説明

エチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造方法および該反応システム

本発明は、エチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造方法に関し、さらに詳しくは、エチレンとビニルアセテートを溶液中で共重合体反応を行なうことを含み、重合反応の気相部分を不純物除去塔に連結し、重合反応に用いられる溶剤を利用して上記気相部分を洗浄後、反応システム統に再循環して、反応中に発生した不純物を除去することを特徴とする方法である。
さらに、本発明はエチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造方法における反応システムにも関し、その反応システムには、エチレンとビニルアセテートを用いて共重合反応を行なう反応槽;上記反応槽に連結する回収塔;上記回収塔の底部に連結したエチレン−ビニルアセテート共重合体出口導管;および上記反応槽の頂上部分に連結した反応中に発生する不純物を洗浄するための不純物除去塔が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造方法に関し、さらにエチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造反応システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン−ビニルアルコール(Ethylene-Vinyl Alcohol)共重合体は、非常に優れたガスバリアー性、耐溶剤性、および機械的強度などを有しているため、広い範囲にわたって、フィルム、シート、容器、繊維などに加工され、生鮮食品の包装、かべ紙、自動車のガソリンタンクなどの様々な用途に用いられている。
【0003】
従来のエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)の工業的製造方法においては、まず、ビニルアセテートとエチレンとを原料にして、ラジカル溶液重合反応でエチレン−ビニルアセテート共重合体を合成した後、さらに得られたエチレン−ビニルアセテート共重合体をアルカリにより加水反応することで製造される。この製造方法においては、通常、メタノールが重合反応溶剤として用いられる。所望の反応速度とし、重合時に発生する大量の放熱を除去することを考慮すると、通常、反応は、55〜75℃の範囲内の温度で行なわれる。さらに、得られた共重合体の加工特性とガスバリアー性とを考慮すると、通常、反応圧力は、25〜60kg/cm2Gの範囲内の圧力で制御されており、この範囲内に圧力を制御することで、適切なエチレン変性度を保つことができる。この反応過程においては、ビニルアセテートとメタノールとがエステル交換反応を起こし、メチルアセテート、アセトアルデヒドなどの不純物が発生する。これら不純物は、未反応のエチレンとビニルアセテートとの再循環使用により、重合反応システム内に蓄積し、濃度が徐々に高くなる。そのため、連続反応操作が長時間行われるのに伴って、エチレン−ビニルアセテート共重合体の品質劣化を徐々に招き、さらに、エチレン−ビニルアセテート共重合体からエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を加工製造する際に、その品質を日に日に悪化させることとなる。そこで、EVOHの製品品質を改善するために、通常、エチレンとビニルアセテートとの回収過程において、蒸留などの精製技術により上記不純物を分離している。しかし、この方法では、反応システム内の不純物濃度の持続的増加を阻止することにより、わずかな不純物を一定濃度範囲内に制御するにとどまり、不純物を完全には除去することができない。これら一定濃度の不純物は、直接共重合体とグラフト反応を行ない、共重合体の特性に大きな悪影響を与える。例えば、耐熱性が低下したり、製品が着色して黄変したり、製品を加工する際に生成する耳の再利用が困難となったりする。
【0004】
上記問題に鑑み、本発明者らは、エチレン−ビニルアルコール共重合体の製造方法について広範にわたり検討した結果、本発明を完成するに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、エチレン−ビニルアセテート共重合体の製造方法を提供することにあり、本発明の製造方法により製造過程で発生する不純物を有効に除去し、さらに、アルカリ加水分解して得られるエチレン−ビニルアルコール共重合体の製品の色沢および加工時の耐熱性を改善するものである。
【0006】
本発明の他の目的は、エチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造方法および該製造方法による反応システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のエチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造方法は、下記方法を含む。:まず、エチレンとビニルアセテートとを用いて、重合反応槽で溶液共重合反応を行なう。つづいて、回収塔を用いて、反応生成物を得て、さらに未反応エチレンを回収して重合反応システムに循環させる。この方法における特徴は、重合反応の気相部分を不純物除去塔に連結して、重合反応に用いる溶剤で上記気相部分を洗浄し、反応中に生成した不純物を除去した後、反応システムに再循環して利用することにある。
【0008】
本発明のエチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造方法に係る反応システムは下記反応システムを含む。:エチレンとビニルアセテートとを供給して共重合反応を行なう重合反応槽。;該重合反応槽に連結した回収塔。;該回収塔底部に連結されたエチレン−ビニルアセテート共重合体の出口導管。;この反応システムにおける特徴は、反応槽の上端部に、反応中に生成する不純物を洗浄する不純物除去塔が連結され、該不純物除去塔には洗浄用溶剤の供給導管が設置され、これらにより溶剤を導入してその中に含まれる不純物を除去すること、さらに、溶剤を循環させて洗浄する導管が設置され、除去塔に導入した洗浄用溶剤を再度循環させ除去塔の洗浄に再利用することにある。
【0009】
本発明のエチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造方法およびその反応システムは、その反応過程中、絶えず反応で生成する不純物を除去することができるので、エチレン−ビニルアセテート共重合反応システムの安定性を高める。さらに、この共重合体をアルカリ加水分解することにより生成するエチレン−ビニルアルコール生成物の加工時の耐熱性をも高めることができる。
〔図面の簡単な説明〕
図1は本発明のエチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造に係る反応システムを示す概略図である。
〔符号の説明〕
1:ビニルアセテートおよびメタノールの供給導管
2:重合反応槽
3:エチレン回収塔
4:エチレン−ビニルアセテート共重合体出口導管
5:熱交換器
6,15:メタノール循環洗浄液導管
7,16:メタノール洗浄液供給導管
8:エチレン回収用コンプレッサー
9,17:エチレン回収導管
10:エチレンガス導管
11:不純物除去塔
12:メタノール洗浄液供給タンク
13:液体回収用導管
14:廃棄ガス排除用導管
18:エチレン供給用導管
19:エチレン緩衝タンク
L1:液量コントローラー
P1:圧力コントローラー
F1:液量コントローラー
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のエチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造方法においては、エチレンおよびビニルアセテートを原料モノマーとして用い、通常、メタノールを反応溶剤として共
重合反応を行なう。反応速度を最も好ましいものとし、しかも重合反応で発生する大量の放熱を除去するためには、共重合反応温度としては、通常、55〜75℃の範囲内とする。また、適切なエチレン変性度を保つためには、反応圧力を25〜60kg/cm2Gの
範囲内に制御する。これら反応条件は、現在エチレン−ビニルアルコール共重合体を工業的に製造する際に用いられている重合反応条件である。しかし、これら重合反応中に、ビニルアセテートとメタノールとのエステル交換反応によって、メチルアセテート、アセトアルデヒドなどの不純物が生成する。また、上記エチレン−ビニルアセテート共重合体の製造反応に連続製造方法を採用した場合には、その連続製造の間、未反応エチレンは再循環し、反応システムに回収して再利用される。そのため、従来の連続製造方法においては、上記不純物を除去する必要があり、もし不純物を除去せずに製造をした場合には、生成物であるエチレン−ビニルアルコール共重合体の性質に悪影響を与える問題が生じる。
【0011】
本発明のエチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造方法においては、特に上記不純物が低沸点であるという特性を利用しており、反応システム内の飽和蒸気圧ゆえに、これら不純物は気化して反応システムの気相中に拡散する。本発明の技術的特徴としては、この特性を利用し、反応システムの気相を不純物除去塔に導入し、メタノールで洗浄し、これら不純物を原料のエチレンから除去し、その後、不純物を除去したエチレンを回収し、原料として反応システムで循環し再利用することにある。
【0012】
本発明のエチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造方法に係る反応システムは、主として重合反応槽、エチレン精製回収塔、および不純物除去塔を含む。これらのうち、上記エチレン精製回収塔は上記重合反応槽の下端部に連結され、該重合反応槽中の共重合体を放出できるようにされており、さらに、上記不純物除去塔は上記重合反応槽の上端部に連結され、反応気相物質を集めるようにされている。
【0013】
以下、図面に基づき、本発明のエチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造方法における反応システムを詳細に説明する。
図1に示すように、ビニルアセテートとメタノールとの供給導管1、およびエチレン供給用導管18は、重合反応槽2に連結されている。該反応槽2の下端部は、導管を介してエチレンの脱圧精製回収塔3に連結されている。さらに、上記回収塔3上端部にメタノール洗浄液供給導管7を連結して、該回収塔3中の製品であるエチレン−ビニルアセテート共重合体を洗浄し、該回収塔の下部に連結している生成物出口導管4より生成物であるエチレン−ビニルアセテート共重合体を回収する。;また、該回収塔3の中間部にはメタノール循環洗浄液導管6が連結されており、該回収塔からメタノールを導入し、該回収塔を循環洗浄する。また、導管6および7の中間部分には、それぞれ一つの熱交換器5が設置されており、循環メタノールの冷却に利用される。;該回収塔3の上端部には、さらにエチレン回収導管9が連結されており、未反応のエチレンを回収し、重合反応槽2に循環し再利用する仕組になっている。また、エチレン回収導管9の中間部には、エチレン緩衝タンク19とエチレン回収用コンプレッサー8が設置されており、エチレンが重合反応槽2中に循環するように駆動する仕組みとなっている。また、上記重合反応槽2には、液量コントローラーL1が設置されており、反応槽内の液面をバルブにより適切にコントロールし、排出したものを回収塔3内に供給している。また、回収塔3に連結しているエチレン回収用導管9には、さらに圧力コントローラーP1が設置されており、エチレンの循環を制御している。以上が本発明のエチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造方法における反応システムを示すものである。
【0014】
本発明のエチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造に係る反応システムの特徴は、重合反応槽2の上端部に導管10を設置し、不純物除去塔11に連結することにある。上記導管10は、重合反応槽2上端部の気相物質(主要成分は、未反応のエチレンガス、低沸点不純物であるメチルアセテートおよびアセトアルデヒドなどである。)を不純物除
去塔11中に導入する仕組となっている。該除去塔11の上端部には、メタノール洗浄液供給導管16が設置されており、メタノールを該除去塔中に導入して気相を洗浄し、不純物を除去する。ついで、精製したエチレンガスを除去塔上端部のエチレン回収導管17により回収し、重合反応槽2に循環して、原料として再利用する。このエチレン回収導管17には、前記エチレン回収導管9と同様に、エチレン緩衝タンク19とエチレン回収用コンプレッサー8が設置されており、エチレンが重合反応槽2中に循環するように駆動する仕組となっている。また、該除去塔の下部には、メタノール循環洗浄液導管15が設置されており、メタノールを該除去塔に循環導入して再利用する。この導管15および16には、前記導管6および7と同様に、熱交換器5が設置されており、メタノール洗浄液を冷却するようになっている。該除去塔11には液量コントローラーL1が設置されており、該除去塔下部のバルブを制御して、液面がある一定の水準になるとバルブをあけて液体をメタノール洗浄液供給タンク12中に導入するようにしている。そして、該供給タンク12からは導管14により廃棄ガスを排出し、導管13により液体を回収する。
【0015】
本発明の反応システムによると、上記不純物除去塔により、直接、反応槽中の気相に存在する重合反応の際に生成した低沸点不純物が除去される。このため、重合システム内の不純物濃度はほとんどゼロの状態となる。本発明に用いられる反応システムの工程を下記に示す。;
(1)エチレンとビニルアセテートとを重合反応槽2中のメタノール溶剤に溶解して重合反応を行なう。反応過程において、ビニルアセテートは分解して低沸点不純物を生成する。
(2)飽和蒸気圧との関係で、これら低沸点不純物は気化し気相中に拡散する。
(3)流量コントローラーF1を用い、一定量のエチレンガス相を不純物除去塔11に導入し、メタノールを洗浄液として、気相中の不純物を洗浄する。
(4)精製後のエチレンガスをコンプレッサー8で圧縮し、重合反応槽2に循環回収して再利用する。
(5)上記除去塔11を充填塔として、塔頂より新しいメタノールを洗浄液として注入し、塔底において、高圧ポンプで大量のメタノール液を循環させて不純物を洗浄する。洗浄効果を高めるためには、熱交換器5を用いてメタノール循環液を予め冷却することが必要である。
〔実施例〕
以下実施例および比較例を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
本発明の下記実施例および比較例においては、本発明の方法および反応システムにより製造されたエチレン−ビニルアセテート共重合体によって製造されたエチレン−ビニルアルコール共重合体の製品の物理化学的特性および加工特性を下記の方法により測定した。
【0017】
A.メルトインデックス(MFI;g/10分間):
JIS K7120に準拠して測定を行った。測定温度は、それぞれ190℃、210℃、および230℃であり、荷重は、2160gである(注:MFI値は、エチレン−ビニルアルコール共重合体の加工時の流動性を代表的に示すもので、通常は、その値が大きいほど、分子量が小さいことを示す)。測定機器としては、Dynisco ポリマー測定機(富友株式会社製品)を使用した。
【0018】
B.加熱着色試験:
エチレン−ビニルアルコール共重合体の試料を30g計り取り、10×10cm大の白いポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の皿にひろげた。この皿を、オーブンに入れて、内温を230℃の恒温に設定した。5分間、10分間、20分間、前記温度の恒温で加熱した後、試料を取り出して、色差計により試料のイエローインデックスYIを測定
した(注:YI値の値が小さいほど、製品の着色度が低く、また、外観が白いことを示し、樹脂の耐熱性がより好ましいことを意味する)。測定機器としては、X−Rite SP−68積分球型分光計を用いた。
〔実施例1〕
図1に示す通りの反応システムをエチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造方法に用いた。反応槽の容積は100L、L/D=1.27、冷却用のジャケットと撹拌機を備え、耐圧設計は200kg/cm2Gである。また、不純物吸収塔の塔頂部および連続
重合の条件を下記に示す:
ビニルアセテート供給量 7.6kg/hr
メタノール 0.23kg/hr
2,2’−アゾイソブチロニトリル 2.3g/hr
重合温度 60℃
反応槽内エチレン圧 43kgf/cm2
平均滞留時間 6hrs
不純物除去塔塔頂部における新しい
メタノールの導入供給量 0.5kg/hr
不純物除去塔塔底部における
メタノールの循環量 20L/hr
反応槽の底部より重合反応液を排出し、その組成を測定したところ、以下の通りであった。:
エチレン−ビニルアセテート共重合体(EVAc)
(エチレン変性度32モル%) 32.1重量%
メタノール 2.5重量%
ビニルアセテート 54.7重量%
エチレン 10.7重量%
不純物吸収塔底部排出液の組成を測定したところ、以下の通りであった。:
排出液温度 10℃
メタノール 60.6重量%
ビニルアセテート 24.3重量%
エチレン 14.9重量%
アセトアルデヒド 0.2重量%
メチルアセテート 0.336重量%
エチレン−ビニルアセテート共重合体(EVAc)の重合反応槽を脱圧した後に、エチレンを気化蒸発させて除去する。つづいて、蒸留塔により未反応のビニルアセテートを除去する。:塔頂部からEVAcを連続して流入させ、塔底部よりメタノールガスを吹きこむ。メタノールとビニルアセテートとが常圧で共沸する特性を利用して、未反応のビニルアセテートを完全に吹き出させる。塔底部のEVAcを含むメタノール溶液は、固形分を42重量%含み、ガスクロマトグラフで溶液内のビニルアセテート残留量を分析した結果
100ppm以下であった。
【0019】
つづいて、反応蒸留によりEVAcをアルカリ化してエチレン−ビニルアルコール(EVOH)溶液を得た。反応蒸留塔の塔頂からEVAcのメタノール溶液を注入し、アルカリ触媒である水酸化ナトリウムをメタノールで希釈して2.5重量%溶液を作製し、該溶液を3等分してそれぞれ異なる蒸留塔底の位置から反応蒸留塔に注入し(注:水酸化ナトリウムの当量比は0.025)、塔の底部よりメタノールガスを吹き込み、メタノールガスを用いてアルカル化により生成したメチルアセテートを塔内から取り出した。蒸留塔圧は3kgf/cm2、塔頂部の温度は106℃であった。反応蒸留塔の底部にあるEVO
Hのメタノール溶液の固形分濃度は26.5重量%であり、滴定法によりEVOHのけん化度を分析したところ99.6モル%であった。
【0020】
EVOHのメタノール溶液の脱圧をした後に、高温の水蒸気を吹き込み、メタノールを気化して取り出し、固形物濃度を37.5%まで高めた。溶液内の溶剤比はメタノール/水=70/30であった。上記溶液をポンプで射出して内径3.5mmの棒状物とし、これを凝固析出槽で60秒間滞留させ凝固物を析出させた。さらに、カッターで棒状物を長さが均一の粒状物に切断した。凝固析出槽内の溶剤はメタノール/水=10/90であり、凝固析出槽内の温度は0〜5℃であった。
【0021】
析出後のEVOH粒子を成形した後、純水で4回洗浄を行った。その際、毎回の洗浄に用いる純水の重量は、EVOHの湿潤重量に対して2倍の重量である。さらに、0.5%の酢酸水溶液で30分間浸漬処理し、遠心分離をして液体を除去した後、オーブンに入れて乾燥をした。105℃で24時間乾燥した後、取り出してメルトインデックスの測定、加熱着色試験、および定量劣化試験を行なった。結果を表1および表2に示す。
〔比較例1〕
本発明の反応システム内に含まれる不純物除去塔を用いない以外は、実施例1に示す反応条件と同一の条件により実施した。これにより得たビニルアセテート共重合体を上述と同様の方法により、水酸化ナトリウムによりアルカリ加水分解してEVOHを合成する。
【0022】
実施例1と比較例1により得たEVOHについてその特性を測定した。以下、結果を示す。
【0023】
【表1】

【0024】
表1の測定結果から、明らかに本発明の反応システムにより得られるEVOHの製品は低いMFI値を示し、樹脂の加熱着色性も改善され、加熱後の製品は白いことが判る。
〔実施例2〕
実施例1と同様な実験装置を用い、反応条件を変更して実施をした。
【0025】
連続重合条件は以下の通りである。:
ビニルアセテート供給量 6.1kg/hr
メタノール 0.31kg/hr
2,2’−アゾイソブチロニトリル 0.183g/hr
重合温度 70℃
反応槽内エチレン圧 55kgf/cm2
平均滞留時間 6hrs
不純物除去塔塔頂部における新しい
メタノールの導入供給量 0.6kg/hr
不純物除去塔塔底部における
メタノールの循環量 35L/hr
反応釜の底部から重合反応液を排出し、その組成を測定したところ、以下の通りであっ
た。:
エチレン−ビニルアセテート共重合体(EVAc)
(エチレン変性度44モル%) 39.9重量%
メタノール 3.78重量%
ビニルアセテート 43.8重量%
エチレン 12.4重量%
不純物吸収塔底部排出液の組成を測定したところ、以下の通りであった。:
排出液温度 15℃
メタノール 63.1重量%
ビニルアセテート 20.3重量%
エチレン 16.2重量%
アセトアルデヒド 0.36重量%
メチルアセテート 0.55重量%
EVAcの重合反応槽を脱圧した後に、未反応のビニルアセテートを完全に吹き出させる。塔底のEVAcを含むメタノール溶液は、固形分を43.8重量%含み、ガスクロマ
トグラフで溶液内のビニルアセテート残留量を分析した結果100ppm以下であった。
【0026】
実施例1と同様に反応蒸留塔の操作を行なった結果、塔底部のEVOHのメタノール溶液の固形物濃度は29.3重量%であり、滴定法によりEVOHけん化度を分析したとこ
ろ99.6モル%であった。
【0027】
EVOHのメタノール溶液の脱圧をした後に、高温の水蒸気を吹き込み、メタノールを気化して取り出し、固形物濃度を37.84%まで高めた。溶液内の溶剤はメタノール/水=87/13であった。上記溶液を凝固析出法により均一の顆粒状に切断する。凝固析出槽内の溶剤はメタノール/水=15/85であり、凝固析出槽内の温度は0〜5℃を示した。
【0028】
析出後のEVOH粒子を成形した後、実施例1と同様に水洗を行い、さらに酸処理と乾燥をした後に、製品を取り出してメルトインデックス測定と加熱着色試験を行なった。結果を表2に示す。
〔比較例2〕
本発明で用いる不純物除去塔を用いない以外は、実施例2と同一の反応条件で実施した。
【0029】
【表2】

【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合反応槽中でエチレンとビニルアセテートとの溶液共重合反応を行う工程と、
回収塔により、反応生成物の収集、および未反応エチレンの回収と重合反応への循環利用とを行う工程とを含み、
該重合反応の気相部分を不純物除去塔に連結させ、該重合反応で用いた溶剤で上記気相部分を洗浄し、反応中に発生する不純物を除去して反応システムに循環して再利用することを特徴とするエチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造方法。
【請求項2】
上記重合反応で用いる溶剤がメタノールであることを特徴とする請求項1に記載の連続製造方法。
【請求項3】
上記不純物が低沸点不純物であることを特徴とする請求項1に記載の連続製造方法。
【請求項4】
上記低沸点不純物がメチルアセテートおよびアセトアルデヒドであることを特徴とする請求項3に記載の連続製造方法。
【請求項5】
上記方法により得られたエチレン−ビニルアセテート共重合体をさらにアルカリ加水分解してエチレン−ビニルアルコール共重合体を合成することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
エチレンとビニルアセテートとの共重合反応に用いられる反応槽、
上記反応槽に連結した回収塔、および
上記回収塔の底部に連結したエチレン−ビニルアセテート共重合体の出口導管を含み、
反応中に発生した不純物を洗浄するための不純物除去塔が反応槽の頂上部に連結され、
上記不純物除去塔に溶剤洗浄液を供給する導管を設置して、溶剤を導入してその中に含まれる不純物を除去するようにされており、
上記不純物除去塔に溶剤の循環洗浄液導管を設置して、該除去塔に洗浄溶剤を導入、循環して該除去塔で該洗浄溶剤が洗浄に再利用できるようにされていることを特徴とするエチレン−ビニルアセテート共重合体の連続製造反応システム。
【請求項7】
上記溶剤の循環洗浄液導管および上記溶剤の洗浄液供給導管には、それぞれ熱交換器が設置されており、上記溶剤が上記除去塔に導入される前に予め冷却されていることを特徴とする請求項6に記載の反応システム。
【請求項8】
上記溶剤洗浄液がメタノールであることを特徴とする請求項6に記載の反応システム。

【公表番号】特表2006−503174(P2006−503174A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503284(P2005−503284)
【出願日】平成15年7月1日(2003.7.1)
【国際出願番号】PCT/CN2003/000519
【国際公開番号】WO2005/003197
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(591057290)長春石油化學股▲分▼有限公司 (5)
【Fターム(参考)】