説明

エネルギーによる神経調節

いくつかの例では、動脈を囲む神経又は器官に通じる神経をエネルギー源で標的化し、生理的プロセスを矯正又は調節する。いくつかの例では、複数の種類のエネルギー源を単独で、又は互いに組み合わせて利用する。いくつかの例では、生物活性剤、又はエネルギー源で活性化されたデバイスを関心領域に送達し、当該剤でエネルギーを増強し、又は当該エネルギー源で当該剤を増強する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権データ)
本願は、以下の出願の優先権を主張し、参照により組み込む。
2010年3月16日に出願された米国特許出願第12/725450号
2010年1月11日に出願された米国特許出願第12/685655号
2009年10月12日に出願された米国仮特許出願第61/250857号
2009年10月31日に出願された米国仮特許出願第61/256983号
2009年11月16日に出願された米国仮特許出願第61/261741号
2009年12月30日に出願された米国仮特許出願第61/291359号
2010年2月10日に出願された米国仮特許出願第61/303307号
2010年5月21日に出願された米国仮特許出願第61/347375号
2010年8月27日に出願された米国仮特許出願第61/377908号
【0002】
以下の特許出願も、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
米国特許出願第11/583569号、第12/762938号、第11/583656号、第12/247969号、第10/633726号、第09/721526号、第10/780405号、第09/747310号、第12/202195号、第11/619996号、第09/696076号、第11/016701号、第12/887,178号、第12/390975号、第12/887178号、第12/887211号、第12/887232号
【0003】
なお、上記出願及び本明細書で参照する他の出願の主題は、本出願で明示的に列挙されているかの如く本出願に明示的に組み込まれる。よって、参照が本出願に具体的に「参照により組み込まれる」と表示されていない場合でも、実際に本出願に記載されているものとみなされる。
【背景技術】
【0004】
離れた場所からのエネルギー送達は、エネルギー波を伝送して、送達先の標的に影響を及ぼすことを伴う。その結果、標的へのエネルギー送達の効率、費用効率、及び発生側の技術的柔軟性を向上させることができる。例えば携帯電話の場合、使用者の近くの塔から標的を受信し、塔と塔の間では長距離間通信を行う。このようにして、携帯電話は消費電力を低く抑え、比較的狭い範囲で通信可能であるが、ネットワークは世界中で瞬時に通信することができる。同様に、電気の場合も、使用者自身が答を探すより、大規模な発電所から使用者に分配する方が効率がよい。
【0005】
患者の治療の観点からいえば、離れた場所からエネルギーを送達することは、標的化の精度、技術的柔軟性、そして重要な点である患者への限定的侵襲性という面を含め、大きな利点がある。簡単な形の例では、腹腔鏡手術は今や、以前の開腹手術手技の多くに取って代わり、その結果、新規の手技・デバイスが生まれ、一段と効率的な病気治療手技の流れが創出された。腹腔鏡ツールは、離れた場所から外科医のエネルギーを患者の組織に送達する。その結果、治療領域の画像診断が向上し、また多くの外科医が同時に治療領域を描出することが可能になる。
【0006】
最も重要な側面は、おそらく、患者の受ける痛みが大幅に低減し、合併症が減少し、手技全体の費用が削減されるという事実である。描出に関連する作業能力の向上と同様に、描出自体も改良されている。
【0007】
エネルギー送達技術のコンピュータ化、小型化、及び経済化が進化を続け、画像診断が向上することにより、離れた場所から患者にエネルギーを印加して病気を治療する、一段と大きな機会が得られることになる。
【発明の概要】
【0008】
いくつかの実施形態では、伝送エネルギーを使用して病気を治療する医療手順について、その技術を前進させる手順及びデバイスを提供する。これらの手順及びデバイスは以下のやり方に準拠する。1)エネルギーを伝送し、離れた場所から患者に効果をもたらす、2)治療部位の撮像又は標的化の向上を可能にする、3)外科医、インターベンショナル心臓内科医、インターベンショナル放射線科医のように標的に直接接触しようとするのでなく、患者から離れた位置又は患者の体内の位置から、より大型で強力なデバイスを利用することにより効率を高める。多くのケースでは、先進の描出・局在化ツールも利用する。
【0009】
いくつかの実施形態では、治療方法は、患者の外側にエネルギー源を置くことと、エネルギー源のエネルギー送達経路を、自律神経系の一部であって患者の内側にある神経を照準とするように、エネルギー源を操作することと、神経を治療するため、このエネルギー源を使用して、患者の外側から患者の内側に位置する神経に治療用エネルギーを送達することと、を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーは焦点式エネルギーを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーは非焦点式エネルギーを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーはHIFUエネルギーを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーはLIFUエネルギーを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーは神経に送達されて当該神経の部分的なアブレーションを達成する。
【0015】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーは神経に送達されて当該神経の完全なアブレーションを達成する。
【0016】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーが送達されて神経の麻痺を達成する。
【0017】
いくつかの実施形態では、当該神経は腎臓に通じている。
【0018】
いくつかの実施形態では、当該神経は腎神経を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、当該神経は、腎臓に接続する交感神経を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、当該神経は、腎臓と接続する求心性神経を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、当該神経は、腎茎部の腎交感神経を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、当該神経は、椎骨に隣接する神経幹を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、当該神経は、椎骨に隣接する神経節を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、当該神経は後根神経を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、当該神経は副腎に通じている。
【0026】
いくつかの実施形態では、当該神経は運動神経を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、当該神経は腎臓の隣にある。
【0028】
いくつかの実施形態では、当該神経は眼の裏側にある。
【0029】
いくつかの実施形態では、当該神経は腹腔神経叢を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、当該神経は脊柱の内部又は周辺にある。
【0031】
いくつかの実施形態では、当該神経は椎間関節まで伸びている。
【0032】
いくつかの実施形態では、当該神経は腹腔神経節を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、エネルギー源を操作する行為は当該エネルギー源を位置決めすることを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は超音波エネルギー源を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、超音波エネルギー源を使用して、患者の外側の複数の方向から神経へと治療用エネルギーを送達する。
【0036】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーを送達して、神経を損傷せずに当該神経を調節する。
【0037】
いくつかの実施形態では、この方法はさらに、患者の外側に位置する撮像デバイスを使用して腎血管の位置を特定することを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、腎血管の位置を使用して神経の位置を特定する。
【0039】
いくつかの実施形態では、撮像デバイスは、CTデバイス、MRIデバイス、サーモグラフィデバイス、赤外線撮像デバイス、光コヒーレンス・トモグラフィーデバイス、光音響撮像デバイス、PET撮像デバイス、SPECT撮像デバイス、又は超音波デバイスを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、患者の内側にある神経の位置を特定することを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、患者の内側の神経の位置を特定する行為は、腎血管の位置を特定して、腎血管を囲む神経を標的化することを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、腎血管は腎動脈を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、患者の内側の神経の位置を特定する行為は、ドップラー三角測量(Doppler triangulation)手法を使用することを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、撮像デバイスはMRIデバイスを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、撮像デバイスはCTデバイスを含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーはHIFUエネルギーを含み、撮像デバイスはMRIデバイスを含む
【0047】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーはHIFUエネルギーを含み、撮像デバイスは超音波デバイスを含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、当該神経は腎臓に通じ、撮像デバイスはMRIデバイスを含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、当該神経は腎臓に通じ、撮像デバイスは超音波デバイスを含む
【0050】
いくつかの実施形態では、当該神経は腎臓に通じ、撮像デバイスを使用してドップラー信号を取得する。
【0051】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーを腎臓に送達して、腎臓に対する交感神経刺激を減少させるか、腎臓から自律神経系への求心性シグナルを減少させるか、又はその両方を行う。
【0052】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、患者に試験エネルギーを送達し、その結果として反応が存在するかどうかを判断することを含み、試験エネルギーは、エネルギー源から治療用エネルギーが送達される前に送達される。
【0053】
いくつかの実施形態では、試験エネルギーは熱エネルギー又は振動エネルギーを含み、方法はさらに、交感神経活動を検出する試験を実施することを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、試験エネルギーは皮膚に加える刺激を含み、当該方法はさらに、患者からのアウトプットを検出することを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、アウトプットは心拍数を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、試験エネルギーを送達して圧受容器複合体(baroreceptor complex)を刺激し、当該方法はさらに、頸動脈に圧力を加えることと、頸動脈に圧力を加えた後で血圧が低下するかどうかを判断することと、を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、患者の外側に置かれた超音波デバイスを使用して試験エネルギーを送達する。
【0058】
いくつかの実施形態では、血圧が低下する場合、又は血圧が所定の閾値より高い速度で低下する場合に、エネルギー源から治療用エネルギーを送達する。
【0059】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーを送達して高血圧症を治療する。
【0060】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーを送達して緑内障を治療する。
【0061】
いくつかの実施形態では、神経の隣にある血管と位置が揃う方向を照準とするエネルギー源を操作する。
【0062】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、神経を含む治療領域の動きを追跡することを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、神経に囲まれる血管の位置を使用することにより、エネルギー源のエネルギー送達経路の照準を当該神経に向ける。
【0064】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、患者の内側にデバイスを送達することと、このデバイスを使用して患者の内側にある神経の位置を特定することを含み、特定した位置の少なくとも一部に基づいてエネルギー源を操作することにより、エネルギー伝達経路の照準がこの神経に向くようにする。
【0065】
いくつかの実施形態では、神経に囲まれている血管の内側にデバイスを置き、血管の位置を特定することにより間接的に神経の位置を特定する。
【0066】
いくつかの実施形態では、治療システムには、患者の外側に配置するエネルギー源が含まれる。このエネルギー源は、エネルギー送達経路の照準が、患者の内側の自律神経系の一部である神経に向くように構成され、治療用エネルギーを患者の外側から患者の内側に位置する神経へと送達して神経を治療するように構成される。
【0067】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は焦点式エネルギーを提供するように構成される。
【0068】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は非焦点式エネルギーを提供するように構成される。
【0069】
いくつかの実施形態では、エネルギー源はHIFUエネルギーを提供するように構成される。
【0070】
いくつかの実施形態では、エネルギー源はLIFUエネルギーを提供するように構成される。
【0071】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は、治療用エネルギーを提供して神経の部分的なアブレーションを達成するように構成される。
【0072】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は、治療用エネルギーを送達して神経の完全なアブレーションを達成するように構成される。
【0073】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は、治療用エネルギーを送達して神経の麻痺を達成するように構成される。
【0074】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は超音波エネルギー源を含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、超音波エネルギー源は、治療用エネルギーを患者の外側の複数の方向から神経に送達し、同時に、超音波エネルギー源は患者に対して静止しているように構成される。
【0076】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は、神経への治療用エネルギーの経路の範囲内にある組織を損傷せずに、治療用エネルギーを送達して神経を調節するように構成される
【0077】
いくつかの実施形態では、神経は腎神経を含み、当該システムは患者の外側に位置するプロセッサをさらに含み、このプロセッサは、腎動脈の位置に関連するインプットを受信し、動脈位置と神経位置を関連付けるモデルに基づき、腎神経の位置に関するアウトプットを決定し、かつ前記エネルギー源の位置決めシステムにアウトプットを提供することにより、腎神経の治療のため、該位置決めシステムが該エネルギー源に患者の外側から該腎神経に治療用エネルギーを送達させることを可能にするように構成される。
【0078】
いくつかの実施形態では、当該システムはさらに、腎血管の位置を特定するための、患者の外側に位置するプロセッサを含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、当該システムは、画像信号を提供するための画像デバイスをさらに含み、プロセッサは画像信号に基づいて位置を特定するように構成される。
【0080】
いくつかの実施形態では、撮像デバイスは、CTデバイス、MRIデバイス、サーモグラフィデバイス、赤外線撮像デバイス、光コヒーレンス・トモグラフィーデバイス、光音響撮像デバイス、PET撮像デバイス、SPECT撮像デバイス、又は超音波デバイスを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーの送達時に、腎血管の位置を使用して、腎血管を囲む神経を標的化する。
【0082】
いくつかの実施形態では、ドップラー三角測量手法を使用して位置を特定する。
【0083】
いくつかの実施形態では、腎血管は腎動脈を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーを腎臓に送達して、腎臓に対する交感神経刺激を減少させるか、腎臓から自律神経系への求心性シグナルを減少させるか、又はその両方を行う。
【0085】
いくつかの実施形態では、エネルギー源はさらに、試験エネルギーを患者に送達して、その結果として反応が存在するかどうかを判断するように構成される。
【0086】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は、治療用エネルギーを送達して高血圧症を治療するように構成される。
【0087】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は、治療用エネルギーを送達して緑内障を治療するように構成される。
【0088】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は、神経の隣にある血管と一直線上に並ぶ方向を照準とする方向性を有する。
【0089】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は、神経の動きを追跡するように構成される。
【0090】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は、神経の隣にある血管の動きを追跡することにより神経の動きを追跡するように構成される。
【0091】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は、神経に囲まれる血管に照準を定めることにより、この神経を照準とするように構成される。
【0092】
いくつかの実施形態では、当該システムはさらに、患者の内側に配置されるデバイスと、当該デバイスを使用して位置を特定するためのプロセッサを含み、エネルギー源は、特定された位置の少なくとも一部に基づいてエネルギー送達経路の照準が患者の内側の神経に向くように構成される。
【0093】
いくつかの実施形態では、神経に囲まれている血管に挿入するようにデバイスのサイズが決定される
【0094】
いくつかの実施形態では、患者の皮膚の外側の位置から患者の内側の血管を囲む神経へとエネルギーを送達するシステムは、画像信号を受信し、かつ画像信号に基づき血管の三次元座標を決定するように構成されるプロセッサと、患者の皮膚の外側の位置から血管を囲む神経へとエネルギーを送達するように構成されるエネルギー源と、を含み、このプロセッサは、決定された座標に基づいてエネルギー源を制御するようにも構成される。
【0095】
いくつかの実施形態では、システムはさらに、画像信号を提供するための撮像デバイスを含む。
【0096】
いくつかの実施形態では、撮像デバイスはMRIデバイスを含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、撮像デバイスは超音波デバイスを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、エネルギーは焦点式エネルギーを含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、エネルギーは焦点式超音波を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は、血管に位置合わせされる超音波アレイを含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、システムはさらに、血管撮像用にBモード超音波を供給するための撮像デバイスを含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、患者の皮膚の外側の位置から血管を囲む神経へとエネルギーを送達するシステムは、血管の内側に配置される基準体(fiducial)と、血管の内側の前記基準体を検出する検出デバイスと、検出された前記基準体の三次元座標を決定するように構成されるプロセッサと、皮膚を通じてエネルギーを伝送し、かつエネルギーを血管の領域に集束するように構成されるエネルギー源と、を含み、当該プロセッサは、決定された基準体の三次元座標及び血管に関する情報に基づいてエネルギー源を操作するように構成される。
【0103】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は超音波デバイスを含み、血管は腎動脈である。
【0104】
いくつかの実施形態では、当該システムはさらに超音波撮像システムを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、基準体は血管の内側に置かれて血管内カテーテルに接続される。
【0106】
いくつかの実施形態では、基準体は、外部信号に応答するように構成される受動的基準体である。
【0107】
いくつかの実施形態では、基準体は、その位置を前記検出デバイスに伝送する能動的基準体である。
【0108】
いくつかの実施形態では、患者の高血圧症を治療する方法は、患者の血管から撮像信号を取得することと、血管の壁へのエネルギー送達を計画することと、患者の皮膚の外側から血管を囲む自律神経へとエネルギーを送達することと、を含む。
【0109】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、交感神経束内の求心性神経を選択的に調節することを含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、エネルギーを送達した後、マイクロニューログラフィを利用して交感神経系に対するエネルギー送達の効果を判断することを含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、血管は腎臓まで伸びているか腎臓から伸びており、当該方法はさらに、ドップラー超音波を用いて血管の位置を特定することを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、経皮的エネルギー送達システムを利用して患者の自律神経を調節するシステムであり、当該システムは、神経を含む治療領域に送達するエネルギー及び電力に関する情報を受信するためのインプットと、信号を出力するためのアウトプットとを含むプロセッサであって、患者の外側から基準標的の位置を特定することにより、基準標的に対して神経を局在させるように構成される当該プロセッサと、患者の外側からエネルギーを送達するためのトランスデューサを含む治療用エネルギーデバイスと、プロセッサからの信号の少なくとも一部に基づいてトランスデューサの照準設定を制御するコントローラと、プロセッサ又は治療用エネルギーデバイスと連結された撮像システムと、を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、治療用エネルギーデバイスの動作中に位置を特定するように構成される。
【0114】
いくつかの実施形態では、当該システムはさらに、治療用デバイスを位置決めするように構成される患者インターフェースをさらに含み、治療用デバイスは、トランスデューサの照準が、上位は肋骨間の位置から、下位は腸骨稜から、及び中位は脊柱から、腎臓に接続する血管に向けて設定されるように位置決めされる。
【0115】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーデバイスは焦点式超音波を送達するように構成される。
【0116】
いくつかの実施形態では、基準標的は腎臓に向かって又は腎臓から流れる血管の少なくとも一部であり、当該神経は腎神経である。
【0117】
いくつかの実施形態では、トランスデューサは、6cmから18cmの距離でエネルギーを集束するように構成される。
【0118】
いくつかの実施形態では、トランスデューサは、脊柱の横突起を接続する水平線に対して約−10度から約−48度の間の角度範囲で、焦点式超音波の形態で腎血管にエネルギーを送達するように構成される。
【0119】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーデバイスからのエネルギーは100W/cm2と2500W/cm2の間の範囲にある。
【0120】
いくつかの実施形態では、基準標的は血管内留置カテーテルである。
【0121】
いくつかの実施形態では、撮像システムは磁気共鳴撮像システムであり、治療用エネルギーデバイスは超音波デバイスである。
【0122】
いくつかの実施形態では、撮像システムは超音波撮像システムである。
【0123】
いくつかの実施形態では、プロセッサは治療用エネルギーデバイスの一部である。
【0124】
いくつかの実施形態では、プロセッサは撮像システムの一部である。
【0125】
いくつかの実施形態では、患者の皮膚の外側の位置から血管を囲む神経へとエネルギーを送達する方法は、肋骨より下位、腸骨稜より上位、かつ脊柱の側方にデバイスを配置することと、エネルギー送達システムが骨組織を横切らずに皮膚を通過してエネルギーを送達できるようにするため、当該デバイスを使用して、患者に対するエネルギー送達システムの相対的位置を所望の位置に維持することと、を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、エネルギー送達システムは焦点式超音波送達システムを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、患者の皮膚の外側の位置から血管を囲む神経へと焦点式超音波エネルギーを送達するシステムで使われるデバイスは、エネルギー送達システムが骨組織を横切らずに皮膚を通過してエネルギーを送達できるようにするため、患者に対するエネルギー送達システムの相対的位置を所望の位置に維持するように構成される位置決めデバイスを含み、この位置決めデバイスは、肋骨より下位、腸骨稜より上位、かつ脊柱の側方に配置するように構成される。
【0128】
いくつかの実施形態では、エネルギー送達システムは焦点式超音波送達システムを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、超音波場に骨構造が含まれないようにするため、位置決めデバイスは焦点式超音波送達システムの角度を維持するように構成される。
【0130】
いくつかの実施形態では、治療システムは、患者の外側から患者の内側の神経にエネルギーを送達するように構成される治療デバイスと、神経に囲まれる血管の内側に配置され、信号を送信するように構成されるカテーテルと、信号を受信し、血管中の基準位置を特定するように構成されるプロセッサと、を含む治療システムであり、当該治療デバイスは、特定された基準位置に基づいてエネルギーを神経に送達するように構成される。
【0131】
いくつかの実施形態では、治療デバイスは超音波デバイスを含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、動脈に沿って走る神経の機能を抑制する方法は、患者の動脈の位置を特定するための外部の画像診断様式を提供することと、画像診断に基づいて、動脈を第1の三次元基準座標系に配置することと、第1の三次元基準座標系に治療用エネルギー源を配置するか又は関連付けることと、動脈の外膜領域又は神経の走る動脈に隣接する領域へのエネルギー送達をモデル化することと、治療用エネルギー源から、少なくとも2つの異なる角度から、患者の皮膚を通過して治療用エネルギーを送達し、動脈又は動脈に隣接する領域で交差させることと、動脈に沿って走る神経の機能を少なくとも部分的に抑制することと、を含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、画像診断様式は超音波、MRI、CTのいずれか1つである。
【0134】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーは超音波である。
【0135】
いくつかの実施形態では、当該動脈は腎動脈である。
【0136】
いくつかの実施形態では、三次元基準座標系に動脈を配置することには、ドップラー超音波信号を使用して動脈の位置を特定することが含まれる。
【0137】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、患者の内部に配置された基準体を利用することを含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、基準体は患者の内部の位置に一時的に配置される。
【0139】
いくつかの実施形態では、基準体は患者の動脈内に留置されるカテーテルである。
【0140】
いくつかの実施形態では、カテーテルは無線周波数信号を使用して検出可能であり、画像診断様式は超音波である。
【0141】
いくつかの実施形態では、エネルギー源からの治療用エネルギーは、動脈の長手方向に沿った分布で送達される。
【0142】
いくつかの実施形態では、治療用エネルギーは電離放射線である。
【0143】
いくつかの実施形態では、腎動脈に沿って走る神経の機能を抑制するシステムは、患者の外部位置から前記腎動脈及び腎神経の位置を特定する検出器と、少なくとも2つの方向から、治療用エネルギーを、皮膚を通過して、前記腎動脈を囲む神経に送達する超音波コンポーネントと、インプットとアウトプットを含むモデル化アルゴリズムであって、モデル化アルゴリズムへのインプットは、治療用エネルギー源を含む三次元座標空間と、三次元座標空間における腎動脈の位置を含み、モデル化アルゴリズムからのアウトプットは、超音波コンポーネントの方向とエネルギーレベルを含む、モデル化アルゴリズムと、患者の外側から位置を特定可能な基準体であって、患者の動脈に一時的に設置され、検出器と通信して、腎動脈の位置を三次元基準座標系で特定するように適応した基準体と、を含み、当該位置に関する情報は当該モデルへのインプットとして送信可能である。
【0144】
いくつかの実施形態では、基準体は超音波の受動的反射体である。
【0145】
いくつかの実施形態では、基準体は無線周波エネルギーを生成する。
【0146】
いくつかの実施形態では、基準体は、超音波場発生器又は磁場発生器からの信号に基づいて活性化しエネルギーを伝送する。
【0147】
いくつかの実施形態では、モデルからのアウトプットは超音波コンポーネントに対し、主軸が動脈の長手方向に沿った縦軸である損傷部(lesion)を、動脈上に送達するように指示する。
【0148】
いくつかの実施形態では、モデルからのアウトプットは超音波コンポーネントに対し、複数の損傷部を同時に動脈周辺に送達するように指示する
【0149】
いくつかの実施形態では、モデルからのアウトプットは超音波コンポーネントに対し、動脈周囲に外周状の損傷部を送達するように指示する。
【0150】
いくつかの実施形態では、腎動脈周辺の損傷部は、腎門部の動脈の分岐の近位側に隣接して配置される。
【0151】
いくつかの実施形態では、腎臓から又は腎臓まで走る神経の機能を刺激又は抑制する方法は、患者の後方領域において、腎動脈を描出可能な音響窓を特定することと、患者の後方領域から患者の皮膚を通過して第1エネルギーを伝送することと、伝送された第1エネルギーを使用して動脈領域を撮像することと、撮像と第2の伝送エネルギーを連結することにより、動脈の外膜に第2伝送エネルギーを印加することと、を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、第1伝送エネルギーで作成された画像を追跡することを含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、患者の体内の血管の位置を特定する方法は、第1超音波を第1方向から、患者の外側から血管領域に向けて印加し、その帰還信号を検出することと、印加した前記第1超音波とその帰還信号を比較することと、同時又は連続的に、第2超音波を第2方向から血管に印加し、その帰還信号を検出することと、第1超音波からの帰還信号と第2超音波からの帰還信号を統合して、血管の位置を三次元基準座標系において特定することと、を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、当該方法はさらに、治療用超音波トランスデューサに対し、血管の位置にエネルギーを印加するよう指示するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1A】自律神経系の神経で集束しているエネルギー源を示す。
【図1B】自律神経系の神経で集束しているエネルギー源を示す。
【図1C】エネルギー源の方向付けを支援する撮像システムを示す。
【図2】胃を通過して胃後方の自律神経系に至る標的化及び/又は治療用超音波の送達を示す。
【図3A】腎神経に対するエネルギー波の集束を示す。
【図3B】治療用の基準座標系を示す。
【図3C】腎血管のいずれかに留置された標的カテーテルを示す。
【図3D】一時的に内部に基準体を置いた血管の画像検出システムを示す。
【図3E】高血圧症を治療・判定するための治療パラダイムを示す。
【図4A】頸動脈を囲む自律神経系へのエネルギーの印加を示す。
【図4B】腎門の血管を通過して印加されるエネルギーを示す。
【図5A】眼の自律神経系への焦点式エネルギーの印加を示す。
【図5B】眼の自律神経系への焦点式エネルギーの印加を示す。
【図6】腎杯の内側深くに施された狭窄性の損傷部を示す。
【図7A】撮像システムにおいて焦点式エネルギー波を用いた治療を受けている患者を示す。
【図7B】治療中の腎臓の描出を示す。
【図7C】治療中の腎臓の腎神経領域を拡大表示した図を示す。
【図7D】MRI及びエネルギートランスデューサを使用して自律神経系を治療するアルゴリズム的方法を示す。
【図7E】大動脈及び腎臓領域の断面画像から取得した幾何モデルを示す。
【図7F】治療領域の拡大画像を示す。
【図7G】一連の断面画像の再現から得た測定結果を示す。
【図7H】より最適化された姿勢の患者の一連の断面画像から得た測定結果を示す。
【図7I】腎門に治療を加え、腎血管にエネルギーを印加するアルゴリズム的方法を示す。
【図8A】経皮的アプローチによる、腎臓を囲む自律神経系の治療を示す。
【図8B】血管内アプローチによる、自律神経系の治療又は標的化を示す。
【図8C】CTスキャンを使用した腎門部への経皮的アプローチ及び腎血管に到達するプローブを示す。
【図9A】自律神経系を治療するための、大動脈の内側から大動脈の外側領域へのエネルギーの印加を示す。
【図9B】自律神経系を治療するための、大動脈の内側から大動脈の外側領域へのエネルギーの印加を示す。
【図9C】自律神経系を治療するための、大動脈の内側から大動脈の外側領域へのエネルギーの印加を示す。
【図10】治療の進行及び動きをモニターしながらHIFUを使用して病気を治療する手順を示す。
【図11A】断層像撮影を使用した脳病理治療を示す。
【図11B】治療中の脳領域の療法をビューアーに表示した画像を示す。
【図11C】脳損傷部の治療を補助する、撮像デバイスに表示される別の脳損傷部の別の画像を示す。
【図12】腹腔鏡的アプローチを使用した腎神経領域の治療を示す。
【図13】撮像マーカーを使用して組織領域を破壊し、治療の進行をモニターする方法を示す。
【図14】画像診断と治療波を収束させた、神経束の一部分の部分的治療を示す。
【図15A】脊髄神経、脊椎内神経の治療を含む各種の脊髄病変の治療を目的とした、脊柱への焦点式エネルギーの印加を示す。
【図15B】脊髄神経、脊椎内神経の治療を含む各種の脊髄病変の治療を目的とした、脊柱への焦点式エネルギーの印加を示す。
【図16A】応答に影響を与えるため腎動脈の周囲に作製される損傷部の種類を示す。
【図16B】図16Aの裏付けとなる、血管I周辺の超音波のシミュレーションを示す。
【図16C】腎血管に印加した超音波エネルギーから取得したデータと、結果として生じたノルエピネフリンレベルの変化を示す。
【図17A】複数のトランスデューサを使用した、自律神経系の腎門部領域の治療を示す。
【図17B】動脈を囲む特定領域の治療を指示するための画像診断の使用方法を示し、予測される損傷部形態を表示する。
【図17C】動脈を囲む特定領域の治療を指示するための画像診断の使用方法を示し、予測される損傷部形態を表示する。
【図17D】ドップラー超音波信号に対してHIFUトランスデューサを局在させる方法を示す。
【図17E】標的に対するトランスデューサの配列を示す。
【図17F】多集束点領域におけるアブレーション区域を断面図で示す。
【図18】腎臓内の領域レベルで特定の機能変化に影響を及ぼすことを目的とした、腎臓内部でのエネルギーの印加を示す。
【図19A】腎門領域周辺の自律神経系領域を治療する際の、エネルギー波の伝播方向を示す。
【図19B】HIFUを用いて腎門部にアクセスできるようにするため、実験を通じて特定した方向から照射するBモード超音波の略図を示す。
【図20】自律神経系に治療を施すため、大動脈壁を通じて印加する超音波を示す。
【図21A】毛様体筋に印加する焦点式エネルギー及び眼の前方領域のプロセスを示す。
【図21B】薬物送達、遺伝子送達、又は電離放射線等の別の治療法を強化することを目的とした、眼の裏への焦点式非焼灼性エネルギーの印加を示す。
【図22】膝関節の神経機能に影響を及ぼすための、膝関節を囲む神経への焦点式エネルギーの印加を示す。
【図23A】患者を不妊化するための卵管へのエネルギーの印加を示す。
【図23B】患者を不妊化するための卵管へのエネルギーの印加を示す。
【図24】自律神経系に対する神経調節手順の効果を評価するアルゴリズムを示す。腎神経への手順を実施した後、例えば1つ以上の場所で自律神経系をシミュレートするなどして、自律神経反応を評価する。
【図25】内部神経に治療を施す上でのデバイスの最適位置を示す。
【図26A】システム設計用パラメータを取得するための患者の位置決定を示す。
【図26B】実現可能性調査から取得した情報に基づくデバイス設計を示す。
【図27】実現可能性調査に基づき自律神経系の腎神経を治療するための臨床パラダイムを示す。
【図28A】焦点式超音波システムを組み込んだ患者治療体位設定システムを示す。
【図28B】焦点式超音波システムを組み込んだ患者治療体位設定システムを示す。
【図28C】焦点式超音波システムを組み込んだ患者治療体位設定システムを示す。
【図29A】動脈を囲む神経に焦点式エネルギーを印加する調査と、周囲に神経が通る血管を描出するための超音波調査の結果を示す。
【図29B】動脈を囲む神経に焦点式エネルギーを印加する調査と、周囲に神経が通る血管を描出するための超音波調査の結果を示す。
【図29C】動脈を囲む神経に焦点式エネルギーを印加する調査と、周囲に神経が通る血管を描出するための超音波調査の結果を示す。
【図29D】動脈を囲む神経に焦点式エネルギーを印加する調査と、周囲に神経が通る血管を描出するための超音波調査の結果を示す。
【図29E】CTスキャンから取得した角度、長さ、表面積を定量化する設計プロセスの結果を示す。
【図30A】シミュレーションに基づくプロトタイプデバイス設計を使用して行った、焦点式超音波を腎動脈領域に印加するシミュレーションの結果を示す。
【図30B】シミュレーションに基づくプロトタイプデバイス設計を使用して行った、焦点式超音波を腎動脈領域に印加するシミュレーションの結果を示す。
【図30C】シミュレーションに基づくプロトタイプデバイス設計を使用して行った、焦点式超音波を腎動脈領域に印加するシミュレーションの結果を示す。
【図30D】シミュレーションに基づくプロトタイプデバイス設計を使用して行った、焦点式超音波を腎動脈領域に印加するシミュレーションの結果を示す。
【図30E】シミュレーションに基づくプロトタイプデバイス設計を使用して行った、焦点式超音波を腎動脈領域に印加するシミュレーションの結果を示す。
【図30F】シミュレーションに基づくプロトタイプデバイス設計を使用して行った、焦点式超音波を腎動脈領域に印加するシミュレーションの結果を示す。
【図30G】シミュレーションに基づくプロトタイプデバイス設計を使用して行った、焦点式超音波を腎動脈領域に印加するシミュレーションの結果を示す。
【図30H】シミュレーションに基づくプロトタイプデバイス設計を使用して行った、焦点式超音波を腎動脈領域に印加するシミュレーションの結果を示す。
【図30I】シミュレーションに基づくプロトタイプデバイス設計を使用して行った、焦点式超音波を腎動脈領域に印加するシミュレーションの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0156】
高血圧症は、国内外のきわめて重要な疾病である。高血圧症の患者は米国だけで8,000万人おり、世界の先進国では2億人を超える。管理不良高血圧患者、すなわち、副作用プロフィールが原因で服薬不履行であるか投薬を受けられない患者は米国で6,000万人存在する。1,000万人に上る人々が、どの投薬計画でも目標レベルに達しない完全な抵抗性高血圧患者であると考えられる。管理不良高血圧に関連する病的状態は深刻であり、脳卒中、心臓発作、腎不全、末梢動脈障害などがある。簡便、直接的で侵襲性が最小の高血圧症治療手順があれば、この疾病の治療における前進として大いに歓迎されることになる。
【0157】
うっ血性心不全(「CHF」)とは、心臓が損傷を受け、体の器官への血流量が減少する状態をいう。血流量の減少が一定量を超えると腎機能が変質し、その結果、体液貯留、異常ホルモン分泌、血管狭窄増加となる。これにより心臓の作業負荷が上昇するため、血液を腎臓及び循環系にポンピングする心臓能力はさらに低下する。
【0158】
腎臓の潅流が徐々に減少することが、CHFの永続的な下方スパイラル(downward spiral)を引き起こす主要な非心臓性要因であると考えられている。例えば、心臓が懸命に血液をポンピングしようとするとき、心拍出量は維持されるか減少し、腎臓は、心臓の1回の拍出量を維持するため体液と電解質を保存する。結果として圧力が上昇するため、心筋にさらに過負荷がかかり、心筋は、上昇した圧力に対していっそう懸命にポンピングすることを余儀なくされる。すでに損傷している心筋は、圧力上昇によりさらにストレスを受け損傷する。その上、こうした生理的変化に起因して、水分過負荷及び関連の臨床症状が生じる結果、入院回数が増え、生活の質が低下し、医療制度に要する費用が増加する。腎不全は心不全を悪化させるだけでなく、下方スパイラルを招き、腎機能のさらなる悪化につながることがある。例えば、上記の前方心不全(収縮期心不全)では、腎臓は虚血状態になる。後方心不全(拡張期心不全)では、腎臓は腎静脈圧上昇に対してうっ血する。したがって、腎臓自体が腎不全の悪化の原因になり得る。
【0159】
腎機能をまとめると、3つの主要カテゴリー:血液をろ過して体の代謝で生成された老廃物を排泄する、塩分・水分・電解質・酸塩基バランスを調節する、ホルモンを分泌して生命維持に必要な臓器血流量を維持する、に分類できる。適切に機能する腎臓がなければ、水貯留、尿流減少、及び血液・体内での老廃物毒素の蓄積が患者に発生する。これらの状態の原因は、腎機能の低下すなわち腎不全(腎機能障害)であり、心臓の作業負荷を増加させる要因と考えられている。CHF患者の場合、腎不全が生じると、腎機能低下により体液が貯留し血液毒素が蓄積するため、心臓がいっそう悪化する。その結果生じる高血圧は、脳血管疾患・脳卒中の進行にも劇的な影響を及ぼす。
【0160】
自律神経系とは、程度の差はあるが、ほぼすべての器官と生理系に影響を与える網状の神経である。概して、自律神経系は交感神経と副交感神経で構成される。例えば、腎臓に通じる交感神経は、脊柱に沿う交感神経鎖を横切り、交感神経鎖の節の中又は腹腔神経節の中でシナプスを形成し、さらに、「腎神経」内の節後線維を介して腎臓を神経支配する。腎神経は腎門(動脈及び一定程度の静脈)に沿って走り、腎神経の内部には、節後交感神経及び腎臓から伸びる求心性神経がある。腎臓から伸びる求心性神経は、(痛覚線維の場合は)後根の内部を走り、知覚線維の場合は前根へと伸び、脊髄に入って、最終的には脳の特定領域に通じる。求心性神経、圧受容器、及び化学受容器は、腎臓から脳を介して再び交感神経系に情報を送達するが、これらを焼灼又は抑制することは、腎神経のアブレーション(焼灼)若しくは除神経又は部分的破壊の後に見られる血圧の改善に対して、少なくとも部分的に寄与する。また、頸動脈洞レベルでの圧受容器の反応は腎動脈求心性神経によって媒介されるため、腎動脈求心性神経の反応が喪失すると、動脈圧の変化に対する頸動脈圧受容器の反応が鈍くなることが示唆され、実験により部分的に立証されている(参照により本明細書に組み込まれる文献American J.Physioogy and Renal Physiology 279:F491−F501,2000)。
【0161】
動物モデルでは、心不全状態に起因して、腎臓の交感神経活性が異常に高くなることが立証されている。腎臓の交感神経活性が亢進すると、体内から除去される水分とナトリウムが減少し、同時に、副腎からのアルドステロン分泌を刺激するレニン分泌が増加する。レニン分泌が増加すると、アンジオテンシンIIレベルが上昇することがあり、その場合、腎臓を供給する血管の収縮に加え、全身性の血管収縮が発生する。いずれも、結果的に腎血流の減少と血圧上昇を招く。腎臓の交感神経活性を脱神経支配等を通じて減少させると、これらのプロセスを逆行できる可能性があり、実際、臨床で示されている。同様に、肥満患者では交感神経のドライブ(sympathetic drive)が内因的に非常に高く、肥満患者における高血圧症の原因の1つと思われる。
【0162】
最近の臨床作業では、腎交感神経鎖のほか、腎門を通じて腎臓に入る神経に対して脱神経支配を行うと、高血圧症、心不全、その他の器官系疾病を有する患者(ラット、イヌ、ブタ、ヒツジ、ヒト)に強い全身作用を起こし得ることが示されている。こうした治療は、血圧薬物療法の必要性を長期に渡り低減し、血圧の改善につながる可能性がある(参照により組み込まれる文献O’Brien Lancet 2009 373;9681)。この試みで使われたデバイスは、高度に局在させた無線周波(RF)アブレーションであり、腎動脈を囲む神経は加熱区域でも抑制されると推測して、腎動脈外膜が焼灼された。手順の実施前、実施中、実施後のいずれも、神経叢の正確な位置は知られていなかったという点で、この手順は本質的に盲検方式で行われている。加えて、腎動脈の壁はRFプローブで一様に損傷され、重度のアテローム性動脈硬化患者を安全に治療できていない。加えて、血管壁から神経の距離によっては、エネルギーが絶えずアブレーション又は遮断を起こすことができない可能性がある。さらに、内部カテーテルを使用する方法では、より選択的に治療しようとする場合は、腎臓の内側又は大動脈の内側を治療できない可能性がある。多くの場合、血管周囲の損傷を避けるため、血管内側の長手方向にスパイラルを作成する必要がある。
【0163】
断層像撮影を利用することにより、放射線(CT)又は磁場(MRI)を介して患者の内部生体構造を描出できる。超音波を使用して特定領域の断面を取得できるが、高周波のみで可能であるため、超音波は通常、身体の表層領域の撮像に限定される。放射線は組織をよく透過するため、断層像撮影にはCTとMRIが使われることが多い。加えて、身体領域の縮尺比が維持されるので、基準座標系内の相対的な生体構造は損なわれない。すなわち、構造体と構造体の間の距離を測定可能である。
【0164】
超音波を使用する場合、超音波が組織の奥深くへ伝播するにつれて透過度が変わるため、拡大縮小がより困難になり得る。CTスキャンとMRIだけでなく超音波デバイスを利用しても、三次元表示及び患者の再現断層像を作成でき、三次元表示を使用して基準座標系に生体構造を配置することができる。基準座標系に配置した後は、体の特定領域を標的にするようにエネルギーデバイス(トランスデューサ)を適所に配置し、エネルギー放出デバイスの方向を設定できる。患者の体内の標的位置に対するトランスデューサの相対位置を把握した後は、エネルギーを標的に送達できる。
【0165】
超音波とは、周期的に生成される音圧波で、周波数はヒトの最大可聴周波数である20キロヘルツ(kHz)より高い。超音波は組織を透過できることから、医療では広く利用されている。音波の反射により深部組織のシグネチャ(signature)が明らかになるため、医療分野では、超音波は診断目的で広範に使用可能であり、また治療目的でも使用できる可能性がある。治療法としては、超音波は組織を透過でき、集束してアブレーション区域を創出できる。同時に撮像が可能であることから、超音波を利用して体内の損傷部を正確に標的化できる。超音波強度は1cmあたりの電力で測定する(例えば、治療標的領域のW/cm)。一般に、高強度とは0.1〜5kW/cmの範囲を指し、低強度の超音波とは、1cmあたり約1又は10ワットから0.01〜.10kW/cmまでの範囲を包含する。
【0166】
超音波の前方伝播波とその反射波を利用できるほか、組織内にエネルギーを付与して、組織を加熱するか微少量を破壊することが望まれる場合も、超音波を利用できる。例えば、反射に依存して撮像するのでなく、比較的低周波の超音波ビーム(例えば、<1MHz)の集束点を組織内の深部に当て、加熱区域又は画定されたキャビテーション領域を作ることができる。この領域に、微小気泡を生成する、細胞膜を開いて生物活性分子を通す、などの方法で組織内に損傷を創出する。上記の超音波特性では、一般に、効果に必要な深度に応じて0.25メガヘルツ(MHz)から10MHzの範囲の周波数が利用される。単一ビームで組織表面を過度に損傷又は加熱しないようにするため、集束化が必ず、又は場合に応じて必要とされる。換言すれば、多くの単一ビームを様々な角度から組織を通じて伝播させ、各単経路沿いのエネルギー付与を減少させ、なおかつ、組織の奥深くの焦点でビームを集束させることが可能である。加えて、治療領域の三次元表示を座標空間内に作成する目的で、複数の異なる角度からの反射ビームを利用できる。
【0167】
超音波療法を計画するときは、鋭利で不連続な界面を避けることが重要である。例えば、空気界面及び/又は骨界面を有する腸、肺、骨は、軟部組織と鋭利な境界を構成する。こうした界面が存在すると、計画と治療がいっそう困難になる。しかし、脳に対する手技(例えば、MR誘導HIFU)では、頭蓋での非常に高い減衰を克服するには複雑なモデル化が必要とされるが、上記の界面を回避できれば治療を大幅に簡略化できる。このような治療の簡略化を達成する方法について、広範な実験を通じて発見した事項を下記のデータで明らかにする。
【0168】
超音波を使用した飛行時間型測定により、距離測定、すなわち組織内の複数の物体間の距離を見出すことができる。このような測定を利用すると、血管などの物体を三次元基準座標系に配置できる。その結果、エネルギーを利用して組織を標的化することが可能になる。SONARはsound navigation and ranging(音波探知機)の頭文字であり、音響による局在化の一方法である。音波が媒質を通過して伝送され、その音波が反射してトランスミッタに戻るまでの時間が、対象となる物体の位置を表す。移動する物体により、ドップラー信号が生成される。前進波と反射波が変化する結果、対象物体の速度が得られる。
【0169】
スペックルトラッキングの概念は、特定組織の反射を経時的に画定し追跡するというものである(参照により本明細書に組み込まれる文献IEEE Transactions on Ultrasonics,Ferroelectrics,AND Frequency Control,Vol.57,no.4,April 2010)。空間内の所定の点を用いて三次元基準座標系を作成でき、この座標系を通じて、特定の、明確に画定された領域にエネルギーを印加することが可能である。スペックルを追跡する目的で、組織から超音波画像を取得する。組織内の不均質性を表す明暗の斑点が、画像中に明瞭に現れる。この不均質性が比較的一定して現れることが、組織の本質的な特性である。組織内の比較的一定したマーカーを用いて、これらのマーカーをリアルタイムで撮像することにより追跡を実現できる。超音波の複数の平面を使用すれば、超音波トランスデューサと、三次元場の中の所定位置に送達される治療用エネルギーに対して、三次元でマーカーを関連付けることができる。
【0170】
その時点で、1つ以上の画像診断様式を利用して、三次元における標的位置を特定する。その後は、治療法を計画し、三次元体積中の特定領域に当該治療法を適用できる。
【0171】
1980年代の初期に砕石術が導入された。砕石術は、衝撃波を利用して腎臓結石を治療する。この目的で最初に作られたシステムがドルニエ結石破砕システムである。この結石破砕システムでは、超音波を患者の体を通して腎臓に送り、腎臓結石を選択的に加熱し振動させる。すなわち、隣接する組織一面を選択的に加熱し振動させる。現在の結石破砕システムでは、腎臓結石領域を直接標的化し撮像する方法は利用されていない。この技術が著しく進歩すれば、結石領域を画像化し、結石が存在する特定領域を標的化することにより、腎臓などの周囲構造の損傷を最小化できるようになると予想される。腎臓結石の場合、腎臓は実際にスペックルであるため、三次元で標的化し、その画像から追跡し、次いで、超音波を照射して結石を破砕することが可能である。下記の実施形態では、様々な手法と撮像の結果を記載する。これらの多くを臨床的砕石に応用することができる。
【0172】
組織破砕とは、加熱するのでなくキャビテーションを使用することにより、組織を実質的に蒸発させる手法を指す語である(経皮的・非熱的・機械的組織分画法)。こうした小爆発は高温を必要とせず、1秒未満で発生することが可能である。生成される圧力波は、数メガパスカル(MPa)から最大100MPaに及び、100MPaを超える場合もある。組織の小領域をごく迅速に治療するには、この手法が非常に効果的であり得る。通常、生存組織と非生存組織の境界は非常に鋭利であり、作用機序は細胞破壊であることが示されている。
【0173】
一実施形態では、患者の外側から照射する超音波を、腎動脈及び/又は腎静脈の領域に集束させる。ここでは、超音波を複数の角度から標的に送達することにより、腎動脈を囲む腎交感神経を焼灼する目的で提案された以前の方法・デバイスの欠点の多くを克服する。
【0174】
特に、ある一実施形態では、正しい領域が焼灼され不正確な領域は焼灼されていないことを操作者が確信できるように、アブレーション区域の正確な描出を可能にしている。いくつかの実施形態は皮膚の穿刺を必要としないので、著しく侵襲性が低い。このことは、患者の観点からするといっそう好ましく安全である。さらに、三角法で測定された外部エネルギーを腎動脈に対して使用し、腎臓に向かって又は腎臓から走る交感神経、求心性神経のそれぞれに影響を及ぼすことにより、異常な生体構造及びアテローム硬化性血管を治療できる。
【0175】
図1Aを参照すると、ヒトの腎臓の生体構造には腎臓100が含まれ、腎臓100は、酸素化された血液が腎動脈200により供給され、腹部大動脈300を介して心臓に接続している。脱酸素化された血流は、腎静脈(図示せず)を介して腎臓から心臓に流れた後、下大静脈(図示せず)に流れる。腎臓の生体構造には、皮質、髄質、及び門が含まれる。血液は皮質に送られて糸球体を通じてろ過され、次いで髄質に送られ、ヘンレ係蹄及び個々のネフロンにおいて一連の再吸収・ろ過工程を通じてさらにろ過される。限外ろ過液は尿管集合系へと浸出し、尿管と膀胱に送られ、最終的に排泄される。
【0176】
門部とは、主要血管(腎動脈及び腎静脈)並びに神経150(遠心性交感神経、求心性知覚神経、及び副交感神経)が腎臓に向かって又は腎臓から走る領域である。腎神経150は、腎臓に交感神経支配を供給する節後遠心性神経を含む。求心性知覚神経は腎臓から中枢神経系へと走り、中枢神経系においては、神経体を持つ節後求心性神経となる。これらの神経は中枢神経系に知覚情報を送達する神経であり、中枢神経系から皮膚、心臓、腎臓、脳などの全器官に対する交感神経性流出の多くを調節すると考えられている。
【0177】
一方法では、患者の外側から皮膚を通過して求心性腎神経及び/又は遠心性腎神経にエネルギーを送達する。実施形態のいくつか又は多数において、マイクロ波放射、光放射、振動性放射(例えば音響放射)、電離放射を利用し得る。
【0178】
エネルギートランスデューサ510(図1A)は、交感神経節520、節後腎神経150、又は副腎400に通じる神経領域に対し、経皮的にエネルギーを送達する。エネルギーは患者の外側から生成され、複数の方向から皮膚を通過して、腎動脈620を囲む腎神経624、又は神経を収容する交感神経節622の領域に送達される。エネルギーは、焦点式、非焦点式のどちらも可能であるが、好適な一実施形態では、高密度焦点式超音波(HIFU)又は低密度焦点式超音波を使用してエネルギーを集束させている。
【0179】
低密度焦点式超音波(LIFU)を使用した集束は、HIFUの一成分として意図的に発生させても(ペナンブラ領域)、意図せずに発生させてもよい。神経抑制のメカニズムは、集束させる超音波が「低」か「高」かによって変更可能である。低エネルギーには、25W/cm〜200W/cmのエネルギーレベルが含まれ得る。比較的高い強度には、200W/cmから1MW/cmのエネルギーレベルが含まれ得る。集束は、少なくとも2つの異なる角度から皮膚を通過して送達されたエネルギーが、エネルギー強度と密度が最高になる焦点に集まることにより発生する。この点に治療法が送達される。治療法は、閾値下の神経遮断(部分的アブレーション)、神経のアブレーション(完全な遮断)、神経伝導装置の調節遮断、部分的アブレーション、又は標的化薬物送達が可能である。非焼灼性治療の場合は、対象領域の温度を摂氏60度未満まで加熱できる。加熱による破壊(アブレーション)の場合は、摂氏60度を超える温度に加熱できる。神経を焼灼するには、摂氏40度範囲の温度も使用でき、数分を超える時間をかけて熱を生成すればアブレーションが行われる。摂氏約50度の温度の場合、この時間は1分未満になり得る。加熱とは別に、摂氏60度未満の温度でごく短時間、振動効果を与えた場合、神経の破壊の麻痺が部分的又は完全に行われ得る。温度を摂氏50〜60度超に上昇させた場合は、著しく少ない時間で、加熱という単独のメカニズムを介して神経に影響が及ぼされる。いくつかの実施形態では、画像診断様式もシステムに含まれる。画像診断様式には、超音波、MRI、又はCT(X線)を使用できる。画像診断様式を利用することにより、アブレーション領域を標的化し、標的までの距離を特定できる。
【0180】
いくつかの実施形態では、送達するエネルギーを電離エネルギー又は非電離エネルギーとすることができる。非電離エネルギーの形態には、磁場などの電磁エネルギー、光、電場、無線周波エネルギー、光を用いたエネルギーが含まれる。電離エネルギーの形態には、X線、陽子ビーム、ガンマ線、電子ビーム、アルファ線が含まれる。いくつかの実施形態では、複数のエネルギー様式が組み合わされる。例えば、神経を熱で焼灼した後、電離放射線を対象領域に送達して神経の再生を防止する。
【0181】
あるいは、アブレーション様式として先に電離放射線を照射し、その後、組織が再生し、再放射が不可能のような場合は熱を加える(補完エネルギー又は多様式エネルギーの利用)。実際に神経組織が再生する場合には、電離放射線で神経組織の再生を防止又は阻害できる可能性がある。したがって、神経の別の治療方法では、先に神経に熱を加えてから、再生防止のため電離放射線を照射する。
【0182】
複数の様式を組み合わせる方法としては、光増感剤及びその活性化のための光源を含む、光線力学的治療などの他の手法も利用できる。これらの光感作性薬剤の多くは超音波エネルギーにも感受性を有し、光で活性化されたかのように同一の光反応種(photoreactive species)を生ずる。血管に装置を導入する前に、光反応性又は感光性の薬剤を標的域に、例えば静脈内注射、皮下注射等により導入することができる。ただし、所望する場合、当該装置は、標的域に光反応性薬剤を送達するための内腔を任意で含みうることが理解されるであろう。標的組織への光反応性薬剤の取り込みが比較的速い場合、光反応性薬剤が標的組織に送達され吸収される間、装置が長時間に渡って血管内に留置される必要がなくなるため、結果として得られる実施形態は特に有益であると予想される。
【0183】
光源配列は、複数の光波長又は光波帯を提供する光源を含むことができる。組織の伸長部分を治療するには、線形の光源配列が特に有用である。好ましい方向への光の伝送を強化するため、光源配列に反射素子を含めることもできる。例えば、血流を閉塞し(血流は光源から目的の標的組織への光伝送を阻害する可能性がある)、装置を血管の中心に配置できるようにするため、デバイスは膨張性バルーンなどの拡張可能な部材を有利に含むことができる。別の好適な実施形態では、経皮的PDT法を企図する。ここでは、光感作性薬剤の送達系は、実質的に光感作性薬剤からなるリポソーム送達系を含む。
【0184】
本発明のさらに別の実施形態は、哺乳類の被検体において、感作性薬剤を利用して標的損傷部を経皮的に超音波治療する方法に関する。この実施形態では、以下の方法を通じて超音波により生化学化合物を活性化する。
【0185】
1)被検体に対し、治療上有効量の超音波感作性薬剤、超音波感作性薬剤送達系、又はプロドラッグを投与する。この方法において、超音波感作性薬剤、超音波感作性薬剤送達系、又はプロドラッグは、治療部位の厚い若しくは薄い新生内膜、神経細胞、神経鞘、神経核、動脈プラーク、血管平滑筋細胞、及び/又は異常細胞外マトリックスと選択的に結合する。神経鞘、ミエリン、S−100タンパク質などの神経の構成成分も標的にできる。この工程の後、被検体の少なくとも一部分に対し、超音波感作性薬剤の場合は当該薬剤を活性化する周波数で、プロドラッグの場合はプロドラッグ製剤で活性化する周波数で、超音波エネルギーを照射する。この工程では、超音波エネルギーは超音波エネルギー放出源から供給する。さらにこの実施形態は、任意で、放射前に被検体の非標的組織から超音波治療薬物を除去する。
【0186】
本発明の好適な一実施形態では、血管に近い標的組織に対して、経皮的な超音波治療を施す方法を企図する。
【0187】
本発明の他の好適な実施形態では、超音波放出源は患者の表皮層の外部に位置するか、又は患者の表皮層の下に挿入されるが、治療する血管の外部に位置することを企図する。本発明の別の好適な実施形態では、超音波感作性薬剤はリガンドとコンジュゲートする。より好ましくは、当該リガンドは、標的損傷部に特異的な抗体、標的損傷部に特異的なペプチド、及び標的損傷部に特異的なポリマーからなる群より選ばれる。本発明の他の好適な実施形態では、超音波感作性薬剤は、インドシアニングリーン(ICG)、メチレンブルー、トルイジンブルー、アミノレブリン酸(ALA)、塩素化合物、フタロシアニン、ポルフィリン、プルプリン、テキサフィリン、及び500nm〜1100nmの範囲で光を吸収する他の薬剤からなる群より選ばれることを企図している。本発明の好適な実施形態では、光感作性薬剤はインドシアニングリーン(ICG)であることを企図している。
【0188】
本発明の他の実施形態は、現在開示されている経皮的PDTの方法に関する。本実施形態における光源は、被検体の標的組織の近くに置かれ、LED光源、エレクトロルミネセント光源、白熱光源、冷陰極蛍光光源、有機ポリマー光源、及び無機光源からなる群より選ばれる。好適な実施形態は、LED光源の使用を含む。
【0189】
現在開示されている方法のさらに別の実施形態は、波長が約500nmから約1100nm、好ましくは約650nm超、より好ましくは約700nm超の光の使用に関する。この方法の好適な実施形態は、光感作性薬剤により単一光子吸収モードとなる光の使用に関する。
【0190】
本発明のさらなる実施形態は、光感作性薬剤と、標的組織上の受容体と特異的に結合するリガンドとを含む、光増感剤の標的化送達系の組成物を含む。好ましくは、標的化送達系の光感作性薬剤は、標的(神経又は血管外膜壁)上の受容体と特異的に結合するリガンドにコンジュゲートする。より好ましくは、リガンドは、受容体と結合する抗体を含む。より好ましくは、受容体は、治療部位の厚い若しくは薄い新生内膜、内膜、動脈外膜、動脈プラーク、血管平滑筋細胞、及び/又は細胞外マトリックス上の抗原である。
【0191】
本発明のさらに好適な実施形態では、光感作性薬剤は、インドシアニングリーン(ICG)、メチレンブルー、トルイジンブルー、アミノレブリン酸(ALA)、塩素化合物、フタロシアニン、ポルフィリン、プルプリン、テキサフィリン、及び500nm〜1100nmの範囲で光を吸収する他の薬剤からなる群より選ばれることを企図している。
【0192】
本発明の他の光増感剤は当該技術分野において公知であり、フォトフリン.RTM(photofrin. RTM)、合成ジポルフィリン及びジクロリン、金属置換基を有する又は有しないフタロシアニン、様々な置換基を有する又は有しないクロロアルミニウムフタロシアニン、クロロアルミニウムスルホン酸フタロシアニン、O−置換テトラフェニルポルフィリン、3,1−メソテトラキス(o−プロピオンアミドフェニル)ポルフィリン、ベルジン、プルプリン、オクタエチルプルプリンのスズ及び亜鉛誘導体、エチオプルプリン、ヒドロポルフィリン、テトラ(ヒドロキシフェニル)ポルフィリン系のバクテリオクロリン、クロリン、クロリンe6、クロリンe6のモノ−l−アスパルチル誘導体、クロリンe6のジ−l−アスパルチル誘導体、スズ(IV)クロリンe6、メタ−テトラヒドロキシフェニルクロリン(meta−tetrahydroxphenylchlorin)、ベンゾポルフィリン誘導体、ベンゾポルフィリン一酸誘導体、ベンゾポルフィリンのテトラシアノエチレン付加物、ベンゾポルフィリンのジメチルアセチレンジカルボキシラート付加物、ディールス・アルダー付加物、ベンゾポルフィリンの一酸環状“a”誘導体、硫酸アルミニウムPC、硫酸ALPc、ジスルホン酸化、テトラスルホン酸化誘導体、硫酸アルミニウムナフタロシアニン、金属置換基を有する又は有しない及び様々な置換基を有する又は有しないナフタロシアニン、亜鉛ナフタロシアニン、アントラセネジオン、アントラピラゾール、アミノアンソラキノン、フェノキサジン色素、フェノチアジン誘導体、カルコゲナピリリウム色素、カチオニックセレナ及びテルラピリリウム誘導体、環状置換カチオニックPC、フェオフォルビド誘導体、フェオフォルビドアルファ及びエーテル又はエステル誘導体、ピロフェオフォルビド及びエーテル又はエステル誘導体、天然ポルフィリン、ヘマトポルフィリン、ヘマトポルフィリン誘導体、ヘマトポルフィリンエステル又はエーテル、プロトポルフィリン、ALA?誘導プロトポルフィリンIX、内因性代謝前駆体、5−アミノレブリン酸ベンゾナフトポルフィラジン、カチオニックイミニウム塩、テトラサイクリン、ルテチウムテキサフィリン、スズ−エチオ−プルプリン(tin−etio−purpurin)、ポルフィセン、ベンゾフェノチアジニウム、ペンタフィリン、テキサフィリン及びヘキサフィリン、5−アミノレブリン酸、ヒペリシン、プソイドヒペリシン、ヒポクレリン、テルチオフェン、アザポルフィリン、アザクロリン、ローズベンガル、フロキシンB、エリスロシン、フルオレセインのヨウ素又は臭素化誘導体、メロシアニン、ナイルブルー誘導体、フェオフィチン及びクロロフィル誘導体、バクテリオクロリン及びバクテリオクロロフィル誘導体、ポルフォシアニン、ベンゾクロリン及びオキソベンゾクロリン、サフィリン、オキササフィリン、セルコスポリン、並びに関連の菌代謝物並びにこれらの組み合わせが含まれる。
【0193】
当該技術分野で公知となっているいくつかの光増感剤は、FDAの承認を受け市販されている。好適な実施形態では、光増感剤は、BPD−MAなど、商業的にBPDベルテポルフィン又は「BPD」の名称でも知られるベンゾポルフィリン誘導体(「BPD」)である(QLTから入手可能)。米国特許第4,883,790号にBPDの組成が記載されている。BPDは、Photofrin(登録商標)の持続性皮膚光毒性が欠如した第二代化合物である(Levy(1994)Semin Oncol 21:4−10)。BPDは徹底した特徴付けがなされ(Richterら、(1987)JNCI 79:1327−1331)(Avelineら、(1994)Photochem Photobiol 59:328−35)、PDT用の光増感剤として効果が高いことが判明している。
【0194】
好適な実施形態では、光増感剤は商業的にプルリチンの名称でも知られるスズエチルエチオプルプリンである(Miravantから入手可能)。
【0195】
いくつかの実施形態では、外部神経調節を実施する際、神経領域に低エネルギー超音波を照射して神経を調節する。例えば、HIFU(熱性調整)は定義上、集束点で熱を生成するのに1000W/Cmを超える電力レベルが必要であるのに対し、低強度(例えば、非熱性)の超音波は30〜500mW/Cm範囲の電力で神経に影響し得ることが過去に示されている。焼灼領域に対する実際の電力束は、周囲の血流及び他の構造体などの環境によって異なる。低強度の超音波は非焼灼性エネルギーであるため、標的に対してさほど厳密に集束点を合わせる必要がない。すなわち、振動圧又は機械的圧力がエフェクターエネルギーとなってもよく、標的に効果をもたらすための閾値は、組織によって異なる可能性がある。しかし、低エネルギー超音波であっても、皮膚を過剰に加熱することが懸念される場合や、経路の途中に他に影響を受けやすい構造体が存在するため、ピンポイント領域に治療することが所望される場合には、集束が必要な場合がある。それでも、図1aのトランスデューサ500は、様々なレベルのエネルギー及び電力を印加する能力を提供し、かつ様々な領域を標的化し応答を予測するモデリング能力を提供する。
【0196】
一実施形態において、例えばドップラー超音波、赤外線イメージング、サーマルイメージング、Bモード超音波、MRI、CTスキャン等の撮像デバイス600を利用して、図1aの腎動脈640を検出する。治療領域の画像を用いて、一連のスライスに対して複数方向の測定が可能であり、よって関心領域の三次元表示を作成できる。(例えば)ドップラー三角測量又は他の三角測量手法を使用して複数角度から腎動脈の位置を検出することにより、三次元位置マップが作成でき、腎動脈を基準座標系にマッピングできる。この点で、腎血管は門部で腎神経に囲まれていることを考慮すれば、これらの交感神経を標的化する手順において、血管の方向と長さを三次元基準座標に配置することは最も重要な要素である。三次元座標系内において、基準座標系から得た知識に基づき、腎動脈の近傍から大きく外側に離れた位置(すなわち患者の外側)にあるデバイスから、腎動脈の近傍に、あるエネルギーパターンを適用できる。
【0197】
例えば、基準座標系に腎動脈とエネルギー送達デバイスの起点を配置した後は、アルゴリズムを利用して、焦点式超音波の送達を局在化できる。腎動脈の周辺領域には、腎臓に通じる交感神経と腎臓から送られる求心性神経があるが、焦点式超音波の送達を局在させることにより、腎動脈の外膜及び周辺領域に熱又は機械的エネルギーを加えることができる。これにより、腎臓に通じる交感神経刺激を減少させ、腎臓から自律神経系に戻る求心性シグナルを減少させることになる。すなわち、これらの標的に影響を及ぼすことで、本来は発症傾向にある高血圧症が調節される。組織の画像診断様式を用いて取得した測定値と、距離、及び経路長を使用して音波の拡散を予測することにより、超音波エネルギーの送達を数学的にモデル化できる。
【0198】
あるアルゴリズムの一実施形態では、動脈からのドップラー信号を少なくとも2つの異なる方向から特定し、動脈の方向を三次元空間に再現する。空間内の2点を用いて線を作成し、血管の既知の厚さを用いて管又は円柱を作成することにより、仮想モデルとしての血管を再現できる。管は、経時的に三次元空間に表現され、管の座標は、患者の皮膚の外側にある治療用トランスデューサに対する相対座標が把握される。また、治療用エネルギーは複数の方向から印加でき、円柱(血管の前壁、中心軸、又は後壁)位置に集束できる。
【0199】
集束したエネルギーは、血管の中心(血流内)、血管の後壁、動脈血管と静脈血管の間(動脈と静脈が背中合わせに並ぶ場合など)等に印加できる。
【0200】
交感神経又は交感神経領域(標的)の撮像デバイス600を利用して、標的620に対するトランスデューサの方向及び向きも判断できる。標的とは、内部の基準体であり、一実施形態では腎臓610及び付随する腎動脈620が基準体である。その理由は、血流を介して局在化でき、次いで周辺のモデルが作成され、両方ともエネルギーの標的として使用できるからである。撮像システムにより、標的620に対するトランスデューサ500、510の相対位置が連続的に撮像システムの座標空間にフィードバックされる。撮像技術は、CTやMRIなどの断層像撮影技術であってもよく、より高速にリアルタイムで撮像する超音波撮像技術であってもよい。いくつかの実施形態では、MRI/CTと超音波を融合するなど、複数の技術を組み合わせて撮像してもよい。撮像システムは、標的位置を1Hzから毎秒数千画像及び数万画像の頻度でリアルタイムで検出できる。
【0201】
融合例の場合、断層像撮影(例えばMRI/CT)を利用して患者の体を三次元座標系に配置する。次いで、超音波を三次元基準座標系にリンクさせ、超音波を断層像撮影とリンクさせた状態で、超音波を利用してリアルタイムで患者の体を追跡する。生体構造のわずか数個の一致した目印で超音波画像をMRI画像にリンクできるので、超音波の解像度の欠如は断層像撮影で埋め合わせる。超音波を照射中の体が移動するのに伴い、進行中の新規の超音波画像がMRI画像にリンクするため、MRI系では通常は得られない頻度でMRIの「動き」を見ることができる。
【0202】
一実施形態では、超音波は、交感神経内の神経伝導を阻害するのに使用されるエネルギーである。一実施形態では、体外から皮膚を通して照射する焦点式超音波(HIFU)をエネルギーとして使用し、患者の体外位置から波を送達し、患者の体内で患者の腎動脈を囲む交感神経に波を集束させることにより、腎臓の交感神経刺激を阻害する。
【0203】
図3a〜bに示すように、トランスデューサ900は、患者の外側の位置から腎交感神経領域の腎茎200に向けて超音波エネルギーを放出できる。図1aに示すように、超音波、MRI、又はCTスキャンを使用した腎動脈620の画像を利用して、腎臓610及び腎動脈620標的の位置を特定できる。ドップラー超音波を使用すると、動脈からのドップラー信号の位置と方向を特定でき、血管を三次元基準座標系950に配置できる。これにより、動脈200及び動脈周辺の交感神経220(図3a)の画像処理上の可視性が大幅に向上し、外部からの集束エネルギーを使って交感神経をピンポイントで位置決めし、治療することが可能となる。この実施形態では、画像診断様式としては超音波が最適であると思われる。
【0204】
図1aには、交感神経幹及び神経節622に送達する集束エネルギーも示されている。神経幹は脊柱及び大動脈300に沿って走り、この神経幹の中を腎動脈の遠心性神経が走り、神経幹内の神経節でシナプスを形成する。別の実施形態では、T9〜T11の神経節レベル又は後根神経レベル(求心性腎神経が通過する場所)で後根及び前根のアブレーションを行うことで、腎動脈レベルのアブレーションと同一又は類似の効果が得られることが予想される。
【0205】
別の実施形態として、図1bに、腎動脈620及び/又は腎静脈上の交感神経領域に電離エネルギーを印加する例を示す。一般に、線形加速器又は低エネルギーX線機械で電離エネルギーを使用して神経組織を焼灼するには、20Gy(グレイ)を超えるレベルのエネルギーが必要とされる。しかし、神経組織の一時的な機能停止若しくは抑制、又は神経組織の再生を防止する目的であれば、これより低いエネルギーでよい。いくつかの実施形態では、2〜5Gy、5〜10Gy、又は10〜15Gyもの低いレベルの電離エネルギーを単一照射又は分割照射する。
【0206】
この実施形態では、神経組織の再生を防止する目的で、電離エネルギーと他のエネルギーを組み合わせて利用することができる。例えば、腎動脈を囲む神経組織の部分的アブレーション又は完全なアブレーションの後、神経組織の再生を防止する目的で、熱及び/又は振動及び/又はキャビテーション及び/又は電離放射線を組み合わせて使用してよい。
【0207】
図2は、胃700などの器官の生体構造位置が腹部大動脈705及び腎動脈715の上に表示されるように、腎臓及び周辺の生体構造をより詳細に示したものである。この実施形態では、エネルギーは胃を通過して胃の裏の領域まで送達されている。この実施形態では、他の方法では到達が困難な腹腔神経節710に進入するための導管として、胃を利用している。胃の下側に大動脈705が示され、腹腔神経節710は上腸間膜動脈及び大動脈を囲むように図示されている。経口的に配置された管720は、食道を通って胃に達している。この管は、腹腔神経節の上に折り重なるようにして胃に配置される。このため、胃の裏にある自律神経系腹腔神経節を阻害又は刺激する交感神経遮断デバイス又は薬剤を送達するのに使用できる。こうした治療は、超音波を使用して経腹的に送達するか、又は胃を透過する(撮像目的の)蛍光透視誘導で送達することが考えられる。下腸間膜神経節、腎神経、又は胃などの消化管の一部を通過して大動脈沿いに走る交感神経に対しても、類似の治療を送達できる。患者の外側にエネルギー送達トランスデューサ730、731が図示されている。これらのトランスデューサを使用すれば、胃を通過して腹腔神経節まで送達する治療を強化できる。あるいは、治療領域の撮像にエネルギー送達トランスデューサを利用することもできる。
【0208】
一実施形態では、患者の外側の領域から腹腔神経節領域にエネルギーを印加する。この実施形態では、胃、小腸などの消化器系に液体を注入する。次いで、消化器官を通過して胃の裏の関心神経節に届くように超音波を伝送することが可能となる。
【0209】
一時的神経刺激器も管を通じて配置できる。例えば、自律神経節を一時的に遮断する必要がある可能性のあるICU設定などで配置できる。一時的神経刺激器を使用すると、腹腔神経節の神経線維をオーバーペース(over pace)して、神経シナプスとしての機能を抑制することができる。腹腔神経節の阻害は、腎動脈周辺の交感神経のアブレーション又は調節に似た機能を達成し得る。すなわち、腎臓に対する交感神経活動が低下すれば(より近位の抑制で達成)、交感神経終末からの交感神経性流出の程度が低下して、患者の血圧低下につながる。腹腔神経節は節前であり、各腎神経と比べて、より多くの神経線維がより多くの領域に通じている。このことを考慮すれば、腹腔神経節での血圧低下効果はいっそう著明である。また、節後の神経線維より効果が永続する可能性が高い。
【0210】
図3aは腎臓の生体構造をより具体的に例示したものであり、腎動脈200の長手方向に沿って伸びる腎神経220が、概ね動脈外側部の範囲内又は外膜のすぐ外に位置している。一般に、動脈は3層で構成される。第1は内膜、第2は中膜、第3は外膜である。外層である外膜は、血管と神経を格納する線維性組織である。腎神経は概して節後交感神経であるが、いくつかの神経節は大動脈からの起始部に対して遠位に存在するため、腎動脈に沿う神経線維の一部は実際に節前線維である。神経線維が腎臓に到達するまでの大部分の神経線維は節後線維である。一方、腎臓から出る求心性神経は脳のレベルまで節後神経である。こうした求心性線維は、再生するとしても、遠心性線維ほど短時間には再生しない。
【0211】
エネルギー発生器900は、腎動脈を伴う腎神経に複数方向からエネルギーを送達する。このエネルギーを付与して、腎神経複合体の抑制を標的化する。このエネルギー発生器は、超音波エネルギー、電離放射線、光線(フォトン)療法、又はマイクロ波エネルギーを対象領域に送達できる。医薬品が焼灼又は調節する領域に向けられる場合には、エネルギーを非焦点式にできる。しかし、好ましくは、患者の体外の複数角度から焦点式エネルギーを関心領域(例えば、血管を囲む交感神経)に到達させる。腎臓などの器官と同様に、エネルギートランスデューサ900も基準座標系950のX−Y−Z座標に配置される。このx−y−z座標系は実空間座標系である。例えば、実空間とは、GPS(全地球測位システム)のように基準座標が物理的世界で特定できることを意味する。すなわち物理座標を用いて、物理的物体の位置を特定できる。x−y−z基準座標系に配置した後は、MRI、CTスキャン、及び/又は超音波による断層像撮影を利用して内部の生体構造とエネルギートランスデューサとを連結する。これら同一のトランスデューサを、治療だけでなく基準点の決定に利用してもよい。この実施形態におけるトランスデューサ900は、腎神経領域の腎血管、動脈、及び静脈200のレベルにエネルギーを集束する。ビームの焦点は、動脈の内側、静脈の内側、動脈の外膜上、又は静脈の外膜上とすることができる。
【0212】
皮膚を通過して腎動脈領域に超音波エネルギーを印加するとき、場合によっては、血管外膜の関心領域に1MW/cmを超えるエネルギー密度が必要になる可能性がある。しかし、通常、腎神経を抑制阻害する場合、100W/cmから3kW/cmの電力密度で必要な熱を創出できることが予想される(Foleyら、Image−Guided HIFU Neurolysis of Peripheral Nerves To Treat Spasticity And Pain; Ultrasound in Med&Biol.Vol 30(9)p 1199−1207を参照。この文献は参照により本明細書に組み込まれる)。皮膚を通過するエネルギーは非焦点方式でパルスを送信してよいが、熱を加える場合はトランスデューサを集束させる必要がある。非焦点方式にしなければ、皮膚及び下層組織が過剰な熱を受けることになる。MRIで撮像すれば、MRI画像を用いて温度を測定できる。低エネルギー超音波を対象領域に印加するときは、50mW/cmから500mW/cmの範囲のエネルギー(電力)密度を印加してよい。腎神経を一時的に機能停止させる場合、又は部分的に抑制する場合で、特にパルス波を与えるときは、所望の臨床結果により、低エネルギー超音波で十分である可能性がある。温度がわずか数度高い領域に印加する高密度超音波が同一効果を有する可能性があり、このエネルギー範囲は0.1kW/cm2から500kW/cm2範囲であり得る。一連のパルスを利用しても、神経組織に対する効果を増強し得る。一連のパルスとは、例えば、各パルス1秒未満で、1W/cmから500W/cmのエネルギー密度を印加する100の連続した短パルスなどである。実施形態のいくつかでは、温度が上昇しすぎて容認できないとみなされる場合、皮膚に冷却を加えてもよい。あるいは、熱が皮膚表面全体に効果的に拡散するように、超音波トランスデューサがパルスを送信するか、又は別のトランスデューサ一式と入れ替えることも可能である。いくつかの実施形態では、パルス送信する方法でエネルギーを送達することにより、標的とトランスデューサの間の介在組織に対するリスクをさらに低減している。パルスは、上述のような数ミリ秒もの短間隔でもよく、数時間、数日、数年もの長間隔でもよい。
【0213】
腎交感神経興奮の生理的プロセスを変更する一方法では、腎動脈周辺の領域をCTスキャン、MRI、サーモグラフィ、赤外線撮像、光コヒーレンス・トモグラフィー(OCT)、光音響撮像、PET撮像、SPECT撮像、又は超音波で撮像し、画像を三次元基準座標系950に配置する。基準座標系950は、物理的座標系に置かれた複数の生体構造(二次元及び三次元)間の関係に関する知識情報に該当する。撮像デバイスが座標系を決定する。座標系が決定した後は、画像と治療用トランスデューサ900とを連結できる。これにより、治療用トランスデューサは、撮像システムから取得した情報を利用してエネルギーを位置決めする。血管は独特な画像シグネチャを有するため、エネルギー付与の上で有益な基準座標系となる可能性がある。超音波パルスエコーは、周囲組織から血管を識別するためのドップラー偏移シグネチャを提供可能である。MRI、CTスキャンだけでなく超音波検査でも、静脈内造影剤を利用して、エネルギー付与のための基準座標系を決定する上で有益なフローパターンを識別できる。エネルギートランスデューサ900は超音波、光、放射線、電離放射線、マイクロ波の各エネルギーを送達できる。このトランスデューサ900を腎動脈と同じ三次元基準座標系に配置すると、その時点でプロセッサは(アルゴリズムを使用するなどして)、神経910の領域220へエネルギーを送達するようにトランスデューサにどう指示すべきかを決定できる。このアルゴリズムは、位置予測を可能にする標的化機能(計画機能)と、トランスデューサ900から発するエネルギーのエネルギー付与から構成される。
【0214】
三次元基準座標系950のリンク又は連結が完了した後は、計画・予測アルゴリズムを使用して、体内の標的に合わせてエネルギービームを正確に位置決めすることができる。
【0215】
元の画像診断様式を利用して腎交感神経領域の位置を特定し、さらに治療中の当該領域の動きを追跡できる。例えば、時間0時点の撮像技術をベースラインスキャンとして使用し、後続の時間t1のスキャンと、ベースラインスキャンt0とを比較する。更新頻度は、数秒あたりスキャン1回から1秒あたり多数回の範囲にできる。撮像技術として超音波を使用する場合は、位置の書き換え速度を50Hz超から数百Hz又は数千Hzとしてもよい。画像診断様式としてMRIを使用する場合は、画像更新速度を30Hz近くにしてもよい。他の実施形態では、内部に配置された基準体が位置情報を高頻度で伝送し、この情報を利用して、標的と当初の外部撮像装置とを融合する。内部の基準体としては、1つ以上の画像形成可能な要素、例えば、ドップラー信号、血管領域、肋骨、腎臓、血管、及び標的以外の他の器官(大静脈、副腎、尿管など)が含まれることが考えられる。これらの基準体を使用して治療領域を追跡し、かつ/又は治療領域までを三角法で測量できる。
【0216】
いくつかの実施形態では(図3C)、一時的基準体960を、動脈965、腎静脈975、大動脈945、及び/又は大静脈985などの領域に配置する。患者の体外から簡単にこれらの基準体を撮像できる。
【0217】
図3Dは、モニタシステム950上の基準座標系975の中に表示された、血管967中の撮像可能トランスデューサ960を示す。あるいは、この一時的基準体960を、治療の送達先領域の撮像・追跡能力をさらに向上させるトランスデューサにする。一時的基準体は、機械、光学、又は電気機械式の高周波無線送信機、全地球測位追跡(GPS)デバイス、又は超音波応答性技術でもよい。類似のデバイスは、参照により本明細書に組み込まれる特許番号第6,656,131号及び第7,470,241号にも見られる。
【0218】
内部の反射体(例えば、スペックル)も追跡可能である。こうしたスペックルは、超音波で撮像される組織の持つ固有特性である。追跡したスペックルを治療計画アルゴリズムに組み込み、治療用トランスデューサとリンクさせることができる。
【0219】
いくつかの実施形態では、試験量のエネルギーを腎交感神経領域に印加してから試験を行い、効果が創出されたかを判断する。例えば、少量の熱エネルギー又は振動エネルギーを交感神経領域に送達し、マイクロニューログラフィ(心拍と相関する筋肉・神経の周囲の交感神経活動の検出)などの交感神経活動試験を実施できる。過去の研究と最新の臨床データによれば、腎臓の求心性神経の遮断は、末梢筋肉に通じる交感神経に影響することが示されている。MRI温度計測又は超音波手法を用いて、少量の熱を伴う温度上昇の程度を特定でき、温度上昇を測定するか、又は温度上昇を可逆的な量に制限することができる。
【0220】
別の実施形態では、皮膚などの領域に刺激を加え、皮膚から下流のアウトプットを検出する。例えば、皮膚に振動エネルギーを加えて、心拍などの交感神経性流出を検出できる。別の実施形態では、皮膚に熱又は冷温を加え、アウトプットとして心拍数、血圧、血管収縮を検出することが考えられる。
【0221】
あるいは、超音波撮像を利用して、組織領域の近似的な温度上昇を特定することもできる。超音波速度は温度に依存するため、加熱領域からの相対的な超音波伝送速度は温度に依存することになる。よって監視のために測定可能な変量が提供される。いくつかの実施形態では、微小気泡を利用して温度上昇を特定する。微小気泡を温度上昇にさらすと、いったん拡張してから崩壊するため、加熱領域の温度を予測できる。超音波エラストグラフィと呼ばれる手法も利用可能である。この実施形態では、組織の弾性特性は温度に依存することから、エラストグラフィを利用して温度変化特性を追跡できる。微小気泡はまた、標的領域の治療効果を高めることにも利用可能である。例えば、微小気泡を利用することにより、超音波が気泡に達したときに医薬品を放出できる。あるいは、微小気泡の構造を利用して、治療領域の撮像をいっそう向上させることも可能である。これにより、治療領域の標的化又は追跡が改善される。
【0222】
いくつかの実施形態では、温度測定のみを利用する。すなわち、加熱を行う任意の手順を用いて、温度感知性の実施形態とアルゴリズムを利用する。例えば、腎動脈を通過する無線周波アブレーションを使用して腎神経領域を加熱する場合、無線周波を使用した方法で腎動脈領域を加熱しながら、患者の体外位置から撮像することが可能である。撮像は、MRI、超音波、赤外線、又はOCTによる方法で実施できる。
【0223】
別の実施形態では、頸動脈分岐領域で圧受容器複合体に対して試験を実施できる。腎動脈複合体に試験量のエネルギーを印加した後、頸動脈複合体に圧力を加えることができる。通常、圧受容器複合体に損傷がなければ、頸動脈に圧力を加えると全身血圧が低下する。しかし、腎臓の求心性神経を抑制している場合、圧受容器は血圧の変化に対する感受性を持たないことから、腎神経にエネルギーを印加する効果を特定できる。他の試験としては、マイクロニューログラフィ、自律機能変動などの自律神経機能の指標の達成が挙げられる。
【0224】
別の実施形態では、頸動脈小体領域に外部から超音波パルスを照射することにより、圧受容器複合体を非侵襲的に刺激する。腎臓の求心性神経などの求心性神経が変質すると血圧の変化に影響する。この血圧変化に影響を与えるように超音波パルスだけで洞を刺激できる。
【0225】
より具体的には、この方法は図3Eのように行う。超音波パルス980を利用して頸動脈洞を刺激する。刺激された頸動脈洞は、圧受容器複合体を活性化して一時的に血圧を低下させる982。頸動脈洞の活性化980は、血圧上昇の影響をシミュレートする。血圧が上昇すると、副交感神経活性の補正流出が生じ、交感神経性流出が減少し、次いで血圧が低下する。求心性神経系(例えば、腎臓からの求心性神経系)が抑制されている例では、血圧が修正可能であるとしても、さほど短時間には修正されない。この場合、圧受容器複合体を刺激しても、血圧は低下しない986。よって治療は成功したことになる。このように、この診断手法は腎神経複合体などの系に対する治療効果の判定に利用できる。治療が成功していれば、頸動脈洞と血圧に対する超音波パルスの修正効果はさほど劇的でなく、療法(求心性神経の治療)の成功が分かる。よって、治療を一時的又は永久に停止できる988。圧受容器を刺激して血圧が低下し続ける場合982、この治療法は療法的効果に達していないため、治療を継続し984、かつ/又は投与量を増やす必要がある。圧受容器複合体を刺激する他の方法は、手、圧縮バルーン等で近傍に圧力を加えることである。
【0226】
自律神経系の他の領域に対しても、ある領域から組織を通過して別の領域に伝送されるエネルギーを印加することにより、本明細書に記述する技術の影響を直接及ぼすことができる。例えば、図4aは、エネルギーを内頸動脈の外部から1020、内頸静脈1005を通過して、自律神経系の一部分である頸動脈小体複合体1000、そして頸動脈小体1000及び/又は迷走神経1020領域へと印加するシステムを示す。これらの神経との間で往来する信号の伝送に影響を与えるエネルギーとして、焼灼性エネルギー、振動エネルギー、又は電気刺激エネルギーを利用できる。過剰刺激、又はエネルギーを介したこれらの効果(例えば、超音波、電気刺激など)の組み合わせを用いて、この複合体内の伝送を増強、遮断、阻害することができる。
【0227】
加えて、又は代わりの方法として、他の実施形態において、一般に運動神経と称されるが自律神経線維を含む末梢神経にエネルギーを印加してもよい。こうした末梢神経には伏在神経、大腿神経、腰神経、正中神経、尺骨神経、及び橈骨神経が含まれる。いくつかの実施形態では、神経にエネルギーを印加すると、他の神経線維でなく特定の自律神経線維が影響を受ける(例えば、運動若しくは体性知覚性線維、又は遠心性若しくは求心性自律神経)。いくつかの実施形態では、内部又は外部からエネルギーを印加すると、他の種類の自律神経線維が影響を受ける。例えば、エネルギーを印加することにより、上腸間膜動脈、下腸間膜動脈、大腿動脈、骨盤動脈などを囲む神経に特別な方法で影響を与えることができ、その結果、血管自体、又は血管に関連する器官、及び血管を通過して血管に沿って走り器官に通じる神経の、自律神経応答に変化が生じる。
【0228】
別の実施形態では、図4aにおいて、カテーテル1010を内頸静脈1005内へ挿入し、適所に来たとき、静脈系1005内に留置したカテーテルからの刺激又は焼灼性エネルギー1020を、自律神経、例えば迷走神経及び頸動脈洞/小体1000へと方向付ける。
【0229】
種類の似た実施形態1100では、カテーテルを使用した治療用エネルギー源1110を腎動脈又は腎静脈の領域に挿入し(図4B)、腎動脈1105と腎静脈1106のいずれかの血管の内側から腎神経を刺激又は抑制することが可能である。エネルギーは血管(例えば、腎静脈)を通過して別の血管(例えば、腎動脈)の周囲の神経まで伝達される。例えば、50mW/cmから50kW/cm範囲の電力を有し非焦点式超音波エネルギーを送達するカテーテルを腎動脈内に留置し、動脈又は静脈の周囲から周辺の神経へとエネルギーを放射状に伝送することが可能である。後述するように、特定の神経機能障害を創出して、腎臓内のノルエピネフリンレベル、すなわち、経時的に血圧低下をもたらすことが示されている神経機能の代用物に影響を及ぼすには、500mW〜2500W/cmが適切である。パルス状超音波、例えば、各パルスの持続時間が1秒未満の連続した100パルスを対象領域に印加することが可能である。
【0230】
別の実施形態では、血管内から血管を通過して光を印加する。赤外光、赤色光、青色光、及び近赤外光のすべてを利用して、血管を囲む神経の機能に影響を及ぼすことが可能である。例えば、腎動脈又は腎静脈1105、1106に光源を導入し、血管を囲む領域に光を伝送する。好適な実施形態では、この手法による神経束の抑制又は破壊を促進させるため、光感作性薬剤を利用する。光感作性薬剤を全身的に投与して、血管周辺の対象領域に浸潤させることが可能である。次いで、血管内から血管外の神経領域に光を印加する。例えば、腎静脈の内側に光源を配置し、次いで、静脈壁を通して壁周辺の外膜領域に光を伝送することにより、光感作性薬剤を活性化し、アポトーシス経路を通して外膜内の神経を損傷又は抑制する。光源は、可視性又は非可視性の光を供給してよい。
【0231】
図4a〜bの治療は、例えば、ICU設定、救命救急設定などの急性的条件で送達可能である。この場合、エネルギー源は患者の外側にあり、カテーテルは図4a〜bに示すように患者の体内に留置した状態で、救急的かつ間欠的な治療になることが考えられる。この治療は、患者にストレスがかかっているとき、交感神経系を減速させる目的で利用できる。集中治療入院が終了に近づいたら、カテーテルとユニットを患者から除去できる。一実施形態では、ショック、敗血症、心筋梗塞、膵炎、手術後など、交感神経活性が深刻な状態であるときに、患者の体内に留置したカテーテルから、自律神経複合体を部分的又は完全に抑制するのに十分なエネルギーを体内領域に送達する方法を記述している。交感神経系を調節する植え込みの急性期が終了した後、デバイスを完全に除去する。
【0232】
図5a〜bは、眼の後方を囲む交感神経を表示した、眼の詳細な拡大図である。眼では、緑内障が全世界的に重要な問題である。緑内障の治療のため最も一般的に処方されている薬剤は、非選択的β1及びβ2(アドレナリン性)アンタゴニストである、チモプティックである。この薬剤の服薬遵守が主要問題であり、緑内障の合併症を防止する効果が制限されている。主な合併症は視力障害の進行である。
【0233】
眼の前方、又は眼2500裏の後方領域の前方にある外部領域(例えば、眼から離れた外部位置)から、トランスデューサ7000の超音波又は他のエネルギーを印加し、交感神経2010又は副交感神経節でエネルギーを集束させることが可能である。いずれも、眼圧の低下に影響を及ぼす。エネルギートランスデューサ7000は、血管の外膜に焼灼性又は焼灼性に近いエネルギーを印加する。いくつかの実施形態では、エネルギーは焼灼性でなく、眼圧の原因となる神経の機能を抑制するのに十分な周波数(例えば、1〜5Mhz)及び侵入深さ(例えば、0.5mm〜0.5cm)の振動性エネルギーである。低エネルギー(例えば、準焼灼性エネルギー)を眼に印加して、薬物送達を援助するか、又は組織治癒タイプの組織応答を刺激することが可能である。
【0234】
図5bは、眼2500の裏を走る神経の生体構造を示す。この図において、カテーテル2000は脈管構造をトンネルのように貫通し、眼の動脈2010を囲む交感神経の領域に通じている。このカテーテルを利用して、脈管構造の壁を通じて遠心性神経及び/又は求心性神経の焼灼、一時的な機能停止、その他の調節を行う。
【0235】
図6は、腎動脈、腎静脈、集合系、より遠位性の血管、及び腎実質内の集合系全体の概略を例示する。自律神経系の個々の神経は、一般に身体の脈管構造をたどり、動脈が本来の腎臓3100に入るのに伴い、腎動脈の接近部3000に現れる。腎門部には圧力感知器及び化学感知器が格納されている。求心性神経は腎臓から中枢神経系に通じ、次いで遠心性神経系に通じており、これらの感知器が、求心性神経を介して遠心性交感神経系への入力に影響を及ぼす。これらの構造体の任意の1つ又は複数が、腎臓の機能に影響を及ぼすことが可能である。腎静脈、腎動脈、大動脈、及び/又は大静脈、腎門部、腎実質、腎髄質、腎皮質等に対して、焼灼性又は非焼灼性のエネルギーを印加できる。
【0236】
別の実施形態では、選択的損傷部、狭窄、又はインプラント3200を腎杯に配置して、腎臓の特定領域への血流を制御又は妨害する。このような損傷部又はインプラントは、腎臓の動脈側3010又は静脈側3220に配置することができる。いくつかの実施形態では、腎臓内の交感神経の特定部分を選択的に遮断するように損傷部/インプラントを作製する。損傷部は、過剰に存在すると患者に有害となり得るレニンなどのホルモンを産生する腎臓領域を焼灼できるように配置してもよい。インプラント又は狭窄は、大動脈3210又は腎静脈3230に配置できる。インプラントは、慢性的に刺激エネルギーを生成するか、複数の焼灼量又は抑制量を経時的に分離投与する、能動的インプラントとすることが可能である。
【0237】
腎静脈3230において、インプラント3220、3200は、(血流を腎臓に逆流して圧力を上昇させることにより)腎臓内の圧力上昇を引き起こし得る。その場合、腎臓は、頭部が高圧となっているかのように作用するため、上述の収縮期心不全の下方スパイラルが防止されることになる。すなわち、静脈圧の上昇で腎臓内の圧力が回復するか人工的に上昇させられると、電解質と水を保持するよう合図する腎臓の相対的低血圧が存在しなくなり、腎臓は満たされた「感覚」を覚え、腎臓の交感神経刺激はオフになる。一実施形態では、狭窄症を創出するステントをカテーテル送達系を使って植え込む。別の実施形態では、外部又は内部から送達する熱を使って狭窄3220を創出する。外部から送達する熱は、経皮的手順による直接的加熱で送達するか(皮膚を通過して腎臓領域に送達)、皮膚を通じて伝送する(例えば、皮膚を通過してHIFUにより集束させる)。一実施形態では、ゲロタ筋膜と腎皮質の間にインプラントを配置する。インプラントは、腎血管を囲む神経を刺激又は抑制でき、薬物送達システム内の薬剤を放出することもできる。
【0238】
図7aは、MRI機器又はCTスキャナ4000などの撮像システムを使用した、腎臓に通じる腎交感神経4400の少なくとも部分的なアブレーションを示す。MRI/CTスキャンは、焦点式超音波(HIFU)機器とリンクして、腎動脈4500の領域周辺の交感神経4400のアブレーションを実施することが可能である。MRI/CTスキャンは、画像4010を撮影し、超音波コントローラにデータ(例えば、関心領域の三次元表示)を送信できる。次いで超音波コントローラは、低強度超音波(50〜1000mW/cm2)、熱(>1000mW/cm2)、キャビテーション、若しくはこれらの様式の組み合わせを用いて、かつ/又は生物活性促進剤送達の局所的又は全身的な導入を含めて(超音波力学的治療法)、超音波を関心領域に向けて標的化させる。任意で、病態の局在化を補助するため、ドップラー超音波又は他の3D/4D超音波を実施し、データをMRIシステムに強制送信してもよい。あるいは、CT/MRIを取得せずに、超音波データを利用して、生理学的プロセスの標的化に使用するエネルギーの方向付けを直接制御する。患者の外部位置からこの撮像・アブレーションシステムを使用することにより、多くの腎臓領域、例えば、内部の腎杯4350、皮質4300、髄質4320、門4330、大動脈近接領域4340を治療できる。
【0239】
他の測定可能なパラメータには、MRI又は超音波温度測定/エラストグラフィを使用した熱分光法で計測する温度が含まれる。サーマルイメージングはMRIスキャナのよく知られた機能である。熱分光法用のデータはMRIスキャンの内部に存在し、治療の前後又は治療時の関心領域を比較することにより、リアルタイムで記録データから外挿することが可能である。MRIスキャンに温度データが重なると、機器の操作者は温度上昇を視認でき、よって加熱位置を視認できる。このため、正しい領域が実際に焼灼され、当該領域に過剰エネルギーが印加されないことを確実にできる。温度データが存在すれば、正しいアブレーション温度を神経に適用するなど、アブレーション領域の制御も可能になる。例えば、ある一定期間の温度を測定し、操作者に対して、又は自動システムの場合はエネルギー送達デバイス自体に対して、温度データをフィードバックすることができる。さらに、MRIスキャンを使用することにより、他の分光パラメータ、例えば酸素供給、血流、その他の生理的・機能的パラメータを測定することが可能である。一実施形態では、交番磁界を使用して自律神経(例えば、腎臓に向かって又は腎臓から走る自律神経)を刺激し、次いで過剰に刺激するか抑制する。
【0240】
エラストグラフィという手法では、超音波ビームのせん断波と反射率を検出する。組織が加熱されて組織特性が変わると、組織の特徴が変化する。エラストグラフィに基づいて組織に近似温度を割り当て、加熱の進行をモニターすることが可能である。
【0241】
MRIスキャナ4000は、一般に磁石とRFコイルからなる。磁石は、電磁石か永久磁石であり得る。コイルは、通常、無線周波数電磁場を生成する銅コイルである。近年は、永久磁石を利用したMRIスキャナが作られ、このようなMRIスキャナは、ほぼすべての設定、例えば個人用オフィス設定などで使用することが可能である。オフィスに設置するMRIスキャナは、医師のオフィスという簡便な環境下で短時間に撮像できる上に、必要とされる磁気力が低い(0.5テスラ未満)ため、結果として、必要な遮蔽材も少ない。テスラ値の低い磁石は、撮像の多様性や特定特性の解像度の面を含め、特別な利点も有する。重要なことは、永久磁石式MRIスキャナはオープン型スキャナであり、スキャン時に患者が密閉されない点である。
【0242】
一実施形態では、永久磁石式MRIを利用して、関心領域4010のMRI画像を取得する。MRIで特定した関心領域4600の標的化には、高密度焦点式4100超音波を使用する。一実施形態では、MRIを利用して、1本以上の血管、例えば種類を挙げると、腎動脈、腎静脈、上腸間膜動脈・静脈、頸動脈・静脈、大動脈弓冠動脈・静脈等の内部の血流を検出する。
【0243】
医療従事者は画像4010をモニターするかモニター可能であるため、関心領域が治療中であることを確認でき、想定領域が治療中でない場合は治療を停止できる。あるいは、関心領域を自動的に(例えば、画像処理により)特定し、次いで、最初に境界画定した関心領域と後続画像とを比較するイメージングアルゴリズムを開始ことができる。
【0244】
おそらく最も重要なことは、MRIを使用した場合、腎動脈周辺の領域を他の領域、例えば眼、脳、前立腺、胸、肝臓、結腸、脾臓、大動脈、臀部、膝、脊椎、静脈血管系、膵臓などと同様に、簡単に撮像できる点である。MRIの画像を利用すると、腎動脈周辺の関心領域や、体内の他のあらゆる場所に正確に超音波ビームを集束することができる。MRIを用いた場合、修正対象又は調節対象の実際の神経を直接描出でき、超音波トランスデューサから身体を通過して送達されたエネルギーで標的化することができる。MRIの短所は、治療パラダイムへのMRI機器の導入コストに加え、フレーム取得(標的追跡難度)速度が挙げられる。これらの点で、超音波撮像の方がはるかに現実的な解決策を提供する。
【0245】
図7dは、ある領域に対して高密度焦点式超音波(HIFU)を用いた治療方法を示す。MRI4520若しくは超音波4510(又は好ましくは両方)で撮像する。交感神経の描出には、MRIは直接的又は間接的に使用できる(例えば、機能的MRI又は分光法を使用する)。MRIスキャナを使用して、T1又はT2加重画像を取得することができる。MRIスキャナを用いる場合は、生体構造を撮像できるだけでなく、アブレーション区域の効果、加熱の程度、及び加熱中の部位について、温度データを取得することもできる。また、血流や神経活性なども含む他の分光パラメータも追加できる。超音波4510を使用すると、ドップラー画像法を用いて画像に血流を追加することが可能である。分光分析データは、イメージング成分(imaging moiety)、例えば、粒子、造影剤、又は患者の静脈内若しくは局所的に注入され腎動脈領域の近位にある造影剤と連結した粒子などにより増強される。これらのイメージング成分はMRI、超音波、又はCTスキャンで描出できる。超音波を利用して、熱に関する情報を特定することも可能である。組織温度の変化に伴い超音波の反射率が変化する。最初の画像と加熱後の後続画像を比較することにより、加熱開始後に発生した温度変化を特定できる。
【0246】
一実施形態では、MRI、超音波、CTスキャンなどの断層像診断様式により腎臓を検出する。MRI画像内で腎動脈と腎静脈を検出する。造影剤は使用しても使用しなくてもよい。次に、撮像データを三次元座標系に配置する。この三次元座標系は1つ以上の超音波(例えばHIFU)トランスデューサ4540とリンクしており、トランスデューサが座標系4530内の腎動脈領域に超音波を集束させる。撮影画像と治療用トランスデューサのリンクすなわち連結は、生体構造モデルを作成し、標的の三次元位置を特定することによって実現する。トランスデューサも、相対的三次元座標系に配置される。例えば、MRI又はCTスキャン中、撮像領域4520にトランスデューサを配置して、断層写真にトランスデューサを含めることができる。任意で、トランスデューサに電磁センサ、光センサ、慣性センサ、MEMSセンサ、加速度計などの運動センサを含めてもよい。これらのセンサが1つ以上あれば、仮に、例えばトランスデューサに対して身体が動くか、身体に対して操作者が動いた場合でも、トランスデューサの位置をモニターできる。運動センサを用いることにより、治療中に動きが発生してもトランスデューサの位置を特定できる。このため最新情報を超音波治療デバイスにフィードバックでき、治療位置の再調整が可能となる。
【0247】
一実施形態では、動脈若しくは腎静脈の壁又は腎動脈若しくは腎静脈中の血流を検出することにより腎動脈中の血流を検出するシステムを説明する。血流の検出後、血管の基準座標が治療用トランスデューサ、例えば超音波トランスデューサに伝送される。撮像で取得した情報を使用して、治療用トランスデューサが腎血管に向くように方向付けする。血管のモデルが、血管の血流と、神経が存在する血管の壁を示す。この時点で血管モデルにエネルギーを印加して、血管周辺の神経を治療する。
【0248】
あるいは、別の実施形態は超音波を利用し、超音波画像4510を、撮像トランスデューサの起点と直接相関させることが可能である。いくつかの実施形態における治療用トランスデューサ4540は撮像トランスデューサと同一であるため、治療用トランスデューサは、定義上、撮像トランスデューサの座標が既知となれば、基準座標系4540内で連結される。治療用トランスデューサと撮像トランスデューサが異なるデバイスである場合には、両デバイスの相対位置を知ることにより相互に連結することが可能である。ソフトウェアアルゴリズムにおいて、関心領域(ROI)、例えば、腎動脈、腎杯、髄質領域、皮質、腎門部、腹腔神経節、大動脈のほか、静脈系の任意の静脈などがハイライト表示される。別の実施形態では、副腎、副腎に通じる血管、又は副腎に通じる自律神経を焦点式超音波で標的化し、副腎の髄質若しくは皮質又は副腎に通じる神経及び動脈を、超音波エネルギーを用いて部分的又は完全に焼灼する。
【0249】
標的領域すなわち超音波の集束点が、強度の最も高い地点である。いくつかの実施形態では、標的とする集束を動脈の中心に置くことにより、どの側の壁も均等量のエネルギー又は電力を受け、血管の一方の壁を標的化する場合よりも均等に加熱できるようにしている。血管を標的とし、血管は動脈であり、密接して動脈を囲む静脈(腎動脈/静脈茎)があるいくつかの実施形態では、集束点の中心を静脈と動脈の境界に置いてもよい。
【0250】
領域を標的化してトランスデューサを通電4550した後は、組織を加熱し4560、MRIサーモグラフィ4570、超音波サーモグラフィなどの手法を利用して組織の温度を測定する。温度を判定する間、MRIスキャン又はドップラー超音波からの生体構造データを参照して、位置決めの程度が適切であることを確認する。さらに、モデリングアルゴリズム4545により再度エネルギー変換の程度を判定して、エネルギートランスデューサ4550のパラメータを設定する。標的に動きがある場合、トランスデューサをオフにして患者の位置を直す必要が生じる可能性がある。あるいは、トランスデューサを基準座標系内の別の位置に方向付けし直すことも可能である。
【0251】
また、磁石で発生した無線周波数電磁場に応答する磁気ナノ粒子やリポソームナノ粒子などの作用物を使用して、アブレーションを強化することもできる。磁場を用いて、これらの粒子を選択的に加熱することが可能である。抗体、ペプチドなどの標的成分(targeting moiety)を使用して特定の器官・組織を標的化するように、これらの粒子を増強することもできる。活性化した粒子は、熱だけでなく薬剤、生物活性剤、又は造影剤を所望の作用領域(例えば腎動脈)に送達可能である。粒子の導入経路は、静脈内経路、皮下経路、血管を通じた直接注射、又は経皮経路が可能である。例として、磁気ナノ粒子又は磁気マイクロ粒子は、周囲の局所領域で熱を生成することにより磁場に応答する。同様に、リポソーム粒子は内部に金属粒子を有するため、磁気粒子がリポソームの周辺領域を加熱し、同時にリポソームは正確な標的化と生体適合を可能にする。
【0252】
ドップラー超音波4510を追加してもよい。腎動脈は、(腎動脈又は腎動脈を囲む領域が標的である場合)基準マーカーを利用するか利用せずに、ソフトウェアアルゴリズムを使用して三次元基準座標系4530に配置される。熱モデル化アルゴリズム4545から超音波トランスデューサ4540にデータが供給され、トランスデューサは適切な相及び電力で通電し、数分内に腎動脈領域を40℃から90℃の間まで加熱する。三次元基準座標内の位置も治療アルゴリズムに取り込まれるので、超音波トランスデューサは適切な位置に移動可能である。超音波トランスデューサの周波数は、1メガヘルツ(MHz)未満、1〜20MHz、若しくは30MHz超であってもよく、又は750kHz、500kHz、若しくは250kHzの周辺であってもよい。トランスデューサは、直線又は曲線状の位相配列の形態でもよく、また、超音波を関心領域に集束するようにトランスデューサを機械的に移動してもよい。加えて、MRIサーモグラフィ4570を利用して、加熱中の組織の実測温度を取得できる。これらのデータをさらにシステムに供給し、トランスデューサ4550を介したアブレーション工程4560を減速又は加速することが可能である。
【0253】
焦点式超音波に加えて、超音波を直接使用して、任意の領域を加熱し、又は関心領域の薬剤を活性化することも可能である。焦点式超音波を使用して薬物送達を強化する方法はいくつかある。例えば、磁場で粒子が加熱されると、粒子は薬剤を放出できる。リポソームの場合、焦点式超音波で活性化されるとペイロードを放出できる。トランスデューサが標的の近傍に配置され、標的には生物活性薬物又は物質などの活性化可能な成分(activateable moiety)(例えば、音波に対する感受性があるナノ粒子)が含まれている場合、超音波は自然の集束能力を有する。音響力学的に活性化される成分の例として、いくつかのポルフィリン誘導体がある。
【0254】
関心領域及び当該領域のアブレーションの生理学的効果の可能性を試験する目的で、焦点式超音波で対象領域を部分的に加熱又は振動し、神経を一時的に機能停止するか部分的に焼灼することが可能である。次に、血圧試験や、血液中、腎臓中、及び腎臓に向かって又は腎臓から通じる血管中のノルエピネフリンレベルの測定などの生理学的試験を実施して、実際に正しい領域がアブレーションの標的となっていることを確認できる。パラメータに応じて、追加の治療を行ってもよい。
【0255】
臨床的に、この手法は、治療の分割(fractionation of therapy)とも呼ばれ、体内で腎動脈にエネルギーを印加するのでなく、体外から印加する手法の主要利点の1つとして注目される。体内の手法の場合、皮膚を通過する侵襲と腎動脈内腔への進入が必要とされ、高コストであり損傷の可能性を有する。複数回の治療は侵襲性と有痛性が高いため、患者に受け入れられないことが予想される。体外の手法の場合、侵襲性の低い治療を複数回実施することが可能であり、本明細書に記述する技術が低コストで侵襲性が最小であるため、実現可能性が高い。
【0256】
別の実施形態では、基準体を利用して関心領域の境界を画定する。基準体は、内在性(例えば、生体構造の一部)と外来性(例えば、定位置に配置)のどちらも可能である。例えば、植え込まれた基準体、内在的な基準体、若しくは血管内に配置されたデバイス、又はカテーテル法その他の手順により経皮的に配置されたデバイスを基準体とすることができる。また、肋骨などの骨や、肝臓などの他の内部器官も基準体とすることが可能である。一実施形態では、基準体はビーコン若しくはバルーン、又は超音波で検出可能なビーコンを備えたバルーンである。一実施形態では、ドップラー又はBモード撮像で検出される腎動脈中の血流が基準体であり、その相対的方向をドップラー解析により特定する。次に、腎動脈、具体的には腎動脈周辺の領域を、体内の基準体を利用して三次元座標系に配置する。全地球測位システムの異種技術を利用して、動脈内又は動脈周辺の基準体を追跡できる。この実施形態では、鼠径部を穿刺して動脈内又は静脈内にポジションセンサを配置する。血管内にセンサを挿入する際にセンサ位置をモニターするので、患者の体外、操作者、及び治療用トランスデューサに対する、物理空間中のセンサの相対位置が把握される。三次元座標系を治療用超音波トランスデューサに伝送し、次いで、トランスデューサと生体構造を同一の座標系と連結する。この段階でトランスデューサからHIFUが送達され、基準座標系内の標的位置に基づいてトランスデューサの位置が計算される。
【0257】
一実施形態では、撮像システムを介して仮想の基準体を作成する。例えば、腎動脈などの血管の場合、直接的な断面で表示している血管(図17Fの1705)と相関する血管画像を、Bモード超音波を使用して取得可能である。この種の図に血管を表示すると、血管の中心と超音波アレイ(例えば、HIFUアレイ1600)の中心1700とを位置合わせできるので、トランスデューサを集束し血管に印加することにより、血管1705周辺の領域に熱損傷部1680が加えられる。外周又は半球1650沿いに置かれた複数のトランスデューサ1610の異なる位置を用いて、様々な集束点1620、1630、1640を創出できる。トランスデューサが方向性を有することから、血管1700の長手方向に1つ又は複数の損傷部1620,1630,1640を作製できる。このように、動脈の長手方向に沿って損傷部1620〜1640を作製して、神経機能を最大限に抑制することを保証できる。いくつかの実施形態では、血管の中心に対して治療用超音波トランスデューサの中心をずらし、エネルギーが血管壁を斜めに横切り血管に対して傾斜して印加されるようにしている。
【0258】
この治療方法では、超音波誘導により、腎動脈などの動脈の断面又は断面に近い図を表示する。この位置において、損傷部の作製を促進するため、血管を球状トランスデューサの軸と実質的に並行にする。超音波トランスデューサ1600の設定は、動脈が断面1680に表示された場合に動脈に沿って複数の集束損傷部1620、1630、1640を作製するように、事前に較正されている。
【0259】
一実施形態の基準体は、バルーン、密封された伝送デバイスなどの血管内基準体である。バルーン内部に設置された無線送信機でバルーンを検出可能であり、体外の治療用トランスデューサで無線送信機を検出可能である。バルーンは、それぞれバルーン位置を中継できる3つのトランスデューサを備えることが可能であり、これにより、バルーンを三次元基準座標系に配置できる。伝送ビーコンを使用してバルーンを外部トランスデューサと同じ座標系に配置した後は、エネルギー変換デバイスからエネルギー(例えば、焦点式超音波)を血管(例えば、腎動脈)又は血管を囲む領域(例えば、腎神経)にエネルギーを送達できる。脈管構造が移動する場合(例えば、腎動脈)、バルーン及び送信機を用いて脈管構造を確定的に追跡することも可能である。別の実施形態では、動脈又は神経の加熱時に、バルーンが温度を測定するか、又は冷却剤の導管となる。
【0260】
体内組織への治療用超音波エネルギーの送達は、座標系に配置された標的にエネルギーを送達するように超音波トランスデューサを方向付けることで実現する。
【0261】
標的を座標系内に配置し、エネルギー送達を開始した後は、対象位置の標的化を継続することが重要である(特に、標的が交感神経のように小領域の場合)。この目的で、アブレーション領域の位置とそのベースライン位置とを、両方とも三次元基準座標系の中で比較する。位置モニタリングを継続し、情報をアルゴリズムに送り込む。情報を受けたアルゴリズムは、標的に向かうエネルギー波の新しい標的化方向を決定する。一実施形態では、対象位置が元の位置から著しく離れた場合(例えば、患者が動いた場合)、エネルギー送達を停止し、患者の位置を戻す。対象位置が元の位置からさほど遠くに離れていない場合は、位相配列を介して(例えば、トランスデューサから放出する波の相対位相を変更して)エネルギートランスデューサの位置を機械的に移動する(例えば、物理的に動かす)か電気的に移動することが可能である。別の実施形態では、患者の体表の様々な位置に複数のトランスデューサを配置し、各トランスデューサをオン/オフすることにより必要なエネルギーを送達する。患者に多数のトランスデューサを配置すると、治療用超音波で覆われる領域が広くなる。治療位置は、内在性及び/又は外来性基準体の撮像位置となることも可能である。
【0262】
熱送達に加え、超音波を利用したキャビテーションエネルギーの送達も可能であり、この場合、特定の周波数での薬物送達を可能にする可能性がある。キャビテーションエネルギーは、集束域で組織のアブレーションを起こすことも可能である。全身の薬物投与量を、関心領域及び、キャビテーションエネルギー又は他の形態の超音波エネルギーで標的化した領域に送達可能である。治療送達様式の他の種類として、超音波に感受性のある気泡、放射線に感受性のあるナノ粒子が挙げられる。いずれも、関心標的位置のエネルギーの効果を増強する。
【0263】
図7Eは、ヒト患者の背後から見た領域4600、腎臓4620、腎動脈4630、及び骨構造4610、4640の生体構造を示す。図7Eは、図7Dで略述されるように座標系に置かれる腎動脈の、実際の配置を示す。実際のヒト患者から取得した断層CTスキャンを統合し、腎動脈、腎臓、及び胴体中央領域の三次元表示を作成した。面4623は横突起と平行な面であり、角度4607は、肋骨下から腎動脈を上方向に「見る」ための角度である。
【0264】
図7Fは、超音波で撮影した腎動脈領域及び腎臓4605の画像を示す。この画像診断様式を用いて、動脈及び静脈4640を含む腎門部を描出できる。この画像は、図7Eに示す方向と角度から見た、典型的な腎臓及び腎動脈である。重要なことは、7Eに示す角度4607で見た場合、超音波経路には肋骨が一切なく、他の重要な構造体も経路には一切ない点である。
【0265】
この段階で、患者の後方領域から腎動脈領域4630に治療用超音波を送達するための窓を検出するため、超音波撮像を試行した。その結果、矢印4600及び、超音波断層画像の矢印4605(図7F)で示す窓が、関心生体構造を描出する上で最適であることが判明した(腎茎4640)。
【0266】
図7Gは、試行4700から取得した重要データの一部、すなわち「標準位置4730」中のデータを示す。データ4720を使用して、腎門部に超音波を送達する臨床HIFUシステムの構成を決定できる。腎動脈4635は、複数患者の平均で皮膚から7〜17cmであることが特定された。腎動脈を撮像するには、側腹から後方への到達法、典型的には図7Fの4605に示すように腎実質を通過するのが最適であることが確認された。腎門4640は超音波トランスデューサから約4〜8cmにあり、2つの棘突起を接続し脊柱と垂直の線で画定される軸に対する接近角4637(図7Eの4607)は、約−10〜−48度である。また、超音波が腸などの他の器官に印加される確率が最小であるという点で、側腹から腎臓を通過する到達法が最も安全であることが確認された。
【0267】
さらなる実験により、患者を腹臥位(背中を上、腹部を下)にすると、調査4750の構造物すなわち腎動脈4770と4780と腎門はさらに皮膚に近づき、動脈と腎臓の呼吸運動が著しく減少することが見出された。図7Hは結果4750、4760を示し、腎動脈4770は6〜10cmにあり、脊柱4607に対する接近角4790が上記より浅い−5〜−20度であることを示している。
【0268】
したがって、これらの臨床データより、一実施形態において患者の腎神経の治療法4800(図7I)は次のように考案された。1)患者の左右側腹部上の肋骨4810及び腸骨稜4840を特定する4810。2)超音波で左側又は右側の腎臓を特定する4820。3)腎臓の門を特定し、撮像技術を用いて患者の表面に沿って描出可能な腎門部の範囲を特定する4820。4)腎臓に通じる血管を1つ以上の角度から特定し、患者の背中の表面域に沿って描出可能な範囲を抽出する4860。5)腎動脈、腎静脈、腎臓、及び腎門の1つ以上までの距離を特定する4850。6)任意で、描出を最適化するため、患者を腹臥位にし、患者の背中の真下又は患者の腹部の真上に実際の位置決めデバイスを置く4830。7)任意で、モデル化により、腎門位置及び腎血管周辺領域の治療量を取得するために必要な電力を決定する。8)腎血管に治療用エネルギーを印加する。9)任意で、血管領域を追跡して、モデル化での計画通りに確実に対象領域へのエネルギー送達を継続させる。10)任意で、エネルギーの集束位置が計画領域を外れた場合には、エネルギー送達を停止させる。
【0269】
図8Aは、経皮的手順及びデバイス5010を示す。ここでは、体外から皮膚を通過して、腎動脈周囲の領域5030に直接接近している。高血圧症、末期腎疾患、心不全を治療する目的で、撮像とエネルギー印加(例えば、アブレーション)を組み合わせて腎動脈周辺領域を焼灼してもよい。プローブ5010を皮膚に通過させ、腎臓5030の近くに位置付ける。プローブの先端5020に熱又は温度を検出するセンサを含めたり、治療用エネルギーの送達を増強したりしてもよい。あるいは、プローブ5010を用いて焼灼、電離エネルギー、熱、又は光を対象領域に印加して、腎動脈周辺の交感神経を抑制してもよい。熱源又はエネルギー源を用いて、交感神経領域に超音波、無線周波、マイクロ波、直接的発熱体、及びバルーンを加えてもよい。プローブに撮像処理を含めてもよく、プローブを腎血管領域に使用している間は別途撮像してもよい。
【0270】
一実施形態では、MRI、CT、又は超音波の誘導下で図8Aの経皮的手順を行い、印加中の熱を局在させるか熱の程度に関する情報を取得する。一実施形態では、超音波を印加するが、弱焼灼量にとどめる。すわなち、神経を損傷又は抑制するのに十分なエネルギーレベルであるが、温度は、神経が当該エネルギーでは焼灼されず麻痺又は部分的抑制を起こす程度にする。MRIスキャナの誘導下で当該手順を実施するのが特に好適な実施形態と考えられる。理由は、温度マップを介して、加熱領域を生体構造上でリアルタイムでも特定できるからである。上述の通り、加熱後の画像はベースライン時の画像と比較可能であり、様々な温度下の信号が比較される。
【0271】
一実施形態では、経皮的進入路を通じて腎臓の領域を選択的に焼灼する。例えば、患者又は腎臓若しくは他の器官に有害なホルモンを分泌する領域を焼灼する。患者の体外の複数の角度から皮膚を通して印加するエネルギーを使用する場合、腎臓内、腎臓の表面、腎神経に沿った任意の領域や、副腎、大動脈、交感神経鎖の領域を標的とすることが可能になる。このような標的領域数の増加は、体外からの撮像と、体外の複数の角度から患者の皮膚を通じて標的に送達するエネルギーとを組み合わせることで可能になる。腎神経に対しては、大動脈から腎動脈にかけての起始部、腹腔神経節のシナプス、又は腎動脈上の分岐点を標的にできる。
【0272】
さらに別の実施形態では、超音波トランスデューサが対象領域にエネルギーを印加している間、プローブ5010を利用して当該領域の温度又は動きを検出することが可能である。運動センサ、位置ビーコン、又は加速度計を使用して、HIFUトランスデューサにフィードバックできる。加えて、オプションの温度検出様式又は画像診断様式をプローブ5010に配置してもよい。プローブ5010を使用して、アブレーション対象の腹腔鏡下領域内の位置を特定することもできる。このプローブの送達量はおよそ・・・である。
【0273】
図8Bに示す血管内デバイス5050、5055は、腎動脈内から腎動脈周辺の領域5065にエネルギーを印加する。この血管内デバイスを利用して、無線周波、電離放射、及び/又は超音波(焦点式又は非焦点式)エネルギーを腎動脈及び周辺領域に印加することが可能である。さらに、血管内カテーテルを留置しているとき、MRI、超音波、又は直接の温度測定を利用して加熱中の領域を検出できる。
【0274】
一実施形態では、デバイス5050、5055(図8B)の印加する超音波エネルギーは、加熱でなく、定期的な圧力変化、放射圧、粘性媒質内の流動又は流れ、及び、キャビテーション(液状媒質内の空孔の形成と定義される)に関連する圧力などのメカニズムにより神経機能を抑制する。これらのエネルギーに熱を加えるが、神経を焼灼する温度は生成しないように選択的に熱を加えることが可能であるため、振動と圧力のメカニズムだけを促進できる。この実施形態では、超音波は集束されず発生源から外方向に放射され、実質的に、血管壁と交差する円柱状の超音波を創出する。超音波が効率良く動脈壁を通過して動脈周辺の神経領域に伝達されるように、超音波トランスデューサと動脈壁の間に界面物質(interfacial material)を設けてもよい。別の実施形態では、超音波が直接血液に進入し、超音波壁を通過して伝播し神経に影響を及ぼす。いくつかの実施形態では、超音波カテーテル周辺に冷却を施し、血管の内側は保護するが、超音波は血管壁を貫通して動脈の外側の領域に到達できるようにする。このような手順には、超音波プローブを安定化する方法も含まれる。操作者が超音波エネルギーの印加位置を把握できるようにするため、安定化方法には、プローブに追加される安定化コンポーネントが含まれていてもよく、超音波の距離測定素子コンポーネントが含まれていてもよい。
【0275】
この実施形態では、カテーテルを腎動脈内に留置し、撮像は体外又は体内で実施できる。例えば、MRI又は超音波を用いた体外からの撮像を利用して、超音波による神経束調節時の変化を描出してもよい。実際、これらの画像診断様式は、動脈壁内で任意の種類のエネルギーを印加する際に使用できる。例えば、腎動脈壁を通過する無線周波エネルギーの送達をモニターする際に、類似の手法を使用できる。このように、ほとんどの場合、ある手法の手技的成功度をモニターする作業は、その手法を使わずに実施できる。
【0276】
あるいは、別の実施形態では、HIFUトランスデューサが対象領域にエネルギーを送達するとき、体外から送達するエネルギー(例えば、超音波)が動脈周辺の正しい場所に方向付けされるようにデバイス5050、5055を利用できる。例えば、体外から送達するHIFUで利用する撮像/治療技術のホーミングビーコンとして、血管内プローブ5050を利用できる。
【0277】
図8Cは、腎交感神経を抑制する経皮的手順を示す。プローブ5010を利用して、後方及び腎動脈5065から腎門5060に接近する。以下に示すデータにより、プローブにHIFUを装備して対象領域の神経除去を行うことが可能である。以下に提示するデータは、超音波で血管を迅速かつ容易に神経除去することもできるなど、この手法が実現可能であることを示している。
【0278】
別の実施形態では、動脈拡張(動脈瘤)という生理的プロセスを標的化する。図9aでは、超音波トランスデューサ6005を動脈瘤壁6030の近くに配置している。動脈瘤壁6030に超音波エネルギー6015を印加して動脈瘤壁を肥厚させ、動脈瘤のその後の拡張を防止する。いくつかの実施形態では、動脈瘤内の血塊も標的化し、超音波エネルギーで血塊を破壊又は溶解できるようにする。超音波エネルギーを用いて動脈瘤壁の温度を40度から70度の間に加熱すると、その後は温度低下に伴い動脈壁中のコラーゲン、エラスチン、その他の細胞外マトリックスが硬化する。これにより動脈瘤壁のその後の拡張が防止される。
【0279】
別の実施形態では、ある物質を動脈瘤嚢内に置き、焦点式又は非焦点式超音波を利用して嚢内の物質を硬化等により誘導する。誘導された物質は大動脈又は動脈瘤の血塊に付着し、よって動脈瘤を永続的に閉鎖する。したがって一実施形態では、超音波カテーテルを大動脈中の動脈瘤壁領域、又は動脈瘤壁内の物質に近い領域に留置する。この物質は、操作者が配置する人工物でもよく、動脈瘤に自然に存在する血栓等の物質でもよい。超音波を動脈瘤壁又は物質に印加することにより、動脈瘤壁又は物質が硬化し、よって動脈瘤壁が強固になり拡張を防止する。エネルギーは患者の体外から印加可能であり、経皮的に留置したエネルギー送達カテーテルを通じた印加も可能である。
【0280】
図9b 6000は、大動脈、大静脈6010などの血管内に留置された血塊防止デバイス6012(大静脈フィルタ)を示す。超音波カテーテル6005を血塊阻止デバイス(フィルタ)6012に印加することにより、デバイスから血塊を除去するか、又は血管6000から除去されるように血管壁からデバイス6012を解放する。
【0281】
図9cに示すデバイス及び方法では、超音波エネルギー源6005からの熱又は振動エネルギーを用いて、大動脈6000に近い腹腔神経叢6020を焼灼又は部分的に加熱する。この超音波エネルギー源6005は、焦点式又は非焦点式の音波6007を、20キロヘルツから5Mhz範囲の周波数、1mWから100kW超範囲の電力で、集束又は非集束方式で印加できる。腹腔神経叢6020の完全又は部分的アブレーションの結果、超音波エネルギーを腎神経に印加するのと同様のメカニズムで血圧が低下し得る。このアブレーションカテーテルは焦点式超音波カテーテルであるが、直接的(非焦点式)超音波、マイクロ波トランスデューサ、又は抵抗加熱素子でもよい。また、体外位置から皮膚を通過して大動脈領域又は腹腔神経叢領域にエネルギーを送達することも可能である。
【0282】
図10は、高密度焦点式超音波又は低密度焦点式超音波(HIFU又はLIFU)6260を用いて患者を治療する方法6100を示す。第1工程では、CT及び/又はMRIスキャン及び/又はサーモグラフィ及び/又は超音波(1D、2D、3D)を実施する6110。任意で、患者の体表又は体内に基準体又は他のマーキングを置き6120、これを使用して患者を表示し追跡する6140。基準体としては、埋め込まれた基準体、患者の体内若しくは体表に体内若しくは体外から設置された一時的基準体、又は、CT/MRI/超音波デバイス6110を用いて撮像可能な、患者に内在する基準体(例えば、骨、血管、動脈壁)を使用できる。さらに、患者の動脈若しくは静脈に一時的に留置若しくは経皮的に留置されたカテーテルなどの一時的基準体も、基準体として使用できる。6130のHIFU治療計画工程では、まず器官位置、温度などの基本測定値を決定する。次に、超音波トランスデューサからの熱伝達又は熱伝達圧力を予測するモデル(例えば、有限要素モデル)を使用してHIFU治療を計画する6130。この計画工程では、モデル化6130を実施可能にするため、撮像デバイス6110からの組織又は標的の位置情報を組み込み、生体構造を三次元基準座標系に配置可能にする。
【0283】
計画工程6130では、患者の体内の集束点の位置を含め、超音波トランスデューサの位置を決定する。断層像6110に基づき、XYZの各座標及び最大3つの角座標を使用して患者の体内の超音波集束位置を決定する。標的との相対位置を判定可能にするため、HIFUトランスデューサは専用のポジションセンサを内蔵していてもよい。あるいは、患者を載せるテーブルにHIFUトランスデューサを強固に固定してもよい。この場合、テーブル及び患者に対する相対座標を簡単に取得できる。計画工程6130では、超音波を印加する特定位置の温度を計画し予測可能にするため、熱流のモデル化も行う。例えば、トランスデューサからの圧力波が組織を通過して標的に届く様子をモデル化する。組織の大部分は、界面による損失が最も小さい水として扱うことができる。モデル化データがこのことを予測している。標的位置の超音波の相対的電力及び位相は、プローブと標的間の位置的連結(positional coupling)により特定できる。対流熱伝達項を追加して、血流、特に動脈領域の血流に起因する熱伝達をモデル化する。熱流及び温度に関する方程式においては、伝導性熱伝達項もモデル化する。
【0284】
計画工程で検討する別の変数は、損傷部のサイズ及びその位置誤差である。血管を囲む神経などの小領域のアブレーションにおいて、当該領域の神経を永続的に焼灼するには、場合によっては、当該領域の温度を摂氏60〜90度に上げる必要がある。摂氏40〜60度の温度では、対象領域を一時的に抑制又は遮断できる可能性があるため、患者が特定の治療に応答するかを、神経領域を永続的に焼灼することなく、この範囲の温度を用いて判断できる。その後追加の治療を行って、作業を完了する。又はおそらく、神経領域を再度抑制する。
【0285】
図10で企図される治療時に、誤差解析も実施する。温度及び位置の各要素は誤差変数を有し、誤差変数は治療方程式の各所で使われる。誤差をモデル化することにより、温度と位置をマッピング(対応付け)した仮想表示が得られる。関心領域を治療する際、このマップを超音波トランスデューサの位置と相関させる。
【0286】
治療6260の実施中に患者は動いてもかまわない。その場合、基準体6120が動きを追跡し、治療区域の位置が再度解析され6150、治療が再開するか、又はトランスデューサの位置が機械的若しくは電気的に新しい集束位置に移動する。
【0287】
別の実施形態では、断層像撮影手法と、超音波などの様式を組み合わせることにより、融合型の画像を作成する。断層像は、生体構造の三次元データセットの作成に利用する。二次元画像を提供する超音波と、断層機器が提供する三次元画像とを、超音波とMRIの間で一致する基準体を通じてリンクさせる。超音波場の中で身体の一部が移動すると、断層像(例えば、MRI画像)に対応するデータが決定(連結)し、表示ステーションは動きを三次元データセットで表示可能になる。超音波はリアルタイム画像を提供する。MRIその他の断層像と超音波画像を連結させることで、超音波で特定された位置が三次元空間に表示される。
【0288】
図11は、患者の体内における別の疾病の治療7410を示す。今回は患者の頭部に疾病がある。脳、脊柱、頭皮の硬膜空間又は硬膜外空間の血管が出血する結果、硬膜下血腫又は硬膜外血腫が発生する。図11は、CT又はMRIスキャナ7300と、機器内に位置する患者7400を示す。CT又はMRIスキャンを使用して脳7000の画像を取得する。この画像を利用して、治療区域7100と対象領域を加熱する超音波アレイとを連結させる。一実施形態7100では、急性又は慢性の硬膜下血腫を治療する。別の実施形態7200では、硬膜外血腫を治療する。どちらの実施形態も、漏出している毛細血管及び血管領域を加熱により止血し、慢性硬膜下血腫の場合は炎症性毛細血管の滲出を加熱により停止する。
【0289】
生理学的プロセスを調節する例示的な実施形態では、硬膜下血腫又は硬膜外血腫を有する患者7400を治療対象として選択し、治療領域のCTスキャン又はMRI 7300を取得する。次いで治療計画を行い、焦点式超音波7100トランスデューサ技術を用いて、治療対象の硬膜外7200血腫又は硬膜下7010血腫の慢性的領域を標的化する。次に、超音波トランスデューサと同様に、関心標的を基準座標系に配置する。両者を互いに連結した後、治療7100を行う。焦点式超音波で血腫領域を加熱する。これにより、脳7420周辺に体液が貯留する原因となっている血塊を溶解及び/又は毛細血管漏出を停止する。この技術は、穿頭孔(体液を排出するように頭皮を貫いて開ける孔)に代えて使用可能であり、穿頭孔に追加して使用することも可能である。
【0290】
図12は、腹腔鏡下での腎動脈領域への到達法8000を示す。ここでは、交感神経8210に対する結紮、遮断、その他の調節が可能である。腹腔鏡下において、患者の腹部にガスを注入し、ガス注入した腹部に腹腔鏡手術器械を導入する。側腹部を通過する到達法により容易に後腹膜に接近可能であり、また(さほど容易でなければ)経腹的(腹膜)到達法で接近可能である。遠位端8220を備えた腹腔鏡手術器械8200は、熱又は別形態のエネルギーを印加でき、あるいは交感神経領域8210に薬物を送達できる。また、腹腔鏡手術器械を利用して、腹腔神経叢領域8300及び周囲の神経節を焼灼又は変質可能である。腹腔鏡には、超音波トランスデューサ8220の取付け、温度プローブの取付け、マイクロ波トランスデューサの取付け、又は無線周波トランスデューサの取付けが可能である。腹腔鏡を利用して、血管を囲む神経の直接的な焼灼若しくは一時的な機能停止(例えば、比較的低い周波数/エネルギーを使用)、又は血管に沿って走る神経節の焼灼若しくは一時的な機能停止ができる。体外から腎神経にアプローチする場合と同様に、経皮的アプローチでも類似種類のモデル化と撮像を利用できる。動物実験により(下記参照)、単一方向の単一の超音波プローブ(上記参照)を用いて、広範な神経抑制域に影響を及ぼすことが可能であることが発見された。すなわち、神経領域は直接プローブに接触する必要はなく、代わりに、神経領域と送達超音波の全般的方向にプローブを方向付ければよい。例えば、血管の片方の側にプローブを設置し始動させて、全般化された領域、すなわち長軸方向の長さ1cm超の動脈が存在しない可能性があっても、動脈に沿う神経の機能を完全に抑制するに足る効果を及ぼすことのできる領域に、焦点式又は半焦点式の超音波を送達することが可能である。
【0291】
図13は、離れた場所から方向付けしたエネルギーを使用して関心領域を治療するためのアルゴリズム8400を示す。イメージング剤8410を使用又は使用しないMRI及び/又はCTを利用して関心領域(例えば、アブレーション区域)の境界を画定し、上記画像診断様式のいずれかを使ってイメージング剤で識別した区域周辺のアブレーション8420を実施できる。このアルゴリズムは、外部HIFU、腹腔鏡手術器械、血管内カテーテル、経皮的カテーテル・器械を含め、上記のあらゆる治療様式に適用可能であり、腎神経、眼、腎臓、大動脈、及び末梢動脈・末梢静脈を囲む他の神経を含め、あらゆる治療領域に適用可能である。CT、MRI、超音波、又はPETによる撮像8430を利用して、焼灼中の領域をリアルタイムで描出できる。損傷部の破壊が完了した時点で8440、イメージング剤8410(例えば、分子イメージング剤又はガドリニウムなどの造影剤)を用いた撮像を再度実施できる。画像診断様式の下で焼灼区域の温度又は外観を監視することにより、アブレーションの程度をモニターすることも可能である。損傷部の破壊が完了した時点で8440、手順が完了する。いくつかの実施形態では、エラストグラフィなどの超音波診断技術を利用して、一定領域の加熱又はアブレーションの進展を判断する。
【0292】
図14は、様々な温度勾配、電力勾配、又は複数の温度を用いて、ある神経の特定の神経線維を標的化するアブレーションを示す8500。例えば、MRIによる温度測定、又は超音波、赤外線サーモグラフィ、熱電対等の他の手法により温度を測定する場合は、特定の神経線維だけを破壊又は抑制の標的にする温度に維持することができる。あるいは、神経の一部又は全部を一時的に遮断してから、遮断している神経の下流効果を試験することが可能である。例えば、腎動脈周辺の交感神経を少量の熱又は他のエネルギー(例えば、振動エネルギー)で遮断した後、効果を判断することができる。例えば、全身の血液、腎臓、又は腎静脈中のノルエピネフリンレベルを測定できる。またあるいは、活動(例えば、皮膚反応、血圧変動、心臓活動、肺活動、腎神経刺激に呼応する腎動脈収縮)を一時的に停止した後、神経の刺激効果を試験することもできる。例えば、一実施形態では、末梢神経内の交感神経活動をモニターする。交感神経活動は通常、末梢神経電気記録においてスパイクとして現れ、スパイク数と交感神経の活動又は過活動は相関関係をなす。活動が(例えば、腎動脈の除神経(de−inervation)で)減少すると、一連の末梢神経中のスパイクの密集が減少し、交感神経系又は自律神経系の治療が成功したことを示す。周波数の異なる振動を利用して、特定の神経線維だけを抑制可能である。例えば、いくつかの実施形態では遠心性神経線維を抑制し、別の実施形態では求心性神経線維を抑制する。いくつかの実施形態では、両タイプの神経線維を一時的又は永続的に抑制する。いくつかの実施形態では、C線維8520を、A神経線維より低い熱レベルで選択的にブロックする。他の実施形態ではB線維を選択的に治療又はブロックし、いくつかの実施形態ではA線維8530を優先的にブロックする。いくつかの実施形態では、神経を高照射量の超音波8510で縫合することにより、すべての線維を抑制する。上記の実験に基づき、完全にブロックするための電力密度は100〜800W/cm前後である可能性があり、いくつかの神経では500から2500W/cmである可能性がある。いくつかの実施形態では、パルスは各パルスが(例えば)1〜2秒持続する100以上のパルス列、送達電力は約50w/cmから500W/cmである。実際、先行文献には、100W/Cm又はその前後のエネルギーで十分に神経機能を破壊できるか、又は少なくとも抑制できることが示されている(参照により組み込まれる文献Lele,PP.Effects of Focused Ultrasound Radiation on Peripheral Nerve,with Observations on Local Heating.Experimental Neurology 8,47−83 1963)。
【0293】
図15aは、椎体である椎間板8610の治療8600を示す。ここでは、脊柱8630内又は周辺の神経8640をエネルギー8625波の標的にする。一実施形態では、椎間関節周辺の神経を標的化する。別の実施形態では、椎間板又は終板に通じる神経を標的化する。別の実施形態では、椎骨8630自体を加熱することにより、椎骨内の神経を標的化する。知覚神経は椎骨8630内の導管8635に沿って走るので、椎骨8630を加熱することにより知覚神経を抑制又は焼灼できる。
【0294】
図15Bは、椎間関節領域の拡大図である。この領域に焦点式超音波を照射することにより、背根神経から椎間関節8645まで走り背部痛に関与する神経を抑制することができる。この神経を焼灼又は抑制すれば、椎間関節症による背部痛を制限でき、治癒も可能である。椎間関節領域に対しては、患者の体外位置から、100W/cmと2500W/cmの間の電力を使用して、1秒から10分間の範囲で神経位置に焦点式超音波を印加可能である。
【0295】
図16Aは、腎動脈周辺にある交感神経ツリーの様々な部分の除神経を引き起こす損傷部について、その種類、サイズ、及び生体構造8710a〜f一式を示す。例えば、損傷部の形状は環状、葉巻形、線形、ドーナツ状、及び/又は球状であり得、腎動脈周辺8705、腎臓内8710、及び/又は大動脈周辺8700に配置できる。例えば、腎動脈ツリーは大動脈8700の一部、腎動脈8705、及び腎臓8715を含む。損傷部8714、8716は、大動脈8700及び腎血管ツリーの周辺に創出される、異なる種類の損傷部である。損傷部8712、8718は、腎臓に通じる腎動脈からの極枝に施され、主腎動脈から分かれる枝の位置で神経機能を抑制する。患者の体外位置からこれらの損傷部を配置することもできる。また、動脈の長手方向に沿ってらせん状8707に損傷部を配置することもできる。これらの損傷部は、完全に非侵襲的な方法、すなわち、超音波を皮膚を通して血管領域に印加するか、経皮的アプローチでエネルギーを送達する方法により、血管の外側から送達するエネルギーを用いて作製できる。どちらの送達方法も、上記で発見、記述されるように、後方から血管に到達する方法で達成できる。
【0296】
したがって、一実施形態では、円形パターンの熱及び超音波を血管に加えるようにして、腎臓に通じる血管に超音波エネルギーを印加できる。一実施形態ではエネルギーを皮膚を通して伝送し、別の実施形態では動脈を通して伝送する。後述するように、超音波は伝導のみに依存するのではないことから、離れた場所から伝送され、円形パターンで印加するのは本質的に比較的容易である。
【0297】
以前は、図16aに示すような円環形の損傷部で血管周辺の自律神経の神経機能を十分にブロックできるかどうかは、未知かつ未発見であった。本願の出願人は、円環形アブレーション8710が機能をブロックするだけでなく、実際、損傷が発生するとしても極小の損傷で(図16C)、動脈及び静脈自体に通じる腎動脈及び腎臓周辺の神経機能を完全にブロックすることを発見した。実験では、焦点式超音波を使って神経をブロックした。超音波のレベルは200〜2500W/cmであり、上部から(すなわち血管の片側のみから)血管の中及び周辺を通じて超音波を伝送した。シミュレーションを図16Bに示し、説明を下記に示す。神経抑制度の判定には腎臓8780中のノルエピネフリンレベルを使用し、エネルギーの印加前と印加後のノルエピネフリンレベルを測定した。ノルエピネフリンのレベルが低いほど、神経の抑制の度合いが高い。実験では、ノルエピネフリンレベルはゼロに近づき8782、これに対して対照群8784は高レベルのままであった。実際、このレベルは、外科的に裸出された血管のレベルと同等以下であった(外科的裸出は神経の直接的な外科的切断を伴う)。重要なことは、腎動脈及び腎静脈の壁が実質的に無傷で残った点である。その考えられる理由は、高速な動脈血流が血管壁から熱を除去するという事実と、主腎動脈が大型で、高血流量と厚い壁を有するために極度に弾力性が高いという事実である。要約すると次のようになる。腎動脈と腎静脈の複合体の片側に、(焦点式及び比較的に非焦点式の)超音波を印加した。動脈壁を通過して動脈外周周辺の神経に到達するエネルギーを伝送して、単一方向から神経に印加したところ、神経抑制のマーカーである腎臓内ノルエピネフリンレベルがゼロに近づいたと判定された。ノルエピネフリンレベルがゼロであること8782は、神経機能が実質的に完全に消滅したことを示し、環状の損傷部が図16Aの通りに実際に作製され、図16Bのようにシミュレートされたことを証明するものである。組織学的結果でも、損傷部の環状の性質と、16Bのモデル化で予測されるように付随的損傷が限定的であることが確認されている。
【0298】
このため、一実施形態では、動脈の周囲全体に渡って環状又は半環状の熱の縁が作られるように体外位置から動脈に超音波を印加して、動脈を囲む自律神経を抑制、焼灼、又は部分的に焼灼している。動脈壁又は動脈の血流を利用して、神経に照射する超音波を標的化することが可能である。神経が直接的に描出されない場合には、血管位置に基づき神経位置の近似値を求めるモデルを使用して、神経が描出される。
【0299】
図16Bは、上記の物理・動物実験の理論的シミュレーション8750を示し、本明細書に記述する物理及び生理機能をさらに裏付けている。すなわち、コンピュータシミュレーション8750において、血管を焦点式超音波の標的としたものである。焦点式超音波場に生成された加熱区域の中に、腎動脈8755が示されている。8760は<1秒、8765は約5秒、8767は>10秒の温度を示す。流れの方向8770も示されている。楕円が大きいほど、中心温度が>100℃で温度がより高いことを表す。動脈8755を通過して超音波場が伝送され、温度マップ8765で示されるように、動脈の周辺に熱が形成される。重要なことは、超音波が動脈を通過して移動でき、血管の両側の壁に影響を及ぼすことが可能であることが、この理論的シミュレーションでも明らかにされた点である。これらのデータは上述の動物実験と一致しており、統合された物理・実験データセットを創出している。
【0300】
したがって、動物実験及び理論的実験に基づき、超音波を利用して、血管の外部からだけでなく患者の皮膚の外側の位置からも、迅速かつ効率的に、腎動脈周辺の神経を実際に抑制可能であることが立証されたことになる。
【0301】
上述の実験シミュレーション及び動物実験を利用して、臨床デバイスを考案することが可能であり、実際に考案されヒト患者で試験されている。図17Aは、腎臓1130に通じる動脈1140(例えば、腎動脈)に沿って、有限損傷部1150に印加するマルチトランスデューサHIFUデバイス1100を示す。損傷部の形状は球形、葉巻形1150、円環形8710(図16A)、又は点状が可能であるが、好適な実施形態では、損傷部は動脈の長手方向に沿って存在し、葉巻形1150をしている。この損傷部は、好適な実施形態において、球状又は半球状タイプの超音波アレイで生成される。図17Cが示すように、複数の葉巻形の損傷部がリング状の損傷部1350となっている。
【0302】
図17Bは、治療をモニターする画像表示装置を示す。大動脈1160、腎動脈1155と同様に、損傷部1150も画像装置に表示されている。この画像は熱、組織エラストグラフィ、振動も表示可能であり、損傷部1150位置のシミュレーションに基づく表示も可能である。図17Cは、モニターする治療の別の画面であり、腎動脈の断面1340を表示している。この画像でも損傷部1350が断面図として表示されている。複数の損傷部を利用する実施形態では、損傷部1350は血管1340を取り囲んでいるとみなすこともできる。
【0303】
図17Dは、治療用焦点式超音波を動脈領域に送達する操作を分析・追跡する方法1500を示す。重要な工程は、治療領域を撮像できるよう最初に患者を最適な姿勢に置くこと1510である。患者の撮像には、ドップラーイメージング、Mモードイメージング、Aスキャンイメージングの使用を伴うことができ、MRI、CTスキャンも使用できる。撮像ユニットを利用して、動脈のドップラー偏移パターンから座標データ1530を取得する。次に、撮像治療領域1510に対する焦点式超音波プローブの位置を決定する1520。この段階で治療を計画又は実施できる。
【0304】
図17Eは、球状又は円筒状の超音波アレイ1600から放出される音波の経路を示す。いくつかの実施形態では、焦点が高度に集束せずに事実上拡散した状態になるか中心軸から外れるようにするため、トランスデューサは非球面状である。あるいは、この非球面性を使用して、焦点に沿った経路長を様々に変えてもよい。例えば、15cmの伝播には超音波トランスデューサの縁の1つを要求し、わずか10cmの伝播にはトランスデューサの別の縁を要求するなどが考えられる。この場合、複数の異なる周波数又は角度を組み合わせる必要が生じる可能性がある。
【0305】
超音波トランスデューサ群1610は円柱1650の縁に沿って位置合わせされ、血管(例えば、腎動脈)周辺の1つ以上の焦点1620、1630、1640と交差するように方向付けられる。トランスデューサ群1610は、円柱又は球面若しくは球面近似(例えば、非球面)1650に沿って配置されているので、同じ焦点までの近さはトランスデューサによって異なる。よって動脈までの様々な距離1620、1630、1640ができる。位置決めの際、患者と動脈の中心1700と、超音波アレイ1600の中心を同時に局在(co−localize)させるように患者と動脈を位置付ける。両方の中心を同時に局在させた後は、HIFUエネルギーを稼働させて、動脈壁の長手方向に沿って、動脈周辺の様々な深度・位置に損傷部1640、1620、1630を作製できる。図17Eのように円柱に沿って配置したトランスデューサ群の自然の集束点は、各損傷部の縦の位置(厚さ又は高さより大きい)にある。動脈1340を円柱の中心軸に沿って置いた場合、各損傷部は動脈1155に沿って長手方向に並ぶことになる。断面方向に見ると(図17F)、神経のアブレーション部は血管周囲の時計の文字盤位置1680に沿って配置されている。
【0306】
別の実施形態では、トランスデューサが配置された球面又は円柱の縁に沿ってトランスデューサが移動できるようにするため、トランスデューサ用の移動システムを使用する。トランスデューサの移動は、撮像又は外部位置マーカーに基づいて自動又は半自動で行うことができる。トランスデューサ群は電気的に個別に制御するが、強固な構造により機械的に連結する。
【0307】
重要なことは、治療中、治療ワークステーション1300(図17C)により、治療区域の物理的外観と生体構造1350の両方の表示が複数得られる点である。損傷部の深さと損傷部の作製時間を予測する目的で、物理的モデル化を行い、この情報を超音波トランスデューサ1100にフィードバックする。損傷部の位置も三次元座標系で常時モニターし、モニターする状況の中で1300、損傷部中心位置1150に対するトランスデューサの集束点を継続的に更新する。
【0308】
いくつかの実施形態では、アブレーション実施時に損傷部又は患者が動いて治療区域から大きく外れるのを防止するため、動作追跡を行う。治療中、実際に患者が治療区域外に移動した場合は、治療を停止することが可能である。動作を追跡するには、超音波トランスデューサを使用してフレームと位置を追跡するか、又は複数の角度からトランスデューサで照射して、トランスデューサを用いて三次元画像を作成する。あるいは、患者に取り付けた一連の加速度計が動きを示すのと同様に、ビデオ画像システムを使用して患者の動きを追跡することもできる。
【0309】
図18は、腎杯8820に留置可能なマイクロカテーテル8810を示す。このカテーテルを使用することにより、操作者は腎臓8800の領域を特異的に焼灼又は刺激できる8830。このカテーテルを使用すると、追加の撮像能力が得られ、あるいは動作追跡又は超音波反射を補助することで、腎動脈及び腎臓周辺の領域を標的化することがさらに可能になり損傷部が作製又は位置決めされる。カテーテル、又はカテーテルの端部若しくは端部近くのデバイスから患者の体外に信号を送り、皮膚を通過してエネルギーを送達するエネルギー送達デバイスに指示を出してもよい。患者の外側への信号伝達は、体外に伝送される無線周波、カテーテル周辺領域を標的化するため体外から体内に伝送される無線周波などのエネルギーを含めてもよい。以下の特許及び特許出願は、血管内の標的化カテーテルを使用した超音波の送達を記述したものであり、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0310】
第11/583569号、第12/762938号、第11/583656号、第12/247969号、第10/633726号、第09/721526号、第10/780405号、第09/747310号、第12/202195号、第11/619996号、第09/696076号
【0311】
あるシステム8800では、マイクロカテーテル8810を腎動脈に送り、さらに腎臓8820内の腎動脈の分岐部に送達する。生成された信号をカテーテルから腎臓、そして患者の体外のエネルギー送達システムに送信する。生成された信号に基づき、三次元基準座標系でカテーテル位置を特定し、エネルギー源を稼働させて、マイクロカテーテル8810が示す領域へとエネルギー8830を送達する。
【0312】
別の実施形態では、静止位置の保持を利用する。静止位置の保持により、操作者は、操作者や患者の動きに対する外部エネルギー送達デバイスの位置を維持することが可能になる。例として、エネルギー送達システム及び・・・で標的化が達成可能である。
【0313】
マイクロカテーテルを利用して腎臓内(例えば、腎静脈内)に流量制限器を留置して、内圧が実際より高いかのような「錯覚」を腎臓に起こさせることもできる。この実施形態では、腎臓は、腎臓への灌流圧を減らそうとして、標的器官への交感神経出力を低下するように中枢神経系に信号を送る。
【0314】
あるいは、腎臓の特定領域は、ホルモン排出など、高血圧症又は心臓血管系への有害作用を起こす要因の原因になり得る。マイクロカテーテルは超音波、無線周波、マイクロ波、又はX線エネルギーを生成できる。マイクロカテーテルを利用して、腎静脈領域のほかに実質内静脈部分を焼灼することも可能である。いくつかの実施形態では、腎門部の機械受容器又は化学受容器に永続的又は一時的に影響を及ぼすには、アブレーションは不要であり、代わりに、プローブから発する振動エネルギーが利用される。
【0315】
図19Aは、物理的に分離したトランスデューサ8930、8931を使用した、腎動脈8910及び腎臓8920領域へのエネルギーの印加8900を示す。図はトランスデューサを2基表示しているが、最初からトランスデューサ1基を接続して使用してもよい。1基又は複数のトランスデューサは球状でも非球状でもよく、撮像トランスデューサと直接連結することも、撮像ユニットが分離して離れた場所にあり間接的に連結することもできる。図17の送達法とは大きく異なり、図19Aでは、動脈の長手方向に超音波を送達するのでなく、腎動脈を横断して送達する。エネルギーは患者の後方から送達する。その理由は、皮膚から前方に向かう方向であれば腎動脈が最初に「見える」血管となり、療法の送達が促進されるためである。一実施形態では、トランスデューサ8930、8931を患者の肋骨の真下若しくは下方、又は患者の肋骨と肋骨の間に配置する。次に、前側の腹壁に向けてトランスデューサから超音波を前方に伝播させ、腎動脈と腎静脈の領域を互いに分離して撮像する。いくつかの実施形態において、例えば、動脈の長手方向の表示を取得できない場合や、より高速な治療パラダイムが所望される場合、こうした送達法が有利となり得る。トランスデューサ8930、8931は互いに通信し、撮像する関心領域(ROI)のコンピュータモデルと接続している。なお、ROIの撮像は、手技の開始直前又は実施中にMRIスキャンで行う。重要なことは、患者の横断面後方の、より直接的に腎臓領域にアクセスできる範囲にトランスデューサを配置する点である。2基の撮像トランスデューサ間の角度は、患者の最適位置に応じて3度から180度の範囲から選択できる。
【0316】
別の実施形態では、MRIは実施せずに超音波を利用して、図19Aの断面図の全部又は一部を取得する。例えば、8930に治療用エネルギー源(例えば、電離エネルギー、HIFU、低エネルギー焦点式超音波)だけでなく撮像トランスデューサを格納してもよい。
【0317】
図19Bは患者から取得した超音波画像であり、下記のように適切に患者の姿勢を決定したときの対象領域の画像を例示している。腎門部領域の画像誘導HIFUは、まさにこの断面を扱うことが可能である。腎臓8935の断面を描出し、次いで超音波を腎動脈8937及び腎静脈8941に通過させる。距離は、超音波を用いて正確に測定できる8943(この場合8cmである8943)。腎血管へのエネルギー送達のモデル化を補助する上で、この情報は有用である。
【0318】
図20は、代替方法であるシステム9000及びデバイスを示す。この方法により、腎神経9015、又は大動脈−腎動脈間の小孔9010で腎神経に通じる神経を焼灼する。血管内デバイス9020を大動脈9050に挿入し、腎動脈領域9025へと進める。トランスデューサ9020からエネルギーを印加し、大動脈9050からの腎動脈9025の起始部領域に集束させる9040(HIFU、LIFU、電離放射線の場合)。この血管内9030手順は、MRI及び/又はMRI温度計測を用いて誘導可能であり、あるいは蛍光透視、超音波、又はMRIを用いて誘導可能である。大動脈は腎動脈より大きいので、HIFUカテーテルを直接大動脈に挿入し、冷却カテーテルを含めることも可能である。加えて、他の実施形態において、腎小孔周辺領域、又は大動脈のより高位置の領域に非焦点式超音波を印加できる。いくつかの実施形態で非焦点式超音波を使用する際、プローブ周辺の組織を1つ以上の冷却剤を用いて冷却する必要が生じる可能性がある。しかし、いくつかの実施形態では、大動脈の血流量が高いために冷却剤が大動脈の血液に置き換わることが予想される。これに対して、HIFUすなわち焦点式超音波の場合、定義上、複数の角度から大動脈周辺領域に超音波を集束させるので、冷却不要と考えられる。焦点式超音波トランスデューサから対象領域にエネルギーを送達する際、大静脈と腎静脈を導管として使用することも可能である。一実施形態では、振動エネルギーを大静脈に接近させ、大静脈と腎静脈の壁を通して腎動脈(腎臓に通じる神経が周囲を走っている領域)へと振動エネルギーを送達する。静脈の方が血管壁が薄いので、より容易にエネルギーを通過させることが可能である。
【0319】
図21a〜bは眼球9100を示す。また、眼の小帯9130(水晶体の形状を制御する筋肉)と超音波トランスデューサ9120も図示されている。老眼患者が近くの物体に適応し視覚化できるように小帯を締める目的で、トランスデューサ9120から小帯周辺の領域又は小帯自体に焦点式超音波エネルギーを印加する。同様に、眼の内圧が高レベルに達しないように、毛様体筋に熱又は振動を加えて、関心領域の眼房水の流出量を増加させる。超音波トランスデューサ9120を利用して、水晶体9150、毛様体、小帯、硝子体内空洞、前方空洞9140、後方空洞等の領域に薬物療法を送達することも可能である。
【0320】
いくつかの実施形態(図21b)では、複数のトランスデューサ9160を利用して眼の奥の組織を治療する。この場合、超音波経路に沿う組織が超音波及び集束領域により損傷されず、かつ眼の中の効果領域9180に超音波が集束するように、超音波トランスデューサ9170を複数の方向から眼の特定領域に集束させる。一実施形態では、眼の扁平部を通過して眼の後極9175上の斑9180を標的とするようにトランスデューサを方向付ける。この構成で熱、振動刺激、薬物送達、遺伝子送達、レーザの増強、電離放射線治療等を実施し得る。いくつかの実施形態では焦点化超音波は不要であり、一般的な振動波を20kHzから10MHzの周波数で眼を通して伝送する。血塊、例えば、網膜の虚血を起こす網膜静脈閉塞又は網膜動脈閉塞内の血塊を破壊する目的で、このようなエネルギーを利用してもよい。このエネルギーは、特に網膜静脈中の血塊を破壊する際に利用される薬物と組み合わせて使用できる。
【0321】
図22は、熱及び/又は振動エネルギーを用いた末梢関節9200の治療を示す。超音波トランスデューサ9210が膝関節に向けて波を放射し、骨膜9220 9250の真下、又は軟骨下の神経9260をブロックする。膝関節が図示されているが、手の小関節、椎間関節、股関節、足関節、手首関節、肩部を含め、多くの関節が治療可能であることを理解すべきである。非焦点式又は焦点式超音波エネルギーを関節領域に印加して、神経機能を可逆的又は不可逆的に抑制することができる。このように神経機能を抑制することにより、関節炎、術後痛、腱炎、腫瘍疼痛等の治療が可能である。好適な一実施形態では、熱でなく振動エネルギーを利用できる。振動エネルギーを関節神経に印加して神経機能を抑制することにより、痛覚線維を阻害することが可能である。
【0322】
図23a〜bでは、避妊目的で外部から印加する超音波9310を使用し、子宮9320の卵管9300を閉塞する図を示す。画像診断様式には、MRI、好ましくは超音波を利用できる。実際のアブレーション区域をリアルタイムで確認する目的で、温度計測を利用することも可能である。卵管9300の描出には超音波、MRI、CTスキャン、又は腹腔鏡を使用できる。卵管を標的化した後は、超音波などの外部エネルギー9310を利用して避妊のため卵管を閉塞できる。卵管に熱を加えると、卵管壁内のコラーゲンが熱せられて卵管壁が肥大し、卵管壁同士が接触することで卵管が閉じる。その結果、排卵が完全に阻止され、よって妊娠が阻止される。卵管にはドップラー信号が存在しないが、描出・治療の技術は動脈その他の管と同様である。すなわち、卵管壁を識別しモデル化した後、焦点式超音波を皮膚を通過して卵管に印加することにより、卵管の内腔壁に熱を加える。
【0323】
図23bは、MRI、CT、又は超音波を使用して卵管を描出9340する方法を示す。MRI又は超音波による描出に基づき、HIFUを印加する9350。卵管の加熱に伴い、卵管壁内のコラーゲンが熱せられ、卵管壁が閉塞する。この段階で患者は不妊化される9360。加熱中、必要に応じて、どの程度効果的に加熱が進行しているかを判断する。さらに熱を加える必要がある場合は、卵管が閉塞し患者が不妊化する9360まで、卵管に追加のHIFUを印加する。外部から患者に複数回治療を加えることのできる治療法では、こうした点が利点の1つである。すなわち、1回治療するごとに卵管の閉塞が強化され、その都度、成功の度合いを評価し、必要であればさらに治療を加えることができる9370。
【0324】
他の実施形態では、子宮又は卵管に超音波を照射し、精子/卵子の互いの受容性を改善することで妊娠しやすくする。この受胎促進法は、子宮の外側、例えば子宮外受精症例の試験管などの精子と卵子にも適用できる。
【0325】
図24は、自律神経系の神経を治療するためのフィードバックアルゴリズムを示す。治療後、治療応答性の評価が存在することは重要である。したがって、第1工程では、上述の任意の1つ又は複数の実施形態により、腎神経の調節9400を行う。次いで評価9410を実施し、治療の効果の程度を評価する。治療応答が完全又は十分と判断されれば9420、治療は完了する。例えば、評価9410では、マイクロニューログラフィによる判定、頸動脈洞反応性の評価(上述)、心拍変動、ノレピネフリンレベルの測定等を実施することが考えられる。十分な自律神経応答が得られれば、追加の治療を停止してもよい。あるいは、応答の程度に応じて、引き続き追加の神経治療を行う9430。
【0326】
図25はCTスキャン画像から患者を再現したもので、患者9500の皮膚を透過して見た腎臓9520の位置を示している。腎臓は部分的に肋骨9510に覆われているが、腎臓9520の下極9530に完全な窓があることが分かる。こうした再現物の多くの解析から臨床的パラダイムが導かれてきた。すなわち患者の肋骨9510、骨盤9420、椎骨9440が識別された後、腎臓が超音波で識別され、さらに腎動脈はドップラー超音波で識別される。
【0327】
図26aに示すように、ドップラー超音波で肋骨と椎骨を特定した後は、外部エネルギー源9600を対象領域に印加できる。具体的には、構造体を識別し、腎臓9610に通じる血管(腎動脈と腎神経)9620に損傷部を施した後、対象領域に焦点式超音波(HIFU又はLIFU)を印加できる。本明細書で述べる通り、超音波トランスデューサ9600は図26Aのように患者後方の最適な場所に配置する。すなわち、椎骨、肋骨、及び腸骨稜を境界とする領域に超音波を照射する。
【0328】
図26A、図26Bの生体構造情報は、上記データ、特にCTスキャンに基づいて作成され、患者のこの領域(腎門部内の血管)の治療のために設計されたデバイス及びシステム9650を示している。システムには、中央に0.5〜3Mhz超音波撮像トランスデューサ9675があり、診断超音波配置用の超音波セラミック(例えば、PZT)のカットアッウト部又はアタッチメント部がある。このほか、治療用トランスデューサ9670を制御する移動機構9660も格納されている。診断超音波デバイス9675は、明瞭に画定された既知の関係を持つ治療デバイスと連結している。関係とは、剛性又は半剛性の連結により画定できる関係であり、あるいは、赤外線などの電気的連結、光学機械的連結、及び/又は電気機械的連結により画定できる関係である。デバイス外周の縁に沿って、組織を超音波で大まかに識別する小型トランスデューサ群9670を配置できる。例えば、単純で安価な一次元又は二次元トランスデューサを使用し、標的化と安全の目的で、組織を通じて超音波を標的に照射して組織を測定することが考えられる。安全性の観点から、超音波が骨や腸がぶつからず、かつ正しくトランスデューサを配置して腎血管周辺の領域を標的化できるようにするには、こうしたデータが重要である。このシステムには冷却システムも含まれ、トランスデューサからの熱をシステム全体に流れる液体9662に伝達する。この冷却機構により、超音波トランスデューサを冷却するとともに、システムの真下に位置する皮膚も冷却できる。このシステムのさらに別の特徴として、センサ機構9665がある。このセンサ機構はシステム9650と連結し、ベースライン又は近傍座標に対するシステム9650の相対的な動きを記録する。一実施形態では磁気センサを利用する。磁気センサを使用することにより、システム上の磁気センサに対するシステムの向きを決定できる。このセンサ9665は、移動機構9660及び撮像トランスデューサ9675と強固に連結する。磁気のほかに、光電気、音響、又は無線周波をセンサに使用してもよい。
【0329】
さらに、トランスデューサ9670の面9672を、図26Aに図解される骨領域内に適合する形状にする。例えば、楕円形や非球状、また場合によっては球状にもできる。加えて、いくつかの実施形態では、超音波撮像エンジンの位置をデバイスの中心に正確に揃えていなくてもよい。実際、撮像プローブ9675による腎動脈の描出をいっそう向上できるように、中心より上方で、面の上方境界に近接し、肋骨に近接する位置に置くこともできる。
【0330】
上記のように考案された技術(例えば、図26A〜B)及び臨床データが与えられたものとして、図27に、患者の体外から送達するエネルギーを用いて腎動脈周辺の神経にエネルギーを印加する新規の治療計画9700を示す。
【0331】
一実施形態では、腎動脈と腎臓の位置が最適になるように患者を安定化し9710、かつ/又は患者を適切な姿勢に位置付ける。診断用超音波9730を対象領域に印加する。また任意で、第2方向から超音波を印加する9715。位置決めと撮像の手技を用いて、腎動脈、腎門、及び腎静脈の位置を特定する9720。試験量の治療用エネルギー9740を腎門部に印加可能である。いくつかの実施形態では、温度9735を測定できる。1つ以上の評価基準で実際に治療効果が確認された場合は、この試験量を総量とみなすことができる。評価基準には、血圧9770、交感神経性流出の減少(マイクロニューログラフィ9765で測定)、副交感神経性流出の増加、血管口径の変化9755、末梢神経(例えば、腓骨神経)のマイクロニューログラフィ解析9765で現れる自発性スパイク数の減少、MRI又はCTスキャンで現れる神経生体構造の変化9760などがある。いくつかの実施形態では、腎臓内の指標をフィードバックに利用する。例えば抵抗指数(ドップラー超音波で測定する腎臓血管狭窄の評価基準)は、腎神経の活動に関連する有用な指標である。例えば、自律神経活動が活発になれば抵抗指数は増加し、その逆も同様である。
【0332】
血圧が目標値に達したら9770、治療完了としてもよい9745。実際には、この現象は決して発生しないか、発生するとしても数年の治療の後になる可能性がある。血圧が過度に高い状態が継続する可能性があり、数年かけて複数回治療を行うことができる。これが分割照射の考え方である。分割は、患者の体外領域から腎動脈周辺領域にエネルギーを印加する方法の大きな利点である。その理由は、刺激装置植え込みなどの侵襲的治療や、腎動脈カテーテル治療などのインターベンション手技と比較して、簡便で低コストであるからである。
【0333】
他の重要要素の1つに、腎動脈、腎静脈、及び腎門の部位・位置の特定9720がある。上記で論じたように、ドップラー超音波信号方式により神経位置を十分に近似化できるため、おおよその対象神経領域に超音波を印加することが可能である。対象の神経領域を図29A〜Dに示す。図29A〜Cは、実際の組織スライスから得たスケッチである。動脈壁からの距離は様々な場所に表示され、概ね0.3mmから10mmの範囲にある。それでも、これらの画像は実際の腎動脈と腎神経から取得したものであり、システムの治療計画を作成する目的で使用される。例えば、ドップラー超音波又は別の超音波信号を使用して動脈壁の位置を特定9730した後は、神経群の位置のモデルを作成し、その領域をエネルギーの標的位置とすることで、神経活動を抑制できる9720。注目すべきことは、これらの多くの神経から血管壁までの距離が示すこととして、血管の内側から血管壁に無線周波を照射する治療の場合、血管壁周辺の大部分の神経に到達するのは相当困難だと予想される点である。
【0334】
図29Dは、生きたヒトの超音波から作成された概略図である。図から分かるように、超音波は皮膚、皮下脂肪、筋肉を通過し、少なくとも部分的に腎臓8935を通過して、腎門8941と腎血管8937に到達する。この進行方向は、超音波を散乱させる傾向のある骨、肺などの構造体が含まれないように、臨床実験を通じて最適化されたものである。実験を通じて、腎神経の撮像と治療に最適な位置が得られる。上述と後述の通り、超音波の位置は、患者後方の触知可能な複数の骨性標識の間にある。椎骨は中央、肋骨は上方、腸骨稜は下方にある。重要なことは、これらの構造体からの距離8943は約8〜12cmであり、技術的見地から禁止的でないことである。ゆえに、超音波を用いたこれらの画像は、上記CTスキャンの結果とも一致する。
【0335】
図29Eは、臨床試験中の患者のうち2名について、超音波トランスデューサで得られた表面積8760を示す。1名は肥満体、もう1名は比較的やせ形である。表面積8762の定量化には以下の方法を使用した。1)CTスキャンを取得する、2)椎骨、腸骨稜、肋骨などの器官の境界を線で区切る、3)骨の縁に沿う点と腎血管を結ぶ線を引く、4)骨の縁から皮膚表面までの垂直線を引く、5)骨の境界に沿って取得した点の集合をマッピングする。表面積とは点と点の間の表面積であり、最大直径とは骨の縁と縁の間の最大距離である。この方法で取得した点の集合体が、患者後方の領域の範囲を決定する。この領域を超音波トランスデューサで照射して、集束点領域を描出又は治療できる。大多数の患者で使用できる設計にするため、一連の患者を調査し表面積の範囲を決定した。図30にモデル化したトランスデューサ群は約11×8cmすなわち88cmの表面積を有し、一連の患者を表す図29E 8762の表面積の範囲に確実に入る。さらに、腎動脈から皮膚までの長さ(距離)を最短射線(shortest ray)8764と最長射線(longest ray)8766で定量化した。上記の角度データとこれらのデータを併用することにより、自律神経調節と血圧制御を実現する適切なトランスデューサの設計が可能になる。
【0336】
別の調査では、本明細書に記述するパラメータとデバイスを用いて、外部から印加する超音波で上記神経を抑制できることが示された。病理解析により、動脈周辺の神経が完全に抑制され変質したことが明らかになり、よってこの治療計画がこれらの神経を抑制でき、最終的には高血圧症などの疾病を治療できることが確認された。さらに、これらのパラメータを利用しても、腎臓を通過して腎門に達する超音波経路の範囲内には損傷が一切生じなかった。
【0337】
重要なことは、臨床試験で判明した下記の点である。すわなち、超音波をエネルギーとして外部から印加する場合、血管に沿った正しい位置に治療効果を送達するには、腎臓の断面と血管が描出されるように診断用超音波プローブをセンタリングすることが重要要素であることが判明した。アルゴリズム9700の最初の工程の1つは、腎動脈領域にエネルギーを送達できるようにするため、特注の患者安定器内で患者を安定させることである。患者を安定させた後、診断用超音波を対象領域に印加して9730、肋骨、椎骨、及び骨盤の位置の範囲を特定する。骨性標識の触診でも関心治療区域の境界画定ができる。次に、骨組織を避けるように上記領域内に外部超音波システムを配置する。次いで、必ず外部エネルギーの一部が腎臓を横切って送達されるようにして(例えば、描出用超音波を使用して)、腸に当たる可能性をほぼゼロにする。図29Dの超音波画像は、患者の体外から体内の腎門部までの軟組織経路を示す。距離は約8〜16cmである。患者の姿勢が決定した後、クッション9815を患者の下に置く。一実施形態では、クッション9815は単に患者の背を下支えする方法である。別の実施形態では、クッション9815は、個々の患者に応じて拡張度を調節できる拡張可能デバイスである。拡張可能コンポーネント9815により後腹膜(腎臓が存在する場所)が圧縮可能となり、その結果、腎臓の動きを鈍化又は抑制して、エネルギー源又は超音波を用いた治療位置を維持することができる。
【0338】
試験量のエネルギー9740を腎門部又は腎動脈領域に照射でき、温度イメージング9735、血管狭窄9755、CTスキャン9760、マイクロニューログラフィ9765パッチ又は電極、さらに血圧9770も・・・である。その後、治療を完了することができる9745。測定するパラメータにより、数分で完了する場合もあれば、完了が数時間後、数日後、数年後となる場合もある。
【0339】
実験により確認されたことは、肋骨下及び腎盂の上の腹部領域に局所的に加えた力による重力を利用して、腎門部及び腎臓領域を安定化できることである。例えば、腎血管領域の治療を目的とした患者保定装置の例を図28A〜Cに示す。
【0340】
図28Aは、超音波診断・治療用9820を患者の真下に置いて患者の体位を定めた一例である。保定装置9810は、傾斜角が調整可能なベッドの形態をしている。患者の下に設置した患者昇降装置9815が腎門を押して皮膚に近づける。同様に前方に押し込むこともできる。臨床試験で特定されたように、臨床試験で調査した患者の約7〜15cmという範囲に対し、この種の配置では腎動脈が約2〜3cm多く表在する。本来は呼吸運動が生じるが、患者の体重でいくぶん安定化できる。また、治療領域に応じて患者昇降装置を片側又はその反対側に局在させることが可能である。
【0341】
図28Bは、超音波撮像・治療エンジンはめ込み構成9820の詳細図を示す。患者接触面9815を利用して、超音波が皮膚を通過して治療領域の腎臓までスムーズに移動できるようにしている。この接触面は、個々の患者に対応するように調整可能である。
【0342】
図28Cは、別の実施形態である、患者をうつぶせにする保定装置9850を示す。この実施形態では、患者を腹臥位の姿勢にして患者昇降装置9815の上に寝かせる。この場合も、腹臥位の患者の下に保定装置を置くことで腎門が後方に押し出されて腎動脈と腎静脈が伸長し、その結果、超音波による描出が向上し、対象領域のエネルギー付与部に接近しやすくなることが臨床実験で確認されている。患者の真下に置く保定装置は、1つ以上の区画を持ち、患者の下面に加わる圧力量を調整できる拡張可能な空気袋でもよい。保定装置には患者の後ろ側に当てる拡張可能な背面9825が付属し、保定装置の拡張可能な正面側に押し込むようにしてもよい。この場合、伸長した腎血管が圧縮され、表在性が増してエネルギーデバイスの適用がいっそう容易になる。これらのデータを図7Gと図7Hに示す。腹臥位の方が腎動脈が皮膚にかなり近い(7〜17cmが6〜10cmに縮小)。図28Cに、患者の左側9827と右側9828に置くエネルギーデバイスの位置を示す。肋骨9829はデバイス配置の上限領域を決定し、腸骨稜9831はデバイス配置の下限領域を決定する。棘突起9832はデバイスを配置可能な領域の内側縁を決定し、間の領域9828は治療用トランスデューサを置く場所である。
【0343】
患者の正面側にテーブル昇降装置があり、腎門と腎臓を押し上げる働きをする。特定の姿勢位置にできるように、テーブルのヘッド部が下降又は上昇できる。上昇部分には、患者の胴、頭、骨盤の片側又はその反対側に圧力を制御可能に加える膨張可能な構造物が含まれていてもよい。
【0344】
図29A〜Cは、本明細書に記述する標的化アプローチの解剖学的根拠9900を示す。これらの図は組織スライドから直接派生したものである。腎動脈9920周辺の位置に神経9910が見られる。動脈から半径方向の距離の範囲は2mmまでだが、長いものは10mmもある。図16Bのモデル化と生体構造との相関関係から、標的化が実現可能であることが明らかとなり、実際の病理学に基づくアプローチ、すなわち動脈外膜を標的化することにより腎神経に治療を加えるアプローチの妥当性が確認される。このことは重要である。なぜなら、神経を標的化する方法とは、動脈からのドップラー信号を検出して、そのドップラー信号周辺の血管壁を標的化する方法だからである。神経9910が腎動脈9920を囲んでいるのが見られる。16Bでは、腎動脈が四角形の温度フィールドに表示され、図27に略述される標的化アプローチ及び図16Aの損傷部構成が実現可能であることを示している。さらなる実験(類似種類の病理学及び腎臓中のノルエピネフリンレベルを利用)により、神経変化に影響を及ぼすために必要な対象領域への超音波の照射量が明らかになった。神経を部分的に抑制するには100W/cm程度、神経を完全に抑制し壊死させるには1〜2kW/cmが必要である。治療計画で所望される神経抑制の程度に応じて、この照射量又はこの間にある照射量を選択し得る。重要なことは、実験を通じて、血管を通る音波平面(acoustic plane)で対象領域内の神経を部分的又は完全に抑制できることをさらに発見した点である。すなわち、血管の進行方向と直角に交わる平面で、図16Bに例示する動脈周囲の神経を焼灼することができる。この実験が行われるまでは、血管を通して超音波平面を印加することにより、超音波が動脈周辺の神経を抑制できるという証拠は存在しなかった。実際、超音波平面は、実質的に血管周囲の神経の外周を抑制可能であることが証明された。
【0345】
図30A〜Iは、図26Aの患者モデルから得たCTスキャン一式より作成された三次元シミュレーションを示す。CTスキャンから得た実際のヒト生体構造を用いて、三次元の数値シミュレーションを行った。図7E、図19、図25の作成に使用したCTスキャンを利用し、実際の患者の生体構造を考慮しながら、腎動脈領域の理論的治療をシミュレートした。上記実験(図29A〜D)で示した照射量とCTスキャンから作成したヒト生体構造を組み合わせて利用したシミュレーションにより、患者の体外位置から腎門に治療用超音波を印加する能力が存在することが示された。図30A〜Iは、図29と共に、超音波トランスデューサの実現可能性を示している。なお、図29とは上述の通り、血管周辺の神経の位置及び超音波印加時の血管の位置を示した図であり、図30A〜Iの超音波トランスデューサは、介在する構造体を損傷せずに腎門領域に所要エネルギーを印加するように構成されている。これらのシミュレーションは、この治療法の概念が立証されることを実際に確認したものであり、病理調査、ヒトCTスキャン、ヒト超音波スキャン、及び上記で提示したシステム設計から得た知識を組み込んでいる。
【0346】
一実施形態の図30Aでは、周波数750MHzのトランスデューサ10000設計を使用して、集束点10010で約186W/cmの最大強度に達する。このトランスデューサは約11×8cmであり、超音波撮像エンジン用の中心部10050を備える。トランスデューサの入力ワット数は、個々の患者の生体構造に応じて約120W〜150Wである。
【0347】
図30Bと図30Cは、深さ約9〜11cmの音波集束点10020、10030を二次元で表示したものである。重要なことは、集束点10020、10030に近位(10040及び10041)の領域(腎臓、尿管、皮膚、筋肉などの組織)には有意な音波パワー吸収(acoustic power absorption)がないこと、すなわち、上述のようにこれらの組織を通して腎動脈に安全に治療を送達可能であることを示している点である。重要なことは、このシミュレーションでは、介在する組織に損傷がなく、この治療パラダイムの実現可能性を示している点である。
【0348】
図30D〜Fは、周波数約1MHzのトランスデューサ10055を用いたシミュレーションを示す。この周波数では、図30A〜Cと比較して、集束点10070、10040、10050のサイズがやや小さく(約2cm×0.5cm)、集束点の最大強度は高く、約400W/cmである。ヒトシミュレーションでは、このシミュレーションが最適応答に近く、外部配置デバイスの設定パラメータの基本になる。患者の後方の肋骨と患者の腸骨稜の上位部分の間の作業スペースを最適化するため、この設計のトランスデューサは長方形型の設計になる(球形のエッジ部分をカット)。サイズは上述の通り約11cm×8cmであり、患者背部の骨性標識間のスペースに十分収まる。
【0349】
図30G〜Iは、図30D〜Fと類似の超音波変数を用いたシミュレーションを示す。違いは、トランスデューサ10090が中央のカットアウト部の付いた長方形型ではなく、中央のカットアウト部の付いた球形のままになっている点であった。球形トランスデューサセットアップ10090は、振動エネルギーの表面積が大きくなるため集束点1075のエネルギー濃度が高い。実際、図30dのトランスデューサの最大強度が約370W/cmであるのに対し、このトランスデューサ(図30G)が放出する最大エネルギーは約744W/cmである。図30Hはモデルの一平面を示し、図30Iは別の平面を示す。図には集束点10080、10085が表示され、図30A〜Fと同様に、間に介在する領域10082、10083には音波パワーがない。
【0350】
これらのシミュレーションで、骨、腸、肺などの介在組織・構造体を損傷することなく、体外から腎交感神経を治療する療法が実現可能であることが確認されている。この治療法の臨床応用の1つが高血圧症である。撮像ユニットを内蔵したトランスデューサを利用して、腎動脈を囲む腎神経に焦点式超音波を印加する。この治療法は求心性神経、遠心性神経の両方に影響を及ぼす。
【0351】
他のトランスデューサ構成も可能である。図30A〜Iは単一の治療用トランスデューサを示しているが、位相配列治療用トランスデューサ(個別に制御される複数の治療用トランスデューサ)などの構成も可能である。このようなトランスデューサを使用すれば、個々の患者に応じてより細かく調整できる。例えば、2、3、4個、又は5個以上のトランスデューサを利用した大型のトランスデューサが考えられる。患者の生体構造に応じて個々のトランスデューサのオン/オフを切り替えることも考えられる。例えば、ある患者の肋骨に超音波が当たるトランスデューサを、治療時にオフにするなどが考えられる。
【0352】
図30A〜Iではトランスデューサの中心に中央スペースを表示しているが、治療用トランスデューサに対する撮像トランスデューサの相対位置が明確に分かっていれば、撮像トランスデューサはフィールド内の任意の位置に配置してよい。例えば、三次元空間において、治療用トランスデューサと撮像トランスデューサとが空間上で連結され、この関係が既知である限り、撮像トランスデューサは、治療用トランスデューサとの任意の相対的方向性を有することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の外側にエネルギー源を置くことと、
前記エネルギー源のエネルギー送達経路の照準を、自律神経系の一部であって前記患者の内側にある神経に向けるように、前記エネルギー源を操作することと、
前記神経を治療するため、前記エネルギー源を使用して、前記患者の外側から前記患者の内側に位置する前記神経に治療用エネルギーを送達することと
を含む治療方法。
【請求項2】
前記治療用エネルギーは焦点式エネルギーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療用エネルギーは非焦点式エネルギーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記治療用エネルギーはHIFUエネルギーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記治療用エネルギーはLIFUエネルギーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記治療用エネルギーは、前記神経に送達されて該神経の部分的なアブレーションを達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記治療用エネルギーは、前記神経に送達されて該神経の完全なアブレーションを達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記治療用エネルギーが送達されて前記神経の麻痺を達成する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記神経は腎臓に通じている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記神経は腎神経を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記神経は前記腎臓に接続する交感神経を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記神経は前記腎臓に接続する求心性神経を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記神経は腎茎部の腎交感神経を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記神経は椎骨に隣接する神経幹を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記神経は椎骨に隣接する神経節を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記神経は背根神経を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記神経は副腎に通じている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記神経は運動神経を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記神経は腎臓の隣にある、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記神経は眼の裏側にある、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記神経は腹腔神経叢を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記神経は脊柱の内部又は周辺にある、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記神経は椎間関節まで伸びている、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記神経は腹腔神経節を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記エネルギー源を操作する行為は該エネルギー源を位置決めすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記エネルギー源は超音波エネルギー源を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記超音波エネルギー源を使用して、前記患者の外側の複数方向から前記神経へと前記治療用エネルギーを送達する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記治療用エネルギーを送達して、前記神経を損傷せずに該神経を調節する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記患者の外側に位置する撮像デバイスを使用して腎血管の位置を特定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記腎血管の位置を使用して前記神経の位置を特定する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記撮像デバイスは、CTデバイス、MRIデバイス、サーモグラフィデバイス、赤外線撮像デバイス、光コヒーレンス・トモグラフィーデバイス、光音響撮像デバイス、PET撮像デバイス、SPECT撮像デバイス、又は超音波デバイスを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記患者の内側の前記神経の位置を特定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記患者の内側の神経の位置を特定する前記行為は、腎血管の位置を特定して、該腎血管を囲む該神経を標的化することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記腎血管は腎動脈を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記患者の内側の神経の位置を特定する前記行為は、ドップラー三角測量手法を使用することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記撮像デバイスはMRIデバイスを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記撮像デバイスはCTデバイスを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記治療用エネルギーはHIFUエネルギーを含み、前記撮像デバイスはMRIデバイスを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
前記治療用エネルギーはHIFUエネルギーを含み、前記撮像デバイスは超音波デバイスを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項42】
前記神経は腎臓に通じ、前記撮像デバイスはMRIデバイスを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項43】
前記神経は腎臓に通じ、前記撮像デバイスは超音波デバイスを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項44】
前記神経は腎臓に通じ、前記撮像デバイスを使用してドップラー信号を取得する、請求項32に記載の方法。
【請求項45】
請求項1に記載の方法であって、前記治療用エネルギーを腎臓に送達して、該腎臓に対する交感神経刺激を減少させるか、該腎臓から自律神経系への求心性シグナルを減少させるか、又はその両方を行う方法。
【請求項46】
前記患者に試験エネルギーを送達し、その結果としての反応が存在するかどうかを判断することをさらに含む、請求項1に記載の方法であって、該試験エネルギーは、前記エネルギー源から前記治療用エネルギーが送達される前に送達される、方法。
【請求項47】
前記試験エネルギーは熱エネルギー又は振動エネルギーを含む、請求項46に記載の方法であって、交感神経活動を検出する試験を実施することをさらに含む、方法。
【請求項48】
前記試験エネルギーは皮膚に加える刺激を含む、請求項46に記載の方法であって、前記患者からのアウトプットを検出することをさらに含む、方法。
【請求項49】
前記アウトプットは心拍数を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記試験エネルギーを送達して圧受容器複合体を刺激する、請求項46に記載の方法であって、
頚動脈に圧力を加えることと、
前記頚動脈に前記圧力を加えた後で血圧が低下するかどうかを判断することと、
をさらに含む、方法。
【請求項51】
前記患者の外側に置かれた超音波デバイスを使用して前記試験エネルギーを送達する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記血圧が低下する場合、又は前記血圧が所定の閾値より高い速度で低下する場合に、前記エネルギー源から前記治療用エネルギーを送達する、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記治療用エネルギーを送達して高血圧症を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
前記治療用エネルギーを送達して緑内障を治療する、請求項1に記載の方法。
【請求項55】
前記エネルギー源は、前記神経の隣にある血管と位置が揃う方向を照準とするように操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
前記神経を含む治療領域の動きを追跡することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
前記神経に囲まれる血管の位置を使用することにより、前記エネルギー源のエネルギー送達経路の照準を該神経に向ける、請求項1に記載の方法。
【請求項58】
請求項1に記載の方法であって、
前記患者の内側にデバイスを送達することと、
前記デバイスを使用して前記患者の内部にある前記神経の位置を特定することと、
をさらに含み、
前記エネルギー伝達経路の照準を前記神経に向けるように、前記特定した位置の少なくとも一部に基づいて前記エネルギー源を操作する、方法。
【請求項59】
前記神経に囲まれている血管の内側に前記デバイスを置き、該血管の位置を特定することにより間接的に該神経の位置を特定する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
患者の外側に配置されるエネルギー源を含む治療システムであって、
前記エネルギー源は、エネルギー送達経路の照準が、前記患者の内側の自律神経系の一部である神経に向くように構成され、かつ
前記エネルギー源は、治療用エネルギーを前記患者の外側から前記患者の内側に位置する神経へと送達して該神経を治療するように構成される、
治療システム。
【請求項61】
前記エネルギー源は焦点式エネルギーを提供するように構成される、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記エネルギー源は非焦点式エネルギーを提供するように構成される、請求項60に記載のシステム。
【請求項63】
前記エネルギー源はHIFUエネルギーを提供するように構成される、請求項60に記載のシステム。
【請求項64】
前記エネルギー源はLIFUエネルギーを提供するように構成される、請求項60に記載のシステム。
【請求項65】
前記エネルギー源は、前記治療用エネルギーを提供して前記神経の部分的なアブレーションを達成するように構成される、請求項60に記載のシステム。
【請求項66】
前記エネルギー源は、前記治療用エネルギーを送達して前記神経の完全なアブレーションを達成するように構成される、請求項60に記載のシステム。
【請求項67】
前記エネルギー源は、前記治療用エネルギーを送達して前記神経の麻痺を達成するように構成される、請求項60に記載のシステム。
【請求項68】
前記エネルギー源は超音波エネルギー源を含む、請求項60に記載のシステム。
【請求項69】
前記超音波エネルギー源は、前記治療用エネルギーを前記患者の外側の複数の方向から前記神経に送達し、同時に、該超音波エネルギー源は該患者に対して静止しているように構成される、請求項68に記載のシステム。
【請求項70】
前記エネルギー源は、前記神経への前記治療用エネルギーの経路の範囲内にある組織を損傷せずに、該治療用エネルギーを送達して該神経を調節するように構成される、請求項60に記載のシステム。
【請求項71】
前記神経は腎神経を含む、請求項60に記載のシステムであって、前記患者の外側に位置するプロセッサをさらに含み、該プロセッサは、
腎動脈の位置に関連するインプットを受信し、
動脈位置と神経位置を関連付けるモデルに基づき、腎神経の位置に関するアウトプットを決定し、かつ
前記エネルギー源の位置決めシステムにアウトプットを提供することにより、腎神経の治療のため、該位置決めシステムが該エネルギー源に患者の外側から該腎神経に治療用エネルギーを送達させることを可能にするように構成される、
請求項60に記載のシステム。
【請求項72】
腎血管の位置を特定するための、前記患者の外側に位置するプロセッサをさらに含む、請求項60に記載のシステム。
【請求項73】
画像信号を提供するための撮像デバイスをさらに含む、請求項72に記載のシステムであって、前記プロセッサは該画像信号に基づいて前記位置を特定するように構成される、システム。
【請求項74】
前記撮像デバイスは、CTデバイス、MRIデバイス、サーモグラフィデバイス、赤外線撮像デバイス、光コヒーレンス・トモグラフィーデバイス、光音響撮像デバイス、PET撮像デバイス、SPECT撮像デバイス、又は超音波デバイスを含む、請求項73に記載のシステム。
【請求項75】
前記治療用エネルギーの送達時に、前記腎血管の位置を使用して、該腎血管を囲む神経を標的化する、請求項72に記載のシステム。
【請求項76】
ドップラー三角測量手法を使用して前記位置を特定する、請求項72に記載のシステム。
【請求項77】
前記腎血管は腎動脈を含む、請求項72に記載のシステム。
【請求項78】
請求項60に記載の方法であって、前記治療用エネルギーを腎臓に送達して、該腎臓に対する交感神経刺激を減少させるか、該腎臓から自律神経系への求心性シグナルを減少させるか、又はその両方を行う、方法。
【請求項79】
前記エネルギー源はさらに、試験エネルギーを前記患者に送達して、その結果としての反応が存在するかどうかを判断するように構成される、請求項60に記載のシステム。
【請求項80】
前記エネルギー源は、前記治療用エネルギーを送達して高血圧症を治療するように構成される、請求項60に記載のシステム。
【請求項81】
前記エネルギー源は、前記治療用エネルギーを送達して緑内障を治療するように構成される、請求項60に記載のシステム。
【請求項82】
前記エネルギー源は、前記神経の隣にある血管と位置が揃う方向を照準とする方向性を有する、請求項60に記載のシステム。
【請求項83】
前記エネルギー源は前記神経の動きを追跡するように構成される、請求項60に記載のシステム。
【請求項84】
前記エネルギー源は、前記神経の隣にある血管の動きを追跡することにより前記神経の動きを追跡するように構成される、請求項83に記載のシステム。
【請求項85】
前記エネルギー源は、前記神経に囲まれる血管に照準を定めることにより、前記神経を照準とするように構成される、請求項60に記載のシステム。
【請求項86】
請求項60に記載のシステムであって、
前記患者の内側に配置されるデバイスと、
前記デバイスを使用して位置を特定するためのプロセッサと、
をさらに含み、
前記エネルギー源は、特定された位置の少なくとも一部に基づいて、前記エネルギー送達経路の照準が前記患者の内側の前記神経に向くように構成される、システム。
【請求項87】
前記神経に囲まれている血管に挿入するように前記デバイスのサイズが決定される、請求項86に記載のシステム。
【請求項88】
患者の皮膚の外側の位置から該患者の内側の血管を囲む神経へとエネルギーを送達するシステムであって、
画像信号を受信し、該画像信号に基づいて血管の三次元座標を決定するように構成されるプロセッサと、
前記患者の皮膚の外側の前記位置から前記血管を囲む前記神経へとエネルギーを送達するように構成されるエネルギー源と、
を含み、
前記プロセッサは、決定された前記座標に基づいて前記エネルギー源を制御するようにも構成される、システム。
【請求項89】
前記画像信号を提供するための撮像デバイスをさらに含む、請求項88に記載のシステム。
【請求項90】
前記撮像デバイスはMRIデバイスを含む、請求項89に記載のシステム。
【請求項91】
前記撮像デバイスは超音波デバイスを含む、請求項89に記載のシステム。
【請求項92】
前記エネルギーは焦点式エネルギーを含む、請求項88に記載のシステム。
【請求項93】
前記エネルギーは焦点式超音波を含む、請求項88に記載のシステム。
【請求項94】
前記エネルギー源は、前記血管に位置合わせされる超音波アレイを含む、請求項88に記載のシステム。
【請求項95】
血管撮像用にBモード超音波を供給するための撮像デバイスをさらに含む、請求項88に記載のシステム。
【請求項96】
患者の皮膚の外側の位置から血管を囲む神経へとエネルギーを送達するシステムであって、
前記血管の内側に配置される基準体と、
前記血管の内側の前記基準体を検出する検出デバイスと、
検出された前記基準体の三次元座標を決定するように構成されるプロセッサと、
前記皮膚を通じてエネルギーを伝送し、かつ該エネルギーを前記血管の領域に集束するように構成されるエネルギー源と、
を含み、
前記プロセッサは、前記決定された基準体の三次元座標及び前記血管に関する情報に基づいて前記エネルギー源を操作するように構成される、システム。
【請求項97】
前記エネルギー源は超音波デバイスを含み、前記血管は腎動脈である、請求項96に記載のシステム。
【請求項98】
超音波撮像システムをさらに含む、請求項96に記載のシステム。
【請求項99】
前記基準体は、前記血管の内側に置かれて血管内カテーテルに取り付けられる、請求項96に記載のシステム。
【請求項100】
前記基準体は、外部信号に応答するように構成される受動的基準体である、請求項96に記載のシステム。
【請求項101】
前記基準体は、その位置を前記検出デバイスに伝送する能動的基準体である、請求項96に記載のシステム。
【請求項102】
患者の高血圧症を治療する方法であって、
前記患者の血管から撮像信号を取得することと、
前記血管の壁へのエネルギー送達を計画することと、
前記患者の皮膚の外側から前記血管を囲む自律神経へとエネルギーを送達することと、
を含む方法。
【請求項103】
交感神経束内の求心性神経を選択的に調節することをさらに含む、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記エネルギーを送達した後、マイクロニューログラフィを利用して交感神経系に対するエネルギー送達の効果を判断することをさらに含む、請求項102に記載の方法。
【請求項105】
前記血管は腎臓まで伸びているか腎臓から伸びている、請求項102に記載の方法であって、ドップラー超音波を用いて該血管の位置を特定することをさらに含む、方法。
【請求項106】
経皮的エネルギー送達を利用して患者の自律神経を調節するシステムであって、
前記神経を含む治療領域に送達するエネルギー及び電力に関する情報を受信するためのインプットと、
信号を出力するためのアウトプットと、
を含み、
前記患者の外側から基準標的の位置を特定して、該基準標的に対して前記神経を局在させるように構成されるプロセッサと、
前記患者の外側からエネルギーを送達するためのトランスデューサと、
前記プロセッサからの信号の少なくとも一部に基づいて前記トランスデューサの照準設定を制御するコントローラと、
を含む治療用エネルギーデバイスと、
前記プロセッサ又は前記治療用エネルギーデバイスと連結した撮像システムと、
を含むシステム。
【請求項107】
前記プロセッサは、前記治療用エネルギーデバイスの動作中に前記位置を特定するように構成される、請求項106に記載のシステム。
【請求項108】
前記治療用デバイスを位置決めするように構成される患者インターフェースをさらに含む、請求項106に記載のシステムであって、該治療用デバイスは、前記トランスデューサの照準が、上位は肋骨間の位置から、下位は腸骨稜から、及び中位は脊柱から、腎臓に接続する血管に向けて設定されるように位置決めされる、システム。
【請求項109】
前記治療用エネルギーデバイスは焦点式超音波を送達するように構成される、請求項106に記載のシステム。
【請求項110】
前記基準標的は腎臓に向かって又は腎臓から流れる血管の少なくとも一部であり、前記神経は腎神経である、請求項106に記載のシステム。
【請求項111】
前記トランスデューサは、6cmから18cmの距離でエネルギーを集束するように構成される、請求項110に記載のシステム。
【請求項112】
前記トランスデューサは、脊柱の横突起を接続する水平線に対して約−10度から約−48度の間の角度範囲で、焦点式超音波の形態で腎血管にエネルギーを送達するように構成される、請求項106に記載のシステム。
【請求項113】
前記治療用エネルギーデバイスからのエネルギーは100W/cmと2500W/cmの間の範囲にある、請求項106に記載のシステム。
【請求項114】
前記基準標的は血管内留置カテーテルである、請求項106に記載のシステム。
【請求項115】
前記撮像システムは磁気共鳴撮像システムであり、前記治療用エネルギーデバイスは超音波デバイスである、請求項106に記載のシステム。
【請求項116】
前記撮像システムは超音波撮像システムである、請求項106に記載のシステム。
【請求項117】
前記プロセッサは前記治療用エネルギーデバイスの一部である、請求項106に記載のシステム。
【請求項118】
前記プロセッサは前記撮像システムの一部である、請求項106に記載のシステム。
【請求項119】
患者の皮膚の外側の位置から血管を囲む神経へとエネルギーを送達する方法であって、
肋骨より下位、腸骨稜より上位、かつ脊柱の側方にデバイスを配置することと、
エネルギー送達システムが骨組織を横切らずに皮膚を通過してエネルギーを送達できるようにするため、前記デバイスを使用して、前記患者に対する該エネルギー送達システムの相対的位置を所望の位置に維持することと、
を含む方法。
【請求項120】
前記エネルギー送達システムは焦点式超音波送達システムを含む、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
患者の皮膚の外側の位置から血管を囲む神経へと焦点式超音波エネルギーを送達するシステムで使われるデバイスであって、
エネルギー送達システムが骨組織を横切らずに皮膚を通過してエネルギーを送達できるようにするため、前記患者に対する該エネルギー送達システムの相対的位置を所望の位置に維持するように構成される位置決めデバイスを含み、
肋骨より下位、腸骨稜より上位、かつ脊柱の側方に配置するように前記位置決めデバイスが構成される、デバイス。
【請求項122】
前記エネルギー送達システムは焦点式超音波送達システムを含む、請求項121に記載のデバイス。
【請求項123】
超音波場に骨構造が含まれないようにするため、前記位置決めデバイスは前記焦点式超音波送達システムの角度を維持するように構成される、請求項122に記載のデバイス。
【請求項124】
患者の外側から該患者の内側の神経にエネルギーを送達するように構成される治療デバイスと、
前記神経に囲まれる血管の内側に配置され、信号を送信するように構成されるカテーテルと、
前記信号を受信し、前記血管中の基準位置を特定するように構成されるプロセッサと、
を含む治療システムであって、
前記治療デバイスは、前記特定された基準位置に基づいて前記エネルギーを前記神経に送達するように構成される、治療システム。
【請求項125】
前記治療デバイスは超音波デバイスを含む、請求項124に記載のシステム。
【請求項126】
動脈に沿って走る神経の機能を抑制する方法であって、
患者の動脈の位置を特定するための外部の画像診断様式を提供することと、
前記画像診断に基づいて、前記動脈を第1の三次元基準座標系に配置することと、
前記第1の三次元基準座標系に治療用エネルギー源を配置するか又は関連付けることと、
前記動脈の外膜領域又は動脈に隣接する神経の走る領域へのエネルギー送達をモデル化することと、
前記治療用エネルギー源から、少なくとも2つの異なる角度から、患者の皮膚を通過して治療用エネルギーを送達し、前記動脈又は該動脈に隣接する領域で交差させることと、
前記動脈に沿って走る神経の機能を少なくとも部分的に抑制することと、
を含む方法。
【請求項127】
前記画像診断様式は超音波、MRI、CTのいずれか1つである、請求項126に記載の方法。
【請求項128】
前記治療用エネルギーは超音波である、請求項126に記載の方法。
【請求項129】
前記動脈は腎動脈である、請求項126に記載の方法。
【請求項130】
三次元基準座標系に前記動脈を配置することには、ドップラー超音波信号を使用して前記動脈の位置を特定することが含まれる、請求項126に記載の方法。
【請求項131】
前記患者の内部に配置された基準体を利用することをさらに含む、請求項126に記載の方法。
【請求項132】
前記基準体は前記患者の内部の位置に一時的に配置される、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
前記基準体は前記患者の動脈内に留置されるカテーテルである、請求項131に記載の方法。
【請求項134】
前記カテーテルは無線周波信号を使用して検出可能であり、前記画像診断様式は超音波である、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記エネルギー源からの前記治療用エネルギーは、前記動脈の長手方向に沿った分布で送達される、請求項126に記載の方法。
【請求項136】
前記治療用エネルギーは電離放射線である、請求項126に記載の方法。
【請求項137】
腎動脈に沿って走る神経の機能を抑制するシステムであって、
患者の外部位置から前記腎動脈及び腎神経の位置を特定する検出器と、
少なくとも2つの方向から、治療用エネルギーを、皮膚を通過して、前記腎動脈を囲む神経に送達する超音波コンポーネントと、
インプットとアウトプットを含むモデル化アルゴリズムであって、
前記モデル化アルゴリズムへの前記インプットは、治療用エネルギー源を含む三次元座標空間と、該三次元座標空間における腎動脈の位置を含み、
前記モデル化アルゴリズムからの前記アウトプットは、前記超音波コンポーネントの方向とエネルギーレベルを含む、モデル化アルゴリズムと、
患者の外側から位置を特定可能な基準体であって、該患者の動脈に一時的に設置され、前記検出器と通信して、腎動脈の位置を三次元基準座標系で特定するように適応した基準体と、
を含み、前記位置に関する情報は前記モデルへの前記インプットとして送信可能である、システム。
【請求項138】
前記基準体は超音波の受動的反射体である、請求項137に記載のシステム。
【請求項139】
前記基準体は無線周波エネルギーを生成する、請求項137に記載のシステム。
【請求項140】
前記基準体は、超音波場発生器又は磁場発生器からの信号に基づいて活性化しエネルギーを伝送する、請求項137に記載のシステム。
【請求項141】
前記モデルからのアウトプットは前記超音波コンポーネントに対し、主軸が動脈の長手方向に沿った縦軸である損傷部を、動脈上に送達するように指示する、請求項137に記載のシステム。
【請求項142】
前記モデルからのアウトプットは前記超音波コンポーネントに対し、複数の損傷部を同時に動脈周辺に送達するように指示する、請求項141に記載のシステム。
【請求項143】
前記モデルからのアウトプットは前記超音波コンポーネントに対し、動脈周囲に外周状の損傷部を送達するように指示する、請求項137に記載のシステム。
【請求項144】
腎動脈周辺の前記損傷部は、腎門部の動脈の分岐の近位側に隣接して配置される、請求項141に記載のシステム。
【請求項145】
腎臓から又は腎臓まで走る神経の機能を刺激又は抑制する方法であって、
a.患者の後方領域において、腎動脈を描出可能な音響窓を特定することと、
b.患者の後方領域から該患者の皮膚を通過して第1エネルギーを伝送することと、
c.伝送された前記第1エネルギーを使用して動脈領域を撮像することと、
d.前記撮像と第2の伝送エネルギーを連結することにより、動脈の外膜に該第2伝送エネルギーを印加することと
を含む方法。
【請求項146】
前記第1伝送エネルギーで作成された画像を追跡することをさらに含む、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
患者の体内の血管の位置を特定する方法であって、
第1超音波を第1方向から、前記患者の外側から血管領域に向けて印加し、その帰還信号を検出することと、
印加した前記第1超音波とその帰還信号を比較することと、
同時又は連続的に、第2超音波を第2方向から血管に印加し、その帰還信号を検出することと、
前記第1超音波からの帰還信号と前記第2超音波からの帰還信号を統合して、前記血管の位置を三次元基準座標系において特定することと、
を含む方法。
【請求項148】
治療用超音波トランスデューサに対し、前記血管の前記位置にエネルギーを印加するよう指示するステップをさらに含む、請求項147に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図3E】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図7E】
image rotate

【図7F】
image rotate

【図7G】
image rotate

【図7H】
image rotate

【図7I】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図11C】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図15C】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate

【図16C】
image rotate

【図17A】
image rotate

【図17B】
image rotate

【図17C】
image rotate

【図17D】
image rotate

【図17E】
image rotate

【図17F】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19A】
image rotate

【図19B】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21A】
image rotate

【図21B】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23A】
image rotate

【図23B】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26A】
image rotate

【図26B】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28A】
image rotate

【図28B】
image rotate

【図28C】
image rotate

【図29A】
image rotate

【図29B】
image rotate

【図29C】
image rotate

【図29D】
image rotate

【図29E】
image rotate

【図30A】
image rotate

【図30B】
image rotate

【図30C】
image rotate

【図30D】
image rotate

【図30E】
image rotate

【図30F】
image rotate

【図30G】
image rotate

【図30H】
image rotate

【図30I】
image rotate


【公表番号】特表2013−507198(P2013−507198A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533385(P2012−533385)
【出願日】平成22年10月11日(2010.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/052197
【国際公開番号】WO2011/046880
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(512093882)コナ メディカル,インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】KONA MEDICAL,INC.
【Fターム(参考)】