によれば、ノズル140の末広部145は、冷媒流通方向における中間部147の通路壁面の拡がり角度θ1よりも、中間部147から噴出口142までの出口部148の通路壁面の拡がり角度θ2が大きくなっており、出口部148では、下流側に向かって拡がり角度θ2が漸次増大している。
【0068】
気液二相状態で喉部144に流入した冷媒が末広部145で減圧される際には、二相冷媒中の細かい気泡を核として沸騰が起こり、減圧に伴って特に出口部148で流体中のガス量が大きく増大する。この増大するガス量に対応するように、出口部148の拡がり角度θ2を上流側の中間部147の拡がり角度θ1よりも大きくして、中間部147よりも出口部148の通路断面積の拡大率を大きくしている。
【0069】
また、末広部145の出口部148では、下流側に向かって拡がり角度θ2を漸次増大させて、出口部148を流体流通方向において滑らかな曲面とするとともに、中間部147と出口部148とを滑らかに連続させている。
【0070】
これにより、末広部145内で冷媒を加速し易くなり、冷媒の圧力エネルギーを速度エネルギーに変換するノズル効率を安定して向上することができる。その結果、エジェクタ効率を向上して、冷凍サイクル10の成績係数を向上することができる。
【0071】
従来の冷凍サイクルに使われるエジェクタのノズルには、図4(b)に示すように、サブクール域から液冷媒が流入されるものが一般的である。その際、高いノズル効率で減圧するには、破線で図示した等エントロピ線に沿うような形で減圧することが好ましいが、ノズルにおける減圧量が大きいので、喉部から出口(噴出口)までの全域で末広部の拡がり角度を一定としても、図4(b)に示すように等エントロピ線に近似した減圧を行うことが可能であった。
【0072】
これに対し、本実施形態のように、ノズル140に流入する冷媒が膨張弁13によって既に減圧されており、喉部144に流入する冷媒が気液二相冷媒となっている場合には、末広部145における減圧量は比較的小さく、比較的低圧領域の減圧を受け持つことなる。
【0073】
図4(a)に示すように、末広部145が冷媒を減圧する低圧領域では、等エントロピ線は逆C字状に図示左方向(エンタルピ減少方向)に湾曲している。この領域のみの減圧に、図4(b)に示した減圧を行う末広部の拡がり角度が一定であるノズルを採用すると、図4(a)に一点鎖線に示したような減圧を行い、破線で示した等エントロピ線に沿った減圧を行うことができず、エントロピが増大してしまう。
【0074】
本実施形態のエジェクタ14のノズル140は、末広部145の出口部148において中間部147よりも拡がり角度を大きくし、中間部147よりも出口部148の通路断面積の拡大率を大きくしている。これにより、末広部145内で剥離や渦の発生等がないエントロピ線に沿った冷媒の減圧を行い、末広部145内で冷媒を加速し易く、高いノズル効率を安定して得られるようになっている。
【0075】
本発明者らは、ノズル140の末広部145における中間部147の拡がり角度θ1と出口部148下流端の噴出口142の拡がり角度θ2との関係について評価を行い、中間部147の拡がり角度θ1に対する出口部噴出口142における拡がり角度θ2の比を1.33以上とすることにより、確実に流体を加速し易くなり、ノズル効率を確実に安定して向上することができることを確認している。
【0076】
図5は、ノズル140入口を一定圧力の二相状態とし、エジェクタ下流側の蒸発器の外部環境条件等を変化させてノズル140出口圧力を0.248MPa〜0.428MPaまで振ったさいのノズル効率の実測データである。
【0077】
評価に用いたノズルの拡がり角度θ1はいずれも0.75°であり、拡がり角度θ2を0.5°〜1.5°まで振って評価している。したがって、θ2が0.5°である場合は中間部の拡がり角度よりも出口部の拡がり角度の方が小さい比較例であり、θ2が0.75°である場合は、末広部の拡がり角度が一定である比較例である。
【0078】
図5から明らかなように、θ2が0.5°〜1°の間ではほぼ同等のノズル効率を示しているが、θ2が1°以上(すなわちθ2/θ1が1.33以上)である場合には、比較例に対して高いノズル効率を示すことが解る。
【0079】
上述した本実施形態の例に対し、図6に示すように、ノズル240の末広部145を喉部144から噴出口142に向かって導入部146、中間部147、出口部148の順に形成し、中間部147の通路壁面の拡がり角度θ1(第1拡がり角度に相当)よりも、喉部144から中間部147までの導入部146の通路壁面の拡がり角度θin(第3拡がり角度に相当)を大きくしたものであってもよい。そして、導入部146では、下流側に向かって拡がり角度θinが漸次減少させ、導入部146を冷媒流通方向において滑らかな曲面とするとともに、導入部146と中間部147とを滑らかに連続させている。
【0080】
すなわち、本例では、流体通路143の喉部144よりも下流側の末広部145は、導入部146、中間部147、出口部148が滑らかに繋がっており、中心線(軸線)を含む断面(中心線を含み中心線と平行に切断した断面)における流体通路143を形成する通路壁面(内壁面)は、導入部146では外側に凸となる湾曲した曲線、中間部147では直線、出口部148では内側に凸となる湾曲した曲線となっており、相互に滑らかに連続している。
【0081】
また、換言すれば、末広部145では円断面の径が下流側に向かって増大しており、導入部146では軸線方向への移動量に対する径の増加量は、下流側ほど徐々に小さくなっており、中間部147では軸線方向への移動量に対する径の増加量は一定であり、出口部148では軸線方向への移動量に対する径の増加量は、下流側ほど徐々に大きくなっている。
【0082】
図4(a)において破線で示した等エントロピ線は、図からは読み取り難いが、ノズルの喉部直後ではC字状に若干湾曲しており、ノズル喉部からノズル出口まででは略S字状をなしているということができる。
【0083】
したがって、気液二相状態で喉部144に流入した冷媒が末広部145で減圧される際には、喉部144を通過した直後の導入部146で減圧に伴って冷媒中のガス量が増大する。この導入部146で増大するガス量に対応するように、導入部146の拡がり角度θinを下流側の中間部147の拡がり角度θ1よりも大きくして、中間部147よりも導入部146の通路断面積の拡大率を大きくしている。これにより、末広部145内に冷媒をスムーズに流通して一層冷媒を加速し易くなり、ノズル効率をより一層安定して向上することができる。
【0084】
なお、図2、図6に例示したノズルにおいて、中心線を含み中心線と平行に切断した断面における通路壁面が、中間部は直線をなしていたが曲線をなすものであってもよい。
【0085】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図7および図8に基づいて説明する。
【0086】
本第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、導入部や出口部の拡がり角度を一定とした点が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
【0087】
本実施形態では、図7に示すように、ノズル340の中間部147の下流側に形成した出口部148では、拡がり角度θ2(第2拡がり角度に相当)を全域で一定(一様)としている。また、図8に示す例では、ノズル440の中間部147の下流側に形成した出口部148の拡がり角度θ2(第2拡がり角度に相当)を全域で一定とし、さらに、中間部147より上流側に形成した導入部146の拡がり角度θin(第3拡がり角度に相当)を全域で一定としている。
【0088】
したがって、ノズル340、440の中心線(軸線)を含む断面(中心線を含み中心線と平行に切断した断面)における流体通路143を形成する通路壁面(内壁面)は、末広部145では直線を組み合わせたものとなる。
【0089】
これにより、第1の実施形態において図2、図6に示したノズル140、240よりも末広部145を形成する際の加工や検査等が容易であり、エジェクタ装置の製造を容易に行うことができる。
【0090】
(他の実施形態)
本発明は、前述の第1、第2の実施形態で例示したようなノズルばかりでなく、ニードル弁体を有し冷媒流量を可変するノズルにも適用することが可能である。
【0091】
例えば図9に示すように、内部に流体通路543が形成され、流体通路543の途中で通路断面積が最も縮小した喉部144を有する本体部540Aと、流体通路543内に喉部144から流体通路543下流側先端の噴出口142に向かって突出するニードル弁体540Bとを具備し、喉部144に流入する気液二相の冷媒を減圧して噴出口142から噴出するノズル540にも適用することができる。
【0092】
本体部540Aの喉部144より下流側の内面5401とニードル弁体540Bの外面5402の間に形成される流体通路543の冷媒流通方向(軸線方向)における各部の断面を等価直径の円断面とした仮想流体通路を想定した場合に、この仮想流体通路が喉部から下流側に向かうほど通路断面積が拡大する末広形状となっており、冷媒流通方向における中間部の仮想流体通路表面の第1拡がり角度θ1よりも、中間部から噴出口までの出口部の仮想流体通路表面の第2拡がり角度θ2が大きくなっていればよい。
【0093】
さらに、仮想流体通路は、中間部の仮想流体通路表面の第1拡がり角度θ1よりも、喉部から中間部までの導入部の仮想流体通路表面の第3拡がり角度θinが大きくなっていればより好ましい。
【0094】
これによると、ニードル弁体540Bを有するノズル540を備えるエジェクタ装置であっても、中間部よりも出口部の通路断面積の拡大率を大きくして、喉部144より下流側で冷媒を加速し易くなり、ノズル効率を安定して向上することができる。さらに、中間部よりも導入部の通路断面積の拡大率を大きくして、喉部144直後の領域で冷媒を加速し易くなり、ノズル効率をより一層安定して向上することができる。
【0095】
図9に例示したノズル540では、冷媒流通方向において本体部540Aの内面5401の拡がり角度を変更し、冷媒流通方向においてニードル弁体540Bの外面5402のテーパ角度を一定とすることで、仮想流体通路が上記特徴を有する流体通路543を形成していたが、この組み合わせに限定されるものではない。
【0096】
例えば、図10に示すノズル640のように、冷媒流通方向において本体部640Aの内面5401の拡がり角度を一定とし、冷媒流通方向においてニードル弁体640Bの外面5402のテーパ角度を変更することによっても、仮想流体通路が上記特徴を有する流体通路643を形成することができる。
【0097】
また、例えば、図11に示すノズル740のように、冷媒流通方向において本体部540Aの内面5401の拡がり角度を変更するとともに、冷媒流通方向においてニードル弁体640Bの外面5402のテーパ角度を変更することによっても、仮想流体通路が上記特徴を有する流体通路743を形成することができる。
【0098】
図9ないし図11に例示したようなノズルにおいても、仮想流体通路の出口部では下流側に向かって第2拡がり角度を漸次増大させることにより、流体をスムーズに流通して加速することができ、ノズル効率をより安定して向上することができる。また、仮想流体通路の導入部では下流側に向かって第3拡がり角度を漸次減少させることにより、流体をスムーズに流通して加速することができ、ノズル効率をより安定して向上することができる。
【0099】
また、仮想流体通路が上記特徴を有する流体通路となるように本体部の内面やニードル弁体の外面を形成する際に、中心線(軸線)を含む断面(中心線を含み中心線と平行に切断した断面)における各面が直線の組み合わせとなるように形成すれば、ニードル弁体を有するノズルの加工や検査等が容易であり、エジェクタ装置の製造を容易に行うことができる。
【0100】
また、上記各実施形態では、ノズルの入口141に気液二相状態の冷媒が流入する場合について説明したが、ノズルの喉部144に流入する冷媒が気液二相状態であれば、本発明を適用して有効である。
【0101】
また、上記各実施形態では、本発明を適用したエジェクタ装置14を、図3に示すエジェクタ上流側の高圧配管から冷媒分岐配管が分岐する冷凍サイクル10に用いた場合について説明したが、冷凍サイクルはこれに限定するものではない。例えば、図12、図13に示すような低圧配管から冷媒分岐配管が分岐する構成の冷凍サイクルを採用することができる。
【0102】
また、例えば、図14に示すような高圧配管から冷媒分岐配管が分岐し、この分岐配管のみに蒸発器を備える冷凍サイクルを採用することもできる。また、例えば、図15に示すようなエジェクタ直後の低圧配管から冷媒分岐配管が分岐する冷凍サイクルを採用することも可能である。
【0103】
また、受液器(レシーバ)もしくはアキュムレータを備えた冷凍サイクルを例示しているが、レシーバを備えた冷凍サイクル、アキュムレータを備えた冷凍サイクル、両者とも備えない冷凍サイクルのいずれであっても採用することが可能である。
【0104】
また、上記各実施形態では、車両に搭載する冷凍サイクルについて説明したが、これに限定されず、定置式の冷凍サイクルであってもかまわない。
【0105】
また、上記各実施形態では、冷媒としてHFC−134aを用いた場合について説明していたが、冷媒はこれに限定されるものではない。フロン系冷媒や炭化水素系冷媒、二酸化炭素冷媒等を広く採用することができる。例えば、HFCR404A、HFC407C、HFC410、イソブタン等を採用することも可能である。また、冷媒の高圧側圧力も臨界圧を超えないサイクルに限定されず、高圧側圧力が臨界圧を超える、所謂超臨界冷凍サイクルを採用することが可能である。
【0106】
また、上記各実施形態では、エジェクタ内を流通する流体は冷媒であり、エジェクタを冷凍サイクルに用いた場合について説明したが、流体は冷媒以外でもよく、ノズルの喉部に気液二相状態の流体が流入するエジェクタに本発明を適用すれば有効である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態におけるエジェクタ14の概略構造を示す断面図である。
【図2】エジェクタ14のノズル140の構成を示す断面図である。
【図3】エジェクタ14を用いた冷凍サイクル10の概略構成を示す模式図である。
【図4】圧力−エンタルピ線図上においてエジェクタノズルの減圧過程を説明する図であり、(a)は本発明を適用した例、(b)は比較例を示している。
【図5】ノズル効率の評価結果を示すグラフである。
【図6】第1の実施形態の変形例におけるノズル240の構成を示す断面図である。
【図7】第2の実施形態におけるノズル340の構成を示す断面図である。
【図8】第2の実施形態の変形例におけるノズル440の構成を示す断面図である。
【図9】他の実施形態におけるノズル540の構成を示す断面図である。
【図10】他の実施形態におけるノズル640の構成を示す断面図である。
【図11】他の実施形態におけるノズル740の構成を示す断面図である。
【図12】他の実施形態における冷凍サイクルの概略構成を示す模式図である。
【図13】他の実施形態における冷凍サイクルの概略構成を示す模式図である。
【図14】他の実施形態における冷凍サイクルの概略構成を示す模式図である。
【図15】他の実施形態における冷凍サイクルの概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0108】
10 冷凍サイクル
11 圧縮機
12 凝縮器(放熱用熱交換器)
14 エジェクタ(エジェクタ装置)
14b 冷媒吸引口
14c 混合部(実質的な昇圧部の一部)
14d ディフューザ部(昇圧部、実質的な昇圧部の一部)
15 第1蒸発器(蒸発器)
16 冷媒分岐配管(冷媒配管の一部)
18 第2蒸発器(蒸発器)
20 冷媒循環配管(冷媒配管の一部)
140、240、340、440、540、640、740 ノズル
142 噴出口
143、543、643、743 流体通路
144 喉部
145 末広部
146 導入部
147 中間部
148 出口部
540A、640A 本体部
540B、640B ニードル弁体
5401 内面(本体部の内面)
5402 外面(ニードル弁体の外面)
θ1 中間部の拡がり角度(第1拡がり角度)
θ2 出口部の拡がり角度(第2拡がり角度)
θin 導入部の拡がり角度(第3拡がり角度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に円断面の流体通路(143)が形成され、前記流体通路(143)の途中で通路断面積が最も縮小した喉部(144)と、前記喉部(144)から下流側に向かうほど通路断面積が拡大する末広部(145)とを有し、前記喉部(144)に流入する気液二相の流体を減圧して前記末広部(145)下流側先端の噴出口(142)から噴出するノズル(140)、を備えるエジェクタ装置であって、
前記末広部(145)は、流体流通方向における中間部(147)の通路壁面の第1拡がり角度(θ1)よりも、前記中間部(147)から前記噴出口(142)までの出口部(148)の通路壁面の第2拡がり角度(θ2)が大きくなっていることを特徴とするエジェクタ装置。
【請求項2】
前記出口部(148)では、下流側に向かって前記第2拡がり角度(θ2)が漸次増大していることを特徴とする請求項1に記載のエジェクタ装置。
【請求項3】
前記出口部(148)では、前記第2拡がり角度(θ2)が一定であることを特徴とする請求項1に記載のエジェクタ装置。
【請求項4】
前記第1拡がり角度(θ1)に対する前記噴出口(142)における前記第2拡がり角度(θ2)の比が1.33以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のエジェクタ装置。
【請求項5】
前記末広部(145)は、前記中間部(147)の通路壁面の第1拡がり角度(θ1)よりも、前記喉部(144)から前記中間部(147)までの導入部(146)の通路壁面の第3拡がり角度(θin)が大きくなっていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のエジェクタ装置。
【請求項6】
前記導入部(146)では、下流側に向かって前記第3拡がり角度(θin)が漸次減少していることを特徴とする請求項5に記載のエジェクタ装置。
【請求項7】
前記導入部(146)では、前記第3拡がり角度(θin)が一定であることを特徴とする請求項5に記載のエジェクタ装置。
【請求項8】
内部に流体通路(543)が形成され、前記流体通路(543)の途中で通路断面積が最も縮小した喉部(144)を有する本体部(540A)と、前記流体通路(543)内に前記喉部(144)から前記流体通路(543)下流側先端の噴出口(142)に向かって突出するニードル弁体(540B)とを具備し、前記喉部(144)に流入する気液二相の流体を減圧して前記噴出口(142)から噴出するノズル(540)、を備えるエジェクタ装置であって、
前記本体部(540A)の前記喉部(144)より下流側の内面(5401)と前記ニードル弁体(540B)の外面(5402)の間に形成される前記流体通路(543)の流体流通方向における各部の断面を等価直径の円断面とした仮想流体通路を想定した場合に、
前記仮想流体通路は、前記喉部から下流側に向かうほど通路断面積が拡大する末広形状となっており、流体流通方向における中間部の通路表面の第1拡がり角度(θ1)よりも、前記中間部から前記噴出口までの出口部の通路表面の第2拡がり角度(θ2)が大きくなっていることを特徴とするエジェクタ装置。
【請求項9】
前記出口部では、下流側に向かって前記第2拡がり角度(θ2)が漸次増大していることを特徴とする請求項8に記載のエジェクタ装置。
【請求項10】
前記出口部では、前記第2拡がり角度(θ2)が一定であることを特徴とする請求項8に記載のエジェクタ装置。
【請求項11】
前記第1拡がり角度(θ1)に対する前記噴出口における前記第2拡がり角度(θ2)の比が1.33以上であることを特徴とする請求項8ないし請求項10のいずれかに記載のエジェクタ装置。
【請求項12】
前記仮想流体通路は、前記中間部の通路表面の第1拡がり角度(θ1)よりも、前記喉部から前記中間部までの導入部の通路表面の第3拡がり角度(θin)が大きくなっていることを特徴とする請求項8ないし請求項11のいずれかに記載のエジェクタ装置。
【請求項13】
前記導入部では、下流側に向かって前記第3拡がり角度(θin)が漸次減少していることを特徴とする請求項12に記載のエジェクタ装置。
【請求項14】
前記導入部では、前記第3拡がり角度(θin)が一定であることを特徴とする請求項12に記載のエジェクタ装置。
【請求項15】
前記本体部(540A)の前記内面(5401)は流体流通方向において拡がり角度が変更され、前記ニードル弁体(540B)の前記外面(5402)は流体流通方向においてテーパ角度が一定となっていることを特徴とする請求項8ないし請求項14のいずれかに記載のエジェクタ装置。
【請求項16】
前記本体部(640A)の前記内面(5401)は流体流通方向において拡がり角度が一定であり、前記ニードル弁体(640B)の前記外面(5402)は流体流通方向においてテーパ角度が変更されていることを特徴とする請求項8ないし請求項14のいずれかに記載のエジェクタ装置。
【請求項17】
前記本体部(540A)の前記内面(5401)は流体流通方向において拡がり角度が変更されているとともに、前記ニードル弁体(640B)の前記外面(5402)は流体流通方向においてテーパ角度が変更されていることを特徴とする請求項8ないし請求項14のいずれかに記載のエジェクタ装置。
【請求項18】
請求項1ないし請求項17のいずれかに記載のエジェクタ装置を用いた蒸気圧縮式の冷凍サイクルであって、
前記流体は冷媒であり、
前記エジェクタ装置(14)は、前記ノズル(140)で気液二相状態の冷媒を減圧膨張させ、前記ノズル(140)で減圧膨張されて噴射される高速度冷媒流により冷媒が内部に吸引される冷媒吸引口(14b)と、前記高速度冷媒流と前記冷媒吸引口(14b)からの吸引冷媒とを混合し、混合した冷媒流の速度エネルギーを圧力エネルギーに変換する昇圧部(14c、14d)とを有し、
前記エジェクタ装置(14)から導出された冷媒もしくは前記冷媒吸引口(14b)に吸引される冷媒の少なくともいずれかを蒸発させる蒸発器(15、18)と、
前記蒸発器(15、18)で蒸発した冷媒を吸入圧縮して吐出する圧縮機(11)と、
前記圧縮機(11)から吐出された冷媒から放熱して冷却する放熱用熱交換器(12)と、
前記圧縮機(11)、前記放熱用熱交換器(12)、前記エジェクタ装置(14)、および前記蒸発器(15、18)を接続して、前記放熱用熱交換器(12)の下流側の冷媒を前記ノズル(140)に導入するとともに、前記圧縮機(11)が吐出した後再び吸入する前の冷媒の一部を前記冷媒吸引口(14b)に導く冷媒配管(16、20)と、を備えることを特徴とするエジェクタ装置を用いた蒸気圧縮式冷凍サイクル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−221883(P2009−221883A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64664(P2008−64664)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】