説明

エポシロン化合物並びにその調製方法及び用途

本発明は一般式(I)に表示されるエポシロン化合物並びにその調製方法及び医薬上の用途を開示している。前記エポシロン化合物はエポシロン又はその誘導体を原料として生物転換及び化学合成又は化学修飾などの方法により得るものである。前記エポシロン化合物は、増殖性疾患を治療することに用いられることができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポシロン(Epothilone)化合物並びにその調製方法に関し、特に、新規16員環エポシロン化合物並びにその調製方法及び用途に関する。医薬化合物分野に属する。
【背景技術】
【0002】
エポシロンA(EpoA)とエポシロンB(EpoB)は、マクロライド類ポリケチド化合物から誘導された16員環エポシロン化合物であり、最初は、土壌細菌であるSorangium cellulosum菌株So ce90から単離され、その構造式は、以下ように示される[Hofle et al.、1996、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 35(13/14): 1567−1569; Gerth et al.、1996. J. Antibiotics 49(6): 560−563]。
【化1】

【0003】
エポシロン類は、癌の治療に対して巨大な潜在能力を持っている。エポシロン類は、癌の治療に有名な医薬品としてのパクリタキセル、タクソール(paclitaxel、Taxol)とは構造的には類似していないが、チューブリン重合を誘発することと、微小管の形成を安定化させることを含むその作用メカニズムは、非常に似ている。これらの化合物は、異なる癌細胞系に対して強力な殺細胞効果を示す。特に、それらは、癌の多剤耐性(MDR)を有する腫瘍細胞系、特にパクリタキセル及びその他の抗癌医薬品に耐薬性を有する腫瘍細胞系に対して、著しい効果を示す[Altmann et al., 2000. Biochem. Biophys. Acta. 1470(3): M79−91; Bollag et al., Cancer Res. 55(11): 2325−2333]。
【0004】
エポシロンA及びBの脱酸素対応物は、エポシロンC及びDとも呼ばれ、既に化学的に全合成されることに成功しているが、天然のエポシロン産生菌株S.cellulosumの発酵抽出物から、多くの微量画分としての他のエポシロン類似構造の化合物と一緒に検出され得る。
現在、より有効な化学療法剤としてのエポシロン及びその関連構造の類似体の開発が活発に行なわれている。例えば、化学半合成により、天然に存在するエポシロン化合物に対して修飾すること、また、PCT国際公開公報であるWO99/27890には、エポシロンBを相応するラクタム類似体であるBMS247550に転換する転換反応が記載されている。
【0005】
本発明の一般式(I)に示される新規エポシロン化合物は、有用な薬理学特性を持ち、且つ腫瘍細胞の成長を抑制でき、増殖性疾患の治療に用いられることができ、新規の抗癌医薬品の先導化合物になることが期待される。従って、新規エポシロン誘導体を研究し開発することは、良好な応用未来がある。
【発明の開示】
【0006】
本発明の1つの実施形態において、本発明は、一連の新規エポシロン化合物又はその薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体を提供する。
【0007】
本発明のその他の1つの実施形態において、本発明は、上記エポシロン化合物を調製する方法を提供する。それは、エポシロンD又はその誘導体を原料として生物転換及び化学合成又は化学修飾などの方法により得る。
【0008】
本発明のその他の1つの実施形態において、本発明は、上記化合物又はその薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体を含む医薬組成物を提供する。一部の実施態様において、前記医薬組成物は、さらに1種又は多種の薬用担体及び/又は希釈剤の医薬組成物を含み、前記薬用担体及び/又は希釈剤は、補助剤、賦形剤、防腐剤、吸収遅延剤、充填剤、接着剤、吸着剤、バッファー剤、崩壊剤、増溶剤などの不活性成分中の少なくとも一種類を含んでもよい。組成物の調製方法は本分野で熟知している技術である。
【0009】
本発明のその他の1つの実施形態において、本発明は、上記エポシロン化合物又はその薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体の、増殖性疾患を治療する医薬品の調製における応用を提供する。
本発明のその他の1つの実施形態において、本発明は、上記エポシロン化合物又はその薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体の、細胞の過成長を抑制する、または細胞成長を中止する医薬品の調製における応用を提供する。
【0010】
本発明のその他の1つの実施形態において、本発明は、増殖性疾患を治療する方法を提供する。当該方法は、治療を必要とする有効量の本発明のエポシロン化合物又はその薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体を必要とする患者に投与することを含む。前記患者は、好ましくは哺乳動物であり、さらに好ましくは人である。
【0011】
本発明のその他の1つの実施形態において、本発明は、更に、細胞の過成長を抑制する、及び細胞成長を中止する方法を提供する。当該方法は、前記細胞を本発明の前記のエポシロン化合物又はその薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体に接触させることを含む。
【0012】
本発明のその他の1つの実施形態において、本発明は、細胞過成長に関連する疾患又は病症を治療する方法を提供する。当該方法は、治療を必要とする有効量の本発明の前記のエポシロン化合物又はその薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体を必要とする患者に投与することを含む。前記患者は、好ましくは哺乳動物であり、さらに好ましくは人である。
本発明の一連の新規エポシロン化合物は、以下の一般式(I)のように示される。
【化2】

式中、A-Dが下記の式(a)で示される炭素−炭素二重結合又は式(b)で示されるエポキシ基である;
【化3】

Xは、O又はN−Rである;
Wは、NRR又はO−Rであり、その中に、
Rは、H、ヒドロキシ又はアミノ基保護基、置換若しくは未置換の低級アルキル基又は不飽和炭化水素基から選ばれるものであり;好ましくは、H、アミノ基保護基、置換若しくは未置換のC1−6アルキル基又はC2−6アルケニル基から選ばれるものであり、更に好ましくは、CH又はCFである;
は、H、OH、置換若しくは未置換の低級アルキル基又は不飽和炭化水素基から選ばれるものであり、又はRと一緒にシクロアルキル(好ましくは、置換若しくは未置換のC1−6アルキル基又はC2−6アルケニル基から選ばれるものであり、又はRと一緒にC3−6シクロアルキルを形成する)を形成する;
その中に、前記Wは、更に好ましくは、NH、O−CH、 NHCH、N(CH又は
【化4】

である;
は、H、置換若しくは未置換の低級アルキル基又は不飽和炭化水素基から選ばれるものであり、又はC−4のその他の1つのメチル基と一緒に低級シクロアルキルを形成する;その中に、Rは、好ましくはH又はメチル基である;
は、H、OH又はNHから選ばれるものである;
はH、置換若しくは未置換の低級アルキル基から選択しており、Rは、好ましくはCH又はCFである;
但し、一般式(I)において、14−OHエポシロンD及び4−デメチル基14−OHエポシロンDを含まない。
【0013】
本発明は、更に、上記化合物の薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体を提供する。
【0014】
本明細書における「低級」という用語は、1−6の炭素原子を有する飽和又は不飽和の基、好ましくは1−4の炭素原子を有する基を意味する。
【0015】
別途の記載がない限り、本明細書中に単独又は組み合わせで使用する用語である「アルキル基」とは、任意的に置換される直鎖又は任意的に置換される分岐鎖の飽和炭化水素基であり、それが1−約10の炭素原子を有し、更に好ましくは1−約6の炭素原子を有する。例として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、2−メチル基−l−プロピル基、2−メチル基−2−プロピル基、2−メチル基−1−ブチル基、3−メチル基−l−ブチル基、2−メチル基−3−ブチル基、2、2−ジメチル基−1−プロピル基、2−メチル基−1−ペンチル基、3−メチル基−1−ペンチル基、4−メチル基−l−ペンチル基、2−メチル基−2−ペンチル基、3−メチル基−2−ペンチル基、4−メチル基−2−ペンチル基、2、2−ジメチル基−l−ブチル基、3、3−ジメチル基−1−ブチル基、2−エチル基−1−ブチル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基及びヘキシル基、並びにヘプチル基とオクチル基の様なもっと長いアルキル基などが挙げられるが、これに限定されていない。
【0016】
別途の記載がない限り、本明細書中に単独又は組み合わせで使用する用語である「シクロアルキル」とは、任意的に置換される飽和炭化水素環基であり、それが3−約15の環上炭素原子、3−約10の環上炭素原子又は3−約6の環上炭素原子を含み、置換基としてのその他の非環上炭素原子を含んでもよい(例えば、メチル基シクロプロピル基)。
【0017】
別途の記載がない限り、本明細書中に単独又は組み合わせで使用する用語である「不飽和炭化水素基」とは、1つ又は複数のC=C二重結合を有するアルケニル基と1つ又は複数のC≡C三重結合を有するアルキニル基とを含み、アルケニル基は、任意的に置換される直鎖又は任意的に置換される分岐鎖の炭化水素基であり、それが2−約10の炭素原子を有し、更に好ましくは2−約6个炭素原子を有する。これらの基における二重結合は、シスコンフォメーションであってもよく、トランスコンフォメーションであってもよい。且つ、前記二種類の異性体を含むことを理解すべきである。例として、ビニール基(CH=CH)、1−プロペニル基(CHCH=CH)、イソプロペニル基(C(CH)=CH)、ブテニル基及び1、3−ブタジエン基などが挙げられるが、これに限定されていない。アルキニル基は、任意的に置換される直鎖又は分岐鎖の炭化水素基であり、それが1つ又は複数のC≡C三重結合を有し、且つ2−約10の炭素原子を有し、更に好ましくは2−約6の炭素原子を有する。例として、エチニル基、2−プロパルギル基、2−ブチン基及び1、3−ブタジイン基などが挙げられるが、これに限定されていない。
【0018】
別途の記載がない限り、本明細書中に単独又は組み合わせで使用する用語である「アミノ基保護基」とは、本分野に熟知のいずれの好適なアミノ基保護基であり、アルコキシカルボニル基類、アシル基類及びアルキル基類を含む。例として、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、トリメチル基シランエトキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2−ビフェニル−2−プロポキシカルボニル基、o−フェニレンジホルミル基、p−メチルベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基、p―ニトロベンゼンスルホニル基、トリフェニルメチル基、ホルミル基、トリフルオロアセチル基、ベンジル基、p−メトキシ基ベンジル基、2、4−ジメトキシ基ベンジル基などが挙げられるが、これに限定されていない。
【0019】
上記の定義において、例えば、R、R、R及びRの定義において、置換されるアルキル基又は置換される不飽和炭化水素基の置換基は、ハロゲン、トリフルオロメタン、トリフルオロメトキシ基、アルキルアシル基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、複素環基アミノ基、アリールアミノ基、アリールアルキル基アミノ基、アルキルアシル基アミノ基、アルキル基スルホニル基、アルキルチオ基、アルコキシカルボキシル基などである。
【0020】
エポシロンA及びエポシロンBは、最初、土壌細菌Sorangium cellulosum菌株So ce90から単離された。従って、発酵を利用してエポシロンAとBを容易に単離して得ることができる。2005年6月22日に公開されたCN1629283Aの開示に基づき、エポシロンC又はD(R4はH又はCHである)を容易に得ることができる。例えば、エポシロン生合成遺伝子であるP450遺伝子の不活性化により、天然エポシロンAとBの産生菌が主な代謝産物であるエポシロンC又はDを産生することになる。2004年8月18日に公開されたCN1521258Aの開示に基づき、4−デメチル基エポシロンA及びB、又はC及びDを容易に得ることができる。一般的に、エポシロン生合成遺伝子のエクステンダ−モジュール(extender module)8においてのMTメチル基転移構造ドメインの不活性化により、天然エポシロン産生菌が主な代謝産物である4−デメチル基エポシロンを産生することになる。WO99/27890においてエポシロンBを相応的なラクタム類似体であるBMS247550に転換する転換反応が開示されている。これらの三つの特許文献をここで引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0021】
一方、本発明は、エポシロン誘導体のオキサゾール(oxazole)対応物(counterpart)から、その中におけるS(硫黄)がO(酸素)に置換される構造化合物を合成することに関する。CN1521258Aの記載に基づき、エポシロン産生菌に対し過剰のセリンを補充することにより、オキサゾール対応物の産生に有利である方式で、チアゾールエポシロン化合物を正常に産生する産生菌を調整する。
【0022】
その中に、一般式(I)化合物の14−アミノ基エポシロン誘導体がエポシロンD又は4−デメチル基エポシロンD誘導体を用いて生物転換により14−OHエポシロンD又は4−デメチル基14−OHエポシロンDを得て、化学修飾により得ることができる。
合成経路1:
【化5】

【0023】
まず、微生物又は微生物由来のヒドロキシ化酵素を利用してエポシロンD又はその誘導体のC−14位をヒドロキシ化させる、例えば、合成経路1である。このようなC−14がヒドロキシ化されたエポシロン誘導体L1は、実施例1に記載の微生物転換方法により得られる。2005年6月22日に公開されたCN1629283Aの開示に基づき、エポシロンC又はDを容易に得ることができる。例えば、エポシロン生合成遺伝子であるP450遺伝子の不活性化により、天然エポシロンAとBの産生菌が主な代謝産物であるエポシロンC又はDを産生することになる。2004年8月18日に公開されたCN1521258Aの開示に基づき、4−デメチル基エポシロンA及びB、又はC及びDを容易に得ることができる。一般的に、エポシロン生合成遺伝子のエクステンダ−モジュール(extender module)8においてのMTメチル基転移構造ドメインの不活性化により、天然エポシロン産生菌が主な代謝産物である4−デメチル基エポシロンを産生することになる。これらの二つの特許文献をここで引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0024】
一般式(I)化合物のさらに好ましい化合物(W=NH)は、化学反応合成経路2に記載の通用の方法により、C−14ヒドロキシ化エポシロンD誘導体から得られる。当該種類化合物は、実施例2に記載の方法により得ることもできる。
合成経路2:
【化6】

【0025】
まず、好適な基、例えば、トリエチル基シリル基、ブチル基ジメチル基シリル基等を用いて、化合物L1の遊離ヒドロキシである3−及び7−OHを保護する、即ち、それぞれP1及びP2になり、14−OHのP3保護基は、THF中のAcOHにより、保護基P1及びP2を除去させないような条件下で選択的に除去されることができる。
【0026】
3−及び7−保護形式又は未保護形式のエポシロンD誘導体をテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムを用いて、πアリルパラジウム対応物を形成させ、次に、第1級アミンで処理することにより、又はジフェニルホスホリルアジド及びジアザビシクロウンデセン−7(DBU)を用いて反応させることにより、14−アジドエポシロンを得る。さらに、トリメチル基ホスフィン及びNHOH水溶液で還元し、3−及び7−保護形式の14−アミノ基−エポシロン誘導体を得る。脱保護をさせて、LII化合物を得る。当該種類化合物は、実施例2に記載の化学エポキシ化方法により調製することができる。
【0027】
保護基は、14−OHエポシロン化合物の前駆体に存在することができ、且つ必要でない副反応、例えばアシル化、エーテル化、酸化、加溶媒分解及び類似する反応を防止するように、言及している官能基を保護すべきである。保護基の特徴は、それら自身が加溶媒分解、還元、光分解、又は酵素活性によって除去されやすく、そして最終生成物に存在しないことである。例えば、まず、保護基は、前駆体である14−OHエポシロンの3−、7−、及び14−OH遊離ヒドロキシ基に存在することができ、それぞれがP1、P2及びP3である。化学修飾する前に、14−OHのP3保護基は、THFにおいてのAcOHにより、保護基P1、P2が除去されないような条件下で、選択的に除去され得、最後に、アミド化させ、保護されたLII化合物を得、本分野の公知方法でP1及びP2の脱保護を行うことができる。P1及びP2がシリルエーテルである場合、例えばTMS、TES、又はTBSである場合、酸、例えばジクロロメタン中のHF、ピリジン、又はトリクロロ酢酸を用いて処理することにより、脱保護を行い、LIIを得ることができる。
【0028】
LII化合物のさらに改造された好ましい化合物は、エポキシ化物(12、13−エポキシ誘導体)である。当該種類化合物は、実施例3に記載の化学エポキシ化方法により調製することができる。
【0029】
本発明の化合物の定義におけるヒドロキシ基の保護基、N−保護基は、本分野によく用いられる保護基であり、例えば、ヒドロキシ基の保護基としては、シリルエーテルが好ましく、例えば、TMS、TES、又はTBSである;N−保護基としては、t−ブチルカルボン酸が好ましい。本発明の化合物を調製する場合、必要に応じて、プロセスにおいて反応に関わるべきでない原料化合物における官能基は、未保護の形式で存在でき、又1つ若しくは複数の保護基で保護することができ、又は完全若しくは部分的に除去することができる。保護基の特徴は、それら自身が加溶媒分解、還元、光分解、又は酵素活性により除去されやすく、そして最終の生成物中に存在しないことである。ヒドロキシ基の保護基としては、好ましくは本明細書中で言及している低級アルキルシリル基型ヒドロキシ基の保護基であり、且つ必要に応じて本明細書の前記と類似する方法で導入し、そして必要に応じて除去し、その中に、選択的に保護すること又は脱保護することも可能である。本明細書において、保護基を適当に用いる箇所において保護基に言及されていないが、当業者にとって、何時保護基を使用するか、又は使用すべきであるかについては自明なことである。
【0030】
LII化合物は、化学反応合成経路2Bにより完成してもよい:
【化7】

【0031】
一般式(I)化合物のさらに好ましい化合物(W=NRR)は、化学反応合成経路3に記載の通用方法により、C−14ヒドロキシ又はメトキシ基又はアミノ基エポシロン誘導体からNRR−又はNHR−エポシロン化合物を調製することができる。化合物がエポシロンDの誘導体である場合、実施例3に記載の化学エポキシ化方法により、12−、13−エポキシ化物を調製することができる。
合成経路3:
【化8】

A-Dは下記の式(a)に示される炭素−炭素二重結合又は式(b)に示されるエポキシ基である:
【化9】

例えば
【化10】

又は:
【化11】

ビニールグリシンでN−保護をする、PはN保護に好適なt−ブチルオキシカルボニル基(t−butyloxycarbonyl)である。
【0032】
R1はHではない場合、塩基、例えば水酸化ナトリウムの存在下で、ハロゲン化アルキルを用いて化合物をN−アルキル化させる。
脱保護をさせ、NHR−の化合物を得ることができる。
【0033】
一般式(I)化合物の更に好ましい化合物(W=O−CH)は、化学反応合成経路4に記載の通用方法により、C−14ヒドロキシ化エポシロンD誘導体から得ることができる。実施例4に記載の化学合成方法により、14−メトキシ基エポシロンD化合物を調製することができる。
合成経路4:
【化12】

【0034】
一般式(I)化合物の更に好ましい化合物はラクタム誘導体(X=NH)である。当該種類化合物は化学反応合成経路5に記載の方法により調製することができる。
合成経路5:
【化13】

【0035】
一般式(I)化合物の更に好ましい化合物は21−R誘導体(R=OH、NH)である。当該種類化合物は、化学反応合成経路6に記載の方法により調製することができる。
合成経路6:
【化14】

【0036】
実施例1における微生物転換方法により、エポシロンDを用いて14−OHエポシロンD及び少量な14−OH、21−OHエポシロンDを調製することができる。14−OH、21−OHエポシロンDは、14−OHエポシロンDにより、2004年8月18日に公開したCN1521258Aに記載の微生物転換方法等により調製することもできる。
一般式(I)化合物の更に好ましい化合物は、エポキシ化物(12、13−エポキシ誘導体)である。当該種類化合物は、化学反応合成経路7に記載の通用方法をにより調製することができる。
合成経路7:
【化15】

【0037】
その他の実施態様において、本発明は、一般式(I)において下記の構造を有する化合物を提供する:
【化16】

【0038】
当業者は、公知の通常解析方法により、本発明の化合物をスクリーニングすることができ、例えば、Skehanら、J. Natl. Cancer Inst. 1990、82:1107に開示されているSRB解析により、化合物の細胞毒性を測定することができる。当該文献をここで引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0039】
当業者は、公知の通常解析方法により、本発明の化合物に対して、チューブリン重合作用をスクリーニングすることができ、例えば、Gianakakouら、Intl. J.Cancer、1998、75:63に開示されている方法により、化合物に対して、チューブリン重合作用をスクリーニングすることができる。当該文献をここで引用することにより本明細書に組み込まれる。
【0040】
本発明は、更に医薬組成物を提供し、当該医薬組成物は、本発明の化合物又はこれらの化合物の薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体及び1種又は多種の通常の薬用担体及び/又は希釈剤を含有する。当該種類組成物は、補助剤、賦形剤、防腐剤、吸収遅延剤、充填剤、接着剤、吸着剤、バッファー剤、崩壊剤、増溶剤、その他の担体及び不活性成分中の少なくとも1種を含んでもよい。当該組成物の調製方法は本分野熟知の技術である。
【0041】
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物又はその薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体を含有する以外、更に1種又は多種の活性医薬品、例えば、その他の抗増殖性疾患の医薬品を含有することができる。
【0042】
本発明の化合物は、増殖性疾患を治療する医薬品を調製するために用いられることができる。本発明の化合物は、細胞過成長を抑制する及び細胞成長を中止する医薬品を調製するために用いられることができる。前記増殖性疾患は、好ましくは、腫瘍、多発性硬化症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症及び再狭窄から選ばれる。
【0043】
本発明は、本発明の化合物を用いて増殖性疾患を治療する方法を提供する。当該方法は、治療を必要とする有効量の本発明のエポシロン化合物又はその薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体を必要とする患者に投与することを含む。前記患者は、好ましくは哺乳動物であり、さらに好ましくは人である。前記増殖性疾患は、好ましくは、腫瘍、多発性硬化症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症及び再狭窄から選ばれる。
【0044】
本発明は、更に増殖性疾患の治療に用いられる医薬組成物を提供する。前記増殖性疾患は、好ましくは、腫瘍、多発性硬化症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症及び再狭窄から選ばれる。
【0045】
本発明は、更に、細胞過成長を抑制する、及び細胞成長を中止する方法を提供する。当該方法は、前記細胞を本発明に記載のエポシロン化合物又はその薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体に接触させることを含む。
【0046】
本発明は、更に、細胞過成長に関連する疾患又は病症を治療する方法を提供する。当該方法は、治療を必要とする有効量の本発明に記載のエポシロン化合物又はその薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体を必要とする患者に投与することを含む。前記患者は、好ましくは哺乳動物であり、さらに好ましくは人である。
【0047】
本発明の化合物は、遊離フォーム(自由形式)、又は前駆体薬(プロドラッグ:produrg)及び本発明の化合物の塩及びエステルの形式である。化合物は、例えば固体、半固体又は液体などの任意の形態であってもよい。医薬組成物は、少なくとも1種のシクロデキストリン及び許容しうる薬用担体を含むことができる。許容しうる薬用担体としては、例えば、アルコール類(エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール)、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ツイーン(Tween)、又はソリュトール(Solutol)等である。本発明の前記化合物は、薬学的に許容しうる担体、又は希釈剤と共に、経口投与、静脈投与、又は皮下投与のための製剤に調製されることができる。標準方法により、所望の投与方式に適用される固体又は液体担体、希釈剤及び添加剤を用いて、医薬組成物を調製することができる。経口投与の製剤として、本発明の化合物は、錠剤、カプセル、顆粒、粉末等の形式で投与することができ、本発明の化合物の用量範囲は、0.05〜200mg/kg/日であり、1回量又は2〜5分の1量形式で投与してもよい。
【0048】
本発明の化合物製剤は、その他の方法、例えば既知の低水溶性医薬品を調製する製剤方法により得ることができる。例えば、化合物はビタミンE、及び/又はPEGポリアクリル酸誘導体と、乳剤を形成することができる(文献WO00/71163及びUS6458373 B1を参照)。通常、まず本発明の化合物をエタノールに溶解し、その後、ビタミンE及び/又はPEGポリアクリル酸誘導体を添加して、治療剤溶液を形成する。アルコールを除去した後、前駆体乳剤を形成し、又は、界面活性剤(安定化剤)を含む水溶液を添加して、前駆体乳剤を形成する。静脈注射に用いられる投与方式では、前駆体乳剤を分散して均一な乳剤に形成する。経口投与に用いられる薬剤は、通常前駆体乳剤をジェルカプセルに入れる。
【0049】
チューブリン脱重合阻害剤という効能作用に基づいて、一般式(I)の化合物の作用メカニズムは、抗癌剤であるパクリタキセル(paclitaxel)及びエポシロンと非常に似ており、主としては、チューブリン重合を誘導し、及び微小管の構築(microtubule assembly)を安定化させることで、細胞微小管の機能を干渉する。これによって、細胞分裂と細胞移動、及び細胞内シグナルの伝達とタンパク質分泌に対する抑制を招来するが、これは、それらの挙動がすべて微小管の迅速且つ高効率な脱重合に依存しているからである。従って、一般式(I)的化合物は、優れる薬理学特性、腫瘍細胞成長を抑制でき、多くの増殖性疾患、例えば、固形腫瘍疾患、液体腫瘍疾患(例えば、白血病)等に効率的に抵抗することができ、且つ、細胞過成長を抑制する及び細胞成長を中止することができ、良好な応用未来を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は14−OHエポシロンDのH−NMRスペクトルである。
【図2】図2は14−OHエポシロンDの13C−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、実施例を使用して本発明を詳述するが、本発明の範囲を限定するものではない。

実施例1 14−ヒドロキシ化エポシロンD誘導体を調製する生物転換方法
1つのバイアル(1ml)凍結保存用チューブのStreptomyce sp. ATCC55098菌株を、5mlのシード培地(20g/L‐グルコース、20g/L‐ペプトン、10g/L酵母エキス(Yeast Extract);NaOHでpH7.0に調節;滅菌消毒した後で使用)に植菌した。培養物は、30℃振とう機にて2日培養した。培養物2.5mlをフラスコ内の発酵培地(発酵培地配合:パン酵母 30g/L、トウモロコシペースト15g/L、CaCO 1g/L、コーンスターチ45g/L、HEPES 23.8g/L、デキストリン20g/L;NaOHでpH7.0に調節;滅菌消毒した後で使用)50mlに移し、その後、30℃で、24時間培養し、エポシロンD又は4−デメチル基エポシロンD等の誘導体5−10mgを培養液に添加し、引き続き2日〜3日培養した。培養物から転換生成物を単離し、同時に14−ヒドロキシル化エポシロン誘導体を回収した。
14−ヒドロキシエポシロンD(C2742NOS)のMS(ESI+):508.26[M+H]
当該化合物のH−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルは図1及び図2をご参照する。
14−ヒドロキシ−21−ヒドロキシエポシロンD(C2741NOS)のMS(ESI+):524.26[M+H]
【0052】
実施例2 14−NHエポシロンDの調製及び方法
【化17】

【0053】
1.0℃アルゴンガス雰囲気下で、1.5mlの乾燥THF中の7−O−(t−ブチルジメチルシリル)−14−OHエポシロンD(30mg)の溶液を0℃に冷却し、且つジフェニル−ホスホリルアジド(15.5μl)で、5分間処理した後、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ−7−エン(DBU)8.8μlを添加し、0℃下で2時間反応・撹拌した後、室温まで暖めて20時間反応・撹拌した。溶液を酢酸エチル30mlに注入し、水2×10mlで洗浄し、合わせた水相を酢酸エチル(2×15ml)で抽出し、その後、NaSOで乾燥し、ろ過・蒸発した。SiOクロマトグラフィーで、7−O−(t−ブチルジメチルシリル基)により保護された14−アジドエポシロン産品を精製した。
【0054】
2a.0.3mlのTHF中の上記工程のアジド化物(14mg)とトリメチルホスフィン(1MTHF溶液33μl)の溶液を5分間撹拌し、その後、水80μlで処理し、さらに3時間撹拌して、アジド化物を全部使い尽くし、28%のNHOH水溶液50μlを添加する時にはホスホルイミド(phosphorimide)は全てアミンに転換された。室温(25℃)で1時間撹拌した後、混合物の溶媒を真空で乾燥するまで蒸発し、シリカゲル上にてクロマトグラフィー単離を行い(10%メタノールのクロロホルム溶液)、3,7−O−(t−ブチルジメチルシリル)により保護された14−アミノ基エポシロン産品を得た。
【0055】
2b.(その他の方法):リンドラー触媒18mgをエタノール0.5ml中に懸濁させ、飽和させた後、エタノール・メタノール混合物に溶解させた上記工程のアジド化物を添加し、室温下で、30分間撹拌し、該懸濁液を珪藻土でろ過し、酢酸エチルで洗浄してから、真空で乾燥させた。
【0056】
3.脱保護:保護された産品(67mg)をTHF1.5mlに溶解し、且つ0℃でフッ化水素−ピリジン(0.6ml)で処理した。20分後、反応物を室温まで暖め、3.5時間保持し、その後、0℃に戻るよう冷却した。メトキシトリメチルシラン(6ml)を徐々に添加し、混合物を室温まで昇温し油状物質になるまで蒸発させ、該油状物質をSiOクロマトグラフィーで精製して、純粋な目標産品を得た。
14−NHエポシロンD化合物II−A(C2742S)のMS(ESI+):507.3[M+H]
【0057】
実施例3 14−NHエポシロンBの調製及び方法
【化18】

【0058】
本実施例において、A−Dを連結してC=C二重結合を形成する、一般式(I)化合物のエポキシ化反応を記載した。
−78℃で、ジメチルジオキシラン溶液(アセトン中0.1M、17ml)を、本発明の脱酸素化合物(505mg)のCHCl溶液10mlに滴下・加入した。混合物を−50℃まで加熱し、1時間保持してから、他の一部のジメチルジオキシラン溶液(5ml)を添加し、反応を−50℃の下で1.5時間継続させた。−50℃のNガス雰囲気中で反応物を乾燥させた。SiOクロマトグラフィーで生成物を精製した。
14−NHエポシロンB化合物II−B(C2742S)のMS(ESI+):523.3[M+H]
このような通用方法は、本発明のその他の化合物から相応的な12、13−エポキシ誘導体、例えば14−N(CHエポシロンB化合物II−Lを調製することにも適用できる。
【0059】
実施例4 14−メトキシ基エポシロンの調製
【化19】

【0060】
ジクロロメタン2mlに溶解された14−OHエポシロンD(3、7−O−(t−ブチル基ジメチル基シリル基)により保護された誘導体であってもよい)(1 equiv.)の溶液中にトリメチルオキソニウムテトラフルオロボラート(trimethyloxonium tetrafluoroborate)(3 equiv.)及びN、N、N’、N’−テトラメチル基ナフタレン−1、8−ジアミン(N、N、N’、N’−tetramethylnaphthalene−1、8−diamine)(3.5 equiv.)を加入する。40℃で2時間反応・攪拌して、溶液を酢酸エチル6mlで希釈して、水2×10mlで洗浄し、合わせた水相を酢酸エチル(2×15ml)で抽出する。その後、NaSOで乾燥して、ろ過して蒸発する。SiOクロマトグラフィーにより14−O−メチル基エポシロンD産品を精製する。3、7−O−(t−ブチルジメチルシリル)により保護された産品である場合、まず脱保護して、その後、SiOクロマトグラムで精製する。
14−O−メチル基エポシロンD化合物II−M(C2843NOS)のMS(ESI+):522.3[M+H]
【0061】
実施例5
生物活性的測定
スルホローダミンB(SRB)試験にて、本発明の選択的化合物の4種の異なる腫瘍細胞品系に対する抗癌活性をスクリーニングした。SRBの解析において、培養した細胞をトリプシン化させ、その後、計数し、そして成長培地で、好適な濃度(5000−7500細胞/100μl)に希釈した。100μl/穴の細胞懸濁液を96−穴のマイクロタイタープレートに添加し、細胞を植菌した。20時間後、成長培地において2x1000nM〜2x0.001nMに希釈されたテスト用化合物100μlを各穴に添加した。3日間の培養を行った後、10%のトリクロロ酢酸100μlを使用して、4℃の下で細胞を1時間固定し、その後、0.2%SRB/1%酢酸を用いて室温下で20分間染色した。1%の酢酸にて、結合しなかった染料を洗い流し、10mMのTris塩基200μlで結合したSRBを溶解した。結合した染料の量は、波長515nmにおけるOD値を測定することにより推算した。結合した染料の量は、細胞タンパク質の総量と正比例をなす。データは、Kaleida Graphプログラムで解析し、そして半抑制濃度(IC50)を計算した。比較のために、エポシロンD及びBを平行テストした。本発明中の測定された選択性化合物の細胞毒性の試験結果を、以下の通り示す。本発明のその他の化合物に対しても、類似する方法により測定することができる。
【0062】
細胞レベル(cell−based)のチューブリン重合試験にて、作用メカニズムを測定した。試験において、37℃の下で、本発明の化合物1μMを用いて、35mmシャーレに培養されたMCF−7細胞に対して、1時間処理した。CaとMgとを含まないPBS 2mLで、細胞を2回洗浄し、室温下で溶解液(20Mm Tris、pH 6.8、1mM MgCl2、2 mM EDTA、1% Triton X−100;プロテアーゼ阻害剤を加入)300μLで細胞を5−10分間処理して、細胞を分裂・分解させた。分裂・分解液を1.5−mLのEppendorfチューブに移した。室温下で、分裂・分解液を18000gで12分間遠心分離した。可溶性又は未重合のチューブリン含有上澄み液と、不溶性又は重合したチューブリン含有粒状沈殿とを分離し、かつ新しいチューブに移した。その後、分裂・分解液300μLにて粒状沈殿を新たに懸濁させた。SDS−PAGE及びβ−チューブリン抗体(Sigma)で、免疫プロットを行って、検体ごとに解析し、その後、NIHImageプログラムでプロット上のβ−チューブリンシグナルの量を解析して、細胞中のチューブリン重合の変化を測定した。
チューブリン重合試験は、本発明のエポシロン誘導体がエポシロンと同じ作用メカニズムを有することを示しており、テストの条件下で、エポシロンと類似する動力学及び効用を有している。本発明のその他の化合物に対しても、同じ方法で測定することができる。
【0063】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、一連の一般式(I)を有するエポシロン化合物並びにその調製方法及び医薬用途に関する。本発明のエポシロン化合物は、エポシロンD又はその誘導体を原料として、生物転換及び化学合成又は化学修飾などの方法により調製する。本発明のエポシロン化合物は、増殖性疾患を治療することに用いられ、細胞過成長を抑制する、及び細胞成長を中止することに効率的に用いられることができ、新規の抗癌医薬品の先導化合物になることが期待される。本発明は、産業上で利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I)に示されるエポシロン化合物であることを特徴とする、エポシロン化合物又はその化合物の薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体。
【化1】

式中に、A-Dは下記の式(a)に示される炭素−炭素二重結合又は式(b)に示されるエポキシ基である;
【化2】

XはO又はN−Rである;
WはNRR又はO−Rであり、その中に、
RはH、ヒドロキシ又はアミノ基保護基、置換若しくは未置換の低級アルキル基又は不飽和炭化水素基から選ばれるものである;
はH、OH、置換若しくは未置換の低級アルキル基又は不飽和炭化水素基から選ばれるものであり、又はRと一緒にシクロアルキルを形成する;
はH、置換若しくは未置換の低級アルキル基又は不飽和炭化水素基から選ばれるものであり、又はC−4のその他の1つのメチル基と一緒に低級シクロアルキルを形成する;
はH、OH又はNHから選ばれるものである;
はH、置換若しくは未置換の低級アルキル基から選ばれるものである;
且つ、14−OHエポシロンD及び4−デメチル基14−OHエポシロンDを含まない。
【請求項2】
WはNRR又はO−Rであり、その中に、RはH、アミノ基保護基、置換若しくは未置換のC1−6アルキル基又はC2−6アルケニル基から選ばれるものであり、RはH、置換若しくは未置換のC1−6アルキル基又はC2−6アルケニル基から選ばれるものであり、又はRと一緒にC3−6シクロアルキルを形成することを特徴とする、請求項1に記載のエポシロン化合物又はその化合物の薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体。
【請求項3】
WはNH、O−CH、O−CF、NH−CH、N(CH、又は、
【化3】

である;
はH又はメチル基である;
はCH又はCFであることを特徴とする、
請求項1又は2に記載のエポシロン化合物又はその化合物の薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体。
【請求項4】
前記化合物は下記の化合物から選ばれるものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のエポシロン化合物又はその化合物の薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体。
【化4】

【請求項5】
請求項1−4のいずれかに記載の化合物又はその化合物の薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体、及び1種又は多種の薬用担体及び/又は希釈剤を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項6】
更に1種又は多種のその他の活性医薬品を含むことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物又はその化合物の薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体の、増殖性疾患を治療する医薬品の調製における応用。
【請求項8】
前記増殖性疾患は腫瘍、多発性硬化症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症及び再狭窄から選ばれるものであることを特徴とする、請求項7に記載の応用。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物又はその化合物の薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体の、細胞の過成長を抑制する、及び細胞成長を中止する医薬品の調製における応用。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物又はその化合物の薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体を調製する方法であって、当該方法は以下のことから選ばれるものであることを特徴とする方法。
1)エポシロンD及びその誘導体から微生物の生物転換又は微生物由来のヒドロキシ化酵素であるP450酵素により、ヒドロキシ化エポシロンD誘導体を調製する;
2)14−ヒドロキシエポシロン誘導体から化学反応合成経路により、14−NRR−エポシロン誘導体を調製する;又は
2’)14−ヒドロキシエポシロン誘導体から化学反応合成経路により、14−O−メチル基−エポシロン誘導体を調製する;
3)ステップ2’)における14−O−メチル基−エポシロン誘導体から化学反応合成経路により、14−O−メチル基−ラクタムエポシロン誘導体を調製する。
【請求項11】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物又はその化合物の薬学的に許容しうる塩、水和物、多結晶構造体、光学異性体、ラセミ体、非鏡像異性体又は鏡像異性体を調製する方法であって、14−W−エポシロンD誘導体における炭素−炭素二重結合を化学エポキシ化反応によりA−Dがエポキシ基である化合物の14−W−エポシロンB誘導体を得ることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−514281(P2013−514281A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543447(P2012−543447)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/CN2010/002078
【国際公開番号】WO2011/072496
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512156866)
【Fターム(参考)】