説明

エネルギー変換装置

【課題】バッテリーがフル充電状態になったとき等にも、アクチュエータの作動速度が変化して作業性が悪くなることがないエネルギー変換装置を提供する。
【解決手段】アクチュエータ1に慣性エネルギーや位置エネルギーが作用したときに戻り側となる通路4に設けた絞り制御弁6と、絞り制御弁6を制御するパイロット圧制御弁17と、パイロット圧制御弁17を制御するコントローラCとを備え、コントローラCは、上記通路4を介してポンプPからの圧力流体をアクチュエータ1に供給する信号、蓄電センサー23からのフル充電信号、フェイルセーフセンサー24からのフェイル信号のいずれかが入力したとき、パイロット圧制御弁17を制御して絞り制御弁6を自由流れ位置6aに保ち、上記通路4を介して戻り流体をタンクTに戻す信号が入力したとき、パイロット圧制御弁17を制御して絞り制御弁6を絞り流れ位置6bに保つ構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アクチュエータの慣性エネルギーや位置エネルギーを利用して油圧モータを駆動するとともに、この油圧モータの回転力で発電機を回すエネルギー変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、特許文献1に記載された装置が従来から知られている。この従来の装置は、アクチュエータに慣性エネルギーや位置エネルギーが作用したときに戻り側となる通路に、オンオフ的に切り換わる切換弁を設けている。そして、この切換弁がノーマル位置にあるとき、慣性エネルギーや位置エネルギーが作用したアクチュエータの戻り油が、この切換弁を経由してタンクに還流する。また、上記切換弁がノーマル位置から切り換え位置に切り換わったときには、上記慣性エネルギーや位置エネルギーが作用したアクチュエータの戻り油が油圧モータに導かれるようにしている。そして、この油圧モータには発電機が連結されているので、上記戻り油で油圧モータが回転すれば、その回転力で発電機が回って発電される。また、上記油圧モータからの戻り油は、そのままタンクに戻される。つまり、アクチュエータからの戻り油は、発電機に連結した油圧モータを介してタンクに戻されることになる。
【特許文献1】特開2004−11168号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のようにした従来の装置では、例えば、発電機に連結したバッテリーがフル充電に近い状態になると、当然のこととして、充電量が少なくなるため発電機の回転抵抗が小さくなる。したがって、この発電機に連結した油圧モータの負荷も小さくなり、その回転数が上昇してしまう。このようにして、油圧モータの回転数が上昇すれば、アクチュエータからの戻り油がタンクに還流するときの流動抵抗も小さくなるので、オペレータの意思とは関係なくアクチュエータの作動スピードも上昇してしまう。また、フル充電になれば、切換弁がノーマル位置に切り換わるので、油圧モータには油が流れなくなる。すると、アクチュエータの戻り流量は絞りを介して戻されることになるので、アクチュエータの戻り速度が極端に遅くなる。
つまり、従来の装置では、バッテリーの充電状況によって、アクチュエータの作動速度が変化し、作業性が悪くなるという問題があった。
【0004】
また何らかの原因で、油圧モータや発電機にトラブルが発生し、油圧モータのスムーズな回転が損なわれたときにも、切換弁がノーマル位置になるので、上記の場合と同じ理由で、アクチュエータの作業性が悪くなるという問題が発生していた。
この発明の目的は、バッテリーがフル充電状態になったとき、あるいは、油圧モータや発電機にトラブルが発生した場合にも、アクチュエータの作動速度が変化して作業性が悪くなることがないエネルギー変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、アクチュエータを制御する切換制御弁を設け、この切換制御弁をいずれか一方に切り換えることによってポンプからの圧力流体をアクチュエータの一方の側に供給するとともに、アクチュエータの他方の側からの戻り流体をタンクに導く構成にする一方、切換制御弁をいずれか他方に切り換えることによってポンプからの圧力流体をアクチュエータの他方の側に供給するとともに、アクチュエータの一方の側からの戻り流体をタンクに導く構成にし、この切換制御弁の切り換え制御に応じて、上記アクチュエータに慣性エネルギーや位置エネルギーが作用したときに戻り側となる通路を絞って、この絞り側となる通路に流通する流体を、発電機に連結した油圧モータに供給して、上記慣性エネルギーあるいは位置エネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギー変換装置を前提とする。
【0006】
そして、第1の発明は、上記アクチュエータに慣性エネルギーや位置エネルギーが作用したときに戻り側となる通路に設け、自由流れ位置と絞り流れ位置とに切り換え可能なパイロットバルブからなる絞り制御弁と、この絞り制御弁に作用させるパイロット圧を制御するパイロット圧制御弁と、このパイロット圧制御弁を制御するコントローラとを備え、このコントローラには、発電機で発電した電力を蓄電するバッテリーの蓄電状況を検出する蓄電センサーあるいは上記油圧モータや発電機の作動状況を検出するフェイルセーフセンサーの少なくともいずれか一方を接続するとともに、上記アクチュエータに慣性エネルギーや位置エネルギーが作用したときに戻り側となる通路を介してポンプからの圧力流体をアクチュエータに供給する信号あるいは蓄電センサーからのフル充電信号、フェイルセーフセンサーからのフェイル信号のいずれかがコントローラに入力されたとき、上記コントローラは、上記パイロット圧制御弁を制御して上記絞り制御弁を自由流れ位置に保ち、上記アクチュエータに慣性エネルギーや位置エネルギーが作用したときに戻り側となる通路を介してアクチュエータの戻り流体をタンクに戻す信号がコントローラに入力したとき、コントローラはパイロット圧制御弁を制御して上記絞り制御弁を絞り流れ位置に保つ構成にした点に特徴を有する。
【0007】
第2の発明は、上記戻り側となる通路と上記油圧モータとを遮断するノーマル位置と、上記戻り側となる通路と油圧モータとを連通する切り換え位置との少なくとも2位置に切り換え可能であって、上記パイロット圧制御弁によって制御される切換弁を設け、上記コントローラは上記パイロット圧制御弁を制御して、上記絞り制御弁を自由流れ位置に保つとき、上記切換弁をノーマル位置に保つ一方、上記絞り制御弁を絞り流れ位置に保つとき、上記切換弁を切り換え位置に保つ構成にした点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
第1、第2の発明によれば、コントローラが、蓄電センサーからのフル充電信号やフェイルセーフセンサーからのフェイル信号に基づいて、パイロット圧制御弁を制御して、上記絞り制御弁の絞り機能を解除する構成にしたので、フル充電に達したときあるいは故障等が発生したときにも、アクチュエータの作動速度に影響を及ぼしたり、作業効率を落としたりしない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1に示したこの実施形態は、この発明のアクチュエータであるシリンダ1に、3位置4ポート弁であってパイロットバルブからなる切換制御弁2を接続したもので、そのポンプポート2aをポンプPに接続し、タンクポート2bをタンクTに接続している。また、一対のアクチュエータポート2c,2dのうち、一方のアクチュエータポート2cを、通路3を介してシリンダ1のロッド側室1aに接続し、他方のアクチュエータポート2dを、通路4を介してピストン側室1bに接続している。
【0010】
上記のようにした切換制御弁2は、図示の中立位置にあるとき、各ポート2a〜2dのすべてを閉じた状態に保つ。そして、切換制御弁2の一方のパイロット室にパイロット圧を作用させて、切換制御弁2が図面左側位置に切り換わると、ポンプポート2aとアクチュエータポート2dとが連通し、タンクポート2bとアクチュエータポート2cとが連通する。また、切換制御弁2の他方のパイロット室にパイロット圧を作用させて、切換制御弁2を図面右側位置に切り換えると、今度は、ポンプポート2aとアクチュエータポート2cとが連通し、タンクポート2bとアクチュエータポート2dとが連通する。このように、切換制御弁2のパイロット室にパイロット圧を作用させることによって、ポンプPから吐出される吐出油を通路3側に導いたり、通路4側に導いたりすることができる。
【0011】
そして、上記切換制御弁2を制御するのがパイロット操作機構5である。このパイロット操作機構5は、その操作レバー5aを操作することによって、切換制御弁2のいずれか一方のパイロット室に、上記操作レバー5aの操作量に比例したパイロット圧を導き、そのパイロット圧に応じて切換制御弁2を切り換えるようにしている。なお、パイロット操作機構5にはこの発明の制御機構であるコントローラCが電気的に接続されており、操作レバー5aの操作状況がコントローラCに電気信号として発信される。
【0012】
また、上記通路4には絞り制御弁6を接続している。この絞り制御弁6は、自由な流れを許容する自由流れ位置6aと、オリフィスによって流量を制御する絞り流れ位置6bとからなる2つの切換位置を有している。この絞り制御弁6は、その一方の側に設けたスプリング7によって通常は自由流れ位置6aを保つとともに、他方の側に設けたパイロット室8にパイロット圧が導かれたとき、絞り流れ位置6bに切り替わる構成にしているが、この構成については後で詳しく説明する。
【0013】
また、この実施形態におけるシリンダ1は、そのピストン側室1bを下にした状態で設置される。したがって、ピストン側室1bをタンクTに連通して、シリンダ1を収縮させるとき、このシリンダ1に作用している負荷によって、当該シリンダ1に慣性エネルギーや位置エネルギーが作用するとともに、このときには、通路4が戻り側の通路ということになる。また、当然のこととして、ピストン側室1bをポンプPに連通させたときには、シリンダ1はそれに作用している負荷を上昇させることになるので、当該シリンダ1に作用する負荷による慣性エネルギーは無視できるほど少ない。したがって、この発明でいう、アクチュエータに慣性エネルギーや位置エネルギーが作用したとき、とはシリンダ1を収縮させる場合のみを指すものとする。
【0014】
そして、上記シリンダ1が収縮動作するとき、その負荷に応じた慣性エネルギーや位置エネルギーが作用すること上記の通りであるが、このようにシリンダ1にエネルギーが作用するときに戻り側となる通路4であって、戻り流れに対して絞り制御弁6よりも上流側になる位置に接続通路11を接続するとともに、この接続通路11に2位置4ポート弁である切換弁Sを接続している。この切換弁Sは、供給ポート9a,9bと、戻りポート10a,10bとを備えている。そして、一方の供給ポート9aは、接続通路11を介して、通路4に接続するとともに、他方の供給ポート9bは、油圧モータMに対して供給側となる供給流路12に接続している。なお、油圧モータMは発電機Gの動力源であり、油圧モータMが回転することによって発電機Gが発電するとともに、発電機Gによって発電された電力がバッテリーUに蓄電される。
【0015】
また、上記一方の戻りポート10aは、接続通路13を介してタンクTに接続するとともに、他方の戻りポート10bは、上記油圧モータMに対して戻り側となる戻り流路14に接続している。このようにした切換弁Sは、その一方の側にスプリング15を設けるとともに、他方の側にパイロット室16を設けている。このパイロット室16にはパイロット圧制御弁17を接続しているが、このパイロット圧制御弁17は、ソレノイド17aの励磁電流に応じてパイロット圧を制御するものである。したがって、パイロット圧制御弁17は上記ソレノイド17aに供給された励磁電流に応じたパイロット圧を、上記パイロット室16に導くとともに、このパイロット圧の大きさに応じて切換弁Sが切り換わることになる。
また、パイロット圧制御弁17で制御されたパイロット圧は、上記パイロット室16と同時に、絞り制御弁6のパイロット室8にも導かれる。パイロット室8にパイロット圧が導かれると、絞り制御弁6が自由流れ位置6aから絞り流れ位置6bに切り換わる。したがって、絞り制御弁6と切換弁Sとは、パイロット圧制御弁17によって同期して切り換わることとなる。
【0016】
上記のようにした切換弁Sは、パイロット室16にパイロット圧が作用していないとき、スプリング15の作用で図示の一方の切り換え位置であるノーマル位置S1を保つ。そして、この一方の切り換え位置であるノーマル位置S1において、上記供給ポート9a,9bが閉じられるとともに、戻りポート10a,10bは絞り開度を保った状態に維持される。また、パイロット室16に、上記のようにパイロット圧が導かれて、切換弁Sが上記ノーマル位置S1から他方の切り換え位置である切り換え位置S2に切り換わると、上記供給ポート9a,9bおよび戻りポート10a,10bが開くが、そのときの開度は、上記したようにソレノイド17aの励磁電流に応じて制御される。ただし、このソレノイド17aの励磁電流と、前記したパイロット操作機構5の操作レバー5aの操作量とが対応するように上記コントローラCが制御している。
【0017】
いずれにしても、切換弁Sが、図示のノーマル位置S1にあるときには、供給流路12にピストン側室1bからの戻り油は導かれないので、油圧モータMは回転せず、当然のこととして発電機Gも機能しない。
【0018】
一方、パイロット操作機構5の操作レバー5aを操作して、切換制御弁2を図面右側位置に切り換えると、シリンダ1におけるピストン側室1bの戻り流体をタンクTに戻す信号が、パイロット操作機構5からコントローラCに入力される。この信号が入力されると、コントローラCがパイロット圧制御弁17のソレノイド17aを励磁する。したがって、絞り制御弁6のパイロット室8と、切換弁Sのパイロット室16にパイロット圧が導かれ、絞り制御弁6が絞り流れ位置6bに切り換わるとともに、切換弁Sが切り換え位置S2に切り換わる。このように絞り制御弁6と切換弁Sとが切り換われば、シリンダ1の戻り流体が、油圧モータMに供給されるので、油圧モータMが回転する。この油圧モータMの回転にともなって、発電機Gも回転して発電機能を発揮するとともに、発電機Gで発電された電力はバッテリーUに蓄電される。
【0019】
また、上記供給流路12と戻り流路14との間には、それら両者を短絡させる短絡流路18を設けるとともに、この短絡流路18には、戻り流路14から供給流路12への流れのみを許容するチェック弁19を設けている。さらに、このチェック弁19と並列にしたリリーフ弁20を設け、供給流路12側の最高圧を制御するようにしている。なお、このリリーフ弁20の設定圧を可変にすることによって、当該装置を、許容トルクが異なるいろいろな発電機に対応させることができる。さらにまた、上記供給流路12には、補給流路21を接続し、供給流路12側における流量不足を、タンクTから補うようにしている。なお、図中符号22は、補給流路21に設けたチェック弁で、タンクTから供給流路12への流れのみを許容するものである。
【0020】
また、上記コントローラCには、バッテリーUの蓄電状況を検出する蓄電センサー23および油圧モータMや発電機Gが故障して正常に機能しなくなった場合等にフェイル信号を発信するフェイルセーフセンサー24が接続されている。そして、コントローラCは、充電状態において蓄電センサー23からフル充電信号を受信したとき、あるいはフェイルセーフセンサー24からフェイル信号を受信したとき、上記パイロット圧制御弁17のソレノイド17aを非励磁状態にする。このようにソレノイド17aが非励磁状態にあれば、絞り制御弁6が自由流れ位置に保たれ、切換弁Sがノーマル位置S1に保たれるので、油圧モータMは停止する。
【0021】
次に、この実施形態の作用を説明する。
今、切換制御弁2を図示の中立位置に保った状態から、パイロット操作機構5の操作レバー5aを操作して、切換制御弁2を図面左側位置に切り換えると、シリンダ1のピストン側室1bにポンプPの吐出油が供給されるとともに、ロッド側室1aの作動油がタンクTに戻されて、シリンダ1は伸長する。このとき、上記操作レバー5aの操作信号がコントローラCに送信されるが、この操作信号を受信したコントローラCは、パイロット圧制御弁17のソレノイド17aを非励磁状態にする。ソレノイド17aが非励磁状態になれば、絞り制御弁6のパイロット室8及び切換弁Sのパイロット室16にパイロット圧が作用しない状態になるので、絞り制御弁6は図示の自由流れ位置6aに保たれ、切換弁Sはノーマル位置S1に保たれる。
【0022】
上記の状態からパイロット操作機構5の操作レバー5aを上記とは反対方向に切り換えて、切換制御弁2を図面右側位置に切り換えると、ポンプPの吐出油がロッド側室1aに供給されるが、ピストン側室1bからの戻り油は、以下のようにしてタンクTに戻されることとなる。
すなわち、上記のように切換制御弁2が図面右側位置に切り換わると、コントローラCは、操作レバー5aからその操作信号を受信するとともに、操作レバー5aの操作量、言い換えれば切換制御弁2の切換量に応じて、ソレノイド17aの励磁電流を制御する。なお、コントローラCが操作レバー5aから受信する上記の操作信号が、この発明でいうシリンダ1におけるピストン側室1bの戻り流体をタンクTに戻す信号である。
【0023】
このときソレノイド17aは、操作レバー5aの操作量が大きくなるにつれて、パイロット室8,16に作用するパイロット圧も大きくなるように制御される。したがって、切換制御弁2が図面右側位置に切り換わると、絞り制御弁6を絞り流れ位置6bに切り換え、切換弁Sを切り換え位置S2に切り換えるとともに、このときの絞り流れ位置6bにおける絞り開度、および切り換え位置S2における開度は、上記操作レバー5aの操作量に比例したものとなる。
【0024】
このように、絞り制御弁6が絞り流れ位置6bに切り換わると、ピストン側室1bからの戻り油のうち、切換制御弁2側への流体が絞り流れ位置6bにおける絞りによって絞られるとともに、残りの流体が接続通路11から供給流路12に導かれ、油圧モータMがその圧力で回転して発電機Gを回し、発電機能を発揮させる。このようにして発電された電力は、バッテリーUに蓄電される。
上記のように操作レバー5aを操作して切換制御弁2を図中右側位置に切り換えたとき、言い換えれば、ピストン側室1bをタンクTに連通して、シリンダ1を収縮させるとき、ピストン側室1bからの戻り油を利用して発電機Gが発電する。つまり、シリンダ1に作用している負荷によって発生する慣性エネルギーあるいは位置エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0025】
なお、上記のように絞り制御弁6の絞り流れ位置6bにおける絞り開度、および切換弁Sの切り換え位置S2における開度が、上記操作レバー5aの操作量に比例したものになっている。そして、上記絞り制御弁6の絞りを介してタンクTに流れる流量Qtと、上記切換弁Sを通過して油圧モータMに供給される流量Qmとの合計流量が、パイロット操作機構5の操作レバー5aの操作量に比例した流量、すなわちシリンダ1の戻り制御に必要とされる流量Qcに等しくなる。したがって、発電機Gを設けた場合と、それを設けなかった場合とで、シリンダ1に対するオペレータの操作感がほとんど違わなくなるといった効果が期待できる。
【0026】
上記のようにしてバッテリーUに電力が蓄えられた結果、バッテリーUがフル充電状態になると、蓄電センサー23がコントローラCにフル充電信号を発信する。コントローラCはフル充電信号を受信すると、ソレノイド17aを非励磁状態にして、絞り制御弁6を自由流れ位置6aに切り換えるとともに、切換弁Sをノーマル位置S1に切り換える。
したがって、接続通路11と供給流路12とが遮断されて発電機能が中断されるとともに、ピストン側室1bからの戻り油は、全量絞り制御弁6及び切換制御弁2を介してタンクTに戻される。つまり、この場合には、ピストン側室1bからの戻り流量は、操作レバー5aの操作量に比例した切換制御弁2の開度に応じて制御されることになる。
【0027】
また、バッテリーUがフル充電状態にない場合であっても、油圧モータMや発電機Gに異常が生じた場合には、フェイルセーフセンサー24がフェイル信号を発信するとともに、フェイル信号を受信したコントローラCが、上記と同様にパイロット圧の供給を遮断するようにソレノイド17aを非励磁状態にする。したがって、油圧モータMや発電機Gに異常を生じた場合にも、発電機能が中断されるとともに、ピストン側室1bからの戻り油の全量が、自由流れ位置6aに保たれた絞り制御弁6及び切換制御弁2を介してタンクTに戻されることとなる。この場合にも、ピストン側室1bからの戻り流量は、操作レバー5aの操作量に比例した切換制御弁2の開度に応じて制御されることになる。
なお、上記のようにフル充電信号やフェイル信号を受信していない場合であっても、パイロット操作機構5からコントローラCに発電中断信号を入力すれば、ソレノイド17aを非励磁状態にして、発電機能を中断することができる。
【0028】
また、シリンダ1を伸縮させている状態から切換制御弁2を図示の中立位置に戻すと、ポンプPからの圧油供給が遮断されてシリンダ1が停止するとともに、上記コントローラCがパイロット圧の供給を遮断するようにソレノイド17aを非励磁状態にする。したがって、絞り制御弁6が自由流れ位置6aに切り換わるとともに、切換弁Sがノーマル位置S1に切り換わるので、ピストン側室1bの戻り油はタンクTから遮断されて、シリンダ1を所定の位置に保持することができる。
【0029】
このように、この実施形態によれば、フル充電に達したときあるいは故障等が発生したときにも、シリンダ1の作動速度に影響を及ぼしたり、作業効率を落としたりしない。
なお、切換弁Sが、上記ノーマル位置S1に切り換われば、油圧モータMへの戻り油の供給が断たれるので、油圧モータMは停止しようとするが、油圧モータMおよび発電機Gの慣性エネルギーによって、そのエネルギーが吸収されるまで回転し続ける。このように油圧モータMが慣性エネルギーで回転し続けると、当該油圧モータMは、実質的にポンプ作用をする。したがって、供給流路12側から作動油を吸い込んで、戻り流路14側に作動油を吐出するが、上記したように、切換弁Sの供給ポート9a,9bが閉じられるので、油圧モータMは、供給流路12から十分に作動油を吸い込むことができない。
【0030】
しかし、このときには、油圧モータMから戻り流路14側に吐出された作動油は、短絡通路18を介して、圧力が低くなっている供給流路12側に戻される。しかも、補給流路21からも、タンクTの作動油が補給されるので、油圧モータMの吸い込み側において負圧が発生してキャビテーションが発生するという問題は解消されることになる。
【0031】
また、例えば、シリンダ1を伸長させたりあるいは収縮させたりする動作を、短時間で繰り返すことがあるが、このような動作を短時間で繰り返すと、切換弁Sも実質的にオンオフ動作を繰り返すことになる。ところが、慣性エネルギーの大きな発電機Gと連結した油圧モータMは、短時間で停止と駆動を繰り返すことができない。
しかし、この実施形態では、補給流路21から作動油を補給するとともに、発電機Gの慣性エネルギーを吸収するので、切換弁Sが、短時間でオンオフを繰り返した場合に、油圧モータMも、短時間で停止と駆動を繰り返すことができる。また、このときには、供給流路12側に負圧も発生せず、当然のこととしてキャビテーションも発生しない。
しかも、切換弁Sが、図示のノーマル位置S1に急に切り換わったとしても、戻りポート10a,10bは、絞り開度を維持しているので、油圧モータMにショックが発生することもない。
【0032】
なお、発電が継続して、バッテリーの充電量が多くなれば、上記したように油圧モータMの負荷が軽くなるが、それにともなって、油圧モータMを経由してタンクTに戻される単位時間当たりの流量が多くなる。そこで、コントローラCが、蓄電センサー23からの充電信号に応じてパイロット圧制御弁17を制御し、切換弁Sの切り換え位置S2における開度を徐々に絞るとともに、絞り制御弁6の絞り流れ位置6bにおける絞り機能を徐々に解除するようにしてもよい。このようにすれば、油圧モータMの負荷が軽くなったとしても、シリンダ1の下降速度を常に、操作レバー5aの操作量に比例したものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この実施形態の回路図である。
【符号の説明】
【0034】
1 アクチュエータであるシリンダ
2 切換制御弁
3,4 通路
6 絞り制御弁
6a 自由流れ位置
6b 絞り流れ位置
17 パイロット圧制御弁
23 蓄電センサー
24 フェイルセーフセンサー
C コントローラ
G 発電機
M 油圧モータ
P ポンプ
S 切換弁
S1 ノーマル位置
S2 切り換え位置
T タンク
U バッテリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータを制御する切換制御弁を設け、この切換制御弁をいずれか一方に切り換えることによってポンプからの圧力流体をアクチュエータの一方の側に供給するとともに、アクチュエータの他方の側からの戻り流体をタンクに導く構成にする一方、切換制御弁をいずれか他方に切り換えることによってポンプからの圧力流体をアクチュエータの他方の側に供給するとともに、アクチュエータの一方の側からの戻り流体をタンクに導く構成にし、この切換制御弁の切り換え制御に応じて、上記アクチュエータに慣性エネルギーや位置エネルギーが作用したときに戻り側となる通路に絞りを設け、この絞りによって切換制御弁への流体を制限するとともに、残りの流体を発電機に連結した油圧モータに供給して、上記慣性エネルギーあるいは位置エネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギー変換装置において、上記アクチュエータに慣性エネルギーや位置エネルギーが作用したときに戻り側となる通路に設け、自由流れ位置と絞り流れ位置とに切り換え可能なパイロットバルブからなる絞り制御弁と、この絞り制御弁に作用させるパイロット圧を制御するパイロット圧制御弁と、このパイロット圧制御弁を制御するコントローラとを備え、このコントローラには、発電機で発電した電力を蓄電するバッテリーの蓄電状況を検出する蓄電センサーあるいは上記油圧モータや発電機の作動状況を検出するフェイルセーフセンサーの少なくともいずれか一方を接続するとともに、上記アクチュエータに慣性エネルギーや位置エネルギーが作用したときに戻り側となる通路を介してポンプからの圧力流体をアクチュエータに供給する信号あるいは蓄電センサーからのフル充電信号、フェイルセーフセンサーからのフェイル信号のいずれかがコントローラに入力されたとき、上記コントローラは、上記パイロット圧制御弁を制御して上記絞り制御弁を自由流れ位置に保ち、上記アクチュエータに慣性エネルギーや位置エネルギーが作用したときに戻り側となる通路を介してアクチュエータの戻り流体をタンクに戻す信号がコントローラに入力したとき、コントローラはパイロット圧制御弁を制御して上記絞り制御弁を絞り流れ位置に保つ構成にしたエネルギー変換装置。
【請求項2】
上記戻り側となる通路と上記油圧モータとを遮断するノーマル位置と、上記戻り側となる通路と油圧モータとを連通する切り換え位置との少なくとも2位置に切り換え可能であって、上記パイロット圧制御弁によって制御される切換弁を設け、上記コントローラは上記パイロット圧制御弁を制御して、上記絞り制御弁を自由流れ位置に保つとき、上記切換弁をノーマル位置に保つ一方、上記絞り制御弁を絞り流れ位置に保つとき、上記切換弁を切り換え位置に保つ構成にした請求項1記載のエネルギー変換装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−239894(P2007−239894A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63429(P2006−63429)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】