説明

エラストマー成形品とその製造方法

【課題】 自動車のハンドル、その他の自動車用の室内装飾品、ゴルフのグリップ部分、釣り竿のグリップ部分、その他のスポーツ用品、通信機器類のボディ等、金属光沢を呈する各種の成形品であって、その成形品ボディがエラストマーで構成された成形品と、そのような成形品を製造する方法に関し、母材が弾性材料であるにもかかわらず、その表面に成膜された金属材料にクラックが入るようなことがなく、また金属材料が剥離するおそれのないエラストマー成形品を提供することを課題とする。
【解決手段】 エラストマー材料からなる基材1の表面側に不連続膜からなる不連続膜層3が設けられ、さらに該不連続膜層3の表面に、トップコート層5が設けられてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエラストマー成形品とその製造方法、さらに詳しくは、自動車のハンドル、その他の自動車用の室内装飾品、ゴルフのグリップ部分、釣り竿のグリップ部分、その他のスポーツ用品、通信機器類のボディ等、金属のような光沢を呈する各種の成形品であって、その成形品ボディがエラストマーで構成された成形品と、そのような成形品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の電気・電子機器、通信機器等には、たとえば下記特許文献1や特許文献2に示すように、電磁波シールドを目的として、プラスチック成形品の表面に銅、ニッケル、アルミニウム等の薄膜を成膜する技術が開発されている。このような成膜は、真空下での蒸着、無電解メッキ等、種々の手段でなされるが、いずれの手段であってもプラスチック成形品の表面に好適に成膜をなすことができる。
【特許文献1】特許第2561992 号公報
【特許文献2】特許第2688148 号公報
【0003】
このように金属材料をプラスチック成形品の表面に成膜するのは、上述のように電磁波シールドを目的とする場合もあるが、本来は金属以外の材料に金属光沢を施して、いかにして金属製品のように見せかけるかという外観上の観点のみでもそれ相応の意義を有するものである。従って、金属以外の種々の材質、性状の成形品の表面に金属光沢を施す技術は、今後も検討される余地がある。
【0004】
ところで、現在では上述のような金属光沢を施す技術は、金属材料を成膜するのに物性が適していること、コストが安価であること等の観点から、硬質のプラスチック成形品に対してのみ行われている。このような金属材料を成膜する技術を広く普及させる意味で、同じプラスチック材料であっても弾性のあるエラストマー成形品に適用することも考えられる。
【0005】
しかし、このようなエラストマープラスチック材料やゴムのような弾性材料は、そもそも弾性変形するという物性故に、成膜された金属材料にクラックが入り、或いは金属材料が剥離するおそれがあるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、母材が弾性材料であるにもかかわらず、その表面に成膜された金属材料にクラックが入るようなことがなく、また金属材料が剥離するおそれのないエラストマー成形品を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためにエラストマー成形品とその製造方法としてなされたもので、エラストマー成形品に関する請求項1記載の発明は、エラストマー材料からなる基材1の表面側に不連続膜からなる不連続膜層3が設けられ、さらに該不連続膜層3の表面に、トップコート層5が設けられてなることを特徴とする。
【0008】
また請求項2記載の発明は、エラストマー材料からなる基材1の表面に、ベースコート層2が設けられ、該ベースコート層2の表面に不連続膜からなる不連続膜層3が設けられ、さらに該不連続膜層3の表面に、トップコート層5が設けられてなることを特徴とする。
【0009】
さらに請求項3記載の発明は、エラストマー材料からなる基材1の表面に、ベースコート層2が設けられ、該ベースコート層2の表面に不連続膜からなる不連続膜層3が設けられ、該不連続膜層3の表面にミッドコート層5が設けられ、さらに該ミッドコート層4の表面にトップコート層5が設けられてなることを特徴とする。
【0010】
さらに、エラストマー成形品の製造方法に係る請求項4記載の発明は、エラストマー材料からなる基材1の表面側に不連続膜層3を形成し、該不連続膜層3の表面に、トップコート層5を形成して製造することを特徴とする。
【0011】
さらに請求項5記載の発明は、エラストマー材料からなる基材1の表面に、ベースコート層2を形成し、次に該ベースコート層2の表面に不連続膜層3を形成し、その後、該不連続膜層3の表面に、トップコート層5を形成して製造することを特徴とする。
【0012】
さらに請求項6記載の発明は、エラストマー材料からなる基材1の表面に、ベースコート層2を形成し、次に該ベースコート層2の表面に不連続膜層3を形成した後、不連続膜層3の表面にミッドコート層4を形成し、その後、該不連続膜層3の表面に、トップコート層5を形成して製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエラストマー成形品は、上述のように、エラストマー材料からなる基材の表面側に不連続膜層が設けられ、さらに該不連続膜層の表面に、トップコート層が設けられているものであるため、このトップコート層は、エラストマー材料からなる基材に対して密着性が良好であり、基材が弾性変形しても、塗膜が割れることがなく、従って金属光沢等を呈している不連続膜層が基材の表面から不用意に剥離することもない。
【0014】
特に、金属光沢等を呈している層が不連続膜で構成されているので、その不連続膜層における島同士が接触していない部分において微細な隙間が生じ、その隙間にトップコート層の樹脂が浸透することとなり、それによって基材に対する不連続膜層の密着性が良好となり、エラストマー材料からなる基材に応力がかかっても、応力がかかった部分における不連続膜層の離脱が防止されていわゆる白化が生じるようなこともないという効果がある。そして、この不連続膜層の密着性は、不連続膜層の上面側又は下面側にミッドコート層又はベースコート層が存在することにより、一層良好となる。
【0015】
また不連続膜層とトップコート層間にミッドコート層を介装した場合には、ミッドコート層に着色することでトップコート層を無色透明とすることができ、その結果、トップコート層に傷がついても発色に影響を及ぼすことがないという効果がある。さらに、不連続膜層に対するトップコート層の密着力も良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態としてのエラストマー成形品の表面構造は、図1に示すように、基材1の表面に、ベースコート層2を介して、金属光沢を呈させる不連続膜層3が形成され、さらに該不連続膜層3の表面にミッドコート層4が形成され、さらに該ミッドコート層4の表面にトップコート層5が形成されることにより構成されている。基材1は、本実施形態ではウレタン系のエラストマーで構成されている。
【0017】
また、不連続膜層3は、真空蒸着法によってスズが蒸着されることにより構成されている。この不連続膜層3は、後述するような不連続膜によって形成されている。
【0018】
また、ベースコート層2及びトップコート層5としては、本実施形態では次の組成からなるものが用いられる。ウレタンアクリレートとしては、本実施形態ではトリレンジイソシアネートと、トリメチロールプロパンとを反応させ、さらに残存NCO基にヒドロキシアルキルメタアクリレートを付加させたものが用いられる。また光重合開始剤類としてはベンゾインが用いられ、エステル類としては酢酸エチルが用いられ、芳香族炭化水素類としてはトルエンが用いられている。
【0019】
成分 組成(重量%)
ウレタンアクリレート 45.4
光重合開始剤類 3.0
エステル類 19.5
芳香族炭化水素類 32.1
合計 100.0
【0020】
さらに、ミッドコート層4としては、本実施形態では次の組成からなるものが用いられる。ウレタンアクリレートとしてはトリレンジイソシアネートと、トリメチロールプロパンとを反応させ、さらに残存NCO基にヒドロキシアルキルメタアクリレートを付加させたものが用いられる。またアクリレートモノマーとしてはポリエチレングリコールジアクリレートが用いられ、非反応性モノマー類としてはカルボン酸含有不飽和モノマーが用いられ、光重合開始剤類としてはベンゾインが用いられ、エステル類としては酢酸エチルが用いられ、芳香族炭化水素類としてはトルエンが用いられ、アルコール類としてはn−ブチルアルコールが用いられている。
【0021】
成分 組成(重量%)
ウレタンアクリレート 27.8
アクリレートモノマー 10.6
非反応性モノマー類 9.9
光重合開始剤類 2.0
エステル類 11.9
芳香族炭化水素類 29.8
アルコール類 8.0
合計 100.0
【0022】
本実施形態では、ベースコート層2及びトップコート層5が上述のような組成からなる樹脂製のものであるため、この樹脂は、エラストマー材料からなる基材1に対して密着性が良好であり、基材1が弾性変形しても、塗膜が割れることがなく、従って不連続膜層3が基材1の表面から不用意に剥離することもない。
【0023】
また不連続膜層3とトップコート層5間には、ミッドコート層4が介装されているので、ミッドコート層4に着色すればトップコート層5を無色透明とすることができる。従って、トップコート層5を着色することが不要となるので、仮にトップコート層5に傷がついても、エラストマー成形品表面の発色に影響を及ぼすことがない。さらに、不連続膜層3に対するトップコート層5の密着力も良好となる。
【0024】
さらに、金属光沢を呈している層が不連続膜層3であるので、その不連続膜層3における島同士が接触していない部分において微細な隙間が生じ、その隙間にミッドコート層4の樹脂が浸透する。そしてミッドコート層4の樹脂は、不連続膜層3の下面側のベースコート層2まで浸透し、ベースコート層2の樹脂と結合する。このようにミッドコート層4の樹脂とベースコート層2の樹脂が結合することで、基材1に対する不連続膜層3の密着性が良好となり、エラストマー材料からなる基材1に応力がかかっても、その応力がかかった部分における不連続膜層3の離脱が生じることもなく、いわゆる白化が生じるようなこともないという効果がある。
【0025】
また、ベースコート層2を介して不連続膜層3が基材1の表面に設けられるので、不連続膜層3の基材1に対する密着性が良好となる。さらに、トップコート層5により表面の汚れを防止できるとともに、不連続膜層の酸化や剥離,損傷を防止でき、耐候性も向上する。
【0026】
次に、上記のようなエラストマー成形品を製造する場合、すなわち、成形品の表面に上記のような層構造を形成する場合について説明する。
【0027】
先ず、図2に示すように、ウレタンエラストマーからなる基材1を準備する。次に、図3に示すように、基材1の表面にベースコート層2を形成する。このベースコート層2の形成は、前記基材1の表面に上記の組成からなる樹脂を塗着し、硬化させることによって行う。
【0028】
次に、図4に示すように、ベースコート層2の表面に、金属光沢を呈させる不連続膜層3を形成する。この不連続膜層3の形成は、スズ等の金属を、真空蒸着法等の金属蒸着法によって蒸着することにより行う。この不連続膜層3は、金属蒸着(本実施形態ではスズの蒸着)の不連続膜によって形成されたものである。
【0029】
この不連続膜が形成される過程をより具体的に説明すると、先ず高真空炉の中で金属片を蒸発させ、それをベースコート層2に付着させる。蒸発の初期の段階では、金属原子は点在してベースコート層2に付着する。蒸発原子は、ベースコート層2への吸着力よりも、すでにベースコート層2に蒸着している金属原子への吸着力が強いため、金属原子上に重なって吸着され、3次元的な成長が促進される。
【0030】
このような蒸発を続行してさらに融合が進むと六角形状となり、最終的には隙間のない連続膜まで成長する。不連続蒸着とは、核の成長の初期段階で蒸着を停止することにより、核で形成された島同士が接触しない状態をいう。これにより、核間は電気的に同通していない状態になる。蒸着量が少なすぎると金属的な光沢を失い、多いと島同士が導通してしまう。そこで膜厚をどの程度にするかが問題である。その膜厚は本発明において特に限定されるものではないが、一般に不連続膜の形成技術で採用されている膜厚と同程度の10〜600Å程度の膜厚とされる。かかる膜厚によって、基材1に応力がかかっても、その応力がかかった部分における不連続膜層3の離脱が生じることもなく、いわゆる白化が生じるようなこともなく、その一方で金属的な光沢を喪失することもないのである。
【0031】
次に、上記のように形成された不連続膜層3の表面に、ミッドコート層4を形成する。このミッドコート層4の形成は、前記不連続膜層3の表面に上記の組成からなる樹脂を塗着し、硬化させることによって行う。
【0032】
次に、上記のように形成された不連続膜層3の表面に、トップコート層5を形成する。このミッドコート層5の形成は、前記ミッドコート層4の表面に上記の組成からなる樹脂を塗着し、硬化させることによって行う。このようにトップコート層4が形成されることで、図1に示すように、エラストマー成形品が製造されることとなる。
【0033】
尚、上記実施形態では、基材1としてウレタン系のエラストマーを用いたが、基材1の材質はこれに限定されるものではなく、たとえばポリカーボネート樹脂、ポリアクリル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂等を使用することも可能であり、さらにはこれ以外の樹脂を使用することも可能である。
【0034】
また、基材1には、合成樹脂以外の材質のもの、合成ゴムを使用することも可能である。要は、エラストマー材料が用いられていればよいのである。さらに、上記のようなエラストマー材料と、ポリカーボネート樹脂とをいわゆる二色成形したようなものを基材1の材料として使用することも可能である。
【0035】
さらに、上記実施形態では、不連続膜層3が真空蒸着法によって形成されていたが、不連続膜層3を形成する手段は該実施形態の真空蒸着法に限定されるものではなく、たとえばイオンプレーティングやスパッタリング等の手段であってもよく、また真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング以外の金属蒸着の手段であってもよい。さらには、金属蒸着以外の手段によって不連続膜層3を形成することも可能である。要は不連続膜からなる不連続膜層3が形成されていればよいのである。
【0036】
さらに、上記実施形態では、スズによって不連続膜層3が形成されていたが、スズ以外の金属、たとえばクロム、チタン、アルミニウム等の金属によって不連続膜層3が形成されていてもよく、不連続膜層3を形成する金属材料の種類は問うものではない。特許第3397495号に開示された有彩色薄膜を形成することも可能である。
【0037】
尚、本発明は、上述のように金属材料からなる膜で不連続膜層3を形成することを主眼とするが、金属以外に、たとえばセラミックの膜を蒸着等により形成することも可能である。セラミック材料からなる膜を形成することで光沢を現出させることもできる。ここで「光沢」とは、物質の表面が光を受けて輝くことをいい、いわゆる金属光沢のみならず、セラミック等金属以外の材料で光沢を現出させる場合も含む。
さらに本発明は、エラストマー成形品に金属等の光沢を呈させることを主眼としているが、不連続膜層3は必ずしも光沢を呈している必要はなく、光沢を呈しない不連続膜層3を具備するエラストマー成形品をも本発明の範囲に含む。たとえば不連続膜層3に艶消し等の加工が施されたエラストマー成形品も本発明に含まれる。
【0038】
さらに、上記実施形態では、ベースコート層2、ミッドコート層4、トップコート層5を構成する樹脂として上述のような組成のものを用いたが、樹脂の組成は上記実施形態に限定されるものではない。
【0039】
上記ベースコート層2、ミッドコート層4、トップコート層5を構成しているウレタンアクリレートに用いられるポリイソシアネート化合物としては、上記実施形態のトリレンジイソシアネートの他、たとえばキシリレン−1,4−ジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物を
用いることが可能である。またウレタンアクリレートに用いられる多価アルコールとしては、上記実施形態のトリメチロールプロパンの他、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールを用いることが可能である。
【0040】
また、ミッドコート層4を構成しているアクリレートモノマーとしては、上記実施形態のポリエチレングリコールジアクリレートの他、たとえばEO変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバチン酸エステルネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレートトリプロピレングリコールジアクリレート2−アクリロイロキシエチルヘキサアヒドロキシフタレート、2−メトキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、脂肪族エポキシアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、ECH変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、イミドアクリレート等を使用することができる。
【0041】
この中でも、特にポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートを使用することが好ましい。
【0042】
また上記ベースコート層2、ミッドコート層4、トップコート層5を構成している光重合開始剤としては、たとえばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−メチルベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等を使用することができる。
【0043】
さらに上記ベースコート層2、ミッドコート層4、トップコート層5を構成している芳香族炭化水素類としては、上記実施形態のトルエンの他、たとえばベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ピネン等を使用することができる。
またシクロヘキサンやシクロヘキサノンのような脂環式炭化水素類を使用することも可能である。
【0044】
さらに上記ベースコート層2、ミッドコート層4、トップコート層5を構成しているエステル類としては、上記実施形態の酢酸エチルの他、たとえばギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、、酢酸プロピル、乳酸エチル、安息香酸メチル、シュウ酸ジエチル、コハク酸ジメチル、グルタミン酸ジメチル、アジピンジメチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を使用することができる。
【0045】
さらに上記ミッドコート層4を構成しているアルコール類としては、上記実施形態のn−ブチルアルコールの他、たとえばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等を使用することができる。
【0046】
さらに、ベースコート層2、ミッドコート層4、トップコート層5にそれぞれ配合される各成分の配合量も上記実施形態に限定されるものではない。ただし、エラストマー材料からなる基材1に対する、不連続膜からなる不連続膜層3の密着性の観点からは、本発明者等が鋭意研究した結果、ベースコート層2及びトップコート層5を構成するウレタンアクリレートの配合量は、30〜60重量%が好ましく、35〜65重量%がより好ましく、40〜50重量%がさらに好ましい。
【0047】
またベースコート層2及びトップコート層5を構成する光重合開始剤類の配合量は、1.6〜4.5重量%が好ましく、2.0〜4.0重量%がより好ましく、2.5〜3.5重量%がさらに好ましい。さらにベースコート層2及びトップコート層5を構成するエステル類の配合量は、13.0〜28.0重量%が好ましく、15.0〜25.0重量%がより好ましく、17.0〜23.0重量%がさらに好ましい。
さらにベースコート層2及びトップコート層5を構成する芳香族炭化水素類の配合量は、24.0〜40.0重量%が好ましく、27.0〜38.0重量%がより好ましく、30.0〜35.0重量%がさらに好ましい。
【0048】
さらに、ミッドコート層4を構成するウレタンアクリレートの配合量は、20.0〜37.0重量%が好ましく、23.0〜33.0重量%がより好ましく、25.0〜30.0重量%がさらに好ましい。またミッドコート層4を構成するアクリレートモノマーの配合量は、7.0〜14.0重量%が好ましく、8.0〜12.5重量%がより好ましく、9.0〜11.5重量%がさらに好ましい。さらにミッドコート層4を構成する非反応性モノマー類の配合量は、7.0〜13.0重量%が好ましく、8.0〜12.0重量%がより好ましく、9.0〜11.0重量%がさらに好ましい。さらにミッドコート層4を構成する光重合開始剤類の配合量は、1.3〜2.7重量%が好ましく、1.5〜2.5重量%がより好ましく、1.7〜2.3重量%がさらに好ましい。さらにミッドコート層4を構成するエステル類の配合量は、8.5〜16.0重量%が好ましく、10.0〜14.0重量%がより好ましく、10.5〜13.5重量%がさらに好ましい。さらにミッドコート層4を構成する芳香族炭化水素類の配合量は、23.0〜37.0重量%が好ましく、26.0〜34.0重量%がより好ましく、28.0〜32.0重量%がさらに好ましい。
さらにミッドコート層4を構成するアルコール類の配合量は、5.0〜11.0重量%が好ましく、6.0〜10.0重量%がより好ましく、7.0〜9.0重量%がさらに好ましい。
【0049】
さらに、ベースコート層2を形成することによって不連続膜層3の密着性が良好になるという好ましい効果が得られたが、ベースコート層2を形成することは、本発明に必須の条件ではない。
【0050】
さらに、トップコート層5には、顔料等を混入して着色することも可能であり、また艶消剤を混入することも可能である。ただし、ミッドコート層4を設ける場合には、そのミッドコート層4に顔料等を混入して着色すればよいので、トップコート層5に着色する必要はない。
【0051】
尚、ミッドコート層4を設けることによって、このようにトップコート層5に着色する必要がなく、トップコート層に傷がついても発色に影響を及ぼすことがないという好ましい効果が得られたが、ミッドコート層4を設けることも本発明に必須の条件ではない。ミッドコート層4を設けない場合には、不連続膜層3を形成した後に、その不連続膜層3の上面にトップコート層5が設けられることとなる。
【0052】
さらに、不連続膜層3をレーザーカットすることも可能である。この場合には、不連続膜層3の形成工程の後、ミッドコート層4やトップコート層5を形成する工程の前に、その不連続膜層3のレーザーカット加工の工程が施されることとなる。
【0053】
さらに、本発明のエラストマー成形品の用途も限定されるものではなく、たとえば自動車のハンドル、その他の自動車用の室内装飾品、ゴルフのグリップ部分、釣り竿のグリップ部分、その他のスポーツ用品、電気・電子機器、通信機器等のボディ、携帯電話やその附属品のボディ、パーソナルコンピュータ等のOA機器類のボディ、医療機器類のボディ等に適用することも可能であり、その用途は問うものではない。また上記のようなレーザーカット加工されたような各種製品にも本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のエラストマー成形品は、自動車のハンドル、その他の自動車用の室内装飾品、ゴルフのグリップ部分、釣り竿のグリップ部分、その他のスポーツ用品、電気・電子機器類、通信機器類、携帯電話・パーソナルコンピューター等のOA機器類、医療機器等、金属光沢を呈する各種の成形品に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】一実施形態のエラストマー成形品の層構造の要部拡大断面図。
【図2】一実施形態のエラストマー成形品の製造方法であって、基材を準備する工程の要部拡大断面図。
【図3】ベースコート層を基材の表面に形成する工程の要部拡大断面図。
【図4】不連続膜層をベースコート層の表面に形成する工程の要部拡大断面図。
【図5】ミッドコート層を不連続膜層の表面に形成する工程の要部拡大断面図。
【図6】他実施形態のエラストマー成形品の層構造の要部拡大断面図。
【符号の説明】
【0056】
1…基材 2…ベースコート層
3…不連続膜層 4…ミッドコート層
5…トップコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー材料からなる基材(1)の表面側に不連続膜からなる不連続膜層(3)が設けられ、さらに該不連続膜層(3)の表面に、トップコート層(5)が設けられてなることを特徴とするエラストマー成形品。
【請求項2】
エラストマー材料からなる基材(1)の表面に、ベースコート層(2)が設けられ、該ベースコート層(2)の表面に不連続膜からなる不連続膜層(3)が設けられ、さらに該不連続膜層(3)の表面に、トップコート層(5)が設けられてなることを特徴とするエラストマー成形品。
【請求項3】
エラストマー材料からなる基材(1)の表面に、ベースコート層(2)が設けられ、該ベースコート層(2)の表面に不連続膜からなる不連続膜層(3)が設けられ、該不連続膜層(3)の表面にミッドコート層(4)が設けられ、さらに該ミッドコート層(4)の表面にトップコート層(5)が設けられてなることを特徴とするエラストマー成形品。
【請求項4】
エラストマー材料からなる基材(1)の表面側に不連続膜からなる不連続膜層(3)を形成し、該不連続膜層(3)の表面に、トップコート層(5)を形成して製造することを特徴とするエラストマー成形品の製造方法。
【請求項5】
エラストマー材料からなる基材(1)の表面に、ベースコート層(2)を形成し、次に該ベースコート層(2)の表面に不連続膜からなる不連続膜層(3)を形成し、その後、該不連続膜層(3)の表面に、トップコート層(5)を形成して製造することを特徴とするエラストマー成形品の製造方法。
【請求項6】
エラストマー材料からなる基材(1)の表面に、ベースコート層(2)を形成し、次に該ベースコート層(2)の表面に不連続膜からなる不連続膜層(3)を形成した後、不連続膜層(3)の表面にミッドコート層(4)を形成し、その後、該不連続膜層(3)の表面に、トップコート層(5)を形成して製造することを特徴とするエラストマー成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−289858(P2006−289858A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115847(P2005−115847)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(597023260)株式会社トーシン (2)
【出願人】(505136387)株式会社タツミ (1)
【Fターム(参考)】