説明

エダラボン注射液

【課題】添加物が少なく長期安定なエダラボン注射液、もしくは小容量で且つ長期安定性に優れたエダラボン注射液を提供すること。
【解決手段】(1)エダラボン30mgが注射水もしくはプロピレングリコール含有注射用水に溶解され、安定化剤としてエデト酸類及びシステイン類がそれぞれエダラボン重量の0.1%部〜20%部溶解され、溶液の容量が2mL〜20mLであり、その液性がpH3.0〜pH6.0である注射液、(2)プロピレングリコールの含有割合が0.1重量%〜82.5重量%である前記(1)に記載の注射液を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記の化学構造式で示される脳保護剤エダラボン(一般的名称)を含有する注射液に関する。
【化1】

【背景技術】
【0002】
エダラボンは、急性期の脳血管障害患者に対して期待された薬効を得るために、1回につき30mgが使用され、朝夕二回点滴投与される。この点滴液を調製するために、製剤は溶液とするのが適切であるが、エダラボンは空気酸化され易く且つ水に溶け難い性質を有している。そのために、安定で且つ安全なエダラボン溶液の創製を求めて種々製剤処方検討がなされ、これまでに、望ましい処方がいくつか提案されている(特許文献1〜6)。しかし、前記提案によれば、エダラボンの水に対する低溶解性から、注射液の容量が20mLと大きくならざるを得ず、取扱いの点で注射液の小容量化が望まれるものの、溶解補助剤としてエタノールを用いることにより注射液容量を小さくする工夫がなされたものではエダラボンの溶液としての長期安定性が必ずしも十分とは言い難い等の問題があり、注射液に含まれる類縁物質はできるだけ少ない製剤が望まれる。
【0003】
【特許文献1】特公平7−121861号公報
【特許文献2】WO2002/092082号公報
【特許文献3】特開2006−257020号公報
【特許文献4】特開2008−1605号公報
【特許文献5】特開2008−1606号公報
【特許文献6】特開2008−1607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、添加物が少なく長期安定性に優れたエダラボン注射液もしくは臨床現場で取扱い易くした小容量で且つ長期安定性に優れたエダラボン注射液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、エダラボンの製剤処方につき鋭意検討した結果、所期の目的を達成する本発明を完成することができた。
【0006】
すなわち、本発明によれば、下記の注射液を提供することができる。
(1)エダラボン30mgが注射用水もしくはプロピレングリコール含有注射用水に溶解され、安定化剤としてエデト酸類及びシステイン類がそれぞれエダラボン重量の0.1%部〜20%部溶解され、溶液の液量が2mL〜20mLであり、その液性がpH3.0〜pH6.0である注射液。
(2)プロピレングリコール含有割合が0.1重量%〜82.5重量%である前記(1)に記載の注射液。
【発明の効果】
【0007】
本発明において、活性酸素発生防止剤としてエデト酸類を、且つ、エダラボンの空気酸化阻止剤としてシステイン類をそれぞれ少量添加することにより、エダラボンの長期安定性が可能となり、また、水に対して低溶解性を示すエダラボンの溶解補助剤としてプロピレングリコールを使用することにより注射液の容量を小さくすることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において使用するプロピレングリコールの含有割合は、0.1重量%〜82.5重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1重量%〜50.0重量%である。
本発明注射液のエダラボン濃度は、0.15重量%〜1.5重量%が好ましい。
本発明で使用する活性酸素発生防止剤であるエデト酸類としては、エデト酸二ナトリウムやエデト酸カルシウム二ナトリウムなどが挙げられるが、エデト酸二ナトリウムが好ましい。また、エダラボンの空気酸化阻止剤として用いるシステイン類としては、L−又はD−システイン及びN−アセチルシステインが挙げられるが、L−システインが好ましく、その塩も使用可能であり、塩としては塩酸塩が好ましい。
なお、システイン類及びエデト酸類の使用量は、エダラボン重量の0.1%部〜20%部が好ましく、さらに好ましくは0.3%部〜15%部である。また、注射液の液性はpH3.0〜pH6.0が好ましく、さらに好ましくはpH3.5〜pH5.5である。

【実施例】
【0009】
以下、実施例によって説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0010】
実施例1
エダラボン30mgを注射用水18mLに溶解し、この溶液にL−システイン塩酸塩一水和物4.0mg及びエデト酸二ナトリウム0.1mgを加え、次いで、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH3.6に調整した後、注射用水で希釈して全量を20mLとし、これを孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いて無菌濾過し、窒素気流下でアンプル充填して熔封した。
【0011】
実施例2
エダラボン30mgをプロピレングリコール1.65gに加熱溶解。この溶液に、L−システイン塩酸塩一水和物4.0mg及びエデト酸二ナトリウム0.1mgを少量の注射用水に溶解した液を添加し、次いで、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH3.6に調整した後、注射用水で希釈して全量を5mLとし、これを孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いて無菌濾過し、窒素気流下でアンプル充填して熔封した。
【0012】
比較例1
エダラボン30mgを注射用水18mLに溶解し、この溶液に亜硫酸水素ナトリウム20mg及びL−システイン塩酸塩一水和物10mgを加え、次いで、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH3.6に調整した後、注射用水で希釈して全量を20mLとし、これを孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いて無菌濾過し、窒素気流下でアンプル充填して熔封した。
【0013】
比較例2
エダラボン30mgを注射用水18mLに溶解し、この溶液に亜硫酸水素ナトリウム0.6mg及びエデト酸二ナトリウム0.3mgを加え、次いで、0.1モルクエン酸水溶液を用いてpH3.6に調整した後、注射用水で希釈して全量を20mLとし、これを孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いて無菌濾過し、窒素気流下でアンプル充填して熔封した。
【0014】
比較例3
エダラボン30mgをエタノール1.60mLに加熱溶解。この溶液に、L−システイン塩酸塩一水和物4.0mg及びエデト酸二ナトリウム0.1mgを少量の水に溶解した液を添加し、次いで、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH3.6に調整した後、注射用水で希釈して全量を10mLとし、これを孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いて無菌濾過し、窒素気流下でアンプル充填して熔封した。
【0015】
試験例1
実施例1〜2及び比較例1〜3で得たアンプル瓶入りの溶液を40℃もしくは60℃で三日間加熱保存した。冷却後、各注射液についてpHおよび黄色着色度を測定し、高速液体クロマトグラフィーによりエダラボン残存量と空気酸化によって生成した類縁化合物・エダラボン二量体や三量体ならびにエタノール由来類縁物質(アセトアルデヒド縮合体)の含有比率(面積百分率)を調べた。その結果(下記表1と表2)、本試験条件では、実施例1と実施例2の溶液が、市販製剤の処方内容を模倣した比較例1や特許文献2〜5記載処方内容を模倣した比較例2とほぼ同等であり、注射液として十分安定であることが認められた。また、エダラボンの溶解補助剤としては、プロピレングリコールの方がエタノールよりも適していることが実施例2と比較例3の分析結果により示された。
【表1】

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0016】
臨床現場で有用な本発明のエダラボン注射液は、通常の注射液の製造方法により容易に製造でき、したがって産業上利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エダラボン30mgが注射用水もしくはプロピレングリコール含有注射用水に溶解され、安定化剤としてエデト酸類及びシステイン類がそれぞれエダラボン重量の0.1%部〜20%部溶解され、溶液の液量が2mL〜20mLであり、液性がpH3.0〜pH6.0である注射液。
【請求項2】
プロピレングリコール含有割合が0.1重量%〜82.5重量%である請求項1に記載の注射液。


【公開番号】特開2010−47482(P2010−47482A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210209(P2008−210209)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(593030071)大原薬品工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】