説明

エスカレーターの利用者支持装置

【課題】エスカレーターの利用者を確実に支えて利用者の移動を補助することができ、更に、利用者が使用したい時に手軽に利用することができるエスカレーターの利用者支持装置を提供する。
【解決手段】一端部がエスカレーターの乗り口1で移動手摺4に近接して配置され、他端部がエスカレーターの降り口2で移動手摺4に近接して配置された案内レール10と、移動手摺4に固定されてエスカレーターの利用者を支える支持装置11とを備える。支持装置11は、案内レール10の一端部から移動手摺4に移って移動手摺4に固定されるとともに、移動手摺4から案内レール10の他端部に移り、案内レール10に案内されて降り口2から乗り口1に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレーターを利用する利用者を支えて、利用者の移動を補助する利用者支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1及び2には、高齢者等、移動手摺を掴むだけでは不安に感じる利用者のことを考慮し、エスカレーターの利用者を支えて、利用者が転倒することを防止する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−131369号公報
【特許文献2】特開2009−102119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エスカレーターの利用者が特許文献1及び2に記載のものを使用する場合、利用者は、エスカレーターの乗り口において、必要な部材を移動手摺に取り付けるといった作業を自分で行わなければならない。また、利用者が特許文献1及び2に記載のものを使用するためには、利用者は、その装置を常に携帯していなければならない。このため、使用時或いは使用前の準備が面倒であり、手軽に利用できないといった問題があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、エスカレーターの利用者を確実に支えて利用者の移動を補助することができ、更に、利用者が使用したい時に手軽に利用することができるエスカレーターの利用者支持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエスカレーターの利用者支持装置は、一端部がエスカレーターの乗り口で移動手摺に近接して配置され、他端部がエスカレーターの降り口で移動手摺に近接して配置された案内レールと、移動手摺に固定されてエスカレーターの利用者を支える支持装置と、を備え、支持装置は、案内レールの一端部から移動手摺に移って移動手摺に固定されるとともに、移動手摺から案内レールの他端部に移り、案内レールに案内されて降り口から乗り口に移動するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るエスカレーターの利用者支持装置であれば、エスカレーターの利用者を確実に支えて利用者の移動を補助することができる。また、利用者が使用したい時に手軽に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1における利用者支持装置を備えたエスカレーターの全体構成を示す平面図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるエスカレーターの利用者支持装置の要部を示す側面図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるエスカレーターの利用者支持装置の要部を示す平面図である。
【図4】この発明の実施の形態1におけるエスカレーターの利用者支持装置の要部を示す側面図である。
【図5】図3のC−C矢視を示す図である。
【図6】図2のD矢視を示す図である。
【図7】案内レールの一機能を説明するための図である。
【図8】案内レールの要部を示す平面図である。
【図9】図8のE−E矢視を示す図である。
【図10】図3のF部を拡大した図である。
【図11】図10のG−G矢視を示す図である。
【図12】図10に示す支持装置の底面図である。
【図13】図10のH−H矢視を示す図である。
【図14】図13のJ部を拡大した図である。
【図15】図3のK−K矢視を示す図である。
【図16】図15のL部を拡大した図である。
【図17】支持装置の一機能を説明するための図である。
【図18】この発明の実施の形態1におけるエスカレーターの利用者支持装置の動作を示すフローチャートである。
【図19】この発明の実施の形態1におけるエスカレーターの利用者支持装置の動作を示すフローチャートである。
【図20】この発明の実施の形態1におけるエスカレーターの利用者支持装置の動作を説明するための図である。
【図21】この発明の実施の形態1におけるエスカレーターの利用者支持装置の動作を説明するための図である。
【図22】この発明の実施の形態1におけるエスカレーターの利用者支持装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における利用者支持装置を備えたエスカレーターの全体構成を示す平面図である。
図1において、1はエスカレーターの下部乗降口、2はエスカレーターの上部乗降口である。本実施の形態では、上りのエスカレーターについて具体的な説明を行い、下りのエスカレーターについてはその説明を省略する。本実施の形態では、下部乗降口1がエスカレーターの乗り口、上部乗降口2がエスカレーターの降り口となる。
【0011】
3はエスカレーターの利用者が上下階床間を移動する際に乗る踏段、4は踏段3の両側に設けられた移動手摺である。移動手摺4は、踏段3に乗降する利用者や踏段3上の利用者が掴むためのものである。移動手摺4は、無端状を呈しており、その上部側が踏段3と同期するように駆動される。移動手摺4は、乗り口1及び降り口2において上下に反転され、下部側は、デッキボードやトラス(図示せず)内に配置される。
【0012】
5は本願発明の要部を構成する手摺掴み装置である。手摺掴み装置5は、エスカレーターの一側に、その長手(踏段3・移動手摺4の移動方向)に沿って設けられている。手摺掴み装置5は、エスカレーターを利用する利用者を支えて、利用者の移動を補助するためのものである。
【0013】
6は乗り口1及び降り口2に設置された誘導柵、7はエスカレーターの利用者であり、赤ちゃん8を抱いた母親、9は赤ちゃん8を乗せるためのベビーカーである。図1では、母親7が手摺掴み装置5を利用した時の乗り口1での状態、踏段3で移動中の状態、降り口2での状態をそれぞれ示している。
【0014】
以下に、図2乃至図17も参照し、上記手摺掴み装置5の具体的な構成及び機能について説明する。
図2はこの発明の実施の形態1におけるエスカレーターの利用者支持装置の要部を示す側面図、図3はその平面図である。図2は図1のA方向から見た乗り口1を示している。図3は乗り口1を上方から見た図に相当する。図4はこの発明の実施の形態1におけるエスカレーターの利用者支持装置の要部を示す側面図である。図4は図1のB方向から見た降り口2を示している。図5は図3のC−C矢視を示す図である。
【0015】
手摺掴み装置5には、案内レール10、支持装置11、動作を制御するための各種機器が備えられている。
案内レール10は、支持装置11の移動(走行)を案内するためのものである。案内レール10は、支持装置11の移動を円滑に案内するため、その断面が移動手摺4の断面と同形状に形成されている。
【0016】
案内レール10は、中間部が、一方の移動手摺4に近接した位置で、移動手摺4に対して平行に配置されている。案内レール10の中間部は、移動手摺4の上部側よりも長く、乗り口1及び降り口2において、移動手摺4よりも更に先まで延びている。
【0017】
案内レール10は、乗り口1においてU字状に折り返され、一端部が、乗り口1で移動手摺4に近接した位置に配置されている。案内レール10の一端部は、乗り口1で移動手摺4の上部側と同じ高さに、且つ、上方から見て一直線状に配置されている。
【0018】
また、案内レール10は、降り口2においてU字状に折り返され、他端部が、降り口2で移動手摺4に近接した位置に配置されている。案内レール10の他端部は、その先端部分が、移動手摺4の湾曲に合わせて、下方に凸状を呈するように湾曲されている。案内レール10の他端部は、移動手摺4の上部側と下部側とのほぼ中間高さに配置され、且つ、上方から見て移動手摺4の上部側と一直線状に配置されている。
【0019】
案内レール10は、乗り口1に配置された一端部(の一部)及び降り口2に配置された他端部(の一部)以外の部分は、装置の保護や利用者の安全を考慮して、ケース12によって覆われている。
【0020】
支持装置11は、移動手摺4に固定されて、エスカレーターの利用者を実際に支えるためのものである。支持装置11は、通常時は乗り口1の所定位置で案内レール10上で待機しており、要時に、案内レール10の一端部から移動手摺4に移って、移動手摺4の上部側に固定される。支持装置11は、移動手摺4に固定されることにより、利用者を支えながら、踏段3と同期して乗り口1から降り口2へと移動する。支持装置11は、降り口2に到着すると(或いは、降り口2に到着する直前に)、移動手摺4への固定を解除し、移動手摺4から案内レール10の他端部へと移る。その後、支持装置11は、案内レール10に案内され、降り口2(案内レール10の他端部)から乗り口1(案内レール10の一端部)に移動する。
【0021】
次に、案内レール10の具体的な構成及び機能について説明する。
図6は図2のD矢視を示す図、図7は案内レールの一機能を説明するための図である。図7は、図1のA方向から見た乗り口1を示しており、乗り口1に設置された各種機器も示している。図8は案内レールの要部を示す平面図である。図8は、乗り口1に配置された案内レール10のU字状に反転された部分(以下、「湾曲部分」という)を示している。この湾曲部分は、ケース12内に配置されている。図9は図8のE−E矢視を示す図である。
【0022】
案内レール10には、乗り口1に配置された一端部に、支持装置11を移動手摺4に渡す際に動作するスライド部13が設けられている。スライド部13は、例えば、所定の長さを有するアクリル板のような透明の板状部材から構成される。スライド部13は、案内レール10の一端部の長手に沿ってスライド自在に構成されている。スライド部13は、一端部(先端部)が移動手摺4側に接近するようにスライドして移動手摺4との隙間を狭めることにより、支持装置11を移動手摺4に円滑に受け渡す。
【0023】
14はスライド部13にその長手に渡って設けられた補強部である。補強部14は、例えば、板状部材からなり、スライド部13の下面から下方に突出するように設けられている。このため、スライド部13及び補強部14からなる断面T字状の部材が、案内レール10の長手に沿ってスライドする。スライド部13は、補強部14によって補強されているため、先端部を案内レール10の一端部端面から突出させても、支持装置11の重さに耐えることができる。
【0024】
15は支え16を介して案内レール10の一端部に設けられた一対の電動ローラである。電動ローラ15は、補強部14をその両側から挟み込み、その回転によってスライド部13を駆動する。即ち、スライド部13は、電動ローラ15が回転すると、その回転方向に応じた方向にスライド(水平移動)する。
【0025】
17及び18はスライド部13の下方から上方を撮影するカメラである。カメラ17及び18は、ケーブル19によって制御部20(乗り口制御部)に接続されており、支持装置11の有無情報をケーブル19を介して制御部20に送信する。スライド部13が透明であるため、カメラ17及び18は、上方を通過する支持装置11の姿をスライド部13の下方から撮影することができる。カメラ17及び18は、支持装置11の姿が撮影されると、支持装置11が存在する旨の情報を制御部20に送信する。
【0026】
一方のカメラ18は、スライド部13の一端部の下方に配置される。他方のカメラ17は、カメラ18から所定距離離れた位置、例えば、スライド部13の他端部寄りの下方に配置される。
【0027】
制御部20は、電動ローラ15を制御して、スライド部13を適切な位置に配置する。制御部20は、カメラ17及び18から受信した支持装置11の有無情報に基づいて、電動ローラ15(スライド部13)の駆動制御を行う。例えば、制御部20は、支持装置11が案内レール10の一端部から移動手摺4に移る時に、スライド部13を移動手摺4側にスライドさせて、スライド部13の先端部を案内レール10の一端部端面から突出させる。
【0028】
21はスライド部13の他端部の上面に設けられた情報付与部である。情報付与部21は、支持装置11がその設置位置に達した時にその支持装置11に対して所定の情報を付与するためのものである。情報付与部21は、例えば、二次元バーコードからなり、所定の位置情報等を有している。スライド部13(案内レール10の一端部)に設けられた情報付与部21は、例えば、乗り口1における支持装置11の待機位置として利用される。かかる場合、案内レール10に案内されて降り口2から乗り口1に移動してきた支持装置11は、情報付与部21の位置情報を読み取ることによってその位置(待機位置)に停止し、所定の待機状態へと移行する。
【0029】
また、案内レール10には、乗り口1の湾曲部分と降り口2の湾曲部分とを接続する直線部分(図中の帰路側)に、情報付与部22と電力供給部23とが設けられている。
情報付与部22は、情報付与部21と同様の機能を有している。支持装置11は、情報付与部22の設置位置を通過する際に、情報付与部22が有する情報(例えば、位置情報)を読み取り、走行等の各種制御に利用する。
【0030】
電力供給部23は、支持装置11に電力を供給するためのものである。電力供給部23は、踏段3の走行制御等を行うエスカレーターの制御盤(図示せず)から、支持装置11に供給するための電力を得ている。電力供給部23には、例えば、一部が案内レール10の上面にその長手に沿って露出する電極が備えられている。電力供給部23は、案内レール10の上面に露出させたこの電極を介して、電極上を通過する支持装置11に電力を供給する。
【0031】
また、案内レール10には、乗り口1の湾曲部分と降り口2の湾曲部分とに、複数のローラ24が回転自在に設けられている。ローラ24は、円錐の先端部分を底面と平行に切り取ったような形状を呈している。25はローラ24の回転軸、26及び27は回転軸25の端部に設けられた軸受けである。回転軸25は、ローラ24の外周面の上端が案内レール10の上面に合わせて水平になるように、案内レール10の長手方向(支持装置11の移動方向)と直交する方向に斜めに配置されている。ローラ24は、外周面の上端が、例えば、案内レール10の上面と面一に配置される。案内レール10の各湾曲部分には、上面の内側に配置される部分に切欠き10aが形成されており、ローラ24は、この切欠き10aから外周面が露出するように、複数個が並んで配置されている。
【0032】
次に、支持装置11の具体的な構成及び機能について説明する。
図10は図3のF部を拡大した図である。図10では案内レール10の記載を省略しており、支持装置11のみを示している。図11は図10のG−G矢視を示す図、図12は図10に示す支持装置の底面図、図13は図10のH−H矢視を示す図、図14は図13のJ部を拡大した図、図15は図3のK−K矢視を示す図、図16は図15のL部を拡大した図、図17は支持装置の一機能を説明するための図である。
【0033】
支持装置11には、その基本性能として、案内レール10に沿って移動(走行)する機能と、移動手摺4を強固に把持する機能と、エスカレーターの利用者を支える機能とが備えられている。
【0034】
各図において、28は前掴み部、29は中掴み部、30は後掴み部である。前掴み部28及び中掴み部29と、中掴み部29及び後掴み部30とは、それぞれ蛇腹状を呈する連結部31によって連結されている。前掴み部28、中掴み部29、後掴み部30(以下、これらをまとめて「掴み部28乃至30」ともいう)は、下方に開口を有するC字状を呈しており、案内レール10や移動手摺4に対して、その上方及び両側方を取り囲むように配置される。
【0035】
32は掴み部28乃至30の内側表面を形成する内枠部である。内枠部32は、案内レール10や移動手摺4に対向する。33は掴み部28乃至30の外側表面を形成する外枠部である。以下においては、内枠部32及び外枠部33によって上下が挟まれた部分を、掴み部28乃至30の内部空間という。
【0036】
34は掴み部28乃至30の一側及び他側にそれぞれ回転自在に設けられたタイヤ、35はタイヤ34の回転を止める(阻止する)ためのブレーキである。タイヤ34は、下端部が、掴み部28乃至30の各下面、即ち、内枠部32から下方に僅かに突出する。即ち、タイヤ34が案内レール10の上面を転がることにより、支持装置11は、案内レール10に案内されて移動(走行)する。
【0037】
なお、支持装置11が案内レール10の湾曲部分を通過する時、湾曲部分の内側に配置されたタイヤ34はローラ24上を通過する。一方、湾曲部分の外側に配置されたタイヤ34は、ローラ24上を通過せず、案内レール10の上面上を通過する。このため、支持装置11が案内レール10の湾曲部分を通過する時、湾曲部分の内側に配置されたタイヤ34のみがローラ24の外周面に接触して空回りし、支持装置11は、案内レール10の湾曲に沿って円滑に移動することができる。
【0038】
後掴み部30には、その内部空間に、情報読取部36、制御部37が備えられている。
情報読取部36は、情報付与部21及び22が有する情報を読み取るためのものである。情報読取部36は、情報付与部21及び22の上方(設置位置)を通過する際に、直下部に配置された情報付与部21及び22から位置情報等を読み取る。情報読取部36は、情報付与部21或いは22が有する情報を読み取ると、取得した情報(例えば、位置情報)を制御部37に送信する。
【0039】
制御部37は、支持装置11の各種動作を制御する機能を有している。制御部37は、支持装置11の走行を制御する走行制御部としての機能も備えている。例えば、制御部37は、情報読取部36から位置情報等を受信すると、その受信した情報に基づいてタイヤ34(の駆動部)を制御し、支持装置11を走行させたり停止させたりする。制御部37は、情報読取部36から受信した情報に基づき、支持装置11の速度調整や、ブレーキ35の動作制御も行う。例えば、制御部37は、スライド部13に設けられた情報付与部21から位置情報を読み取ると、タイヤ34を停止させ、支持装置11を所定の待機位置で待機させる。
【0040】
38は前掴み部28の側面と後掴み部30の側面とに設けられた接近センサである。接近センサ38は、他の支持装置11との衝突を回避するためのものであり、他の支持装置11が接近していることを検出する。前掴み部28の接近センサ38は、前方にある他の支持装置11との接近を検出する。後掴み部30の接近センサ38は、後方にある他の支持装置11との接近を検出する。接近センサ38は、他の支持装置11との接近を検出すると、その検出結果を制御部37に送信する。制御部37は、接近センサ38から受信した情報に基づいて、他の支持装置11との衝突を回避するための走行制御等を行う。
【0041】
また、乗り口1には、支持装置11(手摺掴み装置5)を利用したい利用者を検出するための検出手段が備えられている。この検出手段によって利用者が検出されると、乗り口1で待機している支持装置11はその状態(待機状態)を解除して、利用者を支持するための動作へと移行する。即ち、支持装置11は、上記検出手段によって利用者が検出されると、案内レール10の一端部から移動手摺4に移って移動手摺4の上部側に固定され、利用者を支持する。
本実施の形態では、支持装置11に設けられたタッチ釦39及び40が、上記検出手段を構成する。
【0042】
タッチ釦39は、掴み部28乃至30の上部にそれぞれ設けられている。各タッチ釦39は、ケーブル41により端子42を経由して制御部37に接続されている。支持装置11が所定の待機位置で待機している時にタッチ釦39が押されると、タッチ釦39が押された旨の情報が、ケーブル41を介して制御部37に入力される。制御部37は、タッチ釦39から受信した情報に基づいて待機状態を解除し、利用者を支持するための動作を開始する。
【0043】
タッチ釦40は、中掴み部29に設けられた利用者確認部43に、一列に並んで複数設けられている。利用者確認部43は、内部に空気が送り込まれることによって棒状に膨らむ部材からなる。制御部37は、支持装置11が待機位置に停止すると、中掴み部29に設けられたポンプ44を動作させて、パイプ45を介して利用者確認部43の内部に空気を送り込む。利用者確認部43は、支持装置11が待機位置に停止する前は内部の空気が抜かれ、図15及び図16に示すように丸まった(萎んだ)状態で中掴み部29に設けられている。そして、ポンプ44から空気が送り込まれると、根元部分から徐々に下方に伸び、最終的に上下方向に一直線状に配置される。
【0044】
46はタッチ釦40が設けられたひし形状を呈する釦台、47はタッチ釦40を接続して信号を伝送する導電線である。利用者確認部43が棒状に膨らんだ時、釦台46は隣接する傾斜部分が接触して一直線状に配置される。このため、利用者がタッチ釦40を押した時の力を釦台46で受け止めることができ、利用者が軽い力で押しても、タッチ釦40の内部接点はONになる(利用者確認部43のみが凹んでしまうことはない)。また、利用者確認部43が萎んだ時は、釦台46がずれて配置され、利用者確認部43を小さな渦巻状に形成することができる。
【0045】
導電線47は、例えば、端子42を経由して制御部37に接続されている。支持装置11が所定の待機位置で待機している時にタッチ釦40が押されると、タッチ釦40が押された旨の情報が、導電線47を介して制御部37に入力される。制御部37では、タッチ釦40から受信した情報に基づいて待機状態を解除し、利用者を支持するための動作を開始する。
【0046】
利用者の検出を行うタッチ釦39は、乗り口1で待機している支持装置11の上面に、タッチ釦40は支持装置11の乗り口1側を向く側面に配置されている。このため、エスカレーターの利用者は、乗り口1において、タッチ釦39或いは40を容易に操作することができる。特に、タッチ釦40は支持装置11の乗り口1側を向く側面に配置されているため、赤ちゃん8を抱いた母親7のように両手が塞がっている利用者であっても、腰等を使用して横から押すことができ、操作性に優れる。
【0047】
48は掴み部28乃至30にそれぞれ設けられた手摺掴み部である。手摺掴み部48は、C字状を呈する掴み部28乃至30の内側表面の両側、即ち、内枠部32の対向する側面部に設けられている。手摺掴み部48は、内部に空気が送り込まれることによって膨らむ部材からなる。制御部37は、支持装置11が案内レール10の一端部から移動手摺4に移った後、掴み部28乃至30にそれぞれ設けられたポンプ49を動作させ、パイプ50を介して手摺掴み部48の内部に空気を送り込む。手摺掴み部48は、ポンプ49から空気が送り込まれることによって膨らみ、移動手摺4を両側から挟み込む。これにより、掴み部28乃至30は、それぞれが移動手摺4に強固に固定される。
【0048】
以下の説明においては、必要に応じて、前掴み部28に設けられた手摺掴み部48のことを前手摺掴み部48a、中掴み部29に設けられた手摺掴み部48のことを中手摺掴み部48b、後掴み部30に設けられた手摺掴み部48のことを後手摺掴み部48cという。前手摺掴み部48aに空気が送り込まれて前手摺掴み部48aが膨らむことにより、前掴み部28が移動手摺4を把持する。同様に、中手摺掴み部48bに空気が送り込まれて中手摺掴み部48bが膨らむことにより、中掴み部29が移動手摺4を把持する。後手摺掴み部48cに空気が送り込まれて後手摺掴み部48cが膨らむことにより、後掴み部30が移動手摺4を把持する。
【0049】
また、前掴み部28と後掴み部30とには、利用者を支持するための支持具が設けられている。上記支持具は、前掴み部28に設けられた前支持具51と、後掴み部30に設けられた後支持具52とから構成される。前支持具51及び後支持具52は、内部に空気が送り込まれることによって弓状に膨らむ部材からなる。制御部37は、要時に、前掴み部28に設けられたポンプ53を動作させて、前支持具51の内部に空気を送り込む。前支持具51は、ポンプ53から空気が送り込まれることによって膨らみ、所定の位置に立つ利用者の前方を取り囲むように水平に配置される。また、制御部37は、同時に、後掴み部30に設けられたポンプ54を動作させて、後支持具52の内部に空気を送り込む。後支持具52は、ポンプ54から空気が送り込まれることによって膨らみ、上記所定位置に立つ上記利用者の後方を取り囲むように水平に配置される。
なお、図7は前支持具51及び後支持具52が膨らみ、前支持具51及び後支持具52が利用者の周囲を取り囲むように配置された状態を示している(利用者は図示せず)。
【0050】
55は前掴み部28に設けられた角接触スイッチ(前反力検出手段)である。角接触スイッチ55は、膨らんだ状態の前支持具51が利用者から所定の反力を受けたことを検出するためのものである。前支持具51には、その根元部分の前側に、他の部分よりも硬い角部56が備えられている。角接触スイッチ55は、利用者がいない状態で前支持具51が膨らんだ際に、角部56に所定の間隙を有して対向するように配置される。このため、利用者がいる状態で前支持具51が膨らみ、前支持具51が利用者から所定の反力を受けると、前支持具51が前方(踏段3・移動手摺4の移動方向)に変位して角部56が角接触スイッチ55に接触し、角接触スイッチ55がONになる。即ち、角接触スイッチ55により、前支持具51が利用者から所定の反力を受けたことが検出される。角接触スイッチ55は、前支持具51が利用者から所定の反力を受けたことを検出すると、その情報を制御部37に送信する。
【0051】
57は後掴み部30に設けられた角接触スイッチ(後反力検出手段)である。角接触スイッチ57は、膨らんだ状態の後支持具52が利用者から所定の反力を受けたことを検出するためのものである。後支持具52には、その根元部分の後側に、他の部分よりも硬い角部58が備えられている。角接触スイッチ57は、利用者がいない状態で後支持具52が膨らんだ際に、角部58に所定の間隙を有して対向するように配置される。このため、利用者がいる状態で後支持具52が膨らみ、後支持具52が利用者から所定の反力を受けると、後支持具52が後方(踏段3・移動手摺4の移動方向とは反対方向)に変位して角部58が角接触スイッチ57に接触し、角接触スイッチ57がONになる。即ち、角接触スイッチ57により、後支持具52が利用者から所定の反力を受けたことが検出される。角接触スイッチ57は、後支持具52が利用者から所定の反力を受けたことを検出すると、その情報を制御部37に送信する。
【0052】
59は中掴み部29に設けられた傾度検出器である。傾度検出器59は、支持装置11の傾きを検出する。傾度検出器59によって検出された支持装置11の傾きの情報は、制御部37に送信される。制御部37では、傾度検出器59から受信した情報に基づいて、支持装置11が所定の水平状態にあるのか、所定の傾斜状態にあるのかを検出する。
なお、支持装置11が所定の水平状態にあるのか、所定の傾斜状態にあるのかといった検出を傾度検出器59において行い、その検出結果を傾度検出器59から制御部37に送信しても良い。
【0053】
60は中掴み部29に設けられた電源部である。電源部60には、一対の電源取り込みローラ61が接続されている。電源取り込みローラ61は、中掴み部29に回転自在に設けられており、少なくともその下端部が、中掴み部29の下面、即ち、内枠部32から下方に突出する。電源取り込みローラ61は、案内レール10の電力供給部23(電極)に対応して配置されている。支持装置11が案内レール10に案内されて移動する際に、電源取り込みローラ61が電力供給部23に接触しながらその上を転がることにより、電源取り込みローラ61を介して電力供給部23から電源部60に電力が供給される。電源部60は、電力供給部23から供給された電力を蓄電し、支持装置11内の各機器(例えば、制御部37、タイヤ34の駆動部、接近センサ38、ポンプ44、49、53、54等)に送電する。
【0054】
次に、図18乃至図22も参照し、上記構成を有する利用者支持装置の動作について説明する。図18及び図19はこの発明の実施の形態1におけるエスカレーターの利用者支持装置の動作を示すフローチャートである。図20乃至図22はこの発明の実施の形態1におけるエスカレーターの利用者支持装置の動作を説明するための図である。図20及び図22は乗り口1の側面図を、図21は乗り口1の平面図を示している。
【0055】
手摺掴み装置5には、複数の支持装置11が備えられている。エスカレーターの利用者(手摺掴み装置5の利用者)がいない場合、支持装置11の1台が、乗り口1に設定された所定の待機位置で所定の待機状態で停止している(図2及び図3参照)。
【0056】
上記1台の支持装置11は、上述したように、スライド部13に設けられた情報付与部21の位置情報を情報読取部36によって読み込むことにより、上記待機位置に停止する。支持装置11は、待機位置に停止すると、中掴み部29に設けられたポンプ44を動作させて利用者確認部43を棒状に膨らませる。前支持具51及び後支持具52は、支持装置11が待機位置に停止している時は、内部の空気が抜かれて、図10に示すように丸まった(萎んだ)状態で前掴み部28及び後掴み部30に設けられている。支持装置11は、かかる状態(待機状態)で待機位置に停止し、タッチ釦39或いは40が利用者によって押されるのを待つ。
【0057】
なお、待機位置に停止した支持装置11は、ケース12の外に配置される。一方、待機位置に停止した支持装置11の後に続く他の支持装置11は、ケース12の中で、利用者から見えない位置に配置される。
【0058】
エスカレーターの利用者が、乗り口1で待機している支持装置11のタッチ釦39或いは40を押すと、タッチ釦39或いは40が押された支持装置11は、待機状態を解除して、利用者を支持するための動作を開始する(S101)。
【0059】
具体的に、支持装置11では、タッチ釦39或いは40が押されると、制御部37が、ポンプ53及び54を動作させ、前支持具51及び後支持具52への送風を開始する。これにより、前支持具51及び後支持具52が膨らみ、利用者を前後から挟み始める(S102)(図20及び図21参照)。
【0060】
図20及び図21に示す状態から前支持具51及び後支持具52の内部に更に空気が送り込まれると、例えば、前支持具51が利用者に接触して反力を受け、前支持具51が前方(外側)に変位する(S103)。そして、前支持具51の変位が所定値に達すると、角接触スイッチ55が角部56に押されてONになる(S104のYes)。制御部37は、角接触スイッチ55がONになると、ポンプ53の動作を止め、前支持具51への送風を停止させる(S105)。
【0061】
後支持具52についても同様である。後支持具52が利用者から反力を受けて角接触スイッチ57がONになると(S104のYes)、制御部37は、ポンプ54の動作を止め、後支持具52への送風を停止させる(S105)。
【0062】
角接触スイッチ55及び57の双方がONになり、前支持具51への送風及び後支持具52への送風が共に停止すると(S106のYes)、制御部37は、ブレーキ35の動作を解除し、支持装置11を待機位置から移動可能な状態にする。その後、利用者は、膨らんだ前支持具51及び後支持具52を腰に巻いた状態で踏段3の方向に歩き出す(S107)。
【0063】
利用者が踏段3の方向に歩き出すことにより、支持装置11は、案内レール10に案内されて利用者とともに踏段3の方向に移動する。カメラ17は、待機位置に停止している支持装置11を撮影するように設置されている。このため、支持装置11が待機位置から離れると、その姿はカメラ17によって撮影されなくなる。乗り口1に設置された制御部20は、支持装置11が撮影されなくなった旨の情報をカメラ17から受信すると、電動ローラ15を駆動して、スライド部13を移動手摺4側にスライドさせる(S108)。これにより、スライド部13は、先端部が案内レール10の一端部端面から突出し、移動手摺4の上部側に極めて近い位置に配置される。
【0064】
制御部20は、スライド部13を移動手摺4側にスライドさせると、利用者がエスカレーター(の踏段3)に乗ったか否かを判定する(S109)。例えば、支持装置11の姿がカメラ18によって撮影されてから(或いは、支持装置11の姿がカメラ18によって一旦撮影された後に消えてから)所定時間が経過したことが検出されると、制御部20は、利用者がエスカレーターに乗ったことを検出する(S109のYes)。制御部20は、利用者の乗車を検出すると、電動ローラ15を駆動して、スライド部13を元の位置(突出させる前の位置)に戻す(S110)。
【0065】
手摺掴み装置5では、スライド部13が移動手摺4側にスライドした後に元の位置に戻ると、次の支持装置11を上記待機位置で待機させる。即ち、スライド部13が元の位置に戻ると、ケース12の内部で先頭で停止していた支持装置11が走行を開始し、スライド部13に設けられた情報付与部21の位置情報を読み込んで、上記待機位置に停止する。そして、ポンプ44を動作させて利用者確認部43を棒状に膨らませ、タッチ釦39或いは40が利用者によって押されるまで乗り口1で待機する(S111)。
【0066】
一方、タッチ釦39或いは40を操作した利用者が踏段3に乗り込むと、その利用者を掴んでいる支持装置11が、案内レール10の一端部から移動手摺4の上部側に移動する。支持装置11は、移動手摺4に移ると、先ず、制御部37によって水平移動しているか否かを判定する(S112)。制御部37は、傾度検出器59によって検出された傾きから支持装置11が所定の水平状態にあることが検出されると、ブレーキ35を動作させる。また、制御部37は、ポンプ49を動作させて、手摺掴み部48への送風を開始する。これにより、手摺掴み部48が膨らんで移動手摺4を両側から挟み込み、掴み部28乃至30が移動手摺4に強固に固定される(S113)。
【0067】
エスカレーターの利用者は、乗っている踏段3がエスカレーターの傾斜部に差し掛かり、踏段3に段差が生じると、移動方向に対して前進或いは後退することによって足位置を修正することがある。このため、支持装置11(制御部37)は、傾度検出器59によって検出された傾きから支持装置11が所定の傾斜状態にあることが検出されると(S114のYes)、角接触スイッチ55及び57が双方ともONであるか否かを判定する(S115)。
【0068】
利用者が支持装置11に対して中央に立っていれば、前支持具51及び後支持具52は双方とも利用者から適度な反力を受け、角接触スイッチ55及び57は共にONになる(S115のYes)。かかる場合、制御部37は、傾度検出器59によって検出された傾きから支持装置11が再び水平状態になったか否かを判定する(S116)。
【0069】
利用者が乗っている踏段3が傾斜部に差し掛かった際に、利用者が後退して足位置を直すと、前支持具51が利用者から受ける反力が弱まって後方に変位し、前掴み部28に設けられた角接触スイッチ55がOFFになる(S115のNo)。制御部37は、支持装置11が所定の傾斜状態にある時に角接触スイッチ55がOFFになったことを検出すると、前掴み部28に備えられた前手摺掴み部48aの空気を少し抜いて、前掴み部28による移動手摺4の把持を解除する。これにより、前掴み部28のみが移動手摺4に対して移動可能な状態となる。
【0070】
そして、制御部37は、前掴み部28に設けられたタイヤ34のみを駆動し、角接触スイッチ55が再びONになるまで、前掴み部28を移動手摺4に対して後退させる(S117)。制御部37は、角接触スイッチ55が再びONとなり、前支持具51が利用者から所定の反力を受けたことが検出されると、その位置で前掴み部28を停止させ、前手摺掴み部48aを膨らませて前掴み部28を移動手摺4に強固に固定させる。
【0071】
なお、利用者が後退して足位置を修正すると、利用者は、後支持具52によって更に強い力で押されることになる。このため、制御部37は、支持装置11が所定の傾斜状態にある時に角接触スイッチ55がOFFになると、後支持具52の内部の空気を所定の僅かな量だけ抜いて、利用者に掛かる力を軽減させる。或いは、制御部37は、後掴み部30(後手摺掴み部48c)による移動手摺4の把持を解除し、角接触スイッチ57がONであることを条件に後掴み部30を僅かな所定距離だけ後退させ、後退したその位置で、後掴み部30に再び移動手摺4を把持させる。
【0072】
なお、利用者が乗っている踏段3が傾斜部に差し掛かった際に、利用者が前進する場合も、上記と同様の動作が行われる。
即ち、利用者が前進して足位置を直すと、後支持具52が利用者から受ける反力が弱まって前方に変位し、後掴み部30に設けられた角接触スイッチ57がOFFになる(S115のNo)。制御部37は、支持装置11が所定の傾斜状態にある時に角接触スイッチ57がOFFになったことを検出すると、後掴み部30に備えられた後手摺掴み部48cの空気を少し抜いて、後掴み部30による移動手摺4の把持を解除する。これにより、後掴み部30のみが移動手摺4に対して移動可能な状態となる。
【0073】
そして、制御部37は、後掴み部30に設けられたタイヤ34のみを駆動し、角接触スイッチ57が再びONとなるまで、後掴み部30を移動手摺4に対して前進させる(S117)。制御部37は、角接触スイッチ57が再びONとなり、後支持具52が利用者から所定の反力を受けたことが検出されると、その位置で後掴み部30を停止させ、後手摺掴み部48cを膨らませて後掴み部30を移動手摺4に強固に固定させる。
【0074】
なお、利用者が前進して足位置を修正すると、利用者は、前支持具51によって更に強い力で押されることになる。このため、制御部37は、支持装置11が所定の傾斜状態にある時に角接触スイッチ57がOFFになると、前支持具51の内部の空気を所定の僅かな量だけ抜いて、利用者に掛かる力を軽減させる。或いは、制御部37は、前掴み部28(前手摺掴み部48a)による移動手摺4の把持を解除し、角接触スイッチ55がONであることを条件に前掴み部28を僅かな所定距離だけ前進させ、前進したその位置で、前掴み部28に再び移動手摺4を把持させる。
【0075】
上記調整によって前掴み部28及び/又は後掴み部30を移動させると、制御部37は、次に、中掴み部29に設けられた中手摺掴み部48bの空気を少し抜いて、中掴み部29による移動手摺4の把持を解除する。中掴み部29は蛇腹状の連結部31によって前掴み部28及び後掴み部30に連結されている。このため、中手摺掴み部48bの空気を抜くことにより、中掴み部29は、連結部31の一方に押されて、前掴み部28及び後掴み部30の中間位置に移動する。制御部37は、中掴み部29の移動が収まると、中手摺掴み部48bを膨らませて中掴み部29を移動手摺4に再び把持させる。
【0076】
その後、利用者が乗っている踏段3がエスカレーターの傾斜部を通過し終わると、制御部37は、傾度検出器59によって検出された傾きから支持装置11が再び水平状態になったことを検出する(S116のYes)。制御部37は、支持装置11が傾斜状態から水平状態に移行したことを検出すると、手摺掴み部48の空気を抜いて、掴み部28乃至30による移動手摺4の把持(支持装置11の移動手摺4への固定)を解除する。また、制御部37は、前支持具51及び後支持具52、利用者確認部43の内部の空気を抜き(S118)、それらを掴み部28乃至30に萎んで丸まった状態で保持させる。これにより、支持装置11は利用者から離れ、利用者は、踏段3から降り口2に移って、目的の場所に移動する。
【0077】
利用者から離れた支持装置11は、制御部37によってタイヤ34が駆動され、所定の時間、ゆっくりと前進する。これにより、支持装置11は、移動手摺4から案内レール10の他端部へと滑り込む。その後、支持装置11は、情報付与部22の情報を読み取り、電力供給部23から電力を受けながら案内レール10に案内されて走行し、乗り口1側まで移動する(S119)。そして、支持装置11は、乗り口1付近において接近センサ38が他の支持装置11の接近を検出すると、ケース12内で停止する。
【0078】
上記構成を有する利用者支持装置であれば、エスカレーターの利用者を確実に支えて利用者の移動を補助することができる。
また、本利用者支持装置であれば、従来の装置とは異なり、利用者が利用したい時に手軽に使用することができる。利用者は、従来のように、専用の装置を持ち歩く必要もない。また、利用者は、タッチ釦39或いは40を押すだけで手摺掴み装置5を利用することができ、赤ちゃん8を抱えた母親7のように両手が塞がっている場合であっても、気軽に利用することができる。
【0079】
また、本利用者支持装置であれば、利用開始時や終了時を自動で把握して動作するため、利用者に負担を掛けることもない。更に、利用者が受ける負荷も自動で調整されるため、利用者は安全且つ快適にエスカレーターを利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 下部乗降口(乗り口)
2 上部乗降口(降り口)
3 踏段
4 移動手摺
5 手摺掴み装置
6 誘導柵
7 利用者(母親)
8 赤ちゃん
9 ベビーカー
10 案内レール
10a 切欠き
11 支持装置
12 ケース
13 スライド部
14 補強部
15 電動ローラ
16 支え
17、18 カメラ
19、41 ケーブル
20、37 制御部
21、22 情報付与部
23 電力供給部
24 ローラ
25 回転軸
26、27 軸受け
28 前掴み部
29 中掴み部
30 後掴み部
31 連結部
32 内枠部
33 外枠部
34 タイヤ
35 ブレーキ
36 情報読取部
38 接近センサ
39、40 タッチ釦
42 端子
43 利用者確認部
44、49、53、54 ポンプ
45、50 パイプ
46 釦台
47 導電線
48 手摺掴み部
51 前支持具
52 後支持具
55、57 角接触スイッチ
56、58 角部
59 傾度検出器
60 電源部
61 電源取り込みローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部がエスカレーターの乗り口で移動手摺に近接して配置され、他端部がエスカレーターの降り口で前記移動手摺に近接して配置された案内レールと、
前記移動手摺に固定されてエスカレーターの利用者を支える支持装置と、
を備え、
前記支持装置は、前記案内レールの一端部から前記移動手摺に移って前記移動手摺に固定されるとともに、前記移動手摺から前記案内レールの他端部に移り、前記案内レールに案内されて前記降り口から前記乗り口に移動することを特徴とするエスカレーターの利用者支持装置。
【請求項2】
前記乗り口に配置され、前記支持装置を利用したいエスカレーターの利用者を検出する検出手段と、
を更に備え、
前記支持装置は、通常時は前記乗り口で待機し、前記検出手段によって利用者が検出されると、前記案内レールの一端部から前記移動手摺に移って前記移動手摺に固定されることを特徴とする請求項1に記載のエスカレーターの利用者支持装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記支持装置に設けられ、前記乗り口で待機している前記支持装置の上面又は前記乗り口側を向く側面に配置されたことを特徴とする請求項2に記載のエスカレーターの利用者支持装置。
【請求項4】
前記支持装置は、内部に空気が送り込まれることによって膨らむ支持具を備え、
前記支持具は、前記支持装置が前記乗り口で待機している時は内部の空気が抜かれて萎み、前記検出手段によって利用者が検出されると内部に空気が送り込まれて膨らみ、利用者を支持する
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のエスカレーターの利用者支持装置。
【請求項5】
前記支持具は、
膨らんだ際に所定の位置に立つ利用者の前方に配置される前支持具と、
膨らんだ際に前記所定の位置に立つ利用者の後方に配置される後支持具と、
を備え、
前記支持装置は、
前記前支持具が設けられ、要時に前記移動手摺を把持する前掴み部と、
前記後支持具が設けられ、要時に前記移動手摺を把持する後掴み部と、
前記前掴み部及び前記後掴み部を連結する連結部と、
を備えたことを特徴とする請求項4に記載のエスカレーターの利用者支持装置。
【請求項6】
前記前掴み部に設けられ、前記前支持具が利用者から所定の反力を受けたことを検出する前反力検出手段と、
前記後掴み部に設けられ、前記後支持具が利用者から所定の反力を受けたことを検出する後反力検出手段と、
を備え、
前記前掴み部及び前記後掴み部は、前記前反力検出手段及び前記後反力検出手段の双方が利用者から所定の反力を受けたことを検出すると、所定のブレーキを解除し、前記支持装置を所定の待機位置から移動可能な状態にすることを特徴とする請求項5に記載のエスカレーターの利用者支持装置。
【請求項7】
前記支持装置に設けられ、前記支持装置の傾きを検出する傾度検出器と、
を備え、
前記前掴み部及び前記後掴み部は、前記移動手摺を把持した後、前記傾度検出器によって前記支持装置が所定の傾斜状態から水平状態に移行したことが検出されると、前記移動手摺の把持を解除することを特徴とする請求項6に記載のエスカレーターの利用者支持装置。
【請求項8】
前記支持装置に設けられ、前記支持装置の傾きを検出する傾度検出器と、
を備え、
前記前掴み部は、前記傾度検出器によって前記支持装置が所定の傾斜状態にあることが検出されている時に、前記前反力検出手段による反力の検出が行われなくなると、前記移動手摺の把持を解除して後退させ、前記前反力検出手段による反力の検出が行われる位置で、前記移動手摺を再び把持することを特徴とする請求項6に記載のエスカレーターの利用者検出装置。
【請求項9】
前記後掴み部は、前記傾度検出器によって前記支持装置が所定の傾斜状態にあることが検出されている時に、前記前反力検出手段による反力の検出が行われなくなると、前記後支持具の内部の空気を所定量抜く、又は、
前記移動手摺の把持を解除して所定距離後退させ、前記移動手摺を再び把持することを特徴とする請求項8に記載のエスカレーターの利用者検出装置。
【請求項10】
前記案内レールの一端部に設けられ、前記案内レールの一端部の長手に沿ってスライドするスライド部と、
前記支持装置が前記案内レールの一端部から前記移動手摺に移る際に、前記スライド部を前記移動手摺側にスライドさせて、前記スライド部の先端部を前記案内レールの一端部から突出させる乗り口制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項9の何れかに記載のエスカレーターの利用者支持装置。
【請求項11】
前記スライド部の下方から上方を撮影するカメラと、
を更に備え、
前記スライド部は、透明の部材からなり、
前記乗り口制御部は、前記カメラから受信した前記支持装置の有無情報に基づいて、前記スライド部の駆動制御を行う
ことを特徴とする請求項10に記載のエスカレーターの利用者支持装置。
【請求項12】
前記案内レールに設けられ、一部が前記案内レールの表面に露出する電力供給部と、
前記支持装置に回転自在に設けられた電源取り込みローラと、
前記支持装置に設けられ、前記電源取り込みローラが前記電力供給部に接触しながら転がることにより、前記電源取り込みローラを介して前記電力供給部から電力が供給される電源部と、
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項11の何れかに記載のエスカレーターの利用者支持装置。
【請求項13】
前記案内レールに設けられた、所定の情報を有する情報付与部と、
前記支持装置に設けられ、前記支持装置が前記情報付与部の設置位置を通過する際に、前記情報付与部が有する情報を読み取る情報読取部と、
前記支持装置に設けられ、前記情報読取部が前記情報付与部から読み取った情報に基づいて、前記支持装置の走行を制御する走行制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項12の何れかに記載のエスカレーターの利用者支持装置。
【請求項14】
前記支持装置の一側及び他側にそれぞれ回転自在に設けられ、前記支持装置が前記案内レールに案内されて移動する際に、前記案内レールの上面を転がるタイヤと、
前記案内レールの湾曲部分に回転自在に設けられ、前記支持装置の移動方向と直交する方向に回転軸が配置され、且つ、外周面の上端が前記案内レールの上面に合わせて水平に配置されたローラと、
を備え、
前記ローラは、前記支持装置が前記案内レールの前記湾曲部分を通過する際に、前記湾曲部分の内側に配置される前記タイヤのみが外周面に接触するように配置されたことを特徴とする請求項1から請求項13の何れかに記載のエスカレーターの利用者支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−229106(P2012−229106A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99522(P2011−99522)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】