説明

エポキシ樹脂、硬化性樹脂組成物、その硬化物、及びプリント配線基板

【課題】その硬化物において熱履歴後の耐熱性変化が少なく、かつ、低熱膨張性を発現するエポキシ樹脂、該性能を有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、熱履歴後の耐熱性変化が少なく低熱膨張性に優れるプリント配線基板を提供すること
【解決手段】ビスフェノールのジグリシジルエーテル(A)と、ビスフェノールノボラックのポリグリシジルエーテル(B)とを含有するエポキシ樹脂であって、該エポキシ樹脂をC13−NMRで測定した場合に、151〜158ppmに出現するピーク(b)の積分値と、151〜153ppmに出現するピーク(a)の積分値との比率[(a)/(b)]が0.05〜0.14の範囲であることを特徴とする新規エポキシ樹脂を主剤として使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は得られる硬化物の熱履歴後の耐熱性変化が少なく、低熱膨張性に優れ、プリント配線基板、半導体封止材、塗料、注型用途等に好適に用いる事が出来る硬化性樹脂組成物、その硬化物、エポキシ樹脂、及び前記硬化性樹脂組成物を用いたプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、接着剤、成形材料、塗料、フォトレジスト材料、顕色材料等に用いられている他、得られる硬化物の優れた耐熱性や耐湿性などに優れる点から半導体封止材やプリント配線板用絶縁材料等の電気・電子分野で幅広く用いられている。
【0003】
これらの各種用途のうち、プリント配線板の分野では、電子機器の小型化・高性能化の流れに伴い、半導体装置の配線ピッチの狭小化による高密度化の傾向が著しく、これに対応した半導体実装方法として、はんだボールにより半導体装置と基板とを接合させるフリップチップ接続方式が広く用いられている。このフリップチップ接続方式では、配線板と半導体との間にはんだボールを配置、全体を加熱して溶融接合させる所謂リフロー方式による半導体実装方式であるため、はんだリフロー時に配線版自体が高熱環境に晒され、配線板の熱収縮により、配線板と半導体を接続するはんだボールに大きな応力が発生し、配線の接続不良を起こす場合があった。その為、プリント配線板に用いられる絶縁材料には、低熱膨張率の材料が求められている。
【0004】
加えて、近年、環境問題に対する法規制等により、鉛を使用しない高融点はんだが主流となっており、この鉛フリーはんだは従来の共晶はんだよりも使用温度が約20〜40℃高くなることから、硬化性樹脂組成物にはこれまで以上に高い耐熱性が要求されている。
プリント配線板は、エポキシ樹脂を主剤とした硬化性樹脂組成物とガラス織布とを硬化・一体成形したものが一般的であり高耐熱化、低熱膨張化を達成するためにエポキシ樹脂の改良が求められている。
【0005】
このような要求に対応するために、エポキシ樹脂構造中の芳香属性を高めて耐熱性を向上させるべくビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂を用いる技術が知られており、例えば下記特許文献1にはビスフェノールAノボラック型Aノボラック型エポキシ樹脂の高分子量化を図り、耐熱性の一層の向上を図る技術が知られている。
【0006】
然し乍ら、特許文献1のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂は、高分子量化に伴い3次元的な架橋度が高くなり、エポキシ樹脂中のエポキシ基の反応性が低くなり、熱履歴後の耐熱性変化が生じやすくなる他、熱線膨張性にも低いものとならざるを得ないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭64−90215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明が解決しようとする課題は、その硬化物において熱履歴後の耐熱性変化が少なく、かつ、低熱膨張性を発現するエポキシ樹脂、該性能を有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、熱履歴後の耐熱性変化が少なく低熱膨張性に優れるプリント配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、ビスフェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル化した樹脂構造を有するエポキシ樹脂であって、該エポキシ樹脂を13C−NMRで測定した場合に、特定の2つのピーク比率が所定範囲内となる場合に、熱履歴後の耐熱変化が少なく、かつ、耐熱膨張性に優れるエポキシ樹脂となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、ビスフェノールのジグリシジルエーテル(A)と、ビスフェノールノボラックのポリグリシジルエーテル(B)とを含有するエポキシ樹脂であって、該エポキシ樹脂混合物をC13−NMRで測定した場合に、151〜158ppmに出現するピーク(b)の積分値と、151〜153ppmに出現するピーク(a)の積分値との比率[(a)/(b)]が0.05〜0.14の範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂に関する。
【0011】
本発明は、更に、前記したエポキシ樹脂、及び硬化剤を必須成分とすることを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。
【0012】
本発明は、更に、前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させてなることを特徴とする硬化物に関する。
【0013】
本発明は、更に、前記硬化性樹脂組成物に、更に有機溶剤を配合してワニス化した樹脂組成物を、補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させることにより得られたプリント配線基板に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、その硬化物において熱履歴後の耐熱性変化が少なく、かつ、低熱膨張性を発現するエポキシ樹脂、該性能を有する硬化性樹脂組成物、その硬化物、熱履歴後の耐熱性変化が少なく低熱膨張性に優れるプリント配線基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施例1で得られたビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−2)のGPCチャートである。
【図2】図2は、実施例1で得られたビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−2)のC13−NMRチャートである。
【図3】図3は、実施例2で得られたビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−4)のGPCチャートである。
【図4】図4は、実施例2で得られたビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−4)のC13−NMRチャートである。
【図5】図5は、実施例3で得られたビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−6)のGPCチャートである。
【図6】図6は、実施例3で得られたビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−6)のC13−NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエポキシ樹脂は、前記したとおり、ビスフェノールのジグリシジルエーテル(A)と、ビスフェノールノボラックのポリグリシジルエーテル(B)とを含有する混合物であって、C13−NMRで測定した場合に、151〜158ppmに出現するピーク(b)の積分値と、151〜153ppmに出現するピーク(a)の積分値との比率[(a)/(b)]が0.05〜0.14の範囲であることを特徴とするものである。
【0017】
ここで、13C−NMRにおけるピーク(b)の積分値は、具体的には、エポキシ樹脂中のグリシジルオキシ基の結合する全ての炭素原子に基づくピークの積分値であり、他方、ピーク(a)の積分値とは、具体的には、下記構造式I
【0018】
【化1】


(式中、Glはグリシジル基を、Xは、原料ビスフェノールがビスフェノールFの場合はメチレン基を、ビスフェノールAの場合は、2,2−プロピレン基を、ビスフェノールSの場合はスルホニル基をそれぞれ表す)で示される様に、グリシジルオキシ基が結合する芳香核の2,4,6−位に結合部位を有する芳香核における、グリシジルオキシ基の結合する炭素原子に基づくピークの積分値である。よって、これらの比率[(a)/(b)]が0.05〜0.14の範囲にある場合には、エポキシ樹脂中に前記構造式Iで表される構造部位が少なくなり、全体としてリニア優位な樹脂構造を形成する。従って、本発明のエポキシ樹脂の前駆体フェノール樹脂が、ビスフェノールとビスフェノールノボラックとの混合物であるにも拘わらず、比較的リニア優位な樹脂構造となり、硬化反応時におけるエポキシ基の反応性が高まり熱履歴後の耐熱性変化、例えば、DMA法によるガラス転移点を2回測定した場合の変化(ΔTg)の少ないエポキシ樹脂となる。また、エポキシ樹脂の芳香環の重なりや、エポキシ基の反応性向上に伴い、硬化物における線膨張係数も低いものとなる。
【0019】
ここで、前記エポキシ樹脂は、具体的には、前記した通り、ビスフェノールのジグリシジルエーテル(A)と、ビスフェノールノボラックのポリグリシジルエーテル(B)とを含有するものであり、具体的には、下記の条件で測定されるGPC測定の面積比率において、エポキシ樹脂中のビスフェノールのジグリシジルエーテル(A)の存在割合が5〜40%となる割合であることがΔTgの少ないエポキシ樹脂となる点から好ましい。
【0020】
<GPC測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0021】
ここで、ビスフェノールのジグリシジルエーテル(A)は、具体的には、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル等が挙げられる。本発明では、特に低粘度と高耐熱性を両立させる点でビスフェノールFのジグリシジルエーテルが好ましい。
【0022】
他方、本発明のエポキシ樹脂を構成する、ビスフェノールノボラックのポリグリシジルエーテル(B)は、具体的には、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ビスフェノールS等のビスフェノールがメチレン結合を介して結節した所謂ビスフェノールノボラック樹脂をグリシジルエーテル化した構造を有するものである。本発明では、前記ビスフェノールノボラックのポリグリシジルエーテル(B)が、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂であることが低粘度と高耐熱性を両立させる点で好ましい。
【0023】
また、前記エポキシ樹脂は、その軟化点が50〜100℃の範囲にあることが成形性、基材への含浸性の点から好ましい。また、GPC測定における数平均分子量(Mn)が400〜2000の範囲であって、かつ、GPC測定における数平均分子量(Mn)とGPC測定における重量平均分子量(Mw)との比率[(Mw)/(Mn)]が1.5〜15.0の範囲であることが、やはり、同様に成形性、基材への含浸性の点から好ましい。本発明では分子量分布が[(Mw)/(Mn)]が1.5〜15.0と狭いことから、熱履歴後の耐熱性変化が少ないものとなる。斯かる効果が顕著な点から、数平均分子量(Mn)が600〜1300の範囲であって、かつ、GPC測定における数平均分子量(Mn)とGPC測定における重量平均分子量(Mw)との比率[(Mw)/(Mn)]が2.0〜10.0となる範囲であることが好ましい。
【0024】
ここで、上記数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は前記した条件によるGPCによって測定される値である。
【0025】
以上詳述した本発明のエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールと、ホルムアルデヒドとを、酸触媒及び水の存在下に反応させてビスフェノールノボラック樹脂を製造する工程(工程1)、次いで、工程1に引き続きビスフェノールノボラック樹脂にエピハロヒドリンを反応させてグリシジルエーテル化してエポキシ樹脂を製造する工程(工程2)とを必須の製造工程としており、かつ、前記工程1にける反応系内の水の量を、ビスフェノール、ホルムアルデヒド、及び水の総量に対して25〜50質量%となる範囲で反応させることにより、ビスフェノールのジグリシジルエーテル(A)と、ビスフェノールノボラックのポリグリシジルエーテル(B)とを含有する混合物であるエポキシ樹脂を工業的に製造することができる。本発明では、工程1における反応系内の水の量を25〜50質量%となる範囲に調節することにより、最終的に得られるエポキシ樹脂において前記構造単位IIの存在割合を増加させることができると共に、分子量分布を狭いものとすることができ、熱履歴後の耐熱性や耐熱膨張性を飛躍的に改善させることができる。
【0026】
ここで、工程1で用いるビスフェノールは、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等が挙げられる。本発明では、特に低粘度と高耐熱性を両立させる点でビスフェノールFが好ましい。他方、ここで用いるホルムアルデヒドは、水溶液の状態であるホルマリン溶液でも、固形状態であるパラホルムアルデヒドでもよい。
【0027】
また、工程1におけるビスフェノールとホルムアルデヒドとの反応は、具体的には、ビスフェノールと、ホルムアルデヒドとを触媒及び水の存在下、加熱する方法が挙げられる。ここで、ビスフェノールとホルムアルデヒドとの反応割合は、ビスフェノール1モルに対し、ホルムアルデヒドが0.01〜1.0モルとなる割合であることが最終的に得られるエポキシ樹脂の耐熱性を高レベルに保持しつつ、適度な粘度を有し、成形性、基材への含浸性が良好なものとなる点から好ましい。また、ここで用いる触媒としては、特に限定されるものではないが、酸触媒が好ましく、例えば、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。その使用量は仕込み原料の総質量に対して、0.01〜10.0質量%なる範囲であることが好ましい。
【0028】
また、反応温度としては通常40〜250℃であり、100〜200℃の範囲がより好ましい。
【0029】
本発明の工程1で得られる中間生成物は、ビスフェノールノボラックと、未反応成分として残存するビスフェノールとの混合物となる。ここで、工程1の反応における反応系内の水分量を、ビスフェノール、ホルムアルデヒド、及び水の総質量中、25〜50質量%となる範囲とすることにより、該中間生成物の分子量分布を狭くすることができる。
【0030】
ここで、反応系内の水分量は、原料としてホルマリンを使用する場合には、それに由来する水、更に必要により水を系内に加えることにより調整することができる。
【0031】
また、工程1の反応を行う際、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。使用できる有機溶剤の具体例としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。有機溶剤の使用量としては仕込み原料の総質量に対して通常10〜500質量%、好ましくは30〜250質量%である。
【0032】
また得られるフェノール化合物の着色が大きい場合は、それを抑制するために、酸化防止剤や還元剤を添加しても良い。前記酸化防止剤としては特に限定されないが、例えば2,6−ジアルキルフェノール誘導体などのヒンダードフェノール系化合物や2価のイオウ系化合物や3価のリン原子を含む亜リン酸エステル系化合物などを挙げることができる。前記還元剤としては特に限定されないが、例えば次亜リン酸、亜リン酸、チオ硫酸、亜硫酸、ハイドロサルファイトまたはこれら塩や亜鉛などが挙げられる。
【0033】
反応終了後、反応混合物のpH値が3〜7、好ましくは4〜7になるまで中和あるいは水洗処理を行う。中和処理や水洗処理は常法にしたがって行えばよい。例えば酸触媒を用いた場合は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、トリエチレンテトラミン、アニリン等の塩基性物質を中和剤として用いることができる。中和の際には、事前にリン酸等のバッファーを入れておいても良いし、また、一旦塩基サイドにしたのちシュウ酸などでpH値が3〜7としてもよい。
【0034】
中和あるいは水洗処理を行った後、減圧加熱下で、未反応原料や有機溶剤、副生物を留去し生成物の濃縮を行い、目的とするビスフェノールノボラック樹脂を得ることが出来る。ここで回収した未反応原料は再利用することもできる。反応終了後の処理操作のなかに、精密濾過工程を導入すると、無機塩や異物類を精製除去することができる点でより好ましい。
【0035】
次いで、前記工程2は、工程1で得られたビスフェノールノボラック及びビスフェノールの混合物と、エピハロヒドリンとを反応させることによって目的とするエポキシ樹脂を製造する工程である。斯かる工程2は、具体的には、前記混合物中のフェノール性水酸基のモル数に対し、エピハロヒドリンを2〜10倍量(モル基準)となる割合で添加し、更に、フェノール性水酸基のモル数に対し0.9〜2.0倍量(モル基準)の塩基性触媒を一括添加または徐々に添加しながら20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。この塩基性触媒は固形でもその水溶液を使用してもよく、水溶液を使用する場合は、連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリンを留出せしめ、更に分液して水は除去しエピハロヒドリンは反応混合物中に連続的に戻す方法でもよい。
【0036】
なお、工業生産を行う際、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込みに用いるエピハロヒドリンの全てが新しいものであるが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリン類と、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリンとを併用することが好ましい。この時、使用するエピハロヒドリンは特に限定されないが、例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。なかでも工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。
【0037】
また、前記塩基性触媒は、具体的には、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。また、有機溶媒を併用することにより、エポキシ樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール化合物、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル化合物、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜2種以上を併用してもよい。
【0038】
前述のエポキシ化反応の反応物を水洗後、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや併用する有機溶媒を留去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜3.0質量部となる割合であることが好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより目的とする本発明のエポキシ樹脂を得ることができる。
【0039】
次に、本発明の硬化性樹脂組成物は、以上詳述したエポキシ樹脂と硬化剤とを必須成分とするものである。
【0040】
ここで用いる硬化剤は、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、特に芳香族骨格を分子構造内に多く含むものが低熱膨張性の点から好ましく、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、レゾルシンノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂、ビフェニル変性ナフトール樹脂、アミノトリアジン変性フェノール樹脂、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)が低熱膨張性に優れることから好ましい。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物におけるエポキシ樹脂と硬化剤の配合量としては、特に制限されるものではないが、得られる硬化物特性が良好である点から、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤中の活性基が0.7〜1.5当量になる量が好ましい。
【0043】
また必要に応じて本発明の硬化性樹脂組成物に硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂成分として、前記した本発明のエポキシ樹脂を単独で用いてもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で他のエポキシ樹脂を使用してもよい。具体的には、エポキシ樹脂成分の全質量に対して前記した本発明のエポキシ樹脂が30質量%以上、好ましくは40質量%以上となる範囲で他のエポキシ樹脂を併用することができる。
【0045】
ここで前記エポキシ樹脂と併用され得る他のエポキシ樹脂としては、種々のエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、
ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのなかでもフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂や、ナフタレン骨格を含有するナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂や、結晶性のビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、キサンテン型エポキシ樹脂や、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック型エポキシ樹脂(ホルムアルデヒドでグリシジル基含有芳香環及びアルコキシ基含有芳香環が連結された化合物)等が耐熱性に優れる硬化物が得られる点から特に好ましい。
【0046】
以上詳述した本発明の硬化性樹脂組成物は、前記した通り、優れた溶剤溶解性を発現することを特徴としている。従って、該硬化性樹脂組成物は、上記各成分の他に有機溶剤を配合することが好ましい。ここで使用し得る前記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0047】
また、上記熱硬化性樹脂組成物は、難燃性を発揮させるために、例えばプリント配線板の分野においては、信頼性を低下させない範囲で、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
【0048】
前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
【0049】
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
【0050】
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
【0051】
前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
【0052】
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0053】
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
【0054】
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
【0055】
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール化合物と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン化合物およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂との混合物、(iv)前記(ii)、(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
【0056】
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
【0057】
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0058】
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
【0059】
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0060】
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
【0061】
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
【0062】
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
【0063】
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
【0064】
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
【0065】
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
【0066】
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
【0067】
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO−MgO−HO、PbO−B系、ZnO−P−MgO系、P−B−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V−TeO系、Al−HO系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
【0068】
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0069】
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
【0070】
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
【0071】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、硬化性樹脂組成物の全体量に対して20質量%以上が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0072】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0073】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂、硬化剤、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明の硬化性樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0074】
本発明の硬化性樹脂組成物が用いられる用途としては、プリント配線板材料、樹脂注型材料、接着剤、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム等が挙げられる。また、これら各種用途のうち、プリント配線板や電子回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、熱履歴後の耐熱性変化が小さい、低熱膨張性、及び溶剤溶解性といった特性からプリント配線板材料やビルドアップ用接着フィルムに用いることが好ましい。
【0075】
ここで、本発明の硬化性樹脂組成物からプリント回路基板を製造するには、前記有機溶剤を含むワニス状の硬化性樹脂組成物を、補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の硬化性樹脂組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この時用いる樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とするプリント回路基板を得ることができる。
【0076】
本発明の硬化性樹脂組成物をレジストインキとして使用する場合には、例えば該硬化性樹脂組成物の硬化剤としてカチオン重合触媒を用い、更に、顔料、タルク、及びフィラーを加えてレジストインキ用組成物とした後、スクリーン印刷方式にてプリント基板上に塗布した後、レジストインキ硬化物とする方法が挙げられる。
【0077】
本発明の硬化性樹脂組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子を該硬化性樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
【0078】
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合した当該硬化性樹脂組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0079】
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップ用接着フィルムを製造する方法は、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
【0080】
本発明の硬化性樹脂組成物をビルドアップ用接着フィルムに用いる場合、該接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
【0081】
ここで、多層プリント配線板のスルホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0082】
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明の硬化性樹脂組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて硬化性樹脂組成物の層(X)を形成させることにより製造することができる。
【0083】
形成される層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
【0084】
なお、本発明における層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0085】
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
【0086】
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
【0087】
上記した支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0088】
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(X)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(X)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
【0089】
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×104〜107.9×10N/m2)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0090】
本発明の硬化物を得る方法としては、一般的な硬化性樹脂組成物の硬化方法に準拠すればよいが、例えば加熱温度条件は、組み合わせる硬化剤の種類や用途等によって、適宜選択すればよいが、上記方法によって得られた組成物を、20〜250℃程度の温度範囲で加熱すればよい。
【0091】
従って、該エポキシ樹脂を用いることによって、硬化物とした際、熱履歴後の耐熱性変化が少なく、低熱膨張率を発現でき、最先端のプリント配線板材料に適用できる。また、該エポキシ樹脂は、本発明の製造方法にて容易に効率よく製造する事が出来、目的とする前述の性能のレベルに応じた分子設計が可能となる。
【実施例】
【0092】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。尚、軟化点及びGPC、NMRは以下の条件にて測定した。
【0093】
1)軟化点測定法:JIS K7234
【0094】
2)GPC:測定条件は以下の通り。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8220 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPC−8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
3)13C−NMR:測定条件は以下の通り。
装置:日本電子(株)製 AL−400
測定モード:SGNNE(NOE消去の1H完全デカップリング法)
溶媒 :ジメチルスルホキシド
パルス角度:45℃パルス
試料濃度 :30wt%
積算回数 :10000回
【0095】
実施例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、ビスフェノールF200質量部(1.00モル)、42質量%ホルムアルデヒド水溶液47.2質量部(0.66モル)、水60質量部、蓚酸0.6質量部(0.0068モル)を仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、100℃に昇温し3時間攪拌した。その後180℃まで3時間で昇温した。反応終了後、反応系内に残った水分を加熱減圧下に除去し、ビスフェノールFノボラック樹脂(A−1)205部得た。得られたビスフェノールFノボラック樹脂(A−1)の水酸基当量は105グラム/当量、軟化点100℃であった。得られたビスフェノールFノボラック樹脂(A−1)のC13−NMRにおけるピークの積分値の比(a/b)は0.11であった。
【0096】
次いで、温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら上記反応で得られたビスフェノールFノボラック樹脂(A−1)105質量部(水酸基1.0当量)、エピクロルヒドリン463質量部(5.0モル)、n−ブタノール53質量部を仕込み溶解させた。50℃に昇温した後に、20%水酸化ナトリウム水溶液220質量部(1.10モル)を3時間要して添加し、その後更に50℃で1時間反応させた。反応終了後、150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン300部とn−ブタノール50質量部とを加え溶解した。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液15質量部を添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水100部で水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して目的のビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−2)153質量部を得た。得られたビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−2)のエポキシ当量は188グラム/当量、軟化点は68℃、数平均分子量(Mn)は996、重量平均分子量(Mw)は4455、比率[(Mw)/(Mn)]は4.5、C13−NMRにおける、ピークの積分値の比a/bは0.09であった。また、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−2)中のビスフェノールFジグリシジルエーテルの含有率は、GPC測定による面積比率基準で11.7%であった。該エポキシ樹脂(A−2)のGPCチャートを図1に、C13−NMRチャートを図2に示す。
【0097】
実施例2
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、ビスフェノールF200質量部(1.00モル)、42質量%ホルムアルデヒド水溶液39.3質量部(0.55モル)、水60質量部、蓚酸0.6質量部(0.0068モル)を仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、100℃に昇温し3時間攪拌した。その後180℃まで3時間で昇温した。反応終了後、反応系内に残った水分を加熱減圧下に除去し、ビスフェノールFノボラック樹脂(A−3)203部得た。得られたビスフェノールFノボラック樹脂(A−3)の水酸基当量は105グラム/当量、軟化点は87℃であった。得られたビスフェノールFノボラック樹脂(A−3)のC13−NMRにおけるピークの積分値の比(a/b)は0.07であった。
【0098】
次いで、温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら上記反応で得られたビスフェノールFノボラック樹脂(A−3)105質量部(水酸基1.0当量)、エピクロルヒドリン463質量部(5.0モル)、n−ブタノール53質量部を仕込み溶解させた。50℃に昇温した後に、20%水酸化ナトリウム水溶液220質量部(1.10モル)を3時間要して添加し、その後更に50℃で1時間反応させた。反応終了後、150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン300部とn−ブタノール50質量部とを加え溶解した。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液15質量部を添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水100部で水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して目的のビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−4)153質量部を得た。得られたビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−4)のエポキシ当量は188グラム/当量、軟化点は56℃、数平均分子量(Mn)は644、重量平均分子量(Mw)は1208、比率[(Mw)/(Mn)]は1.9、C13−NMRにおける、ピークの積分値の比a/bは0.06であった。また、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−4)中のビスフェノールFジグリシジルエーテルの含有率は、GPC測定による面積比率基準で23.0%であった。該エポキシ樹脂(A−4)のGPCチャートを図3に、C13−NMRチャートを図4に示す。
【0099】
実施例3
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、ビスフェノールF200質量部(1.00モル)、42質量%ホルムアルデヒド水溶液53.6質量部(0.75モル)、水60質量部、蓚酸0.6質量部(0.0068モル)を仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、100℃に昇温し3時間攪拌した。その後180℃まで3時間で昇温した。反応終了後、反応系内に残った水分を加熱減圧下に除去し、ビスフェノールFノボラック樹脂(A−5)206部得た。得られたビスフェノールFノボラック樹脂(A−5)の水酸基当量は105グラム/当量、軟化点は115℃であった。得られたビスフェノールFノボラック樹脂(A−5)のC13−NMRにおけるピークの積分値の比(a/b)は0.13であった。
【0100】
次いで、温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら上記反応で得られたビスフェノールFノボラック樹脂(A−5)105質量部(水酸基1.0当量)、エピクロルヒドリン463質量部(5.0モル)、n−ブタノール53質量部を仕込み溶解させた。50℃に昇温した後に、20%水酸化ナトリウム水溶液220質量部(1.10モル)を3時間要して添加し、その後更に50℃で1時間反応させた。反応終了後、150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン300部とn−ブタノール50質量部とを加え溶解した。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液15質量部を添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水100部で水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して目的のビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−6)153質量部を得た。得られたビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−6)のエポキシ当量は188グラム/当量、軟化点は79℃、数平均分子量(Mn)は1201、重量平均分子量(Mw)は10131、比率[(Mw)/(Mn)]は8.4、C13−NMRにおける、ピークの積分値の比a/bは0.12であった。また、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−6)中のビスフェノールFジグリシジルエーテルの含有率は、GPC測定による面積比率基準で10.0%であった。該エポキシ樹脂(A−6)のGPCチャートを図5に、C13−NMRチャートを図6に示す。
【0101】
比較例1
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、ビスフェノールF200質量部(1.00モル)、42質量%ホルムアルデヒド水溶液47.2質量部(0.66モル)、蓚酸0.6質量部(0.0068モル)を仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、100℃に昇温し3時間攪拌した。その後180℃まで3時間で昇温した。反応終了後、反応系内に残った水分を加熱減圧下に除去し、ビスフェノールFノボラック樹脂(A−7)205部得た。得られたビスフェノールFノボラック樹脂(A−7)の水酸基当量は105グラム/当量であった。
次いで、温度計、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら上記反応で得られたビスフェノールFノボラック樹脂(A−7)105質量部(水酸基1.0当量)、エピクロルヒドリン463質量部(5.0モル)、n−ブタノール53質量部を仕込み溶解させた。50℃に昇温した後に、20%水酸化ナトリウム水溶液220質量部(1.10モル)を3時間要して添加し、その後更に50℃で1時間反応させた。反応終了後、150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン300部とn−ブタノール50質量部とを加え溶解した。更にこの溶液に10質量%水酸化ナトリウム水溶液15質量部を添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のpHが中性となるまで水100部で水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して目的のビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−8)153質量部を得た。得られたビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂(A−8)のエポキシ当量は188グラム/当量、数平均分子量(Mn)は925、重量平均分子量(Mw)6753は、比率(Mw/Mn)は7.3、C13−NMRにおける、ピークの積分値の比a/bは0.17であった。
【0102】
実施例4〜6、比較例2
下記表2記載の配合に従い、硬化剤として、フェノールノボラック樹脂(DIC(株)製「TD−2090」、水酸基当量:105g/eq)、エポキシ樹脂として(A−2)、(A−4)、(A−6)、(A−8)、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)を配合し、最終的に各組成物の不揮発分(N.V.)が58質量%となるようにメチルエチルケトンを配合して調整した。
次いで、下記の如き条件で硬化させて積層板を試作し、下記の方法で熱膨張率、及び熱履歴による耐熱性変化を評価した。結果を表2に示す。
【0103】
<積層板作製条件>
基材:日東紡績株式会社製 ガラスクロス「#2116」(210×280mm)
プライ数:6 プリプレグ化条件:160℃
硬化条件:200℃、40kg/cmで1.5時間、成型後板厚:0.8mm
<熱履歴による耐熱性変化(耐熱性の変化量:ΔTg):DMA(第1回測定、第2回測定のTg差)>
粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置「RSAII」、レクタンギュラーテンション法;周波数1Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、以下の温度条件で2回、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度(Tg)を測定した。
温度条件
第1回測定:25℃から250℃まで3℃/minで昇温
第2回測定:25℃から250℃まで3℃/minで昇温
それぞれ得られた温度差をΔTgとして評価した。
【0104】
<熱膨張率>
積層板を5mm×5mm×0.8mmのサイズに切り出し、これを試験片として熱機械分析装置(TMA:セイコーインスツルメント社製SS−6100)を用いて、圧縮モードで熱機械分析を行った。
測定条件
測定架重:88.8mN
昇温速度:10℃/分で2回
測定温度範囲:−50℃から300℃
上記条件での測定を同一サンプルにつき2回実施し、2回目の測定における、40℃から60℃の温度範囲における平均線膨張率を熱膨張係数として評価した。
【0105】
【表1】


表1中の略号は以下の通りである。
TD−2090:フェノールノボラック型フェノール樹脂(DIC(株)製「TD−2090」、水酸基当量:105g/eq)
2E4MZ:硬化促進剤(2−エチル−4−メチルイミダゾール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールのジグリシジルエーテル(A)と、ビスフェノールノボラックのポリグリシジルエーテル(B)とを含有するエポキシ樹脂であって、該エポキシ樹脂をC13−NMRで測定した場合に、151〜158ppmに出現するピーク(b)の積分値と、151〜153ppmに出現するピーク(a)の積分値との比率[(a)/(b)]が0.05〜0.14の範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂。
【請求項2】
軟化点が50〜100℃の範囲にある請求項1記載のエポキシ樹脂。
【請求項3】
前記ビスフェノールノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルが、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である請求項1記載のエポキシ樹脂。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂が、GPC測定における数平均分子量(Mn)が400〜2000の範囲であって、かつ、GPC測定における数平均分子量(Mn)とGPC測定における重量平均分子量(Mw)との比率[(Mw)/(Mn)]が1.5〜15.0となる範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂。
【請求項5】
ビスフェノールと、ホルムアルデヒドとを、酸触媒及び水の存在下に反応させて、中間生成物を製造する工程(工程1)、次いで、前記中間生成物にエピハロヒドリンを反応させてグリシジルエーテル化してエポキシ樹脂混合物を製造する工程(工程2)とを必須の製造工程としており、かつ、前記工程1における反応系内の水の量を、ビスフェノール、ホルムアルデヒド、及び水の総質量に対して25〜50質量%となる範囲で反応させるものであることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1つに記載のエポキシ樹脂、及び硬化剤を必須成分とすることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6記載の硬化性樹脂組成物を硬化反応させてなることを特徴とする硬化物。
【請求項8】
請求項6記載の硬化性樹脂組成物に、更に有機溶剤を配合してワニス化した樹脂組成物を、補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させることにより得られたプリント配線基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−87212(P2013−87212A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229667(P2011−229667)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】