説明

エスカレーターの手摺ベルト

【課題】 手摺ベルトの表面に、この手摺ベルトの移動方向を見易く表示し、もって転倒事故等を防止する構成としたエスカレーターの手摺ベルトを提供する。
【解決手段】 手摺ベルト5aあるいは5bのいずれか一方の表面に、この手摺ベルト5aあるいは5bと異なる色調で、かつ前記手摺ベルト5aあるいは5bの表面の平坦部5Aにそれの移動方向を表示する方向表示マーク6Aを、一定間隔Pをおいて複数個有する印刷シート6を設けると共に、この方向表示マーク6A以外の表面部の色調を手摺ベルト5aあるいは5bの表面色と同色調とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動する踏段が傾斜路あるいは水平路を形成して乗客輸送を行うエスカレーターの手摺ベルトの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来においてエスカレーターの手摺ベルト表面に印刷シートを貼付けて広告や方向表示を行う構成は、たとえば特許文献1に開示されているように、既に提案されている。
【0003】
この特許文献1に記載のエスカレーターの手摺ベルトは、片側の第1の手摺ベルトと他側の第2の手摺ベルトの両方の表面長手方向に方向表示マーク等を表示した印刷シートを貼付けた構成である。
【0004】
【特許文献1】特開2006−347764号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の手摺ベルトの構成は、それの出願日から今日に至るまで、
1) 乗客による、印刷シートの縁部(手摺ベルトの両縁部)に対しての「はがし行為(いたずら)」により、はがれやめくれが発生する。
2) これによりエスカレーターの安全装置を動作させ、運転を停止させる事象が発生している。
3) 左右両側の手摺ベルト2本に広告や方向表示を行っているが、最近では片側立ち、片側歩行という利用状態が定着(関東の例では左側立ち・右側歩行、関西はその逆)しており、歩行側である右側を歩行している乗客は広告や方向表示には目を止めず視覚効果を発揮し得ない。
という問題があった。
【0006】
本発明の目的は、踏段の両側に配置された左右一対の手摺ベルトである第1の手摺ベルトと第2の手摺ベルトのいずれか一方にのみ方向表示マークを有する印刷シートを貼付けることにより、従来問題とされてきた印刷シートのはがれ(めくれ)とそれにともなう停止事故発生可能性の半減、視覚訴求に有効な側のみの本来的効果発揮を行うと共に費用の削減を図らんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、往路から復路にかけて反転して移動し、表面平坦部と両縁部で形成される断面略C字形の第1の手摺ベルトと第2の手摺ベルトを備えたエスカレーターにおいて、前記第1の手摺ベルトあるいは第2の手摺ベルトのいずれか一方の表面に、これら手摺ベルトと色調を異にすると共に、その表面平坦部に設けられて、その移動方向を表示する方向表示マークを、一定の間隔をおいて、その全長方向に複数個表示した印刷シートを設ける一方、方向表示マークを除く表面部の色調を第1および第2の手摺ベルトの表面色と同色調としたのである。
【0008】
このように、一対の手摺ベルトの一方の表面に設けられ、その表面平坦部に移動方向を表示する方向表示マークが存在することにより、エスカレーターに乗り込まんとする利用者(乗客)がエスカレーターの移動速度と方向が視覚的に認知できて、結果として踏段への乗り込みタイミング取りが容易となり、かつ逆乗り込み防止に役立つ構成となる。また、方向表示マークのある印刷シートが一方にのみ設けられているのではがれ(めくれ)事故、停止事故の可能性半減に加えて、乗客が視認できる側のみの配置とあるので視覚的有効性が向上する利点がある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来方式に対して不具合の半減と真に有効な視覚効果を有するより安価(従来方式に比べて費用半減)なエスカレーター用手摺ベルトの構成を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明によるエスカレーターの手摺ベルトの一実施の形態を図1〜図5に示すエスカレーターに基づいて説明する。
【0011】
一般のエスカレーター1は、上階床2Aと下階床2Bに装架される主フレーム3と、無端状に連結されて往路から復路にかけて反転して移動する多数の踏段4と、この踏段4の両側に左右一対で設けられ踏段4と同期して往路から復路にかけて反転移動する第1の手摺ベルト5aと第2の手摺ベルト5bがあり、これら手摺ベルト5a,5bは、その断面形状が平坦部5Aとこれに連なる両側の両縁部5Bとで略C字形をなす幅W1を有している。そして、第1の手摺ベルト5aあるいは5bのいずれか一方、図示の例では下階床2Bから見て左側の第1の手摺ベルト5aの長手方向に沿い、その表面平坦部5A(幅W2)から両縁部5Bにかけて接着固定(図示省略)される長尺の印刷シート6が設けられている。
【0012】
前記第1および第2の手摺ベルト5a,5bは、駆動歯車7の動力をチェーン8を介して駆動ローラ9等に伝達された動力によって摩擦駆動されるもので復路を案内ローラ10、往路を欄干11に案内され反転部11A,11Bで折り返して移動する構成となっている。
【0013】
また、印刷シート6表面の色調は第1および第2の手摺ベルト5a,5bと同色調に彩色されて第1の手摺ベルト5aの全長に貼付けられると共に、その表面層には移動方向を表示する方向表示マーク6Aが、目立ち易いように印刷シート6表面の色調とは異色で、表面平坦部5Aの幅W2の範囲内に印刷によって設けられている。一方、両縁部5B部分には、印刷シート6表面の色調とは異色の方向表示マーク6Bが印刷によって設けられている。そして、これら別々に設けられた方向表示マーク6A,6Bは、望ましくは第1の手摺ベルト5aの反転部の半円周範囲H(図1,図2)内に少なくても1個存在する一定間隔PaおよびPb(図4)をおいて複数個配置されており、いま乗り込まんとする利用者(乗客)がエスカレーター1を見ると正面と側面となる符号Hの範囲内に1個存在する方向表示マーク6A,6Bにより移動速度の速度感と動き方向を確実に視覚に訴えるという作用を発揮するものである。さらに、特に両縁部5Bの方向表示マーク6Bの存在により、エスカレーター周辺の側方からでも移動速度と移動方向が視覚的に認知できて乗客の乗り込み易さを向上させるものである。加えて、方向表示マーク6Aおよび6Bは、印刷シート6表面の色調とは色が異なり(例えば黄色)、そのマークも図示に例示した菱形に限らず大き目の矢印、三角印、小判印、キャラクターマークなどでも不都合はなく、かつ方向表示マーク6Aの間隔Pa内に広告表示を追加することも可能である。
【0014】
さらに第2の手摺ベルト5bは、図5に示すようにその表面に印刷シートが存在せず、表面平坦部5Aと両縁部5Bを有して手摺ベルト5aと同一形状で、かつ表面部の色調は第1の手摺ベルト5aと同色調となっている。
なお、前述において下階床2Bから見て上昇運転用左側の手摺ベルト5aにのみ印刷シート6を貼付けて設けたのは「左側立ち利用」が定着している関東地方を念頭においたものであり、例えば関西地方では手摺ベルト5bに印刷シート6を貼付けて設ければよい。そして、外観的に印刷シート6の表面部色調と手摺ベルト5bのそれは同一色調であってデザイン的な違和感は発生しない。
【0015】
ここで、印刷シート6の詳細は、手摺ベルト5aあるいは5bへの接着層、印刷が施されるシート層に加え、表面のラミネート層などで形成させる。
【0016】
以上説明したように、本実施形態によれば、従来方式に比べて停止事故発生可能性の半減と視覚効果的にもマイナス要因のない、安価な構成の手摺ベルトを提供することができる。
【0017】
なお、上記実施の形態は、一般のエスカレーターを一例に説明したが、隣接踏段同士に段差を有しない動く歩道と通称されるエスカレーターにもそのまま適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によるエスカレーターの手摺ベルトの一実施の形態を示す全体側面図。
【図2】本発明の図1のX−X線に沿う正面図。
【図3】本発明の図2のY−Y線に沿う断面図。
【図4】本発明の印刷シートの概念的な単体斜視図。
【図5】本発明の図2のZ−Z線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0019】
1…エスカレーター,4…踏段,5a,5b…手摺ベルト
5A…平坦部,5B…両縁部,6…印刷シート
6A…方向表示マーク,6B…方向表示マーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往路から復路にかけて反転して移動し、表面平坦部と両縁部で形成される断面略C字形の第1手摺ベルトと第2の手摺ベルトを備えたエスカレーターにおいて、前記第1の手摺ベルトあるいは第2の手摺ベルトのいずれか一方の表面に、これら手摺ベルトと色調を異にすると共に、その表面平坦部に設けられて、その移動方向を表示する方向表示マークを、一定の間隔をおいて、その全長方向に複数個表示した印刷シートを設ける一方、前記方向表示マークを除く表面部の色調を第1および第2の手摺ベルトの表面色と同色調としたことを特徴とするエスカレーターの手摺ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−102159(P2009−102159A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297217(P2007−297217)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(504161478)エーディ株式会社 (27)
【Fターム(参考)】