説明

エマルジョンポリマーフィルムを有する複合体

【課題】エマルジョンポリマーフィルムを有する複合体の提供。
【解決手段】本発明は、基体および多段ラテックスポリマーエマルジョンフィルムを含む複合体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体と、改善された水不溶性ラテックスポリマーの水性分散液とから形成される複合体に関する。本発明はさらに、発泡ポリマー基体とエマルジョンポリマーとの複合体に関する。本発明はさらに、可塑化ポリマー基体とエマルジョンポリマーとの複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
魅力的な基体、例えば発泡または可塑化基体上で感圧性接着剤(PSA)の性能をエイジング(aging)に際して維持することは、多くの接着用途について必要とされる。例えば、断熱材および振動吸収発泡体は高温または高湿に付される可能性があり、その結果、時間とともに接着性能が失われる。歴史的に、溶媒ベースの接着剤はこのような厳しい用途に好まれてきた。しかしながら、環境への配慮から溶媒を排除することが好ましい。エマルジョンPSAで達成可能な、このようなコーティング速度またはこれより高いコーティング速度は、溶媒ベースPSAの代わりにこれらを使用することに有利である。
【特許文献1】米国特許第6,262,144号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
典型的には、PSAは、時間とともに、剥離または剪断強度のいずれかまたは両方の劣化を示す。剪断強度は、横方向にそれを引っ張ることにより引き起こされる横応力にどの程度接着剤が対応するかに関連する。この特性は、どれくらいの重量を接着剤が支持することができるかに直接影響する。剥離強度は、接着剤が所与の表面とどれくらい強力な結合を形成したか、言い換えると、所与の表面からの剥離に接着剤がどれくらい耐えるかに関連する。
【0004】
米国特許第6,262,144号は、二段階プロセスにより形成される水不溶性ラテックスポリマーの水性分散液およびPSAとして有用であり得る組成物を開示する。米国特許第6,262,144号は、結合/接着バランスに関連する問題を解決することを試みるが、本発明の複合体の形成またはエイジングに際しての性能の問題に取り組んでいない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリマー発泡基体または可塑化ポリマー基体およびラテックスポリマーエマルジョンから形成される複合体を提供し、ここで、該エマルジョンは、多段重合プロセスにより形成される。本発明の複合体は、エイジングに際してPSA特性の優れた保持を示す。
【0006】
本明細書において用いられる場合、「(メタ)」なる用語とその後に別の用語、例えば、アクリレートが続く用法は、アクリレートおよびメタクリレートの両方をさす。例えば、「(メタ)アクリレート」なる用語は、アクリレートまたはメタクリレートのいずれかをさし;「(メタ)アクリル」なる用語は、アクリルまたはメタクリルのいずれかをさし;「(メタ)アクリロニトリル」なる用語は、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルのいずれかをさし;「(メタ)アクリルアミド」なる用語は、アクリルアミドまたはメタクリルアミドのいずれかをさす。
【0007】
本明細書において用いられる「ガラス転移温度」または「T」とは、それ以上でガラス状ポリマーがポリマー鎖の部分運動をする温度を意味する。ポリマーのガラス転移温度は、次のFox式[Bulletin of the American Physical Society、1、3、p123(1956)]により見積もることができる。
【0008】
【数1】

【0009】
コポリマーに関して、wおよびwは、2つのコモノマーの重量分率をさし、およびTg(1)およびTg(2)は2つの対応するホモポリマーのガラス転移温度(ケルビン)をさす。3以上のモノマーを含有するポリマーに関しては、さらなる項(w/Tg(n))が追加される。ポリマー相のTは、例えば、“Polymer Handbook”、J.BrandrupおよびE.H.Immergut編、Interscience Publishers[date]において見出すことができる、ホモポリマーのガラス転移温度について適当な値を用いることにより計算することもできる。本明細書において記載されているTの値は、Fox式を用いて計算される。複数の重量平均粒子直径分布を有する水性ポリマー分散液の全体的なTを計算する場合、分散液の各部分のT計算値が適用される。さらに詳細には、ポリマー分散液の全体的なTは、Fox式を用い、分散液中のモノマーの全てに基づいて計算される。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「低い水溶性」とは、25℃で脱イオンHO中に約6%未満の溶解度として定義される。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、ポリマー発泡体と、ラテックスポリマーエマルジョンから形成されるフィルムとを含む複合物品であって、前記ラテックスポリマーエマルジョンが:(a)乳化重合により、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーの、第一段階ポリマーを調製し(ここで、前記第一段階ポリマーは−20℃未満のTgを有する);(b)アルファ、ベータ−エチレン性不飽和の少なくとも2つの部位を有する少なくとも1種のモノマーを含む追加のエチレン性不飽和モノマーを第一段階ポリマー中に分散させ、それによって該追加のモノマーが第一段階ポリマーを膨潤し;および、(c)該モノマー膨潤された第一段階ポリマー内で該追加のモノマーを重合することを含む方法により調製される、複合物品が提供される。発泡体は、ポリ塩化ビニル樹脂および少なくとも1種の可塑剤を含み得る。
【0012】
本発明のもう一つ別の実施形態において、少なくとも1種の可塑剤を含むポリ塩化ビニル基体と、ラテックスポリマーエマルジョンから形成されるフィルムをと含む複合物品であって、ラテックスポリマーエマルジョンが:(a)乳化重合により、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーの、第一段階ポリマーを調製し(ここで、前記第一段階ポリマーは−20℃未満のTgを有する);(b)アルファ、ベータ−エチレン性不飽和の少なくとも2つの部位を有する少なくとも1種のモノマーを含む追加のエチレン性不飽和モノマーを第一段階ポリマー中に分散させ、それによって該追加のモノマーが第一段階ポリマーを膨潤し;および(c)該モノマー膨潤された第一段階ポリマー内で該追加のモノマーを重合することを含む方法により調製される、複合物品が提供される。
【0013】
基体において存在する可塑剤は、ポリマーまたはモノマー可塑剤であってよい。ラテックスポリマーエマルジョンは粘着付与剤を含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
乳化重合による水不溶性ラテックスポリマーの水性分散液の調製は、当該分野においてよく知られている。乳化重合の実施は、D.C.Blackley、Emulsion Polymerization(Wiley、1975)において詳細に検討されている。通常の乳化重合技術は、本発明の水不溶性ラテックスポリマーの第一段階を調製するために使用することができる。乳化重合の実施は、H.Warson、The Applications of Synthetic Resin Emulsions、第2章(Ernest Benn Ltd.、London 1972)においても検討されている。
【0015】
従って、モノマーは、アニオン性、カチオン性または非イオン性分散剤によって、例えば、全モノマーの重量基準で約0.25重量%〜5重量%の分散剤を使用して、乳化させることができる。アニオン性および非イオン性乳化剤の組み合わせも使用することができる。高分子量ポリマー、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースおよびポリビニルアルコールを、ポリアクリル酸などの高分子電解質のように、乳化安定剤および保護コロイドとして使用することができる。酸性モノマー、特に低分子量のもの、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸は水溶性であり、従って、使用される他のモノマーの乳化を助ける分散剤としての働きをすることができる。
【0016】
好適なカチオン性分散剤は、ラウリル−ピリジニウムクロライド、セチルジメチルアミンアセテート、およびアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドであって、アルキル基が8〜18個の炭素原子を有するものを包含する。
【0017】
好適なアニオン性分散剤としては、例えば、高級脂肪族アルコール硫酸塩、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど;アルキルアリールスルホン酸塩、例えば、イソプロピルベンゼンスルホン酸またはイソプロピルナフタレンスルホン酸のナトリウムまたはカリウム塩など;アルカリ金属高級アルキルスルホコハク酸塩、例えば、オクチルスルホコハク酸ナトリウム、N−メチル、N−パルミトイルタウレートナトリウム、オレイルイソチオン酸ナトリウムなど;およびアルキルアリールポリエトキシエタノール硫酸またはスルホン酸のアルカリ金属塩、例えば、1〜5のオキシエチレン単位を有するtert−オクチルフェノキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0018】
好適な非イオン性分散剤としては、約7〜18の炭素原子のアルキル基および約6〜約60のオキシエチレン単位を有するアルキルフェノキシポリエトキシエタノール、例えば、ヘプチルフェノキシポリエトキシエタノール、メチルオクチルフェノキシポリエトキシエタノールなど;メチレン結合アルキルフェノールのポリエトキシエタノール誘導体;硫黄含有薬剤、例えば、約6〜約60モルのエチレンオキシドをノニルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなど、またはアルキルチオフェノール(ここで、アルキル基は、6〜16個の炭素原子を含有する)と縮合することにより調製されるもの;長鎖カルボン酸、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸など、または1分子あたり6〜60のオキシエチレン単位を含有するトール油中で見られるものなどの酸の混合物の、エチレンオキシド誘導体;長鎖アルコール、例えば、オクチル、デシル、ラウリル、またはセチルアルコールの類似エチレンオキシド縮合物、疎水性炭化水素鎖を有するエーテル化またはエステル化ポリヒドロキシ化合物のエチレンオキシド誘導体、例えば、6〜60のオキシエチレン単位を含有するソルビタンモノステアレート;さらに、6〜60のオキシエチレン単位を含有する例えばドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、およびオクタデシルアミンなどの長鎖または分岐鎖アミンのエチレンオキシド縮合物;1以上の疎水性プロピレンオキシドセクションと結合したエチレンオキシドセクションのブロックコポリマーが挙げられる。アルキルベンゼンスルホネートおよびエトキシル化アルキルフェノールの混合物を用いることができる。
【0019】
フリーラジカルタイプの重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウムまたはカリウムを単独またはレドックス系の酸化成分として用いることができ、前記レドックス系は、還元成分、たとえば、メタ重亜硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウムまたはホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムも包含する。還元成分は、しばしば促進剤と呼ばれる。開始剤および促進剤は、通常、触媒、触媒系またはレドックス系と呼ばれ、共重合されるモノマーの重量基準で、それぞれ約0.01%以下から3%の割合で使用することができる。レドックス触媒系の例としては、t−ブチルヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム/Fe(II)、および過硫酸アンモニウム/重亜硫酸ナトリウム/ヒドロ亜硫酸ナトリウム/Fe(II)が挙げられる。重合温度は室温から90℃まで、またはそれ以上であり得、通常どおり、用いられる触媒系に関して最適化することができる。乳化重合は、シードされてもよいし、あるいはシードされてなくてもよい。シード重合は非シード重合よりも、より均一な物理的特性を有するラテックスポリマーの水性分散液を産生する傾向にある。
【0020】
メルカプタン、ポリメルカプタンおよびポリハロゲン化合物を包含する連鎖移動剤は、ポリマーの分子量を加減するために重合混合物において望ましい場合がある。使用することができる連鎖移動剤の例は、長鎖アルキルメルカプタン、例えば、t−ドデシルメルカプタン、アルコール、例えば、イソプロパノール、イソブタノール、ラウリルアルコールまたはt−オクチルアルコール、四塩化炭素、テトラクロロエチレンおよびトリブロモエタンを包含する。一般に、第一段階ポリマーを形成するために使用されるモノマー混合物の重量基準で、0.05〜0.5重量%または0.05〜0.25重量%を使用することができる。
【0021】
重合方法は、熱またはレドックスタイプであってよく、すなわち、フリーラジカルが単に開始剤種の熱解離によって生成してもよく、またはレドックス系を用いてもよい。重合されるモノマーの全部または一部を含有するモノマーエマルジョンは、モノマー、水および乳化剤を用いて調製することができる。水中に触媒を含有する触媒溶液を、別に調製することができる。モノマーエマルジョンおよび触媒溶液を重合容器中に、乳化重合の間に共供給(co−feed)することができる。反応容器それ自体は当初水を含有していてもよい。反応容器はさらにシードエマルジョンを含有してもよく、さらに重合触媒の最初の充填もさらに含有していてもよい。乳化重合中の反応容器の温度は、冷却して、重合反応により発生する熱を除去するか、または反応容器を加熱することにより、制御することができる。いくつかのモノマーエマルジョンを反応容器中に同時に共供給することができる。複数のモノマーエマルジョンが共供給される場合、これらは異なるモノマー組成のものであってもよい。様々なモノマーエマルジョンが共供給される順序および速度は乳化重合プロセスの間に変更することができる。モノマーエマルジョンの添加後または乳化完了後、重合反応混合物を追跡して、未反応モノマーおよび未反応重合触媒種の濃度を最低に抑えることができる。反応容器の内容物のpHも、乳化重合プロセスの間に変更することができる。熱およびレドックス重合プロセスの両方を用いることができる。
【0022】
第一段階ポリマーの調製において使用されるモノマーは、合成樹脂エマルジョンの分野において通常用いられる任意のものであってよい。アクリルモノマーは、接着コーティング組成物において使用されるラテックスポリマーの調製に好ましい。アクリルモノマーの例は、アクリル酸およびメタクリル酸の(C−C24)アルキルエステルを包含する。本発明において使用される第一段階ポリマーの形成において使用することができるアクリル酸およびメタクリル酸のエステルの(C−C24)アルキル基の例は:メチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、ラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル基などを包含する。具体例は:メチルメタクリレート、エチルアクリレート、またはn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、sec−ブチルアクリレートおよびt−ブチルメタクリレートを包含する。アクリル酸およびメタクリル酸の(C−C12)アルキルエステルは本発明のラテックスポリマーの調製において好ましい。モノマー組成物は、−20℃(好ましくは−30℃、−40℃)未満のランダムコポリマーのガラス転移温度(Tg)特性を有する第一段階ポリマーを生成するように選択される。
【0023】
一つの実施形態において、本発明の第一段階ポリマーは、全組成物の重量の少なくとも40重量%の、−40℃未満のホモポリマーTgを有する少なくとも1種のモノマー、および10〜50%の少なくとも1種の軟質親水性非イオン性モノマーを含む。本明細書において用いられる場合、「軟質」モノマーとは、30℃未満、好ましくは10℃未満のTgを有するモノマーを意味する。軟質親水性モノマーは、約30℃未満のホモポリマーTgおよび25℃で約2%以上の水溶性を有する(好ましいエチルアクリレート、メチルアクリレート、ビニルアセテート)。
【0024】
本発明の第一段階ポリマーの調製においてアクリルモノマーとのコモノマーとして少ない割合(すなわち、全モノマー組成物の5重量%未満)で有用な他のモノエチレン性不飽和重合性モノマーは、ハロゲン化ビニリデン、ハロゲン化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルエステル、例えばビニルホルメート、ビニルアセテートおよびビニルプロピオネート、ならびにエチレンとかかるビニルエステルの混合物、アルコールエーテルのアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、例えばジエチレングリコールモノエチルまたはモノブチルエーテルメタクリレート、ベータ−アクリルオキシプロピオン酸の(C−C10)アルキルエステルおよびアクリル酸のより高次のオリゴマー、スチレンおよびアルキル置換スチレンおよびビニル芳香族、例えば、アルファ−メチルスチレン、エチレンおよび他のアルキルオレフィン(例えば、プロピレン、ブチレン、ペンテンなど)の混合物、ビニルエーテル、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ビニル2−メトキシエチルエーテル、ビニル2−クロロエチルエーテルなどを包含する。ブチルアクリレート、2−エチル−ヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレートが第一段階ポリマーに特に好ましいモノマーである。いくつかの好ましい実施形態において、第一段階ポリマーは、0.25〜5%の、50℃より高いホモポリマーTgを有する少なくとも1種の非イオン性モノエチレン性不飽和モノマー(例えばメチルメタクリレートあるいはスチレンまたは他のスチレン系モノマー)を含む。
【0025】
本発明の第一段階ポリマーの調製において有用な追加のモノエチレン性不飽和重合性コモノマーは、ヒドロキシ官能性ビニルモノマー、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ブタンジオールアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、および2−ヒドロキシプロピルメタクリレートを包含する。有用なモノマーのさらなる例は、不飽和脂肪族ジカルボン酸の部分エステル、特にかかる酸のアルキル半エステルを包含する。かかる部分エステルの例は、イタコン酸、フマル酸およびマレイン酸のアルキル半エステルであり、ここで、該アルキル基は1〜6個の炭素原子を含有する。この基の化合物の代表的なものは、イタコン酸メチル、イタコン酸ブチル、フマル酸エチル、フマル酸ブチル、およびマレイン酸メチルである。少量の他のコモノマー、例えば、接着促進コモノマーも使用することができる。これらのモノマーは、アクリルモノマーと共重合して、第一段階ポリマーを生成することができる。
【0026】
アルファ、ベータ−エチレン性不飽和カルボン酸であって、本発明の第一段階ポリマーの形成においてアクリルおよび他のモノマーと共重合することができるものの例は、アクリル酸、メタクリル酸、ベータ−アクリルオキシプロピオン酸および高次オリゴマーのアクリル酸およびその混合物、エタクリル酸、イタコン酸、アコニット酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸、アルファ−クロロアクリル酸、桂皮酸、メサコン酸およびその混合物を包含する。アクリル酸およびメタクリル酸が好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。アルファ、ベータ−エチレン性不飽和カルボン酸がモノマーの合計重量基準で10、5または3.5重量%の上限から0.1、0.25、または0.5重量%の下限までの範囲の量の第一段階ポリマーモノマー組成物を含むのが好ましい。
【0027】
モノエチレン性不飽和モノマーに加えて、アルファ、ベータ−エチレン性不飽和の少なくとも2つの部位を有する、少ない割合のアルファ、ベータ−エチレン性不飽和モノマー、すなわち、ジまたは多エチレン性不飽和モノマーを、第一段階ポリマーの調製においてコモノマーとして使用することができる。しかしながら、多エチレン性不飽和モノマーを用いる必要はない。
【0028】
初期ラテックスポリマーは、追加のアルファ、ベータ−エチレン性不飽和モノマーの添加直前に調製することができる。別法として、第一段階ポリマーはそれ自体、追加のモノマーの添加から実質的に外れたある時点で調製された商業的に入手可能なエマルジョンであってよい。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態において、第一段階ポリマーは、重合性界面活性剤の存在下で形成することができる。好適なエチレン性不飽和界面活性剤モノマーは、これに限定されないが、少なくとも1種の酸(ここで、前記酸は、スルホン酸、カルボン酸、またはリン酸、あるいはその混合物である)、および少なくとも1種の窒素含有塩基(ここで、前記窒素含有塩基は、少なくとも1つの窒素原子および少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を含む)を含む塩または第四級窒素化合物を包含する。他の好適な例は、米国特許公開番号2003/0149119において記載されている。
【0030】
他の好適な重合性界面活性剤モノマーは、ノニルフェノキシプロペニルポリエトキシル化スルフェート(例えば、Daiichi CorpからHitenol(商標)として得られる);ナトリウムアルキルアリルスルホスクシネート(例えば、Henkel CorpからTrem(商標)LF−40として得られる);アンモニウムジ−(トリクロロ(5.2.1.0 2,6)デカ−3−エン−(8または9)オキシエチルスルホスクシネート;およびアンモニウムジ−(トリクロロ(5.2.1.0 2,6)デカ−3−エン−(8または9)スルホスクシネートを包含する。さらに、不飽和C〜C30有機酸のアンモニウムおよび金属塩を、単独あるいは前記界面活性剤との組み合わせにおいて使用することができる。これらの酸の例は:アルファメチル桂皮酸、アルファフェニル桂皮酸、オレイン酸、リネオリン酸(lineolic acid)(米国特許第5,362,832号に記載)、リンシノレイン酸、トール油ロジンおよび脂肪酸の不飽和フラクション、不均化ロジン酸、大豆油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ベニバナ油脂肪酸、ソルビタンモノオレエート、アビエチン酸、ポリ(オキシエチレン)ソルビトールセスキオレエート、およびEmpol(商標)1010ダイマー酸である。さらなる好適な重合性界面活性剤モノマーは、例えば、マレエート誘導体(米国特許第4,246,387号に記載)、およびアルキルフェノールエトキシレートのアリル誘導体(特開昭62−227435号に記載)も包含する。使用される界面活性剤の量は、典型的には、モノマーの合計重量基準で0.1重量%〜6重量%である。
【0031】
さらに、第一段階ポリマーの重量基準で2〜50、好ましくは5〜30重量%の、約35000未満の数平均分子量および少なくとも40℃の軟化点を有する低分子量ポリマー成分(米国特許第4,912,169号に記載)を別の分散液中に混合するか、あるいは別の重合段階として第一および/または第二段階ポリマーの存在下で形成することができる。別法として、第一段階ポリマーを低分子量ポリマー成分の存在下で形成することができる。
【0032】
第一段階ポリマーの調製後で、第二段階またはそれに続く段階の前に、重合阻害剤を添加することができるか、あるいは本発明の組成物の調製プロセスにおいて第二段階またはそれに続く段階を開始剤の添加無しに開始することができる。このプロセスの第二行程において、アルファ、ベータ−エチレン性不飽和の少なくとも2つの部位を有する少なくとも1種のモノマーを含む追加のアルファ、ベータ−エチレン性不飽和モノマーであって、低い水溶性を有するものを、水不溶性ラテックスポリマーの第一段階水性分散液中に分散させる。アルファ、ベータ−エチレン性不飽和の少なくとも2つの部位を有するアルファ、ベータ−エチレン性不飽和モノマーの例は、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジメタリルクロレンデート、ジアリルクロレンデート、ジアリルフマレート、ジアリルイタコネート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルイソシアネート、トリアリルトリメリテート、1,6−ヘキセンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジアリルメタクリレート、およびジビニルベンゼンを包含する。
【0033】
追加のアルファ、ベータ−エチレン性不飽和モノマーが、第一段階ポリマーの合計重量基準で、10または7.5重量%の上限から0.25重量%または0.5重量%の下限までの範囲の量を含むことが好ましい。全てのモノマー範囲は、両端を含み、組み合わせ可能である。アルファ、ベータ−エチレン性不飽和の少なくとも2つの部位を有するモノマーは、アルファ、ベータ−エチレン性不飽和の2つの部位を有するモノマー、およびアルファ、ベータ−エチレン性不飽和の3つの部位を有するモノマーからなる群から選択されるのが好ましい。アルファ、ベータ−エチレン性不飽和の2つの部位を有するモノマーが、ジアクリレートおよびジメタクリレートから選択されるのも好ましい。アルファ、ベータ−エチレン性不飽和の3つの部位を有するモノマーが、トリアクリレートおよびトリメタクリレートから選択されるのも好ましい。もう1つ別の実施形態において、アルファ、ベータ−エチレン性不飽和の2つの部位を有するモノマーが、ジビニルベンゼンおよび脂肪族共役ジエンから選択されるのが好ましい。好ましいジアクリレートおよびジメタクリレートのうち、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、およびトリプロピレングリコールジアクリレートが特に好ましい。トリアクリレートおよびトリメタクリレートのうち、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートが特に好ましい。
【0034】
アルファ、ベータ−エチレン性不飽和の少なくとも2つの部位を有するモノマーとして有用な他のモノマーは、ジイソシアネートおよびトリイソシアネートから選択される少なくとも1種の化合物とヒドロキシ(C−C)アルキルアクリレートおよびヒドロキシ(C−C)アルキルメタクリレートから選択される少なくとも1種の化合物の反応生成物を包含する。これらの例は、3−ヒドロキシプロピルメタクリレートおよび2,4−トルエンジイソシアネートの反応生成物、および2−ヒドロキシエチルアクリレートおよびヘキサメチレンジイソシアネートの反応生成物を包含する。同様に、ジ−およびトリ−エポキシ官能性化合物から選択される少なくとも1種の化合物とアクリル酸およびメタクリル酸から選択される少なくとも1種の化合物の反応生成物を用いることができる。加えて、ジ(C−C)アルコキシル化(C−C)アルカンジオール、トリ(C−C)アルコキシル化(C−C12)アルカントリオール、およびジ(C−C)アルコキシル化ビスフェノールAから選択される少なくとも1種の化合物と、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される少なくとも1種の化合物の反応生成物から選択されるモノマーを用いることができる。トリメチロールプロパンおよびベータ−アクリルオキシプロピオン酸の反応生成物も用いることができる。
【0035】
アルファ、ベータ−エチレン性不飽和の少なくとも2つの部位を有するアルファ、ベータ−エチレン性不飽和モノマーは「多官能性モノマー」(MFM)と呼ばれる場合がある。本発明の組成物の調製プロセスの第二行程中に第一段階ポリマーに添加することができる多官能性モノマーに加えて、モノ−エチレン性不飽和モノマーも多官能性モノマーとともにこの第二行程において使用することができる。これは、モノエチレン性不飽和モノマーおよび多官能性モノマーの混合物を調製し、この混合物を第一段階ポリマーに添加することにより行うことができる。別法として、多官能性モノマーおよびモノエチレン性不飽和モノマーを添加することができる。用いることができるモノエチレン性不飽和モノマーの例は、アクリル酸の(C−C12)アルキルエステル、メタクリル酸の(C−C12)アルキルエステルおよびイソボルニルメタクリレートを包含する。
【0036】
使用される追加のモノマーは、追加のモノマーが十分な割合の、低い水溶性を有するモノマーを含むように選択すべきである。低い水溶性を有するモノマーは、水性分散液の疎水性相中、すなわち、水不溶性ラテックスポリマー中に選択的に分配され、ここで、その後に重合することができる。従って、追加のモノマーとして低い水溶性を有するモノマーを使用することが望ましい。低いレベル(約5重量%未満)の水溶性モノマー、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸、例えば、メタクリル酸またはアクリル酸を追加のモノマー中に含めることができる。低い水溶性を有する多官能性モノマーの例は、トリメチロールプロパントリメタクリレート(25℃での水溶性:<0.01g/100gHO=0.01重量%)、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート(<0.01重量%)、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート(0.07重量%)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(0.05重量%)、トリメチロールプロパントリアクリレート(0.17重量%)、エチレングリコールジメタクリレート(0.28重量%)、およびジエチレングリコールジメタクリレート(0.33重量%)を包含する。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態において、50℃より高いホモポリマーTgを有する非イオン性モノマー、例えば、メチルメタクリレートまたはスチレンまたは他のスチレン系モノマーあるいは30℃未満のホモポリマーTgおよび25℃で2%以上の水溶性を有する軟質親水性モノマー、例えば、エチルアクリレート、メチルアクリレート、ビニルアセテートを第二段階またはそれに続く段階のポリマーに添加する。本明細書において用いられる場合、軟質親水性モノマーは、約30℃未満のホモポリマーTgおよび25℃で2%以上の水溶性を有する。エチルアクリレート、メチルアクリレート、およびビニルアセテートが軟質親水性モノマーの例である。
【0038】
さらに、ポリマーは、追加の可塑剤、粘着付与剤、クロスリンカー、多価金属イオン塩、消泡剤、増粘剤、レオロジー改良剤、顔料、および湿潤剤を含有し得る。
【0039】
本発明の特定の粘着付与剤は、高軟化点粘着付与剤を包含する。典型的には、これらはポリマーの合計重量基準で、50および25重量%の上限から0.5〜1重量%の下限までの範囲で存在する。全ての範囲は両端を含み、組み合わせ可能である。本明細書において用いられる場合、高軟化点粘着付与剤は、100℃以上の軟化点を有する粘着付与剤として定義される。典型的には、これらの化合物は水性分散液として添加される。
【0040】
追加のエチレン性不飽和モノマーが第一段階ポリマーに添加された後、追加のモノマーがラテックス粒子を膨潤させることができる十分な時間が当てられる。使用することができる追加のモノマーは、低い水溶性を有するそのモノマーのみを包含するように選択することができる。低い水溶性とは、周囲温度で約2g/水100g(2重量%)未満の水への溶解度を意味する。好ましくは、モノマーで膨潤した第一段階ポリマーが、膨潤して追加のアルファ、ベータ−エチレン性不飽和モノマーと本質的に平衡になるまで、追加のモノマーに第一段階ポリマーを膨潤させる。水性分散液を膨潤プロセスの間撹拌することができる。
【0041】
第一段階ポリマーが本質的に平衡まで膨潤した後、追加のモノマーをモノマーで膨潤した初期ラテックスポリマー内で重合させる。この第二段階またはそれに続く段階の重合は、通常のフリーラジカル生成開始剤系により開始することができる。好ましくは、開始は、レドックス開始を経由することにより起こる。
【0042】
例えば、乳化重合プロセスは、熱またはレドックスタイプであってよく、すなわち、フリーラジカルが単に開始剤種の熱解離によって生成するか、またはレドックス系を用いることができる。フリーラジカルタイプの重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウムまたはカリウムを単独またはレドックス系の酸化成分として用いることができ、前記レドックス系は、還元成分、たとえば、メタ重亜硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、またはホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウムも包含する。還元成分は、しばしば促進剤と呼ばれる。開始剤および促進剤は、通常、触媒、触媒系、またはレドックス系と呼ばれ、重合されるモノマーの重量基準で、それぞれ約0.01%以下から3%の割合で使用することができる。レドックス触媒系の例としては、t−ブチルヒドロペルオキシド/ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム/Fe(II)および過硫酸アンモニウム/重亜硫酸ナトリウム/ヒドロ亜硫酸ナトリウム/Fe(II)が挙げられる。他の好適な開始剤はアゾ化合物を包含する。重合温度は10℃から90℃またはそれ以上であり得、通常どおりに、用いられる触媒系に関して最適化することができる。乳化重合は、シードされてもよいし、あるいはシードされなくてもよい。
【0043】
前記の二段階または多段ラテックスポリマーエマルジョンPSAをポリマー発泡基体または可塑化ポリ塩化ビニル基体に適用して、本発明の複合体を形成することができる。これらの複合体を調製する方法は当業者に一般的に公知である。
【0044】
本発明の複合体を形成するために好適なポリマー発泡基体は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリレートコポリマー、およびエチレンのホモポリマーおよびコポリマー、特に低および超低密度ポリエチレン(LDPE、LLDPE、VLDPE)、エチレン酢酸ビニルコポリマー、およびその混合物から形成される発泡体を含む。他のポリマーから形成される発泡体も本発明の複合体を形成するために用いることができる。
【0045】
発泡体物質料は、架橋されたまたは架橋されていない形態において用いることができる。発泡密度は、20、25から150、250、400kg/mまでであり得る。全ての密度範囲は両端を含み、組み合わせ可能である。発泡体はクローズドセル、オープンセルまたは混合セル構造を有し得る。外皮の有無を問わず、一体型または非一体型構造の発泡体を使用することが可能である。本発明に従って、2以上の発泡体物質の積層体を使用することも同様に可能である。発泡体は、硬質、半硬質または柔軟性であってよい。
【0046】
用いられる発泡体物質の厚さは非制限的である。いくつかの実施形態において、ポリマー発泡体は、157μm、250μm、350μmから3mm、5mm、10mmの間の範囲の厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、厚さは、0.25mmから50、100mmの範囲であり得る。全ての厚さの範囲は両端を含み、組み合わせ可能である。
【0047】
本発明の一つの実施形態において、ポリマー発泡体には、ステアレートまたは他の低分子量押出用潤滑剤が配合される。これらの添加剤は、押出法により形成される発泡体において有用であり得るが、かかる複合体において使用される従来技術のPSAの性能に有害であり得る。
【0048】
本発明の一つの実施形態において、ポリマー発泡基体は、ポリマーおよび可塑剤を含み得る。本発明の複合体における使用に特に有用なポリマー発泡基体は、PVCおよび可塑剤から形成される。
【0049】
本発明の一つの実施形態において、ポリマー基体は密度の高い可塑化PVCフィルムであり得る。基体が可塑化PVCを含むこれらの実施形態に関して、可塑剤はポリマーであっても、モノマーであってもよい。
【0050】
本発明の複合体における使用に好適なモノマー可塑剤は、フタレート、アジペート、トリメリテート、セバケート、ベンゾエート、エポキシ化植物性油、スルホンアミド、オルガノホスフェートおよびグリコール/ポリエーテルを包含する。前記種類のモノマー可塑剤の非制限的例は、次のものを包含する:フタレート:ビス(2−エチルヘキシル)フタレート(DEHP);ジイソノニルフタレート(DINP);ビス(n−ブチル)フタレート(DnBP、DBP);ブチルベンジルフタレート(BBzP);ジイソデシルフタレート(DIDP);ジ−n−オクチルフタレート(DOPまたはDnOP);ジイソオクチルフタレート(DIOP);ジエチルフタレート(DEP);ジイソブチルフタレート(DIBP);ジ−n−ヘキシルフタレート;アジペート;ビス(2−エチルヘキシル)アジペート(DOA);ジメチルアジペート(DMAD);モノメチルアジペート(MMAD);ジオクチルアジペート(DOA);トリメリテート;トリメチルトリメリテート(TMTM);トリ−(2−エチルヘキシル)トリメリテート(TEHTM−MG);トリ−(n−オクチル、n−デシル)トリメリテート(ATM);トリ−(ヘプチル、ノニル)トリメリテート(LTM);n−オクチルトリメリテート(OTM);マレエート;ジブチルマレエート(DBM);ジイソブチルマレエート(DIBM);セバケート;ジブチルセバケート(DBS);スルホンアミド;n−エチルトルエンスルホンアミド(o/p ETSA)、オルトおよびパラ異性体;N−(2−ヒドロキシプロピル)ベンゼンスルホンアミド(HP BSA);N−(n−ブチル)ベンゼンスルホンアミド(BBSA−NBBS);オルガノホスフェート;トリクレシルホスフェート(TCP);トリブチルホスフェート(TBP);およびグリコール/ポリエーテル;トリエチレングリコールジヘキサノエート(3G6、3GH);テトラエチレングリコールジヘプタノエート(4G7)。良好な生分解性を有し、生化学的影響が少ない可塑剤、例えば、これらに制限されないが、アセチル化モノグリセリド、シトレートおよびニトレート;例えば、アルキルシトレート、トリエチルシトレート(TEC)、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、トリブチルシトレート(TBC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、トリオクチルシトレート(TOC)、アセチルトリオクチルシトレート(ATOC)、トリヘキシルシトレート(THC)、アセチルトリヘキシルシトレート(ATHC)、ブチリルトリヘキシルシトレート(BTHC、トリヘキシルo−ブチリルシトレート)、およびトリメチルシトレート(TMC)も用いることができる。
【0051】
本発明の複合体における使用に好適なポリマー可塑剤は、ポリエステル、ニトリルゴムおよびケトンエチレンエステルポリマーを包含する。
【0052】
本発明の複合体、およびここで用いられるラテックスポリマーエマルジョンの有益なエイジング特性は、可塑化PVC基体がモノマー可塑剤を含む場合に特に明白である。
【0053】
PVC中に存在する可塑剤の量は、当業者に公知のように、PVC基体の所望の特性およびこれが使用される用途に応じて変化する。典型的な用途において、可塑剤の量は、本発明の複合物品において使用されるPVC配合物の合計重量基準で0〜86重量%の可塑剤を含み得る。複合体において使用されるラテックスポリマーエマルジョンは、柔軟性PVC基体(典型的にはPVC配合物の合計重量基準で30〜50重量%の可塑剤を含む柔軟性PVC基体)と併用する場合に最も有益である。
【0054】
PVC基体は熱および紫外線(UV)安定剤、着色顔料、潤滑剤、殺生物剤、酸化防止剤、およびフィラーをさらに含み得る。
【実施例】
【0055】
〔比較例1〕
行程1−第一ポリマーの重合
次の物質を含有するモノマーエマルジョンを調製する。
DI水:623.6g
ブチルアクリレート:1768.9g
メタクリル酸:36.1g
Triton(商標)X−405界面活性剤(70%):25.8g
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(23%):7.85g
【0056】
スターラー、温度計、および還流冷却器を備えた5リットルの四口丸底フラスコ中に、841.5gの脱イオン(DI)水を充填し、これを窒素雰囲気中で83〜85℃に加熱する。139.9gDI水中の1.97gの過硫酸ナトリウム/HOの触媒共供給溶液を調製する。
【0057】
83〜86℃で、次の物質を釜に装填する。
NaCO/HO:1.23g/12.3g
Na/HO:5.9g/24.6g
100nmポリマーシードエマルジョン(45%):103.5g
シードエマルジョンのすすぎ水:20.5g
【0058】
これらの装填直後に、モノマーエマルジョンおよび前記共供給触媒溶液を、180分供給するために計算された速度で供給する。必要に応じて冷却することにより、80〜82℃の温度を維持する。
【0059】
モノマーエマルジョンおよび触媒溶液供給の終わり近くに、次の溶液を調製する:
中和剤 :4.1gAq.NH/12.3gH
チェーサーA:FeSO(0.15%溶液) 5.47g
チェーサーB:t−ブチルヒドロパーオキシド(70%) 0.41g
DI HO 12.3g
チェーサーC:ナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド 0.41g
DI HO 24.6g
【0060】
モノマーエマルジョンおよび触媒溶液供給が完了したら、温度を80〜82℃に10分間維持した後、中和剤を添加する。反応物を次に60℃に冷却し、ここでチェーサーA、BおよびCを添加する。反応生成物を15分間この温度で維持し、室温に冷却し、100メッシュ(0.149mm篩い目)スクリーンを通して濾過する。
【0061】
〔実施例1〕
行程1−第一ポリマーの重合
次の物質を含有するモノマーエマルジョンを調製する。
DI水:623.6g
ブチルアクリレート:1768.9g
メタクリル酸:36.1g
Triton(商標)X−405界面活性剤(70%):25.8g
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(23%):7.85g
【0062】
スターラー、温度計、および還流冷却器を備えた5リットルの四口丸底フラスコ中に、841.5gの脱イオン(DI)水を充填し、これを窒素雰囲気中で83〜85℃に加熱する。139.9gのDI水中の1.97g過硫酸ナトリウム/HOの触媒共供給溶液を調製する。
【0063】
83〜86℃で、次の物質を釜に装填する。
NaCO/HO:1.23g/12.3g
Na/HO:5.9g/24.6g
100nmポリマーシードエマルジョン(45%):103.5g
シードエマルジョンのすすぎ水:20.5g
【0064】
これらの装填直後に、モノマーエマルジョンおよび前記共供給触媒溶液を180分供給するために計算された速度で供給する。必要に応じて冷却することにより、80〜82℃の温度を維持する。
【0065】
モノマーエマルジョンおよび触媒溶液供給の終わり近くに、次の溶液を調製する。
中和剤 :4.1gAq.NH/12.3gH
チェーサーA:FeSO(0.15%溶液) 5.47g
チェーサーB:t−ブチルヒドロパーオキシド(70%) 0.41g
DI HO 12.3g
チェーサーC:ナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド 0.41g
DI HO 24.6g
【0066】
モノマーエマルジョンおよび触媒溶液供給が完了したら、温度を80〜82℃に10分間維持した後、中和剤を添加する。反応物を次に60℃に冷却し、ここでチェーサーA、BおよびCを添加する。反応物を15分間この温度で維持し、撹拌しながら室温に冷却し、一夜静置する。
【0067】
行程2−追加のモノマーの添加および重合
前記反応物を窒素下、撹拌しながら25℃に温める。95gの1,3−ブチレングリコールジメタクリレートを5分にわたって添加し、30分間窒素下で撹拌する。1.33gの70%水性t−ブチルヒドロパーオキシド(17.4グラムのDI水中)をリアクターに添加し、続いて直ちに152gの3%バナジルスルフェート溶液を添加する。発熱が観察され、反応を60分間撹拌しながら保持する。
【0068】
反応生成物を冷却し、100メッシュ(0.149mm篩い目)スクリーンを通して濾過する。
【0069】
〔比較例2〕
451.25gのブチルアクリレートを451.25gのエチルアクリレートと置き換える以外は、比較例1の手順に従って、比較例2を調製する。
【0070】
〔実施例2〕
451.25gのブチルアクリレートを451.25gのエチルアクリレートと置き換える以外は、実施例1の手順に従って、実施例2を調製する。
【0071】
〔比較例3〕
216.6gのブチルアクリレートを216.6gのエチルアクリレートと置き換える以外は比較例1の手順に従って比較例3を調製する。
【0072】
〔実施例3〕
216.6gのブチルアクリレートを216.6gのエチルアクリレートと置き換える以外は、実施例1の手順に従って実施例3を調製する。
【0073】
〔比較例4〕
722gのブチルアクリレートを722gのエチルアクリレートと置き換える以外は比較例1の手順に従って比較例4を調製する。
【0074】
〔実施例4〕
722gのブチルアクリレートを722gのエチルアクリレートと置換する以外は、実施例1の手順に従って実施例4を調製する。
【0075】
〔粘着付与実施例〕
エマルジョンポリマーを表1に従って水性分散液粘着付与剤A(ADT−A)および水性分散液粘着付与剤B(ADT−B)と組み合わせる。ADT−Aは100℃の軟化点を有し、ADT−Bは125℃の軟化点を有する。
【0076】
【表1】

【0077】
PCV発泡体を含む複合物品の形成
粘着付与したエマルジョンおよび粘着付与していないエマルジョンのそれぞれを厚さ1cmの柔軟性可塑化PVC発泡体上に、#72マイヤーロッド(Meyer Rod)を用いてコーティングする。コーティングされた発泡体を周囲温度で20分間、次に70℃で3分間、次に100℃で3分間乾燥させる。乾燥した複合物品を23℃、50%相対湿度で一夜状態調整する。
【0078】
複合物品のエイジング特性の試験
発泡複合体のそれぞれについて、幅2.54cm×長さ30.5cmの複合物品片のコーティングされた面をステンレススチールパネルに適用し、5kgローラーをこの上に4回通過させることにより、4つの試験パネルを作成する。パネルのうちの2つを70℃オーブン中で7日間エイジングさせ、次に23℃、50%相対湿度で一夜平衡化させる。2つの対照パネルをこの間中23℃および50%相対湿度で貯蔵する。発泡複合体を次にスチールパネルから30.5cm/分の速度で、剥離強度試験機中、パネルの面から180°の角度で剥離する。剥離強度および損傷モードを記録する。損傷モードは次のようであり得る:
接着性−接着剤層はスチールパネルから剥がれる;粘着性−接着剤は、発泡体およびスチールパネルの両方の上に残留物を残す;支持体からの接着不良(AFB)−接着剤はスチールパネル上に残留する;部分的に発泡体が裂ける−発泡体は裂けて、パネル上に幾分の発泡体が残る;または全体的に発泡体が裂ける−発泡体は裂けて、接着面全体の上に発泡体の層が残る。高い剥離強度が望ましい。最も望ましいのは、部分的に発泡体が裂けること、または全体的に発泡体が裂けることである。
【0079】
全ての実施例は、対応する比較例よりもより良好に機能し、より高い剥離強度またはより望ましい損傷モードのいずれかを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー発泡体と、ラテックスポリマーエマルジョンから形成されるフィルムとを含む複合物品であって、前記ラテックスポリマーエマルジョンが:
(a)乳化重合により、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーの、第一段階ポリマーを調製し(ここで、前記第一段階ポリマーは−20℃未満のTgを有する);
(b)アルファ、ベータ−エチレン性不飽和の少なくとも2つの部位を有する少なくとも1種のモノマーを含む追加のエチレン性不飽和モノマーを第一段階ポリマー中に分散させ、それによって該追加のモノマーが第一段階ポリマーを膨潤し;および
(c)該モノマー膨潤された第一段階ポリマー内で該追加のモノマーを重合することを含む方法により調製される、複合物品。
【請求項2】
発泡体がポリ塩化ビニル樹脂および少なくとも1種の可塑剤を含む請求項1記載の複合物品。
【請求項3】
発泡体が少なくとも1種のモノマー可塑剤を含む請求項2記載の複合物品。
【請求項4】
ラテックスポリマーエマルジョンがさらに粘着付与剤を含む請求項1記載の複合物品。
【請求項5】
第一段階ポリマーが:
i)40℃未満のホモポリマーTgを有する少なくとも40%のモノマー;および
ii)10〜50%の30℃未満のホモポリマーTgを有する軟質親水性非イオン性モノマーを含む、請求項1記載の複合物品。
【請求項6】
少なくとも1種の可塑剤を含むポリ塩化ビニル基体と、ラテックスポリマーエマルジョンから形成されるフィルムとを含む複合物品であって、ラテックスポリマーエマルジョンが:
(a)乳化重合により、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーの、第一段階ポリマーを調製し(ここで、前記第一段階ポリマーは−20℃未満のTgを有する);
(b)アルファ、ベータ−エチレン性不飽和の少なくとも2つの部位を有する少なくとも1種のモノマーを含む追加のエチレン性不飽和モノマーを第一段階ポリマー中に分散させ、それによって該追加のモノマーが第一段階ポリマーを膨潤し;および、
(c)該モノマー膨潤された第一段階ポリマー内で該追加のモノマーを重合することを含む方法により調製される、複合物品。
【請求項7】
基体が少なくとも1種のモノマー可塑剤を含む請求項6記載の複合物品。
【請求項8】
ラテックスポリマーエマルジョンがさらに粘着付与剤を含む請求項6記載の複合物品。
【請求項9】
第一段階ポリマーが:
i)40℃未満のホモポリマーTgを有する少なくとも40%のモノマー;および
ii)10〜50%の30℃未満のホモポリマーTgを有する軟質親水性非イオン性モノマーを含む、請求項6記載の複合物品。

【公開番号】特開2008−297538(P2008−297538A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−42218(P2008−42218)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】