説明

エストロゲン分泌促進及び女性生殖器組織細胞再生のための組成物

【課題】閉経期疾患の治療または予防のための組成物を提供する。
【解決手段】桔梗(Platycodi Radix)抽出物及び白何首烏(Cynanchum wilfordii)抽出物からなる群から選択される一つまたはそれ以上を有効成分とし、さらにカルシウム、アルギニン及びリシンからなる群から選択される一つまたはそれ以上の成分を含む組成物。当該抽出物は、従来のホルモン代替療法に使用されるエストロゲン代替剤に比べ、癌発生のような副作用をほとんど生じることなく、優れたエストロゲン分泌促進効果並びに女性生殖器組織細胞の再生及び増殖効果を奏し、エストロゲンの分泌の足りない閉経期以後の女性の様々な症状に適用することができると共に、不純物がほとんどなく有効成分の含量が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エストロゲン分泌促進及び生殖器組織細胞の再生のための組成物に関するものであって、さらに詳細には、桔梗及び白何首烏抽出物から選ばれた一つ以上及び/または続断抽出物を含む閉経期女性のエストロゲン分泌促進及び生殖器組織細胞の再生のための組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エストロゲンは、卵巣内の卵胞から分泌されるホルモンであって、生殖器を発育させてその機能を奏するようにすることにより、第2次性徴を発達させて、子宮発育・内膜増殖、乳腺発育、規則的月経などを促進する。エストロゲンは、卵巣以外にも、胎盤を始めとし副腎皮質や精巣からも少量分泌されるが、エストロン、エストラジオール及び人体で見られるエストリオールなど、3種のステロイドが知られている。
【0003】
エストロゲンは、芳香族化(Aromatization)という酵素的過程を通じて、男性ホルモン前駆体から生成される。閉経期以前の女性に最も多くて強力なエストロゲンである17β−エストラジオール(E2)は、卵胞を作り出しながら合成されて、血液に分泌され、部分的に性ホルモン結合グロブリンと結合して身体全体の細胞に流れるようになる。エストラジオール代謝の主要経路は、弱いエストロゲンであるエストロン(E1)に可逆酸化された後、エストリオール(E3)に変わる。エストロンは、アンドロゲンの前駆物質であるアンドロステンジオンの芳香族化を通じて末梢組織から生成される。前記化合物は、サルフェートとグルクロニド形態で代謝された後、排泄される(Lievertz RW. Pharmacology and pharmacokinetics of estrogen. Am J Obstet Gynecol 156:1289-1293(1987)). 芳香族化は、脂肪組織で起こるため、脂肪組織の多い人は、エストロゲンがより多いようになる。エストラジオールとエストロンは、肝で代謝され、非常に弱いエストロゲン化合物であるエストリオールになれる(Anderson F.K inetics and pharmacology of estrogens in pre- and postmenopausal women. Int J Fertil 38(suppl 1):53-64(1993)). エストラジオール及びエストロン以外の他のエストロゲン代謝物もエストロゲン作用を有する。従って、エストロゲンとその代謝物との複合体が女性において全体的なエストロゲン効果を決定付ける。
【0004】
エストラジオール及びエストロンの平均濃度は、それぞれ520pg/ml及び3,070pg/mlである。エストラジオール及びエストロンのピーク濃度は、排卵期に得られ、それぞれ200〜400pg/ml及び170〜200pg/mlであって、月経初期にそれぞれ最低濃度の40〜60pg/ml及び40〜60pg/mlに落ちるようになる。
【0005】
閉経前のエストラジオール/エストロンの比率は、一般的に1より大きい(Odonnell MB. Pharmacokinetic and pharmacologic variation between different estrogen products. J Clin Pharmacol 35(suppl):18S-24S(1995))。閉経後には、副腎アンドロステンジオンの転換により生じるエストロンが、最も多いエストロゲンとなる。
【0006】
エストロゲンのより複雑な作用としては、2−ヒドロキシ化を通じた代謝経路があるが、これを通じてカテコレステロゲン(catecholesterogen)が形成される。この過程は、末梢組織よりは、脳のような中枢神経系においてもっと重要である。エストロゲンは、カテコールアミン代謝を変更してその効果を奏することができる(Lievertz RW. Pharmacology and pharmacokinetics of estrogen. Am J Obstet Gynecol 156:1289-1293(1987))。カテコールアミンは、アドレナリンの前駆体のドーパミン受容体、α1−アドレナリン受容体及びセロトニン受容体と相互作用するため、重要である。また、エストロゲンのヒドロキシ誘導体らは、異なる作用をする。例えば、4−ヒドロキシエストロゲンは、エストロゲン作用をするが、2−ヒドロキシエストロゲンはそうではない。しかし、エストラジオールの2−ヒドロキシ誘導体は、エストロゲン作用のみならず、カテコールアミン作用もする(Lievertz RW. Pharmacology and pharmacokinetics of estrogen. Am J Obstet Gynecol 156:1289-1293(1987))。これは、エストロゲンが中枢神経系に影響を及ぼすメカニズムを部分的に説明する。
【0007】
エストロゲンの主要生理作用は、乳腺、子宮、卵巣を含む生殖組織の成長、分化及び作用などに影響を及ぼすことである(Kuiper GGJM, Carlsson B, Grandien K, et al. Comparison of the ligand binding specificity and transcript tissue distribution of estrogen receptors alpha and beta. Endocrinology 138:863-870(1997))。エストロゲンは、子宮内膜、子宮筋肉、膣及び尿道上皮の成長を刺激する。また、生殖器の血管の流れを円滑にして、子宮腺分泌を増加させて、プロゲステロンと黄体形成ホルモン受容体の発現を誘導する。エストロゲンは、女性生殖器官と第2次性徴発現の他にも、骨格成長と発達、女性の脂肪分配、脂質代謝などに影響を与える。また、皮膚とコラーゲン組織、ニューロン、心血関係などに作用する。
【0008】
エストロゲンが欠乏すると、血管運動不安定により、一過性熱感のような症状が起こり、長期的には、泌尿生殖器の退化、骨多孔症、歯牙損傷、動脈硬化症、冠状心臓疾患などが生じて、痴呆の恐れがある(Maddox RW, Carson DS, Barnes CL. Estrogens and postmenopausal women. U S Pharmacist 23:141-150(1998);及びGuyton AC, Hall JE. Textbook of Medical Physiology. 9th ed. Philadelphia:W.B. Saunders, 1996)。
【0009】
閉経期以後、女性は、卵巣機能が低下するにつれて、エストロゲンの分泌不足による顔面紅潮、憂鬱症などの各種閉経期症状を経験するようになるが、閉経期以後、エストロゲンの生成が減少した女性の体内に人為的にエストロゲンを投与することにより疾病発生の危険を減らす方法がホルモン代替療法である。
【0010】
閉経期女性にエストロゲンを投与すると、血管運動と泌尿生殖器疾患を減らすと共に、骨多孔症の予防と管理が可能であり、心血関係の疾患の恐れを減らすことができる(Maddox RW, Carson DS, Barnes CL. Estrogens and postmenopausal women. U S Pharmacist 23:141-150(1998))。
【0011】
しかしながら、このようなホルモン代替療法は、癌誘発遺伝子の活性を増加させることにより、乳癌及び子宮癌などの発病の危険を高める可能性があるという問題がある。
【0012】
既存のエストロゲン代替剤としては、天然及び合成製品があるが、例えば、動物性天然製品である馬の尿から製造されたプレマリンは、臨床的実験で、エストラジオールとエストロンの濃度を月経期程度に上昇させることが確認された(Stumpf PG. Pharmacokinetics of estrogen. Obstet Gynecol 75(suppl):9S-14S(1990))。しかし、これは、成分の由来が馬の尿であることから嫌悪感を与えるという問題がある。
【0013】
また、植物性天然製品として、例えば、メキシコヤムは、エステル化エストロゲン(主に、エストロン75%〜85%及びエクイライン(equiline)6%〜15%が主成分であるエストロゲンナトリウム塩混合物)を合成するに使われるステロイド前駆体を含有する(例えば、エストラタブ(Estratab、Menest))。また、大豆、ナツメヤシ、石榴などのような植物は、非ステロイド性植物化合物であるフィトエストロゲンを含有する。このような植物から誘導された天然エストロゲンは、動筋(agonist)及び/または拮抗筋(antagonist)の役割をする(Barrett J. Phytoestrogens:friends or foes? Environ Health Perspect 104:478-482(1996))。
【0014】
また、化学的に変更されたものとしては、17β−エストラジオール、エストロン及びエストロゲンサルフェートなどがある。このような合成エストロゲンは、経口用避妊薬として広く使用されるが、ホルモン代替療法としてはほとんど使用されていない。
【0015】
要するに、エストロゲンは、年を取るにつれて分泌量が少なくなり、その分泌パターンの変化は老化の趨勢と直接的な相関性を有して、ホルモン代替剤の服用を通じて全般的な閉経期症状に対する対処が可能であるが、既存のホルモン代替剤は、副作用が酷いという問題がある。
【0016】
本明細書全体に掛けて多数の特許文献及び論文が参照されその引用が表されている。引用された特許文献及び論文の開示内容は、その全体として本明細書に参照に挿入され、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明者らは、従来のホルモン代替療法に使用されるエストロゲン代替剤の問題点を改善するために鋭意研究した結果、天然材料である桔梗抽出物及び白何首烏抽出物から選ばれた一つ以上及び/または続断抽出物を含む組成物が動物の体内でエストロゲン分泌を促進することにより、血中エストロゲン濃度を増加させて、これにより女性生殖器組織細胞の再生及び増殖を誘発することを見出し、本発明を完成した。
【0018】
従って、本発明の目的は、エストロゲン分泌促進用組成物を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的及び利点は、下記の実施例、特許請求の範囲及び図面により明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一様態によると、本発明は、桔梗抽出物及び白何首烏抽出物から選ばれる一つ以上を有効成分として含むエストロゲン分泌促進用組成物を提供する。
【0021】
本発明において、天然材料として利用される桔梗(Platycodon grandiflorum)は、キキョウ科(Campanulaceae)に属する多年生草本の桔梗の根であって、主成分は、プラチコジオン(Platicodion)−A、C、D1及びD2、プラチコジゲニン(Platicodigenin)、ポリガラクシン(Polygalacin)−D1及びD2など、10余種のサポニン配糖体とプラチコジンであり、その他にもベツリン(Betulin)、イヌチン(Inutin)、フィトステロール( Phytosterol)などの成分を含有しており、去痰、鎮咳、抗炎症、解熱作動などをすると知られている。
【0022】
また、本発明において、天然材料として利用される白何首烏(Cynanchum wilfordii)は、タデ科(Polygonaceae)に属する多年生草本であって、高さ1〜3mに達する肥厚な塊根である。白何首烏の主成分は、シナンコトキシン、フィトトコトキシンなどであり、強壮及び強精剤として使用される。
【0023】
本発明者らは、多様な天然材料を利用してエストロゲンの分泌を促進し、エストロゲンの血中濃度を増加させる物質をスクリーニングした結果、桔梗または白何首烏由来の抽出物が上述の活性を示すことを確認した。
【0024】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、有効成分として続断由来の抽出物をさらに含む。
【0025】
本発明において、天然材料として利用される続断(Phlomis umbrosa)は、シソ科(Labiatae)に属する多年生草本であって、その高さは70〜150cmであり五つくらいの肥大な塊根を有する。葉は食用に利用して、根及び根幹は薬用に利用する。本発明の続断抽出物は、卵巣を保護しエストロゲンの分泌を助ける成分である(参照:大韓民国公開特許第1998−61480号)。
【0026】
また、本発明者らは、桔梗、白何首烏及び続断抽出物を全部含む組成物が相乗的(synergic)作用をして、エストロゲン分泌促進効果がさらに増進されることを見出した。
【0027】
本発明において、有効成分として使用される桔梗抽出物、白何首烏抽出物または続断抽出物は、従来のエストロゲン代替剤に比べ、癌発生のような副作用をほとんど生じることなく、優れたエストロゲン分泌促進効果を奏する。
【0028】
本発明で利用される白何首烏抽出物または続断抽出物は、白何首烏または続断の多様な器官、組織(例えば、根、葉、花、幹、果実及び種子など)などを利用して得られ、最も好ましくは、白何首烏また続断の根から得られた抽出物である。
【0029】
前記桔梗抽出物、白何首烏抽出物または続断抽出物は、多様な抽出溶媒、例えば、(a)水、(b)炭素数1〜4の無水または含水低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、(c)前記低級アルコールと水との混合溶媒、(d)アセトン、(e)エチルアセテート、(f)クロロホルム、(g)1,3−ブチレングリコール、(h)ブチルアセテートを抽出溶媒として、桔梗、白何首烏または続断から得られる。最も好ましくは、本発明の抽出物は、水を抽出溶媒として得られたものである。一方、本発明の抽出物は、前記した抽出溶媒のみならず、他の抽出溶媒を利用しても実質的に同様な効果を奏する抽出物が得られるということは当業者にとって自明なことである。
【0030】
また、本発明の抽出物は、上述の抽出溶媒による抽出物だけではなく、通常的な精製過程を経た抽出物も含む。例えば、一定の分子量カットオフ値を有する限外濾過膜を利用した分離、多様なクロマトグラフィー(大きさ、電荷、疎水性または親和性による分離のために製作されたもの)による分離など、追加的に実施された多様な精製方法により得られた活性分画も本発明の抽出物に含まれる。より好ましくは、本発明の抽出物は、低分子量の限外濾過膜を利用して得られた活性分画であって、さらに好ましくは、桔梗、白何首烏または続断を熱水処理した後、熱水抽出液を、分子量カットオフが50,000〜100,000である限外濾過膜、最も好ましくは、分子量カットオフが100,000である限外濾過膜により濾過し得られた活性分画である。本発明の抽出物は、減圧蒸留及び凍結乾燥または噴霧乾燥などのような追加的な過程により粉末状に製造できる。
【0031】
本発明の組成物は、エストロゲン分泌促進効果により、多様な女性生殖器、例えば、卵巣、子宮、膣及び輸卵管などの組織細胞を再生または増殖させることにより、女性生殖器の退化を防止することができる。
【0032】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物において、有効成分としての桔梗抽出物、白何首烏抽出物または続断抽出物は、組成物の総重量に対し20〜80重量%、より好ましくは、25〜30重量%、最も好ましくは27重量%である。また、前記抽出物の中から選ばれる二つ以上を含む組成物においても、前記抽出物の含量は、組成物の総重量に対し20〜80重量%である。
【0033】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の組成物は、カルシウム、アルギニン及びリシンから選ばれる一つ以上をさらに含むことができる。カルシウムは、閉経期女性において骨を固くすることにより、骨多孔症を予防するに副次的役割を果たして、筋肉運動に必須的であり、神経伝達機能、血液凝固、ホルモン及び酵素の活性化、消炎作用及び不眠症緩和などの役割をする。また、アルギニンは、成長ホルモンの合成と分解に必要な必須アミノ酸であって、筋肉を生成し、脂肪質を取り除いて、細胞の再生及び免疫増強に役に立ち、リシンは、成長発育によく、カルシウムの吸収を助けて、コラーゲン、抗体及び酵素の生成を助ける物質であって、本発明の植物抽出物と共に相乗作用をする。
【0034】
一方、本発明の桔梗抽出物及び白何首烏抽出物から選ばれた一つ以上及び/または続断抽出物を含む組成物は、インヴィヴォ(in vivo)水準でエストロゲン分泌促進及び女性生殖器組織細胞の再生または増殖効果を示す。
【0035】
本発明の他の様態によると、本発明は、桔梗抽出物及び白何首烏抽出物の中から選ばれた一つ以上の薬剤学的有効量;及び薬剤学的に許容される担体を含む、閉経期疾患の治療または予防用薬剤学的組成物を提供する。
【0036】
また、本発明の薬剤学的組成物は、有効成分として続断抽出物の薬剤学的有効量をさらに含んでもよい。
【0037】
桔梗抽出物及び白何首烏抽出物から選ばれた一つ以上及び/または続断抽出物の薬剤学的有効量を含む本発明の薬剤学的組成物は、閉経期以後に進行される各種閉経期疾患の治療または予防に有用である。前記閉経期疾患は、血管運動乱調による腎熱、顔面紅潮、夜間の発汗などの更年期疾患と、骨多孔症、泌尿生殖器系疾患、心血関係疾患、痴呆、歯牙損失及び皮膚コラーゲン損失などを含む。
【0038】
一方、本発明の桔梗抽出物及び白何首烏抽出物から選ばれた一つ以上及び/または続断抽出物を含む薬剤学的組成物は、インヴィヴォ(in vivo)水準でエストロゲン分泌促進効果を示すため、効果的且つ根本的な治療に有用である。
【0039】
本発明の薬剤学的組成物は、従来のホルモン代替療法が有している副作用、例えば、子宮癌、乳癌などの癌発生の危険を著しく減らすことができる。
【0040】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる、薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に利用されるものであって、ラクトース、アミロース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、燐酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、珪酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これらに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含有してもよい。
【0041】
本発明の薬剤学的組成物は、経口または非経口で投与できて、非経口投与の場合は、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、経鼻噴射、舌下噴射などにより投与でき、好ましくは、経口投与または舌下噴射により投与することであり、最も好ましくは、経口投与することである。
【0042】
本発明の薬剤学的組成物の好適な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性などのような要因により様々であり、普通の熟練した医者ならば所望の治療または予防に効果的な投与量を容易に決定、処方することができる。本発明の好ましい具現例によると、本発明の薬剤学的組成物を経口投与する場合、好適な投与量は、成人を基準に、桔梗抽出物、白何首烏抽出物または続断抽出物を0.1〜5g含む組成物を一日一回投与することであり、最も好ましくは、前記抽出物を2g含む組成物を一日一回投与することである。
【0043】
本発明の薬剤学的組成物は、当該発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/または賦形剤を利用し製剤化することにより単位容量形態に製造されるか、または多容量容器内に入れて製造することができる。この際、剤形は、オイルまたは水生媒質中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤またはカプセル剤の形態であってもよく、分散剤または安定化剤をさらに含んでもよい。
【0044】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、桔梗抽出物及び白何首烏抽出物から選ばれた一つ以上を有効成分として含む、エストロゲン分泌促進用健康食品組成物を提供する。
【0045】
また、本発明の健康食品組成物は、有効成分として続断抽出物をさらに含んでもよい。
【0046】
本発明の健康食品組成物は、食品製造時通常的に添加される成分を含むことができる。例えば、ドリンク剤に製造される場合は、本発明の桔梗、白何首烏または続断抽出物以外に、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、りんご酸、果汁、杜仲抽出液、棗抽出液、甘草抽出液などをさらに含めることができる。本発明の食品は、エストロゲン分泌不足による閉経期疾患の予防及び治療に非常に有用である。
【0047】
本発明の組成物は、エストロゲンの分泌を効果的に促進して、生殖器組織細胞を効果的に再生または増殖させるだけではなく、従来から薬剤として使用されている天然物の桔梗及び白何首烏から選ばれた一つ以上及び/または続断抽出物を有効成分として含むため、人体に対する副作用が化学的合成医薬より極めて少ない。
【0048】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【0049】
実施例材料
本発明の桔梗、白何首烏及び続断は、キョンドン市場(ソウル、大韓民国)から購入し、抽出物の製造に使用した。
【0050】
実施例1:桔梗抽出物を含む組成物の製造
実施例1−1:限外濾過膜を利用した桔梗の低分子量抽出物の製造
乾燥された桔梗50gを水1.5lに入れて、常温以上の温度で約2時間抽出し、水溶性抽出液を得た。前記抽出液を濃縮し、嵩を最終500mlまで減らした。この溶液を遠心分離機で10分間3,000rpmで遠心分離した後、上清液を攪拌セル(stirred cell)装置(アミコン(Amicon)社、アメリカ)を利用し3気圧の窒素下で分子量カットオフ(MWCO)100,000の限外濾過膜に通過させた。その後、これを乾燥し、表1に示した量の粉末を得た。
【0051】
【表1】

【0052】
実施例1−2:経口投与用組成物の製造
表2に示したような組成により、本発明の桔梗抽出物を含む経口投与用組成物を製造した。
【0053】
【表2】

【0054】
実施例2:白何首烏抽出物を含む経口投与用組成物の製造
白何首烏の根部位を使用し、前記実施例1−1及び1−2と同様な方法により白何首烏抽出物を製造し、これを含む経口投与用組成物を製造した。前記白何首烏抽出物の量は、表3に示した通りである。また、本発明の経口投与用組成物の組成は、表4に示した。
【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
実施例3:桔梗、白何首烏及び続断抽出物を含む経口投与用組成物の製造
桔梗50g、白何首烏の根部位25g及び続断の根部位25gを使用し、前記実施例1−1及び1−2と同様な方法により桔梗、白何首烏及び続断を全部含む抽出物を製造し、これを含む経口投与用組成物を製造した。前記抽出物の量は、表5に示した通りである。また、本発明の経口投与用組成物の組成は、表6に示した。
【0058】
【表5】

【0059】
【表6】

【0060】
実施例4:ラットを利用した本発明の組成物の効果実験
本発明の組成物の効果を検証するために、雌ラットを利用し、前記実施例1、実施例2及び実施例3から製造された本発明の組成物を経口投与して、時間経過によるエストロゲン血中濃度及び生殖器の重量を測定して、解剖学的及び病理組織学的検査を行った。
【0061】
実施例4−1:組成物の経口投与
平均体重300gの51週齢雌ラット70匹の左側卵巣を部分摘出しエストロゲン分泌量が少なくなるように誘導して、群別10匹ずつ、体重が均等に分配されるように順位化した体重を利用し無作為に七つの群(G1、G2、G3、G4、G5、G6及びG7)に分けて、G2群には、実施例1−2の組成物100mg/kgを、G3群には、実施例1−2の組成物1,000mg/kgを、G4群には、実施例2の組成物100mg/kgを、G5群には、実施例2の組成物1,000mg/kgを、G6群には、実施例3の組成物100mg/kgを、G7群には、実施例3の組成物1,000mg/kgを、それぞれ注射用蒸留水に溶解及び懸濁して10mg/kgずつ経口投与した。また、G1群は、対照群として、注射用蒸留水10mg/kgを経口投与した。投与方法は、ラットを固定し、金属製経口投与用ゾンデを利用し胃内に直接注入した。投与開始時期は、卵巣摘出後10日後であり、投与回数は、一回/日、7日/週にして約5週間投与した。
【0062】
実施例4−2:血清エストロゲン濃度測定
投与開始から8週後、各群のラットを剖検する前に一晩絶食した後、後大静脈から採血し、これを室温で15分間静置し凝固させた後、3,000rpmで10分間遠心分離して血清を分離した。分離された血清は、−70°Cに保管してから1470 wizard γ counter(Perkin Elmer Life Science)を使用し検査した。ラットの血中エストロゲンの定量は、EIA(enzyme immunoassay)キット(DSL、アメリカ)を利用して行った。前記実験の結果を表7に示した。
【0063】
【表7】

【0064】
表7に示されたように、本発明の桔梗抽出物を含む実施例1の組成物を投与した群及び白何首烏抽出物を含む実施例2の組成物を投与した群では、血清エストロゲン濃度が容量相関性を有して増加した。また、桔梗、白何首烏及び続断抽出物を全部含む実施例3の組成物を投与した群は、他の実施例の組成物を投与した群に比べ、血清エストロゲン濃度がさらに高く示された。従って、本発明の桔梗抽出物を含む組成物及び白何首烏抽出物を含む組成物は、雌ラットにおいて、エストロゲン分泌を促進し血中エストロゲンの濃度を増加させて、また、桔梗、白何首烏及び続断抽出物を全部含む組成物は、エストロゲンの分泌促進において相乗的な効果を奏することが分かる。
【0065】
実施例4−3:卵巣及び子宮の重量測定
投与開始から8週後、各群のラットを剖検して、電子天平(BP310S、sartorius)を利用し、左側卵巣及び子宮の重量を測定した。実験の結果は表8に示されている。
【0066】
【表8】

【0067】
表8に示されたように、本発明の桔梗抽出物を含む実施例1の組成物を投与した群及び白何首烏抽出物を含む実施例2の組成物を投与した群では、卵巣及び子宮の絶対重量及び体重に対する相対重量が容量相関性を有して増加した。また、桔梗、白何首烏及び続断抽出物を全部含む実施例3の組成物を投与した群は、他の実施例の組成物を投与した群に比べ、卵巣及び子宮の絶対重量及び体重に対する相対重量の増加がさらに大きく表れた。従って、本発明の桔梗抽出物を含む組成物及び白何首烏抽出物を含む組成物は、雌ラットにおいて、エストロゲンの分泌を促進し生殖器組織細胞を増殖及び再生させて、桔梗、白何首烏及び続断抽出物を全部含む組成物は、生殖器組織細胞増殖において相乗的な効果を奏することが分かる。
【0068】
実施例4−4:解剖学的及び病理組織学的検査
前記実施例3の組成物を投与した群及び対照群を対象に剖検して、目視で解剖学的特徴を調べた。その結果、子宮の膨大が、対照群のG1群では2匹、100mg/kg投与群のG6群では3匹及び1,000mg/kg投与群のG7群では5匹と観察され、容量相関性を有して増加した。また、卵巣の黒色の嚢胞が、対照群では観察されなかったが、G6群では2匹、G7群では1匹が観察された。
【0069】
また、前記投与群のラットを10%中性ホルマリン溶液に固定した後これを削整(trim)して、パラフィン包埋ブロックを作製し薄切して、HE染色を実施し、光学顕微鏡下で病理組織学的な検査を行った。その結果を表9に示した。
【0070】
【表9】

【0071】
表9に示されたように、病理組織学的検査において、本発明の組成物を投与した群では、子宮の内腔拡張とその他の増殖性変化が、対照群に比べ、比較的高い頻度で観察された。従って、本発明の組成物は、エストロゲン分泌促進を通じて生殖器組織細胞の増殖性変化に有効な影響を及ぼすことが分かる。
【0072】
以上、本発明の好ましい具現例を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な技術はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。
【発明の効果】
【0073】
以上詳細に説明したように、本発明は、桔梗抽出物及び白何首烏抽出物から選ばれた一つ以上及び/または続断抽出物を含むエストロゲン代替用組成物、薬剤学的組成物及び健康食品組成物を提供する。本発明の組成物は、天然の抽出物であって、従来のホルモン代替療法に使用されるエストロゲン代替剤に比べ、癌発生のような副作用をほとんど生じることなく、優れたエストロゲン代替効果及び女性生殖器組織細胞の再生及び増殖効果を奏し、エストロゲンの分泌の足りない閉経期以後の女性の様々な症状に適用することができると共に、不純物がほとんどなく有効成分の含量が高い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の組成物を投与したラットの群別の平均血清エストロゲン濃度を示すグラフである。
【図2a】本発明の組成物を投与したラットの群別の平均卵巣及び子宮の絶対重量を示すグラフである。
【図2b】本発明の組成物を投与したラットの群別の平均卵巣及び子宮の相対重量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
桔梗(Platycodi Radix)抽出物及び白何首烏(Cynanchum wilfordii)抽出物からなる群から選択される一つまたはそれ以上を有効成分として含む閉経期疾患の治療または予防のための組成物の、食品または機能性食品に対する添加剤としての使用。
【請求項2】
前記組成物は、続断(Phlomis umbrosa)抽出物を有効成分としてさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記抽出物の含量は、前記組成物の総重量に対し20〜80重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記組成物は、カルシウム、アルギニン及びリシンからなる群から選択される一つまたはそれ以上の成分をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記抽出物は、桔梗または白何首烏を熱水処理した後、熱水抽出液を分子量カットオフ50,000〜100,000の限外濾過膜により濾過し得られた活性分画であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記閉経期疾患は、血管運動不安定による顔面紅潮、夜間の発汗、膣乾燥、骨多孔症、または泌尿生殖器系異常であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公開番号】特開2011−244819(P2011−244819A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127661(P2011−127661)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【分割の表示】特願2004−525869(P2004−525869)の分割
【原出願日】平成15年8月6日(2003.8.6)
【出願人】(505028303)ナチュラルエンド テック カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】