エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計
【課題】放射線、特に8keV〜1500keVの範囲の光子に対してエネルギー依存度が小さいレスポンスとなるようにして、検出感度を良好にしたエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計を提供する。
【解決手段】シンチレーション検出器10の出力特性を入射窓で補正し、さらに演算処理部16がエネルギーデータのエネルギーに対応する荷重係数データを荷重係数メモリ15から読み出し、これを測定開始からの積算値に加算して線量データとして出力することでエネルギーレスポンスを平坦化したエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計1とした。
【解決手段】シンチレーション検出器10の出力特性を入射窓で補正し、さらに演算処理部16がエネルギーデータのエネルギーに対応する荷重係数データを荷重係数メモリ15から読み出し、これを測定開始からの積算値に加算して線量データとして出力することでエネルギーレスポンスを平坦化したエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計1とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線、特に8keV〜1500keVの範囲の光子(例えば、8keV〜300keVのX(γ)線、50keV〜1500keVのγ(X)線)を検出する線量計または線量率計(以下、線量計と線量率計とを併せて単に線量計という)であるエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計に関する。
【背景技術】
【0002】
低エネルギーのX線やγ線(以下、低エネルギー光子という)の放射線測定装置に係る従来技術として、例えば、特許文献1(特開2004−108796号公報;発明の名称「放射線測定装置」)がある。この放射線測定装置は、DBM方式により、NaI(Tl)シンチレーション検出された信号に対して、波高弁別器の弁別閾値を所定パターンに従って時間的に変化させることにより、検出パルス信号が後段の計数器に入力される確率をその波高に応じて調整することで、エネルギー別の係数を乗じて補正する、というものである。
従来技術の低エネルギー光子を測定対象とする線量計はこのようなものである。
【0003】
【特許文献1】特開2004−108796号公報(段落番号0020,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は低エネルギー光子の検出に適した1cm線量当量計用シンチレーション検出器を発明し、先に特許出願(特願2006−73654号。以下、先行出願という。)をするに至っている。線量計に係るものではないが、本願発明の理解を深めるため、この1cm線量当量計用シンチレーション検出器の発明の背景について説明する。
【0005】
先行出願で掲げた従来技術の1cm線量当量計では、60keV以下の低エネルギー光子の検出については配慮されていないものであり、8keV〜150keVの範囲の低エネルギー光子を検出する場合、特に60keV以下の低エネルギー光子を検出する場合、低エネルギー光子の検出精度が高くないという問題点があった。
【0006】
まず、電離箱式の1cm線量当量計では、エネルギー依存性を小さくするために、電離箱に使用される材質や電離する気体は制約を受け、材質はプラスチック、気体は窒素(空気)が大気圧で用いられることが多い。また、電離箱式の1cm線量当量計は携帯する測定器であり、電離箱検出器の大きさが制約をうける。これらのような事情のため、感度を高くすることが困難であった。加えて、エネルギー依存性は小さくおおむね良好であるものの、この場合における低エネルギー光子に対するレスポンスは、図14の電離箱式の1cm線量当量計の光子エネルギー−レスポンス特性の説明図からも明らかなように、特に25keV以下のエネルギー依存性については考慮されておらず、8keV〜25keVの低エネルギー光子に対するエネルギー依存性が良好でない(エネルギー依存性大きい)という問題があった。
ここにエネルギー依存性が小さいとは、入射する光子のエネルギーに対する検出器の1cm線量当量に対するレスポンスがエネルギーによらずに一定に近いことを指す。
【0007】
また、他の従来技術のNaI(Tl)シンチレーション検出器を用いた1cm線量当量計は、低域において検出感度が高いがエネルギー依存性が大きいものである。1cm線量当量計は、図15の光子エネルギー−換算係数曲線図で表されるように、低エネルギー領域では値を小さくする換算係数を乗じる必要(例えば、10keVでは約0.1倍する必要)があり、むしろ検出感度が高すぎることを示しているというものであった。この図15からも明らかなように、20keV(0.020MeV)以下では、換算係数が小さくなっており、換言すれば低エネルギー領域では検出感度を低くしたいという要請があった。この検出感度の点については、特許文献1でも同様の問題があった。
このように、8keV〜150keVという低エネルギー光子を検出する1cm線量当量計等の従来技術の放射線測定装置は、低域の検出感度が良好でないため、低域で検出精度に問題が生じるおそれがあった。
【0008】
そこで、先行出願では、低域でエネルギー依存性を小さくするようなシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計としている。続いて、このシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計について図を参照しつつ説明する。図16は、シンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計のブロック構成図、図17は、1cm線量当量計用シンチレーション検出器の断面構成図である。
【0009】
シンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計200は、図16で示すように、シンチレーション検出器210、高圧電源220、アンプ230、ディスクリミネータ240、制御・処理部(ワンチップマイコン)250、表示器260、低圧電源270、操作スイッチ280、弁別基準信号発生部290を備える。また、制御・処理部250は、さらに、CPU251、DAC(ディジタル・アナログ・コンバータ)252、ドライバ253、タイマ254、カウンタ255、記憶部(ROM・RAM)256、DI257を備える。
【0010】
シンチレーション検出器210は、図17で示すように、ケース211、入射窓212、隙間213、反射層214、シンチレータ215、光学窓216、光電子増倍管217、ブリーダ回路218を備える。
【0011】
まず、シンチレーション検出器210の機能等について図を参照しつつ説明する。図18は入射窓(アルミニウム板)の厚さ・材質別の光子エネルギー−透過率特性図、図19は計算による光子エネルギー−レスポンス特性である。
【0012】
シンチレーション検出器210は、シンチレータ215の前段でアルミニウム板による入射窓212を配置している。入射窓212の透過率は図18で示すように約30keVから低くなるに連れて小さくなっており、低エネルギー領域における検出感度の低下を図るものであった。また、入射窓212とシンチレータ215とを組合せることで全域でエネルギー依存性を小さくするものであった。
【0013】
図19の計算による光子エネルギー−レスポンス特性では、入射窓212の材質をアルミニウムとし、その厚さ4種類についての光子エネルギーに対するシンチレータ215のレスポンス(コンピュータシミュレーション等の計算結果)を示している。15keV以下でエネルギー依存性が改善され、特に入射窓212の厚さを0.2mm〜0.3mmとした場合、8〜100keVの範囲のエネルギー領域でのエネルギー依存性は小さくなって良好な特性が得られる。
【0014】
続いて、このシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計200の動作について説明する。シンチレーション検出器210は、光子を入射して、この光子のエネルギーに比例したパルス信号を出力する。アンプ230は、シンチレーション検出器210から出力されるパルス信号をディスクリミネータ240が動作するのに十分な波高まで増幅し、このパルス信号をディスクリミネータ240へ出力する。ディスクリミネータ240へは、弁別基準信号発生部290から、パルス信号に対して所定波高レベル以下を除去する基準となる弁別基準信号が出力されており、測定対象信号以外のノイズなど、不要な低エネルギーレベルのパルスを除去する。
【0015】
このような下限レベルであるが、先行出願発明では特に10〜150keVの範囲のエネルギー領域で精度良く検出できるようなシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計とすることを目的とするものであり、下限レベルの所定波高レベルとして10keVを選択することが考えられるが、単に所定波高レベルとして10keVを選択すると問題が生じていた。この点について説明する。図20は入射窓の材質をアルミニウム、厚さを0.1mmとした場合の下限レベル調整前後の光子エネルギー−レスポンス特性図である。図20でも示したように弁別基準信号の下限レベル(LLD)が10keVの場合の◇のプロットによるレスポンスは10keVで2.5というように大きく突出しており、レスポンスが平坦であるとは言い難い。そこで、ディスクリミネータ240の下限レベル(LLD)を少し増加させて(つまり検出可能なパルスを減らして)レスポンスを低下させる。例えば、ディスクリミネータ240の下限レベル(LLD)を11.6keVの場合の●のプロットによるレスポンスは10keVでほぼ1.0(光子エネルギーが40keVのレスポンスと同じ)となっており、レスポンスが平坦になっている。このようにレスポンスが1.0となることを目標にすると、下限レベルを11.6keVとすることで、目標が達成される。このような調整を施すことで図21でも明らかなように10keV〜150keVでエネルギー依存性が約40%に収まっており、実用上利用可能な程度にシンチレーション検出器210のエネルギーレスポンスを平坦化することができた。
ディスクリミネータ240は、このように調整して整形パルス信号を出力する。
【0016】
制御・処理部250は、ディスクリミネータ240から出力された整形パルス信号を計数してカウント値を1cm線量当量としてドライバ253を介して信号を出力し、表示器260がこの信号を受けて1cm線量当量を表示させる。このようなシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計200では、10〜150keVのエネルギー領域において、シンチレーション検出を採用することで検出感度を高くするとともに、エネルギーレスポンスが平坦なシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計200としたため、検出性能を高めることができる。先行出願のシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計200はこのようなものである。
【0017】
しかしながら、シンチレーション式光子線量計では、特に8keV〜1500keVの範囲の光子(例えば、8keV〜300keVのX(γ)線、50keV〜1500keVのγ(X)線)を検出する線量計にしたいという要請があった。上記したようなシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計200では10keV〜150keVでエネルギー依存性が約40%に収まっていたが、更にエネルギー依存性を小さくしたいという要請があった。また、先行出願発明のように最低8keVまで検出する必要があるため、下限レベルの調整では対応できないおそれがあった。
【0018】
さらに、アルミニウムによる入射窓212は、0.1〜0.4mmというように比較的薄く形成する必要があり、破損しやすいため、取り扱いに注意を要するという問題があった。例えば、図17で示す入射窓212に不用意な力が加わった場合には、入射窓212が破れたり、また、ケース211から外れたりして、以後の計測ができなくなるという問題もあった。
【0019】
そこで、本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、放射線、特に8keV〜1500keVの範囲の光子に対してエネルギー依存度が小さいレスポンスとなるようにして、検出感度を良好にしたエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような本発明の請求項1に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
入射した光子に応じてシンチレーション光を放出するシンチレータと、シンチレータから放出されるシンチレーション光の強度に比例したパルス信号を出力する光電子増倍管と、を備えるシンチレーション検出器と、
シンチレーション検出器から出力されるパルス信号を所定の波高レベルまで増幅するパルスアンプと、
パルス信号のうち所定波高レベル以上にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する弁別部と、
弁別部から出力される弁別信号に基づいて、パルスアンプから出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともに、そのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力するピークホールド部と、
ピークホールドタイミング信号を受けてピークホールド信号をアナログ−ディジタル変換してパルス信号のエネルギーデータを出力するA/D変換部と、
エネルギーに対応する荷重係数データを記憶する荷重係数メモリと、
A/D変換されたエネルギーデータのエネルギーに対応する荷重係数データを荷重係数メモリから読み出し、これを測定開始からの積算値である積算データに加算して積算結果を線量データとして出力する演算処理部と、
この線量データを線量として出力する表示部と、
を備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項2に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
入射した光子に応じてシンチレーション光を放出するシンチレータと、シンチレータから放出されるシンチレーション光の強度に比例したパルス信号を出力する光電子増倍管と、を備えるシンチレーション検出器と、
シンチレーション検出器から出力されるパルス信号を所定の波高レベルまで増幅するパルスアンプと、
パルス信号のうち所定波高レベル範囲にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する弁別部と、
弁別部から出力される弁別信号に基づいて、パルスアンプから出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともに、そのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力するピークホールド部と、
ピークホールドタイミング信号を受けてピークホールド信号をアナログ−ディジタル変換してパルス信号のエネルギーデータを出力するA/D変換部と、
エネルギーに対応する荷重係数データを記憶する荷重係数メモリと、
A/D変換されたエネルギーデータのエネルギーに対応する荷重係数データを荷重係数メモリから読み出し、この値を測定開始からの積算値である積算データに加算して積算結果を線量データとして出力する演算処理部と、
この線量データを線量として出力する表示部と、
を備えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項3に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
請求項2に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
所定波高レベルは、X線計測用の8keV〜300keV付近の範囲と、γ線計測用の50keV〜1500keV付近の範囲と、であって何れかを選択したものであることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項4に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
積算時間を決めるタイマ回路を備え、
前記演算処理部は、積算結果である線量データを積算時間で除して単位時間あたりの積算値である線量率データを算出し、
前記表示器は線量率データを線量率として表示することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項5に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記シンチレーション検出器は、プラスチック樹脂を材料とし、入射する光子の一部を吸収するとともに残りは通過させ、所定エネルギー以下の光子に対してエネルギーが小さくなるにつれて透過率が小さくなる特性を有する入射窓を備え、
入射窓の厚さを1mmから4mmまでの厚さとして、20keV以下におけるエネルギーに対する入射窓の透過率の特性を20keV以下の換算係数曲線に近似させることで、8keVから150keVまでの低エネルギー光子が入射したときのエネルギーレスポンスの平坦化を図ることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の請求項6に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
請求項5に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記入射窓は、前記ケースの一部に含められる一体の構造体とし、ケース自体が入射窓の機能を兼ね備えることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項7に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記シンチレーション検出器は、
プラスチック樹脂を材料とし、入射する光子の一部を吸収するとともに残りは通過させ、所定エネルギー以下の光子に対してエネルギーが小さくなるにつれて透過率が小さくなる特性を有する外側の入射窓と、
アルミニウムを材料とし、入射する光子の一部を吸収するとともに残りは通過させ、所定エネルギー以下の光子に対してエネルギーが小さくなるにつれて透過率が小さくなる特性を有する内側の入射窓と、
内側の入射窓の厚さが0.1mm〜0.4mmの厚さの範囲における特性の範囲内となるように、外側の入射窓の厚さと内側の入射窓の厚さとを調整して、20keV以下におけるエネルギーに対する外側と内側との入射窓の透過率の特性を20keV以下の換算係数曲線に近似させることで、8keVから150keVまでの低エネルギー光子が入射したときのエネルギーレスポンスの平坦化を図ることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の請求項8に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
請求項5〜請求項7の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記入射窓および前記ケースと、前記シンチレータと、の間に隙間を介在させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
以上のような本発明によれば、放射線、特に8keV〜1500keVの範囲の光子に対してエネルギー依存度が小さいレスポンスとなるようにして、検出感度を良好にしたエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
続いて、本形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計について図を参照しつつ説明する。図1は、本形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図、図2は本形態のシンチレーション検出器の断面構造図、図3は弁別タイミングを説明する説明図である。エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計1は、シンチレーション検出器10、パルスアンプ11、LLD12、ピークホールド部13、A/D変換部14、荷重係数メモリ15、演算処理部16、中央処理装置17、出力部18、操作スイッチ19、高圧電源20、DCアンプ21、ドライバ22、表示器23、低圧電源24を備える。
【0030】
シンチレーション検出器10は、図2に示すように、シンチレータ101(図1参照)、光電子増倍管102(図1参照)、温度計103(図1参照)、ケース104、入射窓105、反射層106、光学窓107、ブリーダ回路108、隙間109を備える。図17で示した従来技術では、シンチレータ215の前段でアルミニウムによる入射窓212を配置していたが、本発明ではアルミニウムによる入射窓ではなくプラスチック樹脂による入射窓105を配置した点が相違する。
【0031】
以下、各構成について説明する。
シンチレータ101は、詳しくは、微量のタリウム(Tl)を含むヨウ化ナトリウム(NaI)の結晶からなるNaI(Tl)シンチレータである。シンチレータは円柱状に形成されている。このシンチレータ101の動作・機能については後述する。
【0032】
光電子増倍管102は、シンチレータ101から放出されるシンチレーション光を光電面に入射させて、光電面でシンチレーション光を光電子に変換して、この光電子を電流に交換増倍し、強度に比例した電流によるパルス信号を出力する変換器である。詳しくは、光電面から出力される光電子をダイノードで加速して二次電子放出増倍により10万倍から100万倍程度に増倍し、最終的に光電子の強さに比例した電流によるパルス信号を出力する。
【0033】
温度計103(図1参照)は、シンチレータ101および光電子増倍管102の温度依存性を補償するために設置される。後述するがDCアンプ21に接続される。
ケース104は、前方に検出孔を、後方に信号線・電源線を引き出す孔(図示せず)を有する金属製の筒体であり、光や磁気を遮蔽する機能を有する。
【0034】
入射窓105は、不透明のプラスチック樹脂による円板である。具体的には、プラスチック樹脂としてポリアセタールコポリマー樹脂(ジュラコン)を採用している。厚さとしては1〜4mmである。なお、動作・機能については後述する。
【0035】
反射層106は、シンチレータ101の検出方向側に設けられる層であり、光子は通過させるが、シンチレーション光はシンチレータ101内から外へシンチレーション光が漏れないようにしている。
【0036】
光学窓107は、シンチレータ101と光電子増倍管102との間に介在して配置される。光学窓107は、シンチレータ101で発生するシンチレーション光を光電子増倍管102へ入射させるための透明な窓であり、シンチレータ101が外気に露されると潮解するのを防止できるようにケース104に接合している。光学窓107は光電子増倍管102の光入射窓および反対面のシンチレータ101とは平滑な面で透明なシリコングリースなどの接合材を介して確実に密着してシンチレーション光がシンチレータ101から光電子増倍管102へ確実に入射させるようにしている。
【0037】
ブリーダ回路108は、光電子増倍管102の各電極に対して適切な電圧を印加する。
隙間109は、ケース104および入射窓105と、シンチレータ101(詳しくはシンチレータ101表面の反射層106)と、の間に介在する空間である。この空間の存在により、入射窓105やケース104に衝撃があったとしても、衝撃がシンチレータ101に到達しないこととなり、シンチレータ101を保護する。なお、シンチレータ101の表面に入射窓105を接する構成を採用しても検出は可能であるが、シンチレータ101保護の観点から隙間109を設けることが望ましい。
【0038】
図1に戻るがパルスアンプ11は、シンチレーション検出器10から出力されるパルス信号をLLD12やピークホールド部13が動作するのに十分な波高まで増幅し、このパルス信号をLLD12およびピークホールド部13へ出力する。
LLD(Lower Limit Detector)12は、弁別部としての機能を果たすものであり、パルスアンプ11から入力されたパルス信号のうち所定波高レベル以上にあるパルス信号を測定対象として選択し、図3で示すような弁別信号として出力する。ここでは、所定波高レベルとして8keVが選択される。
【0039】
ピークホールド部13は、LLD12から出力される弁別信号に基づいて、図3で示すようなタイミングでパルスアンプ11から出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともにそのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力する。ピークホールドタイミング信号はバックグラウンドなどノイズ成分を除去した一定波高、一定幅に整形した信号である。
A/D変換部14は、ピークホールドタイミング信号を受信すると、図3で示すようなタイミングで最大波高が保持されているピークホールド信号をアナログ−ディジタル変換してエネルギーデータを出力する。A/D変換部14の機能上、ある範囲(例えば99.5keV〜100.5keV)のエネルギーのピークホールド信号を、特定のエネルギーデータ(例えば100keV)にするというものであり、エネルギーデータが採りうる値は、例えば256通りというように予め設定されている。
【0040】
荷重係数メモリ15は、エネルギーに対応する荷重係数データを記憶している。エネルギーデータが採りうる値に対して逐一値が設定されている(例えば256個の値が設定されている)。
演算処理部16は、A/D変換部14でA/D変換されたエネルギーデータのエネルギーに対応する荷重係数データを荷重係数メモリ15から読み出し、これを測定開始からの積算値である積算データに加算して積算結果を線量データとして出力する。演算処理部16は、特に高速処理可能なMPU等により構成される。
【0041】
中央処理装置17は、線量データに基づいて処理を行うが、この処理については後述する。中央処理装置17は、ワンチップマイコンであって内蔵するROMにはワンチップマイコンとして動作するためのプログラムが記憶されており、内蔵するRAMはプログラムが動作するための一時的な情報が保持される。
出力部18は、中央処理装置17に接続されており、例えば警報音を出力する。
操作スイッチ19は、中央処理装置17に接続されており、各種の操作を行うように中央処理装置17へ指令を与えるマン−マシンインタフェースであるが、例えばγ(X)線検出とX(γ)線検出とを選択する操作やLLD12における下限レベルの値を調整したりする。
【0042】
高圧電源20は、中央処理装置17とシンチレーション検出器10(のブリーダ回路108)との間に接続されている。高圧電源20は、シンチレーション検出器10内のブリーダ回路108に高電圧を供給する。電圧値は操作スイッチ19により操作されて所定電圧が決定され、さらに後述するが、温度補償系によって所定電圧が調整される。
DCアンプ21は、中央処理装置17と温度計103との間に接続されている。
ここに中央処理装置17、高圧電源20、ブリーダ回路108、DCアンプ21、温度計103は、温度補償系を形成している。温度計103からの温度信号をDCアンプ21が増幅して中央処理装置17が入力すると、中央処理装置17は温度に応じて高圧電源20からの出力電圧を変更させる。するとブリーダ回路108は光電子増倍管102の各電極に対して温度に応じた適切な電圧を印加する。
【0043】
ドライバ22は、中央処理装置17と表示器23との間に接続されている。
表示器23は、ドライバ22に接続されており、ドライバ22からの出力信号を受け、測定値や動作状態を表示するマン−マシン間のインタフェースとして機能する。表示内容については後述する。
ドライバ22、中央処理装置17、表示器23は表示系を構成する。先に中央処理装置17が線量データをドライバ22へ出力すると、ドライバ22は送信された線量データに基づいて表示器23を駆動する。表示器23は、線量データに基づいて線量を数値として表示したり、またはアナログメータとして指針表示したりする。
低圧電源24は、各部で必要な電力を供給する電源として機能する。
【0044】
続いて、エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計1の計測動作に焦点を当てて図を参照しつつ以下に説明する。図4はシンチレータの光子エネルギー−検出効率の特性図、図5はプラスチック樹脂による入射窓の厚さ・材質別の光子エネルギー−透過率特性図、図6はエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のエネルギー−レスポンス特性図である。
【0045】
シンチレーション検出器10では、光子が物質内を通過するときに閃光により発光する現象を、シンチレーションといい、発光する物質をシンチレータという。光子がシンチレータ101へ入射するとシンチレータ101からシンチレーション光を放出する。
【0046】
このシンチレータ101単体での検出効率について説明する。図4のシンチレータ(入射窓なし)101に入射する光子エネルギーに対する検出効率の例を示す。図4では、50keVまでの光子エネルギーに対しては検出効率は1.00と一定であるが、50keV以上の光子エネルギーに対しては、光子エネルギー値が大きくなるにつれて検出効率が低下する。このようにシンチレータ101では50keV以上でエネルギー依存性が大きい。
【0047】
このようなシンチレーション検出器10において、仮に入射窓105がないシンチレーション検出器からの出力とするならば、この出力に対しては、換算係数を用いて換算している。先の図15の国際放射線防護委員会(ICRP)1990年勧告に基いた光子エネルギー−換算係数曲線図によれば、光子エネルギーの50keV以上の領域では換算係数が大きくなっていき、エネルギー依存性を小さくするようにしている。ところが、光子エネルギーの20keV以下の領域では換算係数が小さくなっており、換言すれば、シンチレーション検出器10からの出力は、低域で感度が高いというものであり、低域の感度を予め低くする必要がある。そこでシンチレータ101の前側に低域の光子を吸収する入射窓105を配置している。
【0048】
入射窓105は、光子を入射させ、通過する光子の一部を吸収する機能を有する。入射窓105の材質は、先に述べたようにプラスチック樹脂による円板である。具体的には、プラスチック樹脂としてポリアセタールコポリマー樹脂(ジュラコン)を採用している。厚さとしては1〜4mmである。ここにプラスチック樹脂による入射窓105の厚さを変えた場合の光子エネルギー−透過率特性図(EGS4によるシミュレーション計算結果)を図5に示す。
【0049】
入射窓105の材質と厚さ(厚さは光子入射面から出射面までの厚さ)に依存して光子エネルギーに対して透過率が変化するというもので、図5は入射窓の材質をポリアセタールコポリマー樹脂(ジュラコン)とし、厚さを1mm、2mm、4mm、8mmのものを示している。これら特性からも明らかなように、光子エネルギーが低くなるにつれて光子エネルギーに対する透過率も低くなるという特性を有している。なおこの結果は、入射窓105と、従来技術のアルミニウムによる入射窓212とは、同様の傾向を示している。アルミニウム製の入射窓212の厚さに対するエネルギー依存性と比較すると、ポリアセタール樹脂の厚さをアルミニウムの10倍にするとほぼ同様のエネルギー依存性とすることができることが判る。アルミニウムによる入射窓102は、0.1〜0.4mmと同様の特性が好ましいため、プラスチック樹脂による入射窓105の厚さとしては1〜4mmが好ましい。
【0050】
つまり、光子源(図示せず)とシンチレータ101との間に適切な材質で適切な厚さの入射窓105を挿入すれば、50keV以下におけるエネルギーに対する入射窓105の透過率の特性を50keV以下の換算係数曲線に近似させることができ、50keVまでの低エネルギー光子が入射したときのエネルギーレスポンスを平坦化し、低エネルギー領域におけるエネルギー依存性を小さくできる。
【0051】
続いて計算によるシンチレーション検出器10のエネルギーレスポンスを検討する。例えば、従来技術ではアルミニウムの入射窓は、図18で示したように、特に0.2mm〜0.3mmのときに特に15keV以下でエネルギー依存性が改善される。図18で示すアルミニウムの入射窓が0.2mm〜0.3mmのときの特性とほぼ同じ特性は、図5で示すが入射窓105の厚さが1mmと4mmとの間にある特性であり、入射窓105の厚さが2mm〜3mmのときに一致すると推察される。プラスチック樹脂による入射窓105は、1mm〜4mmのときに15keV以下でエネルギー依存性が改善され、8〜150keVの範囲のエネルギー領域でのエネルギー依存性が改善される。以上より、例えば8keV以上を測定する場合、入射窓の材質および厚さは1mm〜4mmが好適である。
【0052】
このように本発明によるシンチレーション検出器では、特に厚さ1mm〜4mmのプラスチック樹脂の入射窓105を採用すれば、8〜150keVの範囲のエネルギー領域でのエネルギー依存性の低下が見込め、従来技術と比較しても、特に低域の光子エネルギーに対してエネルギー依存性を少なくして検出精度を高めるというものであり、低エネルギー光子の検出に適用できる。
【0053】
このように入射窓により補償された検出信号を用いるため、荷重関数メモリにおける補正量を少なくする、つまり実際の検出信号に即した計測値としているので検出精度が向上したエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計としている。
また、従来技術のアルミニウム製の入射窓に代えて、光子に対する吸収が少なく機械的強度が強い不透明のプラスチック樹脂の入射窓を採用した。これにより、入射窓は外部光を遮光し、光子の吸収が少ない分厚みを厚くすることができ、かつ機械的強度が増した分入射窓の破損が確実に防止され、取り扱いが容易なエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計としている。
【0054】
さて、動作であるが、このシンチレーション検出器10は、光子を入射して、この光子のエネルギーに比例したパルス信号を出力する。パルスアンプ11は、シンチレーション検出器10から出力されるパルス信号をLLD12やピークホールド部13が動作するのに十分な波高まで増幅し、このパルス信号をLLD12およびピークホールド部13へ出力する。
【0055】
LLD12は、所定波高レベル(8keV)以上にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する。ピークホールド部13へは、LLD12から、パルス信号に対して所定波高レベル(8keV)以下を除去する基準となる弁別信号が出力されており、バックグラウンドノイズなど、不要な低エネルギーレベルのパルスを除去する。
【0056】
ピークホールド部13は、LLD12から出力される弁別信号が入力されたタイミングにおいて、パルスアンプ11から出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともにそのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力する。ピークホールドタイミング信号はバックグラウンドなどノイズ成分を除去した一定波高、一定幅に整形した信号である。
A/D変換部14は、ピークホールドタイミング信号を受信し、ピークホールド信号をアナログ−ディジタル変換してエネルギーデータを出力する。
【0057】
演算処理部16は、A/D変換部14でA/D変換されたエネルギーデータのエネルギーに対応する荷重係数データを荷重係数メモリ15から読み出し、これを測定開始からの過去の積算値である積算データに加算して新しい積算結果を線量データとして生成する。この線量データの生成が繰り返し行われる。線量データは中央処理装置17へ送られる。
ここで演算処理部16で、8keV〜300keV付近の範囲のエネルギーデータを選択すればX(γ)線計測用の用途となり、50keV〜1500keV付近の範囲のエネルギーデータを選択すればγ(X)線計測用の用途となる。
【0058】
中央処理装置17は、線量データをドライバ22へ出力すると、ドライバ22は送信された線量データに基づいて表示器23を駆動する。表示器23は、線量データに基づいて線量を数値として表示したり、またはアナログメータとして指針表示したりする。エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計1はこのようなものである。
【0059】
以上説明したエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計によれば、入射窓によりレスポンスを平坦化したシンチレーション検出器からの出力を用い、さらに荷重係数により補正したため、図6で示すように、8keV〜300keV付近のエネルギーレスポンスを略0.75〜1.25つまり±25%まで大幅に改善するものである。
これは先行出願の低エネルギー光子の1cm線量当量計の100keV以下のエネルギー依存性は±40%と比べても大幅な改善を実現している。
【0060】
このようなエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計では、シンチレーション検出を採用することで検出感度を高くするとともに、8keV〜300keV付近のエネルギー依存性が高いエネルギー領域においてもエネルギーレスポンスが平坦になるように補償したため、8〜1500keVという光子全域で範囲のエネルギー領域で精度良く検出できるようなエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計とすることができる。
【0061】
続いて、他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計について図を参照しつつ説明する。図7は、他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図である。エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計2は、シンチレーション検出器10、パルスアンプ11、ピークホールド部13、A/D変換部14、荷重係数メモリ15、演算処理部16、中央処理装置17、出力部18、操作スイッチ19、高圧電源20、DCアンプ21、ドライバ22、表示器23、低圧電源24、ULD25、LLD26、論理回路27を備える。
先に図1を用いて説明した形態と比較すると、図1で示した形態ではLLD12を採用していたが、本形態では、LLD12による弁別部に代えてULD25、LLD26、論理回路27による弁別部を採用した点が相違している。他は同じであり同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。
【0062】
ULD(Upper Limit Detector)25は、弁別部としての機能を果たすものであり、パルスアンプ11から入力されたパルス信号のうち所定波高レベル以下にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する。
LLD(Lower Limit Detector)26は、弁別部としての機能を果たすものであり、パルスアンプ11から入力されたパルス信号のうち所定波高レベル以上にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する。
論理回路27は、ULD25とLLD26との両方で出力された弁別信号のANDを選択して新たに弁別信号として出力する。これにより、所定波高レベルの範囲にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力することとなる。
【0063】
本形態ではX線計測用とγ線計測用とで所定波高レベルを変更させており、X線計測用でULD25の所定波高レベルを300keVと、LLD26の所定波高レベルを8keVとして、8keV〜300keV付近の範囲で計測する。
また、γ線計測用でULD25の所定波高レベルを1500keVと、LLD26の所定波高レベルを50keVとして、50keV〜1500keV付近の範囲で計測する。
X(γ)線計測をするかγ(X)線計測をするかは、例えば、図示しないが中央処理装置17にULD25とLLD26とを接続し、操作スイッチ19を操作することでULD25とLLD26が所定波高レベルを選択できるようにすれば良い。
【0064】
ピークホールド部13は、論理回路27から出力される弁別信号に基づいて、パルスアンプ11から出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともにそのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力する。ピークホールドタイミング信号はバックグラウンドなどノイズ成分を除去した一定波高、一定幅に整形した信号である。
以下の動作は先に図1を用いて説明した形態と同じである。
【0065】
本形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計2は、上記したような効果に加え、計測範囲を限定することで下限を下回るデータや上限を上回るデータを扱う必要がなくなって演算処理部16での演算を少なくすることができるという利点も見込める。
【0066】
続いて、他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計について図を参照しつつ説明する。図8は、他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図である。エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計3は、シンチレーション検出器10、パルスアンプ11、LLD12、ピークホールド部13、A/D変換部14、荷重係数メモリ15、演算処理部16、中央処理装置17、出力部18、操作スイッチ19、高圧電源20、DCアンプ21、ドライバ22、表示器23、低圧電源24、タイマ回路28を備える。
先に図1を用いて説明した形態と比較すると、図1で示した形態ではタイマ回路28はないが、本形態では、タイマ回路28を採用した点が相違している。他は同じであり同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。
【0067】
タイマ回路28は、積算時間を決める機能を有している。
演算処理部16は、積算時間の間にわたり積算された結果である線量データと積算時間を用いて単位時間あたりの積算値である線量率を表す線量率データを算出し、中央処理装置17へ線量率データを出力する。
中央処理装置17は、線量率データをドライバ22へ出力すると、ドライバ22は送信された線量率データに基づいて表示器23を駆動する。表示器23は、線量率データに基づいて線量率を数値として表示したり、またはアナログメータとして指針表示したりする。エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計3はこのようなものである。
【0068】
本形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計3は、上記したような効果に加え、線量率を計測できるという利点がある。
【0069】
続いて、他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計について図を参照しつつ説明する。図8は、他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図である。エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計4は、シンチレーション検出器10、パルスアンプ11、ピークホールド部13、A/D変換部14、荷重係数メモリ15、演算処理部16、中央処理装置17、出力部18、操作スイッチ19、高圧電源20、DCアンプ21、ドライバ22、表示器23、低圧電源24、ULD25、LLD26、論理回路27、タイマ回路28を備える。
先に図7を用いて説明した形態と比較すると、図7で示した形態ではタイマ回路28はないが、本形態では、タイマ回路28を採用した点が相違している。他は同じであり同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。
【0070】
ULD(Upper Limit Detector)25は、弁別部としての機能を果たすものであり、パルスアンプ11から入力されたパルス信号のうち所定波高レベル以下にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する。
LLD(Lower Limit Detector)26は、弁別部としての機能を果たすものであり、パルスアンプ11から入力されたパルス信号のうち所定波高レベル以上にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する。
論理回路27は、ULD25とLLD26との両方で出力された弁別信号のANDを選択して新たに弁別信号として出力する。これにより、所定波高レベルの範囲にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力することとなる。
ピークホールド部13は、論理回路27から出力される弁別信号に基づいて、パルスアンプ11から出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともにそのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力する。ピークホールドタイミング信号はバックグラウンドなどノイズ成分を除去した一定波高、一定幅に整形した信号である。以下は先の説明と同様にして線量データを得る。
【0071】
タイマ回路28は、積算時間を決める機能を有している。
演算処理部16は、積算時間の間にわたり積算された結果である線量データと積算時間を用いて単位時間あたりの積算値である線量率を表す線量率データを算出し、中央処理装置17へ線量率データを出力する。
中央処理装置17は、線量率データをドライバ22へ出力すると、ドライバ22は送信された線量率データに基づいて表示器23を駆動する。表示器23は、この線量率データに基づいて線量率を数値として表示したり、またはアナログメータとして指針表示したりする。
【0072】
本形態ではX線計測用とγ線計測用とで所定波高レベルを変更させており、X線計測用でULD25の所定波高レベルを300keVと、LLD26の所定波高レベルを8keVとして、8keV〜300keV付近の範囲で計測する。
また、γ線計測用でULD25の所定波高レベルを1500keVと、LLD26の所定波高レベルを50keVとして、50keV〜1500keV付近の範囲で計測する。
X(γ)線計測をするかγ(X)線計測をするかは、例えば、操作スイッチ19を操作することで選択できるようにすれば良い。
エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計4はこのようなものである。
【0073】
本形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計4は、上記したような効果に加え、線量率を計測できるという利点がある。また、演算処理部16での演算を少なくすることができるという利点も見込める。
【0074】
続いて他の形態について図を参照しつつ説明する。ここでは上記したエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計1,2,3,4において他のシンチレーション検出器を採用するものである。図10は他の形態のシンチレーション検出器の断面構造図である。シンチレーション検出器10’は、図10に示すように、シンチレータ101、光電子増倍管102、反射層106、光学窓107、ブリーダ回路108、隙間109、ケース110、ネジ部110a、Oリング110b、接着部110c、ケース111、入射窓111aを備える。図2で示した形態では、ケース104は金属製であり、また、入射窓105はプラスチック樹脂製であったが、本形態ではケース110は金属製、入射窓111aを含むケース111はプラスチック樹脂にし、両者をネジ部110aのネジで接合した点が相違する。そこでシンチレータ101、光電子増倍管102、反射層106、光学窓107、ブリーダ回路108は同じ構成であるものとして重複する説明を省略し、相違点のみ重点をおいて説明する。
【0075】
ケース110は、後方に信号線・電源線を引き出す孔(図示せず)を有する不透明の金属製の筒体である。
ケース111は、プラスチック樹脂による筒と天井の円板部を一体にした形であり上記のポリアセタールコポリマー樹脂(ジュラコン)であって、特に前方に入射窓111aを備えるものである。入射窓111aは、厚さが1〜4mmとなるように形成されている。
ケース110とケース111はネジ部110aで締結固定されると、Oリング110bによりケース110とケース111とは外界から封止される。なお、ケース111には光学窓107が接着部110cにより接着封止されている。
ここで入射窓111aの1〜4mmという厚さは、光子に対する吸収がアルミニウムで0.1〜0.4mmの入射窓相当となる厚みとしている。
【0076】
このようにシンチレータ101のケース111自体を、プラスチック樹脂とすることで、光子の入射方向が側面側となっても入射窓111aによる光子の吸収が正面と同じになる。この点について図を参照しつつ説明する。図11は、従来技術によるケースとプラスチック樹脂(ポリアセタールコポリマー樹脂)製のケースとのシンチレーション検出器の光子エネルギー10keVに対する方向依存性を説明する特性図である。図17の従来技術のアルミニウム製ケース211によるシンチレーション検出器210では基準方向からずれるに従い感度が低下するのに対し、図10の本形態のプラスチック樹脂ケースによるシンチレーション検出器10’の場合は、0〜90度まで±30%程度の差異で測定できることが判る。従って、光子の到来方向を厳密に意識しなくても高精度の測定ができることとなる。
【0077】
従来技術や先の形態で説明したように低エネルギー放射線の測定の入射方向は窓側からに限定されていたが、本形態によれば、シンチレータ101のケース111(入射窓111aを含む)自体を、不透明のプラスチック樹脂として全体に入射窓としての機能を持たせたため、従来技術や図1で説明した形態のケースの機能であるシンチレータへの外部光の遮光という動作環境を確保しつつ、感度のエネルギー依存性の方向依存性を小さくするように改善して高精度の線量や線量率を測定し、さらに構造の簡単化、機械的強度の強化、取り扱いの容易化をともに実現したシンチレーション検出器を含むエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計を提供することができる。
【0078】
続いて他の形態について図を参照しつつ説明する。図12は他の形態のシンチレーション検出器の断面構造図である。1cm線量当量計用シンチレーション検出器10”は、図12に示すように、シンチレータ101、光電子増倍管102、ケース104、反射層106、光学窓107、ブリーダ回路108、隙間109、内側入射窓(アルミニウム板)112、外側入射窓(プラスチック樹脂板)113を備える。図17で示した従来技術では、シンチレータ215の前段でアルミニウム板による入射窓212を配置していたが、本発明ではアルミニウム板による内側入射窓112に加えてさらにプラスチック樹脂板による外側入射窓113を配置した点が相違する。そこでシンチレータ101、反射層106、光学窓107、光電子増倍管102、ブリーダ回路108は同じ構成であるものとして重複する説明を省略し、相違点のみ重点をおいて説明する。
【0079】
ケース104は、前方に検出孔を、後方に信号線・電源線を引き出す孔(図示せず)を有する金属製の筒体であり、光や磁気を遮蔽する機能を有する。
内側入射窓112は、アルミニウムによる円板である。厚さとしては0.1〜0.4mmである。
外側入射窓113は、不透明のプラスチック樹脂による円板である。具体的には、プラスチック樹脂としてポリアセタールコポリマー樹脂(ジュラコン)を採用している。厚さとしては1〜4mmである。
内側入射窓112と外側入射窓113との厚さは、光子に対する吸収がアルミニウムで0.1〜0.4mm相当となるように選択された厚みを採用する。
【0080】
図13は内側入射窓・外側入射窓の組合せ別の光子エネルギー−透過率特性図である。二重構造となる内外の入射窓のうち外側入射窓113は材質がポリアセタールコポリマー樹脂、厚さが1mmであり、また、内側入射窓112は材質がアルミニウム、厚さが0.1mmであるエネルギー依存性(EGS4によるシミュレーション計算結果)を示す。ここに比較のため、図17で示した従来技術によるアルミニウム製の入射窓212の1cm線量当量計用シンチレーション検出器100のエネルギー依存性として厚さ0.1mmと厚さ0.2mmの場合を示す。
【0081】
図13で示すように、厚さ0.1mmの入射窓にプラスチック製で厚さ1mmの入射窓を追加することで、厚さ0.2mmの入射窓に相当するエネルギー依存性とすることができる。簡易的にはアルミニウムの厚さ0.1mmのエネルギー依存性とプラスチック樹脂の厚さ1mmのエネルギー依存性とが一致している。アルミニウムの厚さ0.3mmのエネルギー依存性に一致させるならば、アルミニウムの厚さ0.1mmの入射窓にプラスチック製で厚さ2mmの入射窓を追加したり、または、アルミニウムの厚さ0.2mmの入射窓にプラスチック製で厚さ1mmの入射窓を追加することで、厚さ0.3mmの入射窓に相当するエネルギー依存性とすることができる。このように外側入射窓113と内側入射窓112との組合せによるエネルギー依存性を従来技術のアルミニウム製の入射窓212のエネルギー依存性とほぼ同じにすることができる。
一般化すれば内側入射窓112のアルミニウムの入射窓の厚さをamm、外側入射窓113のプラスチック樹脂の厚さをbmmとした場合に、0.1≦a+0.1b≦0.4(ただし0<a,0<b)を満たすものである。
【0082】
このように入射窓を内外で二重にし、外側を低エネルギー光子でも吸収が小さく機械的強度が高いプラスチック樹脂板による外側入射窓を、また、内側をアルミニウム板による内側入射窓を配置し、さらに内側のアルミニウムと外側のプラスチック樹脂との合計の光子に対する吸収が、アルミニウムで0.1〜0.4mm相当の吸収となる厚みとしている。これは従来技術のシンチレーション検出器210に加え、その外側に強度の強いプラスチック樹脂による保護ケースとなる外側入射窓を追加して破損しにくくしたものといえる。このように簡単な追加構成により機械的強度を高めて、目的とするエネルギー依存性を確保しながら取り扱いが容易なシンチレーション検出器を有するエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計を提供することができるようになる。
なお、図1,図7,図8,図9で示したエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計1,2,3,4のシンチレーション検出器10に代えて、図17で示したシンチレーション検出器210を搭載しても良い。この場合、アルミニウムの入射窓に機械的な力が加わりにくくするような配慮をすることで可能となる。
【0083】
このように本発明のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計では、安価かつ強度が高くなるような構成を採用しつつ、さらに、8keV〜1500keVの範囲のエネルギー領域の光子に対してエネルギー依存度が小さいレスポンスとなるように検出感度を向上させて、使い勝手が良好なエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計を提供することができる。
【0084】
以上本発明のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計について説明した。本発明のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計では、校正がされて、20keV以下におけるエネルギーに対する入射窓の透過率の特性を20keV以下の換算係数曲線に近似させることで荷重係数の値を小さくしつつ、10keVから1500keVまでの光子が入射したときのエネルギーレスポンスの平坦化を図る。したがって、このようなエネルギー特性を有するエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は線量や線量率を精度良く測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明を実施するための最良の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図である。
【図2】本発明を実施するための最良の形態のシンチレーション検出器の断面構造図である。
【図3】弁別タイミングを説明する説明図である。
【図4】シンチレータの光子エネルギー−検出効率の特性図である。
【図5】プラスチック樹脂による入射窓の厚さ・材質別の光子エネルギー−透過率特性図である。
【図6】エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のエネルギー−レスポンス特性図である。
【図7】他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図である。
【図8】他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図である。
【図9】他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図である。
【図10】他の形態のシンチレーション検出器の断面構造図である。
【図11】従来技術によるケースとプラスチック樹脂(ポリアセタールコポリマー樹脂)製のケースとのシンチレーション検出器の光子エネルギー10keVに対する方向依存性を説明する特性図である。
【図12】他の形態のシンチレーション検出器の断面構造図である。
【図13】内側入射窓・外側入射窓の組合せ別の光子エネルギー−透過率特性図である。
【図14】電離箱式の1cm線量当量計の光子エネルギー−レスポンス特性の説明図である。
【図15】光子エネルギー−換算係数曲線図である。
【図16】シンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計のブロック構成図である。
【図17】1cm線量当量計用シンチレーション検出器の断面構成図である。
【図18】入射窓(アルミニウム板)の厚さ・材質別の光子エネルギー−透過率特性図である。
【図19】計算による光子エネルギー−レスポンス特性である。
【図20】下限レベル調整前後の光子エネルギー−レスポンス特性図である。
【図21】下限レベル調整およびDBM調整を施した場合の光子エネルギー−レスポンス特性図である。
【符号の説明】
【0086】
1,2,3,4:エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計
10,10’,10”:シンチレーション検出器
101:シンチレータ
102:光電子増倍管
103:温度計
104:ケース
105:入射窓
106:反射層
107:光学窓
108:ブリーダ回路
109:隙間
110:ケース(金属ケース)
110a:ネジ部
110b:Oリング
110c:接着部
111:ケース(樹脂ケース)
111a:入射窓(プラスチック樹脂)
112:内側入射窓(アルミニウム板)
113:外側入射窓(プラスチック樹脂板)
11:パルスアンプ
12:LLD
13:ピークホールド部
14:A/D変換部
15:荷重係数メモリ
16:演算処理部
17:中央処理装置
18:出力部
19:操作スイッチ
20:高圧電源
21:DCアンプ
22:ドライバ
23:表示器
24:低圧電源
25:ULD
26:LLD
27:論理回路
28:タイマ回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線、特に8keV〜1500keVの範囲の光子(例えば、8keV〜300keVのX(γ)線、50keV〜1500keVのγ(X)線)を検出する線量計または線量率計(以下、線量計と線量率計とを併せて単に線量計という)であるエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計に関する。
【背景技術】
【0002】
低エネルギーのX線やγ線(以下、低エネルギー光子という)の放射線測定装置に係る従来技術として、例えば、特許文献1(特開2004−108796号公報;発明の名称「放射線測定装置」)がある。この放射線測定装置は、DBM方式により、NaI(Tl)シンチレーション検出された信号に対して、波高弁別器の弁別閾値を所定パターンに従って時間的に変化させることにより、検出パルス信号が後段の計数器に入力される確率をその波高に応じて調整することで、エネルギー別の係数を乗じて補正する、というものである。
従来技術の低エネルギー光子を測定対象とする線量計はこのようなものである。
【0003】
【特許文献1】特開2004−108796号公報(段落番号0020,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は低エネルギー光子の検出に適した1cm線量当量計用シンチレーション検出器を発明し、先に特許出願(特願2006−73654号。以下、先行出願という。)をするに至っている。線量計に係るものではないが、本願発明の理解を深めるため、この1cm線量当量計用シンチレーション検出器の発明の背景について説明する。
【0005】
先行出願で掲げた従来技術の1cm線量当量計では、60keV以下の低エネルギー光子の検出については配慮されていないものであり、8keV〜150keVの範囲の低エネルギー光子を検出する場合、特に60keV以下の低エネルギー光子を検出する場合、低エネルギー光子の検出精度が高くないという問題点があった。
【0006】
まず、電離箱式の1cm線量当量計では、エネルギー依存性を小さくするために、電離箱に使用される材質や電離する気体は制約を受け、材質はプラスチック、気体は窒素(空気)が大気圧で用いられることが多い。また、電離箱式の1cm線量当量計は携帯する測定器であり、電離箱検出器の大きさが制約をうける。これらのような事情のため、感度を高くすることが困難であった。加えて、エネルギー依存性は小さくおおむね良好であるものの、この場合における低エネルギー光子に対するレスポンスは、図14の電離箱式の1cm線量当量計の光子エネルギー−レスポンス特性の説明図からも明らかなように、特に25keV以下のエネルギー依存性については考慮されておらず、8keV〜25keVの低エネルギー光子に対するエネルギー依存性が良好でない(エネルギー依存性大きい)という問題があった。
ここにエネルギー依存性が小さいとは、入射する光子のエネルギーに対する検出器の1cm線量当量に対するレスポンスがエネルギーによらずに一定に近いことを指す。
【0007】
また、他の従来技術のNaI(Tl)シンチレーション検出器を用いた1cm線量当量計は、低域において検出感度が高いがエネルギー依存性が大きいものである。1cm線量当量計は、図15の光子エネルギー−換算係数曲線図で表されるように、低エネルギー領域では値を小さくする換算係数を乗じる必要(例えば、10keVでは約0.1倍する必要)があり、むしろ検出感度が高すぎることを示しているというものであった。この図15からも明らかなように、20keV(0.020MeV)以下では、換算係数が小さくなっており、換言すれば低エネルギー領域では検出感度を低くしたいという要請があった。この検出感度の点については、特許文献1でも同様の問題があった。
このように、8keV〜150keVという低エネルギー光子を検出する1cm線量当量計等の従来技術の放射線測定装置は、低域の検出感度が良好でないため、低域で検出精度に問題が生じるおそれがあった。
【0008】
そこで、先行出願では、低域でエネルギー依存性を小さくするようなシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計としている。続いて、このシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計について図を参照しつつ説明する。図16は、シンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計のブロック構成図、図17は、1cm線量当量計用シンチレーション検出器の断面構成図である。
【0009】
シンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計200は、図16で示すように、シンチレーション検出器210、高圧電源220、アンプ230、ディスクリミネータ240、制御・処理部(ワンチップマイコン)250、表示器260、低圧電源270、操作スイッチ280、弁別基準信号発生部290を備える。また、制御・処理部250は、さらに、CPU251、DAC(ディジタル・アナログ・コンバータ)252、ドライバ253、タイマ254、カウンタ255、記憶部(ROM・RAM)256、DI257を備える。
【0010】
シンチレーション検出器210は、図17で示すように、ケース211、入射窓212、隙間213、反射層214、シンチレータ215、光学窓216、光電子増倍管217、ブリーダ回路218を備える。
【0011】
まず、シンチレーション検出器210の機能等について図を参照しつつ説明する。図18は入射窓(アルミニウム板)の厚さ・材質別の光子エネルギー−透過率特性図、図19は計算による光子エネルギー−レスポンス特性である。
【0012】
シンチレーション検出器210は、シンチレータ215の前段でアルミニウム板による入射窓212を配置している。入射窓212の透過率は図18で示すように約30keVから低くなるに連れて小さくなっており、低エネルギー領域における検出感度の低下を図るものであった。また、入射窓212とシンチレータ215とを組合せることで全域でエネルギー依存性を小さくするものであった。
【0013】
図19の計算による光子エネルギー−レスポンス特性では、入射窓212の材質をアルミニウムとし、その厚さ4種類についての光子エネルギーに対するシンチレータ215のレスポンス(コンピュータシミュレーション等の計算結果)を示している。15keV以下でエネルギー依存性が改善され、特に入射窓212の厚さを0.2mm〜0.3mmとした場合、8〜100keVの範囲のエネルギー領域でのエネルギー依存性は小さくなって良好な特性が得られる。
【0014】
続いて、このシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計200の動作について説明する。シンチレーション検出器210は、光子を入射して、この光子のエネルギーに比例したパルス信号を出力する。アンプ230は、シンチレーション検出器210から出力されるパルス信号をディスクリミネータ240が動作するのに十分な波高まで増幅し、このパルス信号をディスクリミネータ240へ出力する。ディスクリミネータ240へは、弁別基準信号発生部290から、パルス信号に対して所定波高レベル以下を除去する基準となる弁別基準信号が出力されており、測定対象信号以外のノイズなど、不要な低エネルギーレベルのパルスを除去する。
【0015】
このような下限レベルであるが、先行出願発明では特に10〜150keVの範囲のエネルギー領域で精度良く検出できるようなシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計とすることを目的とするものであり、下限レベルの所定波高レベルとして10keVを選択することが考えられるが、単に所定波高レベルとして10keVを選択すると問題が生じていた。この点について説明する。図20は入射窓の材質をアルミニウム、厚さを0.1mmとした場合の下限レベル調整前後の光子エネルギー−レスポンス特性図である。図20でも示したように弁別基準信号の下限レベル(LLD)が10keVの場合の◇のプロットによるレスポンスは10keVで2.5というように大きく突出しており、レスポンスが平坦であるとは言い難い。そこで、ディスクリミネータ240の下限レベル(LLD)を少し増加させて(つまり検出可能なパルスを減らして)レスポンスを低下させる。例えば、ディスクリミネータ240の下限レベル(LLD)を11.6keVの場合の●のプロットによるレスポンスは10keVでほぼ1.0(光子エネルギーが40keVのレスポンスと同じ)となっており、レスポンスが平坦になっている。このようにレスポンスが1.0となることを目標にすると、下限レベルを11.6keVとすることで、目標が達成される。このような調整を施すことで図21でも明らかなように10keV〜150keVでエネルギー依存性が約40%に収まっており、実用上利用可能な程度にシンチレーション検出器210のエネルギーレスポンスを平坦化することができた。
ディスクリミネータ240は、このように調整して整形パルス信号を出力する。
【0016】
制御・処理部250は、ディスクリミネータ240から出力された整形パルス信号を計数してカウント値を1cm線量当量としてドライバ253を介して信号を出力し、表示器260がこの信号を受けて1cm線量当量を表示させる。このようなシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計200では、10〜150keVのエネルギー領域において、シンチレーション検出を採用することで検出感度を高くするとともに、エネルギーレスポンスが平坦なシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計200としたため、検出性能を高めることができる。先行出願のシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計200はこのようなものである。
【0017】
しかしながら、シンチレーション式光子線量計では、特に8keV〜1500keVの範囲の光子(例えば、8keV〜300keVのX(γ)線、50keV〜1500keVのγ(X)線)を検出する線量計にしたいという要請があった。上記したようなシンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計200では10keV〜150keVでエネルギー依存性が約40%に収まっていたが、更にエネルギー依存性を小さくしたいという要請があった。また、先行出願発明のように最低8keVまで検出する必要があるため、下限レベルの調整では対応できないおそれがあった。
【0018】
さらに、アルミニウムによる入射窓212は、0.1〜0.4mmというように比較的薄く形成する必要があり、破損しやすいため、取り扱いに注意を要するという問題があった。例えば、図17で示す入射窓212に不用意な力が加わった場合には、入射窓212が破れたり、また、ケース211から外れたりして、以後の計測ができなくなるという問題もあった。
【0019】
そこで、本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、放射線、特に8keV〜1500keVの範囲の光子に対してエネルギー依存度が小さいレスポンスとなるようにして、検出感度を良好にしたエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような本発明の請求項1に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
入射した光子に応じてシンチレーション光を放出するシンチレータと、シンチレータから放出されるシンチレーション光の強度に比例したパルス信号を出力する光電子増倍管と、を備えるシンチレーション検出器と、
シンチレーション検出器から出力されるパルス信号を所定の波高レベルまで増幅するパルスアンプと、
パルス信号のうち所定波高レベル以上にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する弁別部と、
弁別部から出力される弁別信号に基づいて、パルスアンプから出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともに、そのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力するピークホールド部と、
ピークホールドタイミング信号を受けてピークホールド信号をアナログ−ディジタル変換してパルス信号のエネルギーデータを出力するA/D変換部と、
エネルギーに対応する荷重係数データを記憶する荷重係数メモリと、
A/D変換されたエネルギーデータのエネルギーに対応する荷重係数データを荷重係数メモリから読み出し、これを測定開始からの積算値である積算データに加算して積算結果を線量データとして出力する演算処理部と、
この線量データを線量として出力する表示部と、
を備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項2に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
入射した光子に応じてシンチレーション光を放出するシンチレータと、シンチレータから放出されるシンチレーション光の強度に比例したパルス信号を出力する光電子増倍管と、を備えるシンチレーション検出器と、
シンチレーション検出器から出力されるパルス信号を所定の波高レベルまで増幅するパルスアンプと、
パルス信号のうち所定波高レベル範囲にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する弁別部と、
弁別部から出力される弁別信号に基づいて、パルスアンプから出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともに、そのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力するピークホールド部と、
ピークホールドタイミング信号を受けてピークホールド信号をアナログ−ディジタル変換してパルス信号のエネルギーデータを出力するA/D変換部と、
エネルギーに対応する荷重係数データを記憶する荷重係数メモリと、
A/D変換されたエネルギーデータのエネルギーに対応する荷重係数データを荷重係数メモリから読み出し、この値を測定開始からの積算値である積算データに加算して積算結果を線量データとして出力する演算処理部と、
この線量データを線量として出力する表示部と、
を備えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項3に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
請求項2に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
所定波高レベルは、X線計測用の8keV〜300keV付近の範囲と、γ線計測用の50keV〜1500keV付近の範囲と、であって何れかを選択したものであることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項4に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
積算時間を決めるタイマ回路を備え、
前記演算処理部は、積算結果である線量データを積算時間で除して単位時間あたりの積算値である線量率データを算出し、
前記表示器は線量率データを線量率として表示することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項5に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記シンチレーション検出器は、プラスチック樹脂を材料とし、入射する光子の一部を吸収するとともに残りは通過させ、所定エネルギー以下の光子に対してエネルギーが小さくなるにつれて透過率が小さくなる特性を有する入射窓を備え、
入射窓の厚さを1mmから4mmまでの厚さとして、20keV以下におけるエネルギーに対する入射窓の透過率の特性を20keV以下の換算係数曲線に近似させることで、8keVから150keVまでの低エネルギー光子が入射したときのエネルギーレスポンスの平坦化を図ることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の請求項6に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
請求項5に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記入射窓は、前記ケースの一部に含められる一体の構造体とし、ケース自体が入射窓の機能を兼ね備えることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の請求項7に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記シンチレーション検出器は、
プラスチック樹脂を材料とし、入射する光子の一部を吸収するとともに残りは通過させ、所定エネルギー以下の光子に対してエネルギーが小さくなるにつれて透過率が小さくなる特性を有する外側の入射窓と、
アルミニウムを材料とし、入射する光子の一部を吸収するとともに残りは通過させ、所定エネルギー以下の光子に対してエネルギーが小さくなるにつれて透過率が小さくなる特性を有する内側の入射窓と、
内側の入射窓の厚さが0.1mm〜0.4mmの厚さの範囲における特性の範囲内となるように、外側の入射窓の厚さと内側の入射窓の厚さとを調整して、20keV以下におけるエネルギーに対する外側と内側との入射窓の透過率の特性を20keV以下の換算係数曲線に近似させることで、8keVから150keVまでの低エネルギー光子が入射したときのエネルギーレスポンスの平坦化を図ることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の請求項8に係るエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は、
請求項5〜請求項7の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記入射窓および前記ケースと、前記シンチレータと、の間に隙間を介在させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
以上のような本発明によれば、放射線、特に8keV〜1500keVの範囲の光子に対してエネルギー依存度が小さいレスポンスとなるようにして、検出感度を良好にしたエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
続いて、本形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計について図を参照しつつ説明する。図1は、本形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図、図2は本形態のシンチレーション検出器の断面構造図、図3は弁別タイミングを説明する説明図である。エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計1は、シンチレーション検出器10、パルスアンプ11、LLD12、ピークホールド部13、A/D変換部14、荷重係数メモリ15、演算処理部16、中央処理装置17、出力部18、操作スイッチ19、高圧電源20、DCアンプ21、ドライバ22、表示器23、低圧電源24を備える。
【0030】
シンチレーション検出器10は、図2に示すように、シンチレータ101(図1参照)、光電子増倍管102(図1参照)、温度計103(図1参照)、ケース104、入射窓105、反射層106、光学窓107、ブリーダ回路108、隙間109を備える。図17で示した従来技術では、シンチレータ215の前段でアルミニウムによる入射窓212を配置していたが、本発明ではアルミニウムによる入射窓ではなくプラスチック樹脂による入射窓105を配置した点が相違する。
【0031】
以下、各構成について説明する。
シンチレータ101は、詳しくは、微量のタリウム(Tl)を含むヨウ化ナトリウム(NaI)の結晶からなるNaI(Tl)シンチレータである。シンチレータは円柱状に形成されている。このシンチレータ101の動作・機能については後述する。
【0032】
光電子増倍管102は、シンチレータ101から放出されるシンチレーション光を光電面に入射させて、光電面でシンチレーション光を光電子に変換して、この光電子を電流に交換増倍し、強度に比例した電流によるパルス信号を出力する変換器である。詳しくは、光電面から出力される光電子をダイノードで加速して二次電子放出増倍により10万倍から100万倍程度に増倍し、最終的に光電子の強さに比例した電流によるパルス信号を出力する。
【0033】
温度計103(図1参照)は、シンチレータ101および光電子増倍管102の温度依存性を補償するために設置される。後述するがDCアンプ21に接続される。
ケース104は、前方に検出孔を、後方に信号線・電源線を引き出す孔(図示せず)を有する金属製の筒体であり、光や磁気を遮蔽する機能を有する。
【0034】
入射窓105は、不透明のプラスチック樹脂による円板である。具体的には、プラスチック樹脂としてポリアセタールコポリマー樹脂(ジュラコン)を採用している。厚さとしては1〜4mmである。なお、動作・機能については後述する。
【0035】
反射層106は、シンチレータ101の検出方向側に設けられる層であり、光子は通過させるが、シンチレーション光はシンチレータ101内から外へシンチレーション光が漏れないようにしている。
【0036】
光学窓107は、シンチレータ101と光電子増倍管102との間に介在して配置される。光学窓107は、シンチレータ101で発生するシンチレーション光を光電子増倍管102へ入射させるための透明な窓であり、シンチレータ101が外気に露されると潮解するのを防止できるようにケース104に接合している。光学窓107は光電子増倍管102の光入射窓および反対面のシンチレータ101とは平滑な面で透明なシリコングリースなどの接合材を介して確実に密着してシンチレーション光がシンチレータ101から光電子増倍管102へ確実に入射させるようにしている。
【0037】
ブリーダ回路108は、光電子増倍管102の各電極に対して適切な電圧を印加する。
隙間109は、ケース104および入射窓105と、シンチレータ101(詳しくはシンチレータ101表面の反射層106)と、の間に介在する空間である。この空間の存在により、入射窓105やケース104に衝撃があったとしても、衝撃がシンチレータ101に到達しないこととなり、シンチレータ101を保護する。なお、シンチレータ101の表面に入射窓105を接する構成を採用しても検出は可能であるが、シンチレータ101保護の観点から隙間109を設けることが望ましい。
【0038】
図1に戻るがパルスアンプ11は、シンチレーション検出器10から出力されるパルス信号をLLD12やピークホールド部13が動作するのに十分な波高まで増幅し、このパルス信号をLLD12およびピークホールド部13へ出力する。
LLD(Lower Limit Detector)12は、弁別部としての機能を果たすものであり、パルスアンプ11から入力されたパルス信号のうち所定波高レベル以上にあるパルス信号を測定対象として選択し、図3で示すような弁別信号として出力する。ここでは、所定波高レベルとして8keVが選択される。
【0039】
ピークホールド部13は、LLD12から出力される弁別信号に基づいて、図3で示すようなタイミングでパルスアンプ11から出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともにそのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力する。ピークホールドタイミング信号はバックグラウンドなどノイズ成分を除去した一定波高、一定幅に整形した信号である。
A/D変換部14は、ピークホールドタイミング信号を受信すると、図3で示すようなタイミングで最大波高が保持されているピークホールド信号をアナログ−ディジタル変換してエネルギーデータを出力する。A/D変換部14の機能上、ある範囲(例えば99.5keV〜100.5keV)のエネルギーのピークホールド信号を、特定のエネルギーデータ(例えば100keV)にするというものであり、エネルギーデータが採りうる値は、例えば256通りというように予め設定されている。
【0040】
荷重係数メモリ15は、エネルギーに対応する荷重係数データを記憶している。エネルギーデータが採りうる値に対して逐一値が設定されている(例えば256個の値が設定されている)。
演算処理部16は、A/D変換部14でA/D変換されたエネルギーデータのエネルギーに対応する荷重係数データを荷重係数メモリ15から読み出し、これを測定開始からの積算値である積算データに加算して積算結果を線量データとして出力する。演算処理部16は、特に高速処理可能なMPU等により構成される。
【0041】
中央処理装置17は、線量データに基づいて処理を行うが、この処理については後述する。中央処理装置17は、ワンチップマイコンであって内蔵するROMにはワンチップマイコンとして動作するためのプログラムが記憶されており、内蔵するRAMはプログラムが動作するための一時的な情報が保持される。
出力部18は、中央処理装置17に接続されており、例えば警報音を出力する。
操作スイッチ19は、中央処理装置17に接続されており、各種の操作を行うように中央処理装置17へ指令を与えるマン−マシンインタフェースであるが、例えばγ(X)線検出とX(γ)線検出とを選択する操作やLLD12における下限レベルの値を調整したりする。
【0042】
高圧電源20は、中央処理装置17とシンチレーション検出器10(のブリーダ回路108)との間に接続されている。高圧電源20は、シンチレーション検出器10内のブリーダ回路108に高電圧を供給する。電圧値は操作スイッチ19により操作されて所定電圧が決定され、さらに後述するが、温度補償系によって所定電圧が調整される。
DCアンプ21は、中央処理装置17と温度計103との間に接続されている。
ここに中央処理装置17、高圧電源20、ブリーダ回路108、DCアンプ21、温度計103は、温度補償系を形成している。温度計103からの温度信号をDCアンプ21が増幅して中央処理装置17が入力すると、中央処理装置17は温度に応じて高圧電源20からの出力電圧を変更させる。するとブリーダ回路108は光電子増倍管102の各電極に対して温度に応じた適切な電圧を印加する。
【0043】
ドライバ22は、中央処理装置17と表示器23との間に接続されている。
表示器23は、ドライバ22に接続されており、ドライバ22からの出力信号を受け、測定値や動作状態を表示するマン−マシン間のインタフェースとして機能する。表示内容については後述する。
ドライバ22、中央処理装置17、表示器23は表示系を構成する。先に中央処理装置17が線量データをドライバ22へ出力すると、ドライバ22は送信された線量データに基づいて表示器23を駆動する。表示器23は、線量データに基づいて線量を数値として表示したり、またはアナログメータとして指針表示したりする。
低圧電源24は、各部で必要な電力を供給する電源として機能する。
【0044】
続いて、エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計1の計測動作に焦点を当てて図を参照しつつ以下に説明する。図4はシンチレータの光子エネルギー−検出効率の特性図、図5はプラスチック樹脂による入射窓の厚さ・材質別の光子エネルギー−透過率特性図、図6はエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のエネルギー−レスポンス特性図である。
【0045】
シンチレーション検出器10では、光子が物質内を通過するときに閃光により発光する現象を、シンチレーションといい、発光する物質をシンチレータという。光子がシンチレータ101へ入射するとシンチレータ101からシンチレーション光を放出する。
【0046】
このシンチレータ101単体での検出効率について説明する。図4のシンチレータ(入射窓なし)101に入射する光子エネルギーに対する検出効率の例を示す。図4では、50keVまでの光子エネルギーに対しては検出効率は1.00と一定であるが、50keV以上の光子エネルギーに対しては、光子エネルギー値が大きくなるにつれて検出効率が低下する。このようにシンチレータ101では50keV以上でエネルギー依存性が大きい。
【0047】
このようなシンチレーション検出器10において、仮に入射窓105がないシンチレーション検出器からの出力とするならば、この出力に対しては、換算係数を用いて換算している。先の図15の国際放射線防護委員会(ICRP)1990年勧告に基いた光子エネルギー−換算係数曲線図によれば、光子エネルギーの50keV以上の領域では換算係数が大きくなっていき、エネルギー依存性を小さくするようにしている。ところが、光子エネルギーの20keV以下の領域では換算係数が小さくなっており、換言すれば、シンチレーション検出器10からの出力は、低域で感度が高いというものであり、低域の感度を予め低くする必要がある。そこでシンチレータ101の前側に低域の光子を吸収する入射窓105を配置している。
【0048】
入射窓105は、光子を入射させ、通過する光子の一部を吸収する機能を有する。入射窓105の材質は、先に述べたようにプラスチック樹脂による円板である。具体的には、プラスチック樹脂としてポリアセタールコポリマー樹脂(ジュラコン)を採用している。厚さとしては1〜4mmである。ここにプラスチック樹脂による入射窓105の厚さを変えた場合の光子エネルギー−透過率特性図(EGS4によるシミュレーション計算結果)を図5に示す。
【0049】
入射窓105の材質と厚さ(厚さは光子入射面から出射面までの厚さ)に依存して光子エネルギーに対して透過率が変化するというもので、図5は入射窓の材質をポリアセタールコポリマー樹脂(ジュラコン)とし、厚さを1mm、2mm、4mm、8mmのものを示している。これら特性からも明らかなように、光子エネルギーが低くなるにつれて光子エネルギーに対する透過率も低くなるという特性を有している。なおこの結果は、入射窓105と、従来技術のアルミニウムによる入射窓212とは、同様の傾向を示している。アルミニウム製の入射窓212の厚さに対するエネルギー依存性と比較すると、ポリアセタール樹脂の厚さをアルミニウムの10倍にするとほぼ同様のエネルギー依存性とすることができることが判る。アルミニウムによる入射窓102は、0.1〜0.4mmと同様の特性が好ましいため、プラスチック樹脂による入射窓105の厚さとしては1〜4mmが好ましい。
【0050】
つまり、光子源(図示せず)とシンチレータ101との間に適切な材質で適切な厚さの入射窓105を挿入すれば、50keV以下におけるエネルギーに対する入射窓105の透過率の特性を50keV以下の換算係数曲線に近似させることができ、50keVまでの低エネルギー光子が入射したときのエネルギーレスポンスを平坦化し、低エネルギー領域におけるエネルギー依存性を小さくできる。
【0051】
続いて計算によるシンチレーション検出器10のエネルギーレスポンスを検討する。例えば、従来技術ではアルミニウムの入射窓は、図18で示したように、特に0.2mm〜0.3mmのときに特に15keV以下でエネルギー依存性が改善される。図18で示すアルミニウムの入射窓が0.2mm〜0.3mmのときの特性とほぼ同じ特性は、図5で示すが入射窓105の厚さが1mmと4mmとの間にある特性であり、入射窓105の厚さが2mm〜3mmのときに一致すると推察される。プラスチック樹脂による入射窓105は、1mm〜4mmのときに15keV以下でエネルギー依存性が改善され、8〜150keVの範囲のエネルギー領域でのエネルギー依存性が改善される。以上より、例えば8keV以上を測定する場合、入射窓の材質および厚さは1mm〜4mmが好適である。
【0052】
このように本発明によるシンチレーション検出器では、特に厚さ1mm〜4mmのプラスチック樹脂の入射窓105を採用すれば、8〜150keVの範囲のエネルギー領域でのエネルギー依存性の低下が見込め、従来技術と比較しても、特に低域の光子エネルギーに対してエネルギー依存性を少なくして検出精度を高めるというものであり、低エネルギー光子の検出に適用できる。
【0053】
このように入射窓により補償された検出信号を用いるため、荷重関数メモリにおける補正量を少なくする、つまり実際の検出信号に即した計測値としているので検出精度が向上したエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計としている。
また、従来技術のアルミニウム製の入射窓に代えて、光子に対する吸収が少なく機械的強度が強い不透明のプラスチック樹脂の入射窓を採用した。これにより、入射窓は外部光を遮光し、光子の吸収が少ない分厚みを厚くすることができ、かつ機械的強度が増した分入射窓の破損が確実に防止され、取り扱いが容易なエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計としている。
【0054】
さて、動作であるが、このシンチレーション検出器10は、光子を入射して、この光子のエネルギーに比例したパルス信号を出力する。パルスアンプ11は、シンチレーション検出器10から出力されるパルス信号をLLD12やピークホールド部13が動作するのに十分な波高まで増幅し、このパルス信号をLLD12およびピークホールド部13へ出力する。
【0055】
LLD12は、所定波高レベル(8keV)以上にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する。ピークホールド部13へは、LLD12から、パルス信号に対して所定波高レベル(8keV)以下を除去する基準となる弁別信号が出力されており、バックグラウンドノイズなど、不要な低エネルギーレベルのパルスを除去する。
【0056】
ピークホールド部13は、LLD12から出力される弁別信号が入力されたタイミングにおいて、パルスアンプ11から出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともにそのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力する。ピークホールドタイミング信号はバックグラウンドなどノイズ成分を除去した一定波高、一定幅に整形した信号である。
A/D変換部14は、ピークホールドタイミング信号を受信し、ピークホールド信号をアナログ−ディジタル変換してエネルギーデータを出力する。
【0057】
演算処理部16は、A/D変換部14でA/D変換されたエネルギーデータのエネルギーに対応する荷重係数データを荷重係数メモリ15から読み出し、これを測定開始からの過去の積算値である積算データに加算して新しい積算結果を線量データとして生成する。この線量データの生成が繰り返し行われる。線量データは中央処理装置17へ送られる。
ここで演算処理部16で、8keV〜300keV付近の範囲のエネルギーデータを選択すればX(γ)線計測用の用途となり、50keV〜1500keV付近の範囲のエネルギーデータを選択すればγ(X)線計測用の用途となる。
【0058】
中央処理装置17は、線量データをドライバ22へ出力すると、ドライバ22は送信された線量データに基づいて表示器23を駆動する。表示器23は、線量データに基づいて線量を数値として表示したり、またはアナログメータとして指針表示したりする。エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計1はこのようなものである。
【0059】
以上説明したエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計によれば、入射窓によりレスポンスを平坦化したシンチレーション検出器からの出力を用い、さらに荷重係数により補正したため、図6で示すように、8keV〜300keV付近のエネルギーレスポンスを略0.75〜1.25つまり±25%まで大幅に改善するものである。
これは先行出願の低エネルギー光子の1cm線量当量計の100keV以下のエネルギー依存性は±40%と比べても大幅な改善を実現している。
【0060】
このようなエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計では、シンチレーション検出を採用することで検出感度を高くするとともに、8keV〜300keV付近のエネルギー依存性が高いエネルギー領域においてもエネルギーレスポンスが平坦になるように補償したため、8〜1500keVという光子全域で範囲のエネルギー領域で精度良く検出できるようなエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計とすることができる。
【0061】
続いて、他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計について図を参照しつつ説明する。図7は、他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図である。エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計2は、シンチレーション検出器10、パルスアンプ11、ピークホールド部13、A/D変換部14、荷重係数メモリ15、演算処理部16、中央処理装置17、出力部18、操作スイッチ19、高圧電源20、DCアンプ21、ドライバ22、表示器23、低圧電源24、ULD25、LLD26、論理回路27を備える。
先に図1を用いて説明した形態と比較すると、図1で示した形態ではLLD12を採用していたが、本形態では、LLD12による弁別部に代えてULD25、LLD26、論理回路27による弁別部を採用した点が相違している。他は同じであり同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。
【0062】
ULD(Upper Limit Detector)25は、弁別部としての機能を果たすものであり、パルスアンプ11から入力されたパルス信号のうち所定波高レベル以下にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する。
LLD(Lower Limit Detector)26は、弁別部としての機能を果たすものであり、パルスアンプ11から入力されたパルス信号のうち所定波高レベル以上にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する。
論理回路27は、ULD25とLLD26との両方で出力された弁別信号のANDを選択して新たに弁別信号として出力する。これにより、所定波高レベルの範囲にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力することとなる。
【0063】
本形態ではX線計測用とγ線計測用とで所定波高レベルを変更させており、X線計測用でULD25の所定波高レベルを300keVと、LLD26の所定波高レベルを8keVとして、8keV〜300keV付近の範囲で計測する。
また、γ線計測用でULD25の所定波高レベルを1500keVと、LLD26の所定波高レベルを50keVとして、50keV〜1500keV付近の範囲で計測する。
X(γ)線計測をするかγ(X)線計測をするかは、例えば、図示しないが中央処理装置17にULD25とLLD26とを接続し、操作スイッチ19を操作することでULD25とLLD26が所定波高レベルを選択できるようにすれば良い。
【0064】
ピークホールド部13は、論理回路27から出力される弁別信号に基づいて、パルスアンプ11から出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともにそのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力する。ピークホールドタイミング信号はバックグラウンドなどノイズ成分を除去した一定波高、一定幅に整形した信号である。
以下の動作は先に図1を用いて説明した形態と同じである。
【0065】
本形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計2は、上記したような効果に加え、計測範囲を限定することで下限を下回るデータや上限を上回るデータを扱う必要がなくなって演算処理部16での演算を少なくすることができるという利点も見込める。
【0066】
続いて、他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計について図を参照しつつ説明する。図8は、他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図である。エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計3は、シンチレーション検出器10、パルスアンプ11、LLD12、ピークホールド部13、A/D変換部14、荷重係数メモリ15、演算処理部16、中央処理装置17、出力部18、操作スイッチ19、高圧電源20、DCアンプ21、ドライバ22、表示器23、低圧電源24、タイマ回路28を備える。
先に図1を用いて説明した形態と比較すると、図1で示した形態ではタイマ回路28はないが、本形態では、タイマ回路28を採用した点が相違している。他は同じであり同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。
【0067】
タイマ回路28は、積算時間を決める機能を有している。
演算処理部16は、積算時間の間にわたり積算された結果である線量データと積算時間を用いて単位時間あたりの積算値である線量率を表す線量率データを算出し、中央処理装置17へ線量率データを出力する。
中央処理装置17は、線量率データをドライバ22へ出力すると、ドライバ22は送信された線量率データに基づいて表示器23を駆動する。表示器23は、線量率データに基づいて線量率を数値として表示したり、またはアナログメータとして指針表示したりする。エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計3はこのようなものである。
【0068】
本形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計3は、上記したような効果に加え、線量率を計測できるという利点がある。
【0069】
続いて、他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計について図を参照しつつ説明する。図8は、他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図である。エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計4は、シンチレーション検出器10、パルスアンプ11、ピークホールド部13、A/D変換部14、荷重係数メモリ15、演算処理部16、中央処理装置17、出力部18、操作スイッチ19、高圧電源20、DCアンプ21、ドライバ22、表示器23、低圧電源24、ULD25、LLD26、論理回路27、タイマ回路28を備える。
先に図7を用いて説明した形態と比較すると、図7で示した形態ではタイマ回路28はないが、本形態では、タイマ回路28を採用した点が相違している。他は同じであり同じ符号を付すとともに重複する説明を省略する。
【0070】
ULD(Upper Limit Detector)25は、弁別部としての機能を果たすものであり、パルスアンプ11から入力されたパルス信号のうち所定波高レベル以下にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する。
LLD(Lower Limit Detector)26は、弁別部としての機能を果たすものであり、パルスアンプ11から入力されたパルス信号のうち所定波高レベル以上にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する。
論理回路27は、ULD25とLLD26との両方で出力された弁別信号のANDを選択して新たに弁別信号として出力する。これにより、所定波高レベルの範囲にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力することとなる。
ピークホールド部13は、論理回路27から出力される弁別信号に基づいて、パルスアンプ11から出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともにそのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力する。ピークホールドタイミング信号はバックグラウンドなどノイズ成分を除去した一定波高、一定幅に整形した信号である。以下は先の説明と同様にして線量データを得る。
【0071】
タイマ回路28は、積算時間を決める機能を有している。
演算処理部16は、積算時間の間にわたり積算された結果である線量データと積算時間を用いて単位時間あたりの積算値である線量率を表す線量率データを算出し、中央処理装置17へ線量率データを出力する。
中央処理装置17は、線量率データをドライバ22へ出力すると、ドライバ22は送信された線量率データに基づいて表示器23を駆動する。表示器23は、この線量率データに基づいて線量率を数値として表示したり、またはアナログメータとして指針表示したりする。
【0072】
本形態ではX線計測用とγ線計測用とで所定波高レベルを変更させており、X線計測用でULD25の所定波高レベルを300keVと、LLD26の所定波高レベルを8keVとして、8keV〜300keV付近の範囲で計測する。
また、γ線計測用でULD25の所定波高レベルを1500keVと、LLD26の所定波高レベルを50keVとして、50keV〜1500keV付近の範囲で計測する。
X(γ)線計測をするかγ(X)線計測をするかは、例えば、操作スイッチ19を操作することで選択できるようにすれば良い。
エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計4はこのようなものである。
【0073】
本形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計4は、上記したような効果に加え、線量率を計測できるという利点がある。また、演算処理部16での演算を少なくすることができるという利点も見込める。
【0074】
続いて他の形態について図を参照しつつ説明する。ここでは上記したエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計1,2,3,4において他のシンチレーション検出器を採用するものである。図10は他の形態のシンチレーション検出器の断面構造図である。シンチレーション検出器10’は、図10に示すように、シンチレータ101、光電子増倍管102、反射層106、光学窓107、ブリーダ回路108、隙間109、ケース110、ネジ部110a、Oリング110b、接着部110c、ケース111、入射窓111aを備える。図2で示した形態では、ケース104は金属製であり、また、入射窓105はプラスチック樹脂製であったが、本形態ではケース110は金属製、入射窓111aを含むケース111はプラスチック樹脂にし、両者をネジ部110aのネジで接合した点が相違する。そこでシンチレータ101、光電子増倍管102、反射層106、光学窓107、ブリーダ回路108は同じ構成であるものとして重複する説明を省略し、相違点のみ重点をおいて説明する。
【0075】
ケース110は、後方に信号線・電源線を引き出す孔(図示せず)を有する不透明の金属製の筒体である。
ケース111は、プラスチック樹脂による筒と天井の円板部を一体にした形であり上記のポリアセタールコポリマー樹脂(ジュラコン)であって、特に前方に入射窓111aを備えるものである。入射窓111aは、厚さが1〜4mmとなるように形成されている。
ケース110とケース111はネジ部110aで締結固定されると、Oリング110bによりケース110とケース111とは外界から封止される。なお、ケース111には光学窓107が接着部110cにより接着封止されている。
ここで入射窓111aの1〜4mmという厚さは、光子に対する吸収がアルミニウムで0.1〜0.4mmの入射窓相当となる厚みとしている。
【0076】
このようにシンチレータ101のケース111自体を、プラスチック樹脂とすることで、光子の入射方向が側面側となっても入射窓111aによる光子の吸収が正面と同じになる。この点について図を参照しつつ説明する。図11は、従来技術によるケースとプラスチック樹脂(ポリアセタールコポリマー樹脂)製のケースとのシンチレーション検出器の光子エネルギー10keVに対する方向依存性を説明する特性図である。図17の従来技術のアルミニウム製ケース211によるシンチレーション検出器210では基準方向からずれるに従い感度が低下するのに対し、図10の本形態のプラスチック樹脂ケースによるシンチレーション検出器10’の場合は、0〜90度まで±30%程度の差異で測定できることが判る。従って、光子の到来方向を厳密に意識しなくても高精度の測定ができることとなる。
【0077】
従来技術や先の形態で説明したように低エネルギー放射線の測定の入射方向は窓側からに限定されていたが、本形態によれば、シンチレータ101のケース111(入射窓111aを含む)自体を、不透明のプラスチック樹脂として全体に入射窓としての機能を持たせたため、従来技術や図1で説明した形態のケースの機能であるシンチレータへの外部光の遮光という動作環境を確保しつつ、感度のエネルギー依存性の方向依存性を小さくするように改善して高精度の線量や線量率を測定し、さらに構造の簡単化、機械的強度の強化、取り扱いの容易化をともに実現したシンチレーション検出器を含むエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計を提供することができる。
【0078】
続いて他の形態について図を参照しつつ説明する。図12は他の形態のシンチレーション検出器の断面構造図である。1cm線量当量計用シンチレーション検出器10”は、図12に示すように、シンチレータ101、光電子増倍管102、ケース104、反射層106、光学窓107、ブリーダ回路108、隙間109、内側入射窓(アルミニウム板)112、外側入射窓(プラスチック樹脂板)113を備える。図17で示した従来技術では、シンチレータ215の前段でアルミニウム板による入射窓212を配置していたが、本発明ではアルミニウム板による内側入射窓112に加えてさらにプラスチック樹脂板による外側入射窓113を配置した点が相違する。そこでシンチレータ101、反射層106、光学窓107、光電子増倍管102、ブリーダ回路108は同じ構成であるものとして重複する説明を省略し、相違点のみ重点をおいて説明する。
【0079】
ケース104は、前方に検出孔を、後方に信号線・電源線を引き出す孔(図示せず)を有する金属製の筒体であり、光や磁気を遮蔽する機能を有する。
内側入射窓112は、アルミニウムによる円板である。厚さとしては0.1〜0.4mmである。
外側入射窓113は、不透明のプラスチック樹脂による円板である。具体的には、プラスチック樹脂としてポリアセタールコポリマー樹脂(ジュラコン)を採用している。厚さとしては1〜4mmである。
内側入射窓112と外側入射窓113との厚さは、光子に対する吸収がアルミニウムで0.1〜0.4mm相当となるように選択された厚みを採用する。
【0080】
図13は内側入射窓・外側入射窓の組合せ別の光子エネルギー−透過率特性図である。二重構造となる内外の入射窓のうち外側入射窓113は材質がポリアセタールコポリマー樹脂、厚さが1mmであり、また、内側入射窓112は材質がアルミニウム、厚さが0.1mmであるエネルギー依存性(EGS4によるシミュレーション計算結果)を示す。ここに比較のため、図17で示した従来技術によるアルミニウム製の入射窓212の1cm線量当量計用シンチレーション検出器100のエネルギー依存性として厚さ0.1mmと厚さ0.2mmの場合を示す。
【0081】
図13で示すように、厚さ0.1mmの入射窓にプラスチック製で厚さ1mmの入射窓を追加することで、厚さ0.2mmの入射窓に相当するエネルギー依存性とすることができる。簡易的にはアルミニウムの厚さ0.1mmのエネルギー依存性とプラスチック樹脂の厚さ1mmのエネルギー依存性とが一致している。アルミニウムの厚さ0.3mmのエネルギー依存性に一致させるならば、アルミニウムの厚さ0.1mmの入射窓にプラスチック製で厚さ2mmの入射窓を追加したり、または、アルミニウムの厚さ0.2mmの入射窓にプラスチック製で厚さ1mmの入射窓を追加することで、厚さ0.3mmの入射窓に相当するエネルギー依存性とすることができる。このように外側入射窓113と内側入射窓112との組合せによるエネルギー依存性を従来技術のアルミニウム製の入射窓212のエネルギー依存性とほぼ同じにすることができる。
一般化すれば内側入射窓112のアルミニウムの入射窓の厚さをamm、外側入射窓113のプラスチック樹脂の厚さをbmmとした場合に、0.1≦a+0.1b≦0.4(ただし0<a,0<b)を満たすものである。
【0082】
このように入射窓を内外で二重にし、外側を低エネルギー光子でも吸収が小さく機械的強度が高いプラスチック樹脂板による外側入射窓を、また、内側をアルミニウム板による内側入射窓を配置し、さらに内側のアルミニウムと外側のプラスチック樹脂との合計の光子に対する吸収が、アルミニウムで0.1〜0.4mm相当の吸収となる厚みとしている。これは従来技術のシンチレーション検出器210に加え、その外側に強度の強いプラスチック樹脂による保護ケースとなる外側入射窓を追加して破損しにくくしたものといえる。このように簡単な追加構成により機械的強度を高めて、目的とするエネルギー依存性を確保しながら取り扱いが容易なシンチレーション検出器を有するエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計を提供することができるようになる。
なお、図1,図7,図8,図9で示したエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計1,2,3,4のシンチレーション検出器10に代えて、図17で示したシンチレーション検出器210を搭載しても良い。この場合、アルミニウムの入射窓に機械的な力が加わりにくくするような配慮をすることで可能となる。
【0083】
このように本発明のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計では、安価かつ強度が高くなるような構成を採用しつつ、さらに、8keV〜1500keVの範囲のエネルギー領域の光子に対してエネルギー依存度が小さいレスポンスとなるように検出感度を向上させて、使い勝手が良好なエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計を提供することができる。
【0084】
以上本発明のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計について説明した。本発明のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計では、校正がされて、20keV以下におけるエネルギーに対する入射窓の透過率の特性を20keV以下の換算係数曲線に近似させることで荷重係数の値を小さくしつつ、10keVから1500keVまでの光子が入射したときのエネルギーレスポンスの平坦化を図る。したがって、このようなエネルギー特性を有するエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計は線量や線量率を精度良く測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明を実施するための最良の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図である。
【図2】本発明を実施するための最良の形態のシンチレーション検出器の断面構造図である。
【図3】弁別タイミングを説明する説明図である。
【図4】シンチレータの光子エネルギー−検出効率の特性図である。
【図5】プラスチック樹脂による入射窓の厚さ・材質別の光子エネルギー−透過率特性図である。
【図6】エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のエネルギー−レスポンス特性図である。
【図7】他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図である。
【図8】他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図である。
【図9】他の形態のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計のブロック構成図である。
【図10】他の形態のシンチレーション検出器の断面構造図である。
【図11】従来技術によるケースとプラスチック樹脂(ポリアセタールコポリマー樹脂)製のケースとのシンチレーション検出器の光子エネルギー10keVに対する方向依存性を説明する特性図である。
【図12】他の形態のシンチレーション検出器の断面構造図である。
【図13】内側入射窓・外側入射窓の組合せ別の光子エネルギー−透過率特性図である。
【図14】電離箱式の1cm線量当量計の光子エネルギー−レスポンス特性の説明図である。
【図15】光子エネルギー−換算係数曲線図である。
【図16】シンチレーション式低エネルギー光子1cm線量当量計のブロック構成図である。
【図17】1cm線量当量計用シンチレーション検出器の断面構成図である。
【図18】入射窓(アルミニウム板)の厚さ・材質別の光子エネルギー−透過率特性図である。
【図19】計算による光子エネルギー−レスポンス特性である。
【図20】下限レベル調整前後の光子エネルギー−レスポンス特性図である。
【図21】下限レベル調整およびDBM調整を施した場合の光子エネルギー−レスポンス特性図である。
【符号の説明】
【0086】
1,2,3,4:エネルギー補償型シンチレーション式光子線量計
10,10’,10”:シンチレーション検出器
101:シンチレータ
102:光電子増倍管
103:温度計
104:ケース
105:入射窓
106:反射層
107:光学窓
108:ブリーダ回路
109:隙間
110:ケース(金属ケース)
110a:ネジ部
110b:Oリング
110c:接着部
111:ケース(樹脂ケース)
111a:入射窓(プラスチック樹脂)
112:内側入射窓(アルミニウム板)
113:外側入射窓(プラスチック樹脂板)
11:パルスアンプ
12:LLD
13:ピークホールド部
14:A/D変換部
15:荷重係数メモリ
16:演算処理部
17:中央処理装置
18:出力部
19:操作スイッチ
20:高圧電源
21:DCアンプ
22:ドライバ
23:表示器
24:低圧電源
25:ULD
26:LLD
27:論理回路
28:タイマ回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光子に応じてシンチレーション光を放出するシンチレータと、シンチレータから放出されるシンチレーション光の強度に比例したパルス信号を出力する光電子増倍管と、を備えるシンチレーション検出器と、
シンチレーション検出器から出力されるパルス信号を所定の波高レベルまで増幅するパルスアンプと、
パルス信号のうち所定波高レベル以上にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する弁別部と、
弁別部から出力される弁別信号に基づいて、パルスアンプから出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともに、そのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力するピークホールド部と、
ピークホールドタイミング信号を受けてピークホールド信号をアナログ−ディジタル変換してパルス信号のエネルギーデータを出力するA/D変換部と、
エネルギーに対応する荷重係数データを記憶する荷重係数メモリと、
A/D変換されたエネルギーデータのエネルギーに対応する荷重係数データを荷重係数メモリから読み出し、これを測定開始からの積算値である積算データに加算して積算結果を線量データとして出力する演算処理部と、
この線量データを線量として出力する表示部と、
を備えることを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【請求項2】
入射した光子に応じてシンチレーション光を放出するシンチレータと、シンチレータから放出されるシンチレーション光の強度に比例したパルス信号を出力する光電子増倍管と、を備えるシンチレーション検出器と、
シンチレーション検出器から出力されるパルス信号を所定の波高レベルまで増幅するパルスアンプと、
パルス信号のうち所定波高レベル範囲にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する弁別部と、
弁別部から出力される弁別信号に基づいて、パルスアンプから出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともに、そのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力するピークホールド部と、
ピークホールドタイミング信号を受けてピークホールド信号をアナログ−ディジタル変換してパルス信号のエネルギーデータを出力するA/D変換部と、
エネルギーに対応する荷重係数データを記憶する荷重係数メモリと、
A/D変換されたエネルギーデータのエネルギーに対応する荷重係数データを荷重係数メモリから読み出し、この値を測定開始からの積算値である積算データに加算して積算結果を線量データとして出力する演算処理部と、
この線量データを線量として出力する表示部と、
を備えることを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【請求項3】
請求項2に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
所定波高レベルは、X線計測用の8keV〜300keV付近の範囲と、γ線計測用の50keV〜1500keV付近の範囲と、であって何れかを選択したものであることを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
積算時間を決めるタイマ回路を備え、
前記演算処理部は、積算結果である線量データを積算時間で除して単位時間あたりの積算値である線量率データを算出し、
前記表示器は線量率データを線量率として表示することを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記シンチレーション検出器は、プラスチック樹脂を材料とし、入射する光子の一部を吸収するとともに残りは通過させ、所定エネルギー以下の光子に対してエネルギーが小さくなるにつれて透過率が小さくなる特性を有する入射窓を備え、
入射窓の厚さを1mmから4mmまでの厚さとして、20keV以下におけるエネルギーに対する入射窓の透過率の特性を20keV以下の換算係数曲線に近似させることで、8keVから150keVまでの低エネルギー光子が入射したときのエネルギーレスポンスの平坦化を図ることを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【請求項6】
請求項5に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記入射窓は、前記ケースの一部に含められる一体の構造体とし、ケース自体が入射窓の機能を兼ね備えることを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【請求項7】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記シンチレーション検出器は、
プラスチック樹脂を材料とし、入射する光子の一部を吸収するとともに残りは通過させ、所定エネルギー以下の光子に対してエネルギーが小さくなるにつれて透過率が小さくなる特性を有する外側の入射窓と、
アルミニウムを材料とし、入射する光子の一部を吸収するとともに残りは通過させ、所定エネルギー以下の光子に対してエネルギーが小さくなるにつれて透過率が小さくなる特性を有する内側の入射窓と、
内側の入射窓の厚さが0.1mm〜0.4mmの厚さの範囲における特性の範囲内となるように、外側の入射窓の厚さと内側の入射窓の厚さとを調整して、20keV以下におけるエネルギーに対する外側と内側との入射窓の透過率の特性を20keV以下の換算係数曲線に近似させることで、8keVから150keVまでの低エネルギー光子が入射したときのエネルギーレスポンスの平坦化を図ることを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【請求項8】
請求項5〜請求項7の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記入射窓および前記ケースと、前記シンチレータと、の間に隙間を介在させることを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【請求項1】
入射した光子に応じてシンチレーション光を放出するシンチレータと、シンチレータから放出されるシンチレーション光の強度に比例したパルス信号を出力する光電子増倍管と、を備えるシンチレーション検出器と、
シンチレーション検出器から出力されるパルス信号を所定の波高レベルまで増幅するパルスアンプと、
パルス信号のうち所定波高レベル以上にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する弁別部と、
弁別部から出力される弁別信号に基づいて、パルスアンプから出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともに、そのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力するピークホールド部と、
ピークホールドタイミング信号を受けてピークホールド信号をアナログ−ディジタル変換してパルス信号のエネルギーデータを出力するA/D変換部と、
エネルギーに対応する荷重係数データを記憶する荷重係数メモリと、
A/D変換されたエネルギーデータのエネルギーに対応する荷重係数データを荷重係数メモリから読み出し、これを測定開始からの積算値である積算データに加算して積算結果を線量データとして出力する演算処理部と、
この線量データを線量として出力する表示部と、
を備えることを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【請求項2】
入射した光子に応じてシンチレーション光を放出するシンチレータと、シンチレータから放出されるシンチレーション光の強度に比例したパルス信号を出力する光電子増倍管と、を備えるシンチレーション検出器と、
シンチレーション検出器から出力されるパルス信号を所定の波高レベルまで増幅するパルスアンプと、
パルス信号のうち所定波高レベル範囲にあるパルス信号を測定対象として選択し、弁別信号として出力する弁別部と、
弁別部から出力される弁別信号に基づいて、パルスアンプから出力されるパルス信号を選択し、その最大波高を保持(ピークホールド)してピークホールド信号として出力するとともに、そのタイミングでピークホールドタイミング信号を出力するピークホールド部と、
ピークホールドタイミング信号を受けてピークホールド信号をアナログ−ディジタル変換してパルス信号のエネルギーデータを出力するA/D変換部と、
エネルギーに対応する荷重係数データを記憶する荷重係数メモリと、
A/D変換されたエネルギーデータのエネルギーに対応する荷重係数データを荷重係数メモリから読み出し、この値を測定開始からの積算値である積算データに加算して積算結果を線量データとして出力する演算処理部と、
この線量データを線量として出力する表示部と、
を備えることを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【請求項3】
請求項2に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
所定波高レベルは、X線計測用の8keV〜300keV付近の範囲と、γ線計測用の50keV〜1500keV付近の範囲と、であって何れかを選択したものであることを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
積算時間を決めるタイマ回路を備え、
前記演算処理部は、積算結果である線量データを積算時間で除して単位時間あたりの積算値である線量率データを算出し、
前記表示器は線量率データを線量率として表示することを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記シンチレーション検出器は、プラスチック樹脂を材料とし、入射する光子の一部を吸収するとともに残りは通過させ、所定エネルギー以下の光子に対してエネルギーが小さくなるにつれて透過率が小さくなる特性を有する入射窓を備え、
入射窓の厚さを1mmから4mmまでの厚さとして、20keV以下におけるエネルギーに対する入射窓の透過率の特性を20keV以下の換算係数曲線に近似させることで、8keVから150keVまでの低エネルギー光子が入射したときのエネルギーレスポンスの平坦化を図ることを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【請求項6】
請求項5に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記入射窓は、前記ケースの一部に含められる一体の構造体とし、ケース自体が入射窓の機能を兼ね備えることを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【請求項7】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記シンチレーション検出器は、
プラスチック樹脂を材料とし、入射する光子の一部を吸収するとともに残りは通過させ、所定エネルギー以下の光子に対してエネルギーが小さくなるにつれて透過率が小さくなる特性を有する外側の入射窓と、
アルミニウムを材料とし、入射する光子の一部を吸収するとともに残りは通過させ、所定エネルギー以下の光子に対してエネルギーが小さくなるにつれて透過率が小さくなる特性を有する内側の入射窓と、
内側の入射窓の厚さが0.1mm〜0.4mmの厚さの範囲における特性の範囲内となるように、外側の入射窓の厚さと内側の入射窓の厚さとを調整して、20keV以下におけるエネルギーに対する外側と内側との入射窓の透過率の特性を20keV以下の換算係数曲線に近似させることで、8keVから150keVまでの低エネルギー光子が入射したときのエネルギーレスポンスの平坦化を図ることを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【請求項8】
請求項5〜請求項7の何れか一項に記載のエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計において、
前記入射窓および前記ケースと、前記シンチレータと、の間に隙間を介在させることを特徴とするエネルギー補償型シンチレーション式光子線量計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2008−256630(P2008−256630A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101301(P2007−101301)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月9日 The Asian and Oceanic Association for Radiation Protection発行の「The Second Asian and Oceanic Congress for Radiation Protection Proceedings,Abstracts,October 9−13,2006,Beijing,China」に発表
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成18年10月9日 The Asian and Oceanic Association for Radiation Protection発行の「The Second Asian and Oceanic Congress for Radiation Protection Proceedings,Abstracts,October 9−13,2006,Beijing,China」に発表
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】
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