エピテアフラガリン類の製造方法及びエピテアフラガリン類を含有する飲料の製造方法
【課題】食品に直接利用できるエピテアフラガリン及びエピテアフラガリン-3-O-ガレートの簡便な製造方法を提供する。この製造方法を利用したエピテアフラガリン及びエピテアフラガリン-3-O-ガレートを含有する飲料の製造方法を提供する。
【解決手段】エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートに、没食子酸の存在下、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類の製造方法。茶抽出物に没食子酸を添加し、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、前記茶抽出物に含まれる少なくとも一部のエピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートを、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類を含有する飲料の製造方法。
【解決手段】エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートに、没食子酸の存在下、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類の製造方法。茶抽出物に没食子酸を添加し、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、前記茶抽出物に含まれる少なくとも一部のエピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートを、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類を含有する飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピテアフラガリン類の製造方法及びエピテアフラガリン類を含有する茶飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エピテアフラガリン-3-O-ガレートは、例えば、特開2000-226329号公報(特許文献1)やNaoto Oku et.al., Biol. Pharm. Bull., 26(9), 1235-1238 (2003) (非特許文献1)によれば、抗腫瘍転移効果が期待されるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤の候補物質として挙げられている有用な化合物である。
【0003】
エピテアフラガリン類を化学合成する方法には、フェリシアン化カリウムを用いる方法(Gen-ichiro Nonaka,Fumio Hashimoto and Itsuo Nishioka, Chem. Pharm. Bull., 34(1), 61-65 (1986)(非特許文献2))が知られている。しかし、フェリシアン化カリウムは食品添加物としての使用は認められていない。
【0004】
また、酵素による合成方法では、ペルオキシダーゼを用いる方法(Shegmin Sang et.al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 12(2), 459-467 (2004)(非特許文献3))が報告されている。このペルオキシダーゼでの反応では、過酸化水素とピロガロールが用いられている。
【特許文献1】特開2000-226329号公報
【非特許文献1】Naoto Oku et.al., Biol. Pharm. Bull., 26(9), 1235-1238 (2003)
【非特許文献2】Gen-ichiro Nonaka,Fumio Hashimoto and Itsuo Nishioka, Chem. Pharm. Bull., 34(1), 61-65 (1986)
【非特許文献3】Shegmin Sang et.al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 12(2), 459-467 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フェリシアン化カリウムを用いる方法は、フェリシアン化カリウムは食品添加物としての使用は認められていないことから、食品の製造には適用できない。
【0006】
ペルオキシダーゼを用いる方法に関しては、過酸化水素は食品添加物として認められているが、最終食品の完成前に分解または除去することになっているので、その分解または除去の工程が必須である。特に、過酸化水素自体は安定であるが、生体中の重金属錯体、例えばFe2+−錯体によって速やかにヒドロキシラジカル(OH・)を生成するので、生体を構成するあらゆる有機化合物を酸化し、細胞毒となりうる。また、ピロガロールは食品添加物として認められていない。
【0007】
上記従来の技術では食品製造に直接利用できないという欠点があった。従って、食品に直接利用できるエピテアフラガリン及びエピテアフラガリン-3-O-ガレートの簡便な製造方法が望まれていた。
【0008】
そこで本発明の目的は、食品に直接利用できるエピテアフラガリン及びエピテアフラガリン-3-O-ガレートの簡便な製造方法を提供することにある。
【0009】
さらに本発明の目的は、上記製造方法を利用したエピテアフラガリン及びエピテアフラガリン-3-O-ガレートを含有する飲料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、食品として使用が認められている各種ポリフェノールオキシダーゼや食品添加物として認められている没食子酸を利用して、緑茶等の風味を損なうことなくエピテアフラガリン類を製造する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、以下のとおりである。
[1]エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートに、没食子酸の存在下、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類の製造方法。
[2]茶抽出物に没食子酸を添加し、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、前記茶抽出物に含まれる少なくとも一部のエピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートを、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類を含有する飲料の製造方法。
[3]茶抽出物が、緑茶抽出物、ウーロン茶抽出物、または紅茶抽出物である[2]に記載の製造方法。
[4]茶抽出物に含まれるエピガロカテキン及びエピガロカテキンガレートの総量に対してモル比で1〜10の没食子酸を添加する[2]または[3]に記載の製造方法。
[5]ポリフェノールオキシダーゼが、ラッカーゼ(EC1.10.3.2)、チロシナーゼ(EC 1.14.18.1)、ビリルビンオキシダーゼ(EC1.3.3.5)、フェノールおよびポリフェノールオキシダーゼ(EC1.10.3.1)から成る群から選ばれる少なくとも1種の酵素である[1]〜[4]のいずれか1項に記載の製造方法。
[6]ポリフェノールオキシダーゼは遊離の酵素または固定化酵素である[1]〜[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
[7]ポリフェノールオキシダーゼは遊離の酵素であり、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応後に、茶抽出物を加熱して酵素を失活させることをさらに含む[2]〜[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
[8]ポリフェノールオキシダーゼは固定化酵素であり、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、固定化酵素を茶抽出物に添加して行い、変換反応後に茶抽出物から固定化酵素を除去することを含む、[2]〜[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
[9]ポリフェノールオキシダーゼは固定化酵素であり、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、固定化酵素を充填した容器に没食子酸を添加した茶抽出物を通すことで行う、[2]〜[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
[10]ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、茶抽出物に酸素または空気を通気しながら行う[2]〜[9]のいずれか1項に記載の製造方法。
[11]飲料が、緑茶飲料、緑茶風飲料、ウーロン茶飲料、ウーロン茶風飲料、紅茶飲料、または紅茶風飲料である[2]〜[10]のいずれか1項に記載の製造方法。
[12]飲料が、エピテアフラガリン類を0.0001〜0.5質量%含有する[2]〜[11]のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
食品製造に直接利用できるエピテアフラガリン、エピテアフラガリン-3-O-ガレートの製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートに、没食子酸の存在下、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類の製造方法に関する。
【0014】
さらに、本発明は、茶抽出物に没食子酸を添加し、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、前記茶抽出物に含まれる少なくとも一部のエピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートを、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類を含有する飲料の製造方法に関する。
【0015】
本発明のエピテアフラガリン類を含有する飲料の製造方法は、本発明のエピテアフラガリン類の製造方法の一態様である。以下、エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートが茶抽出物に含まれている場合、即ち、エピテアフラガリン類を含有する飲料の製造方法を例に説明する。エピテアフラガリン類の製造方法については、エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートが茶抽出物を、エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートを含有する原料または原料溶液、と読み替えて実施することができる。
【0016】
本発明において、茶抽出物は、エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートを含有する物であれば特に制限はない。茶抽出物としては、例えば、緑茶抽出物、ウーロン茶抽出物、または紅茶抽出物を挙げることができる。
【0017】
緑茶抽出物
緑茶は、ツバキ属(Camellia)植物の葉の抽出物であり、主にCamellia sinensis、Camellia assamicaの新芽を原料として、それを乾燥させたものである。緑茶抽出物としては、例えば、SD緑茶エキスパウダーNo.16714(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、サンフェノンBG(太陽化学株式会社)などを挙げることができる。また、抽出法としては、原料を熱水、含水アルコール、グリセリン水溶液、酢酸エチル等にて抽出し、精製・濃縮し、噴霧乾燥または凍結乾燥する方法がある。
【0018】
ウーロン茶抽出物
ウーロン茶は、緑茶抽出物と同様の茶葉を一定時間発酵させ、その後加熱して発酵を停止したものである(半発酵茶)。ウーロン茶抽出物としては、例えば、FDウーロン茶エキスパウダーNo.16297(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)などを挙げることができる。また、抽出法としては、原料を熱水、含水アルコール、グリセリン水溶液、酢酸エチル等にて抽出し、精製・濃縮し、噴霧乾燥または凍結乾燥する方法がある。
【0019】
紅茶抽出物
紅茶は、緑茶抽出物と同様の茶葉を強発酵させ、その後加熱して発酵を停止したものである(強発酵茶)。紅茶抽出物としては、例えば、SD紅茶エキスパウダーNo.16691(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)などを挙げることができる。また、抽出法としては、原料を熱水、含水アルコール、グリセリン水溶液、酢酸エチル等にて抽出し、精製・濃縮し、噴霧乾燥または凍結乾燥する方法がある。
【0020】
茶抽出物の例を以下の表1に示す。但し、これらの茶抽出物は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0021】
【表1】
EGCおよびEGCg含有量は、各メーカーのカタログ値
【0022】
本発明の方法では、茶抽出物に含まれるエピガロカテキン及びエピガロカテキンガレートの総量に対してモル比で1〜10の没食子酸を添加することが適当である。好ましくはエピガロカテキン及びエピガロカテキンガレートの総量に対してモル比で2〜5の没食子酸を添加する。
【0023】
ポリフェノールオキシダーゼは、エピガロカテキンを、それぞれエピテアフラガリンに変換することができ、かつエピガロカテキンガレートをエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することができる酵素であれば、特に制限はない。そのようなポリフェノールオキシダーゼとしては、例えば、ラッカーゼ(EC1.10.3.2)、チロシナーゼ(EC 1.14.18.1)、ビリルビンオキシダーゼ (EC1.3.3.5)、フェノールおよびポリフェノールオキシダーゼ(EC1.10.3.1)から成る群から選ばれる少なくとも1種の酵素を挙げることができる。なお、チロシナーゼ(EC 1.14.18.1)は、一部、1.10.3.1にも分類されるが、1.10.3.1に分類される酵素も、本発明ではチロシナーゼ(EC 1.14.18.1)の一部である。
【0024】
ポリフェノールオキシダーゼは遊離の酵素または固定化酵素であることができる。ポリフェノールオキシダーゼは遊離の酵素である場合、ポリフェノールオキシダーゼは没食子酸を添加した茶抽出物に所定量添加し、所定時間、所定温度で変換反応を行う。ポリフェノールオキシダーゼの所定量とは、例えば、茶抽出物を0.5(w/v)% 〜15(w/v)%を含む溶液1mlに対して10〜200Uの範囲である。
【0025】
尚、茶抽出物にどの程度のエピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートが含有されているかは、茶抽出物により異なる。例えば、エピガロカテキンとエピガロカテキンガレートの総和が20(w/w)%以上と称されているSD緑茶エキスパウダーでは、エピガロカテキンが約10(w/w)%、エピガロカテキンガレートが約13(w/w)%ほど含まれている。従って、例えば茶抽出物を1%含む溶液は、エピガロカテキンが約1mg/ml、エピガロカテキンガレートが約1.3mg/mlになる。
【0026】
変換反応についての所定時間とは、例えば、10分〜15時間、所定温度とは20〜60℃の範囲である。ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応後に、茶抽出物を加熱して酵素を失活させることをさらに含む。加熱条件は、70〜90℃で2〜10分とすることが適当である。
【0027】
ポリフェノールオキシダーゼは固定化酵素であることもできる。固定化酵素を用いる場合、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、固定化酵素を、没食子酸を添加した茶抽出物に添加して行うことができる。変換反応の時間及び温度は、例えば、10〜240分、所定温度とは20〜60℃の範囲である。変換反応後に茶抽出物から固定化酵素を除去する。除去は、例えば、固定化酵素を濾過することで行うことができる。
【0028】
ポリフェノールオキシダーゼは固定化酵素である場合、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、固定化酵素を充填した容器に没食子酸を添加した茶抽出物を通すことで行うこともできる。茶抽出物の流通の条件は、温度を20〜60℃の範囲とし、固定化酵素との接触時間を例えば、10〜240分の範囲とすることで行うことができる。
【0029】
ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、茶抽出物に酸素または空気を通気しながら行うことができる。酸素または空気を通気することで、変換反応を促進することができる。酸素または空気の通気条件は例えば、0.2〜10 L/L/minとすることができる。さらに、通気の効果を高めるために、反応液を攪拌しながら通気を行うこともできる。
【0030】
ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、茶抽出物に含まれる少なくとも一部のエピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートを、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換するように実施する。目的によっては、エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートの全量がエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換するように、没食子酸の添加量や反応条件を選択することができる。
【0031】
ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、茶抽出物に没食子酸を添加して行うが、茶抽出物には、ポリフェノールオキシダーゼ活性のpH依存性を考慮して、pH調整を目的として緩衝剤を添加することもできる。但し、変換反応生成物は、そのまま飲料として利用されることを考慮すると、緩衝剤としては、例えば、リン酸及びその塩類、クエン酸及びその塩類などを用いることが好ましい。勿論、緩衝剤を添加せずに、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応を行うこともできる。
【0032】
本発明の製造方法により得られる飲料は、そのまま飲料として利用することができる。本発明の製造方法により得られる飲料は、具体的には、茶飲料であり、茶飲料としては、例えば、緑茶飲料、緑茶風飲料、ウーロン茶飲料、ウーロン茶風飲料、紅茶飲料、または紅茶風飲料を挙げることができる。本発明の製造方法により得られる飲料は、エピテアフラガリン類を、例えば、0.0001〜0.5質量%含有するものであることができる。
【0033】
さらに、本発明の製造方法により得られる飲料は、そのまま飲料として利用することもできるが、没食子酸存在下で茶抽出物をポリフェノールオキシダーゼで処理した液を、抽出・精製または濃縮を行い、噴霧乾燥または凍結乾燥し、整粒によりエキス粉末を調製する。こうした濃縮溶液またはエキス粉末を各種形態の食品およびヘルスケア製品の原料として供することもできる。
【0034】
濃縮溶液またはエキス粉末を適用できる食品としては、例えば、ガム、菓子、キャンデー、サプリメント等を挙げることができる。濃縮溶液またはエキス粉末を適用できるヘルスケア製品としては、例えば、口腔洗浄液、歯磨きペースト等を挙げることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明しるす。
【0036】
実施例1:ラッカーゼ処理した緑茶エキスにおけるエピテアフラガリン、エピテアフラガリン-3-O-ガレートの検出、分離精製ならびに構造決定
緑茶エキス250g、没食子酸一水和物20g、リン酸緩衝液(pH2.4)600mL、ラッカーゼY1.66g(ダイワ化成社製、200,000U)に水を加えて全量2Lとし、55℃で10時間反応を行った。この酵素反応液を液体クロマトグラフ法により、次の分析条件で測定を行ったところ、ラッカーゼ未処理には認められないピーク(ピーク1:エピテアフラガリン)と増大したピーク(ピーク2:エピテアフラガリン-3-O-ガレート)を検出した(図.1)。
【0037】
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:320nm)
カラム:YMC-Pack ODS-A A-312(6.0φ×150mm)
カラム温度:40℃
移動相:0.05mol/Lリン酸二水素ナトリウム試液/アセトニトリル混液(10:3)
流量:1.0mL/min
【0038】
次に、これら2成分を単離・精製した。
ラッカーゼ処理後の反応液2Lを酢酸エチル2Lで2回抽出した。酢酸エチル層に5%炭酸水素ナトリウム水溶液100mLを2回加えてアルカリ洗浄し、水洗(100mL×2回)した後、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。この液を綿栓ろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターにて乾固し、残留物90gを得た。移動相にて溶解し、逆相カラムクロマトグラフィー(カラム:Lobar Column LiChroprep RP-18(37×440mm)、移動相:0.05mol/Lリン酸二水素ナトリウム試液/アセトニトリル混液(17:3)→(4:1))を行い、成分1及び成分2を多く含む画分をそれぞれ回収し、ロータリーエバポレーターにて濃縮し、酢酸エチルにて抽出し、酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、綿栓ろ過後、ろ液をロータリーエバポレーターにて乾固し、成分1を多く含む残留物770mg (Fr.1)及び成分2を多く含む残留物730mg(Fr.2)を得た。それぞれシュウ酸処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シュウ酸処理をしたシリカゲル10gを充填(カラム径1.5cm)し、溶出(溶離液:酢酸エチル/ヘキサン混液(1:1)→(2:1))した。さらに、少量の酢酸エチルに溶解し、少量のヘキサンを添加して、ほぼ単一の橙色結晶10mgを得た(図.2)。
また、Fr.2においても同様のシュウ酸処理シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、エタノール(99.5)/水により再結晶を行い、橙色結晶14mgを得た(図.3)。
【0039】
[分析条件]
カラム:TSK gel ODS-80Ts(4.6φ×150mm)
カラム温度:40℃
移動相:水/アセトニトリル/リン酸混液(500:150:1)
流量:1.0mL/min
検出波長:254nm(各下側)、210nm(各上側)
【0040】
3)2成分の構造解析
得られた2成分について機器分析(NMR、MALDI-TOFMS、ESI-精密MS、紫外吸収スペクトル)を行った。各機器分析の分析条件は以下のとおりである。
・NMR:13C-NMR:100MHz,溶媒CD3OD。1H-NMR:400MHz,溶媒CD3OD。
・MALDI-TOFMS:AXIMA-CFR plus(島津製作所/KRATO,ver2.4.0,リフレクトロンモード),マトリックス溶液:2,5-ジヒドロキシ安息香酸(2,5-DHB),カチオン化剤:NaCl
・ESI-精密MS:AgilentLC1100/ABI QSTARXL
・紫外可視吸収スペクトル:紫外可視分光光度計(島津製作所,UV250)。試料溶液は約0.01mg/mLの50%エタノール溶液とした。
【0041】
(1)成分1の構造解析について
成分1の1H-NMRスペクトルでは、epicatechinのA環、C環に由来する5.98ppm(1H, d, J=2.4Hz)、5.97ppm(1H, d, J=2.4Hz)、4.81ppm(1H, s)、4.27ppm(1H, m)、2.93ppm、2.82ppm(2H, m)のシグナルが認められた。また、13C-NMRスペクトル、さらにHMQC及びHMBCによる解析により、図4の構造式とした。
成分1(約0.01mg/mLの50%エタノール溶液)の紫外可視吸収スペクトルを測定したとき、 306nm、281nmに極大吸収を示した(図5)。また、MALDI-TOFMSの測定では、カチオン化剤であるNaClの添加により、m/z 423が強く検出され、m/z 401が消失したことより、[M+H]+が401であり、分子量は400で、構造を支持した(図6、7)。
【0042】
なお、この成分1は非特許文献(Gen-ichiro Nonaka,Fumio Hashimoto and Itsuo Nishioka, Chem. Pharm. Bull., 34(1), 61-65 (1986)のスペクトルデータと一致し、エピテアフラガリン及びピロガリンと命名されている化合物であった。
【0043】
(2)成分2の構造解析について
成分2の1H-NMRスペクトルにおいて、エピカテキン部分のC-2,C-3に結合する水素のシグナルが低磁場側にシフトしているので、C-3の水酸基はエステルになっていると考えられ、ガロイル基が置換した図8の構造式とした。成分2(約0.01mg/mLの50%エタノール溶液)の紫外可視吸収スペクトルを測定したとき、成分1と類似し、302nm、280nmに極大吸収を示した(図9)。MALDI-TOFMSの測定(図10、11)では、カチオン化剤であるNaClの添加により、m/z 575が強く検出され、m/z 553が消失したことより、[M+H]+が553であり、分子量は552とし、成分1よりもガロイル基の分子量に相当する152だけ大きいことからも、成分2の構造を支持した。
【0044】
なお、この成分2は非特許文献2(Gen-ichiro Nonaka,Fumio Hashimoto and Itsuo Nishioka, Chem. Pharm. Bull., 34(1), 61-65 (1986))、及びShegmin Sang et.al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 12(2), 459-467 (2004)のスペクトルデータと一致し、エピテアフラガリン-3-O-ガレートと命名されている化合物であった。
【0045】
以上、2成分の機器分析の結果を表2にまとめた。
【0046】
【表2】
【0047】
実施例2:ラッカーゼによる茶エキスからのエピテアフラガリン、エピテアフラガリン-3-O-ガレートの製造 (その1)
SD緑茶エキスパウダー(三栄源エフ・エフ・アイ)250gを10%エタノール溶液1000mLに溶かし、リン酸塩緩衝液(pH2.4)600mL、20%没食子酸エタノール溶液100mL、酵素溶液(ダイワラッカーゼY120、200,000U、1.66g、白色腐朽菌由来Trametes sp.、EC1.10.3.2)200mL、水100mLを添加して合計2000mLとし、55℃で攪拌しながら酵素反応を開始した。反応開始4時間後及び6時間後に酵素溶液0.83g/50mLを追加した。この場合のエピテアフラガリンならびにエピテアフラガリン3-O-ガレートの生成量を下記の分析条件で液体クロマトグラフ法にて分析した。その結果を表3に示す。
【0048】
[分析条件]
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:280nm)
カラム:YMC-Pack ODS-A A-312(6.0φ×150mm)
カラム温度:30℃
移動相:0.05mol/Lリン酸二水素ナトリウム試液/アセトニトリル混液(10:3)
流量:1.0mL/min
【0049】
【表3】
【0050】
実施例3:ラッカーゼによる茶エキスからのエピテアフラガリン、エピテアフラガリン-3-O-ガレートの製造(その2)
水100mLに、SD緑茶エキスパウダー(三栄源エフ・エフ・アイ)1g、没食子酸一水和物0.48g、ダイワラッカーゼY120 2500U〜10000Uを加え、50℃で酵素反応を行った。なお、処理開始時にはおよそのエピガロカテキン及びエピガロカテキンガレートの総量に対してモル比で没食子酸約4.4存在した。このときのエピテアフラガリン及びエピテアフラガリン-3-O-ガレートそれぞれの生成量の変化を図12および図13に示した。最大生成量は、エピテアフラガリンは2.78mg/g(50℃、30分、ラッカーゼ5000U)、エピテアフラガリン-3-ガレートは15.41mg/g(50℃、30分、ラッカーゼ10000U)であった。
【0051】
実施例4:チロシナーゼまたはビリルビンオキシダーゼによる茶エキスからのエピテアフラガリン、エピテアフラガリン-3-O-ガレートの製造
20mmol/Lリン酸カリウム塩緩衝液中にエピガロカテキンガレート6.9mg、没食子酸一水和物2.8mg及びポリフェノールオキシダーゼ(チロシナーゼ20Uまたはビリルビンオキシダーゼ0.4U)を添加し、合計1.5mLの溶液中で、チロシナーゼの場合は25℃ 3時間、ビリルビンオキシダーゼの場合は、45℃、2時間反応を行った。
反応液を液体クロマトグラフ法により、次の分析条件で測定を行った。
【0052】
[分析条件]
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:280nm)
カラム:YMC-Pack ODS-A A-312(6.0φ×150mm)(エピテアフラガリン-3-ガレート分析時)
Cadenza CD-C18(4.6φ×75mm)(エピテアフラガリン分析時)
移動相:0.05mol/Lリン酸二水素ナトリウム試液/アセトニトリル混液(10:3)
流 量:1.0mL/min
【0053】
このときのエピテアフラガリン類の生成量の総量を表4に示した。
チロシナーゼ(EC1.14.18.1)はフナコシ−Worthington Biochemical Corp.製の Mushroom由来のものを使用し、ビリルビンオキシダーゼ(EC.1.3.3.5)は和光純薬−天野エンザイム製のMyrothesium sp.由来のものを使用した。
【0054】
【表4】
【0055】
実施例5:エピガロカテキンガレートからエピテアフラガリン-3-O-ガレートの製造(反応pHの制御))
各pHのリン酸ナトリウム塩緩衝液中にエピガロカテキンガレート4.6mg、没食子酸1.9mg、ラッカーゼ20U(1回添加、または2度添加)して、合計1mLについて試験管中で50℃、3 時間反応を行った。反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例2に示す分析条件で測定を行った。pH4.5〜pH8でエピテアフラガリン-3-O-ガレートが生成し、最大の生成量はpH6.0から6.5で認められた。また酵素は一度に添加するよりも、2度に分けて逐次添加する方が、生成量が増大した。
【0056】
【表5】
【0057】
実施例6:エピガロカテキンガレートからエピテアフラガリン-3-O-ガレートの製造(没食子酸の添加量の制御 その1)
没食子酸量を倍の3.8mgとして他の条件は実施例5と同様にして反応を行った。反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例2に示す分析条件で測定を行った。モル比でエピガロカテキン-3-O-ガレート:没食子酸=1:2の方が1:1(実施例5)よりも生成量が多かった。
【0058】
【表6】
【0059】
実施例7:エピガロカテキンガレートからエピテアフラガリン-3-O-ガレートの製造(通気量の制御)
ラッカーゼによるテアフラガリン類の生成において、10 L/L/minの空気を通気し、エピテアフラガリン-3-ガレートの生成量を測定した。20mmol/Lリン酸カリウム塩緩衝液(pH 6.5) /エタノール混液(20:1)50mLにエピガロカテキンガレート0.23g、没食子酸一水和物 0.19g、ダイワラッカーゼ 1000U(9.3mg)を添加し、50℃、30分間、次の(1)、(2)のいずれかの方法を100mL容三角フラスコ中で反応を行った。(1)振盪のみ、(2)振盪しながら、空気を通気して反応。反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例2に示す分析条件で測定を行った。通気により、エピテアフラガリン-3-O-ガレートの生成量が多くなることを確認した。
【0060】
【表7】
【0061】
実施例8:エピガロカテキンからエピテアフラガリンの製造(反応pHの制御)
各pHのリン酸カリウム塩緩衝液中にエピガロカテキン3.1mg、没食子酸1.9mg、ラッカーゼ20U(1回添加、または2度に分割して添加)して、合計1mLについて試験管中で50℃、2時間反応を行った。反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例4に示す分析条件で測定を行った。pH4.7〜pH7.5でエピテアフラガリンが生成し、pH 6.5のとき最も生成量が多かった。
【0062】
【表8】
【0063】
実施例9:エピガロカテキンからエピテアフラガリンの製造(没食子酸の添加量の制御)
没食子酸量を倍の3.8mgとして他の条件は実施例8と同様にして反応を行った。反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例4に示す分析条件で測定を行った。モル比でエピガロカテキン:没食子酸=1:2の方が1:1(実施例8)よりも生成量が多かった。
【0064】
【表9】
【0065】
実施例10:エピガロカテキンからエピテアフラガリンの製造(通気量の制御)
ラッカーゼによるテアフラガリン類の生成において、空気を通気し、エピテアフラガリンの生成量を測定した。20mmol/Lリン酸カリウム塩緩衝液(pH 7.0) /エタノール混液(20:1)50mLにエピガロカテキン0.16g、没食子酸一水和物 0.19g、ダイワラッカーゼ 1000U(9.3mg)を添加し、50℃、30分間、次の(1)、(2)のいずれかの方法を100mL容三角フラスコ中で反応を行った。(1)振盪のみ、(2)振盪しながら、10L/L/minの空気を通気して反応した。反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例4に示す分析条件で測定を行った。通気により、エピテアフラガリンの生成率が高くなることを確認した。
【0066】
【表10】
【0067】
実施例11:既知法と本発明法によるエピテアフラガリン製造法の比較
ラッカーゼによる酵素反応は次のとおり行った。0.1mol/Lリン酸カリウム塩緩衝液(pH4.5)中、エピガロカテキン3.1mg、没食子酸一水和物1.9mg、ラッカーゼ0.5U加えて、全量5mLで50℃、8時間酵素反応を行った。また、既知の方法(Shegmin Sang et.al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 12(2), 459-467 (2004))によるペルオキシダーゼを用いる酵素反応は次のとおり行った。0.1mol/Lリン酸カリウム塩緩衝液(pH6.0)中、エピガロカテキン3.1mg、ピロガロール1.3mg、30%過酸化水素水0.02mL、ペルオキシダーゼ(西洋ワサビ由来、東洋紡)0.5Uを加えて、全量5mLで45℃、8時間酵素反応を行った。その反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例2に示す分析条件で測定を行った。
ペルオキシダーゼによる既知製造法では、エピテアフラガリン以外にもプルプロガリンを生成した(図14)が、本発明のラッカーゼを用いる方法では認められなかった(図15)。プルプロガリンは刺激性の高い化合物であり、食品製造には好ましくない。
【0068】
【表11】
【0069】
実施例12:既知法と本発明法によるエピテアフラガリン-3-O-ガレート製造法の比較 その1
ラッカーゼによる酵素反応は次のとおり行った。0.1mol/Lリン酸カリウム塩緩衝液(pH4.5)中、エピガロカテキン-3-O-ガレート4.6mg、没食子酸一水和物1.9mg、ラッカーゼ0.5U加えて、全量5mLで50℃、8時間酵素反応を行った。
また、既知の方法(Shegmin Sang et.al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 12(2), 459-467 (2004))によるペルオキシダーゼを用いる酵素反応は次のとおり行った。0.1mol/Lリン酸カリウム塩緩衝液(pH6.0)中、エピガロカテキン-3-O-ガレート4.6mg、ピロガロール1.3mg、30%過酸化水素水0.02mL 、ペルオキシダーゼ(西洋ワサビ由来、東洋紡)0.5Uを加えて、全量5mLで45℃、8時間酵素反応を行った。
その反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例3の分析条件で測定を行った。
ペルオキシダーゼによる製造法では、エピテアフラガリン-3-O-ガレート以外にもプルプロガリンが生成した(図16)が、本発明のラッカーゼを用いる方法の場合はプルプロガリンの生成は認められなかった(図17)。
【0070】
実施例13:既知法と本発明法によるエピテアフラガリン-3-O-ガレート製造法の比較 その2
既知法によるペルオキシダーゼ酵素反応の場合は、リン酸カリウム塩緩衝液(pH5.5)中でエピガロカテキンガレート4.6mg、ピロガロール1.3mg、ペルオキシダーゼ20U(10Uずつ2度に分けて)添加し、全量1mLとし、45℃、3時間、酵素反応を行った。また、本発明による酵素反応の場合は、リン酸カリウム塩緩衝液(pH 6.5)中でエピガロカテキンガレート4.6mg、没食子酸一水和物1.9mg、ラッカーゼ20U(10Uずつ2度に分けて)添加し、全量1mLとし、45℃で3時間酵素反応を行った。反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例3の分析条件で測定を行った。
ペルオキシダーゼの場合は、エピテアフラガリン-3-O-ガレートが1.46mg生成 し、プルプロガリンは0.31mg生成した(図18)。本発明のラッカーゼを用いる方法の場 合は、エピテアフラガリン-3-O-ガレートが0.19mg生成し、副生成物のプル プロガリンの生成を認めなかった(図19)。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、エピテアフラガリン類を含有する飲料の製造分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ラッカーゼ処理した緑茶エキスのクロマトグラム(上:ラッカーゼ処理、下:ラッカーゼ未処理)
【図2】単離した成分1のクロマトグラム
【図3】単離した成分2のクロマトグラム
【図4】成分1の構造式
【図5】成分1 の紫外可視吸収スペクトル(UV-250)
【図6】成分1のマススペクトル(マトリックス:2,5-DHB)
【図7】成分1のマススペクトル(マトリックス:2,5-DHB+NaCl)
【図8】成分2の構造式
【図9】成分2の紫外可視吸収スペクトル(島津UV-250)
【図10】成分2のマススペクトル(マトリックス:2,5-DHB)
【図11】成分2のマススペクトル(マトリックス:2,5-DHB+NaCl)
【図12】エピテアフラガリンの生成量の変化(添加酵素量との関係)
【図13】エピテアフラガリン-3-ガレートの生成量の変化(添加酵素量との関係)
【図14】エピテアフラガリン製造法の比較結果(ペルオキシダーゼの場合)
【図15】エピテアフラガリン製造法の比較結果(ラッカーゼの場合)
【図16】エピテアフラガリン-3-O-ガレート製造法の比較結果(ペルオキシダーゼの場合)
【図17】エピテアフラガリン-3-O-ガレート製造法の比較結果(ラッカーゼの場合)
【図18】エピテアフラガリン-3-O-ガレート製造法の比較結果(ペルオキシダーゼの場合)
【図19】エピテアフラガリン-3-O-ガレート製造法の比較結果(ラッカーゼの場合)
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピテアフラガリン類の製造方法及びエピテアフラガリン類を含有する茶飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エピテアフラガリン-3-O-ガレートは、例えば、特開2000-226329号公報(特許文献1)やNaoto Oku et.al., Biol. Pharm. Bull., 26(9), 1235-1238 (2003) (非特許文献1)によれば、抗腫瘍転移効果が期待されるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害剤の候補物質として挙げられている有用な化合物である。
【0003】
エピテアフラガリン類を化学合成する方法には、フェリシアン化カリウムを用いる方法(Gen-ichiro Nonaka,Fumio Hashimoto and Itsuo Nishioka, Chem. Pharm. Bull., 34(1), 61-65 (1986)(非特許文献2))が知られている。しかし、フェリシアン化カリウムは食品添加物としての使用は認められていない。
【0004】
また、酵素による合成方法では、ペルオキシダーゼを用いる方法(Shegmin Sang et.al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 12(2), 459-467 (2004)(非特許文献3))が報告されている。このペルオキシダーゼでの反応では、過酸化水素とピロガロールが用いられている。
【特許文献1】特開2000-226329号公報
【非特許文献1】Naoto Oku et.al., Biol. Pharm. Bull., 26(9), 1235-1238 (2003)
【非特許文献2】Gen-ichiro Nonaka,Fumio Hashimoto and Itsuo Nishioka, Chem. Pharm. Bull., 34(1), 61-65 (1986)
【非特許文献3】Shegmin Sang et.al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 12(2), 459-467 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フェリシアン化カリウムを用いる方法は、フェリシアン化カリウムは食品添加物としての使用は認められていないことから、食品の製造には適用できない。
【0006】
ペルオキシダーゼを用いる方法に関しては、過酸化水素は食品添加物として認められているが、最終食品の完成前に分解または除去することになっているので、その分解または除去の工程が必須である。特に、過酸化水素自体は安定であるが、生体中の重金属錯体、例えばFe2+−錯体によって速やかにヒドロキシラジカル(OH・)を生成するので、生体を構成するあらゆる有機化合物を酸化し、細胞毒となりうる。また、ピロガロールは食品添加物として認められていない。
【0007】
上記従来の技術では食品製造に直接利用できないという欠点があった。従って、食品に直接利用できるエピテアフラガリン及びエピテアフラガリン-3-O-ガレートの簡便な製造方法が望まれていた。
【0008】
そこで本発明の目的は、食品に直接利用できるエピテアフラガリン及びエピテアフラガリン-3-O-ガレートの簡便な製造方法を提供することにある。
【0009】
さらに本発明の目的は、上記製造方法を利用したエピテアフラガリン及びエピテアフラガリン-3-O-ガレートを含有する飲料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、食品として使用が認められている各種ポリフェノールオキシダーゼや食品添加物として認められている没食子酸を利用して、緑茶等の風味を損なうことなくエピテアフラガリン類を製造する方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、以下のとおりである。
[1]エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートに、没食子酸の存在下、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類の製造方法。
[2]茶抽出物に没食子酸を添加し、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、前記茶抽出物に含まれる少なくとも一部のエピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートを、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類を含有する飲料の製造方法。
[3]茶抽出物が、緑茶抽出物、ウーロン茶抽出物、または紅茶抽出物である[2]に記載の製造方法。
[4]茶抽出物に含まれるエピガロカテキン及びエピガロカテキンガレートの総量に対してモル比で1〜10の没食子酸を添加する[2]または[3]に記載の製造方法。
[5]ポリフェノールオキシダーゼが、ラッカーゼ(EC1.10.3.2)、チロシナーゼ(EC 1.14.18.1)、ビリルビンオキシダーゼ(EC1.3.3.5)、フェノールおよびポリフェノールオキシダーゼ(EC1.10.3.1)から成る群から選ばれる少なくとも1種の酵素である[1]〜[4]のいずれか1項に記載の製造方法。
[6]ポリフェノールオキシダーゼは遊離の酵素または固定化酵素である[1]〜[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
[7]ポリフェノールオキシダーゼは遊離の酵素であり、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応後に、茶抽出物を加熱して酵素を失活させることをさらに含む[2]〜[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
[8]ポリフェノールオキシダーゼは固定化酵素であり、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、固定化酵素を茶抽出物に添加して行い、変換反応後に茶抽出物から固定化酵素を除去することを含む、[2]〜[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
[9]ポリフェノールオキシダーゼは固定化酵素であり、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、固定化酵素を充填した容器に没食子酸を添加した茶抽出物を通すことで行う、[2]〜[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
[10]ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、茶抽出物に酸素または空気を通気しながら行う[2]〜[9]のいずれか1項に記載の製造方法。
[11]飲料が、緑茶飲料、緑茶風飲料、ウーロン茶飲料、ウーロン茶風飲料、紅茶飲料、または紅茶風飲料である[2]〜[10]のいずれか1項に記載の製造方法。
[12]飲料が、エピテアフラガリン類を0.0001〜0.5質量%含有する[2]〜[11]のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
食品製造に直接利用できるエピテアフラガリン、エピテアフラガリン-3-O-ガレートの製造が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートに、没食子酸の存在下、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類の製造方法に関する。
【0014】
さらに、本発明は、茶抽出物に没食子酸を添加し、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、前記茶抽出物に含まれる少なくとも一部のエピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートを、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類を含有する飲料の製造方法に関する。
【0015】
本発明のエピテアフラガリン類を含有する飲料の製造方法は、本発明のエピテアフラガリン類の製造方法の一態様である。以下、エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートが茶抽出物に含まれている場合、即ち、エピテアフラガリン類を含有する飲料の製造方法を例に説明する。エピテアフラガリン類の製造方法については、エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートが茶抽出物を、エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートを含有する原料または原料溶液、と読み替えて実施することができる。
【0016】
本発明において、茶抽出物は、エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートを含有する物であれば特に制限はない。茶抽出物としては、例えば、緑茶抽出物、ウーロン茶抽出物、または紅茶抽出物を挙げることができる。
【0017】
緑茶抽出物
緑茶は、ツバキ属(Camellia)植物の葉の抽出物であり、主にCamellia sinensis、Camellia assamicaの新芽を原料として、それを乾燥させたものである。緑茶抽出物としては、例えば、SD緑茶エキスパウダーNo.16714(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)、サンフェノンBG(太陽化学株式会社)などを挙げることができる。また、抽出法としては、原料を熱水、含水アルコール、グリセリン水溶液、酢酸エチル等にて抽出し、精製・濃縮し、噴霧乾燥または凍結乾燥する方法がある。
【0018】
ウーロン茶抽出物
ウーロン茶は、緑茶抽出物と同様の茶葉を一定時間発酵させ、その後加熱して発酵を停止したものである(半発酵茶)。ウーロン茶抽出物としては、例えば、FDウーロン茶エキスパウダーNo.16297(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)などを挙げることができる。また、抽出法としては、原料を熱水、含水アルコール、グリセリン水溶液、酢酸エチル等にて抽出し、精製・濃縮し、噴霧乾燥または凍結乾燥する方法がある。
【0019】
紅茶抽出物
紅茶は、緑茶抽出物と同様の茶葉を強発酵させ、その後加熱して発酵を停止したものである(強発酵茶)。紅茶抽出物としては、例えば、SD紅茶エキスパウダーNo.16691(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)などを挙げることができる。また、抽出法としては、原料を熱水、含水アルコール、グリセリン水溶液、酢酸エチル等にて抽出し、精製・濃縮し、噴霧乾燥または凍結乾燥する方法がある。
【0020】
茶抽出物の例を以下の表1に示す。但し、これらの茶抽出物は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0021】
【表1】
EGCおよびEGCg含有量は、各メーカーのカタログ値
【0022】
本発明の方法では、茶抽出物に含まれるエピガロカテキン及びエピガロカテキンガレートの総量に対してモル比で1〜10の没食子酸を添加することが適当である。好ましくはエピガロカテキン及びエピガロカテキンガレートの総量に対してモル比で2〜5の没食子酸を添加する。
【0023】
ポリフェノールオキシダーゼは、エピガロカテキンを、それぞれエピテアフラガリンに変換することができ、かつエピガロカテキンガレートをエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することができる酵素であれば、特に制限はない。そのようなポリフェノールオキシダーゼとしては、例えば、ラッカーゼ(EC1.10.3.2)、チロシナーゼ(EC 1.14.18.1)、ビリルビンオキシダーゼ (EC1.3.3.5)、フェノールおよびポリフェノールオキシダーゼ(EC1.10.3.1)から成る群から選ばれる少なくとも1種の酵素を挙げることができる。なお、チロシナーゼ(EC 1.14.18.1)は、一部、1.10.3.1にも分類されるが、1.10.3.1に分類される酵素も、本発明ではチロシナーゼ(EC 1.14.18.1)の一部である。
【0024】
ポリフェノールオキシダーゼは遊離の酵素または固定化酵素であることができる。ポリフェノールオキシダーゼは遊離の酵素である場合、ポリフェノールオキシダーゼは没食子酸を添加した茶抽出物に所定量添加し、所定時間、所定温度で変換反応を行う。ポリフェノールオキシダーゼの所定量とは、例えば、茶抽出物を0.5(w/v)% 〜15(w/v)%を含む溶液1mlに対して10〜200Uの範囲である。
【0025】
尚、茶抽出物にどの程度のエピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートが含有されているかは、茶抽出物により異なる。例えば、エピガロカテキンとエピガロカテキンガレートの総和が20(w/w)%以上と称されているSD緑茶エキスパウダーでは、エピガロカテキンが約10(w/w)%、エピガロカテキンガレートが約13(w/w)%ほど含まれている。従って、例えば茶抽出物を1%含む溶液は、エピガロカテキンが約1mg/ml、エピガロカテキンガレートが約1.3mg/mlになる。
【0026】
変換反応についての所定時間とは、例えば、10分〜15時間、所定温度とは20〜60℃の範囲である。ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応後に、茶抽出物を加熱して酵素を失活させることをさらに含む。加熱条件は、70〜90℃で2〜10分とすることが適当である。
【0027】
ポリフェノールオキシダーゼは固定化酵素であることもできる。固定化酵素を用いる場合、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、固定化酵素を、没食子酸を添加した茶抽出物に添加して行うことができる。変換反応の時間及び温度は、例えば、10〜240分、所定温度とは20〜60℃の範囲である。変換反応後に茶抽出物から固定化酵素を除去する。除去は、例えば、固定化酵素を濾過することで行うことができる。
【0028】
ポリフェノールオキシダーゼは固定化酵素である場合、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、固定化酵素を充填した容器に没食子酸を添加した茶抽出物を通すことで行うこともできる。茶抽出物の流通の条件は、温度を20〜60℃の範囲とし、固定化酵素との接触時間を例えば、10〜240分の範囲とすることで行うことができる。
【0029】
ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、茶抽出物に酸素または空気を通気しながら行うことができる。酸素または空気を通気することで、変換反応を促進することができる。酸素または空気の通気条件は例えば、0.2〜10 L/L/minとすることができる。さらに、通気の効果を高めるために、反応液を攪拌しながら通気を行うこともできる。
【0030】
ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、茶抽出物に含まれる少なくとも一部のエピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートを、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換するように実施する。目的によっては、エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートの全量がエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換するように、没食子酸の添加量や反応条件を選択することができる。
【0031】
ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、茶抽出物に没食子酸を添加して行うが、茶抽出物には、ポリフェノールオキシダーゼ活性のpH依存性を考慮して、pH調整を目的として緩衝剤を添加することもできる。但し、変換反応生成物は、そのまま飲料として利用されることを考慮すると、緩衝剤としては、例えば、リン酸及びその塩類、クエン酸及びその塩類などを用いることが好ましい。勿論、緩衝剤を添加せずに、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応を行うこともできる。
【0032】
本発明の製造方法により得られる飲料は、そのまま飲料として利用することができる。本発明の製造方法により得られる飲料は、具体的には、茶飲料であり、茶飲料としては、例えば、緑茶飲料、緑茶風飲料、ウーロン茶飲料、ウーロン茶風飲料、紅茶飲料、または紅茶風飲料を挙げることができる。本発明の製造方法により得られる飲料は、エピテアフラガリン類を、例えば、0.0001〜0.5質量%含有するものであることができる。
【0033】
さらに、本発明の製造方法により得られる飲料は、そのまま飲料として利用することもできるが、没食子酸存在下で茶抽出物をポリフェノールオキシダーゼで処理した液を、抽出・精製または濃縮を行い、噴霧乾燥または凍結乾燥し、整粒によりエキス粉末を調製する。こうした濃縮溶液またはエキス粉末を各種形態の食品およびヘルスケア製品の原料として供することもできる。
【0034】
濃縮溶液またはエキス粉末を適用できる食品としては、例えば、ガム、菓子、キャンデー、サプリメント等を挙げることができる。濃縮溶液またはエキス粉末を適用できるヘルスケア製品としては、例えば、口腔洗浄液、歯磨きペースト等を挙げることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明しるす。
【0036】
実施例1:ラッカーゼ処理した緑茶エキスにおけるエピテアフラガリン、エピテアフラガリン-3-O-ガレートの検出、分離精製ならびに構造決定
緑茶エキス250g、没食子酸一水和物20g、リン酸緩衝液(pH2.4)600mL、ラッカーゼY1.66g(ダイワ化成社製、200,000U)に水を加えて全量2Lとし、55℃で10時間反応を行った。この酵素反応液を液体クロマトグラフ法により、次の分析条件で測定を行ったところ、ラッカーゼ未処理には認められないピーク(ピーク1:エピテアフラガリン)と増大したピーク(ピーク2:エピテアフラガリン-3-O-ガレート)を検出した(図.1)。
【0037】
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:320nm)
カラム:YMC-Pack ODS-A A-312(6.0φ×150mm)
カラム温度:40℃
移動相:0.05mol/Lリン酸二水素ナトリウム試液/アセトニトリル混液(10:3)
流量:1.0mL/min
【0038】
次に、これら2成分を単離・精製した。
ラッカーゼ処理後の反応液2Lを酢酸エチル2Lで2回抽出した。酢酸エチル層に5%炭酸水素ナトリウム水溶液100mLを2回加えてアルカリ洗浄し、水洗(100mL×2回)した後、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。この液を綿栓ろ過し、ろ液をロータリーエバポレーターにて乾固し、残留物90gを得た。移動相にて溶解し、逆相カラムクロマトグラフィー(カラム:Lobar Column LiChroprep RP-18(37×440mm)、移動相:0.05mol/Lリン酸二水素ナトリウム試液/アセトニトリル混液(17:3)→(4:1))を行い、成分1及び成分2を多く含む画分をそれぞれ回収し、ロータリーエバポレーターにて濃縮し、酢酸エチルにて抽出し、酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、綿栓ろ過後、ろ液をロータリーエバポレーターにて乾固し、成分1を多く含む残留物770mg (Fr.1)及び成分2を多く含む残留物730mg(Fr.2)を得た。それぞれシュウ酸処理シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シュウ酸処理をしたシリカゲル10gを充填(カラム径1.5cm)し、溶出(溶離液:酢酸エチル/ヘキサン混液(1:1)→(2:1))した。さらに、少量の酢酸エチルに溶解し、少量のヘキサンを添加して、ほぼ単一の橙色結晶10mgを得た(図.2)。
また、Fr.2においても同様のシュウ酸処理シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、エタノール(99.5)/水により再結晶を行い、橙色結晶14mgを得た(図.3)。
【0039】
[分析条件]
カラム:TSK gel ODS-80Ts(4.6φ×150mm)
カラム温度:40℃
移動相:水/アセトニトリル/リン酸混液(500:150:1)
流量:1.0mL/min
検出波長:254nm(各下側)、210nm(各上側)
【0040】
3)2成分の構造解析
得られた2成分について機器分析(NMR、MALDI-TOFMS、ESI-精密MS、紫外吸収スペクトル)を行った。各機器分析の分析条件は以下のとおりである。
・NMR:13C-NMR:100MHz,溶媒CD3OD。1H-NMR:400MHz,溶媒CD3OD。
・MALDI-TOFMS:AXIMA-CFR plus(島津製作所/KRATO,ver2.4.0,リフレクトロンモード),マトリックス溶液:2,5-ジヒドロキシ安息香酸(2,5-DHB),カチオン化剤:NaCl
・ESI-精密MS:AgilentLC1100/ABI QSTARXL
・紫外可視吸収スペクトル:紫外可視分光光度計(島津製作所,UV250)。試料溶液は約0.01mg/mLの50%エタノール溶液とした。
【0041】
(1)成分1の構造解析について
成分1の1H-NMRスペクトルでは、epicatechinのA環、C環に由来する5.98ppm(1H, d, J=2.4Hz)、5.97ppm(1H, d, J=2.4Hz)、4.81ppm(1H, s)、4.27ppm(1H, m)、2.93ppm、2.82ppm(2H, m)のシグナルが認められた。また、13C-NMRスペクトル、さらにHMQC及びHMBCによる解析により、図4の構造式とした。
成分1(約0.01mg/mLの50%エタノール溶液)の紫外可視吸収スペクトルを測定したとき、 306nm、281nmに極大吸収を示した(図5)。また、MALDI-TOFMSの測定では、カチオン化剤であるNaClの添加により、m/z 423が強く検出され、m/z 401が消失したことより、[M+H]+が401であり、分子量は400で、構造を支持した(図6、7)。
【0042】
なお、この成分1は非特許文献(Gen-ichiro Nonaka,Fumio Hashimoto and Itsuo Nishioka, Chem. Pharm. Bull., 34(1), 61-65 (1986)のスペクトルデータと一致し、エピテアフラガリン及びピロガリンと命名されている化合物であった。
【0043】
(2)成分2の構造解析について
成分2の1H-NMRスペクトルにおいて、エピカテキン部分のC-2,C-3に結合する水素のシグナルが低磁場側にシフトしているので、C-3の水酸基はエステルになっていると考えられ、ガロイル基が置換した図8の構造式とした。成分2(約0.01mg/mLの50%エタノール溶液)の紫外可視吸収スペクトルを測定したとき、成分1と類似し、302nm、280nmに極大吸収を示した(図9)。MALDI-TOFMSの測定(図10、11)では、カチオン化剤であるNaClの添加により、m/z 575が強く検出され、m/z 553が消失したことより、[M+H]+が553であり、分子量は552とし、成分1よりもガロイル基の分子量に相当する152だけ大きいことからも、成分2の構造を支持した。
【0044】
なお、この成分2は非特許文献2(Gen-ichiro Nonaka,Fumio Hashimoto and Itsuo Nishioka, Chem. Pharm. Bull., 34(1), 61-65 (1986))、及びShegmin Sang et.al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 12(2), 459-467 (2004)のスペクトルデータと一致し、エピテアフラガリン-3-O-ガレートと命名されている化合物であった。
【0045】
以上、2成分の機器分析の結果を表2にまとめた。
【0046】
【表2】
【0047】
実施例2:ラッカーゼによる茶エキスからのエピテアフラガリン、エピテアフラガリン-3-O-ガレートの製造 (その1)
SD緑茶エキスパウダー(三栄源エフ・エフ・アイ)250gを10%エタノール溶液1000mLに溶かし、リン酸塩緩衝液(pH2.4)600mL、20%没食子酸エタノール溶液100mL、酵素溶液(ダイワラッカーゼY120、200,000U、1.66g、白色腐朽菌由来Trametes sp.、EC1.10.3.2)200mL、水100mLを添加して合計2000mLとし、55℃で攪拌しながら酵素反応を開始した。反応開始4時間後及び6時間後に酵素溶液0.83g/50mLを追加した。この場合のエピテアフラガリンならびにエピテアフラガリン3-O-ガレートの生成量を下記の分析条件で液体クロマトグラフ法にて分析した。その結果を表3に示す。
【0048】
[分析条件]
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:280nm)
カラム:YMC-Pack ODS-A A-312(6.0φ×150mm)
カラム温度:30℃
移動相:0.05mol/Lリン酸二水素ナトリウム試液/アセトニトリル混液(10:3)
流量:1.0mL/min
【0049】
【表3】
【0050】
実施例3:ラッカーゼによる茶エキスからのエピテアフラガリン、エピテアフラガリン-3-O-ガレートの製造(その2)
水100mLに、SD緑茶エキスパウダー(三栄源エフ・エフ・アイ)1g、没食子酸一水和物0.48g、ダイワラッカーゼY120 2500U〜10000Uを加え、50℃で酵素反応を行った。なお、処理開始時にはおよそのエピガロカテキン及びエピガロカテキンガレートの総量に対してモル比で没食子酸約4.4存在した。このときのエピテアフラガリン及びエピテアフラガリン-3-O-ガレートそれぞれの生成量の変化を図12および図13に示した。最大生成量は、エピテアフラガリンは2.78mg/g(50℃、30分、ラッカーゼ5000U)、エピテアフラガリン-3-ガレートは15.41mg/g(50℃、30分、ラッカーゼ10000U)であった。
【0051】
実施例4:チロシナーゼまたはビリルビンオキシダーゼによる茶エキスからのエピテアフラガリン、エピテアフラガリン-3-O-ガレートの製造
20mmol/Lリン酸カリウム塩緩衝液中にエピガロカテキンガレート6.9mg、没食子酸一水和物2.8mg及びポリフェノールオキシダーゼ(チロシナーゼ20Uまたはビリルビンオキシダーゼ0.4U)を添加し、合計1.5mLの溶液中で、チロシナーゼの場合は25℃ 3時間、ビリルビンオキシダーゼの場合は、45℃、2時間反応を行った。
反応液を液体クロマトグラフ法により、次の分析条件で測定を行った。
【0052】
[分析条件]
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:280nm)
カラム:YMC-Pack ODS-A A-312(6.0φ×150mm)(エピテアフラガリン-3-ガレート分析時)
Cadenza CD-C18(4.6φ×75mm)(エピテアフラガリン分析時)
移動相:0.05mol/Lリン酸二水素ナトリウム試液/アセトニトリル混液(10:3)
流 量:1.0mL/min
【0053】
このときのエピテアフラガリン類の生成量の総量を表4に示した。
チロシナーゼ(EC1.14.18.1)はフナコシ−Worthington Biochemical Corp.製の Mushroom由来のものを使用し、ビリルビンオキシダーゼ(EC.1.3.3.5)は和光純薬−天野エンザイム製のMyrothesium sp.由来のものを使用した。
【0054】
【表4】
【0055】
実施例5:エピガロカテキンガレートからエピテアフラガリン-3-O-ガレートの製造(反応pHの制御))
各pHのリン酸ナトリウム塩緩衝液中にエピガロカテキンガレート4.6mg、没食子酸1.9mg、ラッカーゼ20U(1回添加、または2度添加)して、合計1mLについて試験管中で50℃、3 時間反応を行った。反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例2に示す分析条件で測定を行った。pH4.5〜pH8でエピテアフラガリン-3-O-ガレートが生成し、最大の生成量はpH6.0から6.5で認められた。また酵素は一度に添加するよりも、2度に分けて逐次添加する方が、生成量が増大した。
【0056】
【表5】
【0057】
実施例6:エピガロカテキンガレートからエピテアフラガリン-3-O-ガレートの製造(没食子酸の添加量の制御 その1)
没食子酸量を倍の3.8mgとして他の条件は実施例5と同様にして反応を行った。反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例2に示す分析条件で測定を行った。モル比でエピガロカテキン-3-O-ガレート:没食子酸=1:2の方が1:1(実施例5)よりも生成量が多かった。
【0058】
【表6】
【0059】
実施例7:エピガロカテキンガレートからエピテアフラガリン-3-O-ガレートの製造(通気量の制御)
ラッカーゼによるテアフラガリン類の生成において、10 L/L/minの空気を通気し、エピテアフラガリン-3-ガレートの生成量を測定した。20mmol/Lリン酸カリウム塩緩衝液(pH 6.5) /エタノール混液(20:1)50mLにエピガロカテキンガレート0.23g、没食子酸一水和物 0.19g、ダイワラッカーゼ 1000U(9.3mg)を添加し、50℃、30分間、次の(1)、(2)のいずれかの方法を100mL容三角フラスコ中で反応を行った。(1)振盪のみ、(2)振盪しながら、空気を通気して反応。反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例2に示す分析条件で測定を行った。通気により、エピテアフラガリン-3-O-ガレートの生成量が多くなることを確認した。
【0060】
【表7】
【0061】
実施例8:エピガロカテキンからエピテアフラガリンの製造(反応pHの制御)
各pHのリン酸カリウム塩緩衝液中にエピガロカテキン3.1mg、没食子酸1.9mg、ラッカーゼ20U(1回添加、または2度に分割して添加)して、合計1mLについて試験管中で50℃、2時間反応を行った。反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例4に示す分析条件で測定を行った。pH4.7〜pH7.5でエピテアフラガリンが生成し、pH 6.5のとき最も生成量が多かった。
【0062】
【表8】
【0063】
実施例9:エピガロカテキンからエピテアフラガリンの製造(没食子酸の添加量の制御)
没食子酸量を倍の3.8mgとして他の条件は実施例8と同様にして反応を行った。反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例4に示す分析条件で測定を行った。モル比でエピガロカテキン:没食子酸=1:2の方が1:1(実施例8)よりも生成量が多かった。
【0064】
【表9】
【0065】
実施例10:エピガロカテキンからエピテアフラガリンの製造(通気量の制御)
ラッカーゼによるテアフラガリン類の生成において、空気を通気し、エピテアフラガリンの生成量を測定した。20mmol/Lリン酸カリウム塩緩衝液(pH 7.0) /エタノール混液(20:1)50mLにエピガロカテキン0.16g、没食子酸一水和物 0.19g、ダイワラッカーゼ 1000U(9.3mg)を添加し、50℃、30分間、次の(1)、(2)のいずれかの方法を100mL容三角フラスコ中で反応を行った。(1)振盪のみ、(2)振盪しながら、10L/L/minの空気を通気して反応した。反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例4に示す分析条件で測定を行った。通気により、エピテアフラガリンの生成率が高くなることを確認した。
【0066】
【表10】
【0067】
実施例11:既知法と本発明法によるエピテアフラガリン製造法の比較
ラッカーゼによる酵素反応は次のとおり行った。0.1mol/Lリン酸カリウム塩緩衝液(pH4.5)中、エピガロカテキン3.1mg、没食子酸一水和物1.9mg、ラッカーゼ0.5U加えて、全量5mLで50℃、8時間酵素反応を行った。また、既知の方法(Shegmin Sang et.al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 12(2), 459-467 (2004))によるペルオキシダーゼを用いる酵素反応は次のとおり行った。0.1mol/Lリン酸カリウム塩緩衝液(pH6.0)中、エピガロカテキン3.1mg、ピロガロール1.3mg、30%過酸化水素水0.02mL、ペルオキシダーゼ(西洋ワサビ由来、東洋紡)0.5Uを加えて、全量5mLで45℃、8時間酵素反応を行った。その反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例2に示す分析条件で測定を行った。
ペルオキシダーゼによる既知製造法では、エピテアフラガリン以外にもプルプロガリンを生成した(図14)が、本発明のラッカーゼを用いる方法では認められなかった(図15)。プルプロガリンは刺激性の高い化合物であり、食品製造には好ましくない。
【0068】
【表11】
【0069】
実施例12:既知法と本発明法によるエピテアフラガリン-3-O-ガレート製造法の比較 その1
ラッカーゼによる酵素反応は次のとおり行った。0.1mol/Lリン酸カリウム塩緩衝液(pH4.5)中、エピガロカテキン-3-O-ガレート4.6mg、没食子酸一水和物1.9mg、ラッカーゼ0.5U加えて、全量5mLで50℃、8時間酵素反応を行った。
また、既知の方法(Shegmin Sang et.al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 12(2), 459-467 (2004))によるペルオキシダーゼを用いる酵素反応は次のとおり行った。0.1mol/Lリン酸カリウム塩緩衝液(pH6.0)中、エピガロカテキン-3-O-ガレート4.6mg、ピロガロール1.3mg、30%過酸化水素水0.02mL 、ペルオキシダーゼ(西洋ワサビ由来、東洋紡)0.5Uを加えて、全量5mLで45℃、8時間酵素反応を行った。
その反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例3の分析条件で測定を行った。
ペルオキシダーゼによる製造法では、エピテアフラガリン-3-O-ガレート以外にもプルプロガリンが生成した(図16)が、本発明のラッカーゼを用いる方法の場合はプルプロガリンの生成は認められなかった(図17)。
【0070】
実施例13:既知法と本発明法によるエピテアフラガリン-3-O-ガレート製造法の比較 その2
既知法によるペルオキシダーゼ酵素反応の場合は、リン酸カリウム塩緩衝液(pH5.5)中でエピガロカテキンガレート4.6mg、ピロガロール1.3mg、ペルオキシダーゼ20U(10Uずつ2度に分けて)添加し、全量1mLとし、45℃、3時間、酵素反応を行った。また、本発明による酵素反応の場合は、リン酸カリウム塩緩衝液(pH 6.5)中でエピガロカテキンガレート4.6mg、没食子酸一水和物1.9mg、ラッカーゼ20U(10Uずつ2度に分けて)添加し、全量1mLとし、45℃で3時間酵素反応を行った。反応液を液体クロマトグラフ法により、実施例3の分析条件で測定を行った。
ペルオキシダーゼの場合は、エピテアフラガリン-3-O-ガレートが1.46mg生成 し、プルプロガリンは0.31mg生成した(図18)。本発明のラッカーゼを用いる方法の場 合は、エピテアフラガリン-3-O-ガレートが0.19mg生成し、副生成物のプル プロガリンの生成を認めなかった(図19)。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、エピテアフラガリン類を含有する飲料の製造分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ラッカーゼ処理した緑茶エキスのクロマトグラム(上:ラッカーゼ処理、下:ラッカーゼ未処理)
【図2】単離した成分1のクロマトグラム
【図3】単離した成分2のクロマトグラム
【図4】成分1の構造式
【図5】成分1 の紫外可視吸収スペクトル(UV-250)
【図6】成分1のマススペクトル(マトリックス:2,5-DHB)
【図7】成分1のマススペクトル(マトリックス:2,5-DHB+NaCl)
【図8】成分2の構造式
【図9】成分2の紫外可視吸収スペクトル(島津UV-250)
【図10】成分2のマススペクトル(マトリックス:2,5-DHB)
【図11】成分2のマススペクトル(マトリックス:2,5-DHB+NaCl)
【図12】エピテアフラガリンの生成量の変化(添加酵素量との関係)
【図13】エピテアフラガリン-3-ガレートの生成量の変化(添加酵素量との関係)
【図14】エピテアフラガリン製造法の比較結果(ペルオキシダーゼの場合)
【図15】エピテアフラガリン製造法の比較結果(ラッカーゼの場合)
【図16】エピテアフラガリン-3-O-ガレート製造法の比較結果(ペルオキシダーゼの場合)
【図17】エピテアフラガリン-3-O-ガレート製造法の比較結果(ラッカーゼの場合)
【図18】エピテアフラガリン-3-O-ガレート製造法の比較結果(ペルオキシダーゼの場合)
【図19】エピテアフラガリン-3-O-ガレート製造法の比較結果(ラッカーゼの場合)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートに、没食子酸の存在下、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類の製造方法。
【請求項2】
茶抽出物に没食子酸を添加し、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、前記茶抽出物に含まれる少なくとも一部のエピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートを、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類を含有する飲料の製造方法。
【請求項3】
茶抽出物が、緑茶抽出物、ウーロン茶抽出物、または紅茶抽出物である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
茶抽出物に含まれるエピガロカテキン及びエピガロカテキンガレートの総量に対してモル比で1〜10の没食子酸を添加する請求項2または3に記載の製造方法。
【請求項5】
ポリフェノールオキシダーゼが、ラッカーゼ(EC1.10.3.2)、チロシナーゼ(EC 1.14.18.1)、ビリルビンオキシダーゼ(EC1.3.3.5)、フェノールおよびポリフェノールオキシダーゼ(EC1.10.3.1)から成る群から選ばれる少なくとも1種の酵素である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
ポリフェノールオキシダーゼは遊離の酵素または固定化酵素である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
ポリフェノールオキシダーゼは遊離の酵素であり、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応後に、茶抽出物を加熱して酵素を失活させることをさらに含む請求項2〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
ポリフェノールオキシダーゼは固定化酵素であり、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、固定化酵素を茶抽出物に添加して行い、変換反応後に茶抽出物から固定化酵素を除去することを含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
ポリフェノールオキシダーゼは固定化酵素であり、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、固定化酵素を充填した容器に没食子酸を添加した茶抽出物を通すことで行う、請求項2〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、茶抽出物に酸素または空気を通気しながら行う請求項2〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
飲料が、緑茶飲料、緑茶風飲料、ウーロン茶飲料、ウーロン茶風飲料、紅茶飲料、または紅茶風飲料である請求項2〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
飲料が、エピテアフラガリン類を0.0001〜0.5質量%含有する請求項2〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項1】
エピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートに、没食子酸の存在下、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類の製造方法。
【請求項2】
茶抽出物に没食子酸を添加し、ポリフェノールオキシダーゼを作用させて、前記茶抽出物に含まれる少なくとも一部のエピガロカテキン及び/又はエピガロカテキンガレートを、それぞれエピテアフラガリン及び/又はエピテアフラガリン-3-O-ガレートに変換することを含む、エピテアフラガリン類を含有する飲料の製造方法。
【請求項3】
茶抽出物が、緑茶抽出物、ウーロン茶抽出物、または紅茶抽出物である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
茶抽出物に含まれるエピガロカテキン及びエピガロカテキンガレートの総量に対してモル比で1〜10の没食子酸を添加する請求項2または3に記載の製造方法。
【請求項5】
ポリフェノールオキシダーゼが、ラッカーゼ(EC1.10.3.2)、チロシナーゼ(EC 1.14.18.1)、ビリルビンオキシダーゼ(EC1.3.3.5)、フェノールおよびポリフェノールオキシダーゼ(EC1.10.3.1)から成る群から選ばれる少なくとも1種の酵素である請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
ポリフェノールオキシダーゼは遊離の酵素または固定化酵素である請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
ポリフェノールオキシダーゼは遊離の酵素であり、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応後に、茶抽出物を加熱して酵素を失活させることをさらに含む請求項2〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
ポリフェノールオキシダーゼは固定化酵素であり、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、固定化酵素を茶抽出物に添加して行い、変換反応後に茶抽出物から固定化酵素を除去することを含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
ポリフェノールオキシダーゼは固定化酵素であり、ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、固定化酵素を充填した容器に没食子酸を添加した茶抽出物を通すことで行う、請求項2〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
ポリフェノールオキシダーゼによる変換反応は、茶抽出物に酸素または空気を通気しながら行う請求項2〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
飲料が、緑茶飲料、緑茶風飲料、ウーロン茶飲料、ウーロン茶風飲料、紅茶飲料、または紅茶風飲料である請求項2〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
飲料が、エピテアフラガリン類を0.0001〜0.5質量%含有する請求項2〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【図4】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−319140(P2007−319140A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156488(P2006−156488)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(306018343)クラシエ製薬株式会社 (32)
【出願人】(000236920)富山県 (197)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(306018343)クラシエ製薬株式会社 (32)
【出願人】(000236920)富山県 (197)
【Fターム(参考)】
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