説明

エタノール酸化用金触媒およびそれを用いたアセトアルデヒド、酢酸の製造方法

【課題】エタノールを選択的に酸化する触媒およびそれを用いたアセトアルデヒド、酢酸の製造方法並びに二酸化炭素と水に分解する方法を提供する。
【解決手段】酸素分子の存在下に、金微粒子を分散・固定した担体の卑金属酸化物として、La23、MgO、BaO、MoO3、WO3、Bi23、SrO、Y23、CuOを用いるアセトアルデヒドの選択的合成触媒、ZnO、TiO2、SnO2、SiO2、Al23、In23、ZrO2、V25を用いる酢酸とアセトアルデヒドの選択的合成触媒、またはMnO2、CeO2、CuO、Co34、NiO、Fe23を用いる完全酸化に有効な触媒を使用するエタノールの酸化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金触媒を用いてエタノールからアセトアルデヒドや酢酸あるいはアセトアルデヒドを選択的に製造する方法およびエタノールを二酸化炭素と水に分解する方法並びに、これらに用いられるエタノール酸化用金触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
アセトアルデヒドおよび酢酸は工業用原料として重要な化学薬品である。現在、アセトアルデヒドおよび酢酸は、工業的には石油から得られる不飽和炭化水素であるエチレンや、天然ガスから製造されるメタノールを原料として用いて製造されている。例えば、アセトアルデヒドの製造においては、PdCl2−CuCl2触媒によりエチレンを酸化してアセトアルデヒドを製造するワッカー法が主として採用されている。しかし、この方法は触媒の酸性が強いので、反応容器の材質や腐食に課題がある。一方、酢酸の現行製造プロセスとしては、Pd/ヘテロポリ酸触媒を用いエチレンから製造する方法と、Rh触媒を用いメタノールから製造する方法の2種類の方法があるが、これらの方法においては3MPaという高い酸素圧を必要とする。
【0003】
一方、21世紀に入って、地球温暖化を防止する観点から、ガソリンなどの燃料を始めとして、化学産業、ガソリンなどの燃料などあらゆる産業において化石資源から再生可能資源へと原料の転換が進められつつある。アセトアルデヒドや酢酸を製造するプロセスにおいても、石油などの化石資源から得られるエチレンのような不飽和炭化水素などから、エタノールなどのバイオマス由来の化合物に原料がシフトして行く技術潮流が見られる。このようなプロセスが実現すれば、石油資源に依らず、バイオマスを原料としてアセトアルデヒドと酢酸を製造することができるので、持続可能な化学プロセスの開拓を図ることができ、その工業的価値は大きい。
【0004】
さらに、エタノールを二酸化炭素と水まで完全酸化する技術は、居住空間や工場等の空気浄化やエタノールを燃料とする燃料電池にとって非常に重要であり、これに適した触媒の開発も必要とされている。
【0005】
これまで、エタノールを金触媒を用いて酸化する方法として、水溶液相でエタノールを酸素酸化する方法が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、水溶液相での製造は生産効率がそれほど高いものではないことから、工業的に行うにはさらに反応時間の短縮、反応効率の改善により、高速流量においても高収量でアセトアルデヒドあるいは酢酸を製造することが必要とされる。すなわち、上記のエチレンあるいはメタノールを用いる現行プロセスに置き換わりうる経済性を有する、エタノールを原料としてのアセトアルデヒドあるいは酢酸の製造プロセスを開発するには、液相による酸化ではなく、生産性の高い気相(気相反応においては反応ガス全体の触媒との接触時間は1秒前後であるのに対し、液相では分単位以上である)でのエタノール酸化反応を行うことが必要である。またエタノールの除去や燃料電池に応用するためには、できるだけ低温において気相でエタノールを効率よく分解できることが重要となってくる。
【0006】
しかし、気相でのエタノールの酸素酸化については、これまで報告はあまりみられない。そのような数少ない報告例の一つとして、Au/CeO2によるエタノール気相酸化が挙げられる(非特許文献2)。この報告においては、アセトアルデヒドの生成は確認されているものの、反応条件として選定された473K〜1073Kの温度においては、酢酸の生成は確認されていないし、エタノールの転化率を上げるべく反応温度を高温とすると、そのほとんどは炭酸ガスや一酸化炭素、メタンなどに分解されてしまう。また、他の報告例(非特許文献3)においては、V25/TiO2(anatase)による気相エタノール酸化が挙げられる。この反応においては、原料ガスの供給量を少なくすると、酢酸が選択的に生成されることが記載されているものの、反応収量が少ないという問題がある。
【0007】
一方、本発明者は触媒としての活性が極めて乏しいとされていた金でも、直径10nm以下の半球状ナノ粒子として種々の金属酸化物担体上に分散・固定化することにより、低温CO酸化、プロピレンの気相一段エポキシ化、低温水性ガスシフト反応、酸素と水素からの直接過酸化水素合成など多くの反応に対して、他の貴金属より優れた触媒特性を発現することを見出している(例えば、特許文献1、非特許文献4参照)。また、本発明者らは、金の粒子径が2nm以下、原子数で300個以内のクラスターになると、触媒特性がさらに激変する場合があることも見出している(例えば、非特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平5−49338号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】C.H.Christensen et al.,Angew.Chem.Int.Ed.45(2006),4648
【非特許文献2】P.−Y.Sheng,G.A.Bowmaker,H.Idriss,Appl.Catal.A261(2004)171−181
【非特許文献3】B.Jorgensen,S.B.Kristensen,A.J.Kunov−Kruse,R.Fehrmann,C.H.Christensen,A.Riisager,Top.Catal.52(2009)253−257
【非特許文献4】M.Haruta,Chem.Record,3(2),75−87(2003)
【非特許文献5】J.Huang,T.Akita,J.Faye,T.Fujitani,T.Takei,M.Haruta,Angew.Chem.Int.Ed,48(2009)7862−7866
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような状況下になされたもので、本発明の目的は、エタノールを酸素により気相で反応させることにより、高収量で選択的にアセトアルデヒドあるいはアセトアルデヒドと酢酸を製造する方法を提供することである。
【0011】
また、本発明の目的は、エタノールを酸素と気相でかつ低温で反応させることにより、エタノールを二酸化炭素と水に分解する方法を提供することである。
【0012】
さらに、本発明の目的は、これらの方法に適したエタノール酸化用金触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、鋭意研究の結果、触媒として用いられる金ナノ粒子の担体を選択することにより、気相でエタノールからアセトアルデヒドあるいはアセトアルデヒドと酢酸を選択的に得ることができること、さらにエタノールを低温で二酸化炭素と水まで完全酸化できることを見出して、本発明を成したものである。
【0014】
すなわち、本発明は、酸素分子の存在下に、金微粒子を分散・固定した、La23、MoO3、Bi23、SrO、Y2、MgO、BaO、WO3、CuOおよびそれらを1種類以上含む複合酸化物から選ばれた卑金属酸化物を触媒として用いて、エタノールからアセトアルデヒドを気相で選択的に製造する方法に関する。
【0015】
また、本発明は、酸素分子の存在下に、金微粒子を分散・固定した、ZnO、In23、SiO2、Al2、ZrO2、TiO2、SnO2、V25およびそれらを1種類以上含む複合酸化物から選ばれた卑金属酸化物を触媒として用いて、エタノールからアセトアルデヒドと酢酸を気相で選択的に製造する方法に関する。
【0016】
また、本発明は、酸素分子の存在下に、金微粒子を分散・固定した、MnO2、CeO2、CuO、Co34、NiO、Fe23およびそれらを1種類以上含む複合酸化物から選ばれた卑金属酸化物を触媒として用いて、エタノールを二酸化炭素と水にまで完全酸化する方法に関する。
【0017】
また、本発明は、上記エタノールからアセトアルデヒドを気相で選択的に製造する方法に用いられる、金微粒子を分散・固定した、La23、MoO3、Bi23、SrO、Y2、MgO、BaO、WO3、CuOおよびそれらを1種類以上含む複合酸化物から選ばれた卑金属酸化物触媒に関する。
【0018】
また、本発明は、上記エタノールからアセトアルデヒドと酢酸を気相で選択的に製造する方法に用いられる、金微粒子を分散・固定した、ZnO、In23、SiO2、Al2、ZrO2、TiO2、SnO2、V25およびそれらを1種類以上含む複合酸化物から選ばれた卑金属酸化物触媒に関する。
【0019】
また、本発明は、上記エタノールを二酸化炭素と水にまで完全酸化する方法に用いられる、金微粒子を分散・固定した、MnO2、CeO2、CuO、Co34、NiO、Fe23およびそれらを1種類含む以上含む複合酸化物から選ばれた卑金属酸化物触媒に関する。
【0020】
本発明の好ましい態様においては、上記各触媒において、卑金属酸化物担体上に分散・固定される金微粒子は、直径10nm以下の金ナノ粒子または金クラスターである。
【0021】
本発明の別の好適態様によれば、チタンを含む酸化物からなる担体と、前記担体に分散・固定されたV25とを有する、エタノールの気相酸化触媒が提供される。さらに、本発明は、エタノールの気相酸化触媒の存在下で、エタノールを酸素分子により気相分解して、(A)アセトアルデヒド及び/又は酢酸を選択的に製造するか、あるいは、(B)二酸化炭素と水にまで完全酸化する、エタノールの酸化方法も提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、金ナノ粒子を分散・固定した卑金属酸化物担体、あるいは酸化バナジウムを分散・固定したチタン含有酸化物担体の種類を選ぶことによって、エタノールの完全酸化、酢酸とアセトアルデヒドの混合物の選択合成、アセトアルデヒドの選択合成のいずれかが可能であるので、バイオエタノールの有効利用に役立つ。また、本発明の方法は、居住空間や工場等の空気浄化やエタノールを燃料とする燃料電池の開発に重要な役割を果たすことができる。さらに、本発明の触媒は、気相でのアルコール、炭化水素の酸素酸化、空気浄化、燃料電池、化学センサなどの用途への適用も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の方法を実施するための装置およびプロセスを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、気相でエタノールを酸素分子の存在下に酸化してアセトアルデヒドあるいはアセトアルデヒドと酢酸を選択的に製造する方法および気相でエタノールを二酸化炭素と水にまで完全酸化する方法に関するものである。本発明のアセトアルデヒドあるいはアセトアルデヒドと酢酸を選択的に製造する方法は、エチレンまたはメタノールから出発する現行の化学プロセスに比べ、新しい反応となるので、この反応に適した新規な固体触媒の開発が必要不可欠となる。なぜならば、エタノールと酸素との反応を気相で行うと、エタノールの転化率が高いとき(例えば、工業的に必要な10%以上)は二酸化炭素と水までの完全酸化反応が進行し、アセトアルデヒドや酢酸のところで反応を止めることが通常難しいからである。一方、エタノールを酸素分子または空気で酸化して二酸化炭素と水までに完全酸化する触媒は、200℃以下の低温で使えるものについては例が少ないが、空気浄化、燃料電池、化学センサの開発にとって低温でのエタノールの完全分解は有用な技術である。
【0025】
本発明は、気相でエタノールを酸素分子の存在下で酸化して、アセトアルデヒドあるいはアセトアルデヒドと酢酸を選択的に製造する、あるいは二酸化炭素と水にまで完全酸化する際に、金担持触媒の担体として、特定の卑金属酸化物を用いることにより、高効率あるいは高収率、かつ低圧でアセトアルデヒドや酢酸を製造することができる、あるいは従来に比べ低温、低圧でエタノールを二酸化炭素と水にまで完全酸化することを見出したものである。本発明で用いられる金担持触媒の金微粒子としては、金ナノ粒子あるいは金クラスターが挙げられる(なお、以下では、金クラスターを含め「金ナノ粒子」という。)。金ナノ粒子の平均粒子径は、0.8nmから100nm、さらには1nmから10nmであることが好ましく、特に好ましくは2nmから5nmである。一方、卑金属酸化物の平均粒子径は10nmから1,000nmであることが好ましい。上記の金ナノ粒子の担持量としては、卑金属酸化物に対して0.1〜5.0質量%とするのが好ましく、0.5〜2.0質量%とするのがさらに好ましい。
【0026】
また、本発明のエタノール酸化触媒に用いられる卑金属酸化物担体は、前記の通り各方法により異なるものが使用され、大きく3つのグループに分けられる。まず第一のグループは、担体となる卑金属酸化物が、MnO2、CeO2、CuO、Co34、NiO、Fe23およびそれらを1種類含む以上含む複合酸化物からなり、エタノールの完全酸化に有効なものである。すなわち、第一のグループの担体は、卑金属酸化物が、半導体性(主としてp型)を持つ3d遷移金属酸化物とCeO2のように酸素の吸放出能を有する金属酸化物である場合である。第二のグループは、卑金属酸化物がZnO、In23、SiO2、Al23、ZrO2、TiO2、SnO、V25およびそれらを1種類含む以上含む複合酸化物からなり、酢酸とアセトアルデヒドの合成に選択的である。すなわち、第二のグループの担体は、卑金属酸化物が、ZnO、TiO2、SnO2、V25などのn型半導体性金属酸化物、SiO2、Al23、In23などの共有結合性の高い絶縁性金属酸化物、ZrO2などのその他の金属酸化物である場合である。第三のグループは、卑金属酸化物がLa23、MoO3、Bi23、SrO、Y2、MgO、BaO、WO3、CuOおよびそれらを1種類含む以上含む複合酸化物からなり、アセトアルデヒドの合成に選択的である。すなわち、第三のグループの担体は、卑金属酸化物が、La23、MgO、BaOなどのイオン結合性が高く塩基性の金属酸化物、MoO3とWO3などの酸性の強い金属酸化物、Bi23、SrO、Y23などの酸素イオン導電性金属酸化物およびCuOなどである場合である。
【0027】
本発明の卑金属酸化物表面に金ナノ粒子を分散・固定させた触媒は、従来知られた卑金属酸化物表面に金ナノ粒子を分散・固定させる方法のいずれを用いて作製されてもよい。このような方法としては、析出沈殿法の他、共沈法、析出還元法、気相グラフティング、固相混合法などが例示される。例えば、その一例として、析出沈殿法により金担持卑金属酸化物触媒を製造する方法を示すと、卑金属酸化物粒子粉末またはそれらを球状、円筒状、蜂の巣状などの支持体に担持させた成形体を金化合物の水溶液に懸濁または浸漬し、アルカリを加えてpHを7〜10の範囲のある点で調整し、金水酸化物を卑金属酸化物表面上に析出沈殿させる。よく攪拌を行い、水溶液の濃度(金化合物および還元剤等)や、pHおよび温度を調整して、攪拌を1時間以上(通常は1時間程度)続けることにより金水酸化物を卑金属酸化物表面に分散・固定化できる。これを水洗し、乾燥後、300℃以上で空気焼成することによって、金ナノ粒子触媒が得られる。このとき、卑金属酸化物は、エタノールの完全酸化、酢酸とアセトアルデヒドの選択合成、アセトアルデヒドの選択合成と、目的に応じて選択される。
【0028】
本発明の方法に用いられる金担持卑金属酸化物触媒を製造する際に用いられる金化合物としては、従来金ナノ粒子担持金属酸化物触媒を製造する際に用いられた金化合物の何れをも用いることができる。本発明において用いることのできる金化合物の例を挙げると、例えば、四塩化金酸(HAuCl4)、四塩化金酸塩(例えばNaAuCl4)、シアン化金(AuCN)、シアン化金カリウム{K[Au(CN)2]}、三塩化ジエチルアミン金酸[(C252NH・AuCl3]、エチレンジアミン金錯体(例えば、塩化物錯体{Au[C24(NH222Cl3})、ジメチル金β‐ジケトン誘導体錯体(例えば、ジメチル金アセチルアセトナート{(CH32Au[CH3COCHCOCH3]})や、その他、水や有機溶媒に溶解できる金の塩や錯体などが挙げられる。
【0029】
金化合物の水溶液中の濃度としては、希薄すぎると金が卑金属酸化物上に水酸化物として析出できなくなり、濃厚すぎると卑金属酸化物上だけでなく溶液中でも金水酸化物の沈殿が起こってしまうので、0.1mmol/Lから10mmol/Lまでの範囲が望ましく、0.5mmol/Lから2mmol/Lまでの範囲がより望ましい。
【0030】
卑金属酸化物に分散・固定する金の担持量は、水溶液の濃度と量によって0.01質量%から50質量%までの範囲で調整することができる。
【0031】
pH調整用のアルカリとしては、アルカリ金属の水酸化物や炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物や炭酸塩、アンモニア、尿素などを使うことができる。
【0032】
溶液のpHは、5〜13、好ましくは6〜10であり、金の水酸化物の溶解度が相対的に低い範囲を選ぶことが肝要である。温度は、0℃から90℃までの範囲が好ましく、特に好ましくは30℃から70℃までの範囲である。
【0033】
このようにして得られる表面に金微粒子を分散・固定させた卑金属酸化物における金ナノ粒子の平均粒子径は1nmから50nmであり、目的・用途によって異なるが、触媒として用いるときは、10nm以下、さらには5nm以下であることが好ましい。このときの平均粒子径は、球状粒子の場合は直径、楕円形粒子の場合は長径であり、走査型電子顕微鏡(SEM)観察あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)観察から、粒子径分布を作り、平均値を求めたものである。
【0034】
また、上記製造方法により、担持される金ナノ粒子の粒子分布が比較的狭い、粒子径の揃った触媒を製造することができる。粒子径分布の狭い金ナノ粒子を卑金属酸化物の表面に分散・固定させることによって、ナノオーダーの金微粒子を用いる触媒用途においては、性能の向上を図ることができる。
【0035】
本発明の別の態様によれば、チタンを含む酸化物からなる担体と、前記担体に分散・固定されたV25とを有する組成物も、エタノールの気相酸化触媒として優れている。チタンを含む酸化物は、チタンを含む複合酸化物であるかあるいはTiOであり、好ましくはTiOである。TiOはルチル型であってもよいし、アナターゼ型であってもよい。
【0036】
この態様において、Vの平均粒子径は、好ましくは5〜200nmであり、より好ましくは10〜50nmである。Vの平均粒子径を小さくするためには焼成温度を低くするなどの手法があり、大きくするためにはその逆の手法をとればよい。チタンを含む酸化物の平均粒子径は5〜500nmであり、より好ましくは10〜100nmである。チタンを含む酸化物100重量部に対するVの担持量は好ましくは1〜50重量部であり、より好ましくは5〜40重量部である。
【0037】
チタンを含む酸化物に対してVを分散・固定(担持)させる方法は特に限定は無い。非限定的な例示として、水溶性のバナジウム含有化合物を水に溶かし、そこに、チタンを含む酸化物粒子を加え、超音波攪拌を行って、凍結乾燥に供し、しかる後に、焼成するという方法が挙げられる。
【0038】
水溶性のバナジウム含有化合物は特に限定はなく、例えば、バナジン酸塩その他の化合物などが挙げられ、具体例としては、バナジン(V)酸アンモニウム、オキシ三塩化バナジウム、シュウ酸バナジル、ビス(アセチルアセトナト)オキソバナジウム(IV)などが挙げられる。バナジウム含有化合物に対する水の量は後述する超音波攪拌ができる範囲でなるべく少量であることが好ましい。
【0039】
バナジン酸塩の水溶液にチタンを含む酸化物粒子を加えた後の超音波攪拌の条件は特に限定はなく、酸化物粒子をなるべくよく分散させることが好ましい。超音波攪拌に代えて、棒状あるいはプロペラ状の撹拌子を混合スラリー中で回転させるなどの方法による攪拌でもよい。
【0040】
凍結乾燥については、例えば液体窒素などの冷媒を用いる凍結が挙げられ、ひとたび凍結したら、真空下において乾燥処理をすればよい。例えば、凍結後、真空下におき室温にて一晩放置することなどが挙げられる。
【0041】
凍結乾燥の後に、焼成する。焼成は、好ましくは空気中で所定時間の間、所定温度に保たれる。本発明者らの新知見では、焼成温度により、エタノール酸化触媒として異なる性質のものを作り分けることができることがわかった。例えば、担体としてルチル型の二酸化チタンを用いる場合には、好ましくは260〜340℃、より好ましくは280〜320℃で、好ましくは2〜6時間、より好ましくは3〜5時間焼成することにより、エタノールを好ましくは150〜170℃で酸化してアセトアルデヒドを選択的に生成する触媒を得ることができる。他方、担体としてアナターゼ型の二酸化チタンを用いる場合には、好ましくは260〜440℃、より好ましくは280〜420℃で、好ましくは2〜6時間、より好ましくは3〜5時間焼成することにより、エタノールを酸化するときの温度に応じてしてアセトアルデヒド、酢酸を選択的に生成するか、あるいは二酸化炭素にまで酸化させることができる触媒を得ることができる。具体的には、好ましくは170〜190℃でエタノールを気相酸化することにより選択的に酢酸を得ることができ、好ましくは230〜270℃でエタノールを気相酸化することにより二酸化炭素と水にまで完全参加させることができる。別の好適態様として、担体としてアナターゼ型の二酸化チタンを用い、好ましくは460〜540℃、より好ましくは480〜520℃で、好ましくは2〜6時間、より好ましくは3〜5時間焼成することにより、エタノールを酸化するときの温度に応じてしてアセトアルデヒドを選択的に生成するか、あるいは、酢酸を選択的に生成することができる触媒を得ることができる。具体的には、好ましくは130〜150℃でエタノールを気相酸化することにより選択的にアセトアルデヒドを得ることができ、好ましくは210〜230℃でエタノールを気相酸化することにより選択的に酢酸を得ることができる。
【0042】
さらに、本発明は、チタンを含む酸化物からなる担体と、前記担体に分散・固定されたV25とを有する、エタノールの気相酸化触媒の存在下で、エタノールを酸素分子により気相分解して、(A)アセトアルデヒド及び/又は酢酸を選択的に製造するか、あるいは、(B)二酸化炭素と水にまで完全酸化する、エタノールの酸化方法も提供する。
したがって、チタンを含む酸化物にV25を担持させてなるエタノールの気相酸化触媒については、例えば、以下の発明を包含すると評価することもできる。
(イ)チタンを含む酸化物からなる担体と、前記担体に分散・固定されたV25とを有する、エタノールの気相酸化触媒。
(ロ)チタンを含む酸化物がTiOである(イ)の気相酸化触媒。
(ハ)バナジウム酸塩の水溶液にチタンを含む酸化物を分散させて、次いで、凍結乾燥し、その後、焼成して得られる、(イ)又は(ロ)の気相酸化触媒。
(ニ)チタンを含む酸化物がルチル型のTiOであり、焼成温度が260〜340℃である(ハ)の気相酸化触媒。
(ホ)チタンを含む酸化物がアナターゼ型のTiOであり、焼成温度が260〜440℃である(ハ)の気相酸化触媒。
(へ)チタンを含む酸化物がアナターゼ型のTiOであり、焼成温度が460〜540℃である(ハ)の気相酸化触媒。
(ト)(ホ)の気相酸化触媒の存在下、エタノールを170〜190℃度で気相酸化することによる、選択的な酢酸の製造方法。
(チ)(ホ)の気相酸化触媒の存在下、エタノールを230〜270℃度で気相酸化することによる、二酸化炭素と水へ完全酸化する方法。
(リ)(ヘ)の気相酸化触媒の存在下、エタノールを130〜150℃度で気相酸化することによる、選択的なアセトアルデヒドの製造方法。
(ヌ)(ヘ)の気相酸化触媒の存在下、エタノールを210〜230℃度で気相酸化することによる、選択的なアセトアルデヒドの製造方法。
【0043】
本発明においては、エタノールの酸化反応は、エタノールと酸素分子を含有する気体を前記触媒と、例えば100〜280℃で接触させることによって行われる。反応に用いられる酸素分子は、酸素ガスとして供給されてもよいし、空気が用いられてもよい。また前記気体である原料ガスには、必要に応じ希釈ガス(キャリアガス)が含有されてもよい。このとき反応に用いられる装置は、通常気相反応を行う際に利用されている一般的な装置によればよい。例えば、触媒を反応管内に充填し、反応管を所定の温度に加熱した状態で、エタノールおよび酸素ガスあるいは空気を含有する気体を反応管に送り込み、これら原料ガスと触媒とを接触させ、反応ガスを回収することにより行われる。反応圧は、常圧で行われればよく、必要であれば0.5〜5Pa(気圧)程度加圧してもよい。希釈ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素などのいわゆる不活性ガスが用いられる。希釈ガスの使用量は、原料ガスの組成、流量、反応熱などを勘案して適宜決定すればよいが、通常エタノールに対し、1〜100容量倍とされることが好ましい。
【0044】
反応管に供給されるエタノールと酸素分子(酸素ガス)の割合は、特に限定されるわけではないが、通常エタノール1容量部に対し、酸素ガスあるいは空気中の酸素ガス0.5〜100容量部であり、好ましくは1〜10容積部、より好ましくは2〜5容量部である。
【0045】
触媒の使用量も、特に限定されるものではないが、反応管の内径が6〜10mmの条件であれば、一般的には0.1〜1.0g程度とされればよい。実用的には、ガス流量との関係で、空間速度(SV)が10,000〜40,000hr-1・ml・gcat-1程度の範囲内となる量を使用することが好ましい。
【0046】
反応後のガスは冷却され、集められる。アセトアルデヒドあるいはアセトアルデヒドと酢酸を得る場合においては、集められた反応生成物から未反応エタノールや反応生成物であるアセトアルデヒド、酢酸を分離し、エタノールは必要に応じ原料ガスとして再度使用されてもよい。また、アセトアルデヒドは、本発明とは別の反応過程を経る酢酸製造における原料として利用されてもよい。
【0047】
さらに具体的に、希釈ガスとして窒素ガスを用いる場合を例に挙げて、反応装置および反応プロセスの一例を、図1を参照して説明する。図1の装置においては、所定量の触媒が詰められた反応管は、使用する触媒の種類に応じ、予め所定の温度に電気炉内で加熱され、この加熱された触媒層に原料ガスが送られる。原料ガスとしては、エタノールと酸素ガスと希釈ガスとしての窒素ガスとの混合物が用いられる。この混合ガスは、エタノール溶液をプランジャーポンプにより所定量、連続的に気化器に送り気体状としたエタノールガスと、それぞれ流量制御器を通して所定量の供給量とされた酸素ガスおよび窒素ガスとを混合することにより作製される。触媒を通過した後の反応ガスは、図1の装置においてはガスクロマトグラフィー(GC)に送られ、反応ガスの組成が調べられる。この工程は、工業的な方法においては、アセトアルデヒドまたはアセトアルデヒドと酢酸を製造する際には、反応ガスは冷却後集積され、得られた反応物から必要に応じ未反応のエタノール、アセトアルデヒド、酢酸が分離される。
【0048】
図1においては、反応管として、内径6ないし10mmの反応管が用いられ、触媒量は150mgとされ、ガス流速は50mL/min、SVは20,000hr-1・ml・gcat-1、エタノール:O2:N2=1:3:126(0.77vol%エタノール)とされ、反応温度は100〜280℃の所定の温度とされている。
【0049】
本発明においては、エタノールからアセトアルデヒドを気相で選択的に製造する、エタノールからアセトアルデヒドと酢酸を気相で選択的に製造する、あるいはエタノールを二酸化炭素と水にまで完全酸化する、の何れの方法であるかによって、前記するように使用される触媒が異なり、また反応時の温度もそれぞれ異なる。エタノールからアセトアルデヒドを気相で選択的に製造するのであれば、金微粒子を分散・固定した、La23、MoO3、Bi23、SrO、Y2、MgO、BaO、WO3、CuOおよびそれらを1種類以上含む複合酸化物から選ばれた卑金属酸化物を触媒とし、その時の反応温度は、使用する担体によっても異なるが、通常140〜300℃とすることが好ましく、より好ましくは160〜280℃である。また、エタノールからアセトアルデヒドと酢酸を気相で選択的に製造するのであれば、金微粒子を分散・固定した、ZnO、In23、SiO2、Al2、ZrO2、TiO2、SnO2、V25およびそれらを1種類以上含む複合酸化物から選ばれた卑金属酸化物を触媒とし、その時の反応温度は、使用する触媒担体によっても異なるが、通常150〜250℃とすることが好ましく、より好ましくは180〜220℃である。このとき、V25とTiOとを併用することがより好ましい。さらに、エタノールを二酸化炭素と水にまで完全酸化するのであれば、金微粒子を分散・固定した、MnO2、CeO2、CuO、Co34、NiO、Fe23およびそれらを1種類以上含む複合酸化物から選ばれた卑金属酸化物を触媒とし、その時の反応温度は、使用する触媒担体によっても異なるが、通常150℃以上とすることが好ましく、より好ましくは180℃以上である。
【0050】
なお、本発明において、「選択的」とは、反応生成物の主要部分が目的とする化合物であることを意味するもので、アセトアルデヒドのみ、あるいはアセトアルデヒドと酢酸のみが得られることを意味するものではない。また、二酸化炭素と水にまで完全酸化するという場合も、100%二酸化炭素と水にまで酸化される場合のみならず、アセトアルデヒドや酢酸などが極少量含まれる場合をも含むものである。
【実施例】
【0051】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0052】
実施例1
[Au/ZnO触媒の調製]
硝酸亜鉛・六水和物(Zn(NO32・6H2O)0.019mol(5.65g)およびテトラクロロ金(III)酸・四水和物(HAuCl4・4H2O)0.001mol(0.412g)を蒸留水200mLに溶解させて水溶液を得た(水溶液1)。一方、これとは別に2.67gの炭酸ナトリウムを蒸留水250mLに溶解し、70℃に加温した(水溶液2)。次いで、前記水溶液1を水溶液2に一気に加え、70℃で1時間撹拌した。生成した沈殿物をpHが一定となるまで蒸留水にて洗浄を行い、ろ過した生成物を100℃、空気中で一晩乾燥した後、空気中300℃で4時間焼成し、酸化亜鉛担体に担持された金触媒(Au/ZnO;金微粒子の平均粒径4nm、担体の平均粒径50nm)を得た。
【0053】
[触媒活性評価]
触媒150mgをガラス製U字型反応管(内径6mm)に充填し、空気ガス(50mL/min)により、25℃で30分間処理を行った。その後、図1に示される方法で、原料ガスを作製し、窒素(48.5mL/min)、酸素(1.15mL/min)、エタノール蒸気(0.38mL/min)を流通させ、触媒層の温度を100℃から280℃まで20℃刻みで変化させて触媒反応を行った。触媒層を通過した反応ガスをガスクロマトグラフィーで分析し、各温度でのアセトアルデヒド、酢酸、二酸化炭素の収率を求めた。結果を表1に示す。
【0054】
アセトアルデヒド、酢酸、二酸化炭素の収率は、次式に従って求めた。
【0055】
アセトアルデヒドの収率=(触媒層通過後ガス中のアセトアルデヒドの濃度/原料ガス中のエタノールの濃度)×100(%)
酢酸の収率=(触媒層通過後ガス中の酢酸の濃度/原料ガス中のエタノールの濃度)×100(%)
二酸化炭素の収率=(触媒層通過後ガス中の二酸化炭素の濃度/原料ガス中のエタノールの濃度)×100(%)
【0056】
【表1】

【0057】
比較例1
テトラクロロ金(III)酸・四水和物を用いないことを除き実施例1と同様にして、酸化亜鉛担体を作製した。得られた担体(担体の平均粒径100nm)を用いて、実施例1と同様の触媒活性評価法により触媒の活性を測定した。結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
実施例2〜10
実施例1の硝酸亜鉛・六水和物のかわりに、硝酸鉄・九水和物、硝酸コバルト・六水和物、硝酸ニッケル・六水和物、硝酸マグネシウム・六水和物、硝酸銅・三水和物、硝酸ランタン・六水和物、硝酸セリウム・六水和物、硝酸イットリウム・六水和物、硝酸インジウム・三水和物を用いて、実施例1と同様に、酸化鉄担体に担持された金触媒(Au/Fe23;金微粒子の平均粒径5nm、担体の平均粒径40nm)、酸化コバルト担体に担持された金触媒(Au/Co34;金微粒子の平均粒径4nm、担体の平均粒径20nm)、酸化ニッケル担体に担持された金触媒(Au/NiO;金微粒子の平均粒径6nm、担体の平均粒径30nm)、酸化マグネシウム担体に担持された金触媒(Au/MgO;金微粒子の平均粒径5nm、担体の平均粒径15nm)、酸化銅担体に担持された金触媒(Au/CuO;金微粒子の平均粒径7nm、担体の平均粒径80nm)、酸化ランタン担体に担持された金触媒(Au/La23;金微粒子の平均粒径8nm、担体の平均粒径100nm)、酸化セリウム担体に担持された金触媒(Au/CeO2;金微粒子の平均粒径4nm、担体の平均粒径40nm)、酸化イットリウム担体に担持された金触媒(Au/Y23;金微粒子の平均粒径6nm、担体の平均粒径40nm)、酸化インジウム担体に担持された金触媒(Au/In23;金微粒子の平均粒径5nm、担体の平均粒径40nm)を作製し、得られた金触媒を用いて、実施例1と同様の触媒活性評価法により触媒の活性を測定した。結果を表3に示す。なお、表3においては、最大のアセトアルデヒド、酢酸、二酸化炭素の収率およびそのときの温度のみを記載する。
【0060】
実施例11〜13
酸化モリブデン1.000gと金アセチルアセトナート錯体0.0580mmol(0.0166g)を乳鉢で混合した後、空気中400℃で4時間焼成し、酸化モリブデン担体に担持された金触媒(Au/MoO3;金微粒子の平均粒径6nm、担体の平均粒径40nm)を作製し、実施例1と同様の触媒活性評価法により触媒の活性を測定した。結果を表3に示す。
【0061】
五酸化バナジウム1.000gと金アセチルアセトナート錯体0.05800mmol(0.0166g)を乳鉢で混合した後、空気中400℃で4時間焼成し、五酸化バナジウム担体に担持された金触媒(Au/V;担体の平均粒径200nm)を作製し、実施例1と同様の触媒活性評価法により触媒の活性を測定した。結果を表3に示す。
【0062】
後述の実施例15と同じ酸化チタンに担持された五酸化バナジウム(V/TiO)1.000gと金アセチルアセトナート錯体0.05800mmol(0.0166g)を乳鉢で混合した後、空気中400℃で4時間焼成し、酸化チタンに担持された五酸化バナジウム担体に担持された金触媒(Au/V/TiO;酸化チタン担体の平均粒径25nm)を作製し、実施例1と同様の触媒活性評価法により触媒の活性を測定した。結果を表3に示す。なお、用いる酸化チタンについて、後述の実施例15のものに代えて、実施例16および実施例17のものについても同様に実験したところ、同様の結果を得た。
【0063】
【表3】

【0064】
表1および表3より、エタノールから酢酸を生成する金触媒の担体は限られており、特に酸化亜鉛、酸化インジウム、五酸化バナジウムが酢酸を高い収率で得ることのできる金触媒の担体として優れたものであることがわかる。また、酸化モリブデンや酸化ランタンはアセトアルデヒドを二酸化炭素の発生なしに高い収率で得ることのできる金触媒の担体として優れたものであることがわかる。
【0065】
実施例14
水50mLを0℃に保ち、激しく撹拌しながら四塩化チタン28.54gを滴下した。この水溶液の濃度を0.3Mに希釈して、70℃で6時間水熱反応を行った。生成した沈殿物を洗浄し、65℃で一晩乾燥した後、300℃、4時間空気中で焼成し、ルチル型二酸化チタン(52m/g)を得た。バナジン(V)酸アンモニウムを所定のVとなるようにはかりとり、少量の水で溶解した。そこへルチル型二酸化チタンを加えて超音波をかけながら30分間撹拌した。本実施例では、100重量部のTiOに対して5重量部のVが担持するように添加量を設定した。その後、液体窒素で凍結させ室温で一晩真空乾燥した。乾燥後、300℃、4時間空気中で焼成し、ルチル型二酸化チタン担体に担持された酸化バナジウム触媒(V/TiO;担体の比表面積52m/g)を作製し、実施例1と同様の触媒活性評価法により触媒の活性を測定した。結果を表4に示す。
【0066】
実施例15〜17
バナジン(V)酸アンモニウムを担体に対して34wt%のVとなるようにはかりとり、少量の水で溶解した。そこへアナターゼ型二酸化チタン(チタン工業株式会社、340m/g)を加えて超音波をかけながら30分間撹拌した。その後、液体窒素で凍結させ室温で一晩真空乾燥した。乾燥後、所定の温度で、4時間空気中で焼成し、アナターゼ型二酸化チタン担体に担持された酸化バナジウム触媒(V/TiO;担体の比表面積340m/g)を作製し、実施例1と同様の触媒活性評価法により触媒の活性を測定した。結果を表4に示す。
【0067】
【表4】

【0068】
表4より、ルチル型二酸化チタンを担体とした五酸化バナジウム触媒は、アセトアルデヒドを比較的低温できわめて高い収率で得ることのできる触媒であることがわかる。また、アナターゼ型二酸化チタンを担体とした五酸化バナジウム触媒は、焼成温度を500℃とすることで、触媒層温度の制御によってアセトアルデヒドあるいは酢酸を高い収率で得ることのできる触媒であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素分子の存在下に、金微粒子を分散・固定した、La23、MoO3、Bi23、SrO、Y2、MgO、BaO、WO3、CuOおよびそれらを1種類以上含む複合酸化物から選ばれた卑金属酸化物を触媒として、エタノールからアセトアルデヒドを気相で選択的に製造する方法。
【請求項2】
酸素分子の存在下に、金微粒子を分散・固定した、ZnO、In23、SiO2、Al2、ZrO2、TiO2、SnO2、V25およびそれらを1種類以上含む複合酸化物から選ばれた卑金属酸化物を触媒として、エタノールからアセトアルデヒドと酢酸を気相で選択的に製造する方法。
【請求項3】
酸素分子の存在下に、金微粒子を分散・固定した、MnO2、CeO2、CuO、Co34、NiO、Fe23およびそれらを1種類以上含む複合酸化物から選ばれた卑金属酸化物を触媒として、エタノールを二酸化炭素と水にまで完全酸化する方法。
【請求項4】
上記請求項1の方法に用いられる、金微粒子を分散・固定した、La23、MoO3、Bi23、SrO、Y2、MgO、BaO、WO3、CuOおよびそれらを1種類以上含む複合酸化物から選ばれた卑金属酸化物触媒。
【請求項5】
上記請求項2の方法に用いられる、金微粒子を分散・固定した、ZnO、In23、SiO2、Al2、ZrO2、TiO2、SnO2、V25およびそれらを1種類以上含む複合酸化物から選ばれた卑金属酸化物触媒。
【請求項6】
上記請求項3の方法に用いられる、金微粒子を分散・固定した、MnO2、CeO2、CuO、Co34、NiO、Fe23およびそれらを1種類含む以上含む複合酸化物から選ばれた卑金属酸化物触媒。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法において、卑金属酸化物担体上に分散・固定される金微粒子が直径10nm以下の金ナノ粒子または金クラスターであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項4〜6のいずれかに記載の触媒において、卑金属酸化物担体上に分散・固定される金微粒子が直径10nm以下の金ナノ粒子または金クラスターであることを特徴とする触媒。
【請求項9】
チタンを含む酸化物からなる担体と、前記担体に分散・固定されたV25とを有する、エタノールの気相酸化触媒。
【請求項10】
請求項9記載の気相酸化触媒の存在下で、エタノールを酸素分子により気相分解して、(A)アセトアルデヒド及び/又は酢酸を選択的に製造するか、あるいは、(B)二酸化炭素と水にまで完全酸化する、エタノールの酸化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−219466(P2011−219466A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59461(P2011−59461)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【Fターム(参考)】