説明

エステル、カルボン酸及びアミドの製造方法

【課題】1,3−ジカルボニル化合物を原料とし、温和な条件下で収率良く、エステル、カルボン酸及びアミドを製造する方法を提供する。
【解決手段】1,3−ジカルボニル化合物とアルコールを反応させてエステルを製造する。1,3−ジカルボニル化合物と水を反応させてカルボン酸を製造する。1,3−ジカルボニル化合物とチオールを反応させてチオエステルを製造する。1,3−ジカルボニル化合物とアミンを反応させてアミドを製造する。これらの反応においては、インジウム塩などの金属触媒を使用することが好ましい。また、1,3−ジカルボニル化合物からアシル基を脱離させてケトンを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3−ジカルボニル化合物を原料とするエステル、カルボン酸及びアミドの製造方法に関する。具体的には、1,3−ジカルボニル化合物とアルコールからエステルを製造する方法、1,3−ジカルボニル化合物と水からカルボン酸を製造する方法、1,3−ジカルボニル化合物とチオールからチオエステルを製造する方法、及び1,3−ジカルボニル化合物とアミンからアミドを製造する方法に関する。また、1,3−ジカルボニル化合物からアシル基を脱離させるケトンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エステル、カルボン酸、アミドなどは、様々な構造のものが広く用いられていて、実用上重要な化合物である。例えば、エステルは、果実などの香りの成分であるものが多いことから、香料として有用であるし、塗料や接着剤などの溶媒やプラスチックの可塑剤としても用いられている。また、カルボン酸やカルボン酸アミドも極めて広汎に使用されている。医薬品や電子材料などに用いられる精密合成品としてもこれらの化合物は重要である。
【0003】
従来のエステル合成法としては、カルボン酸とアルコールの脱水縮合が最も一般的である。しかし、触媒として硫酸などの強酸の添加を必要とすることが多いため、酸に敏感な官能基を有するエステルの合成は困難だった。また、酸塩化物や酸無水物とアルコールとの反応もよく利用されるが、反応後に塩化水素やカルボン酸が副生するため、やはり系中が酸性になるという問題点があった。そこで、酸の添加や副生を伴わない、中性条件下でのエステル合成反応が求められていた。この点は、アミドの合成でも同様である。
【0004】
1,3−ジカルボニル化合物(β−ジカルボニル化合物)は、これまでにも合成反応の原料として用いられてきた。例えば、非特許文献1には、1,3−ジケトン(β−ジケトン)とアルコールを塩化インジウム触媒の存在下で反応させて、1,3−ジケトンのα位に炭素−炭素結合を導入する反応が報告されている(下記式(1)参照)。この反応によれば、アルコールの水酸基が脱離する形で炭素−炭素結合が導入される。
【0005】
【化1】

【0006】
また、非特許文献2には、1,3−ジケトンとアルコールとをイッテルビウムトリフラートの存在下で反応させて、β−ケトエノールエーテルを合成する反応が報告されている(下記式(2)参照)。この反応によれば、アルコールの水酸基が1,3−ジケトンのカルボニル基の一方に対して求核攻撃してから脱水反応が進行して、炭素−酸素結合が形成される。
【0007】
【化2】

【0008】
【非特許文献1】M. Yasuda、外2名、Angewandte Chemie Int. Ed.、2006年、第45巻、p.793−796
【非特許文献2】M. Curini、外2名、Tetrahedron Letters、2006年、第47巻、p.4697−4700
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新たなエステル、カルボン酸及びアミドの新規な製造方法を提供することを目的とする。具体的には、1,3−ジカルボニル化合物を原料とし、これにアルコール、水、チオール又はアミンを反応させることによって、温和な条件下で収率良くエステル、カルボン酸及びアミドを合成する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記式(I)
【化3】

[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリールアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基であり;R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリールアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、保護されていてもよい水酸基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルデヒド基、保護されていてもよいカルボキシル基又はその塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキロキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アルキルカルボニロキシ基、アリールカルボニロキシ基、保護されていてもよいアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、アリールアンモニウム基、保護されていてもよいチオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、保護されていてもよいスルフィン酸基又はその塩、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、保護されていてもよいスルホン酸基又はその塩、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアゾ基、アリールアゾ基、保護されていてもよいリン酸基又はその塩、保護されていてもよい亜リン酸基又はその塩、シアノ基、ニトロ基又はアジド基であり;R、R、R及びRは、相互に結合して環を形成してもよい。]
で示される1,3−ジカルボニル化合物と、下記式(II)
【化4】

[式中、−X−は、−O−、−S−又は−NR−を示し;R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリールアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基であり;R及びRは、相互に結合して環を形成してもよく、R又はRが式(I)におけるR、R、R又はRと結合していてもよい。]
で示される化合物を反応させることを特徴とする、下記式(III)
【化5】

[式中、X、R及びRは、上記式(I)及び式(II)と同じ。]
で示される、エステル、カルボン酸及びアミドからなる群から選択される1種の化合物の製造方法である。
【0011】
このとき、式(I)で示される1,3−ジカルボニル化合物において、R、R、R及びRが相互に結合して環を形成していて、式(III)で示される化合物が、ケトエステル、ケトカルボン酸及びケトアミドからなる群から選択される1種の化合物であることが好ましい。また、式(I)で示される1,3−ジカルボニル化合物におけるR、R、R又はRと、式(II)で示される化合物におけるR又はRが相互に結合していて、式(III)で示される化合物が、ケトエステル、ケトカルボン酸及びケトアミドからなる群から選択される1種の化合物であることも好ましい。
【0012】
上記製造方法において、金属化合物からなるルイス酸触媒の存在下に反応させることが好ましい。このとき、前記触媒が周期表の第3〜13族に属する金属の化合物であることが好適であり、インジウム化合物であることが特に好適である。また、前記触媒が、有機酸の金属塩であることも好適である。上記製造方法において、式(I)で示される1,3−ジカルボニル化合物と式(II)で示される化合物の濃度をいずれも1モル/L以上として反応させることが好ましい。また、60〜200℃の反応温度で反応させることも好ましい。
【0013】
また、本発明は、下記式(I)
【化6】

[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリールアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基であり;R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリールアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、保護されていてもよい水酸基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルデヒド基、保護されていてもよいカルボキシル基又はその塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキロキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アルキルカルボニロキシ基、アリールカルボニロキシ基、保護されていてもよいアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、アリールアンモニウム基、保護されていてもよいチオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、保護されていてもよいスルフィン酸基又はその塩、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、保護されていてもよいスルホン酸基又はその塩、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアゾ基、アリールアゾ基、保護されていてもよいリン酸基又はその塩、保護されていてもよい亜リン酸基又はその塩、シアノ基、ニトロ基又はアジド基であり;R、R、R及びRは、相互に結合して環を形成してもよい。]
で示される1,3−ジカルボニル化合物と、下記式(II)
【化7】

[式中、−X−は、−O−、−S−又は−NR−を示し;R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリールアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基であり;R及びRは、相互に結合して環を形成してもよく、R又はRが式(I)におけるR、R、R又はRと結合していてもよい。]
で示される化合物を反応させることを特徴とする、下記式(IV)
【化8】

[式中、R、R及びRは、上記式(I)及び式(II)と同じ。]
で示されるケトンの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、1,3−ジカルボニル化合物を原料とし、これにアルコール、水、チオール又はアミンを反応させることによって、温和な条件下で収率良くエステル、カルボン酸及びアミドを合成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の反応は、下記式(I)
【化9】

[式中、R、R、R及びRは、前記の通り。]
で示される1,3−ジカルボニル化合物と、下記式(II)
【化10】

[式中、−X−及びRは、前記の通り。]
で示される化合物を反応させることを特徴とする、下記式(III)
【化11】

[式中、X、R及びRは、前記の通り。]
で示される、エステル、カルボン酸及びアミドからなる群から選択される1種の化合物の製造方法である。ここで、エステルはチオエステルを、カルボン酸はチオカルボン酸を、それぞれ含む概念である。
【0016】
また、上記式(I)で示される1,3−ジカルボニル化合物と、上記式(II)で示される化合物を反応させた場合には、上記式(III)で示されるエステル、カルボン酸及びアミドからなる群から選択される1種の化合物が生成するとともに、下記式(IV)
【化12】

[式中、R、R及びRは、前記の通り。]
で示されるケトンも生成する。したがって、上記式(III)で示される化合物ではなく、上記式(IV)で示される化合物を目的化合物としてもよい。なお、Rが水素の場合には、ケトンではなくアルデヒドが得られる。
【0017】
1,3−ジカルボニル化合物に対して、金属触媒の存在下にアルコールを反応させることについては、非特許文献1や非特許文献2などに報告されている。しかしながら、これらの文献に記載された反応は、いずれも新たな炭素−炭素結合や炭素−酸素結合を形成するだけのものであって、1,3−ジカルボニル化合物中の炭素−炭素結合を切断することについては記載されていない。今回、本発明者は、1,3−ジカルボニル化合物に対して、アルコール、水又はアミンを反応させるとともに、1,3−ジカルボニル化合物中の炭素−炭素結合を切断し、エステル、カルボン酸又はアミドを合成する新たな反応を見出した。従来、このような反応が収率良く進行することについては全く報告されていなかった。
【0018】
本反応の推定メカニズムは、下記式(3)に示すとおりである。ここでは、金属触媒(M)の存在下に、Rが水素原子である1,3−ジケトンと、アルコールとを反応させて、エステルとケトンと合成する場合のメカニズムを示す。
【0019】
【化13】

【0020】
上記式(3)で示される反応メカニズムでは、まず、1,3−ジカルボニル化合物が金属触媒に配位してカルボニル基の炭素が活性化されることによって、アルコールの求核攻撃が進行する。そして、それに引き続く逆アルドール反応により、炭素−炭素結合が切断され、エステルと金属エノラートが生成する。その後、金属エノラートがプロトン化されることによって、エノールが生成し、それがケトンとして得られる。このとき同時に、触媒が再生される。本反応によって、1,3−ジカルボニル化合物とアルコールからエステルが、1,3−ジカルボニル化合物と水からカルボン酸が、1,3−ジカルボニル化合物とアミンからアミドが、それぞれ合成される。また、いずれの場合にも、1,3−ジカルボニル化合物からアシル基が脱離したケトンが同時に得られる。
【0021】
なお、本発明者が、式(I)で示される1,3−ジカルボニル化合物の代わりにカルボニル基を一つだけ有するケトンを用いて、インジウムトリフラート触媒の存在下、80℃でアルコールと反応させたところ、反応は進行しなかった。β−ケトエステルを用いた場合には、複雑な混合物が得られて、本発明の目的生成物は確認できなかった。また、1,3−ジエステルを用いた場合には、エステル交換反応が進行して目的化合物は得られなかった。したがって、本発明の製造方法では、原料として式(I)で示される1,3−ジカルボニル化合物を用いることが重要である。
【0022】
以下、本反応についてさらに詳しく説明する。本発明で用いられる1,3−ジカルボニル化合物は、下記式(I)
【化14】

[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリールアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基であり;R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリールアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、保護されていてもよい水酸基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルデヒド基、保護されていてもよいカルボキシル基又はその塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキロキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アルキルカルボニロキシ基、アリールカルボニロキシ基、保護されていてもよいアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、アリールアンモニウム基、保護されていてもよいチオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、保護されていてもよいスルフィン酸基又はその塩、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、保護されていてもよいスルホン酸基又はその塩、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアゾ基、アリールアゾ基、保護されていてもよいリン酸基又はその塩、保護されていてもよい亜リン酸基又はその塩、シアノ基、ニトロ基又はアジド基であり;R、R、R及びRは、相互に結合して環を形成してもよい。]
で示されるものである。
【0023】
ここで、置換基R、R、R及びRの各置換基の炭素数は特に限定されず、高分子鎖であっても構わないが、通常50以下であり、好適には20以下である。R及びRの少なくとも一方が水素原子であることが、1,3−ジカルボニル化合物がエノール形を形成しやすくて好ましい。RとRとが異なっている場合には、求核攻撃を受けるカルボニル基によって異なった生成物が得られるが、後の実施例にも示すように、その選択性は良好である。反応中間体の安定性や立体障害などによって反応生成物が決まると考えられる。また、R、R、R及びRが、相互に結合して環を形成している場合には、式(III)で示される化合物と式(IV)で示される化合物が同一分子となる場合がある。そのような場合、ケトエステル、ケトカルボン酸又はケトアミドが合成されることになり、有用である。
【0024】
本発明で1,3−ジカルボニル化合物と反応させるために用いられる化合物は、下記式(II)
【化15】

[式中、−X−は、−O−、−S−又は−NR−を示し;R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリールアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基であり;R及びRは、相互に結合して環を形成してもよく、R又はRが式(I)におけるR、R、R又はRと結合していてもよい。]
で示されるものである。
【0025】
上記式(II)中、R及びRの各置換基の炭素数は特に限定されず、高分子鎖であっても構わないが、通常50以下であり、好適には20以下である。式(II)において、−X−が−O−であって、Rが水素原子でない場合、式(II)で示される化合物はアルコールであり、それと1,3−ジカルボニル化合物を反応させることによって下記式(V)で示されるエステルが得られる。後の実施例で説明するように、様々なアルコールを用いた場合でも反応が進行することが確認されている。但し、一級アルコールや二級アルコールに比べて三級アルコールを用いた場合には収率が低下する。また、Rとしては、飽和炭化水素基のみならず、二重結合、三重結合、芳香環などを含むものも使用できる。さらに、ハロゲン原子やエーテル基など、各種の官能基を含むものも使用できる。式(II)において、−X−が−O−であって、Rが水素原子の場合、式(II)で示される化合物は水であり、それと1,3−ジカルボニル化合物を反応させることによって下記式(V)で示されるカルボン酸が得られる。
【0026】
【化16】

[式中、R及びRは、上記式(I)及び式(II)と同じ。]
【0027】
上記式(II)中、−X−が−S−である場合、式(II)で示される化合物はチオール(Rが水素原子の場合には硫化水素)であり、それと1,3−ジカルボニル化合物を反応させることによって下記式(VI)で示されるチオエステル(Rが水素原子の場合にはチオカルボン酸)が得られる。
【0028】
【化17】

[式中、R及びRは、上記式(I)及び式(II)と同じ。]
【0029】
上記式(II)中、−X−が−NR−である場合、式(II)で示される化合物はアミン(R及びRがともに水素原子の場合にはアンモニア)であり、それと1,3−ジカルボニル化合物を反応させることによって下記式(VII)で示されるアミドが得られる。
【0030】
【化18】

[式中、R、R及びRは、上記式(I)及び式(II)と同じ。]
【0031】
式(II)におけるR又はRが式(I)におけるR、R、R又はRと結合していてもよい。すなわち、一つの化合物が式(I)で示される化合物であるとともに式(II)で示される化合物であってもよい。この場合には、分子内反応が進行してケトエステル、ケトカルボン酸又はケトアミドが合成されることになり、有用である。
【0032】
本発明の製造方法において、式(I)で示される化合物に対する、式(II)で示される化合物の配合比は特に限定されない。原料のコストや目的生成物を考慮して配合比が決定される。本発明においては、比較的高濃度で反応させることが好ましく、好適には、式(I)で示される1,3−ジカルボニル化合物と式(II)で示される化合物の濃度をいずれも1モル/L以上として反応させることが好ましく、いずれも2モル/L以上として反応させることがより好ましい。使用される溶媒は、原料を溶解できるものであれば特に限定されないが、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジクロロエタン、テトラヒドロフランなど、非プロトン性の有機溶媒が好適である。中でも、含ハロゲン炭化水素溶媒が好適に使用される。しかしながら、本発明の製造方法においては、実質的に無溶媒で反応させることが好ましい。無溶媒で反応させた場合の方が収率良く反応が進行するうえに、溶媒回収やエネルギー必要量などの観点からも有利だからである。
【0033】
反応温度は特に限定されないが、加熱することが好ましい。好適には40℃以上に加熱される。目的化合物を高収率で得るためには、反応温度を60℃以上とすることがより好ましく、80℃以上とすることがさらに好ましい。一方、反応温度が高すぎると、副反応や熱分解が生じるおそれがある上に、エネルギー的にも不利になる。したがって、通常反応温度は300℃以下であり、好適には200℃以下であり、より好適には150℃以下である。本発明の製造方法においては、比較的温和な条件で反応が進行する。
【0034】
本反応は、金属化合物からなるルイス酸触媒の存在下に反応させることが好ましい。前記推定メカニズムによれば、1,3−ジカルボニル化合物の2個のカルボニル基の酸素原子が触媒の金属原子に配位し、カルボニル基の炭素原子への求核攻撃を促進していると推定される。したがって、金属化合物がルイス酸として機能して、2個のカルボニル基の酸素原子が配位できることが重要であると考えられる。後の実施例に示されるように、本反応が進行することが確かめられている触媒に含まれる金属種は、3族のスカンジウム及びランタン、7族のレニウム、11族の銅及び銀、13族のインジウムであり、様々な金属化合物で反応が進行することが確かめられている。したがって、適度なルイス酸性を有する金属化合物であれば、本反応の触媒になり得ると考えられる。金属化合物に用いられる金属種は特に限定されないが、前記実施例の結果に基づけば、好適には、周期表第3〜13族に属する金属の化合物である。中でも、インジウム化合物、銅化合物、スカンジウム化合物、レニウム化合物が好適に用いられ、インジウム化合物及び銅化合物がより好適に用いられ、インジウム化合物が特に好適に用いられる。
【0035】
金属化合物の価数は特に限定されず、0価であってもよいし、正の価数を有する塩であってもよい。本発明においては、塩、特に有機酸の金属塩であることが好ましい。有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸などが用いられる。ここで、カルボン酸としては、酢酸、トリフルオロ酢酸などが例示される。スルホン酸としてはトリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などが例示される。反応性の観点からはトリフルオロメタンスルホン酸の塩、すなわちトリフラートが特に好適に用いられる。
【0036】
触媒としての金属化合物の使用量は、式(I)又は式(II)で示される化合物のうちの少ない方のモル数に対して、好適には0.001倍以上であり、より好適には0.005倍以上であり、さらに好適には0.01倍以上である。一方、製造コストや廃棄物の削減の観点からは、金属化合物の使用量は、式(I)又は式(II)で示される化合物のうちの少ない方のモル数に対してより好適には0.2倍以下であり、さらに好適には0.1倍以下である。
【0037】
本発明の製造方法によれば、目的とする化合物を収率良く得ることができる。収率は、20%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましい。後の実施例にも示すように、原料や反応条件によっては、無溶媒でほとんど定量的に反応が進行するので、精製も容易である。ここで上記収率は、得られた目的化合物のモル数を、式(I)又は式(II)で示される化合物のうちの少ない方のモル数で割って100をかけた数値(%)である。
【実施例】
【0038】
実施例1(代表的反応例)
撹拌子を入れ、加熱乾燥した試験管にインジウムトリフラート:In(OTf)を4.2mg(0.0075mmol:3.0モル%)加え、アルゴン置換した。マイクロシリンジで2,4−ペンタンジオン25.0mg(0.250mmol)、2−フェニルエタノール30.5mg(0.250mmol)を加え、無溶媒条件下、80度で24時間、加熱撹拌を行った。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、へキサン:酢酸エチル=50:1)で単離精製したところ、2−フェニルエチルアセテートが41.1mg(0.250mmol:>99%)得られた。無溶媒で定量的に反応が進行することがわかった。反応式は下記式(4)の通りである。
【0039】
【化19】

【0040】
実施例2(触媒の検討)
実施例1において、表1に示す触媒を用いた以外は実施例1と同様にして反応を行い、得られた反応混合物から、単離することなくH−NMRを用いて収率を求めた。結果を表1にまとめて示す。但し、実施例2−1では触媒を用いなかった。また、レニウム錯体を用いた実施例2−2では触媒の添加量を1.5モル%にした。
【0041】
【表1】

【0042】
表1からわかるように、無触媒では反応が進行しなかった(実施例2−1)。インジウムトリフラートを用いた場合には、ほぼ定量的に反応が進行した(実施例2−8)。銅トリフラートを用いた場合にも90%を超える収率であった(実施例2−5)。銀トリフラートを用いた場合の収率は低かった(実施例2−7)が、銀トリフラートとヨウ化銅を併用して反応系中で銅トリフラートを形成させると収率が向上した(実施例2−6)。塩化インジウムでは収率が低く(実施例2−9)、トリフラートが好ましいことがわかる。その他、レニウム塩、スカンジウム塩、ランタン塩でも反応が進行した(実施例2−2、3、4)。
【0043】
実施例3(溶媒と反応温度)
実施例1において、表2に示す溶媒を用いて表2に示す温度で反応させた以外は実施例1と同様にして反応を行い、得られた反応混合物から、単離することなくH−NMRを用いて収率を求めた。結果を表2にまとめて示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表2からわかるように、無溶媒において収率良く反応が進行することがわかる。溶媒を用いた場合には、含ハロゲン炭化水素溶媒が好適である。また、反応温度は80℃付近が最適であることがわかる。
【0046】
実施例4(1,3−ジケトンの検討)
実施例1において、アルコールを実施例1と同じ2−フェニルエタノールに固定し、1,3−ジケトンを表3に示す化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして反応を行い、得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離精製し、単離収率を求めた。それに加え、単離することなくH−NMRを用いての収率も求めた。結果を表3にまとめて示す。ここで、実施例4−2では2−フェニルエタノールを1.2当量加えて115℃で反応させた。実施例4−3では2−フェニルエタノールを1.5当量加えて115℃で反応させた。実施例4−5では2−フェニルエタノールを1.2当量加えた。
【0047】
【表3】

【0048】
α位にアルキル基を有する1,3−ジケトン(実施例4−1)であっても収率良く反応が進行した。R及びRに芳香環を有する1,3−ジケトン(実施例4−2)の場合には、アルコールの使用量を増やして反応温度を上昇させることで収率良くエステルが得られた。環状の1,3−ジケトン(実施例4−3)の場合にも、アルコールの使用量を増やして反応温度を上昇させることで、開環反応を伴って反応が進行し、ケトエステルが収率良く得られた。非対称の1,3−ジケトン(実施例4−4、4−5)の場合には、いずれも位置選択的に反応が進行した。実施例4−4の場合、ベンゾイル基に含まれるカルボニル基ではなく、アセチル基に含まれるカルボニル基に対してアルコールの求核攻撃が優先した。ベンゾイル基の方がエノール形の安定性が高く、かつ立体障害が大きいので、アセチル基に含まれるカルボニル基が選択的に求核攻撃を受けたためと考えられる。また、実施例4−5の場合、5員環に含まれるカルボニル基のエノール形は立体的制約によって不安定である。そのために、アセチル基の方がエノール形を形成しやすく、結果として5員環に含まれるカルボニル基が求核攻撃を受けやすくなり、開環反応が選択的に進行してケトエステルが収率良く得られた。すなわち、実施例4−3や4−5のように、カルボニル基が環に含まれる場合には、開環反応をともなって反応が進行し、ケトエステルが得られる。
【0049】
実施例5(アルコールの検討)
実施例1において、1,3−ジケトンを実施例1と同じ2,4−ペンタンジオンに固定し、アルコールを表4に示す化合物に変更し、アルコール1当量に対して1,3−ジケトン2当量を用いた以外は、実施例1と同様にして反応を行い、得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離精製し、単離収率を求めた。それに加え、単離することなくH−NMRを用いての収率も求めた。結果を表4にまとめて示す。
【0050】
【表4】

【0051】
一級、二級アルコールともに、高収率でエステルが得られた(実施例5−1、5−2)。三級アルコール及びベンジルアルコールでは、エステルが得られるもののその収率は低く、脱水をともなうアルキル化が優先した(実施例5−3、5−4)。二重結合、三重結合、ハロゲン原子、エーテル基を有するアルコールであっても、収率良くエステルが得られた(実施例5−5〜5−10)。
【0052】
実施例5−2で得られた1−メチル−3−フェニルプロピルアセテート(1-Methyl-3-phenylpropyl acetate)の構造データは以下のとおりである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.24 (d, J = 6.3 Hz, 2H), 2.05 (s, 1H), 1.74-1.84 (m, 1H), 1.88-1.98 (m, 1H), 2.56-2.72 (m, 2H), 4.88-4.99 (m, 1H), 7.13-7.20 (m, 3H), 7.24-7.35 (m, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 19.96, 21.25, 31.76, 37.51, 70.46, 125.85, 128.35, 141.46, 170.66; IR (nujol, ν / cm-1) 3086 (w), 3028 (s), 2935 (s), 2864 (w), 1740 (s), 1604 (w), 1496 (m), 1437 (w), 1372 (m), 1240(s), 1131 (m), 1106 (w), 1051 (m), 917 (w), 806 (w), 749 (m), 670 (m), 629 (w), 610 (m), 578 (m); Anal Calcd for C12H16O2: C, 74.97; H, 8.39; Found: C, 75.16; H, 8.32.
【0053】
実施例5−6で得られた6−ブロモ−1−ヘキシルアセテート(6-Bromo-1-hexyl acetate)の構造データは以下のとおりである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.38-1.42 (m, 2H), 1.42-1.52 (m, 2H), 1.65 (quint, J = 7.1 Hz, 2H), 1.87 (quint, J = 7.1 Hz 2H), 2.04 (s, 3H), 3.41 (t, J = 6.8 Hz, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 20.97, 25.08, 25.72, 28.35, 32.54, 33.74, 64.29, 171.16; IR (nujol, ν/ cm-1) 3086 (w), 3028 (s), 2935 (s), 2864 (w), 1740 (s), 1604 (w), 1496 (m), 1437 (w), 1372 (m), 1240(s), 1131 (m), 1106 (w), 1051 (m), 917 (w), 806 (w), 749 (m), 670 (m), 629 (w), 610 (m), 578 (m); Anal Calcd for C12H16O2: C, 74.97; H, 8.39; Found: C, 75.16; H, 8.32.
【0054】
実施例5−7で得られた3−ベンゾイロキシ−プロピルアセテート(3-Benzoyloxy-propyl acetate)の構造データは以下のとおりである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.94 (quint, J = 6.8 Hz, 2H), 2.02 (s, 3H), 3.55 (t, J = 6.3 Hz, 2H), 4.19 (t, J = 6.3 Hz 2H), 4,50(s, 2H), 7.25-7.37 (m, 5H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 20.83, 28.90, 61.58, 66.50, 72.86, 127.50, 128.27, 138.21, 171.00; IR (nujol, ν/ cm-1) 3088 (m), 2860 (S), 2780 (m), 1739 (S), 1653 (w), 1496 (m), 1455 (m), 1386 (w), 1243 (w), 1075 (w), 1045 (w), 970 (w), 738 (m), 699 (m), 607 (m): Anal Calcd forC12H16O3: C, 69.21; H, 7.74; Found: C, 69.19; H, 7.84.
【0055】
実施例5−9で得られた2−デシニルアセテート(2-Decynyl acetate)の構造データは以下のとおりである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 1.22-1.34 (m, 8H), 1.51 (quint, J = 7.3 Hz, 2H), 2.10 (s, 3H), 2.22 (dt, J = 2.1 Hz, 2H), 4.66 (t, J = 2.1 Hz, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 14.07, 18.72, 20.79, 22.56, 28.33, 28.70, 31.55, 31.66, 52.87, 73.75, 87.75, 170.38; IR (nujol, ν/ cm-1) 2931 (s), 2858 (s), 1751 (s), 1465 (m), 1437 (m), 1378 (m), 1359 (m), 1224 (s), 1150 (m), 1025 (m), 967 (m), 625 (w): Anal Calcd for C12H20O2: C,73.43; H,10.27; Found: C, 73.54; H,10.11.
【0056】
実施例5−10で得られた9−ドデシニルアセテート(9-Dodecynyl acetate)の構造データは以下のとおりである。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 1.12 (t, J = 7.4 Hz, 3H), 1.22-1.40 (quint, J = 6.9 Hz, 2H), 1.61 (quint, J = 6.9 Hz, 2H), 2.45 (s, 3H), 2.15-2.20 (m, 4H), 4.05 (t, J = 6.8 Hz, 2H); 13C NMR (100 MHz, CDCl3) δ 12.38, 14.34, 18.67, 21.01, 25.81, 28.69, 28.99, 29.03, 29.10, 64.61, 79.44, 81.60, 171.27; IR (nujol, ν/ cm-1) 2973 (w), 2932 (s), 2857 (m), 1742 (s), 1464 (w), 1387 (w), 1241 (s), 1037 (m), 665 (w), 605 (m).
【0057】
実施例6(環式ジケトンとアリルアルコールの反応)
実施例1において、1,3−ジケトンとして、2−アセチルシクロヘキサノン2当量を使用し、アルコールとしてアリルアルコール1当量を使用し、インジウムトリフラートの添加量を5モル%にした以外は実施例1と同様にして反応を行い、下記式(5)に示されるケトエステルを合成した。得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離精製して求めた収率は93%であり、単離することなくH−NMRを用いて求めた収率は96%であった。6員環に含まれるカルボニル基が選択的に求核攻撃を受けたケトエステルが収率良く得られた。
【0058】
【化20】

【0059】
実施例7(水の検討)
実施例1において、1,3−ジケトンとして、ジベンゾイルメタン1当量を使用し、求核剤として水5当量を使用し、反応温度を115℃にした以外は、実施例1と同様にして反応を行い、得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離精製したところ、下記式(6)に示されるように安息香酸が60%の収率で得られた。これは、水がアルコールと同様に求核攻撃を行った結果であると考えられ、1,3−ジケトンからカルボン酸を合成できることが確認された。また、このとき同時にアセトフェノンの生成も確認されており、1,3−ジケトンからの脱アシル化反応によるケトンの生成も確認された。
【0060】
【化21】

【0061】
実施例8(アミンの検討)
実施例1において、2,4−ペンタンジオン2当量を使用し、求核剤としてモルホリン1当量を使用し、インジウムトリフラートの添加量を5モル%にした以外は、実施例1と同様にして反応を行い、得られた反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離精製したところ、下記式(7)に示されるアミドが89%の収率で得られた。これは、アミンがアルコールと同様に求核攻撃を行った結果であると考えられ、1,3−ジケトンからアミドを収率良く合成できることが確認された。
【0062】
【化22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】

[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリールアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基であり;R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリールアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、保護されていてもよい水酸基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルデヒド基、保護されていてもよいカルボキシル基又はその塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキロキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アルキルカルボニロキシ基、アリールカルボニロキシ基、保護されていてもよいアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、アリールアンモニウム基、保護されていてもよいチオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、保護されていてもよいスルフィン酸基又はその塩、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、保護されていてもよいスルホン酸基又はその塩、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアゾ基、アリールアゾ基、保護されていてもよいリン酸基又はその塩、保護されていてもよい亜リン酸基又はその塩、シアノ基、ニトロ基又はアジド基であり;R、R、R及びRは、相互に結合して環を形成してもよい。]
で示される1,3−ジカルボニル化合物と、下記式(II)
【化2】

[式中、−X−は、−O−、−S−又は−NR−を示し;R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリールアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基であり;R及びRは、相互に結合して環を形成してもよく、R又はRが式(I)におけるR、R、R又はRと結合していてもよい。]
で示される化合物を反応させることを特徴とする、下記式(III)
【化3】

[式中、X、R及びRは、上記式(I)及び式(II)と同じ。]
で示される、エステル、カルボン酸及びアミドからなる群から選択される1種の化合物の製造方法。
【請求項2】
式(I)で示される1,3−ジカルボニル化合物において、R、R、R及びRが相互に結合して環を形成していて、式(III)で示される化合物が、ケトエステル、ケトカルボン酸及びケトアミドからなる群から選択される1種の化合物である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
式(I)で示される1,3−ジカルボニル化合物におけるR、R、R又はRと、式(II)で示される化合物におけるR又はRが相互に結合していて、式(III)で示される化合物が、ケトエステル、ケトカルボン酸及びケトアミドからなる群から選択される1種の化合物である請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
金属化合物からなるルイス酸触媒の存在下に反応させる請求項1〜3のいずれか記載の製造方法。
【請求項5】
前記触媒が、周期表の第3〜13族に属する金属の化合物である請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
前記触媒がインジウム化合物である請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
前記触媒が、有機酸の金属塩である請求項4〜6のいずれか記載の製造方法。
【請求項8】
式(I)で示される1,3−ジカルボニル化合物と式(II)で示される化合物の濃度をいずれも1モル/L以上として反応させる請求項1〜7のいずれか記載の製造方法。
【請求項9】
60〜200℃の反応温度で反応させる請求項1〜8のいずれか記載の製造方法。
【請求項10】
下記式(I)
【化4】

[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリールアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基であり;R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリールアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、保護されていてもよい水酸基、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルデヒド基、保護されていてもよいカルボキシル基又はその塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキロキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、アルキルカルボニロキシ基、アリールカルボニロキシ基、保護されていてもよいアミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、アリールアンモニウム基、保護されていてもよいチオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、保護されていてもよいスルフィン酸基又はその塩、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、保護されていてもよいスルホン酸基又はその塩、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアゾ基、アリールアゾ基、保護されていてもよいリン酸基又はその塩、保護されていてもよい亜リン酸基又はその塩、シアノ基、ニトロ基又はアジド基であり;R、R、R及びRは、相互に結合して環を形成してもよい。]
で示される1,3−ジカルボニル化合物と、下記式(II)
【化5】

[式中、−X−は、−O−、−S−又は−NR−を示し;R及びRは、それぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールアルキル基、置換基を有してもよいアリールアルケニル基、置換基を有してもよいアリールアルキニル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよい複素環基であり;R及びRは、相互に結合して環を形成してもよく、R又はRが式(I)におけるR、R、R又はRと結合していてもよい。]
で示される化合物を反応させることを特徴とする、下記式(IV)
【化6】

[式中、R、R及びRは、上記式(I)及び式(II)と同じ。]
で示されるケトンの製造方法。

【公開番号】特開2008−222606(P2008−222606A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60948(P2007−60948)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(504147243)国立大学法人 岡山大学 (444)
【Fターム(参考)】