説明

エスシタロプラムの製造に使用できる中間体の分離方法

本発明は、4-[(S)-4-ジメチルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシ-ブチル]-3-ヒドロキシメチルベンゾニトリルおよびそのアシル化誘導体の、カルボン酸基を含む4-[(S)-4-ジメチルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシ-ブチル]-3-ヒドロキシメチルベンゾニトリルの誘導体を形成する化合物との反応により、4-[(S)-4-ジメチルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンゾニトリルのアシル化誘導体を分離および単離する方法に関する。カルボン酸基を含むアシル化誘導体が形成されるとそれが沈殿し、容易に反応混合物から分離することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスシタロプラムの製造に有用な光学活性中間体の新規な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シタロプラムは、ここ数年の間に上市された公知の抗うつ薬である。
【0003】
これは、選択的な、中枢作用性のセロトニン(5-ヒドロキシトリプトアミン;5-HT)再取り込み阻害剤であり、従って抗うつ薬活性を有する。
【0004】
シタロプラムは、特許文献1 (特許文献2に対応)により最初に開示された。この特許文献には、適当な溶剤中でのシアン化第一銅との反応および5-ブロモ-フタランのアルキル化により、対応する5-ブロモ-誘導体からシタロプラムを製造する方法が示されている。
【0005】
特許文献3に対応する特許文献4には、エスシタロプラム(シタロプラムのS-エナンチオマー)の2つの製造方法が記載されている。両方の方法とも、出発物質として式
【0006】
【化1】

【0007】
を有するラセミ体ジオール(racemic diol)を使用する。第1の方法においては、式(I)のジオールを鏡像異性的に純粋な酸誘導体、例えば(+)または(-)-α-メトキシ-α-トリフルオロメチル-フェニルアセチルクロリドと反応させることによりジアスレオマーエステルの混合物を形成させ、HPLCまたは分別晶出(fractional crystallization)により分離し、それから正しい立体化学を有するエステルをエナンチオ選択的にエスシタロプラムに変換する。第2の方法においては、式(II)のジオールを、(+)-ジ-p-トルオイル酒石酸のような鏡像異性的に純粋な酸を用いる立体選択的な結晶化によりエナンチオマーに分割し、それから式(I)のジオールのS-エナンチオマーをエナンチオ選択的にエスシタロプラムに変換する。
【特許文献1】独国特許出願第2,657,013号明細書
【特許文献2】米国特許出願第4,136,193号明細書
【特許文献3】欧州特許第347 066号明細書
【特許文献4】米国特許第4,943,590号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
エスシタロプラムは現在、抗うつ薬として開発されている。従って、エスシタロプラムの製造に関して改善された方法が切望されている。
【0009】
式(I)のS-ジオールまたはそのアシル化誘導体を高い光学純度で得るために、上述の式(I)のジオールのS-エナンチオマーならびにそのアシル化誘導体を、ラセミ体ジオールの第一ヒドロキシル基の選択的な酵素的アシル化により製造できること、そしてさらに、式(I)のジオールを、カルボン酸を含む式(I)のジオール誘導体を形成する化合物と反応させることにより、得られたエナンチオマーを効率的に分離することができることが見出された。形成するとすぐに、前記誘導体は沈殿を形成し、反応混合物から容易に分離することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明の目的の1つは、式
【0011】
【化2】

【0012】
を有する化合物またはその塩であって、
式中、Rはシアノまたはシアノ基に変換することができる基であり、点線は二重結合または単結合を表し、Halはハロゲンであり、Zはジメチルアミノメチル基であるか、またはZはジメチルアミノメチル基に変換することができる基であり、WはOまたはSであり、そしてYは結合、O、SまたはNHであり、R1は、いずれも場合によりC1-10-アルコキシ、C1-10-アルキルチオ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、C1-10-アルキルアミノ、ジ-(C1-10-アルキル)アミノ、アリール、アリールオキシ、アリールチオおよびヘテロアリールから選択される1つまたはそれ以上の置換基で置換されていてもよいC1-10-アルキル、C2-10-アルケニルまたはC2-10-アルキニルであるか、またはR1は、アリールおよびヘテロアリール基のいずれかが場合によりC1-10-アルキル、C2-10-アルケニル、C2-10-アルキニル、C1-10-アルコキシ、C1-10-アルキルチオ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、C1-10-アルキルアミノおよびジ-(C1-10-アルキル)アミノから選択される置換基により1回またはそれ以上置換されていてもよいアリールである、前記化合物またはその塩、
および/または、式
【0013】
【化3】

【0014】
で表されるジオールまたはその塩であって、R、Z、Halおよび点線が上述のように定義される前記ジオールまたはその塩を、式(IV)の化合物および式(II)のジオールを含む混合物から単離および精製する方法であって、以下:
a)前記の式(IV)の化合物および式(II)のジオールを含む混合物を、環状無水物、または式
【0015】
【化4】

【0016】
で表されるイミドであって、
式中、Xが-(CHR’’’)n-であり、nが0〜2であり;
そしてR, R’’およびR’’’が、各アリールがC1-6-アルキルで置換されていてもよい、水素、C1-6-アルキル、C1-6-アルコキシ、アリールオキシ、C1-6-アシルオキシ、アリール-CO-Oから独立して選択されるか、または式(Ia)の無水物におけるR’およびR’’が一緒に、R4およびR5が独立して水素またはC1-6-アルキルである-O-CR4R5-O-を形成するか、または式(Ib)の無水物におけるR’およびR’’が隣接し、そしてそれらが結合する2つの炭素原子とともにベンゼン環を形成し;
Q1およびQ2のうちの一方が窒素であり、他方が炭素であるか、または両方が炭素であり;
Aが、C1-6-アルキレン、フェニレンまたはナフチレン基が場合により1回またはそれ以上C1-6-アルキルで置換されていてもよい、C1-6-アルキレン、フェニレンまたはナフチレンである、
前記イミドと反応させて、式(IV)の化合物、および式
【0017】
【化5】

【0018】
を有するエステルであって、
式中、R、ZおよびHalが上述のように定義され、そしてVが-CHR’-X-CR’’-COOH、-X-CHR’’ -CO-NH-A-COOH、- CHR’’-X-CO-NH-A-COOH、またはR’、R’’、XおよびAが上述のように定義される以下の式
【0019】
【化6】

【0020】
で表される化合物である前記エステルの混合物を形成させる工程;
b)以下の方法:
i)式(V)の酸またはその塩を反応混合物から沈殿させ、そして式(V)の化合物またはその塩の沈殿物を該反応混合物から分離して、場合により、それに続いて式(IV)の化合物またはその塩を該反応混合物から単離する方法;
ii)有機溶剤と水性溶剤との間に分配することにより、式(IV)の化合物を有機相に溶解させ、一方、式(V)の化合物を水相に溶解させ、この相を分離し、そして場合により、式(IV)の化合物またはその塩の単離および/または式(V)の化合物またはその塩の単離を行う方法;
iii)式(V)の化合物を塩基性樹脂に吸着させ、式(IV)の化合物を含む溶剤を該樹脂から分離し、式(V)の化合物を塩基性樹脂から脱着させ、そして場合により、式(IV)の化合物またはその塩の単離および/または式(V)の化合物またはその塩の単離を行う方法、
からなる群から選択される方法により、式(V)のエステルから式(IV)の化合物を分離する工程、
を含む前記方法に関する。
【0021】
本発明の第2の目的は、上述の方法を含むエスシタロプラムの製造方法に関する。
【0022】
本発明の1つの特定の実施態様においては、式(II)の一方のエナンチオマーが、他方のエナンチオマーの形態にある式(IV)の化合物から分離される。
【0023】
本発明の1つの実施態様においては、式(V)の化合物のS-エナンチオマー、または式(V)の化合物のS-エナンチオマーを50%以上含む式(V)の化合物のエナンチオマー混合物を、式(IV)のアシル誘導体のR-エナンチオマーから、または式(IV)のアシル誘導体のR-エナンチオマーを50%以上含む式(IV)のアシル誘導体のエナンチオマー混合物から分離する。
【0024】
本発明の特定の実施態様においては、式(V)の化合物のS-エナンチオマーを、式(IV)のアシル誘導体のR-エナンチオマーから、または式(IV)のアシル誘導体のR-エナンチオマーを50%以上含む式(IV)のアシル誘導体のエナンチオマー混合物から分離する。
【0025】
本発明のさらなる特定の実施態様においては、式(V)の化合物のS-エナンチオマーを、式(IV)のアシル誘導体のR-エナンチオマーから分離する。
【0026】
本発明のもう1つの実施態様においては、式(IV)のアシル誘導体のS-エナンチオマー、または式(IV)のアシル誘導体のS-エナンチオマーを50%以上含む式(IV)のアシル誘導体のエナンチオマーの混合物を、式(V)の化合物のR-エナンチオマーから、または式(V)の化合物のR-エナンチオマーを50%以上含む式(V)の化合物のエナンチオマー混合物から分離する。
【0027】
本発明の特定の実施態様においては、式(IV)のアシル誘導体のS-エナンチオマーを、式(V)の化合物のR-エナンチオマーから、または式(V)の化合物のR-エナンチオマーを50%以上含む式(V)の化合物のエナンチオマー混合物から分離する。
【0028】
さらなる特定の実施態様においては、式(IV)のアシル誘導体のS-エナンチオマーを、式(V)の化合物のR-エナンチオマーから分離する。
【0029】
本発明の1つの特定の実施態様において、使用される試薬は、式(Ia)の化合物、適切には無水コハク酸またはグルタル酸無水物である。
【0030】
もう1つの特定の実施態様において、使用される試薬は、式(Ib)の化合物、適当には無水フタル酸である。
【0031】
本発明の第3の実施態様において、前記試薬は、式(Ic)のイミド、適切にはフェニル環においてカルボキシル基で置換されているN-フェニル-スクシンイミドである。
【0032】
本発明のさらなる実施態様においては、いずれかの順で、S-エナンチオマーの形態で得られる式(V)の化合物におけるR基は、場合によりシアノに変換され、得られる式(V)の化合物におけるZ基は場合によりジメチルアミノメチル基に変換され、Halは場合によりフルオロに変換され、そして/または二重結合を表す点線は場合により単結合に変換され;それに続いて、式(V)の化合物が、塩基での処理により、エスシタロプラム、または式
【0033】
【化7】

【0034】
を有し、式中、R、ZおよびHalが上述のように定義されるその誘導体に変換され、場合によりそれに続いて、いずれかの順で、R基がシアノ基に変換され、Z基がジメチルアミノメチル基に変換され、Halがフルオロに変換され、そして二重結合を表す点線が単結合に変換され;場合により、それに続いてエスシタロプラムまたは式(VI)の誘導体がその塩に変換される。
【0035】
本発明のもう1つの実施態様においては、いずれかの順で、S-エナンチオマーの形態で得られる式(IV)の化合物におけるR基が、場合によりシアノに変換され、得られる式IVの化合物におけるZ基が、場合によりジメチルアミノメチル基に変換され、Halが場合によりフルオロに変換され、そして/または二重結合を表す点線が場合により単結合に変換され;それに続いて、式(IV)の化合物が、塩基での処理により、エスシタロプラムまたは式中、R、ZおよびHalが上述のように定義されるその誘導体
【0036】
【化8】

【0037】
に変換され、場合によりそれに続いて、いずれかの順でR基がシアノ基に変換され、Z基がジメチルアミノメチル基に変換され、Halがフルオロに変換され、そして二重結合を表す点線が単結合に変換され;場合によりそれに続いて、エスシタロプラムまたは式(VI)の誘導体がその塩に変換される。
【0038】
本発明の最も好ましい実施態様においては、Rがシアノであり、点線が単結合であり、Zがジメチルアミノメチルであり、Halがフルオロであり、Yが結合であり、そしてR1が-CH2-CH2-CH3である、式(II)および(IV)の化合物の混合物を、Xが-(CH2)0-1である式(Ia)の環状無水物と反応させることにより、対応する式(V)のS-エナンチオマーおよび式(IV)のR-エナンチオマーの混合物が形成する。単離した式(V)の化合物をその後NaHで処理することにより、式(VI)の化合物が形成する。
【0039】
出発物質として使用される式(II)および(IV)の混合物は、好ましくは、Rがシアノであり、点線が単結合であり、Zがジメチルアミノメチルであり、Halがフルオロである式IIの化合物の、アシル化剤としてのビニルブチレートおよび酵素カンジダ(Candida antartica)リパーゼBを使用する酵素的アシル化により製造することができる。
【0040】
<発明の詳細な説明>
式(II)、(IV)、(V)および(VI)に関連して使用される場合に、「エナンチオマー」、「R-エナンチオマー」、「S-エナンチオマー」、「R-体」、「S-体」、「R-ジオール」および「S-ジオール」という語句は、4-Hal-フェニル基が結合する炭素原子の周囲の基の配向(orientation)を表す。
【0041】
本明細書において使用される場合に、C1-10-アルキルという語句は、1〜10個の炭素原子を有する、分岐した、または非分岐のアルキル基、例えばメチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-プロピル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルを表す。C1-6-アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する、分岐した、または非分岐のアルキル基、例えばメチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-プロピル、ペンチル、ヘキシルを表す。C1-4-アルキルは、1〜4個の炭素原子を有する、分岐した、または非分岐のアルキル基、例えばメチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチル-2-プロピルおよび2-メチル-1-プロピルを表す。C1-3-アルキルは、1〜3個の炭素原子を有する、分岐した、または非分岐のアルキル基、例えばメチル、エチル、1-プロピル、2-プロピルを表す。
【0042】
同様に、C2-10-アルケニルおよびC2-10-アルキニルはそれぞれ、2〜10個の炭素原子を有し、それぞれ1つの二重結合および1つの三重結合を含む、分岐した、または非分岐のアルケニルおよびアルキニル基、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、エチニル、プロピニルおよびブチニルを表す。C2-6-アルケニルおよびC2-6-アルキニルはそれぞれ、2〜6個の炭素原子を有し、それぞれ1つの二重結合および1つの三重結合を含む、分岐した、または非分岐のアルケニルおよびアルキニル基、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、エチニル、プロピニルおよびブチニルを表す。C2-4-アルケニルおよびC2-4-アルキニルはそれぞれ、2〜4個の炭素原子を有し、それぞれ1つの二重結合および1つの三重結合を含む、分岐した、または非分岐のアルケニルおよびアルキニル基、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、エチニル、プロピニルおよびブチニルを表す。C2-3-アルケニルおよびC2-3-アルキニルはそれぞれ、2〜3個の炭素原子を有し、それぞれ1つの二重結合および1つの三重結合を含む、分岐した、または非分岐のアルケニルおよびアルキニル基、例えばエテニル、プロペニル、エチニルおよびプロピニルを表す。
【0043】
C1-10-アルコキシ、C1-10-アルキルチオ、C1-10-アルキルアミノおよびジ-(C1-10-アルキル)アミノ等の語句は、アルキル基が上述のように定義されるC1-10-アルキルである、前記基を表す。C1-6-アルコキシ、C1-6-アルキルチオ、C1-6-アルキルアミノおよびジ-(C1-6-アルキル)アミノ等の語句は、アルキル基が上述のように定義されるC1-6-アルキルである、前記基を表す。C1-4-アルコキシ、C1-4-アルキルチオ、C1-4-アルキルアミノおよびジ-(C1-4-アルキル)アミノ等の語句は、アルキル基が上述のように定義されるC1-4-アルキルである、前記基を表す。C1-3-アルコキシ、C1-3-アルキルチオ、C1-3-アルキルアミノおよびジ-(C1-3-アルキル)アミノ等の語句は、アルキル基が上述のように定義されるC1-3-アルキルである、前記基を表す。
【0044】
ハロゲンはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。
【0045】
本明細書で使用される場合に、「貧溶剤(anti-solvent)」という語句は、溶剤−溶質系に添加された場合に、該溶質の溶解度を減少させる液体を表す。
【0046】
本発明の特定の実施態様において、式(IV)の化合物の、式(V)のエステルからの分離は、式(V)の酸を反応混合物から沈殿させ、そして式(V)の化合物の沈殿物を反応混合物から分離し、場合により引き続いて、式(IV)の化合物またはその塩を反応混合物から単離する。
【0047】
本発明の特定の実施態様においては、R’、R’’およびR’’’は、水素およびC1-6-アルキルから独立して選択され、そしてQ1およびQ2は両方とも炭素である。
【0048】
本発明の特定の実施態様においては、式(V)の化合物のエナンチオマーの混合物は、式(V)の化合物のS-エナンチオマーを60%以上、例えば70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上含む。
【0049】
本発明の同様なもう1つの特定の実施態様において、式(V)の化合物のエナンチオマーの混合物は、式(V)の化合物のR-エナンチオマーを60%以上、例えば70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上含む。
【0050】
本発明の同様なさらにもう1つの特定の実施態様において、式(IV)のアシル誘導体のエナンチオマーの混合物は、式(V)の化合物のS-エナンチオマーを60%以上、例えば70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上含む。
【0051】
本発明の同様なさらにもう1つの特定の実施態様において、式(IV)のアシル誘導体のエナンチオマーの混合物は、式(V)の化合物のR-エナンチオマーを60%以上、例えば70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、98%以上または99%以上含む。
【0052】
本発明の好ましい実施態様において、Rはハロゲンまたはシアノであり、最も好ましくはシアノである。
【0053】
本発明のさらなる好ましい実施態様において、Halはフルオロである。
【0054】
本発明のさらなる好ましい実施態様において、式(II)、(IV)および(V)における点線は単結合である。
【0055】
さらなる好ましい実施態様において、Zはジメチルアミノメチルであるか、またはジメチルアミノメチルに変換できる基である。好ましい実施態様においては、Zはジメチルアミノメチルである。
【0056】
最も好ましくは、Halはフルオロであり、Rはシアノであり、点線は単結合であり、そしてZはジメチルアミノメチルである。
【0057】
本発明の1つの実施態様においては、式(IV)の化合物中のYはOまたはSである。
【0058】
本発明のもう1つの実施態様においては、式(IV)の化合物中のYはNHである。
【0059】
しかし、本発明の好ましい実施態様においては、式(IV)の化合物中のYは結合である。
【0060】
適当には、上述の実施態様のいずれかにおいて定義される式(IV)の化合物中の置換基R1は、以下のとおりである:R1は、その全てが、場合により、C1-6-アルコキシ、C1-6-アルキルチオ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、C1-4-アルキルアミノおよびジ-(C1-6-アルキル)アミノから選択される置換基で1回またはそれ以上置換されていてもよいC1-6-アルキル、C2-6-アルケニルまたはC2-6-アルキニルであり、より適当なR1は、その全てが場合により、C1-4-アルコキシ、C1-4-アルキルチオ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、C1-4-アルキルアミノおよびジ-(C1-4-アルキル)アミノから選択される置換基で1回またはそれ以上置換されていてもよいC1-4-アルキル、C2-4-アルケニルまたはC2-4-アルキニルであり、好ましくは、R1は、その全てが、場合により、C1-3-アルコキシ、C1-3-アルキルチオ、ヒドロキシ、 ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、C1-3-アルキルアミノおよびジ-(C1-3-アルキル)アミノから選択される置換基で1回またはそれ以上置換されていてもよいC1-3-アルキル、C2-3-アルケニルまたはC2-3-アルキニルであり、より好ましいR1は、C1-3-アルキル、C2-3-アルケニルまたはC2-3-アルキニルであり、さらに適当なR1はC1-3-アルキル、特に非分岐のC1-3-アルキル、例えばメチル、エチルまたはプロピルである。
【0061】
本発明は特に、国際公開第2004/014821号パンフレットとして公開された国際特許出願PCT/DK/ 0300537に記載の方法に従う酵素的分割によって得られる、S-またはR-エナンチオマーの形態にある式(II)の化合物、および反対のエナンチオマーの形態にある式(IV)の化合物の分離に有用である。
【0062】
従って、本発明の実施態様において、前記方法において使用される式(II)および(IV)の化合物の混合物は、選択的な酵素的アシル化または選択的な酵素的脱アシル化により製造される。
【0063】
本発明の特に有利な点は、式(V)の化合物が反応混合物から沈殿し、従って容易に単離されることである。
【0064】
本発明のもう1つの特定の有利な点は、(使用される式(Ia)〜(Ic)の特定の試薬に依存して)直接的に閉環することができ、塩基での処理によりエスシタロプラムまたはその誘導体を形成する生成物が分離および単離されることである。
【0065】
一方のエナンチオマーの形態にある式(II)の化合物と、式(Ia)、(Ib)または(Ic)の化合物との混合物の反応は、テトラヒドロフランのような不活性な有機溶剤、好ましくは、式(V)の酸が沈殿を形成する溶剤において、式(V)の酸が沈殿を形成する特定の溶剤の量で、実施することができる。当業者であれば適当な溶剤を同定することができる。
【0066】
あるいは、反応を、式(V)の酸が沈殿を形成しない溶剤中で実施し、式(V)の化合物の形成の後に貧溶剤を添加することによって式(V)の酸が沈殿を形成する。
【0067】
前記反応は、適当には、室温(25℃)でまたは室温付近で実施することができる。
【0068】
式Vの化合物は、適当には、ろ過または傾瀉(decanting)により、または液体から固体を分離するその他の適当な方法により、式(IV)の化合物から分離される。
【0069】
単離される式Vの化合物がS-エナンチオマーである場合には、これは適当な有機溶剤中における塩基での処理により直接閉環させることができる。
【0070】
エスシタロプラムまたは式(VI)の他の化合物を形成するための、 式(V)のS-エナンチオマーのエナンチオ選択的な閉環は、適当には、不活性溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、DMSO、DMF、t-ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジメトキシメタン、ジオキサン、アセトニトリルまたはジクロロメタンにおける、低温での、式(V)の化合物の、塩基、例えばKOC(CH3)3またはその他のアルコキシド 、NaHまたはその他の水素化物、またはアミン、例えばトリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミンまたはピリジンでの処理により行うことができる。この工程は特許文献4に記載される方法と同様に行うことができる。
【0071】
同一の方法により、反応混合物から分離されるS-エナンチオマーの形態にある式(IV)の化合物は、塩基での処理による閉環に付すことができる。
【0072】
いくつかの場合には、閉環を実施する前に、式IVの化合物における-CW-Y-R1基または式(V)の化合物における-CO-V基をより不安定な基と交換するのが有利である。前記の不安定な基(脱離基)は典型的にはメタンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ、10-カンファースルホニルオキシ、トリフルオロアセチルオキシおよびトリフルオロメタンスルホニルオキシまたはハロゲンから選択される基でよい。
【0073】
典型的には、式(IV)または(V)の化合物はその後、水またはアルコールにおけるNaOH、KOHまたはLiOHまたはそれらの混合物のような水性塩基を用いる加水分解に付されることにより、式(II)の化合物を形成し、その後、有機塩基の存在下、有機溶剤中で、AがC1-6-アルキル、C2-6-アルケニル、C2-6-アルキニルまたは場合によりC1-6-アルキルで置換されるアリールまたはアリール-C1-6 アルキル、特にメシルクロリドまたはトシルクロリドまたはトリフルオロアセチルクロリド、アセチルクロリドである-O-SO2-A基のような活性化された脱離基、またはギ酸および無水酢酸の混合物のようなギ酸の形態と反応させる。
【0074】
好ましくは、式(V)の化合物における置換基Vは、塩基での処理により、式Vの化合物の直接の閉環を可能にする置換基である。最も好ましくは、Vは-CH2-CH2-COOHまたは-CH2-CH2-CH2-COOHである。
【0075】
エスシタロプラム生成物の光学純度は、閉環の後に改善することができる。光学純度の改善は、国際出願第03/000672号パンフレットに記載される方法に従って、キラル固定相におけるクロマトグラフィーにより、またはラセミ体シタロプラム塩基またはその塩の結晶化により得ることができる。
【0076】
本発明によって得られる式(V)および(IV)の化合物のR-エナンチオマーは、国際出願第03/000672号パンフレットに記載される方法に従う酸性環境下での閉環によるラセミ体のシタロプラム及びエスシタロプラムの製造に使用することができる。酸性閉環を行うための適当な酸は、鉱酸、カルボン酸、スルホン酸またはスルホン酸誘導体、さらに適当にはH2SO4またはH3PO4である。
【0077】
本発明の分離法に使用される出発混合物は、国際公開第2004/014821号パンフレットとして公開された国際特許出願PCT/DK/ 0300537に記載されるように、リパーゼ、エステラーゼ、アシラーゼ、プロテアーゼのような加水分解酵素を用いる酵素的アシル化又は脱アシル化により製造することができる。
【0078】
本発明の酵素的アシル化は、両方ともNovozymes A/S社から販売されているカンジダ・アンタルティカ(Candida antartica)由来のNovozyme(R)435、サーモマイセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)由来のLipoZymeTMTL IM、またはリポタンパク質リパーゼ・シュードモナス(pseudomonas sp.)(シュードモナス・セパシア(Pseudomonas Cepacia)から単離され、Fluka社から入手可能)を用いて実施することができることが見出され、カンジダ・アンタルティカ由来のNovozyme 435またはリポタンパク質リパーゼ・シュードモナスを用いた場合に特に良好な結果が見出された。
【0079】
「酵素」または「加水分解酵素」は、公知技術により酵素自体として固定化されるか、または細胞体として固体化され、固体化形態で使用される。固体化は、例えばキャリアボンディング(carrier bonding)、クロスリンキング、カプセル化等を含む方法のような当業者に公知の方法により行われる。従って、加水分解酵素は固定化酵素またはCross-Linked Enzyme Crystal (CLEC) 酵素の形態で使用することができる。
【0080】
上述の酵素は、細胞体を含む培養液、または培養細胞体のような、酵素を含む培養生成物、培養生成物の加工生成物およびこれらの酵素/培養生成物の固定化形態の形態で使用することもできる。
【0081】
選択的アシル化または脱アシル化を行うことができる、具体的に上述された酵素の突然変異体、バリアントまたは任意の同等物もまた使用することができる。前記バリアントまたはその同等物は、シュードモナス、カンジダまたはサーモマイセスまたはその他のいずれかの起源の種々の株から単離することができるか、またはこれらは、酵素のアミノ酸組成における変化を誘導する、上述の酵素をコードするDNAの突然変異により製造することができる。適当には、上述の酵素の突然変異体またはバリアントは、1つのアミノ酸が除去またはその他のアミノ酸で置換されているバリアントおよび突然変異体であり、適当には、該バリアントまたは突然変異体は、上述の酵素と60%以上同一、好ましくは80%以上、および最も好ましくは90%以上同一である。酵素的アシル化/脱アシル化における好ましい反応条件は、特に使用される酵素、それが固定化されているか否か等に依存して異なる。
【0082】
反応に適した温度は、0〜80℃、より好ましくは20〜60℃、またはより好ましくは30〜50℃である。
【0083】
使用される酵素の量は特に限定されないが、基質に対する重量比として、通常、0.01〜1.0、好ましくは0.02〜0.5およびさらに好ましくは0.02〜0.3である。
【0084】
反応は、バッチ工程として実施することができ、または連続工程として実施することができる。酵素は複数のバッチで繰り返しまたは連続的に使用することができる。反応時間は、特に制限されず、使用される酵素および規模および製造法のタイプに依存する(バッチまたは連続)。
【0085】
国際公開第2004/014821号パンフレットとして公開された国際特許出願PCT/DK/ 0300537に従い、酵素的アシル化に使用されるアシル化剤は、以下の式
【0086】
【化9】

【0087】
を有する試薬、または式R1-N=C=Oを有するイソシアネート、または式R1-N=C=Sを有するイソチオシアネートでよく、
式中、XはOまたはSであり;WはOまたはSであり;UはOまたはSであり、Vはハロゲンであり;
R0は、その全てが場合により、C1-10-アルコキシ、C1-10-アルキルチオ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、C1-10-アルキルアミノ、ジ-(C1-10-アルキル)アミノ、アリール、アリールオキシ、アリールチオおよびヘテロアリールから選択される置換基で1回またはそれ以上置換されてもよいC1-10-アルキル、C2-10-アルケニルまたはC2-10-アルキニルであるか、またはR0は、アリールおよびヘテロアリール基のいずれもが、場合によりC1-10-アルキル、C2-10-アルケニル、C2-10-アルキニル、C1-10-アルコキシ、C1-10-アルキルチオ、ヒドロキシ、 ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、C1-10-アルキルアミノおよびジ-(C1-10-アルキル)アミノから選択される置換基で1回またはそれ以上置換されてもよいアリールであり;
R1はR0に関して定義されるとおりであり;
R2はR0に関して定義されるとおりであるか、またはR2は適当な不可逆的アシル供与基であり;
または、R0およびR1は一緒に、3〜5個の炭素原子の連鎖を形成し;
ただし、XがSである場合には、WおよびUはSでないことを条件とする。
【0088】
好ましくは、式(IIIa)の化合物において、UはOである。
【0089】
好ましくは、上述のいずれのアシル化剤においても、WはOである。
【0090】
好ましくは、上述のいずれのアシル化剤においても、XはOである。
【0091】
好ましくは、R1およびR0はC1-3-アルキル、特に、非分岐のC1-3-アルキル、例えばメチル、エチルまたはプロピルであり、好ましくは、R2はハロゲンで1回またはそれ以上置換されたC1-3-アルキルであるか、またはR2はC2-3-アルケニルであり、そして最も好ましいR2は、C2-3-アルケニル、例えばビニルである。
【0092】
好ましいアシル化剤はビニルブチレートである。
【0093】
酵素的脱アシル化は、以下の式
【0094】
【化10】

【0095】
を有し、R、Z、W、Y、Hal、点線およびR1が上述の定義のとおりである化合物を出発材料として用いることにより実施することができる。
【0096】
適当には、酵素的脱アシル化に使用される出発材料におけるR1はC1-10-アルキルであり、好ましくは非分岐のC1-10-アルキルであり、そしてより好ましいR1はC4-10-アルキルである。
【0097】
選択的な酵素的アシル化は、加水分解を実質上抑制する条件下で実施される。反応系に水が存在する場合に、アシル化反応の逆反応である加水分解が起こる。
【0098】
従って、選択的な酵素的アシル化は、好ましくは無水の有機溶剤またはほぼ無水の有機溶剤(酵素は通常、活性であるためにはいくらかの水の存在が必要である)中で実施される。当業者であれば、特定の反応系において許容される水の割合を決定することができる。
【0099】
アシル化反応に使用できる有機溶剤は、使用する酵素を失活させない限り特に重要ではない。適当な溶剤には、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼンおよびトルエンのような炭化水素;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテルおよびジメトキシエタンのようなエーテル;アセトン、ジエチルケトン、ブタノンおよびメチルエチルケトンのようなケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、エチルブチレート、ビニルブチレートおよびエチルベンゾエートのようなエステル;メチレンクロリド、クロロホルムおよび1,1,1-トリクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素;tert-ブタノールのような二級および三級アルコール;ジメチルホルムアミド、アセトアミド、ホルムアミド、アセトニトリルおよびプロピオニトリルのような窒素含有溶剤;およびジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドンおよびヘキサメチル亜リン酸トリアミドのような非プロトン性極性溶剤が含まれる。
【0100】
これらの中でも、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼンおよびトルエンのような炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4-ジオキサンおよびtert-ブチルメチルエーテルのようなエーテル、ビニルブチレートのようなエステルが好ましい。1つの酵素に対する最も好ましい溶剤は、エーテルおよび芳香族炭化水素、例えばベンゼンまたはトルエン、最も好ましくはトルエンであり、もう1つの酵素に対する最も好ましい溶剤は、1,4-ジオキサンのようなエーテルである。上述の溶剤は、単独でまたは2種またはそれ以上の溶剤の組み合わせで使用することができる。
【0101】
式(II)のラセミ体ジオールおよびアシル化剤の濃度は、溶剤において試薬が高濃度である場合に、式(II)のラセミ体ジオールの非選択的アシル化が起こるため、あまり高すぎないべきである。式(II)のラセミ体ジオールおよびアシル化剤の適当な濃度は、それぞれ、1.0 M以下、より適当には0.5 M以下、さらに適当には0.2 M以下、または、よりさらに適当には0.1 M以下である。当業者であれば、式(II)のラセミ体ジオールおよびアシル化剤の最適な濃度を決定することができる。
【0102】
選択的な酵素的アシル化は、好ましくは、水、または水および有機溶剤の混合物中で、適当には緩衝液の存在下で行われる。反応に使用することができる有機溶剤は、使用する酵素を失活させない限り特に重要ではない。適当な有機溶剤は、水混和性溶剤、例えばアルコール、アセトニトリル、DMF、DMSO、ジオキサン、DMEおよびジグリムである。当業者は、その他の適当な溶剤を確認することも可能である。当業者であれば、反応に使用される式(IV)のラセミ体化合物の最適濃度を決定することができる。
【0103】
使用される酵素の立体選択性は、有機酸および/または有機塩基の存在下でアシル化または脱アシル化を行うことにより増加させることができる。
【0104】
特に、酵素的アシル化または酵素的脱アシル化は、有機酸、適当には有機カルボン酸の存在下で行うことができる。
【0105】
適当には、上述の有機酸は、芳香族カルボン酸または脂肪族カルボン酸である。
【0106】
反応に使用することができる適当な有機酸は、アルキルカルボン酸、シクロアルキルカルボン酸、シクロアルキルアルキルカルボン酸、場合により置換されるフェニルアルキルカルボン酸および場合により置換されるフェニルカルボン酸である。適当な脂肪族カルボン酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、イソ-酪酸、2-エチル酪酸、n-バレリアン酸、イソ-バレリアン酸、ピバリン酸、n-カプロン酸、イソ-カプロン酸、デカン酸、クロトン酸、パルミチン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル-C1-4-アルキルカルボン酸、例えば3-フェニルプロピオン酸、4-フェニル酪酸、シュウ酸、マロン酸および酒石酸のようなカルボン酸である。適当な芳香族カルボン酸には、例えば、安息香酸、p-クロロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、p-メトキシ安息香酸、p-トルイル酸、o-トルイル酸、m-トルイル酸、ナフトエ酸、フタル酸およびテレフタル酸、サリチル酸、ヒドロ桂皮酸のような酸が含まれる。
【0107】
好ましくは、酵素の立体選択性を改善するために使用される有機酸は、n-プロピオン酸、イソ-プロピオン酸、n-酪酸、イソ-酪酸、イソ-バレリアン酸、2-エチル酪酸、クロトン酸、パルミチン酸、シクロヘキサンカルボン酸、ピバリン酸、安息香酸およびp-トルイル酸、サリチル酸および3-フェニルプロピオン酸から選択される。最も好ましくは、使用されるカルボン酸はピバリン酸である。
【0108】
使用される有機酸の量は特に限定されないが、通常、基質に対するモル比は0.1〜10であり、好ましくは1.0〜3.0であり、より好ましくは1.0〜2.0である。
【0109】
あるいは、有機塩基を、単独で、または上述の有機酸のいずれかと一緒に、酵素の選択性を改善するために使用することができる。適当な有機塩基としては、トリエチルアミン、ピリジンおよび4-ジメチルアミノピリジンを挙げることができるが、ピリジンが好ましい。有機酸および有機塩基の適当な組み合わせは、例えば安息香酸およびピリジンである。
【0110】
使用される有機塩基の量は特に限定されないが、基質に対するモル比は、通常、0.5〜3.0であり、好ましくは0.5〜2.0である。
【0111】
上述のように、R基は、シアノ基、またはシアノ基に変換できるその他の基を意味する。
【0112】
シアノ基に変換できる基には、クロロ、ブロモ、ヨードまたはフルオロ、好ましくはクロロまたはブロモのようなハロゲンが含まれる。
【0113】
シアノに変換できるその他の基としては、nが0〜8であるCF3-(CF2)n-SO2-O-、R5が水素またはC1-6-アルキルカルボニルであり、R6およびR7が水素、場合により置換されるC1-6-アルキル、アリール-C1-6-アルキルまたはアリール から選択される-OH、-CHO、-CH2OH、-CH2NH2、-CH2NO2、-CH2Cl、-CH2Br、-CH3、-NHR5、-CHNOH、-COOR6、-CONR6R7、および、ZがOまたはSであり;R8〜R9が水素およびC1-6-アルキルから独立して選択されるか、またはR8およびR9が一緒にC2-5-アルキレン鎖を形成し、それによってスピロ環が形成され;R10が水素およびC1-6-アルキルから選択され、R11が水素、C1-6-アルキル、カルボキシル基またはそれらの前駆体基から選択されるか、またはR10およびR11が一緒にC2-5-アルキレン鎖を形成し、それによってスピロ環が形成される、式
【0114】
【化11】

【0115】
で表される基が含まれる。
【0116】
Rがハロゲン、特にブロモまたはクロロである場合に、シアノへの変換は、特許文献2、国際出願第00/13648号パンフレット、国際出願第00/11926号パンフレットおよび、国際出願第01/02383号パンフレットに記載されているように実施することができる。
【0117】
特許文献2において、ブロモ基のシアノ基への変換はCuCNでの反応によって行われる。
【0118】
国際出願第00/13648号パンフレットおよび国際出願第00/11926号パンフレットには、PdまたはNi触媒の存在下におけるシアニド源を用いたシアノ化による、ハロゲンまたはトリフレート基のシアノ基への変換が記載されている。
【0119】
R基が式(VII)の基である化合物は、国際出願第00/23431号パンフレットに記載される方法と類似の方法により、対応するシアノ化合物に変換することができる。
【0120】
RがOH、-CH2OH、-CH2NH2、-CH2NO2、-CH2Cl、-CH2Br、-CH3または上述の基のいずれかである化合物は、国際出願第01/68632号パンフレットに記載される方法と類似の方法により、対応するシアノ化合物に変換することができる。
【0121】
式(II)のラセミ化合物は、上述の特許に記載される方法により、または特許文献2に記載されるアルキル化法または欧州特許出願第171 943号明細書に記載される二重のグリニャール(double grignard reaction)反応により、または類似の方法により製造することができる。式(IV)のラセミ化合物は、式(II)のラセミ化合物から、上述の式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、R1-N=C=OおよびR1-N=C=Sにより定義されるような無水物、エステル、カーボネート、イソシアネートまたはイソチオシアネートを用いる非選択的アシル化により製造することができる。
【0122】
いくつかの場合には、式(II)のラセミ化合物は、式(II)の化合物を有機相に移すために、酸付加塩、例えば硫酸塩の形態で利用することができ、そしてこの場合には、式(II)の化合物の遊離塩基は、該塩を水および有機溶剤の混合物中において塩基で処理することにより得ることができる。
【0123】
好ましくは、Rはシアノである。Rがシアノでない場合には、R基のシアノ基への変換は、適当には式(V)の化合物を形成するための閉環後に実施される。
【0124】
好ましくは、Halはフルオロである。Halがフルオロでない場合には、Hal基のフルオロへの変換は、適当には式(V)の化合物を形成するための閉環後に実施される。この変換を実施する方法は、「Speciality Chemicals Magazine, April 2003, page 36-38」に記載されている。
【0125】
ジメチルアミノメチルに変換できるZ基は、-CH2-L、-CH2-NO2、-MgHal、シアノ、アルデヒド、-CH2-O-Pg、 -CH2-NPg1Pg2、-CH2-NMePg1、-CH2-NHCH3、-CH2-NH2、-CO-N(CH3)2、-CH(A1R12)(A1R13)、-(A1R14)(A2R15)(A3R16)、-COOR17-CH2-CO-NH2、-CH=CH-R18または-CONHR19のような基であって、Pgはアルコール基のための保護基であり、Pg1およびPg2はアミノ基のための保護基であり、R12およびR13はC1-6-アルキル、C2-6-アルケニル、C2-6-アルキニルおよび場合によりアルキルで置換されたアリールまたはアラルキル基から独立して選択されるか、またはR12およびR13は一緒に2〜4個の炭素原子の炭素鎖を形成し、R14〜R18はそれぞれ、C1-6-アルキル、C2-6-アルケニル、C1-6-アルキニルおよび場合によりC1-6-アルキルで置換されたアリールまたはアリール-C1-6-アルキルから独立して選択され、R19は水素またはメチルであり、A1、A2およびA3はOおよびSから選択され;Lはハロゲンまたは-O-SO2-Aのような脱離基であり、AはC1-6 アルキル、C2-6 アルケニル、C2-6 アルキニルまたは場合によりC1-6-アルキルで置換されたアリールまたはアリール-C1-6-アルキルである。
【0126】
アルコール-保護基であるPgは、トリアルキルシリル基、ベンジル基またはテトラヒドロピラニル基(THP)でよい。
【0127】
適当なPg1およびPg2基は、アラルキル、またはR0がアルキル、アラルキル、アリール、またはアルキル、典型的にはメチル、ベンジルまたはトシルで置換されたアリールであるSO2-R0基であるか、またはPg1およびPg2は、これらが結合するN原子と一緒に、場合により置換されるフタルイミド基を形成する。
【0128】
Zが-CH2-O-Pgである化合物は、国際公開第01/43525号パンフレット、国際公開第01/51478号パンフレットまたは国際公開第01/68631号パンフレットに記載されるように、または類似の方法により、Zがジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換することができる。
【0129】
Zが-CH2-Lであり、Lが脱離基である化合物は、同様の方法でジメチルアミノメチル基に変換することができる。
【0130】
Zが-CO-N(CH3)2および-CO-NHR19であり、R19が水素またはメチルである化合物は、国際公開第01/43525号パンフレットまたは国際公開第01/68631号パンフレットに記載されるように、または類似の方法により、Zがジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換することができる。
【0131】
Zが-CH2-NMe(Pg1)または-CH2-N(Pg1)(Pg2)である化合物は、国際公開第01/43525号パンフレットまたは国際公開第01/68631号パンフレットに記載されるように、または類似の方法により、Zがジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換することができる。
【0132】
Zが-CH(A1R12)(A2R13)である化合物は、国際公開第01/43525号パンフレットまたは国際公開第01/68631号パンフレットに記載されるように、または類似の方法により、Zがジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換することができる。
【0133】
Zが-C(A1R14)(A2R15)(A3R16)である化合物は、国際公開第01/68631号パンフレットに記載されるように、または類似の方法により、Zがジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換することができる。
【0134】
Zが-COOR17である化合物は、カルボン酸エステルから開始して、上述のように、Zがジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換することができる。
【0135】
Zが-CH2-CONH2である化合物は、国際公開第01/43525号パンフレットまたは国際公開第01/68631号パンフレットに記載されるように、または類似の方法により、Zがジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換することができる。
【0136】
Zが-CH=CHR18である化合物は、国際公開第01/43525号パンフレットまたは国際公開第01/68631号パンフレットに記載されるように、または類似の方法により、Zがジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換することができる。
【0137】
Zがシアノまたは-CH2-NO2である化合物は、国際公開第01/68631号パンフレットに記載されるように、または類似の方法により、Zがジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換することができる。
【0138】
Zが-MgHalである化合物は、国際公開第01/68631号パンフレットに記載されるように、または類似の方法により、Zがジメチルアミノメチルである対応する化合物に変換することができる。
【0139】
好ましくは、Zはジメチルアミノメチルである。Zがジメチルアミノメチルでない場合に、Zのジメチルアミノメチル基への変換は、適当には閉環後に実施される。
【0140】
点線が二重結合を表す化合物は、国際公開第01/68631号パンフレットに記載される方法により、または類似の方法により、点線が単結合である対応する化合物に変換することができる。好ましくは還元は閉環後に実施される。
【実施例】
【0141】
以下の実施例において、変換%および光学純度を以下に記載されるように測定および計算した:
HPLC解析条件(変換率に関して):
カラム:Lichrospher RP-8カラム、250×4 mm(粒度5μm)
溶出液:以下のように製造したMeOH/水緩衝液:1.1 mlのEt3Nを150 mlの水に添加し、10% H3PO4(水溶液)をpH=7まで添加して、水を全量が200 mlになるまで添加した。該混合物を1.8 LのMeOHに添加した。
温度:35℃
流速:1 mL/分
圧力:16.0 MPa
検出:UV 254 nm
注入容量:10マイクロL
変換率(%)= P/(S+P) ×100、(P:生成物の量、S:残った基質の量)。
【0142】
超臨界流体クロマトグラフィー。解析条件(光学純度に関して):
カラム:250 × 4.6 mm(粒度5μm)の容量を有するDaicel ADカラム
移動相:二酸化炭素
修飾剤(Modifier):ジエチルアミン(0.5%)およびトリフルオロ酢酸(0.5%)を含むメタノール
修飾剤勾配:4分間で1〜2%
4分間で2〜4%
4分間で4〜8%
4分間で8〜16%
4分間で16〜32%
1.62分間で32〜45%
温度:常温(Ambient temperature)
流速:2 mL/分
圧力:20 mPa
検出:UV 230 nmおよび254 nm
注入容量:10 マイクロL
光学純度(%ee) = (A-B) / (A+B) ×100、(AおよびBは対応する立体異性体を表す、A>B)
E-値= ln ((1-c/100) × (1-Es/100)) / ln ((1-c/100) ×(1+Es/100))
(c:変換率、Es:残った基質の光学純度)。
【0143】
<実施例1>
(S)-1-(3-ジメチルアミノ-プロピル)-1-(4-フルオロ-フェニル)-1,3-ジヒドロ-イソベンゾフラン-5-カルボニトリルシュウ酸水素塩
50 ml のテトラヒドロフランにおける3,7 gの4-[(S)-4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンゾニトリルおよび6.3 gの酪酸5-シアノ-2-[4-ジメチルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-ベンジルエステル (R/S = 3:1)の混合物に、1.2 g (1.1当量)の無水コハク酸を添加した。室温で一晩撹拌した。沈殿したコハク酸モノ-{5-シアノ-2-[(S)-4-ジメチルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-ベンジル}エステルをろ過(filtered off)し、冷テトラヒドロフランで洗浄することにより3.1 gのエステル(純度98%)を得た。結晶をオーブンで乾燥し、引き続き50 mlのジメチルホルムアミド無水物に溶解した。該溶液に1.1 gのNaH(油中における60%の懸濁液)を添加し、室温で一晩撹拌した。混合物を水でクエンチ(quenched)し、50 mlのジエチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機相を50 mlの水で洗浄し、Na2SO4で乾燥して、減圧下で蒸発させた。残った油状物を14 mlのアセトンに溶解し、630 mgのシュウ酸を添加した。室温で1時間撹拌した後に、沈殿した結晶をろ過し、冷アセトンで洗浄することにより、2.02 gのエスシタロプラムシュウ酸水素塩(ee-値 95%)を得た。
【0144】
<実施例2>
(実施例1に使用される混合物の製造)
(S)-4-[4-ジメチルアミノ-1-(4’-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンゾニトリル
1,4-ジオキサン無水物(142,5 ml)におけるラセミ体4-[4-ジメチルアミノ-1-(4-フルオロフェニル)-1-ヒドロキシブチル]-3-ヒドロキシメチルベンゾニトリル(29 mmol、10 g)およびビニルブチレート(58 mmol、7.5 ml)にリポタンパク質リパーゼ・シュードモナス(pseudomonas sp.)(160 U、250 mg) を添加した。反応を50℃に加熱し、引き続きHPLCを行った。192時間後、41%の変換において、250 mgのリパーゼを添加した。504時間後、63%の変換において、反応を停止した。酵素をろ過し、少量の1,4-ジオキサンで洗浄した。合わせた有機相を減圧下で蒸発させ、引き続き超臨界流体クロマトグラフィーで分析した。得られたee-値 ((S-ジオール) = 95% (S-ジオール/R-ジオール = 40:1)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式
【化1】

を有する化合物またはその塩であって、
式中、Rはシアノまたはシアノ基に変換することができる基であり、
点線は二重結合または単結合を表し、
Halはハロゲンであり、
Zはジメチルアミノメチル基であるか、またはZはジメチルアミノメチル基に変換することができる基であり、
WはOまたはSであり、
Yは結合、O、SまたはNHであり、そして
R1は、そのすべてが場合によりC1-10-アルコキシ、C1-10-アルキルチオ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、C1-10-アルキルアミノ、ジ-(C1-10-アルキル)アミノ、アリール、アリールオキシ、アリールチオおよびヘテロアリールから選択される1つまたはそれ以上の置換基で置換されていてもよいC1-10-アルキル、C2-10-アルケニルまたはC2-10-アルキニルであるか、またはR1は、アリールおよびヘテロアリール基のいずれかが場合によりC1-10-アルキル、C2-10-アルケニル、C2-10-アルキニル、C1-10-アルコキシ、C1-10-アルキルチオ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、C1-10-アルキルアミノおよびジ-(C1-10-アルキル)アミノから選択される置換基により1回またはそれ以上置換されていてもよいアリールである、前記化合物またはその塩、
および/または、式
【化2】

で表されるジオールまたはその塩であって、R、Z、Halおよび点線が上述のように定義される前記ジオールまたはその塩を、式(IV)の化合物および式(II)のジオールを含む混合物から単離および精製する方法であって、以下:
a)前記の式(IV)の化合物および式(II)のジオールを含む混合物を、環状無水物、または式
【化3】

で表されるイミドであって、
式中、Xが-(CHR’’’)n-であり、nが0〜2であり;
そしてR, R’’およびR’’’が、各アリールがC1-6-アルキルで置換されていてもよい、水素、C1-6-アルキル、C1-6-アルコキシ、アリールオキシ、C1-6-アシルオキシ、アリール-CO-Oから独立して選択されるか、または式(Ia)の無水物におけるR’およびR’’が一緒に、R4およびR5が独立して水素またはC1-6-アルキルである-O-CR4R5-O-を形成するか、または式(Ib)の無水物におけるR’およびR’’が隣接し、そしてそれらが結合する2つの炭素原子とともにベンゼン環を形成し;
Q1およびQ2のうちの一方が窒素であり、他方が炭素であるか、または両方が炭素であり;
Aが、C1-6-アルキレン、フェニレンまたはナフチレン基が場合により1回またはそれ以上C1-6-アルキルで置換されていてもよい、C1-6-アルキレン、フェニレンまたはナフチレンである、
前記イミドと反応させて、式(IV)の化合物、および式
【化4】

を有するエステルであって、
式中、R、ZおよびHalが上述のように定義され、そしてVが-CHR’-X-CR’’-COOH、-X-CHR’’ -CO-NH-A-COOH、- CHR’’-X-CO-NH-A-COOH、またはR’、R’’、XおよびAが上述のように定義される以下の式
【化5】

で表される化合物である前記エステルの混合物を形成させる工程;
b)以下の方法:
iv)式(V)の酸またはその塩を反応混合物から沈殿させ、そして式(V)の化合物またはその塩の沈殿物を該反応混合物から分離して、場合により、それに続いて式(IV)の化合物またはその塩を該反応混合物から単離する方法;
v)有機溶剤と水性溶剤との間に分配することにより、式(IV)の化合物を有機相に溶解させ、一方、式(V)の化合物を水相に溶解させ、この相を分離し、そして場合により、式(IV)の化合物またはその塩の単離および/または式(V)の化合物またはその塩の単離を行う方法;
vi)式(V)の化合物を塩基性樹脂に吸着させ、式(IV)の化合物を含む溶剤を該樹脂から分離し、式(V)の化合物を塩基性樹脂から脱着させ、そして場合により、式(IV)の化合物またはその塩の単離および/または式(V)の化合物またはその塩の単離を行う方法、
からなる群から選択される方法により、式(V)のエステルから式(IV)の化合物を分離する工程、
を含む前記方法。
【請求項2】
式(V)のエステルからの式(IV)の化合物の分離が、式(V)の酸を反応混合物から沈殿させ、そして式(V)の化合物の沈殿物を該反応混合物から分離して、場合により、それに続いて式(IV)の化合物またはその塩を該反応混合物から単離することにより行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
R’、R’’およびR’’’が水素およびC1-6-アルキルから独立して選択され、そしてQ1およびQ2が両方とも炭素である、請求項1または2のいずれか1つに記載の方法。
【請求項4】
式(V)の化合物のS-エナンチオマー、または式(V)の化合物のS-エナンチオマーを50%以上含む式(V)の化合物のエナンチオマー混合物を、式(IV)のアシル誘導体のR-エナンチオマーから、または式(IV)のアシル誘導体のR-エナンチオマーを50%以上含む式(IV)のアシル誘導体のエナンチオマー混合物から分離する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
式(V)の化合物のS-エナンチオマーを、式(IV)のアシル誘導体のR-エナンチオマーから、または式(IV)のアシル誘導体のR-エナンチオマーを50%以上含む式(IV)のアシル誘導体のエナンチオマー混合物から分離する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
式(V)の化合物のS-エナンチオマーを、式(IV)のアシル誘導体のR-エナンチオマーから分離する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
式(IV)のアシル誘導体のS-エナンチオマー、または式(IV)のアシル誘導体のS-エナンチオマーを50%以上含む式(IV)のアシル誘導体のエナンチオマー混合物を、式(V)の化合物のR-エナンチオマーから、または式(V)の化合物のR-エナンチオマーを50%以上含む式(V)の化合物のエナンチオマー混合物から分離する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
式(IV)のアシル誘導体のS-エナンチオマーを、式(V)の化合物のR-エナンチオマーから、または式(V)の化合物のR-エナンチオマーを50%以上含む式(V)の化合物のエナンチオマー混合物から分離する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
式(IV)のアシル誘導体のS-エナンチオマーを、式(V)の化合物のR-エナンチオマーから分離する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
いずれかの順で、S-エナンチオマーの形態で得られる式(V)の化合物におけるR基が、場合によりシアノに変換され、得られる式Vの化合物におけるZ基が場合によりジメチルアミノメチル基に変換され、Halが場合によりフルオロに変換され、そして/または二重結合を表す点線が場合により単結合に変換され;それに続いて、式(V)の化合物が、塩基での処理により、エスシタロプラム、または式
【化6】

を有し、式中、R、ZおよびHalが上述のように定義されるその誘導体に変換され、場合によりそれに続いて、いずれかの順で、R基がシアノ基に変換され、Z基がジメチルアミノメチル基に変換され、Halがフルオロに変換され、そして二重結合を表す点線が単結合に変換され;場合により、それに続いてエスシタロプラムまたは式(VI)の誘導体がその塩に変換される、請求項4〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
いずれかの順で、S-エナンチオマーの形態で得られる式(IV)の化合物におけるR基が、場合によりシアノに変換され、得られる式IVの化合物におけるZ基が、場合によりジメチルアミノメチル基に変換され、Halが場合によりフルオロに変換され、そして/または二重結合を表す点線が場合により単結合に変換され;それに続いて、式(IV)の化合物が、塩基での処理により、エスシタロプラムまたは式中、R、ZおよびHalが上述のように定義されるその誘導体
【化7】

に変換され、場合によりそれに続いて、いずれかの順でR基がシアノ基に変換され、Z基がジメチルアミノメチル基に変換され、Halがフルオロに変換され、そして二重結合を表す点線が単結合に変換され;場合によりそれに続いて、エスシタロプラムまたは式(VI)の誘導体がその塩に変換される、請求項7〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
塩基性の閉環が塩基、例えばKOC(CH3)3またはその他のアルコキシド 、NaHまたはその他の水素化物、またはアミン、例えばトリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミンまたはピリジンでの処理により実施される、請求項10または11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
Halがフルオロであり、Rがハロゲンまたはシアノであり、好ましい Rがシアノである、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
点線が単結合を表す、請求項1〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
Zがジメチルアミノメチルまたはジメチルアミノメチル基に変換できる基であり、好ましくはZがジメチルアミノメチル基である、請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
無水物が式(Ia)の化合物である、請求項1〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
無水物が無水コハク酸またはグルタル酸無水物である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
無水物が式(Ib)の化合物である、請求項1〜17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
無水物が無水フタル酸である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
試薬が式(Ic)のイミドである、請求項1〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
イミドがフェニル環においてカルボキシル基で置換されているN-フェニル-スクシンイミドである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
式(IV)の化合物におけるYが結合である、請求項1〜21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
式(IV)の化合物におけるYがOまたはSである、請求項1〜21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
式(IV)の化合物におけるYがOである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
式(IV)の化合物におけるYがNHである、請求項1〜21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
R1が、その全てが場合により、C1-4-アルコキシ、C1-4-アルキルチオ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、C1-4-アルキルアミノおよびジ-(C1-4-アルキル)アミノから選択される置換基で1回またはそれ以上置換されていてもよいC1-4-アルキル、C2-4-アルケニルまたはC2-4-アルキニルから選択される、請求項22〜25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
R1が、その全てが場合により、C1-3-アルコキシ、C1-3-アルキルチオ、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ、C1-3-アルキルアミノおよびジ-(C1-3-アルキル)アミノから選択される置換基で1回またはそれ以上置換されていてもよいC1-3-アルキル、C2-3-アルケニルまたはC2-3-アルキニルから選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
R1がC1-4-アルキルである、請求項26記載の方法。
【請求項29】
R1がC1-3-アルキルである、請求項27記載の方法。
【請求項30】
R1がメチル、エチルまたはプロピル、好ましくはプロピルである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
式(II)および(IV)の化合物の混合物が選択的な酵素的アシル化または選択的な酵素的脱アシル化により製造される、請求項1〜30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれか1つに記載の方法を含む、エスシタロプラムの製造方法。

【公表番号】特表2007−524678(P2007−524678A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552461(P2006−552461)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000075
【国際公開番号】WO2005/077891
【国際公開日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(591143065)ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット (129)
【Fターム(参考)】