説明

エポキシ官能性化合物のための硬化剤

アミン官能性化合物を、α−β不飽和の酸および/またはエステルならびに単官能性エポキシ化合物と、反応させることによって得られることができる、エポキシシステムのための硬化剤として使用するのに適した化合物、およびこれらの硬化剤を含んでいるコーティング組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ官能性化合物のためのアミン官能性硬化剤に関する。本明細書の文脈において、アミン官能性とは、1以上の−NHまたは−NH基を含んでいることを意味する。本発明は、コーティング組成物へのこのようなアミン−エポキシシステムの利用およびこのようなコーティング組成物でコーティングされた基体にも関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ官能性化合物を硬化するために使用されることができるアミン官能性化合物の一部は、健康および環境の問題と関連している。たとえば、これらは皮膚感作性物質であることがある。加えて、エポキシ官能性化合物を含有するシステムの硬化の際に、アミン官能性化合物は一般的な環境条件、たとえば湿度および二酸化炭素に敏感であることがある。
【0003】
エポキシ官能性化合物およびアミン官能性化合物を含んでいるコーティング組成物を硬化するときにしばしば遭遇する問題は、いわゆる「アミンブルーム(amine bloom)」の生成である。アミンブルームの生成についての考えられる説明は、塗膜形成の際にアミン官能性硬化剤が水およびCOと反応してカルバメート塩を生成することがありうることである。これらのカルバメート塩はコーティング膜の本体とは多くの場合非相容性であり、表面ににじみ出る。このようにして、グリース状の膜(「アミンブルーム」)が、硬化されたコーティングの表面上に形成され、これは外観および保護膜に有害な作用を及ぼす。アミン官能性硬化剤と水およびCOとの反応のもう一つの結果は、アミンがエポキシと反応することが妨げられることである。したがって、エポキシ基と反応するアミノ基がより少なくなる。塗膜中に形成される網状組織に、したがって塗膜の特性に、これは影響を及ぼす。高湿度と同時に低温度において硬化が行われることになるときに、アミンブルームは最も一般的に見られる。
【0004】
過去40年間にわたって、その下で硬化が行われるところの環境条件にアミン−エポキシ反応をより低度に敏感にし、より頑健にし、これらの物質を取り扱うことの危険を低減しようと数人の人々が試みてきた。典型的には、アミン官能性化合物を予備反応させることによって、これは行われた。該反応生成物はより少ない量の遊離のアミン分子を有し、したがって硬化の際の環境条件に対してより頑健である。加えて、該反応生成物は典型的には予備反応されていないアミン官能性化合物よりも大きい分子である。十分に大きいと、該分子は使用するのがより安全であろう。この一つの理由は、十分に大きい分子は人の皮膚中へと入ることができず、したがって皮膚感作性物質として作用しないだろうということである。ポリマーのEUの定義を満たすアミン硬化剤は、満たさないものよりも使用するのが安全であると推定される。
【0005】
たとえば、アミン官能性化合物を脂肪族グリシジルエーテルと反応させて、エポキシ官能性化合物を硬化するのに使用されることができるアミン官能性化合物を得ることが知られている。とは言っても、この手法には不都合な点がある。ポリアミンが脂肪族2官能性グリシジルエーテルと反応されるならば、得られたアミン官能性化合物は貯蔵するのが困難であることがある。貯蔵すると、このアミン官能性化合物は非常に安定というわけではなく、「種を生じる(seed out)」ことがある、すなわち固形粒子が貯蔵槽の底に沈降することがある。この問題についての考えられる説明は、ほとんどの脂肪族ジグリシジルエーテルは比較的高いレベルの加水分解性塩素を有していることである。貯蔵すると、加水分解性塩素はアミン官能性化合物との反応を行って、アンモニウム塩を生成することがある。ポリアミンと脂肪族2官能性グリシジルエーテルとの反応の他の不都合な点は、使用するのがより安全であるように十分に高い分子量をその生成物が有すると、それは非常に高い粘度も有することである。したがって、慣用の手法によって施与するのに適した粘度を有する硬化剤溶液を得るために、比較的大量の溶媒が要求される。この反応生成物がコーティング組成物に使用されると、これは比較的大量の揮発性有機化合物を導入することになり、これは該組成物のVOC(揮発性有機含有物)を増加する。
【0006】
特許文献1は、ポリアルキレングルコールモノグリシジルエーテルとアミン官能性化合物との付加物を開示している。得られた付加物が比較的低粘度を有することを、この文献は述べている。モノエポキシ官能性化合物とポリアミンとの反応によって、低分子量の化学種が得られることができるという事実にもかかわらず、このような反応生成物を含有するシステムは不都合な点を有する。まず、該分子の大きさおよびこれらがポリマー状ではない事実の故に、該物質は生物学的に活性である可能性がより高く、したがって健康および環境の問題を誘起するかも知れない。少量のみのエポキシがポリアミンと反応されるならば、比較的高い遊離アミン含有量が保持される。本明細書において言及されている遊離アミン含有量とは、システム中の未反応の1または複数のアミン官能性化合物の量である。比較的高い遊離アミン含有量が保持されると、該システムは水および二酸化炭素との反応に敏感であり、そしてカルバメート塩が生成されることがあり、これは上述のように表面上にいわゆる「アミンブルーム」効果として現われる。アミンブルームを避けるために、十分な量のエポキシがポリアミンと反応されるならば、比較的低い官能基のみを有する低分子量の付加物が得られる。このような付加物を含んでいるシステムの硬化の後、得られた網状組織は十分ではないことがある。架橋密度が低過ぎて、許容される硬さ、靭性、可撓性、耐薬品性または適切な網状組織の発達に依存する任意の他のコーティング特性を有する硬化層を得ることができないことがある。
【0007】
そのアミン官能性基の一部が予備反応されているところのアミン硬化剤を得る公知の方法の他の例は、アミン官能性化合物をアクリル酸またはアクリル酸のエステルと反応させることである。特許文献2には、アミン−アクリレート付加物ならびにこれらの付加物をポリエポキシドを硬化するために使用する方法が記載されている。(メタ)アクリルアルキルエステルと脂環式ジアミンとの付加重縮合によって得られた硬化剤を、特許文献3は開示している。特許文献4は、脂肪族ポリアミンをアクリル酸とまたはアクリルエステルと反応させることによって調製された、エポキシシステムのための硬化剤を記載している。
【0008】
実際には、ポリアミンをアクリル酸と反応させると、低分子量を有する良好な品質の硬化剤を調製することは困難であると判っている。比較的少量のアクリル酸がポリアミンと反応されると、低分子量の化合物が得られることができる。これらの物質はしばしば低粘度を有する一方で、高い遊離アミン含有量も有し、このことは、低温度および高相対湿度において硬化されたときに、これらの物質をアミンブルームの生成をさせ易いものにする。加えて、これらの物質の低い分子量および高い遊離アミン含有量は、これらを取り扱うことを危険にすることがある。アミンブルームの生成に抵抗力がある、低い遊離アミン含有量を有する硬化剤を得るために、反応に使用されるアクリル酸の量が十分に高いときは、該硬化剤は高い粘度を有するだろう。したがって、アミンブルームの生成に抵抗力があり、かつ十分に低い粘度を有する硬化剤を得るために有機溶媒が要求されないかまたは少量のみの有機溶媒が要求されることを確実にするために十分に低い分子量も有する硬化剤が得られるように、ポリアミンとアクリル酸とのモル当量比を選択することが課題である。
【0009】
特許文献5は、水に媒体されたコーティングに使用するための自己乳化性アミン硬化剤を開示している。該硬化剤は、アミン、エポキシ官能性ポリエーテル、疎水性エポキシ、および任意的なアクリルエステルもしくは酸の反応生成物であることができる。このシステムでは、アミンはアクリル化合物の二重結合と反応し、より高い温度のプロセス条件を必要とする酸官能基とは反応しない。得られた塗膜中のポリエーテル鎖の存在は、膜特性および耐浸漬性に有害な影響を与える。
【0010】
環境条件が高相対湿度に加えて低温度であるときに、十分に硬化する硬化剤は、存在する。典型的には、これらは、モノマー状フェノール、ホルムアルデヒド、およびポリアミン、たとえばエチレンジアミンの反応によって調製されたポリマー状マンニッヒ(Mannich)塩基である。これらの物質は非常に有効な低温度硬化剤でありうるけれども、日光に曝露されると非常に急速に変色する。
【特許文献1】国際公開第02/074832号パンフレット
【特許文献2】米国特許第3,247,163号明細書
【特許文献3】特開2000−281759号公報
【特許文献4】独国特許第1072805号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0709418号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の従来技術に付随する欠点に対する解決策を提供する。とりわけ、アミンブルームの生成に対する抵抗と高固形分硬化剤を使用できる可能性との組み合わせが目標とされる。本発明の他の目的は、色の良好な安定性を有するエポキシシステムのための硬化剤を提供することである。すなわち、硬化後に、該硬化されたエポキシシステムは色の良好な安定性を有さなければならない。色の安定性とは、該エポキシシステムが、日光に曝露されたときに慣用の高固形分低温度硬化剤を用いて硬化されたエポキシ膜よりも遅い速度で変色することを意味する。他の目的は、エポキシシステムを比較的高い硬化速度で硬化する硬化剤を提供することである。さらなる目的は、エポキシシステムを低温度において硬化するために使用されることができ、かつそれを用いることによって色の良好な安定性を有する硬化されたシステムが得られることができるところの低粘度高固形分アミン官能性硬化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
単官能性エポキシ化合物と、2以上の−NHもしくは−NH基を有する1以上のアミン官能性化合物を1以上のα−β不飽和酸および/もしくは1以上のα−β不飽和エステルと反応させることによって得られることができるアミドと、を反応させることによって、または同じ最終生成物をもたらす任意の他の調製方法によって、調製されることができる硬化剤を使用することによって、本発明の目的は達成される。典型的には、アミン官能性化合物と該酸および/またはエステルとを、160℃超、たとえば180℃以上の温度において反応させることによって、アミドは生成される。該硬化剤は1以上のアミド基を有することができる。
【0013】
任意的に、他の化合物が該反応に添加されることができる。2以上の−NHまたは−NH基を有するアミン官能性化合物は、「ポリアミン」とも呼ばれる。1のエポキシ基を有する化合物は、「単官能性エポキシ化合物」とも呼ばれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の化合物は、目標とされた利点を示す。これらは、エポキシ官能性化合物のためのおよびエポキシ官能性化合物を含んでいるシステムのための硬化剤として使用されることができる。本発明に従う硬化剤は、低温度および高湿度の条件下に硬化されたときにアミンブルーム生成に対する抵抗力があることが発見された。本発明に従う硬化剤が、エポキシ官能性化合物を含んでいるシステムを硬化するために使用されると、10℃以下の温度および60%超の相対湿度において硬化されたときに、検出可能なアミンブルームを示さないシステムが調製されることができる。十分に低い粘度を有する硬化剤を得るために有機溶媒が要求されないかまたは少量のみの有機溶媒が要求されることを確実にするために十分に低い分子量を、該硬化剤は有する。本発明に従う化合物の他の利点は、本発明に従う1以上の硬化剤および1以上のエポキシ化合物を含んでいる高固形分コーティング組成物が調製されることができることであり、これはまた10℃以下の温度および60%超の相対湿度において硬化されたときにアミンブルームを示さない。
【0015】
本発明に従う硬化剤が、エポキシ官能性化合物を含んでいるシステムを硬化するために使用されると、一般に、硬化されたエポキシシステムは日光に曝露されたときに色の良好な安定性を示す。上記のポリマー状マンニッヒ塩基のような現行の高固形分低温度硬化剤と比較して、日光に曝露されたときに硬化後に有意に低減された黄変を示すエポキシシステムが、たとえば調製されることができる。さらに、エポキシシステムを硬化するために使用されたときに、本発明に従う硬化剤は比較的高い硬化速度を示す。環境温度、たとえば5〜30℃の範囲内の温度においてのみならず、高められた温度においてもエポキシシステムを硬化するために、該硬化剤は使用されることができる。本発明の化合物の大きい利点は、低温度において硬化しかつ色の良好な安定性を示す高固形分エポキシシステムを調製するために、これらの化合物が使用されることができることである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に従う硬化剤の調製に適したアミン官能性化合物は、たとえばエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−ペンタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、ピペラジン、アミノエチルピペラジン、m−キシリレンジアミン、1,3−ビス−(アミノメチル)シクロヘキシルアミン、イソホロンジアミン、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミンである。好まれるジアミンは2,2’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、m−キシリレンジアミン、および1,3−ビス−(アミノメチル)シクロヘキシルアミンである。非常に好適なポリアミンは脂肪族アミン、たとえばトリメチルヘキサメチレンジアミンおよび3−メチル−1,5−ペンタンジアミンである。極めて好適なポリアミンは環含有ジアミン、たとえばm−キシリレンジアミンおよび1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサンである。
【0017】
好適なα−β不飽和の酸およびエステルの例として、以下の化合物が挙げられることができる。すなわち、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレートまたは類似したメタクリレートエステル、メチルアクリレートまたは類似したアクリレートエステル、マレイン酸または酸無水物、マレイン酸エステル、フマル酸およびフマル酸エステル、ならびにクロトン酸およびクロトン酸エステルである。
【0018】
好適な単官能性エポキシ化合物の例として、以下の化合物が挙げられることができる。すなわち、単官能性グリシジルエーテル、たとえばブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、シクロヘキシルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、C12〜C14アルキルグリシジルエーテル(エポキシド8)、グレシル(gresyl)グリシジルエーテル、およびフェニルグリシジルエーテルである。
【0019】
アミン官能性化合物と不飽和の酸またはエステル化合物とが高められた温度において反応されると、そのアミノ基は二重結合とのみならず酸基とも反応して、アミド基を生成する。活性化された二重結合とアミンとの反応は環境温度においてすでに非常に急速であるけれども、アミンとカルボン酸またはエステル基との反応ははるかにより遅く、典型的には160℃超、たとえば180℃以上の温度における処理、または同じ効果を有する他の手段を要求する。このようにして、たとえば特許文献5における場合のような単官能性化合物よりはむしろ、2官能性化合物として不飽和の酸またはエステルは使用される。
【0020】
単官能性エポキシは、たとえばポリアミンを不飽和の酸および/またはエステルと反応させるのと同時に添加されることができ、またはその前またはその後に、たとえばアミンと不飽和の酸および/またはエステルとの反応された混合物が100℃未満、たとえば75〜85℃、たとえば約80℃の温度まで冷却された後に添加されることができる。
【0021】
50〜80重量%の1または複数のポリアミンを7.5〜17.5重量%の1または複数のα−β不飽和の酸および/またはエステルならびに10〜50重量%の1または複数の単官能性エポキシ化合物と反応させることによって、エポキシ官能性化合物を硬化するのに適している、本発明に従うアミン官能性化合物は調製されることができ、ここで重量%は、所定の成分の重量を当初仕込み分中の物質の全重量で割り、100を掛けたものである。好ましくは、反応物の割合は、60〜75重量%の1または複数のポリアミンに対して10〜16重量%の1または複数のα−β不飽和の酸および/またはエステルならびに20〜40重量%の1または複数の単官能性エポキシ化合物であり、ここで重量%は、所定の成分の重量を当初仕込み分中の物質の全重量で割り、100を掛けたものである。最も好ましくは、反応物の割合は、65〜70重量%の1または複数のポリアミンに対して12〜15重量%の1または複数のα−β不飽和の酸および/またはエステルならびに25〜35重量%の1または複数の単官能性エポキシ化合物であり、ここで重量%は、所定の成分の重量を当初仕込み分中の物質の全重量で割り、100を掛けたものである。
【0022】
40〜90モル%の1または複数のポリアミンを5〜50モル%の1または複数のα−β不飽和の酸および/またはエステルならびに5〜55モル%の1または複数の単官能性エポキシ化合物と反応させることによって、本発明に従うアミン官能性化合物は調製されることができ、ここでモル%は、所定の成分のモル数を当初仕込み分中の全モル数で割り、100を掛けたものである。好ましくは、反応物の割合は、45〜75モル%の1または複数のポリアミンに対して10〜40モル%の1または複数のα−β不飽和の酸および/またはエステルならびに10〜40モル%の1または複数の単官能性エポキシ化合物であり、ここでモル%は、所定の成分のモル数を当初仕込み分中の全モル数で割り、100を掛けたものである。最も好ましくは、反応物の割合は、50〜65モル%の1または複数のポリアミンに対して15〜30モル%の1または複数のα−β不飽和の酸および/またはエステルならびに15〜25モル%の1または複数の単官能性エポキシ化合物であり、ここでモル%は、所定の成分のモル数を当初仕込み分中の全モル数で割り、100を掛けたものである。
【0023】
エポキシ官能性化合物を硬化するのに適している、本発明に従うアミン官能性化合物の数平均分子量(Mn)は、200〜1000、好ましくは300〜500である。数平均分子量の数字は、たとえば簡略化されたストックマイヤー(Stockmeyer)分布関数から計算されることができ、当該計算は数平均分子量についての理論数をもたらす。
【0024】
エポキシ官能性化合物を硬化するのに適している、本発明に従うアミン官能性化合物の窒素当量は、普通50〜250g/モル、好ましくは75〜225g/モル、さらにより好ましくは100〜200g/モルの範囲内にある。窒素当量は滴定によって滴定されることができる。上記の窒素当量の範囲は、滴定可能な窒素原子にかかわるものである。
【0025】
エポキシシステムのための硬化剤として使用されることができる、配合物にされた硬化剤系を調製するために、本発明に従う1以上のアミン官能性化合物が使用されるときは、該硬化剤系は、通常、
・ 本発明に従う1以上のアミン官能性化合物
・ 有機溶媒および/または水、ならびに
・ 任意的な触媒
を含んでいる。
【0026】
配合物にされていない、本発明に従うアミン官能性化合物の粘度は、室温において好ましくは10〜100ポアズである。10〜100ポアズの範囲内の粘度を有するポリアミンは容易に配合物にされることができて、室温において<10ポアズの粘度を有する硬化剤を与え、これは>75%の体積固形分含有量を有するコーティング配合物を造るのに使用されることができる。これらの粘度の数字は、コーン/プレート粘度計を用いて測定される高せん断粘度として測定される。たとえば、10,000〜12,000秒−1のせん断速度についてのASTM D 4287 00に従う高せん断粘度計を使用して、高せん断粘度は測定されることができる。
【0027】
任意的に、本発明に従う硬化剤系は触媒を含んでいる。好適な触媒の例として、ノニルフェノール、サリチル酸、トリス(ジメチル)アミノメチルフェノール、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロウンデセン、水、アンモニウムチオシアネート、リチウムテトラフルオロボレ−ト、カリウムチオシアネート、ナトリウムテトラフルオロボレ−ト、リチウムベンゾエート、リチウムラクテート、リチウムヒドロオキシド、リチウムアセチルアセタノエート、カルシウムナイトレート、リチウムパークロレート、リチウムフォーメート、リチウムチオシアネート、カリウムテトラフルオロボレ−トが挙げられることができる。好まれる触媒は、ナトリウムテトラフルオロボレ−ト、カリウムチオシアネート、リチウムラクテート、リチウムヒドロオキシド、リチウムベンゾエート、および水である。
【0028】
本発明に従うアミン官能性硬化剤または硬化剤系および1以上のエポキシ官能性化合物を含んでいるコーティング組成物が調製されることができる。
【0029】
本発明に従うコーティング組成物は水に媒体されまたは溶媒に媒体されることができ、水および有機溶媒を含んでいることができる。好ましくは、該コーティング組成物は1以上の溶媒を含んでおり、より好ましくは該コーティング組成物は、有機溶媒を含んでいないかまたは全コーティング組成物当たり20重量%までのみの有機溶媒を含んでいる高固形分組成物である。本発明のコーティング組成物は、好ましくは有機溶媒1リットル当たり430グラム未満の揮発性有機含有物(VOC)を含んでいる。より好ましくは、コーティング組成物は340グラム未満毎リットルのVOC、さらにより好ましくは250グラム未満毎リットルのVOCを含んでいる。本発明に従う組成物の固形分含有量は、全コーティング組成物当たり好ましくは60重量%超、より好ましくは70重量%超、さらにより好ましくは80重量%である。
【0030】
本発明に従うコーティング組成物は触媒を含んでいてもよい。触媒は、該コーティング組成物の硬化剤系の一部であることができる。それに加えてまたはそれに代えて、触媒は塗料ベースの一部として配合されることができる。
【0031】
本発明のコーティング組成物は1以上のさらなる成分を含有してもよい。本発明のコーティング組成物は、1以上の顔料、たとえば二酸化チタン(白色顔料)、着色顔料、たとえば黄色酸化鉄もしくは赤色酸化鉄もしくはフタロシアニン顔料および/または1以上の補強顔料、たとえば雲母状酸化鉄もしくは結晶シリカおよび/または1以上の防食顔料、たとえば金属亜鉛、リン酸亜鉛、ワラストナイトもしくはクロメート、モリブデートもしくはホスホネートおよび/またはフィラー顔料、たとえばバライト粉、タルクもしくは炭酸カルシウムを含有することができる。該組成物は増粘剤、たとえば微粒子シリカ、ベントナイト粘土、水素化ヒマシ油、またはポリアミドワックスを含有してもよい。組成物はまた可塑剤、顔料分散剤、安定剤、流れ性改質剤、または希釈溶媒を含有してもよい。
【0032】
本発明のコーティング組成物は一般に環境温度、たとえば0〜30℃または50℃までさえの範囲内の温度において硬化し、したがって加熱硬化が非実際的である大型構造物への施与に適している。本発明のコーティング組成物はあるいは、硬化を促進するために高められた温度、たとえば30℃または50℃から80℃まで、さらに100または130℃までの範囲内の温度において硬化されることができる。
【0033】
本発明のコーティング組成物は一般に仕上げコーティングおよび/またはプライマーコーティングとして使用されることができる。該コーティング組成物は、プライマー/仕上げとして前処理済み炭素鋼に直接、施与されることができる、すなわち、基体上への保護コーティングの唯一のタイプとして、該組成物は使用されることができる。
【0034】
本発明のコーティング組成物は好ましくは、保護プライマーコーティングとして、とりわけ鋼表面上に、たとえば橋梁、パイプライン、工業プラントもしくは建造物、石油およびガス施設、または船舶に使用されることができる。この使用のために、これは一般に防食顔料を添加される。これは、たとえば亜鉛粉を顔料として添加されることができる。本発明に従うコーティングは公知のケイ酸亜鉛コーティングと同じような防食性能を有するが、泥状割れ(mud cracking)のしやすさがより低度であり、特にポリウレタンまたはポリシロキサン仕上げで、たとえば本発明に従う仕上げコートで容易に上塗りをされることができる。完全無欠とは言えない表面、たとえば古びて傷んだ鋼または「ジンジャー(ginger)」(傷んでおり、小さい点状にさびが出始めた鋼)、風雨に曝された手加工の鋼、および古びたコーティング上へのメンテナンスコーティングおよび補修コーティングとして、本発明に従うプライマーコーティング組成物は使用されることができる。
【0035】
好ましくは、本発明に従うコーティング組成物の成分は、いわゆる2液型(two−pack)組成物として一緒に包装される。一方のパックは本発明に従う1以上の硬化剤を含んでおり、他方のパックは1以上のエポキシ官能性化合物を含んでいる。
【0036】
本発明は、以下の実施例を参照して詳細に説明される。これらの実施例は本発明を例示するべく意図されているが、いかなる様式によってもその範囲を限定するものと解釈されてはならない。該実施例において、pbwは重量部の意味を有する。
【実施例1】
【0037】
本発明に従うアミン官能性化合物の調製
【0038】
ジアミンをアクリル酸および単官能性グリシジルエーテルと反応させることによって、アミン官能性化合物が調製された。
【0039】
撹拌機、凝縮器、ディーン・スターク(Dean & Stark)分離器、熱電対、およびNスパージを取り付けられた700ml反応用フラスコに、m−キシリレンジアミン(MXDA)(656.9g、4.83モル)が仕込まれた。温度を30℃未満に維持するような速度で、該フラスコにアクリル酸(AA)(72.0g、1.00モル)が添加された。全てのアクリル酸が仕込まれた後、反応温度が180℃まで上げられて、凝縮水が追い出された。中間生成物の酸価が5未満になるまで、反応温度は180℃に維持された。反応混合物は80℃まで冷却され、ブチルグリシジルエーテル(BGE)(434.2g、3.34モル)が2時間にわたって添加され、その間、反応温度は180℃に維持された。全てのブチルグリシジルエーテルが仕込まれた後、反応温度はさらに2時間80℃に維持され、その後反応生成物が40℃まで冷却され取り出された。生成物は清澄な可動性の、低粘度(25℃において8.2ポアズ)の液体であった。
【0040】
比較例1
【0041】
比較のアミン官能性化合物の調製
【0042】
ジアミンを2官能性グリシジルエーテルおよび単官能性グリシジルエーテルと反応させることによって、アミン官能性化合物が調製された。
【0043】
撹拌機、凝縮器、熱電対、およびNスパージを取り付けられた700ml反応用フラスコに、m−キシリレンジアミン(MXDA)(656.9g、4.83モル)が仕込まれ、温度が80℃に上げられた。温度を80℃に維持するような速度で、該フラスコにヘキサンジオールジグリシジルエーテル(230.0g、1.00モル)が添加された。全てのヘキサンジオールジグリシジルエーテルが仕込まれた後、反応温度がさらに2時間80℃に維持された。ブチルグリシジルエーテル(434.2g、3.34モル)が2時間にわたって添加され、その間、反応温度は80℃に維持された。全てのブチルグリシジルエーテルが仕込まれた後、反応温度はさらに2時間80℃に維持され、その後反応生成物が40℃まで冷却され取り出された。
【0044】
実施例1および比較例1において調製されたアミン官能性化合物の物理的特性
【0045】
実施例1および比較例1において調製されたアミン官能性化合物の物理的特性が、表1に示される。
【表1】

【0046】
測定された物理的特性から、本発明に従って調製されたアミン官能性化合物は比較のアミン官能性化合物よりも、両物質とも等価の重合度および同じような分子量を有するにもかかわらず、低い粘度を有することが明らかである。
【0047】
実施例2〜6
【0048】
2以上の−NHまたは−NH基を有するいくつかの種類のアミン官能性化合物を使用する、本発明に従うアミン官能性化合物の調製
【0049】
表2に列挙されたアミン官能性化合物をアクリル酸および単官能性グリシジルエーテルと反応させることによって、本発明に従うアミン官能性化合物が調製された。調製されたアミン官能性化合物の物理的特性が、同じ表2に示される。
【表2】

【0050】
本発明に従うアミン官能性化合物の硬化剤としての有用性を実証するために、アミン硬化剤1に付き1の活性Hと、エポキシ樹脂1に付き1のエポキシ基とが存在するような重量比で、該化合物のそれぞれが液状エポキシ樹脂(Dow Chemicals社からのDER331)と混合された。ASTM 5895に従う「BKドライトラック記録計(BK Dry Track Recorder)」を使用して、硬化速度が評価された。
【表3】

【0051】
本発明に従うアミン官能性化合物が、比較の化合物よりも急速にエポキシ樹脂を硬化することをこの結果は示す。
【0052】
実施例7〜25
【0053】
反応成分の種々の割合を使用する、本発明に従うアミン官能性化合物の調製
【0054】
1または複数のアミン官能性化合物と、1または複数のα−β不飽和の酸および/もしくはエステルと、単官能性エポキシ化合物との割合が、目的に適った特性を有する硬化剤を処方するために、容易に変えられることができることを以下の実施例は示す。さらに、単官能性エポキシ化合物を変え、特定の特性、たとえば粘度のさらなる改良を達成することが可能であることも実証される。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1のエポキシ基を有する1以上の化合物と、2以上の−NHもしくは−NH基を有する1以上のアミン官能性化合物を1以上のα−β不飽和酸および/もしくは1以上のα−β不飽和エステルと反応させることによって生成された1以上のアミドと、を反応させることによって得られることができる、エポキシ官能性化合物のための硬化剤として使用するのに適しているアミド化合物。
【請求項2】
・ 請求項1に従う化合物
・ 有機溶媒および/または水、ならびに
・ 任意的な触媒
を含んでいる硬化剤系。
【請求項3】
1以上のエポキシ官能性化合物を含んでいるシステムのための硬化剤として、請求項1に従う化合物を使用する方法。
【請求項4】
請求項1に従う化合物および1以上のエポキシ官能性化合物を含んでいるコーティング組成物。
【請求項5】
請求項3または4に従うコーティング組成物でコーティングされた基体。

【公表番号】特表2009−523876(P2009−523876A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550731(P2008−550731)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050313
【国際公開番号】WO2007/082853
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(500286643)アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ (67)
【Fターム(参考)】