説明

エゼクタ

【課題】 クリーンルーム内での設置条件を緩和し得るエゼクタを提供する。
【解決手段】 ノズル7からディフューザー8に加圧空気を吐出することにより、負圧を生成するエゼクタにおいて、中空糸膜を濾過材23とした排気クリーナー21を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧縮流体の供給に基づいて負圧を生成するエゼクタに関するものであり、特にクリーンルーム内で使用するエゼクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エゼクタは、供給ポートに供給された圧縮流体を吸気ポートから吸引した外気とともに排気ポートから排出することにより、吸気ポートに負圧を発生させるものである。
上記のようなエゼクタは、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開2003−194000号公報
【特許文献2】特開2003−35300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようなエゼクタを、クリーンルーム内で使用する場合には、排気ポートから排出される排気をクリーンルーム内に排出することができないため、配管を介してクリーンルーム外へ排出する必要がある。
【0004】
従って、配管を設置するためのスペースが必要となるとともに、配管を接続するための排気ポートの開口方向に制約が生じるため、エゼクタの設置作業が煩雑となるという問題点がある。
【0005】
この発明の目的は、クリーンルーム内での設置条件を緩和し得るエゼクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、中空糸膜を濾過材とした排気クリーナーを備えたエゼクタにより達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クリーンルーム内での設置条件を緩和し得るエゼクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を具体化したエゼクタの一実施の形態を図面に従って説明する。図1に示すエゼクタは、ボディ1の上面にカバー2が取着され、そのカバー2には加圧ポート3が設けられている。
【0009】
前記カバー2の上面には電磁弁4が取着され、その電磁弁4により前記加圧ポート3への加圧空気の供給が制御される。前記ボディ1の側面には、加圧空気が供給される供給ポート5と、吸気ポート6がそれぞれ設けられている。前記供給ポート5に供給される加圧空気は、カバー2に設けられる連通孔(図示しない)を介して前記電磁弁4に供給され、電磁弁4の開閉動作に基づいて前記加圧ポート3に供給される。
【0010】
前記吸気ポート6は、フィルター、レギュレータ等の他の空気圧機器を介して吸着搬送装置等に接続される。
前記ボディ1の上面には前記加圧ポート3の下方位置にノズル7が取着され、そのノズル7の下方に形成された空間は、前記吸気ポート6に連通されるとともに下方へ開口されている。
【0011】
前記ノズル7の開口部の下方には、第一のディフューザー8が配設され、その第一のディフューザー8の下方に第二のディフューザー9が配設されている。前記第一及び第二のディフューザー8,9は、前記ボディ1の下部に嵌着される円筒状のチューブ10により、各周縁部がボディ1に固定される。
【0012】
そして、前記第一のディフューザー8は前記ボディ1内の空間を上下に区画し、第二のディフューザー9はボディ1とチューブ10内の空間とを区画している。
前記第一のディフューザー8はほぼ円錐状に形成され、その中央に第一のスロート部11が形成されている。前記第一のスロート部11は一定の径で延設される。そして、前記ノズル7から第一のスロート部11に加圧空気が噴出されると、第一のディフューザー8の上方の空間内の空気が第一のスロート部11内に巻き込まれる。この動作により、第一のディフューザー8の上方の空間に負圧が発生し、第一の真空室12が生成される。
【0013】
前記第一のスロート部11の下方において、前記第二のディフューザー9には前記チューブ10内に突出する第二のスロート部13が形成されている。そして、第一のスロート部11から第二のスロート部13に加圧空気が噴出されると、第二のディフューザー9の上方の空間内の空気が第二のスロート部13内に巻き込まれる。この動作により、第二のディフューザー9の上方の空間に負圧が発生し、第二の真空室14が生成される。
【0014】
前記第一のディフューザー8の第一のスロート部11の周囲には、前記第一及び第二の真空室12,14を連通する複数の連通孔15が形成され、前記第一のスロート部11の周囲には、その連通孔15を第二の真空室14側から覆うゴム板状のチェックバルブ16が取着されている。
【0015】
前記チェックバルブ16の下方において、前記第一のスロート部11の外周にはバルブストッパ17が嵌着され、前記チェックバルブ16を位置決めしている。このような構成により、第二の真空室14の気圧が第一の真空室12の気圧より低くなったとき、チェックバルブ16が開いて、第一及び第二の真空室12,14が等圧となるようになっている。
【0016】
前記第二のスロート部13の下端部は、加圧空気を効率よく排出するために、その内径が所定の角度で徐々に拡径されている。
前記チューブ10の下端にはボトムカバー18が嵌着され、そのボトムカバー18の中央部には排気ポート19が形成されている。そして、前記第二のディフューザー9から排出される空気が排気ポート19から排出される。前記第二のディフューザー9の先端部と排気ポート19との間には、筒状の消音器20が設けられる。
【0017】
前記排気ポート19にはクリーンルーム用排気クリーナー21が取着されている。そのクリーンルーム用排気クリーナー21は、ケース22とそのケース22内に充填される濾過材23とで構成される。
【0018】
前記ケース22は、先端を開口した円筒状の収容部24と、前記排気ポート19に取着可能に形成された基端部25とが一体に形成され、基端部25に形成された連通孔26により前記収容部24が前記排気ポート19に連通している。
【0019】
前記収容部24内には、ポリプロピレン多孔質中空糸膜で構成される濾過材23が充填されている。すなわち、前記濾過材23は所定長さに切断された多数本の糸状の中空糸膜を二つ折りにして束ねられ、その切断端部側にウレタン樹脂が含浸されることにより、各中空糸膜間が密封された状態で固められた固形部27が形成されている。そして、固形部27側をケース22の開口端側として、同ケース22内に嵌着されている。
【0020】
各中空糸膜の空芯部は、ケース22の開口端に開口されているため、排気ポート19に排出された空気は、各中空糸膜をその外表面側から空芯部に向かって通過し、空芯部からケース22の開口端に排出される。このようにして、空気が中空糸膜を通過する際に、パーティクル等が濾過される。
【0021】
次に、上記のように構成されたエゼクタの作用を説明する。加圧ポート3に加圧空気が供給された状態で電磁弁4が開路されると、その加圧空気がノズル7から高速の空気流が噴出される。
【0022】
ノズル7から吐出される空気は、第一のスロート部11に流入し、このときその空気流により第一の真空室12内の空気が第一のスロート部11に巻き込まれ、第一の真空室12内に負圧が生成される。そして、その負圧により、吸気ポート6から外気が吸入される。
【0023】
第一のスロート部11から吐出される空気は、第二のスロート部13に流入する。すると、第二の真空室14内の空気が第二のスロート部13に巻き込まれ、第二の真空室14内に負圧が生成される。そして、第二の真空室14内の気圧が第一の真空室12内の気圧より低くなると、チェックバルブ16が開いて、第一の真空室12から第二の真空室14に空気が引き込まれる。
【0024】
第二のスロート部13に流入した空気は、消音器20を経て、クリーンルーム用排気クリーナー21から排出される。
このような動作により、第一のディフューザー8により第一の真空室12内に負圧が生成され、その負圧が吸気ポート6に供給される。また、第二のディフューザー9により、第一の真空室12からチェックバルブ16を経て第二の真空室14に空気が引き込まれ、吸気ポート6から吸入する外気の吸入容量が確保される。
【0025】
上記のように構成されたエゼクタでは、次に示す作用効果を得ることができる。
(1)加圧ポート3に加圧空気を供給することにより、吸気ポート6に負圧を発生させ、吸気ポート6に外気を吸入することができる。
(2)排気ポート19から排出される排気をクリーンルーム用排気クリーナー21で濾過することができる。従って、排気をクリーンルーム内に排出することができる。
(3)排気をクリーンルーム内に排出することができるので、エゼクタに排気用の配管を接続する必要がない。従って、クリーンルーム内でのエゼクタの設置位置の自由度を向上させることができる。
(4)クリーンルーム用排気クリーナー21により、排気音をさらに消音することができる。
(5)排気ポート19にクリーンルーム用排気クリーナー21を取着すればよいので、きわめて簡単に構成することができる。
(第二の実施の形態)
図2は、第二の実施の形態を示す。この実施の形態のエゼクタの構成は、前記第一の実施の形態とほぼ同様であり、同一構成部分は同一符号を付してその説明を省略する。
【0026】
チューブ10の下端部すなわち排気側端部には、第一の実施の形態のボトムカバー18を取着することなく、濾過材28がクリーンルーム用排気クリーナーとして充填されている。この濾過材28は、前記第一の実施の形態と同様な構成であり、固形部29がチューブ10の開口端側に位置するように嵌着されている。
【0027】
このような構成により、エゼクタの排気は濾過材28で濾過されて排出されるので、第一の実施の形態と同様な作用効果を得ることができる。
(第三の実施の形態)
図3は、第三の実施の形態を示す。この実施の形態のエゼクタの構成は、前記第一の実施の形態とほぼ同様であり、同一構成部分は同一符号を付してその説明を省略する。
【0028】
チューブ10の下端部には筒状のクリーナーケース30の一端が取着され、そのクリーナーケース30内には濾過材31が充填されて、クリーンルーム用排気クリーナーが構成される。前記クリーナーケース30の側面には排気孔32が開口されている。
【0029】
前記クリーナーケース30の他端にはボトムカバー33が取着され、そのボトムカバー33には排水孔34が形成され、その排水孔34に図示しない配水管が接続される。
前記濾過材31は、直線状の中空糸膜を多数本束ね、その両端部に前記ウレタン樹脂が含浸されて固形部35a,35bが形成され、各中空糸膜の端部に空芯が開口されている。そして、各中空糸膜は疎水性を備えた膜で構成され、水分を透過させないようになっている。
【0030】
このように構成されたエゼクタでは、第二のディフューザー9から排出される排気は、濾過材31の中空糸膜を透過して濾過され、排気孔32から排出される。また、排気内に含まれる水分は、中空糸膜を透過することなく、各中空糸膜の空芯内を通過して排水孔34から排出される。
【0031】
このように構成されたエゼクタでは、前記第一及び第二のエゼクタと同様な作用効果を得ることができるとともに、排気中に含まれる水分を除去することができる。
上記実施の形態は、以下の態様で実施してもよい。
・濾過材は、ポリプロピレン以外の多孔質中空糸膜で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第一の実施の形態を示す断面図である。
【図2】第二の実施の形態を示す断面図である。
【図3】第三の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ボディ
5 供給ポート
6 吸気ポート
7 ノズル
8,9 ディフューザー
10 チューブ
19 排気ポート
21 排気クリーナー
23,28,31 濾過材
27 固形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルからディフューザーに加圧空気を吐出することにより、負圧を生成するエゼクタにおいて、
中空糸膜を濾過材とした排気クリーナーを備えたことを特徴とするエゼクタ。
【請求項2】
前記排気クリーナーは、ケース内に前記濾過材を充填し、前記ケースを排気ポートに取着したことを特徴とする請求項1記載のエゼクタ。
【請求項3】
前記排気クリーナーは、前記エゼクタのチューブ内の排気側端部に前記濾過材を充填して構成したことを特徴とする請求項1記載のエゼクタ。
【請求項4】
前記濾過材は、多数本の糸状の中空糸膜を二つ折りにして束ね、該中空糸膜の切断端部側を樹脂で固め、排気を該中空糸膜の表面から空芯部に透過させることを特徴とする請求項2又は3記載のエゼクタ。
【請求項5】
前記濾過材は、疎水性を備えた多数本の糸状の中空糸膜を直線状として束ね、該中空糸膜の両端部を樹脂で固め、排気を該中空糸膜の空芯部から表面に透過させ、排気中の水分は前記空芯部内を通過させることを特徴とする請求項3記載のエゼクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−132474(P2006−132474A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−324033(P2004−324033)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】