説明

エスカレータの運転制御装置

【課題】エスカレータの負荷状況が高い場合に、乗客の滞留防止及び輸送効率をより図ることができるエスカレータの運転制御装置を提供する。
【解決手段】上昇しているエスカレータ10の負荷検出部20が所定値以上の負荷を検出したときに、群管理制御部22は、上昇している1つ上の階のエスカレータ10の速度を上げるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エスカレータの運転制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数台のエスカレータが設置されているビルなどにおいて、運転制御装置は、エスカレータの積載負荷や乗客の流れに応じて、各エスカレータの速度を調整することで、輸送効率の向上及び乗客の滞留防止を行っている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている運転制御装置においては、各エスカレータの負荷状況を把握し、乗客の少ないエスカレータの速度を低下させ、乗客が予め設定した負荷以上になった場合には、他のエスカレータの速度を抑えることで、乗客全体の流れに与える影響を最小限に抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−303056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来の運転制御装置のように、高負荷が発生しているエスカレータ以外の他のエスカレータの速度を抑えるだけでは、滞留防止を図ったり、輸送効率を向上させる効果が少ないという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、エスカレータが高負荷の場合に、乗客の滞留防止及び輸送効率をより図ることができるエスカレータの運転制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、複数台のエスカレータと、前記各エスカレータの速度及び上昇又は下降を示す方向をそれぞれ制御する駆動制御部と、前記各エスカレータにおける乗客の負荷状況をそれぞれ検出する負荷検出部と、前記各エスカレータの速度及び方向をそれぞれ割り当て、この割り当てた速度と方向を前記各駆動制御部に指令する群管理部と、を有するエスカレータの運転制御装置において、前記複数台のエスカレータの中で少なくとも一台のエスカレータが、N階の階床に上昇するように設置され、前記複数台のエスカレータの中で少なくとも一台のエスカレータが、N+1階の階床に上昇するように設置され、上昇している前記N階のエスカレータの負荷検出部が、所定値以上の負荷を検出したときに、前記群管理部は、上昇している前記N+1階のエスカレータの速度を上げるように第1負荷軽減指令を行う、ことを特徴とするエスカレータの運転制御装置である。
【0008】
また、本発明の実施形態は、前記複数台のエスカレータの中でさらに一台のエスカレータが、N+1階の階床に下降するように設置され、前記群管理部は、下降している前記N+1階のエスカレータの方向を上昇に変更するように第2負荷軽減指令を行い、下降している前記N+1階のエスカレータの前記駆動制御部は、前記第2負荷軽減指令を受けた後、前記負荷検出部が無負荷を検出したときに、前記方向を下降から上昇に変更する、ことを特徴とする請求項1に記載のエスカレータの運転制御装置である。
【0009】
また、本発明の実施形態は、複数台のエスカレータと、前記各エスカレータの速度及び上昇又は下降を示す方向をそれぞれ制御する駆動制御部と、前記各エスカレータにおける乗客の負荷状況をそれぞれ検出する負荷検出部と、前記各エスカレータの速度及び方向をそれぞれ割り当て、この割り当てた速度と方向を前記各駆動制御部に指令する群管理部と、を有するエスカレータの運転制御装置において、前記複数台のエスカレータの中で少なくとも一台のエスカレータが、N階の階床に下降するように設置され、前記複数台のエスカレータの中で少なくとも一台のエスカレータが、N−1階の階床に下降するように設置され、下降している前記N階のエスカレータの負荷検出部が、所定値以上の負荷を検出したときに、前記群管理部は、下降している前記N−1階のエスカレータの速度を上げるように第4負荷軽減指令を行う、ことを特徴とするエスカレータの運転制御装置である。
【0010】
また、本発明の実施形態は、複数台のエスカレータと、前記各エスカレータの速度及び上昇又は下降を示す方向をそれぞれ制御する駆動制御部と、前記各エスカレータにおける乗客の負荷状況をそれぞれ検出する負荷検出部と、前記各エスカレータの速度及び方向をそれぞれ割り当て、この割り当てた速度と方向を前記各駆動制御部に指令する群管理部と、を有するエスカレータの運転制御装置において、前記複数台のエスカレータの中で少なくとも二台のエスカレータが、N階の階床に設置され、上昇している前記N階のエスカレータの負荷検出部が、所定値以上の負荷を検出したときに、前記群管理部は、上昇している同じ階の他の前記エスカレータの速度を上げるか、又は、下降している同じ階の他の前記エスカレータの方向を上昇に変更するように第7負荷軽減指令を行う、ことを特徴とするエスカレータの運転制御装置である。
【0011】
また、本発明の実施形態は、複数台のエスカレータと、前記各エスカレータの速度及び上昇又は下降を示す方向をそれぞれ制御する駆動制御部と、前記各エスカレータにおける乗客の負荷状況をそれぞれ検出する負荷検出部と、前記各エスカレータの速度及び方向をそれぞれ割り当て、この割り当てた速度と方向を前記各駆動制御部に指令する群管理部と、を有するエスカレータの運転制御装置において、前記複数台のエスカレータの中で少なくとも二台のエスカレータが、N階の階床に設置され、下降している前記N階のエスカレータの負荷検出部が、所定値以上の負荷を検出したときに、前記群管理部は、下降している同じ階の他の前記エスカレータの速度を上げるか、又は、上昇している同じ階の他の前記エスカレータの方向を下降に変更するように第8負荷軽減指令を行う、ことを特徴とするエスカレータの運転制御装置である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1における各エスカレータの設置図である。
【図2】各エスカレータと運転制御装置のブロック図である。
【図3】実施例1におけるフローチャートである。
【図4】実施例2における各エスカレータと運転制御装置のブロック図である。
【図5】実施例3におけるフローチャートである。
【図6】実施例4の各エスカレータと運転制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例のエスカレータ10の運転制御装置12について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1のエスカレータ10の運転制御装置12について図1〜図3に基づいて説明する。
【0015】
(1)エスカレータ10の設置状態
本実施例のエスカレータ10の設置状態について図1に基づいて説明する。
【0016】
図1は、ビルなどの1つの建屋に7台のエスカレータ10が設置された状態である。
【0017】
図1に示すように、N−1階には、上昇している1号機のエスカレータ10−1と、下降している2号機のエスカレータ10−2が設置されている。
【0018】
N階には、上昇している3号機のエスカレータ10−3と7号機のエスカレータ10−7が設置され、また、下降している4号機のエスカレータ10−4が設置されている。
【0019】
N+1階には、上昇している5号機のエスカレータ10−5と、下降している6号機のエスカレータ10−6が設置されている。
【0020】
なお、階数及び設置状態は、例示であってこの設置方法には限らない。
【0021】
(2)各エスカレータ10の構成
7台のエスカレータ10を運転制御する運転制御装置1について図2のブロック図に基づいて説明する。
【0022】
まず、1号機のエスカレータ10−1について説明する。
【0023】
1号機のエスカレータ10−1は、無端状に循環するように連結された複数の踏段と、これら踏段の両側部に立設された欄干と、欄干の上部に配置された手すりベルトを有し、踏段と手すりベルトは同期するようにモータ12−1によって駆動する。エスカレータ10−1は、このモータ12−1を制御するために、電力変換部14−1、駆動制御部16−1、電流検出部18−1、負荷検出部20−1を有する。
【0024】
駆動制御部16−1は、エスカレータ10−1の運転/停止、速度、上昇/下降の方向を制御する。
【0025】
電力変換部14−1は、駆動制御部16−1からの制御信号に基づき、モータ12−1の電圧と周波数を制御して、速度及び方向の制御を行う。この制御方法としては、電力変換部14−1は、例えばインバータ回路であって、モータ12−1をインバータ制御する。
【0026】
電流検出部18−1は、電力変換部14−1から出力される電流値(例えば、モータ電流)を検出し、負荷検出部20−1がこの検出したモータ電流値に基づきエスカレータ10−1の負荷状況を判定する。
【0027】
2号機〜7号機のエスカレータ10も同様にモータ12、電力変換部14、駆動制御部16、電流検出部18、負荷検出部20からなる群管理部を有している。
【0028】
運転制御装置1は、これら7台のエスカレータ10を制御するために、群管理制御部22、速度切替部24、方向切替部26を有している。
【0029】
群管理制御部22は、7台の負荷検出部20に接続され、各負荷検出部20から負荷状況を示す負荷信号が入力される。群管理制御部22は、各負荷検出部20からの負荷信号に基づき、各エスカレータ10が高負荷であるか、通常の負荷状態であるか、無負荷であるかを判定する。すなわち、群管理制御部22は、例えば、負荷検出部20が検出したモータ電流値(負荷信号)が所定値以上であれば、エスカレータ10−1が高負荷と判定する。また、群管理制御部22には、全てのエスカレータ10の速度及び方向が、メモリなどの記憶部に記憶されている。
【0030】
速度切替部24は、群管理制御部22の判定に基づき、各エスカレータ10の速度に関する負荷軽減指令を駆動制御部16に出力する。
【0031】
方向切替部26は、群管理制御部22の判定に基づき、各エスカレータ10の方向に関する負荷軽減指令を駆動制御部16に出力する。
【0032】
各エスカレータ10のそれぞれの駆動制御部16は、速度切替部24及び方向切替部26から出力された速度及び方向に関する負荷軽減指令に基づき、各エスカレータ10の速度及び方向を制御する。
【0033】
(3)運転制御装置1の動作状態
次に、運転制御装置1の動作状態について図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0034】
ステップS1において、群管理制御部22は、各エスカレータ10の負荷検出部20からの負荷信号に基づき、各エスカレータ10の負荷が、予め設定した所定値αを超えたか否かを判定する。ここで、全てのエスカレータ10の負荷が所定値αを超えていなければ、ステップS1を継続し(Noの場合)、1つのエスカレータ10でも所定値αを超えていればステップS2に進む(Yesの場合)。ここで、以下の説明を簡単にするために、負荷が所定値αを超えたエスカレータ10として、上昇している3号機のエスカレータ10−3とする。
【0035】
ステップS2において、群管理制御部22は、高負荷の3号機のエスカレータ10−3の階床番号N、速度V、方向D(上昇/下降)を予め記憶されたデータに基づいて特定する。
【0036】
ステップS3において、群管理制御部22は、特定した階床番号Nと、3号機以外の各エスカレータ10の階床番号とを比較し、階床番号がN+1の場合にはステップS4に進み、同じ階床番号Nの場合にはステップS5に進み、階床番号がN−1の場合にはステップS6に進む。
【0037】
(3−1)N+1階の場合
まず、3号機のエスカレータ10−3より上のN+1階の5号機と6号機のエスカレータ10の制御について説明する。
【0038】
ステップS4において、群管理制御部22は、N+1階に設置されている5号機のエスカレータ10−5と6号機のエスカレータ10−6の速度Vと方向Dをそれぞれ特定する。そして、ステップS7に進む。
【0039】
ステップS7において、群管理制御部22は、3号機のエスカレータ10−3の方向D(上昇)と、5号機のエスカレータ10−5の方向D(上昇)と6号機のエスカレータ10−6の方向D(下降)を比較する。5号機のエスカレータ10−5は、方向が同じであるためステップS8に進み(Yesの場合)、6号機のエスカレータ10−6は方向が異なるためステップS10に進む(Noの場合)。
【0040】
ステップS8において、群管理制御部22は、3号機のエスカレータ10−3と1つ上の階の5号機のエスカレータ10−5の同じ方向(上昇)であるため、5号機のエスカレータ10−5の速度Vを加速するように、V+β(m/分)と判定する。なお、群管理制御部22は、βは予め記憶しておく。そして、ステップS9に進む。
【0041】
ステップS9において、速度切替部24は、V+β(m/分)の情報を付加した負荷軽減指令を5号機のエスカレータ10−5の駆動制御部16−5に出力する。駆動制御部16−5は、この負荷軽減指令が入力すると、エスカレータ10−5のモータ12−5を制御して、速度VがV+βになるように制御する。上昇している3号機のエスカレータ10−3が高負荷であるということは、N階からN+1階に上がる乗客が多いということであるため、N+1階からN+2階に上がる乗客の数を、5号機のエスカレータ10−5の速度を上げて増やし、N+1階にいる乗客の数を減らすことにより、3号機のエスカレータ10−3の負荷を軽減させる。そして、終了する。
【0042】
ステップS10において、6号機のエスカレータ10−6は下降であるため、群管理制御部22は、6号機のエスカレータ10−6の方向を下降から上昇に変更するように判定する。そして、ステップS11に進む。
【0043】
ステップS11において、群管理制御部22は、6号機のエスカレータ10−6の負荷検出部20−6からの負荷信号を常に検出し、無負荷であると判定した時、すなわち、負荷検出値=0であるときにステップS12に進み(Yesの場合)、無負荷が検出できないときは終了する(Noの場合)。
【0044】
ステップS12において、6号機のエスカレータ10−6が無負荷状態になったため、すなわち乗客が全くいなくなったため、方向切替部26が6号機のエスカレータ10−6の駆動制御部16−6に対し方向を下降から上昇に切替える負荷軽減指令を出力する。この負荷軽減指令が入力した6号機の駆動制御部16−6は、乗客がいない状態の6号機のエスカレータ10−6の方向を下降から上昇に切替える。これによって、N+1階にいる乗客がN+2階により上がることができる。そのため、3号機のエスカレータ10−3によってN+1階に上昇してきた乗客をさらに上のN+2階に上げることができ、3号機のエスカレータ10−3の負荷を軽減できる。そして終了する。
【0045】
(3−2)N階の場合
次に、3号機のエスカレータ10−3と同じN階の4号機と7号機のエスカレータ10の制御について説明する。
【0046】
ステップS5において、群管理制御部22は、N階に設置されている4号機のエスカレータ10−4と7号機のエスカレータ10−7の速度Vと方向Dをそれぞれ特定する。そして、ステップS13に進む。
【0047】
ステップS13において、群管理制御部22は、3号機のエスカレータ10−3の方向(上昇)と4号機のエスカレータ10−4の方向(下降)、7号機のエスカレータ10−7の方向(上昇)とを比較し、同じ方向であればステップS13に進み(Yesの場合)、異なる方向であればステップS14に進む(Noの場合)。7号機のエスカレータ10−7は、同じ方向であるためステップS14に進み、4号機のエスカレータ10−4は異なる方向であるためステップS16に進む。
【0048】
ステップS14において、群管理制御部22は、7号機のエスカレータ10−7の速度Vが加速するようにV+β(m/分)と判定し、ステップS15に進む。
【0049】
ステップS15において、速度切替部24は、7号機のエスカレータ10−7の駆動制御部16−7に対し、V+β(m/分)の情報を付加した負荷軽減指令を出力する。7号機の駆動制御部16−7は、この負荷軽減指令が入力すると、7号機のエスカレータ10−7の速度VをV+β(m/分)に上げる。これによって、N階にいる乗客の数を減らすことができ、3号機のエスカレータ10−3の負荷を軽減できる。
【0050】
ステップS16において、群管理制御部22は、下降している4号機のエスカレータ10−4の方向を上昇するように判定する。そして、ステップS17に進む。
【0051】
ステップS17において、群管理制御部22は、4号機の負荷検出部20−4の負荷検出値を常に検出しておき、負荷検出値=0、すなわち、無負荷になった場合にはステップS18に進む(Yesの場合)。無負荷になっていなければ終了する(Noの場合)。
【0052】
ステップS18において、方向切替部26が、4号機の駆動制御部16に対し方向を下降から上昇するように切り替える負荷軽減指令を出力する。4号機の駆動制御部16−4は、乗客がいないためエスカレータ10−7の方向を下降から上昇に変更する。これによって、上昇できる乗客がより増え、3号機のエスカレータ10−3の負荷を軽減できる。そして終了する。
【0053】
(3−3)N−1階の場合
次に、3号機のエスカレータ10−3より下のN−1階の1号機と2号機のエスカレータ10の制御について説明する。
【0054】
ステップS6において、群管理制御部22は、N−1階に設置されている1号機のエスカレータ10−1と2号機のエスカレータ10−2の速度Vと方向Dをそれぞれ特定する。そして、ステップS19に進む。
【0055】
ステップS19において、群管理制御部22は、3号機のエスカレータ10−3の方向(上昇)と、1号機のエスカレータ10−1の方向(上昇)と2号機のエスカレータ10−2の方向(下降)が同じであるか否かを判定し、同じであればステップS19に進み(Yesの場合)、異なる方向であれば終了する(Noの場合)。1号機のエスカレータ10−1は同じ方向であるため、ステップS20に進む。
【0056】
ステップS20において、群管理制御部22は、1号機のエスカレータ10−1の速度VをV−γ(m/分)に減速するように判定する。なお、群管理制御部22は、γは予め記憶しておく。そして、ステップS21に進む。
【0057】
ステップS21において、速度切替部24は、1号機のエスカレータ10−1の駆動制御部16−1に対し、V−γ(m/分)の情報を付加した負荷軽減指令を出力する。1号機の駆動制御部16は、V−γ(m/分)に減速するようにエスカレータ10−1の速度を制御する。これによって、混んでいるN階に上がる乗客の数を減らすことができ、3号機のエスカレータ10−3の負荷を軽減できる。そして終了する。
【0058】
(4)効果
本実施例によれば、高負荷となったエスカレータ10が設置された階を基準にして、その上にいる階の乗客については更に上の階に流れるようにする。また、同じ階にいる乗客については同じ階にあるエスカレータの速度を上げたり、方向を変更してより上の階に流れるようにする。さらに、下の階にあるエスカレータについては速度を落とすことにより同じ階に上がって来る人数を軽減する。これによって、負荷を超えたエスカレータの負荷を軽減できる。
【0059】
(5)変更例
上記実施例では、上昇している3号機のエスカレータ10−3が高負荷になったときを説明したが、これに代えて下降している4号機のエスカレータ10−4についても同様に制御できる。具体的には、下のN−1階において、下降している2号機のエスカレータ10−2の下降速度を加速し、上昇している1号機のエスカレータ10−1の方向を無負荷になったときに上昇から下降に転換する。また、同じN階にある上昇している3号機と7号機のエスカレータ10−3,10−7については、無負荷のときに上昇から下降に方向を転換する。さらに、上のN+1階の6号機のエスカレータ10−6の下降速度を減速する。これにより、4号機のエスカレータ10−4の負荷状態を軽減できる。
【実施例2】
【0060】
次に、本発明の実施例2のエスカレータ10の運転制御装置1について図4に基づいて説明する。
【0061】
本実施例と実施例1の異なる点は、各エスカレータの駆動制御部16に放送部28を有している点にある。
【0062】
本実施例においては、速度切替部24から速度の切替え、又は、方向切替部26から方向切替えを駆動制御部16が受けた場合には、速度又は方向の切替えを行う前に、放送部28が、予め録音しておいた速度変更又は方向変更のアナウンスを放送し、乗客に運転が変更されることを知らせる。これによって、乗客はエスカレータ10の速度や方向が切り替わっても混乱することがない。
【実施例3】
【0063】
次に、本発明の実施例3のエスカレータ10の運転制御装置1について図5に基づいて説明する。
【0064】
実施例1では、高負荷となったエスカレータ10は1台であったが、本実施例の場合には、複数台のエスカレータ10が高負荷となった場合について説明する。例えば、3号機のエスカレータ10−3に続いて、7号機のエスカレータ10−7が高負荷になった場合について図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0065】
ステップS22において、群管理制御部22は、3号機のエスカレータ10−3の負荷検出部20−3の負荷検出値A>所定値αであればステップS23に進み(Yesの場合)、そうでなければ終了する(Noの場合)。
【0066】
ステップS23において、実施例1で説明した負荷軽減制御を行い、3号機のエスカレータ10−3の負荷を軽減する。すなわち、他のエスカレータ10の速度を切り替えたり方向を切り替える制御を行う。そして、ステップS24に進む。
【0067】
ステップS24において、3号機のエスカレータ10の負荷検出値A=<δであればステップS25に進み(Yesの場合)、小さくならなければステップS23に戻る(Noの場合)。なお、α>δである。
【0068】
ステップS25において、7号機のエスカレータ10−7の負荷検出値B>=所定値αであるかを判定する。そして、未だ負荷検出値Bが所定値α以上であればステップS26に進み(Yesの場合)、そうでなければ終了する(Noの場合)。
【0069】
ステップS26において、7号機のエスカレータ10−7以外のエスカレータ10の速度を切り替えたり方向を切り替えたりして7号機のエスカレータ10−7の負荷の軽減を行いステップS27に進む。
【0070】
ステップS27において、7号機のエスカレータ10−7の負荷検出値B=<δであれば負荷が軽減されたとして終了し(Yesの場合)、そうでなければステップS26に戻る(Noの場合)。
【0071】
このように、高負荷となったエスカレータ10の順番で、各エスカレータ10の負荷軽減を行うことにより、確実に各エスカレータ10の負荷を軽減できる。
【実施例4】
【0072】
次に、本発明の実施例4のエスカレータ10の運転制御装置1について図6に基づいて説明する。
【0073】
本実施例と実施例1の異なる点は、実施例1では電流検出部18が検出したモータ電流値に基づいて負荷検出部20が負荷を検出したが、本実施例では、図6に示すように、乗客検出部30と乗客撮影部32とを有する。乗客検出部30は、エスカレータの乗降口に設置され、乗客の通過を検出する。乗客撮影部32は、エスカレータ10の天井部に設置され、映像解析によって乗客の数を検出する。これら検出した結果に基づいて、エスカレータ10の負荷状況を判定する。乗客検出部30としては、例えば、乗降口に光センサを設け、この光センサが検出した値に基づいて乗客の数を検出する。
【0074】
本実施例であっても、乗客の数、すなわち各エスカレータ10の負荷状況を確実に把握することができる。
【0075】
なお、乗客検出部30m、又は、乗客撮影部32のどちらか一方の装置で乗客数を検出してもよい。
【変更例】
【0076】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1・・・運転制御装置、10・・・エスカレータ、12・・・モータ、14・・・電力変換部、16・・・駆動制御部、18・・・電流検出部、20・・・負荷検出部、22・・・群管理制御部、24・・・速度切替部、26・・・方向切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のエスカレータと、
前記各エスカレータの速度及び上昇又は下降を示す方向をそれぞれ制御する駆動制御部と、
前記各エスカレータにおける乗客の負荷状況をそれぞれ検出する負荷検出部と、
前記各エスカレータの速度及び方向をそれぞれ割り当て、この割り当てた速度と方向を前記各駆動制御部に指令する群管理部と、
を有するエスカレータの運転制御装置において、
前記複数台のエスカレータの中で少なくとも一台のエスカレータが、N階の階床に上昇するように設置され、
前記複数台のエスカレータの中で少なくとも一台のエスカレータが、N+1階の階床に上昇するように設置され、
上昇している前記N階のエスカレータの負荷検出部が、所定値以上の負荷を検出したときに、前記群管理部は、上昇している前記N+1階のエスカレータの速度を上げるように第1負荷軽減指令を行う、
ことを特徴とするエスカレータの運転制御装置。
【請求項2】
前記複数台のエスカレータの中でさらに一台のエスカレータが、N+1階の階床に下降するように設置され、
前記群管理部は、下降している前記N+1階のエスカレータの方向を上昇に変更するように第2負荷軽減指令を行い、
下降している前記N+1階のエスカレータの前記駆動制御部は、前記第2負荷軽減指令を受けた後、前記負荷検出部が無負荷を検出したときに、前記方向を下降から上昇に変更する、
ことを特徴とする請求項1に記載のエスカレータの運転制御装置。
【請求項3】
前記複数台のエスカレータの中で少なくとも一台のエスカレータが、N−1階の階床に上昇するように設置され、
前記群管理部は、上昇している前記N−1階のエスカレータの速度を下げるように第3負荷軽減指令を行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のエスカレータの運転制御装置。
【請求項4】
複数台のエスカレータと、
前記各エスカレータの速度及び上昇又は下降を示す方向をそれぞれ制御する駆動制御部と、
前記各エスカレータにおける乗客の負荷状況をそれぞれ検出する負荷検出部と、
前記各エスカレータの速度及び方向をそれぞれ割り当て、この割り当てた速度と方向を前記各駆動制御部に指令する群管理部と、
を有するエスカレータの運転制御装置において、
前記複数台のエスカレータの中で少なくとも一台のエスカレータが、N階の階床に下降するように設置され、
前記複数台のエスカレータの中で少なくとも一台のエスカレータが、N−1階の階床に下降するように設置され、
下降している前記N階のエスカレータの負荷検出部が、所定値以上の負荷を検出したときに、前記群管理部は、下降している前記N−1階のエスカレータの速度を上げるように第4負荷軽減指令を行う、
ことを特徴とするエスカレータの運転制御装置。
【請求項5】
前記複数台のエスカレータの中でさらに一台のエスカレータが、N−1階の階床に上層するように設置され、
前記群管理部は、上昇している前記N−1階のエスカレータの方向を下降に変更するように第5負荷軽減指令を行い、
上昇している前記N−1階のエスカレータ前記駆動制御部は、前記第5負荷軽減指令を受けた後、前記負荷検出部が無負荷を検出したときに、前記方向を上昇から下降に変更する、
ことを特徴とする請求項4に記載のエスカレータの運転制御装置。
【請求項6】
前記複数台のエスカレータの中で少なくとも一台のエスカレータが、N+1階の階床に下降するように設置され、
前記群管理部は、下降している前記N+1階のエスカレータの速度を下げるように第6負荷軽減指令を行う、
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のエスカレータの運転制御装置。
【請求項7】
複数台のエスカレータと、
前記各エスカレータの速度及び上昇又は下降を示す方向をそれぞれ制御する駆動制御部と、
前記各エスカレータにおける乗客の負荷状況をそれぞれ検出する負荷検出部と、
前記各エスカレータの速度及び方向をそれぞれ割り当て、この割り当てた速度と方向を前記各駆動制御部に指令する群管理部と、
を有するエスカレータの運転制御装置において、
前記複数台のエスカレータの中で少なくとも二台のエスカレータが、N階の階床に設置され、
上昇している前記N階のエスカレータの負荷検出部が、所定値以上の負荷を検出したときに、前記群管理部は、上昇している同じ階の他の前記エスカレータの速度を上げるか、又は、下降している同じ階の他の前記エスカレータの方向を上昇に変更するように第7負荷軽減指令を行う、
ことを特徴とするエスカレータの運転制御装置。
【請求項8】
複数台のエスカレータと、
前記各エスカレータの速度及び上昇又は下降を示す方向をそれぞれ制御する駆動制御部と、
前記各エスカレータにおける乗客の負荷状況をそれぞれ検出する負荷検出部と、
前記各エスカレータの速度及び方向をそれぞれ割り当て、この割り当てた速度と方向を前記各駆動制御部に指令する群管理部と、
を有するエスカレータの運転制御装置において、
前記複数台のエスカレータの中で少なくとも二台のエスカレータが、N階の階床に設置され、
下降している前記N階のエスカレータの負荷検出部が、所定値以上の負荷を検出したときに、前記群管理部は、下降している同じ階の他の前記エスカレータの速度を上げるか、又は、上昇している同じ階の他の前記エスカレータの方向を下降に変更するように第8負荷軽減指令を行う、
ことを特徴とするエスカレータの運転制御装置。
【請求項9】
前記各エスカレータの前記速度又は前記方向を変更する前に、放送を行う放送部をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいすれか一項に記載のエスカレータの運転制御装置。
【請求項10】
複数台の前記エスカレータの前記負荷検出部が、前記所定値以上の負荷を検出したときに、
前記群管理部は、前記所定値以上の負荷を検出した順番に、前記エスカレータの負荷が軽減されるように、前記第1負荷軽減指令乃至第8負荷軽減指令の少なくとも一つの指令を行う、
ことを特徴とする請求項1乃至9に記載のエスカレータの運転制御装置。
【請求項11】
前記負荷検出部は、(1)前記各エスカレータをそれぞれ駆動するモータの電流値、(2)前記各エスカレータの乗降口にそれぞれ設置された乗客検出部が検出した乗客状況、又は、(3)前記各エスカレータの天井部にそれぞれ設置された乗客撮影部が撮影した乗客状況に基づいて前記負荷を検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至10に記載のエスカレータの運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−166904(P2012−166904A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29513(P2011−29513)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】