説明

エッチング処理方法およびエッチング処理装置

【課題】スプレー法によるプリント基板等の大型被エッチング基板のエッチングにおいて、断面のアスペクト比の高い配線パターンを基板面内でのばらつきや斑が少なく均一性良く形成することができるエッチング処理方法およびエッチング処理装置を提供することを目的としている。
【解決手段】スプレーノズルによりスリット状に形成されるエッチング液を被エッチング基板の搬送方向に対して、所定の角度γを成すように噴霧させ、且つ、エッチング液を被エッチング基板の搬送方向に対して直角方向に周期的に揺動、噴霧させ、スプレーノズルの揺動周期T(sec)を前記被エッチング基板の搬送速度V(cm/sec)に対して、T=K・2・S/Vを満足するように揺動動作させるものである。Sは揺動距離(cm)、Kは定数で0.24≦K≦0.33をそれぞれ表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被エッチング基板、特にプリント基板の配線を形成するエッチング処理方法およびエッチング処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器に使用されるプリント基板に配線を形成する方法として、写真製版技術を用いてレジストパターンが形成されたプリント基板にスプレー装置等を用いてエッチング液を噴射してプリント基板の銅箔や銅膜をエッチングして回路パターンを形成する方法が広く使用されている。近年、電子機器の高密度実装化に伴い、プリント基板の多層化、微細配線化が要求されている。このため、アスペクト比の高い、微細な回路パターンを形成できるエッチング技術が求められている。
【0003】
エッチング速度は、エッチング液の組成、温度、滞留の仕方により異なることから、基板の面内のエッチング速度を安定化させることは、製品の安定的生産のために重要である。そのため、特許文献1によるスプレー処理装置では、被処理基板の上面にエッチング液を噴射させるとともに、新たに設けられた気体ノズルから気体を噴射させて、被処理基板の上面に滞留するエッチング液を除去することにより、被処理基板の上下面でのエッチング速度を僅少にし、エッチング精度の向上を図っている。また、特許文献2によるスプレーエッチング法では、半導体ウエハ面に滞留するエッチ液の膜厚を均一化させるため、エッチ液を楕円状に噴射させ、ウエハを回転させながらスプレーエッチングすることで、微細パターンのエッチングを実現している。
【特許文献1】特開平3−72088号公報
【特許文献2】特開昭53−39228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スプレー法によるエッチングは、プリント基板や半導体ウエハのエッチングに広く利用されているが、エッチング液の滞留がパターンのアスペクト比の低下、均一性を阻害する要因になっており、従来のエッチング法では、滞留エッチング液を除去するために、プリント基板にエッチング液とともに気体を噴射したり、エッチング液の滞留量を調整するためにウエハを回転したりしている。しかしながら、従来の気体を噴射することにより、基板の上下面のエッチング速度を合わせる、また、ウエハを回転することによりエッチング液の滞留量を調整して微細なエッチングを行うことが可能とされているが、プリント基板のような大型の基板において、アスペクト比の高い断面を有する配線パターンを形成する際に、基板面内のエッチングのばらつきや斑(ムラ)を抑えることについては不十分であるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであり、スプレー法によるプリント基板等の大型被エッチング基板のエッチングにおいて、断面のアスペクト比の高い配線パターンを基板面内でばらつきや斑が少なく均一性良く形成することができるエッチング処理方法およびエッチング処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るエッチング処理方法は、スプレーノズルによりスリット状に形成されるエッチング液を被エッチング基板の搬送方向に対して、所定の角度γを成すように噴霧させ、且つ、エッチング液を被エッチング基板の搬送方向に対して直角方向に周期的に揺動、噴霧させ、スプレーノズルの揺動周期T(sec)を被エッチング基板の搬送速度V(cm/sec)に対して、式(1)を満足するように揺動動作させるものである。
【0007】
また、本発明に係るエッチング処理装置は、被エッチング基板を搬送する搬送手段と、
エッチング液を供給する複数のスプレー管と、エッチング液の噴霧形状がスリット状であり、且つ、そのスリット状のエッチング液の長手方向が被エッチング基板の搬送方向に対して所定の角度γを成すように前記スプレー管に取り付けられた複数のスプレーノズルと、スプレーノズルを被エッチング基板の搬送方向に対して、直角方向に周期的に揺動させる揺動手段と、を備え、スプレーノズルの揺動周期T(sec)を被エッチング基板の搬送速度V(cm/sec)に対して、式(1)を満足するように揺動動作させるものである。
【0008】
T=K・2・S/V (1)
ここで、S(cm)は被エッチング基板の搬送方向と直角方向の揺動距離、Kは定数で0.24≦K≦0.33をそれぞれ表す。ただし、Vは、1.67cm/sec≦V≦8.35cm/secの範囲である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被エッチング物の搬送速度に対して、スプレーノズルの揺動周期との関係を(1)式を満足させることにより、被エッチング物の面内でのエッチングばらつきや斑の発生が抑制され、均一性に優れたアスペクト比の高い断面を有する配線パターンを形成することができるといった顕著な効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係るエッチング処理方法およびエッチング処理装置について説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1におけるエッチング処理装置を示す概略図である。図2はエッチング処理装置のエッチング液噴霧部の要部を上方から見た概略図である。
図1に示すように、エッチング処理装置1は、エッチングチャンバ2と、このエッチングチャンバ2内に被エッチング基板であるプリント基板3を搬送する手段である搬送ローラ4と、プリント基板3の搬送方向5に平行に設けられ、プリント基板3にエッチング液6をスリット状に噴射する複数のスプレーノズル7が取り付けられたスプレー管8と、プリント基板3の搬送速度Vを制御する搬送制御装置9と、また、スプレー管8を左右に揺動させる揺動周期Tおよびスプレーノズル7からのエッチング液6の圧力を制御するスプレー制御装置10と、搬送制御装置9とスプレー管制御装置10とを所定の関係で連動動作させるエッチング制御装置11とにより構成されている。
【0011】
また、図2に示すように、エッチング液噴霧部の要部において、スリット状に噴霧されるエッチング液6の長手方向がプリント基板3の搬送方向5に対して所定の角度γを為すようにスプレーノズル7がスプレー管8に取り付けられており、このスプレー管8の揺動方向12は搬送方向5に対して直角方向であり、スプレー管8は周期的に揺動されて、エッチング液6が噴霧領域13に噴霧される。
【0012】
まず、通常のスプレーエッチング法における問題点について、図3から図5を用いて説明する。一般的に、プリント基板3の銅配線15のパターンを形成するスプレーエッチング処理法では、図3に示すように、エポキシ基板14上の銅配線15の断面形状は、台形状で例えば上面のパターン幅をWとすると底面のパターン幅は1.2Wと上下で異なる富士山型である。電子機器の小型化の要求からプリント基板の配線の高密度化に伴い、配線幅および配線間隔が小さいものに対応できることが要求され、微細でアスペクト比の高いものが必要とされている。図4(b)に示すように、アスペクト比が低い配線断面を持つプリント基板3では、銅配線15とエポキシ基板14の接合部分が、裾が広い富士山型である場合、隣接する銅配線15同士が接触し、配線ショート不良15sが発生する。また、図4(c)に示すように、エッチング処理の過剰により銅配線15dの上底部分が無くなる場合には、銅配線を多層化した場合に上層の銅配線15uとの間で電気的接触が取れず、断線不良15fの原因となる。そのため、図4(a)に示すように、エッチング処理された銅配線15においては、アスペクト比が高く、銅配線15の断面形状が矩形に近い形状が望ましい。
【0013】
このとき、エッチング液の噴射圧力はプリント基板が大きく振動、移動しない範囲において高い程良い。また、噴射方向はプリント基板面上でのエッチング液の滞留防止の観点から、プリント基板の搬送方向に対しては直角方向から均等に揺動する機構を有することが望ましい。エッチング液としては、CuClやFeClを含む溶液が使用される。
【0014】
また、銅配線の断面形状に関しては、スプレー式エッチング処理装置の動作パラメータが影響していることが、発明者らの実験結果や考察から明らかになった。その結果、エッチング液6をプリント基板3に対して垂直に近い方向から高圧で噴射するとともに、エッチング液6の噴射形状を、図2に示すように、円錐形や四角錘形(図示せず)よりもエッチング液をスリット状にした噴射形状で吹き付けることで、配線の断面形状のアスペクト比が向上し、断面形状を矩形に近づけられることが判明した。
【0015】
しかしながら、エッチング液の噴射形状をスリット状にしても、図5に示すようにプリント基板3の表面に幅30mm〜50mm程度の縞状の明暗部が観察される。これは、プリント基板3の表面においてエッチングの速い部分(暗部)16とエッチングの遅い部分(明部)17とが生じるためで、その配線幅の違いにより、光の反射率の差として視認される。ここで、スプレー管8を、スプレーノズル7の間隔が50mmのものを7本並列に100mm間隔で、プリント基板3の搬送方向5と平行に配置した場合である。また、使用したプリント基板3の大きさは500mm×500mmで、エッチングマスクとしてはドライフィルムを使用し、配線幅と配線間隔はそれぞれ50μm、銅箔の厚さは35μmのものを使用した例である。図5の例では、エッチングが早い部分16では、エッチング後の配線幅が平均で30.5μmであるのに対して、エッチングが遅い部分17では平均で62.5μmと大きく異なっており、エッチングの斑となっている。このようにエッチング条件によっては、プリント基板3面上でエッチングの斑が発生し、プリント基板の配線の微細化の障害となっている。本発明では、このエッチングばらつきや斑の発生を抑制し、均一性に優れたアスペクト比の高い断面を有する配線パターンを形成することができる。
【0016】
そこで、発明者らはプリント基板のエッチング斑の発生と搬送速度V(cm/sec)とプリント基板の搬送方向と直角方向のエッチング液の揺動周期T(sec)との関係に着目した。
以下、実施の形態1のエッチング処理装置による動作について、図1、図2および図6を用いて説明する。図1に示すように、エッチング処理はエッチングチャンバ2内で行われる。被エッチング基板であるプリント基板3は搬送ローラ4によってエッチングチャンバ2内を搬送速度Vで搬送され、エッチングチャンバ2内を移動中にスプレーノズル7からエッチング液6が噴射され、エッチング処理される。エッチング液6は、プリント基板3の上方から高さHでスプレーノズル7から搬送方向5と所定の角度γを為すように拡がり角(半角)αで幅Wでスリット状に噴霧され(図6(a)、(b)参照)、スプレー管8がプリント基板3の搬送方向5に対して直角の方向に左右に揺動距離S、揺動周期Tで揺動12されているため、エッチング液6はプリント基板3の搬送方向5とは直角方向に移動して噴射される。プリント基板3の搬送速度5は、搬送制御装置9により搬送ローラ4を制御することにより制御される。スプレー管8の揺動12、スプレーノズル7からのエッチング液6の圧力はスプレー制御装置10により揺動距離S、揺動周期Tが制御される。エッチング制御装置11は搬送制御装置9およびスプレー制御装置10を統括的に制御している。その結果、個々のスプレーノズル7からのエッチング液6は一辺の長さW、幅Sで角度γの平行四辺形の形状となり、噴霧領域13で噴霧される。これらのことから、Wは式(2)で表わすことができる。
W=2・H・tan(α) (2)
ここで、Hはスプレーノズル7とプリント基板3との距離、αはエッチング液6のスリット方向の拡がり角(半角)である。
プリント基板3にエッチング液が噴霧されない領域がないようにスプレーノズル7の間隔Pとスプレー管8の間隔Dは、それぞれ、式(3)、(4)を満足する必要があるから、
P=W・sin(γ)=2・H・tan(α)・sin(γ) (3)
D=S (4)
となる。また、エッチング斑が発生しない良好な条件においては、プリント基板の搬送速度Vとエッチング液の直角方向の平均速度vには、密接な相関関係があることを発明者らは見出している。すなわち、搬送速度Vは、
V=K・v=K・2・S/T (5)
で表される。ここで、Kは定数、Sは被エッチング基板の搬送方向と直角方向の揺動距離である。これを、揺動周期Tで表わせば、
T=K・2・S/V (1)
となる。
【0017】
そこで、搬送速度V(cm/sec)が1.67〜8.35cm/secの範囲内で、エッチングの良品とされるプリント基板内の配線幅(パターン幅)のばらつきが±20%となる揺動周期T(sec)を実験的に求めた結果を図7に示す。図7は、測定結果から搬送速度Vを横軸に揺動周期Tを縦軸にして表わしたもので、エッチングで良品となる領域は、メッシュ模様で表わされる領域である。この領域では、プリント基板の表面に縞状のエッチング斑は認められない。これは、スプレーノズル7によって噴射されるエッチング液6が特定の部分に滞留せず、均一なエッチングが進む領域である。なお、図7において、配線幅と配線間隔は50μm、S=18cm、H=15cm、α=45°、γ=45°の条件で行った場合である。なお、スプレーノズル7は、図6(d)に示すように噴出部の長さが10mm、幅が0.5mmである。これを式(1)に当てはめると、ばらつきが−20%では、Kは0.20〜0.24となり、+20%では、0.33〜0.36となる。したがって、Kが0.24≦K≦0.33を満たす領域で動作させれば、良好なエッチングが期待される。通常、使用スプレー圧力の範囲である0.15MPa〜0.3MPaでは、エッチング液6の拡がり角2α(図6(b)X−X断面)は85〜130°、エッチング液の拡がり角2β(図6(c)Y−Y断面)は5°であり、この範囲において有効である。エッチング斑の抑制は、式(1)だけで決まるものではなく、プリント基板3の搬送方向5に対して角度γでエッチング液6を揺動噴霧することが重要である。これは、エッチング液6の排出をスムースにさせることにより、エッチング斑の抑制に寄与している。特に、角度γとしては45°周辺が望ましい。角度γはスプレーノズル7の間隔Pをも決定するものでもあるが、小さ過ぎると間隔Pが狭くなり、噴霧するエッチング液6を拡げる意味がなくなり実用的ではない。逆に、角度γが大きくなるとスプレーノズル7の間隔Pが広くなり、エッチング液6の噴霧範囲は広く取れるが、噴霧されたエッチング液6の排出がうまくいかなくなり、斑の抑制の効果が低下する。
【0018】
このように、本発明の実施の形態1によれば、被エッチング基板の搬送速度Vとエッチング液の揺動周期Tが、式(1)の関係を満たす条件でエッチングを行うことにより、被エッチング基板の面内でのエッチング速度が異なることによるエッチングのばらつきや斑の発生が抑制され、面内均一性に優れたアスペクト比の高い断面を有する配線パターンを形成することが可能となるといった顕著な効果を奏するものである。
【0019】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2におけるエッチング処理装置のエッチング液噴霧部の要部を上方から見た概略図である。
図8に示すように、実施の形態2に係るエッチング液噴霧部の要部において、スプレー管8の配置が搬送方向5と直角方向になっている点を除けば、実施の形態1の図6と同様であり、他の構成については説明を省略する。また、実施の形態3のエッチング液噴霧部の要部以外の図1で示すエッチング処理装置1の他の構成要素は、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0020】
以下、実施の形態2のエッチング処理装置による動作について、図8を用いて説明する。実施の形態1のスプレー管8の配置方向がプリント基板3の搬送方向5と平行であるの対して、実施の形態2のスプレー管8の配置方向はプリント基板3の搬送方向5と直角である点が相違する。エッチング液6は、プリント基板3の上方から高さHでスプレーノズル7から搬送方向5と所定の角度γを為すように拡がり角(半角)αで幅Wでスリット状に噴霧され(図8、図6(b)参照)、スプレー管8がプリント基板3の搬送方向5に対して平行な方向で左右に揺動距離S、揺動周期Tで揺動18されているため、エッチング液6はプリント基板3の搬送方向5とは直角方向に移動して噴射される。その結果、個々のスプレーノズル7からのエッチング液6は一辺の長さW、幅Sで角度γの平行四辺形の形状となり、噴霧領域13で噴霧される。これらのことから、Wは式(2)で表わすことができる。
W=2・H・tan(α) (2)
ここで、Hはスプレーノズル7とプリント基板3との距離、αはエッチング液6のスリット方向の拡がり角(半角)である。
プリント基板3にエッチング液が噴霧されない領域がないようにスプレーノズル7の間隔Pとスプレー管8の間隔Dは、それぞれ、式(6)、(7)を満足する必要があるから、
P=S (6)
D=W・sin(γ)=2・H・tan(α)・sin(γ) (7)
となる。実施の形態1では、スプレー管8を搬送方向5と平行方向に、実施の形態2では、スプレー管8を搬送方向5と直角方向に配置したが、いずれも、スプレーノズル7を搬送方向5と直角方向に揺動させている(すなわち、エッチング液の揺動方向が搬送方向と直角方向である)ことに変わりはなく、実施の形態1で述べたように、エッチング斑が発生しない良好な条件においては、プリント基板の搬送速度V(cm/sec)とエッチング液の直角方向の平均速度v(cmsec)には、密接な相関関係があり、実施の形態2においても同様であり、搬送速度V(cm/sec)は、
V=K・v=K・2・S/T (5)
で表される。ここで、Kは定数、S(cm)は被エッチング基板の搬送方向と直角方向の揺動距離である。これを、揺動周期T(sec)で表わせば、
T=K・2・S/V (1)
となる。結果として、実施の形態1と同じ式(1)で表わされる。したがって、Kは、0.24≦K≦0.33を満たす範囲であれば、良好なエッチングが期待できる。
【0021】
このように、本発明の実施の形態2によれば、実施の形態1とスプレー管の配置方向を変えても、エッチング液の揺動方向が同じであれば、被エッチング基板の搬送速度Vとエッチング液の揺動周期Tが、式(1)の関係を満たす条件でエッチングを行うことにより、実施の形態1と同様、被エッチング基板の面内でのエッチング速度が異なることによるエッチングのばらつきや斑の発生が抑制され、面内均一性に優れたアスペクト比の高い断面を有する配線パターンを形成することが可能となるといった顕著な効果を奏するものである。
【0022】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3におけるエッチング処理装置のエッチング液噴霧部の要部を上方から見た概略図である。
図9に示すように、エッチング液噴霧部の要部において、スプレー管8は、搬送方向5に対して平行に配設され、スプレー管8に取り付けられたスプレーノズル7からスリット状に噴霧されるエッチング液6がプリント基板3の搬送方向5に対して所定の角度γを為すようにスプレーノズル7が設定されており、スプレー管8は搬送方向5に対して直角方向に周期的に角度θ(半角)で回転揺動19される。実施の形態3のエッチング液噴霧部の要部以外の図1で示すエッチング処理装置1の他の構成要素は、実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0023】
次に、実施の形態3のエッチング処理装置の動作について、図9を用いて説明する。図9に示すように、プリント基板3は搬送速度Vで搬送され、スプレーノズル7からエッチング液6が噴射され、エッチング処理がなされる。エッチング液6は、プリント基板3の上方から高さHでスプレーノズル7から搬送方向5と所定の角γを為すように拡がり角α(半角)で幅Wでスリット状に噴霧され(図9(a)、図9(b)参照)、スプレー管8がプリント基板3の搬送方向5に対して直角方向で回転させ、投影距離Sでエッチング液6が揺動周期Tで回転揺動20されて、噴射される(図9(c)参照)。その結果、個々のスプレーノズル7からのエッチング液6は一辺の長さW、幅Sで角度γの平行四辺形の形状となり、噴霧領域13に噴霧される。これから、式(2)、(7)が導かれる。
W=2・H・tan(α) (2)
=2・H・tan(θ) (8)
ここで、Hはスプレーノズル7とプリント基板3との距離、αはエッチング液6のスリット方向の拡がり角(半角)、θはスプレー管の揺動角(半角)、γはエッチング液6のスリット方向と搬送方向5との為す角である。
プリント基板3にエッチング液が噴霧されない領域がないように、スプレーノズル7の間隔Pとスプレー管8の間隔Dは、それぞれ、式(8)、式(9)を満足する必要があるから、
=W・sin(γ)=2・H・tan(α)・sin(γ) (9)
=S=2・H・tan(θ) (10)
となる。実施の形態1と同様、エッチングが良好な領域は、搬送速度Vとエッチング液の直角方向の平均速度vには、相関関係があるので、
V=K・v=K・2・S/T=K・2・2・H・tan(θ)/T (11)
で表される。ここで、Kは定数である。式(1)と異なるのは、SがSとなっている点である。さらに、これを、揺動周期Tで表わせば、
T=K・2・2・H・tan(θ)/V (12)
で表すことができる。結果として、実施の形態1と同じ式(1)で表わされる。したがって、Kは、0.24≦K≦0.33を満たす範囲であれば、良好なエッチングが期待できる。
【0024】
このように、本発明の実施の形態3によれば、スプレー管を被エッチング基板の搬送方向と直角方向にエッチング液が噴霧されるように回転揺動させることにより、被エッチング基板の搬送速度Vとエッチング液の揺動周期Tが、式(1)の関係を満たす条件でエッチングを行うことにより、被エッチング基板の面内でのエッチング速度が異なることによる斑が発生せず、面内均一性を改善したエッチングが可能となるといった顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態1におけるエッチング処理装置の概略を示す構成図である。
【図2】実施の形態1におけるエッチング処理装置のエッチング液噴霧部の要部を示す概略図である。
【図3】配線の断面形状を示す概略図である。
【図4】エッチング状況による配線の断面形状の違いを示す概略図である。
【図5】プリント基板のエッチングの斑の例を示す鳥瞰図である。
【図6】実施の形態1におけるエッチング処理装置の動作を説明するための図である。
【図7】実施の形態1におけるエッチング処理装置によるエッチングの良好領域を示す実測図である。
【図8】実施の形態2におけるエッチング処理装置のエッチング液噴霧部の要部を上方から見た概略図である。
【図9】実施の形態3におけるエッチング処理装置の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0026】
1 エッチング処理装置
3 プリント基板
4 搬送ローラ
5 搬送方向
6 エッチング液
7 スプレーノズル
8 スプレー管
9 搬送制御装置
10 スプレー制御装置
11 エッチング制御装置
12,18 揺動
13 噴霧領域
19 回転揺動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレーノズルによりスリット状に形成されるエッチング液を被エッチング基板の搬送方向に対して、所定の角度γを成すように噴霧させ、且つ、前記エッチング液を前記被エッチング基板の搬送方向に対して直角方向に周期的に揺動、噴霧させ、
前記スプレーノズルの揺動周期T(sec)を前記被エッチング基板の搬送速度V(cm/sec)に対して、式(1)を満足するように揺動動作させることを特徴とするエッチング処理方法。
T=K・2・S/V (1)
ここで、S(cm)は前記被エッチング基板の搬送方向と直角方向の揺動距離、Kは定数で0.24≦K≦0.33をそれぞれ表す。ただし、Vは、1.67cm/sec≦V≦8.35cm/secの範囲である。
【請求項2】
被エッチング基板を搬送する搬送手段と、
エッチング液を供給する複数のスプレー管と、
前記エッチング液の噴霧形状がスリット状であり、且つ、そのスリット状のエッチング液の長手方向が前記被エッチング基板の搬送方向に対して所定の角度γを成すように前記スプレー管に取り付けられた複数のスプレーノズルと、
前記スプレーノズルを前記被エッチング基板の搬送方向に対して、直角方向に周期的に揺動させる揺動手段と、を備え、
前記スプレーノズルの揺動周期T(sec)を前記被エッチング基板の搬送速度V(cm/sec)に対して、式(1)を満足するように揺動動作させることを特徴とするエッチング処理装置。
T=K・2・S/V (1)
ここで、S(cm)は前記被エッチング基板の搬送方向と直角方向の揺動距離、Kは定数で0.24≦K≦0.33をそれぞれ表す。ただし、Vは、1.67cm/sec≦V≦8.35cm/secの範囲である。
【請求項3】
揺動手段が、スプレー管の長手方向を被エッチング基板の搬送方向に対して平行または直角に配設し、スプレーノズルを前記搬送方向と直角方向に揺動周期Tで揺動動作させるものであることを特徴とする請求項2に記載のエッチング処理装置。
【請求項4】
揺動手段が、スプレー管の長手方向を被エッチング基板の搬送方向に対して平行に配設し、前記スプレー管を揺動周期Tで所定の回転角度2θの範囲で回転揺動動作させるものであることを特徴とする請求項2に記載のエッチング処理装置。
ただし、式(1)において、S=2・H・tanθであり、Hは前記スプレー管と前記被エッチング基板との距離を表す。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−90403(P2010−90403A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258384(P2008−258384)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】