説明

エチレン/α−オレフィン組成物、該組成物から製造された物品およびその製造方法

本発明は、少なくとも1種のエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーおよび少なくとも1種のポリジエンジオール系ポリウレタンを含み、少なくとも1種のエチレン/α−オレフィンインターポリマーが、−6から75のPRRおよび0.93g/cc以下の密度を有するエチレン/α−オレフィン組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行出願の参照
a.本出願は、2005年9月12日に出願された仮出願第60/716,266号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、熱成形可能な熱可塑性オレフィン(TPO)シートまたは被膜などの様々な用途のエチレン/α−オレフィン組成物に関する。該組成物は、エチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーおよびポリジエンジオール系ポリウレタンを含む。
【背景技術】
【0003】
北米では、約2500万ポンドの軟質ポリ塩化ビニル(f−PVC)が、計器およびドアパネルなどの自動車用途の熱成形可能なシートに加工されている。当該シートは、木目塗装され、他の内装部品と色合わせされる。自動車用途のシートは、いくつかの末端使用要件を満たさなければならない。主たる末端使用要件としては、低光沢値、高い表面引掻/損傷抵抗性、高耐熱性および良好な耐低温衝撃性が挙げられる。また、該シートは、任意の中間ポリウレタン(PU)発泡体層、例えば、自動車パネルに対して軟化または緩衝効果を与えるのに使用される発泡体層に対する良好な接着性を有していなければならない。
【0004】
ポリマーシートまたは被膜は、特に、シートが自動車の前窓の下の計器パネル(IP)などの窓の下に配置される場合は、低光沢または低グレアでなければならない。さらに、材料の光沢は、車両の存続期間にわたって低く維持されなければならない。材料の光沢は、典型的には、特定の角度における反射光を測定することによって求められ、典型的な試験測定は、60度で行われる。反射測定値は、光沢値に変換され、これらの値は、自動車用途では、典型的には2以下である。軟質または可塑化ポリ塩化ビニルは、典型的には、高光沢値を有する。軟質ポリ塩化ビニルの光沢を自動車用途に対して許容可能なレベルまで低下させるために、典型的には、液体ポリウレタンのトップコーティングが施される。
【0005】
熱可塑性ポリオレフィン(TPO)シートを自動車用途に使用することも可能である。熱可塑性ポリオレフィンシートまたは被膜は、一般には、軟質ポリ塩化ビニルと比較して光沢値が低いが、一次的には表面引掻/損傷特性を向上させ、光沢値を低下させる二次的な利点をもたらすために、やはりポリウレタントップコートが施される。しかし、広範な木目パターンに対する安定した光沢制御を可能にする新しい表面木目塗装技術(例えば、押出時に、木目塗装ローラ表面から押出シートに付与される微小木目塗装)が出現している。これらの新技術は、用途要件を満たすために適正量の引掻/損傷抵抗を有するポリオレフィンのPUトップコーティングの必要性をなくすことが可能であることが予測できる。当該新技術の例が、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,902,854号に記載されている。
【0006】
別の末端使用要件は、シート(f−PVCまたはTPO)が、特に夏の高温における自動車室内の上限使用温度に耐える必要があることである。現行の基準は、シートが、溶融したり、変形したり、粘着性を有したり、他の物理特性が変化したりすることなく、120℃の温度に耐えることである。この要件と並行して、シートは、−40℃のような低温で良好な衝撃特性を与える必要がある。この特性は、当該シートがシームレスエアバッグを形成するのに使用される場合に特に重要である(冬季におけるエアバッグ展開時の搭乗者の安全性が最重要であり;破片の飛散がないことが基準である)。ポリ塩化ビニルのガラス転移温度(Tg)は、典型的には−20℃から−30℃であるため、このポリマーは、そのTgより低い温度における低温衝撃特性が劣る。しかし、熱可塑性ポリオレフィンは、典型的には、ポリ塩化ビニルと比較して、より低いガラス転移温度を有するため、より良好な低温衝撃特性を有する。熱可塑性ポリオレフィンは、典型的には、特に寒い気候における車両衝撃時に展開するシームレスエアバッグおよび他の安全装置に好適な材料である。
【0007】
熱可塑性ポリオレフィンは、TPOにおける120℃の加熱熟成で流動特性および/または機械特性がほとんど変わらないことによって証明されるように、軟質ポリ塩化ビニルと比較して長期的耐久性も良好である。120℃になると、ポリ塩化ビニルは、典型的には、可塑剤が損失するため、伸張度(弾力性)が低下し、脆くなり、ひび割れしやすくなる。
【0008】
熱可塑性オレフィン(TPO)シートは、軟質材料で覆われた計器パネルおよびドアパネルに益々多く使用されつつある。典型的な組立方法は、成形過程において、熱成形軟質熱可塑性ポリオレフィン被膜と硬質表面基板とを、それら2つの層の間にポリウレタン発泡体を形成することによって接合することを必要とする。硬質表面基板は、典型的には、熱可塑性ポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)またはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ポリカーボネート(ABS/PC)混合物からなる。計器パネル用途において、ABSおよびABS/PC基板は、充填剤によって通常補強される硬質TPOに代えられる。ポリウレタン前駆体混合物(液体イソシアネート、液体ポリオールおよび触媒)をTPO被膜と硬質表面の間に射出し、次いで反応させて、発泡中間層を形成する。
【0009】
熱可塑性ポリオレフィンは、非極性であるために、一般には、ポリウレタンのような極性材料への接着性が低い。したがって、軟質熱可塑性オレフィンシートは、ポリウレタン表面に対する接着性を高めるために、従来の方法により1種または複数の極性化合物を含むプライマー溶液で表面処理される。典型的なプライマー溶液は、塩素化マレイン酸化ポリオレフィンを含む。当該表面処理は、グラビア塗布;浸漬タンクなどのプライマー塗布機構;ならびに水および他の溶媒担体を除去する乾燥手段を通じてシートを操作するように装備された大規模な通気領域を必要とする。また、軟質熱可塑性オレフィン被膜は、空隙および他の可視欠陥を生じることなく、ポリウレタン発泡体に接着しなければならない。ポリウレタン発泡体は、界面剥離(または接着破壊)を生じることなく、熱可塑性ポリオレフィン表面に接着する必要がある。プライマー溶液の不連続な塗布は、プライマーが欠如した領域における熱可塑性オレフィン被膜とポリウレタン発泡体の間の空隙の形成をもたらし得る。表面空隙を有する部品は、自動車組立品に使用できず、廃棄されるため、表面空隙は、自動車部品製造にとって損害の大きい問題になる。
【0010】
光沢または引掻抑制のためのポリウレタントップコーティングを必要としないシートを形成するのに使用することができ、ポリウレタン発泡体に対して良好な接着性を有する好適な熱可塑性ポリオレフィン組成物を開発する必要性がある。また、当該組成物から形成されたシートは、熱成形されたシートを、シートと熱可塑性基板の間に射出させ、問題なく反応させることができる反応性前駆体から形成された中間ポリウレタン(熱硬化性)発泡体層に接着させることを可能にする接着性裏地層を有する。軟質熱可塑性オレフィン組成物とともに共押出して、少なくとも2つの層を含むフィルムまたはシート組成物を形成することができる組成物から形成された耐候性、低光沢および/または良好な引掻損傷抵抗性の上層シートを開発する必要性もある。当該共押出シートは、ともにプライマー溶液に関連する高コストの製造工程および環境問題を抑え、表面特性が向上した熱可塑性オレフィン被膜を提供することになる。
【0011】
ポリウレタン成分を含み、組成物のポリマー相の安定性を維持するための融和剤または他の種類の安定剤の使用を必要としないポリオレフィン組成物を開発することがさらに必要である。融和剤または他の種類の安定剤を含む組成物の例は、米国特許第5,623,019号;同第6,414,081号;同第6,251,982号および同第6,054,533号に記載されている。国際公開第WO99/02603号に記載されているような高結晶性ポリオレフィン成分、特に、結晶性ポリプロピレンポリマーの使用を必要としないポリオレフィン/ポリウレタン組成物を開発することがさらに必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述されているこれらの必要性および他の必要性の少なくとも一部は、以下の発明によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、少なくとも1種のエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーおよび少なくとも1種のポリジエンジオール系ポリウレタンを含み、少なくとも1種のエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、−6から75、好ましくは−6から70のPRR、および0.93g/cc以下の密度を有する組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、少なくとも1種のエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーおよび少なくとも1種のポリジエンジオール系ポリウレタンを含む組成物を提供する。当該組成物は、押出、熱成形、ブロー成形、射出成形、発泡および圧延を含むが、それらに限定されない様々な処理が可能な物品の製造に有用である。本発明の組成物は、計器パネルおよびドアパネルなどの自動車用熱成形部品の製造に特に適する。該組成物は、動物タグ、ならびに中底および他の靴底などの履物部品の如き射出成形部品の製造にも有用である。本発明の組成物は、積層シートにも好適である。
【0015】
特に、本発明は、少なくとも1種のエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーおよび少なくとも1種のポリジエンジオール系ポリウレタンを含み、少なくとも1つのエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーは、−6から75、好ましくは−6から70のPRR、および0.93g/cc以下の密度を有する組成物を提供する。−6から75のすべての個々のPRR値および部分範囲が、本明細書に含まれ、本明細書に開示される。この組成物は、ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレン/α−オレフィンインターポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のプロピレン系ポリマーをさらに含んでいてもよい。
【0016】
一実施形態において、少なくとも1種のポリジエンジオール系ポリウレタンは、非水素化ポリジエンジオールから形成される。別の実施形態において、少なくとも1種のポリジエンジオール系ポリウレタンは、水素化ポリジエンジオールから形成される。別の実施形態において、少なくとも1種のポリジエンジオール系ポリウレタンは、部分水素化ポリジエンジオールから形成される。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、上述のような組成物であって、エチレン/α−オレフィンランダムコポリマーが、ポリジエンジオール系ポリウレタンとの連続または共連続相として存在する組成物を提供する。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、上述のような組成物であって、エチレン/α−オレフィンランダムコポリマーが、ポリジエンジオール系ポリウレタンとの個別相として存在する組成物を提供する。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、上述のような組成物であって、エチレン/α−オレフィンランダムコポリマーが、ポリジエンジオール系ポリウレタンの連続相またはマトリックス内の不連続相または分散領域として存在する組成物を提供する。一実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、長さ0.2ミクロンから18ミクロン超の範囲にある。別の実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、長さ0.5ミクロンから18ミクロン超の範囲にある。別の実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、長さ0.2ミクロンから40ミクロンの範囲にある。別の実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、長さ0.5ミクロンから20ミクロンの範囲にある。さらに別の実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、幅0.01ミクロンから20ミクロン、好ましくは0.1ミクロンから10ミクロン、より好ましくは0.5ミクロンから7ミクロンの範囲にある。
【0020】
別の実施形態において、本発明は、上述のような組成物であって、エチレン/α−オレフィンランダムコポリマーが、ポリジエンジオール系ポリウレタンの連続相またはマトリックス内の非配向不連続相または分散領域として存在する組成物を提供する。一実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、長さ0.2ミクロンから10ミクロン超の範囲にある。別の実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、長さ0.2ミクロンから20ミクロン、好ましくは0.5ミクロンから10ミクロンの範囲にある。別の実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、幅0.01ミクロンから20ミクロン、好ましくは0.05ミクロンから10ミクロン、より好ましくは0.1ミクロンから7ミクロンの範囲にある。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、上述のような組成物であって、ポリジエンジオール系ポリウレタンが、エチレン/α−オレフィンランダムコポリマーの連続相またはマトリックス内の配向不連続相または分散領域として存在する組成物を提供する。一実施形態において、分散ポリウレタン領域は、長さ0.2ミクロンから29ミクロン超の範囲にある。別の実施形態において、分散ポリウレタン領域は、長さ0.5ミクロンから29ミクロン超の範囲にある。別の実施形態において、分散ポリウレタン領域は、幅0.001ミクロンから5ミクロン、好ましくは0.01ミクロンから2ミクロン、より好ましくは0.05ミクロンから1ミクロンの範囲にある。
【0022】
一実施形態において、本発明の組成物は、非相溶性樹脂を接着する、例えば、熱成形TPOシートなどのポリオレフィン層とポリウレタン層とを接着するための接着性裏地層または結着層として使用される。
【0023】
他の実施形態において、本発明の組成物は、無水マレイン酸グラフトポリオレフィン(エラストマーまたはポリプロピレン);米国特許第6,414,081号に記載されている他の機能化ポリマーおよびそれらの反応生成物;ならびに米国特許第5,623,019号に記載されている、モノアルキレンアレンおよび水素化または非水素化共役ジエンのブロックを含むブロックコポリマーを含むがそれらに限定されない混和剤を必要とせずに調製されるため、それらを含まない。当該混和剤は、典型的には、従来のポリオレフィン/ポリウレタン組成物に必要とされる。別の実施形態において、本発明の組成物は、油を必要とせずに、特に、米国特許第6,251,982号に記載されている非極性エキステンダー油を必要とせずに調製される(そのため、それらを含まない)。別の実施形態において、該組成物は、米国特許第5,364,908号に記載されているヒドロキシ、アミノおよびカルボン酸等を含む極性官能基を含む小分子およびオリゴマーを含むが、それらに限定されない分散剤を含まない。
【0024】
別の実施形態において、本発明の組成物を膠または塗料に対する接着剤として使用できる。別の実施形態において、ポリジエンジオール系ポリウレタンを水素化して、組成物の紫外線(UV)安定性を向上させることができるため、多層シートにおける外層または上層として使用することができる。
【0025】
本発明は、また、本明細書に記載されるような組成物の他の実施形態、および2つ以上の実施形態の組合せを提供する。
【0026】
上述のように、本発明は、本明細書に記載されている本発明の組成物から調製された物品を提供する。当該物品としては、計器パネルおよびドアパネルなどの自動車内装部品;座席装備品および椅子張りなどの自動車および自動車以外の用途に使用されるコーティング布;真空成形異形材;発泡シートおよび非発泡シートの積層体;および履物部品が挙げられるが、それらに限定されない。押出、熱成形、ブロー成形、射出成形、発泡および圧延法を含むが、それらに限定されない1つまたは複数のそれぞれの処理によって、当該物品を製造することができる。
【0027】
本発明の別の実施形態において、本発明のフィルムおよびポリウレタン発泡体を含み、該フィルムは、ポリウレタン発泡体の表面に接着した物品が提供される。当該物品は、計器パネルであってもよい。さらなる実施形態において、本発明のフィルムとポリウレタン発泡体の接着力は、該発泡体と、ポリジエンジオール系ポリウレタンを除いて本発明のフィルムと同じ成分を含む組成物から製造された別のフィルムとの接着力より強い。
【0028】
本発明の一実施形態において、本発明の組成物から形成されるフィルムが提供される。別の実施形態において、少なくとも2つの層またはプライを含み、少なくとも1つの層またはプライが本明細書に記載されている本発明の組成物から形成されたフィルムが提供される。本発明の別の態様において、当該フィルムは、共押出またはラミネーションによって形成される。当該フィルムは、本明細書に記載されるような1つまたは複数の形態的特徴を含んでいてもよい。当該フィルムを含む、または当該フィルムから形成された少なくとも1つの部品を含む物品も提供される。当該物品としては、自動車内装部品、パネル被膜、布コーティング、真空成形異形材、履物部品、積層シートおよび他の物品が挙げられるが、それらに限定されない。当該物品を本明細書に記載されるようなそれぞれの方法によって製造することができる。
【0029】
本発明の別の実施形態において、少なくとも3つの層またはプライを含み、少なくとも1つの層またはプライが本明細書に記載されている本発明の組成物から形成されたフィルムが提供される。本発明の別の態様において、当該フィルムは、共押出またはラミネーションによって形成される。当該フィルムは、本明細書に記載されるように1つまたは複数の形態的特徴を含んでいてもよい。当該フィルムを含む、または当該フィルムから形成された少なくとも1つの部品を含む物品も提供される。当該物品としては、自動車内装部品、パネル被膜、布コーティング、真空成形異形材、履物部品、積層シートおよび他の物品が挙げられるが、それらに限定されない。当該物品を本明細書に記載されるようなそれぞれの方法によって製造することができる。
【0030】
本発明のさらに別の実施形態において、少なくとも2つの層を含み、少なくとも1つの層が本発明の組成物から形成され、少なくとも1つの他の層が流動性改質された実質的にゲルのない熱可塑性エラストマー組成物から形成され、前記エラストマー組成物は、エチレン/α−オレフィンポリマーまたはエチレン/α−オレフィンポリマー混合物、ならびにポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレン/エチレンコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含み、
該エラストマー組成物は、
少なくとも20の剪断減粘指数、
流動性改質されていない組成物の溶融粘度の少なくとも1.5倍の溶融強度、
流動性改質されていない組成物の凝固温度より少なくとも10℃高い凝固温度、および
流動性改質されていない組成物の上限使用温度より少なくとも10℃高い上限使用温度
の4つの特徴のうちの少なくとも3つの組合せを有するフィルムが提供される。一実施形態において、流動性は、1種または複数種の遊離ラジカル生成化合物、放射線、熱またはそれらの組合せによって改質される。別の実施形態において、熱可塑性エラストマー組成物は、キシレンを溶媒として使用する場合に、不溶性ゲル含有量が10パーセント未満、好ましくは5パーセント未満、さらにより好ましくは2パーセント未満、さらにより好ましくは0.5パーセント未満、最も好ましくは検出限界未満である。本発明は、当該フィルムを含む、または当該フィルムから形成された物品をさらに提供する。
【0031】
別の実施形態において、本発明は、少なくとも2つの層を含み、少なくとも1つの層が、本発明の組成物から形成され、
少なくとも1つの他の層が、5cN以上の溶融強度を有するエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーを含む組成物から形成されたフィルムを提供する。本発明は、当該フィルムを含む、または当該フィルムから形成された物品をさらに提供する。
【0032】
本発明は、また、本明細書に記載されるような本発明の組成物から形成された少なくとも1つの部品を含む物品を提供する。押出、熱成形、ブロー成形、射出成形、発泡および圧延法を含むが、それらに限定されない1つまたは複数のそれぞれの処理によって、当該物品を製造することができる。一実施形態において、本明細書に記載されている物品は、非自動車用物品であり、自動車以外の用途に使用される。
【0033】
本発明は、また、本明細書に記載されている組成物および物品を調製する方法を提供する。本発明は、また、本明細書に記載されるような組成物、物品および方法の様々な実施形態および2つ以上の実施形態の組合せを提供する。
【0034】
本発明の組成物
本発明の組成物は、少なくとも1種のエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーおよび少なくとも1種のポリジエンジオール系ポリウレタンを含む。一実施形態において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、50重量パーセント以上の量で存在し、ポリジエンジオール系ポリウレタンは、50重量パーセント以下の量で存在し、両百分率は、エチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーとポリジエンジオール系ポリウレタンの全重量に基づいている。それらの量は、好ましくは、50から90重量パーセントのエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーおよび50から10重量パーセントのポリジエンジオール系ポリウレタンであり、より好ましくは、50から85重量パーセントのエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーおよび50から15重量パーセントのポリジエンジオール系ポリウレタンである。別の実施形態において、該組成物は、55から80重量パーセントのエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーおよび45から20重量パーセントのポリジエンジオール系ポリウレタンを含む。それらの量は、合計100重量パーセントになるように選択される。50から90重量パーセントのすべての個々の値および部分範囲のエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーが本明細書に含まれ、本明細書に開示される。50から10重量パーセントのすべての個々の値および部分範囲のポリジエンジオール系ポリウレタンが本明細書に含まれ、本明細書に開示される。
【0035】
本発明の好ましい組成物は、50重量パーセント以上、好ましくは60重量パーセント以上のエチレン/α−オレフィン、および50重量パーセント以下、好ましくは40重量パーセント以下のポリジエンジオール系ポリウレタンを含む。一実施形態において、該組成物は、50重量パーセントから80重量パーセント、好ましくは55重量パーセントから77重量パーセントのエチレン/α−オレフィン;および20重量パーセントから50重量パーセント、好ましくは23重量パーセントから45重量パーセントのポリジエンジオール系ポリウレタンを含み、両百分率は、エチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーとポリジエンジオール系ポリウレタンの全重量に基づいている。
【0036】
別の実施形態において、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して、85重量パーセントを超える、好ましくは90重量パーセントを超える、より好ましくは95重量パーセントを超えるエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーとポリジエンジオール系ポリウレタンの全重量を含む。
【0037】
一実施形態において、本発明の組成物は、ASTM D−1238(190℃、負荷2.16kg)を用いて測定されるメルトインデックス、I2が0.01g/10分から100g/10分、好ましくは0.1g/10分から50g/10分、より好ましくは1g/10分から40g/10分、さらにより好ましくは5g/10分から40g/10分である。0.01g/10分から100g/10分のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。別の実施形態において、該組成物は、0.01g/10分以上、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは5g/10分以上のメルトインデックス、I2を有する。別の実施形態において、該組成物は、100g/10分以下、好ましくは50g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下のメルトインデックス、I2を有する。
【0038】
別の実施形態において、該組成物は、DSCによって測定される結晶化度が50%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下である。好ましくは、これらのポリマーは、2%から50%のすべての個々の値および部分範囲を含んで、2%から50%の結晶化度を有する。当該個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。
【0039】
別の実施形態において、該組成物は、0.855g/cm3以上、好ましくは0.86g/cm3以上、より好ましくは0.87g/cm3以上の密度;および0.97g/cm3以下、好ましくは0.96g/cm3以下、より好ましくは0.95g/cm3以下の密度を有する。一実施形態において、密度は、0.855g/cm3から0.97g/cm3、好ましくは0.86g/cm3から0.95g/cm3、より好ましくは0.865g/cm3から0.93g/cm3である。0.855g/cm3から0.97g/cm3のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。
【0040】
別の実施形態において、該組成物は、加工形態で、5から40MPa、好ましくは8から30MPa、さらにより好ましくは9から20MPaの引張強度を有する。5から40MPaの個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。
【0041】
別の実施形態において、該組成物は、加工形態で、縦方向(machine direction)または幅方向(cross machine direction)の伸度が50から600パーセントまたは50から500パーセント、より好ましくは50から300パーセント、さらにより好ましくは50から200パーセントである。50から500パーセントのすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。
【0042】
別の実施形態において、該組成物は、0.5から50cN、より好ましくは0.5から20cN、さらにより好ましくは0.5から10cNの溶融強度を有する。0.5から50cNのすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。
【0043】
別の実施形態において、該組成物は、(室温または23℃で)10から100ダイン/cm、より好ましくは20から70ダイン/cm、さらにより好ましくは30から50ダイン/cmの表面張力を有する。10から100ダイン/cmのすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。
【0044】
別の実施形態において、該組成物は、(室温または23℃で)30ダイン/cm以上、より好ましくは35ダイン/cm以上、さらにより好ましくは40ダイン/cm以上の表面張力を有する。
【0045】
一実施形態において、上述のような組成物であって、エチレン/α−オレフィンランダムコポリマーが、ポリジエンジオール系ポリウレタンとの連続または共連続相として存在する組成物を提供する。
【0046】
別の実施形態において、本発明は、上述のような組成物であって、エチレン/α−オレフィンランダムコポリマーが、ポリジエンジオール系ポリウレタン内の個別相として存在する組成物を提供する。
【0047】
別の実施形態において、該組成物は、エチレン/α−オレフィンランダムコポリマーがポリジエンジオール系ポリウレタンの連続相またはマトリックス内の不連続相または分散領域として存在する形態で存在する。別の実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、長さ0.2ミクロンから18ミクロン超の範囲にある。別の実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、長さ0.5ミクロンから18ミクロン超の範囲にある。別の実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、長さ0.2ミクロンから40ミクロンの範囲にある。別の実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、長さ0.5ミクロンから20ミクロンの範囲にある。さらに別の実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、幅0.01ミクロンから20ミクロン、好ましくは0.1ミクロンから10ミクロン、より好ましくは0.5ミクロンから7ミクロンの範囲にある。分散領域の幅に関して、0.01ミクロンから20ミクロンの個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。
【0048】
別の実施形態において、該組成物は、エチレン/α−オレフィンランダムコポリマーがポリジエンジオール系ポリウレタンの連続相またはマトリックス内の非配向不連続相または分散領域として存在する形態で存在する。別の実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、長さ0.2ミクロンから10ミクロン超の範囲にある。別の実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、長さ0.2ミクロンから20ミクロン、好ましくは0.5ミクロンから10ミクロンの範囲にある。別の実施形態において、分散エチレン/α−オレフィン領域は、幅0.01ミクロンから20ミクロン、好ましくは0.05ミクロンから10ミクロン、より好ましくは0.1ミクロンから7ミクロンの範囲にある。分散領域の幅に関して、0.01ミクロンから20ミクロンの個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。
【0049】
別の実施形態において、該組成物は、ポリジエンジオール系ポリウレタンがエチレン/α−オレフィンランダムコポリマーの連続相またはマトリックス内の配向不連続相または分散領域として存在する形態として存在する。一実施形態において、分散ポリウレタン領域は、長さが0.2ミクロンから29ミクロン以上の範囲にある。別の実施形態において、分散ポリウレタン領域は、長さが0.5ミクロンから29ミクロン以上の範囲にある。別の実施形態において、分散ポリウレタン領域は、幅が0.005ミクロンから5ミクロン、好ましくは0.01ミクロンから2ミクロン、より好ましくは0.05ミクロンから1ミクロンの範囲にある。分散領域の幅に関して、0.005ミクロンから5ミクロンの個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。
【0050】
1種または複数種のエチレン/αオレフィンインターポリマーを1種または複数種のポリジエンジオール系ポリウレタンと組み合わせることによって本発明の組成物を調製することができる。典型的には、ポリマー成分(ランダムエチレン/α−オレフィンインターポリマーとポリジエンジオール系ポリウレタン)を反応後混合することによって本発明の組成物を調製する。反応後混合の実例は、2種以上の固体ポリマーを押出機に供給し、物理的に混合して、実質的に均質の組成物とする押出である。本発明の組成物を架橋および/または発泡させることができる。好ましい実施形態において、ランダムエチレン/α−オレフィンインターポリマーとポリジエンジオール系ポリウレタンを溶融法で混合することによって本発明の組成物を調製する。さらなる実施形態において、溶融法は、溶融押出法である。
【0051】
本発明の組成物は、エチレン/α−オレフィンインターポリマーおよびポリジエンジオール系ポリウレタンに加えて、抗酸化剤、表面張力改質剤、膨張剤、発泡剤、帯電防止剤、離型剤、架橋剤および粘着防止剤を含むが、それらに限定されない少なくとも1つの添加剤をさらに含んでいてもよい。ヒンダードフェノール抗酸化剤の例は、Ciba−Geigy Corp.から入手可能なIrganox(登録商標)1076抗酸化剤である。
【0052】
別の実施形態において、該組成物は、プロピレンのホモポリマーなどのポリプロピレンポリマー成分、プロピレンとエチレンもしくは少なくとも1種のα−オレフィンとのコポリマー、またはホモポリマーとコポリマーの混合物、有核ホモポリマー、有核コポリマー、あるいはホモポリマーとコポリマーの有核混合物をさらに含む。プロピレンコポリマーにおけるα−オレフィンは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンまたは4−メチル−1−ペンテンであってもよい。エチレンは、好ましいコモノマーである。コポリマーは、ランダムコポリマーもしくはブロックコポリマーまたはランダムコポリマーとブロックコポリマーの混合物であってもよい。ポリマーは分枝状であってもよい。そのように、この成分は、好ましくは、ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレン/エチレンコポリマーまたはそれらの混合物からなる群から選択される。この成分は、0.1g/10分から150g/10分、好ましくは0.3g/10分から60g/10分、より好ましくは0.8g/10分から40g/10分、最も好ましくは0.8g/10分から25g/10分のメルトフローレート(MFR)(230℃および重量2.16kg)を有することができる。0.1から150g/10分のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。この成分は、0.84g/ccから0.92g/cc、より好ましくは0.85g/ccから0.91g/cc、最も好ましくは0.86g/ccから0.90g/ccの密度を有することができる。0.84g/ccから0.92g/ccの個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。この成分は、125℃を超える融点を有することができる。
【0053】
本明細書に用いられているように、「有核」とは、Millikenから商業的に入手可能なジベンジルソルビトールであるMillad(登録商標)などの核形成剤を添加することによって改質されたポリマーを指す。他の従来の核形成剤を使用することもできる。
【0054】
以下のポリプロピレンポリマーを本発明の組成物に使用することができる。Basell(メリーランド州Elkton)から入手可能である、0.90g/ccの密度および2g/10分のMFRを有する透明ポリプロピレンコポリマー樹脂であるPROFAX SR−256M。Basell(メリーランド州Elkton)から入手可能である0.90g/ccの密度および1.5g/10分のMFRを有する耐衝撃ポリプロピレンコポリマー樹脂であるPROFAX8623。The Dow Chemical Companyから入手可能であり、0.86g/ccから0.89g/ccの範囲の密度および2g/10分から25g/10分の範囲のMFRを有するプロピレン/エチレンコポリマーとして入手可能VERSIFYプラストマーおよびエラストマー。
【0055】
好ましい実施形態において、本発明の組成物を別のポリオレフィンと共押出して、少なくとも2つの層またはプライを含むフィルムを形成する。別の実施形態において、本発明の組成物を1種または複数のポリオレフィンと共押出して、少なくとも3つの層またはプライを含むフィルムを形成する。好適な共押出用ポリオレフィンとしては、高溶融強度(≧5cN)エチレン/α−オレフィンインターポリマー、およびその全内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,506,842号に記載されている流動性改質された実質的にゲルのない熱可塑性エラストマー組成物が挙げられる。当該フィルムから形成された部品を含む物品も本発明の範囲内に含まれる。
【0056】
エチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーおよびポリジエンジオール系ポリウレタンを含む本発明の組成物と、ポリエーテル/ポリオール系ウレタンおよび/またはポリエステル/ポリオール系ウレタンなどの1種または複数種の他の種類の熱可塑性ポリウレタンとを組み合わせることも本発明の範囲内である。当該組成物において、各ポリウレタンは、1つまたは複数の不飽和基を有していても、いなくてもよい。また、当該組成物は、1種または複数種のさらなるポリオレフィンおよび/または1種または複数種のポリオレフィンエラストマーを含んでいてもよい。
【0057】
好適なポリエーテルポリオールとしては、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレンまたはそれらの混合物などの酸化アルキレンによる適切な出発分子のアルコキシ化によって得られるものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0058】
好適なポリエステル/ポリオールとしては、アルカリ二酸に対してモル過剰の脂肪族グリコールを使用する従来のエステル化法により調製されるポリ(アルカン二酸アルキレン)グリコールが挙げられるが、それらに限定されない。好適なイソシアネート、および必要に応じて連鎖延長剤および連鎖停止剤が本明細書に記載されている。
【0059】
本発明の組成物は、本明細書に記載されるような実施形態の2つ以上を含んでいてもよい。
【0060】
エチレン/α−オレフィンランダムインターポリマー成分
本発明の組成物は、少なくとも1種のエチレン/α−オレフィン(EAO)ランダムインターポリマーを含む。「インターポリマー」という用語は、本明細書に用いられているように、少なくとも2種のモノマーが重合されたポリマーを指す。当該用語は、例えば、コポリマー、ターポリマーおよびテトラポリマーを含む。エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、エチレンを少なくとも1つの共モノマー、典型的には、炭素原子が3個から20個(C3〜C20)のアルファオレフィン(α−オレフィン)または1,4−ブタジエンもしくは1,4−ヘキサジエンなどのジエンとともに重合することによって調製されたポリマーである。3個から20個の炭素原子のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。
【0061】
例示的なα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンおよびスチレンが挙げられる。α−オレフィンは、望ましくはC3〜C10α−オレフィンである。好ましくは、α−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンまたは1−オクテンである。例示的なインターポリマーとしては、エチレン/プロピレン(EP)コポリマー、エチレン/ブテン(EB)コポリマー、エチレン/ヘキセン(EH)コポリマー、エチレン/オクテン(EO)コポリマー、エチレン/プロピレン/ジエン改質(EPDM)インターポリマーなどのエチレン/アルファ−オレフィン/ジエン改質(EAODM)インターポリマー、およびエチレン/プロピレン/オクテンターポリマーが挙げられる。好ましいコポリマーとしては、EP、EB、EHおよびEOポリマーが挙げられる。
【0062】
別の実施形態において、エチレン/α−オレフィンインターポリマーは、最終ポリマーにおけるコモノマー導入量が、重合性モノマーの全重量に対して、5重量パーセントを超える、好ましくは10重量パーセントを超える。コモノマー導入量は、重合性モノマーの全重量に対して、15重量パーセントを超える、さらには20から25重量パーセントを超える量であり得る。
【0063】
本発明のEAOインターポリマーは、現行の商業的に入手可能な直鎖状(短鎖分枝状または無分枝)EAOインターポリマーと比較して、長鎖分枝状インターポリマーである。概して、「長鎖分枝」または「LCB」は、EAOポリマーの骨格へのアルファ−オレフィンの導入に起因する短鎖の長さを超える鎖長を意味する。別の実施形態において、EAOインターポリマーは、インターポリマー骨格内に長鎖分枝を形成できる少なくとも1つの触媒から調製される。
【0064】
長鎖分枝(LCB)をポリマー骨格に導入する能力については、いくつかの特許に記載されている。例えば、米国特許第3,821,143号では、1,4−ヘキサジエンを分枝モノマーとして使用して、LCBを有するエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)ポリマーを調製する。当該分枝形成剤は、「H分枝形成剤」と称することもある。米国特許第6,300,451号および同第6,372,847号でも、様々なH型分枝形成剤を使用して、LCBを有するポリマーを調製する。幾何拘束型触媒(CGC)は、例えばビニル末端巨大モノマーのような長鎖分枝をポリマー骨格に導入して、LCBポリマーを形成する能力を有することが見いだされた(米国特許第5,278,272号(以降‘272特許)および米国特許第5,272,236号参照)。当該分枝形成は、「T型分枝形成」と称する。これらの特許すべては、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0065】
‘272特許には、当該CGCが、長鎖分枝をポリマー骨格に導入する能力の点で独特であることが教示されている。これらのCGCによって導入できるLCBの量は、「0.01LCB/1000炭素原子」から「3LCB/1000炭素原子」である。炭素原子の数は、骨格炭素および分枝炭素を含む。分子内のLCB度を定めるのに使用できる他の様々な方法が存在する。そのような方法の1つが米国特許第6,372,847号に教示されている。この方法は、ムーニー応力緩和データを用いて、MLRA/ML比を計算する。MLRAは、ムーニー緩和面積であり、MLは、ポリマーのムーニー粘度である。別の方法は、インターポリマー粘度を用いて、ポリマーにおけるLCBの推定レベルを計算するPRRである。
【0066】
インターポリマー粘度は、0.1から100rad/秒の動的スイープ下で、動的機械的分光計(RheometricsのRMS−800またはARES等)を使用して、毎秒0.1〜100ラジアンの範囲内の剪断速度におけるポアズ(ダイン−秒/平方センチメートル(d−sec/cm2))および190℃で、窒素雰囲気下で簡便に測定される。0.1rad/秒および100rad/秒における粘度をそれぞれV0.1およびV100で表し、それら2つの比をRRと称し、V0.1/V100で表すことができる。
【0067】
PRR値は、以下の式によって計算される。
PRR=RR+[3.82−インターポリマームーニー粘度(125℃でML1+4)×0.3]。PRR測定については、参照により本明細書にその全体が組み込まれている米国特許第6,680,361号に記載されている。
【0068】
一実施形態において、EAOインターポリマーは、1から70、好ましくは8から70、より好ましくは12から60、さらにより好ましくは15から55、最も好ましくは18から50のPRRを有する。通常のレベルのLCBを有する現在市販されているEAO樹脂は、一般的に3未満のPRR値を有する。別の実施形態において、EAOインターポリマーは、3未満、好ましくは2未満のPRRを有する。別の実施形態において、EAOインターポリマーは、−1から3、好ましくは0.5から3、より好ましくは1から3のPRRを有する。−1から70のすべての個々のPRR値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。PRR値70は、MLRA/MV値7.6に相当する。
【0069】
T型分枝形成は、典型的には、その全体が参照により本明細書に組み込まれているWO00/26268(および米国特許第6,680,361号)に記載されているような適切な反応条件下において、メタロセン触媒の存在下で、エチレンまたは他のアルファオレフィンと鎖末端不飽和巨大モノマーとを共重合することによって得られる。極めて高いレベルのLCBが望まれる場合は、T型分枝形成は、LCB度に対する実用的な上限を有するため、H型分枝形成が好ましい方法である。WO00/26268に記載されているように、T型分枝形成のレベルが高くなると、製造が経済的に成り立たなくなる点に達するまで、製造プロセスの効率またはスループットが著しく低下する。測定可能なゲルを伴わず、非常に高レベルのT型LCBを有するT型LCBポリマーをメタロセン触媒によって製造することができる。成長するポリマー鎖に導入される巨大モノマーは、反応性不飽和部位を1つしか有さないため、得られるポリマーは、様々な長さの側鎖をポリマー骨格に沿って異なる間隔で含んでいるにすぎない。
【0070】
H型分枝形成は、典型的には、エチレンまたは他のアルファオレフィンと、重合法において非メタロセン型の触媒と反応する2つの二重結合を有するジエンとを共重合することによって得られる。名称が暗示するように、ジエンは、ジエン架橋を通じて1つのポリマー分子を別の分子に結合させ、得られるポリマー分子は、長鎖分枝より架橋と記述され得る「H」に類似している。H型分枝形成は、典型的には、極めて高レベルの分枝形成が望まれるときに用いられる。あまりにも多くのジエンが使用されると、ポリマー分子は、あまりにも多くの分枝または架橋を形成して、ポリマー分子が(溶液法において)反応溶媒に溶解しなくなるため、ポリマー分子が溶液から析出し、ポリマー中にゲル粒子が形成されることになる。
【0071】
また、H型分枝形成剤を使用すると、メタロセン触媒が不活性化され、触媒効率が低下し得る。したがって、H型分枝形成剤を使用する場合は、使用される触媒は、典型的には、メタロセン触媒ではない。米国特許第6,372,847号においてH型分枝ポリマーを調製するのに使用された触媒は、バナジウム型触媒である。
【0072】
LCB度が0.01LCB/1000炭素原子から3LCB/1000炭素原子であり、触媒が幾何拘束型触媒(メタロセン触媒)であるT型LCBポリマーが、米国特許第5,272,236号に開示されている。P.DoerpinghausおよびD.BairdのThe Journal of Rheology、47(3)、717〜736頁、May/June 2003、「Separating the Effects of Sparse Long−Chain Branching on Rheology from Those Due to Molecular Weight in Polyethylenes」によれば、低密度ポリエチレン(LDPE)を調製するのに使用されるような遊離ラジカル法は、極めて高レベルのLCBを有するポリマーを製造する。例えば、DoerpinghausおよびBairdの表1における樹脂NA952は、遊離ラジカル法によって調製されたLDPEであり、表IIによれば、3.9LCB/1000炭素原子を含む。平均レベルのLCBを有すると考えられる、The Dow Chemical Company(米国ミシガン州Midland)から入手可能なエチレンアルファオレフィン(エチレンオクテンコポリマー)は、それぞれ表IおよびIIの樹脂AffinityPL1880およびAffinityPL1840を含み、0.018および0.057LCB/1000炭素原子を含む。
【0073】
本発明の一実施形態において、EAO成分は、T型LCBレベルが現在商業的に入手可能なEAOのレベルを大きく上回るが、LCBレベルはH型および遊離ラジカル分枝形成剤を使用することによって得られたものを下回る。表1には、本発明に有用な様々な種類のエチレン/α−オレフィンインターポリマーのLCBレベルが列記されている。
【0074】
好ましくは、本発明のEAOインターポリマーは、1.5から4.5、より好ましくは1.8から3.8、最も好ましくは2.0から3.4の分子量分布(MWD)を有する。1.5から5のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。EAOインターポリマーは、0.93g/cc以下、好ましくは0.92g/cc以下、より好ましくは0.91g/cc以下の密度を有する。別の実施形態において、EOAインターポリマーは、0.86g/cc以上、好ましくは0.87g/cc以上、より好ましくは0.88g/cc以上の密度を有する。別の実施形態において、EAOインターポリマーは、0.86g/ccから0.93g/ccの密度を有し、0.86g/ccから0.93g/ccのすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。
【0075】
一実施形態において、EAOインターポリマーは、0.1g/10分以上、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは1.0g/10分以上のメルトインデックスI2を有する。別の実施形態において、EAOインターポリマーは、30g/10分以下、好ましくは25g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下のメルトインデックスI2を有する。
【0076】
別の実施形態において、EAOインターポリマーは、0.1g/10分から30g/10分、好ましくは0.1g/10分から20g/10分、より好ましくは0.1g/10分から15g/10分のメルトインデックスI2を有する。0.1g/10分から30g/10分のすべての個々の値および部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。
【0077】
本発明に好適なEAOインターポリマーをWO00/26268に記載されている方法によって製造することができる。米国特許第6,369,176号に記載されている混合触媒系を使用して、WO00/26268に記載されている方法によって、EAO−1、EAO−2−1、EAO−8およびEAO−9を調製した。WO00/26268に記載されている手順によってEAO−7−1を二重反応器で調製した。EAO−E−Aを米国特許第5,272,236号および同5,278,272号に記載されているように調製した。米国特許第5,272,236号;同5,278,272号および同6,369,176号は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0078】
【表1】

【0079】
好適な市販EAOの例としては、The Dow Chemical Companyから入手可能なEngage(登録商標)、ENR、ENX、Nordel(登録商標)およびNordel(登録商標)IP製品ならびにExxonMobil Chemical Companyから入手可能なVistalonが挙げられる。
【0080】
本発明の別の実施形態において、EAOインターポリマーは、100000ポアズを超える、好ましくは200000ポアズを超える、より好ましくは300000ポアズを超える、最も好ましくは400000ポアズを超える0.1rad/秒の剪断粘度(本明細書では低剪断粘度とも称する)を有する。この粘度は、RheometricsのRMS−800またはARESなどの動的機械的分光計を使用して、窒素雰囲気下で、190℃にて0.1ラジアン毎秒(rad/秒)の剪断速度でポリマー粘度を測定することによって求められる。
【0081】
低剪断粘度は、ポリマーの重量(MW)およびLCB度に影響される。分子量は、ポリマーの溶融強度によって間接的に測定される。一般原則として、ポリマーの分子量が大きいほど、溶融強度が良好である。しかし、分子量が大きくなりすぎると、ポリマーは、加工するのが不可能になる。LCBをポリマー骨格に導入すると、高MWポリマーの加工性が向上する。したがって、低剪断粘度(0.1rad/秒)は、ポリマーにおけるMWとLCBのバランスのある程度の尺度である。
【0082】
本発明の別の実施形態において、エチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーは、5cN以上、好ましくは6cN以上、より好ましくは7cN以上の溶融強度を有する。溶融強度(MS)は、本明細書に用いられているように、33逆秒(sec-1)の一定剪断速度で、細管レオメータダイから押し出された溶融ポリマーの溶融フィラメントに対して測定されたセンチニュートン(cN)単位の最大引張力であり、フィラメントは、1cm/秒の初期速度から0.24センチメートル毎秒(cm/秒)の割合でフィラメントを加速する一対のニップローラによって延伸される。溶融フィラメントは、好ましくは、Instron細管レオメータの胴体に充填された10グラム(g)のポリマーを加熱し、ポリマーを190℃で5分間平衡化し、直径0.21cm、長さ4.19cmの細管ダイを通じて、2.54cm/分のピストン速度でポリマーを押し出すことによって生成される。引張力は、好ましくは、フィラメントが細管ダイを出る点の10cm真下にニップローラが位置するように配置されるGoettfert Rheotensで測定される。
【0083】
一実施形態において、エチレン/α−オレフィンポリマー(またはインターポリマー)は、α−オレフィンコモノマーが所与のポリマー分子内にランダムに分布し、ポリマー分子の実質的にすべてが同じエチレン対コモノマー比を有する実質的に直鎖状の均一分枝ポリマーである。本発明に使用される実質的に直鎖状のエチレンインターポリマーは、その各々の全内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,272,236号;同第5,278,272号;同第6,054,544号;同第6,335,410号および同第6,723,810号に記載されている。実質的に直鎖状のエチレンインターポリマーは、長鎖分枝を有する均一分枝エチレンポリマーである。長鎖分枝は、ポリマー骨格と同じコモノマー分布を有し、ポリマー骨格の長さとほぼ同じ長さを有することができる。
【0084】
「実質的に直鎖状」は、典型的には、‘272特許について上述したように、平均で、(骨格炭素および分枝炭素の双方を含む)全炭素数1000個当たり0.01から3の長鎖分枝で置換されたポリマーを指す。全炭素数1000個当たり0.01から1の長鎖分枝で置換されてもよいポリマーもある。実質的に直鎖状のポリマーの市販品の例としては、ENGAGE(商標)ポリマー(DuPont Dow Elastomers L.L.C.から入手可能)およびAFFINITY(商標)ポリマー(The Dow Chemical Companyから入手可能)が挙げられる。
【0085】
実質的に直鎖状のエチレンインターポリマーは、独特の均一分枝エチレンポリマー類を形成する。それらは、米国特許第3,645,992号(Elston)に記載されている、良く知られた従来の均一分枝直鎖状エチレンインターポリマー類と実質的に異なり、さらに、それらは、従来の不均一チーグラ・ナッタ触媒重合直鎖状エチレンポリマー(例えば、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、または例えば米国特許第4,076,698号(Andersonら)に開示されている技術を用いて製造された高密度ポリエチレン(HDPE)と同類でもなく、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン−アクリル酸(EAA)コポリマーおよびエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーなどの高圧遊離ラジカル誘導高度分枝ポリエチレンと同類でもない。
【0086】
本発明に有用な均一に分枝化した実質的に直鎖状のエチレンインターポリマーは、分子量分布が比較的狭いが、優れた加工性を有する。驚いたことに、実質的に直鎖状のエチレンインターポリマーのASTM D1238によるメルトフロー比(I10/I2)は広く変動し、分子量分布(Mw/MnまたはMWD)と本質的に無関係である。この驚くべき挙動は、例えば米国特許第3,645,992号(Elston)に記載されているもののような従来の均一分枝直鎖状エチレンインターポリマー、および例えば米国特許第4,076,698号(Andersonら)に記載されているもののような従来の不均一分枝チーグラ・ナッタ重合直鎖状ポリエチレンインターポリマーと全く対照的である。実質的に直鎖状のエチレンインターポリマーと異なり、直鎖状エチレンインターポリマー(均一分枝であっても、不均一分枝であっても)は分子量分布が大きくなるに従って、I10/I2値も大きくなるという流動特性を有する。
【0087】
本発明の組成物のランダムエチレン/α−オレフィン成分は、本明細書に記載されている2つ以上の実施形態を含んでいてもよい。
【0088】
ポリウレタン成分
本発明のポリウレタンは、不飽和炭化水素骨格、および分子の末端に結合した、または分子内でペンダント状に結合した少なくとも1つ(好ましくは2つ)のイソシアネート反応基を有することを特徴とする官能ポリジエンからそれぞれ独立に調製される。この官能基は、イソシアネートと反応して共有結合を形成する基のいずれかであってもよい。この官能基は、好ましくは、「活性水素原子」を含み、典型的な例は、ヒドロキシル、一級アミノ、二級アミノ、スルフヒドリルおよびそれらの混合物である。「活性水素原子」という用語は、分子内での配置のため、参照により本明細書に組み込まれているKohlerのJ.Am.Chemical Soc.、49、31〜81頁(1927)に記載されているZerewitinoff試験による活性を示す水素原子を指す。ポリウレタンにおける不飽和部分の含有量は、1から95重量パーセント、好ましくは10から50重量パーセントである。好ましい実施形態において、ポリウレタン成分は、ポリジエンジオールから調製される。本発明の別の実施形態において、ポリウレタン成分は、ヒドロキシル以外のイソシアネート反応基を含む官能化ポリジエンから調製される。ポリウレタンは、本明細書に記載されているランダムエチレン/α−オレフィンとさらに混合される。
【0089】
当該官能性ポリジエンを調製するための1つの方法は、共役ジエンを二官能性開始剤の両端からアニオン重合によって成長させる2工程プロセスである。ポリジエンの分子量は、共役ジエンの開始剤に対するモル比によって調節される。第2の工程において、末端を酸化アルキレン(酸化エチレンまたは酸化プロピレン等)でキャップして、不飽和ジオールを製造する。この具体的なプロセスは、Kamienski(参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,039,593号)に記載されている。当該プロセスにおいて、過剰の酸化アルキレンを添加し、ポリジエンの末端に短いポリ(酸化アルキレン)鎖を形成することが可能である。当該材料は、本発明の範囲内である。
【0090】
官能性ポリジエンを調製するのに使用される共役ジエンは、典型的には4個から24個、好ましくは4個から8個の炭素原子を含む。典型的なジエンとしては、ブタジエンおよびイソプレンが挙げられ、典型的な官能性ポリジエンは、各末端が酸化エチレンでキャップされたポリブタジエンおよびポリイソプレンである。これらのポリジエンは、1分子当たり少なくとも1つの官能基を有し、典型的には500から10000g/モル、好ましくは500から5000g/モルの数平均分子量を有する。官能基は、好ましくはヒドロキシル基である。2つの好ましいポリジエンジオールは、ポリブタジエンジオールおよびポリイソプレンジオール、より好ましくはポリブタジエンジオールである。
【0091】
本発明のポリウレタンは、官能性ポリジエンをイソシアネートおよび場合によって連鎖延長剤と反応させることによって調製される。「プレポリマー」法において、典型的には、1つまたは複数の官能性ポリジエンを1つまたは複数のイソシアネートと反応させて、プレポリマーを形成する。プレポリマーを1つまたは複数の連鎖延長剤とさらに反応させる。あるいは、すべての反応物質の1回の反応によってポリウレタンを調製することができる。典型的なポリウレタンは、5000から1000000g/モル、より好ましくは20000から100000g/モルの数平均分子量を有する。
【0092】
ポリジエンジオールおよび対応するポリウレタンのいくつかの例が、それぞれ参照により本明細書に組み込まれているPytelaら、Novel Polybutadiene Diols for Thermoplastic Polyurethanes、International Polyurethane Conference、PU Lat.Am.2001;およびPytelaら, Novel Thermoplastic Polyurethanes for Adhesives and Sealants、Adhesives & Sealant Industry、2003年6月、45〜51頁に記載されている。水素化ポリジエンジオールおよび対応するポリウレタンのいくつかの例が、それぞれ参照により本明細書に組み込まれている国際公開第WO99/02603号;および対応する欧州特許EP0994919B1に記載されている。後者の2つの参考文献に記載されているように、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,039,755号にあるようなラネーニッケル、白金等の貴金属、可溶性遷移金属触媒およびチタン触媒などの触媒の存在下における水素化を含む確立された様々なプロセスによって水素化を行うことができる。また、それらのポリマーは、異なるジエンブロックを有していてもよく、これらのジエンブロックを、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,229,464号に記載されているように選択的に水素化することができる。
【0093】
本発明によるポリウレタンの硬質部分を調製するのに好適に使用されるジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族および脂環式ジイソシアネートならびにそれらの組合せが挙げられる。ジイソシアネートから誘導される構造単位(OCN−R−NCO)の例は、以下の式(I)で表される。
【0094】
【化1】

(式中、Rは、アルキレン、シクロアルキレンまたはアリーレン基である。)。これらのジイソシアネートの代表例を、その教示内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第4,385,133号;同第4,522,975号;および同第5,167,899号に見いだすことができる。好ましいジイソシアネートとしては、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、p−フェニレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1,4−ジイソシアナト−シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタンおよび2,4−トルエンジイソシアネートが挙げられるが、それらに限定されない。より好ましいのは、4,4’−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタンおよび4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンである。最も好ましいのは、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンである。
【0095】
ジイソシアネートとしては、また、1,6−ヘキサメチレン−ジイソシアネート;エチレンジイソシアネート;1−イソシアナト−3,5,5−トリメチル−1−3−イソシアナトメチルシクロヘキサン;2,4−および2,6−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、ならびに対応する異性体混合物;4,4’−、2,2’および2,4’−ジシクロヘキシル−メタンジイソシアネート、ならびに対応する異性体混合物などの脂肪族および脂環式イソシアネート化合物が挙げられる。また、1,3−テトラメチレンキシレンジイソシアネートを本発明に使用することもできる。イソシアネートを有機イソシアネート、改質イソシアネート、イソシアネート系プレポリマーおよびそれらの混合物から選択することができる。
【0096】
上述のように、「1回の」プロセスで実質的に同時にすべての成分を混合することによって、または「プレポリマープロセス」で成分を段階的に添加し、随意の添加剤の存在下で、もしくは該添加剤を添加せずにそのプロセスを実施することによって、ポリウレタンを調製することができる。イソシアネートとヒドロキシルまたは他の官能基との反応を促進させる適切な触媒を添加して、または添加せずに、バルクまたは溶液中でポリウレタン形成反応を行うことができる。これらのポリウレタンの典型的な調製の例が、Masseによって記載されている(その全体が本明細書に組み込まれている米国特許第5,864,001号参照)。
【0097】
本発明のポリウレタンの硬質部分の他の主要成分は、この技術分野で良く知られている少なくとも1種の連鎖延長剤である。知られているように、連鎖延長剤がジオールである場合は、得られる生成物は、TPUである。連鎖延長剤がジアミンまたはアミノアルコールである場合は、得られる生成物は、技術的にはTPUUである。
【0098】
本発明に使用できる連鎖延長剤は、2つ以上、好ましくは、それぞれが「活性水素原子」を含む2つの官能基を特徴とする。これらの官能基は、好ましくは、ヒドロキシル、一級アミノ、二級アミノおよびそれらの混合物の形態である。「活性水素原子」という用語は、分子内での配置のため、Kohler、J.Am.Chemical Soc.、49、31〜81頁(1927)に記載されているZerewitinoff試験による活性を示す水素原子を指す。
【0099】
連鎖延長剤は、脂肪族、脂環式または芳香族であってもよく、ジオール、ジアミンおよびアミノアルコールに代表される。二官能性連鎖延長剤の具体例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび他のペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、他の2−エチル−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび他のヘキサンジオール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−シクロヘキサン、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、エステルジオール204、N−メチルエタノールアミン、N−メチルイソプロピルアミン、4−アミノシクロヘキサノール、1,2−ジアミノテアン、1,3−ジアミノプロパン、ジエチレントリアミン、トルエン−2,4−ジアミンおよびトルエン−1,6−ジアミンである。2個から8個の炭素原子を含む脂肪族化合物が好ましい。熱可塑性または可溶性ポリウレタンを製造する場合は、連鎖延長剤は、本質的に二官能性である。アミン連鎖延長剤としては、エチレンジアミン、モノメタノールアミンおよびプロピレンジアミンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0100】
広く使用されている直鎖状連鎖延長剤は、一般には、400ダルトン(またはg/モル)を超えない分子量を有することを特徴とするジオール、ジアミンまたはアミノアルコール化合物である。この文脈において、「直鎖状」とは、三級炭素からの分枝形成が含まれないことを意味する。好適な連鎖延長剤の例は、式:HO−(CH2n−OH、H2N−(CH2n−NH2およびH2N−(CH2n−OH(式中、「n」は、典型的には1から50の数である)で表される。
【0101】
第1の一般的連鎖延長剤は、1,4−ブタンジオール(「ブタンジオール」または「BDO」)であり、式:HO−CH2CH2CH2CH2−OHで表される。
【0102】
他の好適な連鎖延長剤としては、エチレングリコール;ジエチレングリコール;1,3−プロパンジオール;1,6−ヘキサンジオール;1,5−ヘプタンジオール;トリエチレングリコール;またはそれらの組合せが挙げられる。
【0103】
一般的に、400ダルトン(またはg/モル)を超えない分子量を有することを特徴とするジオール、ジアミンまたはアミノアルコール化合物である環式連鎖延長剤も好適である。この文脈において、「環式」とは、環構造を意味し、典型的な環構造としては、ヒドロキシル−アルキル分枝を有する5から8員環構造が挙げられるが、それらに限定されない。環式連鎖延長剤の例は、式:HO−R−(環)−R’−OHおよびHO−R−O−(環)−O−R’−OH(式中、RおよびR’は、1個から5個のアルキル炭素鎖であり、各環は、好ましくはすべて炭素の5から8員である)で表される。これらの例において、末端の−OHの一方または両方を−NH2で置き換えることができる。好適な環式連鎖延長剤としては、シクロヘキサンジメタノール(「CHDM」)、ヒドロキノンビス−2−ヒドロキシエチルエーテル(HQEE)が挙げられる。
【0104】
好ましい環式連鎖延長剤であるシクロヘキサンジメタノール(CHDM)の構造単位は、式:HO−CH2−(シクロヘキサン環)−CH2−OHで表される。
【0105】
連鎖延長剤は、具体的な反応成分の選択、硬質部分および軟質部分の所望の量、ならびに弾性率および引裂強度などの良好な機械特性を与えるのに十分な指数によって決定された量でポリウレタンに導入される。
【0106】
本発明のポリウレタン組成物は、2から25重量パーセント、好ましくは3から20重量パーセント、より好ましくは4から18重量パーセントの連鎖延長剤成分を含んでいてもよい。
【0107】
所望であれば、場合により、「連鎖停止剤」とよく呼ばれる少量のモノヒドロキシ官能性またはモノアミノ官能性化合物を使用して、分子量を調節することができる。当該連鎖停止剤の具体例は、プロパノール、ブタノール、ペンタノールおよびヘキサノールである。連鎖停止剤は、使用される場合は、典型的には、ポリウレタン組成物をもたらす反応混合物全体の0.1重量パーセントから2重量パーセントの少量で存在する。
【0108】
当業者に良く知られているように、イソシアネートの全官能基に対する比は、ポリマーの数平均分子量(Mn)を決定づける。場合によっては、極わずかに過剰のイソシアネートを使用するのが望ましい。
【0109】
直鎖状の高分子量(Mn)ポリマーでは、1鎖当たり2つの官能基を有する出発材料が望ましい。しかし、様々な官能基を有する出発材料に対応することが可能である。例えば、中間部分が繰返しイソシアネート連鎖延長剤成分からなるポリウレタンの両末端をキャップするために、1つの官能性末端を有するポリジエンを使用することが可能である。2つより多い官能基を有するポリジエンは、分枝状ポリマーを形成する。架橋およびゲルが問題となり得るが、官能性の度合いが高すぎる場合は、これをプロセス条件によって抑制することができる。当該分枝状ポリマーは、高溶融強度などの、場合によっては望ましいいくつかの流動特性を示すことになる。
【0110】
場合によって、ウレタン基の形成を促進または助長する触媒を処方に使用することができる。有用な触媒の具体例は、オクタン酸第一錫、ジラウリル酸ジブチル錫、オレイン酸第一錫、チタン酸テトラブチル錫、塩化トリブチル錫、ナフテン酸コバルト、酸化ジブチル錫、酸化カリウム、塩化第二錫、N,N,N,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、ビス[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]エーテル、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン;ジルコニウムキレート化合物、アルミニウムキレート化合物および炭酸ビスマスである。触媒は、使用される場合は、典型的には、ポリウレタン形性成分の全量に対して、0.001重量パーセント以下から2重量パーセント以上までの範囲であってもよい触媒量で採用される。
【0111】
また、本発明のポリウレタンの特性を改質するために添加剤を使用することができる。添加剤を当該技術分野および文献で既に知られている従来の量で含めることができる。通常、様々な酸化防止剤、紫外線阻害剤、蝋、増粘剤および充填剤などの添加剤を使用して、具体的な所望の特性をポリウレタンに付与する。充填剤は、使用される場合は、有機充填剤または無機充填剤であってもよいが、一般には、粘土、タルク、炭酸カルシウム、シリカ等の無機充填剤である。また、一定の特性を付与するために、ガラスまたは炭素繊維などの繊維添加剤を添加することもできる。
【0112】
本発明の好ましい実施形態において、ポリウレタンをポリジエンジオール、イソシアネートおよび連鎖延長剤、好ましくは脂肪族連鎖延長剤から形成する。別の実施形態において、ポリジエンジオール系ポリウレタンを水素化する。
【0113】
さらなる実施形態において、4個から24個、好ましくは4個から8個の炭素を有する共役ジエンからポリジエンジオールを形成する。上述のように、典型的なジエンとしては、ブタジエンおよびイソプレンが挙げられ、典型的なポリジエンとしては、ポリブタジエンおよびポリイソプレンならびに水素化ポリブタジエンおよび水素化ポリイソプレンが挙げられる。好ましい実施形態において、これらのポリジエンは、分子内に少なくとも1つ、好ましくは2つのヒドロキシル基を有し、典型的には、500から10000g/モル、より好ましくは1000から5000g/モル、さらにより好ましくは1500から3000g/モルの数平均分子量を有する。好ましくは、ポリジエンジオールは、ポリブタジエンジオールまたはポリイソプレンジオール、より好ましくはポリブタジエンジオールである。
【0114】
別の実施形態において、15から40重量パーセントのジイソシアネート、50から75重量パーセントのポリジエンジオールおよび5から15重量パーセントの連鎖延長剤を含む組成物からポリジエンジオール系ポリウレタンを形成する。さらなる実施形態において、ポリジエンジオールは、ポリブタジエンジオールまたはポリイソプレンジオールであり、好ましくはポリブタジエンジオールである。さらなる実施形態において、ジイソシアネートは、芳香族ジイソシアネート、より好ましくは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートである。さらなる実施形態において、連鎖延長剤は、脂肪族ジオールである。別の実施形態において、ポリジエンジオールは、500から10000g/モル、より好ましくは1000から5000g/モル、さらにより好ましくは1500から3000g/モルの数平均分子量を有する。別の実施形態において、ポリジエンジオールは、水素添加されていない。別の実施形態において、ポリジエンジオールは、水素添加されている。別の実施形態において、ポリジエンジオールは、部分的に水素添加されている。
【0115】
本発明の組成物のポリウレタン成分は、本明細書に記載されている2つ以上の実施形態の組合せを含んでいてもよい。
【0116】
用途
任意の押出、熱成形、圧延、ブロー成形、発泡または射出成形法を用いて、本発明の組成物を部品、シートまたは他の製造品に加工することができる。組成物の成分を混合前にプロセスに供給することもできるし、好ましい実施形態において、組成物が押出、熱成形、圧延、ブロー成形、発泡または射出成形法で成形されるように変換押出機等の処理装置に成分を直接供給することができる。物品の加工の前に、組成物を別のポリマーと混合することもできる。その1つが、熱可塑性ポリオレフィン組成物のペレットと別のポリマーのペレットとの乾燥混合である任意の様々な従来の技術によって当該混合を行うことができる。
【0117】
本発明の組成物から加工できる物品の網羅的でなく、部分的な一覧には、計器パネル、計器パネル被膜、計器パネル発泡体、バンパーフェーシア、車体側面成形品、内部支柱、外部装飾品、内部装飾品、雨よけ、通気遮断壁、エアダクトおよびホイールカバーなどの自動車車両部品が含まれる。該組成物をポリマーフィルム、ポリマーシート、発泡体、チューブ、繊維およびコーティングなどの自動車以外の用途に使用することもできる。さらなる非自動車物品としては、ゴミ箱、保存または梱包容器、芝生装備帯または紐、芝刈り機、ガーデンホースおよび他の庭器具部品、冷蔵庫ガスケット、レクリエーション用車両部品、ゴルフカート部品、ユーティリティカート部品、玩具、船艇部品、履物、ならびに建築構造および家具構造等の構造材料が挙げられる。該組成物を屋根メンブレンのような屋根用途に使用することができる。述べたように、射出成形または圧縮成形され、特に、工業用作業靴に使用され、また内部および外部靴底部品に使用されるユニット靴底のような履物の部品を加工するのに該組成物を使用することができる。当業者は、不必要な実験を行うことなく、この一覧を容易に広げることができる。
【0118】
本発明の一実施形態において、物品の少なくとも1つの部品が本発明の組成物から形成され、押出法、射出成形法、圧延法、熱成形法またはブロー成形法によって製造される物品が提供される。さらなる実施形態において、物品は、非自動車用物品である。本発明の組成物を鋳型で熱成形して、熱成形物品を形成することができる。本発明の組成物を射出成形して、射出成形物品を形成することもできる。一実施形態において、好適な熱成形および射出成形温度は、120℃から220℃である。
【0119】
別の実施形態において、物品の少なくとも1つの部品が、本発明の組成物から形成された少なくとも1つの層を含むフィルムを含む物品が提供される。さらなる実施形態において、物品は、コーティング布である。さらに別の実施形態において、物品は、発泡積層シートである。さらなる実施形態において、物品は、非自動車用物品である。
【0120】
シート押出用途では、本発明の組成物は、2g/10分以下(190℃/2.16kg)のメルトインデックス、I2、1.0g/cc未満の密度を有し、組成物の全重量に対して25から75重量パーセントのエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含んでいてもよい。また、ポリジエンジオール系ポリウレタンは、0.90から1.10、好ましくは0.95から1.05、より好ましくは0.98から1.03のNCO/OH比を有するのが好ましい。
【0121】
射出成形用途では、本発明の組成物は、2から30g/10分(190℃/2.16kg)のメルトインデックス、I2、0.91g/cc未満の密度を有し、組成物の全重量に対して25から75重量パーセントのエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含んでいてもよい。また、ポリジエンジオール系ポリウレタンは、0.90から1.10、好ましくは0.95から1.05、より好ましくは0.98から1.03のNCO/OH比を有するのが好ましい。
【0122】
ブロー成形用途では、本発明の組成物は、2g/10分以下(190℃/2.16kg)のメルトインデックス、I2、1.0g/cc未満の密度を有し、組成物の全重量に対して25から75重量パーセントのエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含んでいてもよい。また、ポリジエンジオール系ポリウレタンは、0.90から1.10、好ましくは0.95から1.05、より好ましくは0.98から1.03のNCO/OH比を有するのが好ましい。
【0123】
架橋発泡用途では、本発明の組成物は、1から5g/10分(190℃/2.16kg)のメルトインデックス、I2、0.89g/cc未満の密度を有し、組成物の全重量に対して25から75重量パーセントのエチレン/α−オレフィンインターポリマーを含んでいてもよい。また、ポリジエンジオール系ポリウレタンは、0.90から1.10、好ましくは0.95から1.05、より好ましくは0.98から1.03のNCO/OH比を有するのが好ましい。
【0124】
定義
本明細書に引用されている任意の数値は、任意の下限値と任意の上限値との間に少なくとも2単位の隔たりが存在することを条件に、1単位刻みで下限値から上限値のすべての値を含む。一例として、例えば分子量、粘度、メルトインデックスのような組成上の特性、物理特性または他の特性が100から1000であると記載されている場合は、100、101、102等のすべての個々の値、および100から144、155から170、197から200等の部分範囲が、本明細書に明確に列挙されることを意図する。1未満の値を含む範囲、または1を超える小数(例えば1.1、1.5等)を含む範囲については、1単位は、適宜0.0001、0.001、0.01または0.1であると考えられる。10未満の1桁数(例えば1から5)を含む範囲については、1単位は、典型的には0.1であると考えられる。これらは、具体的に意図されているものの例にすぎず、列挙された下限値と上限値の間の数値のすべての可能な組合せが、本出願に明確に指定されているものと見なされるべきである。本明細書に述べられているように、メルトインデックス、分子量分布(Mw/Mn)、結晶化度、コモノマー比率、コモノマーにおける炭素原子数および他の特性に関して、数値範囲を引用した。
【0125】
「ランダムエチレン/α−オレフィンインターポリマー」という用語は、本明細書に用いられているように、当該技術分野でポリマーに関して用いられるものとして定義され、コモノマーがポリマー鎖に沿ってランダムに分布しているエチレン系インターポリマーを指す。「エチレンインターポリマー」または「エチレン/α−オレフィンインターポリマー」という用語は、本明細書に用いられているように、主に(50モルパーセントを超える)エチレンモノマー単位から形成されたポリマーを指す。モル百分率は、重合性モノマーの全モル数に基づく。
【0126】
「ポリジエンジオール系ポリウレタン」という用語は、本明細書に用いられているように、部分的にポリジエンジオールから形成されたポリウレタンポリマーを指す。
【0127】
「水素化」という用語は、当該技術分野で知られており、本明細書に用いられているように、ポリジエンジオール内の二重結合の水素化(アルケン基内の水素の反応)に関するものであり、最終(水素化)生成物に関するものである。本明細書に用いられているように、「水素化」という用語は、ポリジエンジオール内のすべての二重結合完全水素化、または二重結合のほぼ完全な(約95モルパーセントを超える)水素化を指す。「部分的水素化」という用語は、本明細書に用いられているように、ポリジエンジオール内の二重結合の有意な量(約5モルパーセントを超える量)が水素化されない水素化反応および最終生成物に関するものである。
【0128】
「組成物」という用語は、本明細書に用いられているように、組成物ならびに組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を含む材料の混合物を含む。
【0129】
「ポリマー」という用語は、本明細書に用いられているように、同一または異なる種類のモノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称語は、1種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指すのに通常用いられるホモポリマーという用語、および以下に定義されるインターポリマーという用語を包括する。
【0130】
「インターポリマー」という用語は、本明細書に用いられているように、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称語は、2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを指すのに通常用いられるコポリマー、および2つより多い異なる種類のモノマーから調製されたポリマーを含む。
【0131】
「混合物」または「ポリマー混合物」という用語は、本明細書に用いられているように、2種以上のポリマーの混合物を意味する。当該混合物は、混和性を有していても、いなくてもよい。当該混合物は、相分離されていても、いなくてもよい。当該混合物は、透過型電子顕微鏡法、光散乱法、X線散乱法、または当該技術分野で知られている他の方法により測定されるような1つまたは複数の分域構造を含んでいても、いなくてもよい。
【0132】
試験方法
密度をASTM D792−00、方法Bに従って測定した。
【0133】
光沢度をASTM D2457−03に従って測定した。マルチアングル268反射計を使用して、60度光沢度を測定する。光を押出シートの模様面に対して60度で当て、反射光を光電気的に測定する。
【0134】
ASTM D−1238−04(バージョンC)、条件190℃/2.16kgを用いてg/10分単位のメルトインデックス、I2を測定した。符号「I10」は、ASTM D−1238−04、条件190℃/10.0kgを用いて測定されたg/10分単位のメルトインデックスを指す。符号「I21」は、ASTM D−1238−04、条件190℃/21.6kgを用いて測定されたg/10分単位のメルトインデックスを指す。
【0135】
示差走査熱量計(DSC)−TA測定器2920変調DSC測定器を非変調モードで使用して、相対的結晶化度を定め、各ポリマーまたは化合物のTc、TgおよびTm特性を測定した。窒素パージを使用する加熱−冷却−加熱法を9〜10mgのサンプルに対して実施した。
【0136】
サンプルの熱挙動を以下の温度プロファイルによって調べた。サンプルを180℃まで急速に加熱し、前の任意の熱履歴を除去するために3分間恒温に保持した。次いで、サンプルを10℃/分の冷却速度で−40℃まで冷却し、−40°に3分間保持した。次いで、サンプルを10℃/分の加熱速度で150℃まで加熱した。冷却および第2加熱曲線を記録した。
【0137】
極限引張強度および破断伸度をASTM D−638−03に従って測定した。両測定を打抜きD638型IV試験片に対して23℃で実施した。
【0138】
表面張力をDIN 53364(1986)に従って測定した。規定表面張力の流体であり、28から56mN/mの範囲で利用可能であるArcotec試験インクを使用した。試験を23℃の室温で実施した。
【0139】
シート硬度特性をASTM D2240−05に従って測定した。引張特性を標準試験法ASTM D638−03に従って測定した。
【0140】
溶融張力を選択されたポリマーサンプルに対して190℃の温度でGottfert Rheotensにより測定した。Rheotensは、一定速度で細管ダイから押し出された溶融糸状体を引っ張る2つの逆回転車輪で構成されている。車輪が加速しているときの溶融物の応力応答を測定するための天秤が車輪に装備されている。車輪を糸状体破壊まで加速させる。糸状体を破壊する力をセンチニュートン(cN)単位の溶融張力とする。
【0141】
Rheometric Scientific,Inc.のARES(高度流動膨張システム)動的機械的分光計(DMS)で、溶融流動技術を用いてサンプルを調べることによってRR(V0.1/V100)を測定した。2mm間隔の動的周波数モードおよび25ミリメートル(mm)径平行板器具を使用して、190℃でサンプルを調べた。8%の歪速度、および0.1から100rad/秒まで漸進的に増加させた振動速度を用いて、各デケード(decade)の振動数に対して採取された5つのデータ点を分析した。各サンプル(ペレットまたはベール)を20000psi(137.9メガパスカル(MPa))の圧力にて180℃で1分間圧縮成形して、1/8インチ(0.049cm)の厚さの3インチ(1.18センチメートル(cm))小板とする。それらの小板を急冷し、(1分間にわたって)室温まで冷却する。25mmの小板をより大きい小板の中心部から切断する。次いで、これらの25mm径のアリコットを190℃でARESに挿入し、5分間かけて平衡化してから試験を開始する。酸化変性を最小限にするために、分析中はサンプルを窒素環境に維持する。データ変換および操作をARES2/A5:RSI Orchestrator Windows(登録商標)95ベースのソフトウェアパッケージによって遂行する。RRは、粘度対剪断速度曲線の比を測定する。
【0142】
インターポリマームーニー粘度、MV、(125℃におけるML1+4)をアメリカ材料試験協会試験D1646−94(ASTMD1646−94)に従って測定した。上記に示された式に従って、MVおよびRRからPRRを計算する。MLは、ムーニー大形ロータを指す。このムーニー粘度を現行の試験方法、ASTM D1646−04に従って測定することもできる。粘度計は、Monsanto MV2000測定器である。
【0143】
上述の流動性が改質された実質的にゲルのない熱可塑性エラストマー組成物に関して、以下の定義および試験方法が適用される。
【0144】
剪断減粘指数(STI)は、本明細書に用いられているように、特定の高剪断速度のポリマー粘度で割った特定の低剪断速度のポリマー粘度の比である。エチレン/アルファ−オレフィン(EAO)ポリマーでは、従来のSTI試験温度は190℃である。ポリマー粘度は、RheometricsのRMS−800またはARESなどの動的機械的分光計を使用して、窒素雰囲気下で、0.1ラジアン毎秒(rad/秒)から100rad/秒の範囲内の剪断速度および190℃で、ポアズ(ダイン−秒/平方センチメートル(cm2))単位で従来的に測定される。剪断減粘指数は、「0.1rad/秒におけるポリマー粘度」の「100rad/秒におけるポリマー粘度」に対する比である。
【0145】
溶融強度(MS)は、本明細書に用いられているように、33逆秒(sec-1)の一定剪断速度で、細管レオメータダイから押し出された溶融ポリマーの溶融フィラメントに対して測定されたセンチニュートン(cN)単位の最大引張力であり、フィラメントは、1cm/秒の初期速度から0.24センチメートル毎秒毎秒(cm/sec-2)の割合でフィラメントを加速する一対のニップローラによって延伸される。溶融フィラメントは、好ましくは、Instron細管レオメータの胴体に充填された10グラム(g)のポリマーを加熱し、ポリマーを190℃で5分間平衡化し、直径0.21cm、長さ4.19cmの細管ダイを通じて、2.54cm/分のピストン速度でポリマーを押し出すことによって生成される。引張力は、好ましくは、フィラメントが細管ダイを出る点の10cm真下にニップローラが位置するように配置されるGoettfert Rheotensで測定される。
【0146】
凝固温度(ST)は、本明細書に用いられているように、TA Instruments、Inc.が販売するもののような示差走査熱量計(DSC)で冷却中に測定された最高温度ピーク吸熱量の温度(℃)であり、ポリマーは、最初に、室温から200℃の温度まで10℃/分(min)の速度で加熱され、次いで−30℃の温度まで10℃/分の速度で冷却され、次いで通常200℃の温度まで10℃/分の速度で再加熱される。
【0147】
上限使用温度(UST)は、本明細書に用いられているように、熱機械分析計(TMA)浸透プローブが、2から3ミリメートル(mm)の厚さの試験片を900ミクロメートル(μm)の深さまで浸透する温度(℃)である。好適なTMAは、TA Instruments,Inc.によって製造されている。温度が5℃/分の速度で上昇するチャンバ内に存在する試験片の表面に浸透プローブを載せながら、それに対して1ニュートン(N)力を加える。
【0148】
以下の実施例は、本発明を例示するものであって、明確にも暗示的にも本発明を制限するものではない。
【0149】
実験例
組成物
実験組成物を表2に示す。
【0150】
ENR86(またはEAO−2)は、表1(EAO−2参照)に記載されるとおりランダムエチレン/ブテン−1コポリマーであり、I2は0.5g/10分未満である。
【0151】
TPU35は、1.0g/cc未満の密度、−35℃のTgおよび90℃の軟化点を有するポリブタジエンジオール系ポリウレタンである。TPU35は、35重量パーセントの硬質部分を有し、メルトインデックスI2は17g/10分(ASTM D−1238、190℃/2.16kg)である。
【0152】
組成物1および2は、組成物3(TPUが75重量%)および組成物4(ENR86が100%)と比較して優れた光沢値を示し、両成分の臨界レベルは光沢度を低下させるのに必要であることを示唆している。これらの組成物は、混和剤を含んでいなかった。
【0153】
【表2】

【0154】
代表的な混合およびシート押出
TPU35(17MI)を80℃で一晩乾燥させ、次いでENR86とタンブル混合した。次いで、以下の表3に示される条件を用いて、タンブル混合した混合物をWP−ZSK−25押出機で混ぜ合わせた(溶融均質化した)。押出機条件は、以下のとおりであった。ゾーン1=90、ゾーン2=120、ゾーン3=130、ゾーン4=130、ゾーン5=130、ゾーン6=130、ゾーン7=130、ダイ(ゾーン8)=140(いずれも℃)。
【0155】
【表3】

【0156】
シートへの押出を混ぜ合せ工程の数週間後に行った。したがって、押出前に、混ぜ合せ混合物を80℃で一晩乾燥して、水分(当該水分は、シート製造時に膨れを生じさせる)を除去してから、混合物を押し出して0.010〜0.015インチの厚さのシートとした。シート押出条件は、以下のとおりであった。3ロールスタック、Kilion押出機、ゾーン1=140、ゾーン2=166、ゾーン3=177、ゾーン4=182、ダイ=175(いずれも℃);20ミルの厚さのシートの製造。
【0157】
押出シートは、光沢度が従来のTPOシートより低いことが確認され(低光沢度が望まれる場合は有利である)、引掻/損傷抵抗性が従来のTPOシートより良好であった。また、50/50組成物は、以下に述べるように、ポリウレタン発泡体に対する優れた接着性を有していた。
【0158】
追加的な組成物
追加的な組成物を以下の表4に示す。シートを形成するために、これらの組成物を表5に示される条件下で二軸押出機に成分を供給して調製した。
【0159】
【表4】

【0160】
【表5】

【0161】
表4の結果からわかるように、該組成物は、高伸度値および優れた引張強度を含む優れた機械特性を有する。組成物(シート)は、光沢値も低い。「50重量パーセント」のENR86を含む組成物と比較して、「63重量パーセント」および「75重量パーセント」のENR86を含む組成物の方が良好な引張および伸度特性を示す。
【0162】
接着試験
代表的な手順
上記表2に記載された50/50[ENR86/TPU35(17MI)]組成物の押出シート(20cm×20cm)を個々の自動車計器パネルカバー被膜の裏面に固定した。被膜を硬質射出成形基板とともに発泡金型に挿入した。ポリウレタン発泡体を被膜と基板の間に射出した。サンプルを試験前に約24時間硬化させた。次いで、サンプルに発泡体剥離試験を施した。
【0163】
以下の試験条件を用いて、ISO2411、Ford Lab試験法(FLTM)BN−151−06に従ってサンプルの試験を行った。
a)室温23℃
b)手動ハンドヘルド試験法
c)サンプル幅−25mm
d)材料毎に3つのサンプル
e)測定単位:ニュートン毎メートル
f)最低限の性能:175N
g)材料#1:50/50ENR86/TPU35
h)材料#2:Renosolポリウレタン発泡体、密度10ポンド
i)試験機器:Chatillonデジタルハンドヘルドフォースゲージ、型式DFIS−50、s/n25546(較正期日2005年3月15日)
接着試験結果を表6に示す。
【0164】
【表6】

【0165】
上記表からわかるように、試験されたすべてのサンプルが、発泡体に対して強い接着性を示した。図1は、代表的なサンプル(50/50ENR86/TPU35(17MI))の表面積を示す。この図に示されるように、破壊は、本質的に100%凝集破壊であり、ポリウレタン発泡体内で生じていた。この結果は、本発明の組成物から形成されたシートと発泡体との強い接着性の証拠である。
【0166】
押出シートの代わりに50/50組成物の圧縮成形シートを使用したことを除いて、この試験手順を繰り返した。この場合、ポリウレタン発泡体内で75%凝集破壊が観察され、シート/発泡体界面で25%凝集破壊が観察された。この結果も、本発明の組成物から形成されたシートとポリウレタン発泡体との強い接着性の証拠である。
【0167】
形態
表2に記載された50/50、75/25および25/75[ENR86/TPU35(17MI)]組成物から調製された押出シートの形態を透過型電子顕微鏡法(TEM)で調べた。顕微鏡写真を図3〜8に示す。
【0168】
サンプル調製、分析および結果
サンプルをシートの中央付近で切り取り、流れ方向に平行にコアで縁取りした。縁取りしたブロックを面取りし、FCSクライオセクショニングチャンバが装備されたライカUCTミクロトーム上のダイアモンドナイフで切り出した。切片を−70℃で約100nmの厚さに切断した。切片を400メッシュの未使用の銅製グリッドに配置し、0.5%四酸化ルテニウム水溶液の蒸気相で10分間にわたって後染色した。
【0169】
TEM−100kV加速電圧で動作するJEOL JEM−1230透過型電子顕微鏡で明視野TEM撮像を行った。Gatan791および794デジタルカメラを使用して画像を取り込み、Adobe Photoshop7.0ソフトウェアを使用して処理した。結果は、以下のとおりである。
【0170】
図3および図4は、50/50[ENR86/TPU35(17MI)]組成物に対応する。画像は、形態が、TPUマトリックス内に分散された、長さ0.5ミクロンから18ミクロン超の範囲の不連続なENR領域を有する連続的なTPUマトリックスで構成されていることを示していた。EO領域内の灰色の領域は、TPU閉鎖領域であり、切片における最も明るい領域は、2つの樹脂の部分的な剥離による穴である。
【0171】
図5および図6は、75/25[ENR86/TPU35(17MI)]組成物に対応する。画像は、形態が、ENRマトリックス内に分散された、長さ0.5ミクロンから29ミクロン超の範囲の配向TPU領域を有する連続的なENRマトリックスで構成されていることを示していた。最も明るい領域(矢印)は、2つの樹脂の剥離による穴である。
【0172】
図7および図8は、25/75[ENR86/TPU35(17MI)]組成物に対応する。画像は、形態が、TPUマトリックス内に分散された、長さ0.5ミクロンから8.7ミクロンの範囲の非配向ENR領域を有する連続的なTPUマトリックスで構成されていることを示していた。最も明るい領域(矢印)は、2つの樹脂の剥離による穴である。
【0173】
これらのサンプルにおいて、それら2つの相の間に界面剥離または脱離がほとんど観察されなかった。混和処理されていないポリオレフィン/ポリウレタン混合物では、典型的には大量の界面剥離または脱離が観察されるため、これは予想外の発見である。
【0174】
溶融強度
50/50[ENR86/TPU35(17MI)]の溶融強度は、0付近から約2cNまで変動していた。この組成物は、より高い溶融強度の熱可塑性ポリオレフィンに対する接着性裏材に好適である。当該接着性裏材は、熱可塑性ポリオレフィンとともに共押出することができ、0.001から0.005インチの厚さを有することができる。
【0175】
Pellethaneに対する接着性
Pellethane(商標)2102−80Aの厚さ75ミリの小板を200℃で圧縮成形した。幅1/2”、長さ4”の帯をダイカッターで切り取った。組成が異なるポリオレフィンとTPUの様々な混合物のシートを表7に示されるいくつかの異なる温度条件下で押し出した。異なる混合物のいくつかの射出成形小板も表7に示される温度で製造した。押出シートまたは射出成形小板を2つのPellethane(商標)帯の間に挟んだ3層積層体を、それら3つの層を最小限の圧力(1000ポンド)でカルバープレスにより170℃で一緒に圧縮することによって調製した。接着t−剥離試験中にそれらの帯を引き離すことを容易にするために、圧縮前に、マイラーフィルム帯(1”×1”)を積層体の各層の間の一端に配置した。用いた接着試験は、ASTM D882(現在2006)、薄膜プラスチックシートの引張特性の標準試験法から導かれた方法に類似している。接着試験結果は、シート層を基板(この場合はPellethane(商標))から引き離す、または分離させる(毎分10インチの速度で)のに必要な(INSTRON引張試験器(型式4206)で測定された)力の測定値である。使用したポリマーは、以下のとおりであった。
【0176】
ENR86(またはEAO−2)は、上述のランダムエチレン/ブテン−1コポリマーである。密度=0.901g/cc、I2=0.5g/10分未満。
【0177】
ENR82は、5g/10分のメルトインデックスI2および0.87g/ccの密度を有するランダムエチレン/オクテン−1コポリマーである。
【0178】
AFF18は、1g/10分のメルトインデックスI2および0.902g/ccの密度を有するランダムエチレン/オクテン−1コポリマーである。
【0179】
TPU35は、上述のように、1.0g/cc未満の密度、−35℃のTgおよび90℃の軟化点を有するポリブタジエンジオール系ポリウレタンである。TPU35は、35重量パーセントの硬質部分を有し、メルトインデックスI2は17g/10分(ASTM D−1238、190℃/2.16kg)である。
【0180】
TPU35Aは、1.0g/cc未満の密度および−35℃のTgを有するポリブタジエンジオール系ポリウレタンである。TPU35は、35重量パーセントの硬質部分を有し、メルトインデックスI2は1g/10分(ASTM D−1238、190℃/2.16kg)である。
【0181】
以下のサンプルの試験を行い、3回の測定に対する平均最大荷重の結果および剥離強度(N/mm)を表7に示す。
【0182】
【表7】

【0183】
表7からわかるように、高比率のTPUとの混合物は、Pellethaneからの剥離強度が、純粋のエチレン/α−オレフィンコポリマー(ENR86)のほぼ20倍である。組成物の隣の数字は、シートの押出温度、または射出成形サンプルの場合は溶融温度を表す。
【0184】
エチレン/α−オレフィンコポリマーに対する接着性
Pellethane(商標)2102−80A;ENR86;およびENR86とTPU35Aの63:37の各々の小板を、それぞれのペレットをそれぞれ200℃、170℃および190℃で圧縮成形することによって調製した。幅が1インチで、Pellethane小板または混合物小板が積層体の中間に配置された2つのENR86小板による積層体を、これら3つの小板を最小限の圧力(1000ポンド未満)でカルバープレスにより140℃で一緒に圧縮することによって調製した。ENR86小板を中間に配置し、Pellethane小板または混合物小板をいずれかの側に配置した3層積層体も調製した。(INSTRON引張試験器、型式4206、引張速度10インチ毎分を使用して)上記の手順と同じ手順を用いて接着性を測定した。これらのABAおよびBAB型の積層体の剥離強度値を表8に示す。
【0185】
【表8】

【0186】
表8からわかるように、本発明の組成物は、Pellethaneと比較して、エチレン/α−オレフィンに対して有意に強い接着性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】エチレン/ブテン−1ランダムコポリマーおよびポリブタジエンジオール系ポリウレタンを含む組成物から調製され、ポリウレタン発泡体に接着する押出シートを含む発泡体サンプルに対する発泡体剥離試験の表面観察結果を示す図である。
【図2】エチレン/ブテン−1ランダムコポリマーおよびポリブタジエンジオール系ポリウレタンを含む組成物から調製され、ポリウレタン発泡体に接着する圧縮成形シートを含む発泡体サンプルに対する発泡体剥離試験の表面観察結果を示す図である。
【図3】50/50エチレン/ブテン−1ランダムコポリマー/ポリブタジエンジオール系ポリウレタン組成物の押出混合物の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図4】50/50エチレン/ブテン−1ランダムコポリマー/ポリブタジエンジオール系ポリウレタン組成物の押出混合物の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図5】75/25エチレン/ブテン−1ランダムコポリマー/ポリブタジエンジオール系ポリウレタン組成物の押出混合物の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図6】75/25エチレン/ブテン−1ランダムコポリマー/ポリブタジエンジオール系ポリウレタン組成物の押出混合物の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図7】25/75エチレン/ブテン−1ランダムコポリマー/ポリブタジエンジオール系ポリウレタン組成物の押出混合物の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図8】25/75エチレン/ブテン−1ランダムコポリマー/ポリブタジエンジオール系ポリウレタン組成物の押出混合物の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のランダムエチレン/α−オレフィンインターポリマーおよび少なくとも1種のポリジエンジオール系ポリウレタンを含み、少なくとも1種のエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、−6から70のPRRおよび0.93g/cc以下の密度を有する組成物。
【請求項2】
ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレン/α−オレフィンインターポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のプロピレン系ポリマーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のプロピレン系ポリマーが、125℃を超える融点を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーが、18から50のPRRを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記エチレン/α−オレフィンインターポリマーが、3未満のPRRを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記α−オレフィンが、3個から20個の炭素原子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記α−オレフィンが、3個から10個の炭素原子を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリジエンジオール系ポリウレタンが、水素化ポリジエンジオールから形成された、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
エチレン/α−オレフィンインターポリマーが、少なくとも1つの幾何拘束型触媒によって重合された、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
分枝形成剤を含む少なくとも1種のエラストマーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
離型剤、帯電防止剤、膨張剤、顔料/着色剤、加工助剤、UV安定剤および架橋剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1つの部品が請求項1に記載の組成物から形成され、押出法、射出成形法、圧延法、熱成形法またはブロー成形法によって製造される物品。
【請求項13】
コーティング布である、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
発泡積層体シートである、請求項12に記載の物品。
【請求項15】
履物部品である、請求項12に記載の物品。
【請求項16】
少なくとも1つの層またはプライを含み、少なくとも1つの層またはプライが請求項1に記載の組成物から形成されたフィルム。
【請求項17】
少なくとも2つの層またはプライを含み、少なくとも1つの層またはプライが請求項1に記載の組成物から形成されたフィルム。
【請求項18】
共押出によって形成された、請求項17に記載のフィルム。
【請求項19】
少なくとも1つの部品が請求項16に記載のフィルムを含む物品。
【請求項20】
少なくとも1つの部品が請求項17に記載のフィルムを含む物品。
【請求項21】
履物部品である、請求項20に記載の物品。
【請求項22】
少なくとも1種のエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーおよび少なくとも1種のポリジエンジオール系ポリウレタンを押出法に加えることを含む、請求項18に記載のフィルムの製造方法。
【請求項23】
少なくとも1種のエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーおよび少なくとも1種のポリジエンジオール系ポリウレタンを押出法に加えることを含む、請求項12に記載の物品の製造方法。
【請求項24】
請求項1に記載の組成物を含み、前記エチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーが、前記ポリジエンジオール系ポリウレタンの連続層またはマトリックス内に不連続相または分散領域として存在するフィルム。
【請求項25】
前記分散エチレン/α−オレフィン領域が、長さ0.2ミクロンから18ミクロン超の範囲である、請求項24に記載のフィルム。
【請求項26】
請求項1に記載の組成物を含み、前記エチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーが、前記ポリジエンジオール系ポリウレタンとの共連続相として存在するフィルム。
【請求項27】
少なくとも1つの部品が請求項24に記載のフィルムから形成された物品。
【請求項28】
少なくとも2つの層またはプライを含み、少なくとも1つの層またはプライが請求項1に記載の組成物から形成され、共押出またはラミネーションによって形成されたフィルム。
【請求項29】
フィルムを含み、前記フィルムは少なくとも2つの層またはプライを含み、少なくとも1つの層またはプライが請求項1に記載の組成物から形成された履物部品。
【請求項30】
少なくとも2つの層を含み、少なくとも1つの層が請求項1に記載の組成物から形成され、
少なくとも1つの他の層は流動性改質された実質的にゲルのない熱可塑性エラストマー組成物から形成され、前記エラストマー組成物は、エチレン/α−オレフィンポリマーまたはエチレン/α−オレフィンポリマー混合物、ならびにポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレン/エチレンコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含み、
前記エラストマー組成物は、
少なくとも20の剪断減粘指数、
流動性改質されていない組成物の溶融粘度の少なくとも1.5倍の溶融強度、
流動性改質されていない組成物の凝固温度より少なくとも10℃高い凝固温度、および
流動性改質されていない組成物の上限使用温度より少なくとも10℃高い上限使用温度
の4つの特徴のうちの少なくとも3つの組合せを有するフィルム。
【請求項31】
少なくとも1つの部品が請求項30に記載のフィルムから形成された物品。
【請求項32】
少なくとも2つの層を含み、少なくとも1つの層が請求項1に記載の組成物から形成され、
少なくとも1つの他の層が、5cN以上の溶融強度を有するエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマーを含む組成物から形成されたフィルム。
【請求項33】
少なくとも1つの部品が請求項32に記載のフィルムから形成された物品。
【請求項34】
少なくとも1種のエチレン/α−オレフィンランダムインターポリマー、少なくとも1種のポリジエンジオール系ポリウレタン、および少なくとも1種のポリエーテル/ポリオール系および/または少なくとも1種のポリエステル/ポリオール系ポリウレタンを含み、前記少なくとも1種のエチレン/α−オレフィンインターポリマーは、−6から70のPRRおよび0.93g/cc未満の密度を有する組成物。
【請求項35】
少なくとも1種のポリエーテル/ポリオール系および/または少なくとも1種のポリエステル系ポリウレタンが不飽和を含まない、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
少なくとも1種のポリオレフィンおよび/または少なくとも1種のポリオレフィンエラストマーをさらに含む、請求項34に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−507958(P2009−507958A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530027(P2008−530027)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/035392
【国際公開番号】WO2007/033117
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】