説明

エポキシ化合物製造用触媒混合物及びそれを用いたエポキシ化合物の製造方法

【課題】オレフィン類を酸化させてエポキシ化合物を製造する場合において、有機副生成物の発生を十分に抑制しつつ、高い転化率及び高い選択率でエポキシ化合物を製造することが可能なエポキシ化合物製造用触媒混合物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1):
・[Z2−(O2−] ・・・(1)
(式(1)中、Xは対カチオンを表し、Zは元素周期律表第4〜8族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を表し、mは1〜16の整数を表し、aは1〜32の整数を表し、bは1〜64の整数を表し、cは1〜16の整数を表す。)
で表される過酸化物触媒と、
下記一般式(2)及び/又は(3):
・・・(2)
MO ・・・(3)
(式(2)及び(3)中、Mはアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、2価の遷移金属元素、及び3価のランタニド元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を表す。)
で表される金属過酸化物と、
下記一般式(4):
(RCO)O ・・・(4)
(式(4)中、Rは炭素数1〜10の炭化水素を表す。)
で表されるカルボン酸無水物及び/又は下記組成式(5):
BO ・・・(5)
で表されるホウ酸と、
を含有することを特徴とするエポキシ化合物製造用触媒混合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン類を酸化させてエポキシ化合物を製造する場合に用いられる触媒混合物、及びそれを用いたエポキシ化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ化合物は、ポリエーテルやポリオール、グリコール類の原料、有機化学薬品及び農薬の中間体、各種の樹脂の硬化剤といった用途に用いられ、工業上極めて重要な化学製品のうちの一つである。
【0003】
そして、オレフィン類を原料とするエポキシ化合物の製造方法としては、(i)オレフィンに塩素及び水を付加して得られるクロロヒドリンを脱塩化水素する、いわゆるクロロヒドリン法、また、遷移金属触媒の存在下において酸化剤によりオレフィン類を酸化させてエポキシ化合物を製造する方法として、(ii)過酸化水素、有機過酸化物等の過酸化物を酸化剤として用いる方法、(iii)アルカンやアルデヒド等の共酸化剤の存在下に、分子状酸素により系内で過酸化物を生成させてオレフィンを酸化する、いわゆる共酸化反応による方法、(iv)分子状酸素を酸化剤としてオレフィンを直接酸化する方法が知られている。
【0004】
しかしながら、これらの方法のうちの(i)の方法では、塩素を含有する副生成物が多量に発生するという問題があった。また、前記(ii)の方法では、比較的高転化率、高選択率でエポキシ化合物が得られるが、高価な過酸化物を多量に使用する反応であるためコストが高く、また過酸化物の分解生成物等の再利用が困難な有機副生成物が多量に発生するという問題があった。また、前記(iii)の方法では、化学量論量の共酸化剤を必要とし、また多量の併産物の発生があるために、このような併産物の市況によりエポキシ化合物の製造コストが影響を受けるという問題があった。さらに、前記(iv)の方法では、担持銀系触媒の存在下においてエチレンを分子状酸素を酸化剤として直接酸化する方法が行われているが、アリル位の酸化による副反応が起こり易いプロピレンを原料とするプロピレンオキシドの製造においては、転化率及び選択率が低いために経済的でないといった問題があった。
【0005】
このような状況から、オレフィン類の酸化による効率的なエポキシ化合物の製造に関する研究が行われており、特に有効利用することが困難な有機副生成物が発生しないという観点から、前記(iv)の方法に関する研究が行われている。例えば、特開2004−2234号公報(特許文献1)には、バナジウムイオンを層状化合物に担持した触媒の存在下において、分子状酸素によりオレフィン類を酸化してエポキシ化合物を製造する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載されているような方法は、オレフィン類の転化率及びエポキシ化合物の選択率の点で必ずしも十分な方法ではなく、特にアリル位の酸化による副反応が起こり易いプロピレンを酸化させた際のプロピレンオキシドの選択率の点で必ずしも十分な方法ではなかった。
【0006】
また、特開2005−161208号公報(特許文献2)には、分子状酸素によるオレフィン類の酸化によりエポキシ化合物を製造する際に用いられる、過酸化酸素基を含有する金属過酸化物と貴金属化合物からなる触媒、及びそれを用いたエポキシ化合物の製造方法が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載されているような方法は、高価な貴金属化合物を触媒成分として使用することからコストが大きいという問題があった。また、このような方法は、オレフィン類の転化率及びエポキシ化合物の選択率の点で必ずしも十分な方法ではなく、特にアリル位の酸化による副反応が起こり易いプロピレンを酸化させた際のプロピレンの転化率及びプロピレンオキシドの選択率の点で必ずしも十分な方法ではなかった。
【特許文献1】特開2004−2234号公報
【特許文献2】特開2005−161208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、オレフィン類を酸化させてエポキシ化合物を製造する場合において、有機副生成物の発生を十分に抑制しつつ、高い転化率及び高い選択率でエポキシ化合物を製造することが可能なエポキシ化合物製造用触媒混合物、並びにその触媒混合物を用いたエポキシ化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、オレフィン類の酸化によるエポキシ化合物の製造において、特定の過酸化物触媒、特定の金属過酸化物、並びにカルボン酸無水物及び/又はホウ酸を含有する触媒混合物を用いることにより、有機副生成物の発生を十分に抑制しつつ、高い転化率及び高い選択率でエポキシ化合物を製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のエポキシ化合物製造用触媒混合物は、下記一般式(1):
・[Z2−(O2−] ・・・(1)
(式(1)中、Xは対カチオンを表し、Zは元素周期律表第4〜8族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を表し、mは1〜16の整数を表し、aは1〜32の整数を表し、bは1〜64の整数を表し、cは1〜16の整数を表す。)
で表される過酸化物触媒と、
下記一般式(2)及び/又は(3):
・・・(2)
MO ・・・(3)
(式(2)及び(3)中、Mはアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、2価の遷移金属元素、及び3価のランタニド元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を表す。)
で表される金属過酸化物と、
下記一般式(4):
(RCO)O ・・・(4)
(式(4)中、Rは炭素数1〜10の炭化水素を表す。)
で表されるカルボン酸無水物及び/又は下記組成式(5):
BO ・・・(5)
で表されるホウ酸と、
を含有することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のエポキシ化合物製造用触媒混合物においては、前記過酸化物触媒が{PO[W(O)(O}の有機四級アミン塩であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明のエポキシ化合物製造用触媒混合物においては、前記金属過酸化物が過酸化バリウムであることが好ましい。
【0012】
また、本発明のエポキシ化合物製造用触媒混合物においては、前記カルボン酸無水物が無水酢酸であることが好ましい。
【0013】
本発明のエポキシ化合物の製造方法は、前記一般式(1)で表される過酸化物触媒と、
前記一般式(2)及び/又は(3)で表される金属過酸化物と、前記一般式(4)で表されるカルボン酸無水物及び/又は前記組成式(5)で表されるホウ酸とを含有する触媒混合物の存在下において、オレフィン類を酸化させてエポキシ化合物を得ることを特徴とする方法である。
【0014】
また、本発明のエポキシ化合物の製造方法においては、前記金属過酸化物が還元されて生成される金属酸化物を、分子状酸素を含む雰囲気下において焼成して、前記金属過酸化物を再生する工程を更に含むことが好ましい。
【0015】
さらに、本発明のエポキシ化合物の製造方法においては、前記過酸化物触媒が{PO[W(O)(O}の有機四級アミン塩であることが好ましい。
【0016】
また、本発明のエポキシ化合物の製造方法においては、前記金属過酸化物が過酸化バリウムであることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明のエポキシ化合物の製造方法においては、前記カルボン酸無水物が無水酢酸であることが好ましい。
【0018】
また、本発明のエポキシ化合物の製造方法においては、前記オレフィン類が炭素数2〜30の炭化水素であることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明のエポキシ化合物の製造方法においては、前記オレフィン類がプロピレンであることが好ましい。
【0020】
また、本発明のエポキシ化合物の製造方法においては、前記オレフィン類の反応溶媒としてベンゼンを用いることが好ましい。
【0021】
なお、本発明のエポキシ化合物製造用触媒混合物によれば、オレフィン類を酸化させてエポキシ化合物を製造する場合において、有機副生成物の発生を十分に抑制しつつ、高い転化率及び高い選択率でエポキシ化合物を製造することが可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者は以下のように推察する。すなわち、本発明の触媒混合物を用いて、オレフィン類を酸化させてエポキシ化合物を製造する場合においては、オレフィン類の酸化反応の進行に伴い、本発明にかかる過酸化物触媒が還元されて酸化物触媒となるとしても、本発明にかかる金属過酸化物と無水酢酸との反応により生成するアセチルパーオキサイド、或いは、金属過酸化物とホウ酸との反応により生成する過ホウ酸によって酸化されるために、前記過酸化物触媒の過酸化酸素基(O2−)が再生する。また、それに伴い金属過酸化物から生じた金属酸化物は、分子状酸素を含む雰囲気下において焼成することにより、容易に前記金属過酸化物へと再生することが可能であり、再生された金属過酸化物は繰り返し使用することが可能である。したがって、このような触媒混合物を用いる場合においては、オレフィン類を間接的に空気を供給源とする分子状酸素により酸化させてエポキシ化合物を得ることが可能である。
【0022】
そのため、本発明の触媒混合物を用いる場合においては、有機過酸化物等を酸化剤として用いる方法やいわゆる共酸化反応による方法による場合のように、有機過酸化物や共酸化剤等を必要とせず、低いコストでエポキシ化合物を製造することができ、さらには有効利用することが困難な有機副生成物の発生を十分に抑制することができるものと本発明者は推察する。さらに、本発明の触媒混合物を用いる場合においては、本発明にかかる過酸化物触媒がオレフィン類を効率よく酸化し、且つ本発明にかかる金属過酸化物と無水酢酸等との反応生成物が過酸化物触媒の過酸化酸素基を効率よく再生するため、高い転化率及び高い選択率でエポキシ化合物を製造することが可能となるものと本発明者は推察する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、オレフィン類を酸化させてエポキシ化合物を製造する場合において、有機副生成物の発生を十分に抑制しつつ、高い転化率及び高い選択率でエポキシ化合物を製造することが可能なエポキシ化合物製造用触媒混合物、並びにその触媒混合物を用いたエポキシ化合物の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0025】
先ず、本発明のエポキシ化合物製造用触媒混合物について説明する。すなわち、本発明のエポキシ化合物製造用触媒混合物は、前記一般式(1)で表される過酸化物触媒と、前記一般式(2)及び/又は(3)で表される金属過酸化物と、前記一般式(4)で表されるカルボン酸無水物及び/又は前記組成式(5)で表されるホウ酸とを含有することを特徴とするものである。
【0026】
本発明にかかる過酸化物触媒は、以下説明する一般式(1):
・[Z2−(O2−] ・・・(1)
で表されるものである。
【0027】
一般式(1)において、Xは対カチオンを表し、Zは元素周期律表第4〜8族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を表し、mは1〜16の整数を表し、aは1〜32の整数を表し、bは1〜64の整数を表し、cは1〜16の整数を表す。
【0028】
そして、このような過酸化物触媒は、一般式(1)で表されるように、X・[Z2−(O)2−]で表される過酸化物アニオンと対カチオンとからなるものである。
【0029】
このような過酸化物アニオンは、過酸化酸素基(O2−)を含むものであればよく、例えば、単核金属過酸化物、イソポリ化合物の過酸化物、ヘテロポリ化合物の過酸化物であってもよい。このような単核金属過酸化物としては、例えば、[WO(O(HO)]O、[WO(O]、[MoO(O]、[ReO(O]、[Fe(O)]が挙げられる。また、このようなイソポリ化合物の過酸化物としては、例えば、[W(O]、[W(O(HO)]、[Mo(O(HO)]が挙げられる。さらに、ヘテロポリ化合物の過酸化物としては、例えば、{PO[W(O)(O}、{PO[Mo(O)(O}、{(HPO)[W(O(O]}、{SiO[MoO(O(O]}、{SiO[MoO(O]}、{SiO[WO(O(O]}、{SiO[WO(O]}が挙げられる。これらの過酸化物アニオンの中でも、触媒としての活性及び選択性という観点から、ヘテロポリ化合物の過酸化物が好ましく、{PO[W(O)(O}が特に好ましい。
【0030】
また、このような過酸化物アニオンの対カチオンとしては特に限定されないが、例えば、プロトン、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアリカリ金属イオン、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属イオン;有機金属クラスター;下記一般式(6):
{RL}+ ・・・(6)
(式(6)中、R〜RはC〜C20のアルキル基を表し、Lは窒素またはリンを表す。)
で表されるアルキルアンモニウムカチオン又はアルキルホスフォニウムカチオンが挙げられる。これらの対カチオンの中でも、過酸化物触媒が有機溶媒に可溶となるために、触媒活性が向上し、また後述する金属化酸化物が還元されて生成される金属酸化物をろ過等の方法により容易に分離できるという観点から、前記一般式(4)で表されるアルキルアンモニウムカチオン又はアルキルホスフォニウムカチオンが好ましく、四級のアルキルアンモニウムカチオンが特に好ましい。
【0031】
このような過酸化物触媒は、公知の方法にて分離、回収され、再度反応に使用することが可能である。さらに、このような過酸化物触媒は、無機担体上に担持して使用することもできる。また、このような無機担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、ボリア等が挙げられる。
【0032】
また、このような過酸化物触媒は、公知の方法にて製造することができ、例えば、J.Mol. Catal. 32, 107 (1985)、Inorg.Chem. 30, 4409 (1991)に記載されている方法により製造することができる。
【0033】
本発明にかかる金属過酸化物は、以下説明する一般式(2)及び/又は(3):
・・・(2)
MO ・・・(3)
で表されるものである。
【0034】
一般式(2)及び/又は(3)において、Mはアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、2価の遷移金属元素、及び3価のランタニド元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を表す。
【0035】
このような金属過酸化物としては、例えば、過酸化リチウム(Li)、過酸化ナトリウム(Na)、過酸化カリウム(K)、過酸化マグネシウム(MgO)、過酸化カルシウム(CaO)、過酸化バリウム(BaO)、過酸化亜鉛(ZnO)、過酸化カドミウム(CdO)、過酸化水銀(HgO)、過酸化鉛(PbO)が挙げられる。これらの金属過酸化物の中でも、安全に取り扱えるという観点から、アルカリ土類金属の過酸化物が好ましく、過酸化バリウム(BaO)が特に好ましい。
【0036】
このような金属過酸化物は、無機担体上に担持して使用することもできる。また、このような無機担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ・アルミナ、ボリア等が挙げられる。
【0037】
本発明にかかるカルボン酸無水物は、下記一般式(4):
(RCO)O ・・・(4)
で表されるものである。そして、一般式(4)において、Rは炭素数1〜10の炭化水素を表す。
【0038】
このようなカルボン酸無水物としては、例えば、無水ギ酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水イソ吉草酸、無水ピバル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水安息香酸、無水トルイル酸、無水フタル酸、無水ナフトエ酸が挙げられる。これらの中でも、得られる触媒混合物の触媒性能が優れるという観点から、無水酢酸が好ましい。
【0039】
本発明にかかるホウ酸は、下記組成式(5):
BO ・・・(5)
で表されるものである。
【0040】
このようなホウ酸としては、例えば、ホウ酸、オルトホウ酸、メタホウ酸、ピロホウ酸、無水ホウ酸が挙げられる。これらの中でも、ホウ酸が好ましい。
【0041】
本発明の触媒混合物は、前述した過酸化物触媒、金属過酸化物、並びにカルボン酸無水物及び/又はホウ酸を含有するものである。このような触媒混合物における過酸化物触媒と金属過酸化物との使用割合は特に制限されないが、例えば、金属過酸化物に対する過酸化物触媒の質量比(過酸化物触媒の質量/金属過酸化物の質量)が0.00001〜5の範囲となる割合であることが好ましく、0.0005〜0.1の範囲となる割合であることがより好ましい。また、このような触媒混合物における過酸化物触媒とカルボン酸無水物及び/又はホウ酸との使用割合は特に制限されないが、例えば、カルボン酸無水物及び/又はホウ酸に対する過酸化物触媒の質量比(過酸化物触媒の質量/カルボン酸無水物及び/又はホウ酸の質量)が0.00001〜5の範囲となる割合であることが好ましく、0.0005〜0.1の範囲となる割合であることがより好ましい。このような本発明の触媒混合物によれば、オレフィン類を酸化させてエポキシ化合物を製造する場合において、有機副生成物の発生を十分に抑制しつつ、高い転化率及び高い選択率でエポキシ化合物を製造することが可能となる。
【0042】
次に、本発明のエポキシ化合物の製造方法について説明する。すなわち、本発明のエポキシ化合物の製造方法は、前記一般式(1)で表される過酸化物触媒と、前記一般式(2)及び/又は(3)で表される金属過酸化物と、前記一般式(4)で表されるカルボン酸無水物及び/又は前記組成式(5)で表されるホウ酸とを含有する触媒混合物の存在下において、オレフィン類を酸化させてエポキシ化合物を得ることを特徴とする方法である。
【0043】
本発明に用いられる触媒混合物としては、前述した本発明の触媒混合物を好適に用いることができる。また、本発明に用いられる過酸化物触媒、金属過酸化物、カルボン酸無水物及びホウ酸としては、前述した本発明の触媒混合物に用いるものと同様のものをそれぞれ用いることができる。また、これらの過酸化物触媒、金属過酸化物、カルボン酸無水物又はホウ酸は、反応時に個別に導入することもでき、またあらかじめ両者を混合調製したものを反応に用いることも可能である。
【0044】
本発明に用いられるオレフィン類としては、不飽和二重結合を少なくとも一つ有するものであればよく、特に制限されない。このようなオレフィン類としては、例えば、アルケン類、ポリエン類、芳香族オレフィン性炭化水素類、脂環式オレフィン性炭化水素類、置換型オレフィン性炭化水類が挙げられる。また、アルケン類としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン類、ブタジエン、ペンテン類、ヘキセン類、ヘプテン類、オクテン類、ジイソブチレン類、ノネン類、リモネン、ピネン、ミルセン、ウンデセン類、ペンタデセン類、オクタデセン類、ノナデセン類、プロピレンの3量体及び4量体が挙げられる。ポリエン類としては、例えば、鎖状テルペン類、ポリブタジエンが挙げられ、芳香族オレフィン性炭化水素類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジビニルベンゼン、インデン、スチルベンゼンが挙げられる。さらに、脂環式オレフィン性炭化水素類としては、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロデセン、シクロドデセン、シクロドデカトリエン、ジシクロペンタジエン、メチルシクロペンテン、メチルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキセンが挙げられる。また、置換型オレフィン性炭化水素類としては、例えば、メチルアリルケトン等のオレフィンケトン類;塩化アリル、臭化アリル、塩化メタクリル、ジクロロブテン等のハロゲン化オレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のオレフィンカルボン酸類;アリルアルコール等のオレフィンアルコール類;アリルアセテート、アルキルアクリレート、アルキルメタクレート等のオレフィンエステル類が挙げられる。
【0045】
これらのオレフィン類の中でも、本発明においては、炭素数2〜30の炭化水素を好適に用いることができる。また、本発明においては、オレフィン類を酸化させてエポキシ化合物を得る際に、特にアリル位の酸化による副反応が起こり易いプロピレンであっても好適に用いることができる。
【0046】
以上、本発明のエポキシ化合物の製造方法に用いる触媒混合物及びオレフィン類について説明したが、以下、オレフィン類を酸化させてエポキシ化合物を得る際(酸化反応)の反応条件について説明する。本発明にかかる酸化反応は、気相及び液相のいずれで行うこともできるが、過酸化物触媒として有機溶媒に可溶なものを用いる場合には、その活性が向上するという観点から、液相で反応を行うことが好ましい。また、液相で反応を行う場合の反応溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;アセトニトリル等のニトリル類;その他のアルコール類;アルデヒド類;塩化炭化水素類を用いることができる。これらの反応溶媒の中でも、反応に悪影響を与えないという観点から、芳香族炭化水素類、エーテル類が好ましい。さらに、これらの反応溶媒の中でも、過酸化物触媒との親和性が高いという観点から、ベンゼンが特に好ましい。
【0047】
また、このように液相で反応を行う場合の反応温度は特に限定されないが、20〜500℃の範囲であることが好ましく、60〜200℃の範囲であることがより好ましい。反応温度が前記下限未満では、反応が進行し難い傾向にあり、他方、前記上限を超えると、副反応の増加によりエポキシ化合物の選択率が低下する傾向にある。
【0048】
さらに、このように液相で反応を行う場合の反応圧力は任意であるが、加圧して反応を行うことが好ましい。そして、このような反応圧力が0.01〜100MPaの範囲であることが好ましく、0.1〜5MPaの範囲であることがより好ましい。反応圧力が前記下限未満では、特に気体のオレフィン類を原料とする場合には、反応の進行が遅くなる傾向にあり、他方、前記上限を超える圧力とするためには、反応設備が高価なものとなる傾向にある。
【0049】
また、本発明にかかる酸化反応における前記過酸化物触媒の使用量は、原料である前記オレフィン類1モルに対して、0.001〜0.5モルの範囲であることが好ましく、0.01〜0.1モルの範囲であることがより好ましい。また、本発明にかかる酸化反応においては、原料であるオレフィン類を、窒素、ヘリウム、アルゴンガス等の不活性ガスで希釈して用いてもよい。
【0050】
さらに、本発明にかかる酸化反応の形態は特に限定されず、いわゆる回分式、半回分式、連続式のいずれの形態を採用してもよい。反応装置は攪拌設備を有する槽型反応器からなるものであってよく、その場合、本発明の触媒混合物を構成する金属過酸化物、過酸化物触媒(有機化合物に不溶の場合)、カルボン酸無水物(固体であり且つ有機化合物に不溶の場合)又はホウ酸は懸濁相を形成することが好ましい。また、金属過酸化物、過酸化物触媒(有機化合物に不溶の場合)が無機担体上に担持されている場合には、塔型の反応器にこれらを充填した固定床反応器であってもよい。
【0051】
本発明のエポキシ化合物の製造方法においては、前述のように、前記過酸化物触媒の過酸化酸素基(O2−)の再生に伴い金属過酸化物が還元されて金属酸化物が生成される。そして、本発明のエポキシ化合物の製造方法においては、このような金属酸化物を、分子状酸素を含む雰囲気下において焼成して、前記金属過酸化物を再生する(再生処理)工程を更に含むことが好ましい。
【0052】
このような再生処理工程により、前記触媒混合物を構成する金属過酸化物が還元されて生成される金属酸化物を前記金属過酸化物へと再生して、その金属過酸化物を再び本発明の触媒混合物に使用することができる。そのため、オレフィン類を間接的に分子状酸素により酸化させてエポキシ化合物を得ることが可能となる。
【0053】
このような再生処理工程においては、先ず、前述した酸化反応により金属過酸化物が還元されて生成される金属酸化物を分離する。このような金属酸化物は反応溶媒等の有機化合物には不溶であるので、過酸化物触媒として有機化合物に可溶なものを使用し、しかもカルボン酸無水物として液体のもの又は有機化合物に可溶なものを使用した場合には、反応終了後に、ろ過等の方法にて容易に過酸化物触媒、カルボン酸無水物及び反応生成物等と分離することが可能である。
【0054】
このような再生処理工程においては、次に、分離された金属酸化物を分子状酸素を含む雰囲気下において焼成(熱処理)して、前記金属過酸化物を再生する。ここでいう分子状酸素を含む雰囲気下とは、分子状酸素を含む気体が前記金属酸化物と接する状態を指す。分子状酸素を含む気体とは、分子状酸素(酸素ガス)、又は分子状酸素を窒素、アルゴン等の不活性ガスにより希釈したものである。これらの中で特に好ましいものは、経済性の観点から空気である。このような焼成においては、分子状酸素を含む気体を供給する方法は特に限定されないが、金属酸化物を含む容器に、空気又は分子状酸素を含む気体を流通させる方法が好ましい。また、焼成温度は特に限定されないが、100〜1000℃の範囲であることが好ましく、400〜800℃の範囲であることがより好ましい。焼成温度が前記下限未満では金属過酸化物への再生が十分に進行しない傾向にあり、他方、前記上限を超える温度とするためには設備が高価なものとなる傾向にある。さらに、焼成時間は焼成温度にもよるが、0.1〜100時間の範囲であることが好ましく、0.2〜10時間の範囲であることがより好ましい。また、分子状酸素を含む気体の圧力及び流速は特に限定されず適宜選択することができる。
【0055】
また、このような再生処理工程においては、金属過酸化物が還元されて生成される金属酸化物を反応中に、反応系から連続的に少量ずつ抜き出し、これを再生のための設備に供給し、連続的に再生処理を行い、再生された金属過酸化物を再び反応系に戻してもよい。さらに、金属過酸化物を無機担体に担持した場合には、これを充填した反応器に原料、過酸化物触媒、及び溶媒を連続的に供給して反応を行い、金属過酸化物が概ね金属酸化物に還元された時点で、原料、過酸化物触媒、カルボン酸無水物及び溶媒の供給を停止し、反応器中の残存物を排出した後、空気又は分子状酸素を含む気体を供給し、反応器を所定の温度に保つことにより、反応器中で金属過酸化物の再生処理を行ってもよい。また、このような場合においては、反応器を複数設置し、反応器の切替によりオレフィン類の酸化反応と金属過酸化物の再生処理を異なる反応器にて同時に行い、反応を連続的に行ってもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、オレフィン類の転化率、及びエポキシ化合物の選択率は、ガスクロマトグラフ装置(アジレントテクノロジー社製、製品名「6890N型」)を用いて、反応生成物のガスクロマトグラフィー分析を行って測定した。また、オレフィン類の転化率とは、原料のオレフィン類のモル数に対する反応したオレフィン類のモル数の百分率のことをいう。さらに、エポキシ化合物の選択率とは、反応したオレフィン類のモル数に対する得られたエポキシ化合物のモル数の百分率のことをいう。また、エポキシ化合物の収率とは、原料のオレフィン類のモル数に対する得られたエポキシ化合物のモル数の百分率のことをいう。
【0057】
(製造例)
過酸化酸素基(O2−)を含有する過酸化物触媒:[(n−C13N]{PO[W(O)(O}を以下に示すような方法によって製造した。すなわち、先ず、100mlのビーカーを用い、温度60℃で2.5g(10mmol)のタングステン酸を30%の過酸化水素水7mlに溶解させ、室温に冷却した後、0.62mlのリン酸(2.5mmol)を添加し、その後、15分間攪拌して溶液Aを得た。次に、100mlのビーカーを用い、1.56g(4mmol)の塩化テトラ−n−ヘキシルアンモニウムを40mlのベンゼンに溶解させて溶液Bを得た。そして、得られた溶液Bを室温にて得られた溶液Aに滴下し、30分間攪拌して白い沈殿物を得た。その後、得られた白い沈殿物を濾過し、20mlのメタノール、次いで50mlのジエチルエーテルで洗浄した後に、風乾し、1.5gの粗生成物を得た。そして、得られた粗生成物を35mlのエーテル及び塩化メチレンの混合溶媒により再結晶し、風乾した後、1.0gの過酸化物触媒:[(n−C13N]{PO[W(O)(O}を得た。
【0058】
(実施例1)
ベンゼン15mlの入った50mlのオートクレーブ反応器に、製造例で得られた過酸化物触媒0.45g(0.21mmol)、粉末状の過酸化バリウム10.2g(63mmol)、及び無水酢酸12.9g(126mmol)からなる触媒混合物を加えた。そして、反応器を密閉した後に、反応器内にプロピレン2.5g(60mmol)を導入した。その後、75℃に昇温した後に温度を保ちつつ、激しく攪拌しながらプロピレンを反応せしめた。反応後、反応液が室温になるまで冷却し、得られた気体生成物及び液体生成物をそれぞれガスクロマトグラフィーにより分析した。反応開始から3時間後の生成物を分析したところ、プロピレン転化率44.4%、選択率66.1%にてプロピレンオキシドが生成していることが確認された。
【0059】
(実施例2)
先ず、実施例1において反応終了時に系内に存在した沈殿物(酸化バリウム)をろ別した。その後、得られた沈殿物(酸化バリウム)を電気炉にて、空気中、600℃、1時間の条件下において、焼成することにより過酸化バリウムへと再生させた(再生処理)。
【0060】
そして、製造例で得られた過酸化物触媒、無水酢酸及び再生処理によって得られた過酸化バリウムからなる触媒混合物を用いた以外は実施例1と同様にしてプロピレンのエポキシ化反応を行い、得られた気体生成物及び液体生成物をそれぞれガスクロマトグラフィーにより分析した。反応開始から3時間後の生成物を分析したところ、プロピレン転化率39.1%、選択率64.1%にてプロピレンオキシドが生成していることが確認された。
【0061】
(実施例3)
ベンゼン15mlの入った50mlのオートクレーブ反応器に、製造例で得られた過酸化物触媒0.45g(0.21mmol)、粉末状の過酸化バリウム10.2g(63mmol)、及びホウ酸7.8g(126mmol)からなる触媒混合物を加えた。そして、反応器を密閉した後に、反応器内にプロピレン2.5g(60mmol)を導入した。その後、75℃に昇温した後に温度を保ちつつ、激しく攪拌しながらプロピレンを反応せしめた。反応後、反応液が室温になるまで冷却し、得られた気体生成物及び液体生成物をそれぞれガスクロマトグラフィーにより分析した。反応開始から3時間後の生成物を分析したところ、プロピレン転化率11.6%、選択率37.1%にてプロピレンオキシドが生成していることが確認された。
【0062】
(実施例4)
先ず、実施例3において反応終了時に系内に存在した沈殿物(酸化バリウム)をろ別した。その後、得られた沈殿物(酸化バリウム)を電気炉にて、空気中、600℃、1時間の条件下において、焼成することにより過酸化バリウムへと再生させた(再生処理)。
【0063】
そして、製造例で得られた過酸化物触媒、ホウ酸及び再生処理によって得られた過酸化バリウムからなる触媒混合物を用いた以外は実施例3と同様にしてプロピレンのエポキシ化反応を行い、得られた気体生成物及び液体生成物をそれぞれガスクロマトグラフィーにより分析した。反応開始から3時間後の生成物を分析したところ、プロピレン転化率8.0%、選択率29.1%にてプロピレンオキシドが生成していることが確認された。
【0064】
(比較例1)
製造例で得られた過酸化物触媒を用いなかった以外は実施例1と同様にしてプロピレンのエポキシ化反応を行い、得られた気体生成物及び液体生成物をそれぞれガスクロマトグラフィーにより分析した。反応開始から3時間後の生成物を分析したところ、プロピレンオキシドの生成は認められなかった。
【0065】
(比較例2)
過酸化バリウムを用いなかった以外は実施例1と同様にしてプロピレンのエポキシ化反応を行い、得られた気体生成物及び液体生成物をそれぞれガスクロマトグラフィーにより分析した。反応開始から3時間後の生成物を分析したところ、収率1.4%にてプロピレンオキシドが生成していることが確認された。
【0066】
(比較例3)
無水酢酸を用いなかった以外は実施例1と同様にしてプロピレンのエポキシ化反応を行い、得られた気体生成物及び液体生成物をそれぞれガスクロマトグラフィーにより分析した。反応開始から3時間後の生成物を分析したところ、収率1.4%にてプロピレンオキシドが生成していることが確認された。
【0067】
(実施例5)
ベンゼン10mlの入った50mlのガラス製フラスコ容器に、製造例で得られた過酸化物触媒0.15g(0.07mmol)、粉末状の過酸化バリウム3.6g(21mmol)、及び無水酢酸4.3g(42mmol)からなる触媒混合物、並びにシス−シクロオクテン2.2g(20mmol)を加えた。その後、反応系を窒素雰囲気とし、75℃に昇温した後に温度を保ちつつ、攪拌しながらシス−シクロオクテンを反応せしめた。反応後、反応液が室温になるまで冷却し、得られた液体生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応開始から3時間後の生成物を分析したところ、シス−シクロオクテン転化率59.2%、選択率70.1%にてシクロオクテンオキシドが生成していることが確認された。
【0068】
(比較例4)
製造例で得られた過酸化物触媒を用いなかった以外は実施例5と同様にしてシス−シクロオクテンのエポキシ化反応を行い、得られた液体生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応開始から3時間後の生成物を分析したところ、シス−シクロオクテンオキシドの生成は認められなかった。
【0069】
(比較例5)
過酸化バリウムを用いなかった以外は実施例5と同様にしてシス−シクロオクテンのエポキシ化反応を行い、得られた液体生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応開始から3時間後の生成物を分析したところ、収率1.4%にてシス−シクロオクテンオキシドが生成していることが確認された。
【0070】
(比較例6)
無水酢酸を用いなかった以外は実施例5と同様にしてシス−シクロオクテンのエポキシ化反応を行い、得られた液体生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応開始から3時間後の生成物を分析したところ、収率1.4%にてシス−シクロオクテンオキシドが生成していることが確認された。
【0071】
実施例1〜5及び比較例1〜6に示した結果から明らかなように、本発明の触媒混合物を用いた本発明のエポキシ化合物の製造方法(実施例1〜5)によれば、高い転化率及び高い選択率でエポキシ化合物を製造することができることが確認された。また、本発明の触媒混合物を構成する金属過酸化物は、空気中で焼成することにより、容易に再生させることができ、繰り返し本発明の触媒混合物に使用することが可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明したように、本発明によれば、オレフィン類を酸化させてエポキシ化合物を製造する場合において、有機副生成物の発生を十分に抑制しつつ、高い転化率及び高い選択率でエポキシ化合物を製造することが可能なエポキシ化合物製造用触媒混合物、並びにその触媒混合物を用いたエポキシ化合物の製造方法を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
・[Z2−(O2−] ・・・(1)
(式(1)中、Xは対カチオンを表し、Zは元素周期律表第4〜8族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を表し、mは1〜16の整数を表し、aは1〜32の整数を表し、bは1〜64の整数を表し、cは1〜16の整数を表す。)
で表される過酸化物触媒と、
下記一般式(2)及び/又は(3):
・・・(2)
MO ・・・(3)
(式(2)及び(3)中、Mはアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、2価の遷移金属元素、及び3価のランタニド元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を表す。)
で表される金属過酸化物と、
下記一般式(4):
(RCO)O ・・・(4)
(式(4)中、Rは炭素数1〜10の炭化水素を表す。)
で表されるカルボン酸無水物及び/又は下記組成式(5):
BO ・・・(5)
で表されるホウ酸と、
を含有することを特徴とするエポキシ化合物製造用触媒混合物。
【請求項2】
前記過酸化物触媒が{PO[W(O)(O}の有機四級アミン塩であることを特徴とする請求項1に記載の触媒混合物。
【請求項3】
前記金属過酸化物が過酸化バリウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒混合物。
【請求項4】
前記カルボン酸無水物が無水酢酸であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の触媒混合物。
【請求項5】
下記一般式(1):
・[Z2−(O2−] ・・・(1)
(式(1)中、Xは対カチオンを表し、Zは元素周期律表第4〜8族元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を表し、mは1〜16の整数を表し、aは1〜32の整数を表し、bは1〜64の整数を表し、cは1〜16の整数を表す。)
で表される過酸化物触媒と、
下記一般式(2)及び/又は(3):
・・・(2)
MO ・・・(3)
(式(2)及び(3)中、Mはアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、2価の遷移金属元素、及び3価のランタニド元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を表す。)
で表される金属過酸化物と、
下記一般式(4):
(RCO)O ・・・(4)
(式(4)中、Rは炭素数1〜10の炭化水素を表す。)
で表されるカルボン酸無水物及び/又は下記組成式(5):
BO ・・・(5)
で表されるホウ酸と、
を含有する触媒混合物の存在下において、オレフィン類を酸化させてエポキシ化合物を得ることを特徴とするエポキシ化合物の製造方法。
【請求項6】
前記金属過酸化物が還元されて生成される金属酸化物を、分子状酸素を含む雰囲気下において焼成して、前記金属過酸化物を再生する工程を更に含むことを特徴とする請求項5に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【請求項7】
前記過酸化物触媒が{PO[W(O)(O}の有機四級アミン塩であることを特徴とする請求項5又は6に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【請求項8】
前記金属過酸化物が過酸化バリウムであることを特徴とする請求項5〜7のうちのいずれか一項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【請求項9】
前記カルボン酸無水物が無水酢酸であることを特徴とする請求項5〜8のうちのいずれか一項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【請求項10】
前記オレフィン類が炭素数2〜30の炭化水素であることを特徴とする請求項5〜9のうちのいずれか一項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【請求項11】
前記オレフィン類がプロピレンであることを特徴とする請求項5〜9のうちのいずれか一項に記載のエポキシ化合物の製造方法。
【請求項12】
前記オレフィン類の反応溶媒としてベンゼンを用いることを特徴とする請求項5〜11のうちのいずれか一項に記載のエポキシ化合物の製造方法。

【公開番号】特開2008−173630(P2008−173630A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320804(P2007−320804)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】