説明

エラストマー熱可塑性ゲルの製造及び取扱い方法

押出機に供給することを意図し、主要エラストマーとしてのスチレン熱可塑性エラストマーと200phrよりも多い増量剤オイルとを少なくとも含むゲルから形成され、粒状物の各要素が所定の表面積を有する粒状物または連続ストリップの製造方法であって、上記粒状物要素を、上記粒状物要素の圧縮度が1500m−1から375m−1に低下する値よりも低いように採寸すること、および上記粒状物の表面上に粘着防止剤を付着させること、該粘着防止剤は、該粘着防止剤の粒子の平均粒度が1μmから100μmに増大するときに、粒状物表面積のm2当り2cm3から8cm3に増大する値を有することを特徴とする上記製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明分野は、熱可塑性エラストマーゲルを使用して製造した形状要素の製造および調製に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーゲルは、極めて低い硬度、弾性挙動(即ち、熱可塑性エラストマーゲルは、変形後に、大振幅の変形後でさえも、その初期形状を取り戻す)、および軟化点(それより上では、これらのゲルが可塑性になり、これらゲルの加工を容易にする)に特徴を有する材料である。
【0003】
そのようなゲルは、特に、マトリックスとして、熱可塑性エラストマー (TPE)を、特に、スチレン熱可塑性エラストマー(TPS類として知られている)、例えば、スチレン/ブタジエン (SB)、スチレン/イソプレン (SI)、スチレン/イソブチレン (SIB)、スチレン/エチレン/プロピレン (SEP)、スチレン/エチレン/ブチレン (SEB)ブロックコポリマー、或いは、スチレン/ブタジエン/スチレン (SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン (SIS)、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン (SBIS)、スチレン/イソブチレン/スチレン (SIBS)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン (SEBS)、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン (SEPS)およびスチレン/エチレン/エチレン/プロピレン/スチレン (SEEPS)の各ブロックコポリマー、並びにこれらのコポリマーのブレンド)を含み得る。
【0004】
極めて低い硬度を得るためには、これらのゲルは、高割合の増量剤オイルも含む。一般的には、増量剤オイルは、これらゲル中に、200phr (エラストマーの100質量部当り)またはそれ以上の割合で導入する。
【0005】
しかしながら、これらゲルの保存、取扱いおよび調製は、これらのゲルを転換する目的においては、特有の困難性を示す。さらに詳細には、問題は、熱可塑性プラスチックに転換するための通常の手段に供給するための小寸法の粒状物またはペレットを形成することを望む場合に生じる。
【0006】
これらの生産物を粘着防止剤でコーティングして、これらの生産物がこれらの工業段階において凝集するのを防止することは、従来技術により知られている。
通常、粘着防止剤は、シリカ、タルク、雲母、酸化亜鉛またはステアリン酸亜鉛のような微分割材料から選ばれる。これらの剤は、純粋状態で或いは80%よりも多い大割合の上記粘着防止剤の1種が存在する混合物の形で使用し得る。
【0007】
粘着防止剤は、熱可塑性ゲルのペレットまたは粒状物の表面に、粉末と接触させることにより、溶液をスプレーすることにより、或いは高濃度の当該粘着防止剤を含む懸濁液から調製した液体中で浸漬コーティングすることによって付着させ得る。
【0008】
如何なる性質を有する粘着防止剤を使用しても直面する問題は、これらの生成物が、粘着防止剤が一定の割合よりも多く存在する場合、例えば、弾性係数または伸び能力のような熱可塑性ゲルの性質を実質的に変化させるという事実にある。従って、粘着防止剤をこれらの材料の表面に付着させることを望む場合、特別の注意が必要である。
【発明の概要】
【0009】
この目的において、粒状物またはペレットの表面上に付着させる粘着防止剤の最大量は、粘着防止剤を形成する所定粒度の粒子の容量において実質的に一定であることを実証した。単位表面積当りのこの容量は、その飽和容量を示す。
また、粒状物またはペレットの表面上に付着させてこれらの粒状物またはこれらのペレットの取扱いにおいて十分な性質を得るのに必要である粘着防止剤の量は、上記飽和容量に実質的に相応することも観察している。
【0010】
単位表面積当りのこの最高容量は、粘着防止剤を形成する粒子の粒度が1μmから100μmに増大するときに、m2当り2cm3と8cm3の間で増分的に上昇する。粉末が微細であるほど、上記粒状物または上記ペレットの表面を飽和させるのに必要な容量は低い。
【0011】
また、上記粒度も上記に示す結果に影響を有し得、従って、粉末形である粘着防止剤を使用し、その粒子は、通常商業的に入手可能である上記タイプの粉末の粒度に相応する1μmと100μmの間、好ましくは1μmと50μmの間の平均粒度を有する。
【0012】
また、粘着防止剤の量が飽和容量よりも低い場合は、上記粒状物またはペレットは、互いに一緒にケーキ化して、分離するのが難しい凝集体を形成する傾向を有することも観察している。
従って、上記粒状物またはペレットの表面上に付着させて上記粒状物またはペレットが互いに対して粘着するのを排除する粘着防止剤の最小量は、この表面上に適合するのが可能である最大量に実質的に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】球形を有するペレットまたは粒状物を示す。
【図2】実質的に円筒状のコードを切断することによって製造した実質的に円筒形を有するペレットまたは粒状物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の主題は、これらの現象の利点を取り入れて、製造中のゲルの成形用手段に供給すること意図する粒状物またはペレットの最小寸法および形状を採寸することからなる。
【0015】
事実、粘着防止剤の容量による量は、ゲル、従って、粒状物またはペレット中に含ませたゲルの密集体の容量の0.3%に設定した閾値を越えるべきでないとみなしている。上記ペレットまたは粒状物要素の形状および粒度の正確な最小採寸は、当該閾値を順守するためのこの状況に由来している。
【0016】
粒状物またはペレットの圧縮度(compactness)、即ち、m-1で表し且つ上記表面積と上記ペレットまたは粒状物の容量との比として定義される圧縮度をCで示すことによって、所定容量の熱可塑性ゲル中に存在する粘着防止剤の0.3容量%の閾値を超えないように観察すべき圧縮度Cの最高値が得られる。
【0017】
圧縮度の最高値は、粘着防止剤を形成する粒子の粒度が最小で且つ約1μmであるときの1500m-1から、上記粒度が100μmのその上限値にあるときの375m-1の値に低下し、メートルでのペレットまたは粒状要素の幾何学的特性を示す。
【0018】
従って、図1に示すような、半径Rを有する球形のペレットまたは粒状物においては、その圧縮度は3/Rに等しく、上記ペレットまたは粒状物の半径の最小値は、1μmの平均粒度を有する粒子を含む粘着防止剤においては2mm、100μmの平均粒度を有する粒子を含む粘着防止剤においては8mmであろう。
さらに実際的には、ペレットまたは粒状物を、所定直径を有する連続の実質的に円筒状のコードを切断することによって製造して、図2に示すような長さlと半径rを有し、圧縮度C = 2 (r+l)/r*lである実質的に円筒形のペレットまたは粒状物要素を得るようにすることが求められるであろう。
【0019】
従って、2cmの直径を有する円筒状コードにおいては、ペレットまたは粒状物の最小長さは、1μmの平均粒度を有する粒子を含む粘着防止剤においては0.15cm、100μmの平均粒度を有する粒子を含む粘着防止剤を使用するときは1.15cmであろう。
【0020】
1cmの直径を有する円筒状コードにおいては、ペレットまたは粒状物の最小長さは、1μmの平均粒度を有する粒子を含む粘着防止剤においては0.18cmであることを観察するであろう。しかしながら、この特定の場合においては、大きい粒度を有する粘着防止剤を使用する場合、ペレットまたは粒状物の長さを増大させて0.3%の最高閾値を順守することは、もはや可能ではない。特定の例の1cmの直径を有するコードにおいては、その場合、100μmよりも小さい粒度を有する粘着防止剤を選択して圧縮度Cの最高値を高めて、高過ぎる値よりも低い長さlの最小長さ値を得ることが望ましい。従って、粘着防止剤の粒度を70μmに減じることによって、500m-1程度の圧縮度の最高値が得られ、この値は、2cmのペレットまたは粒状物の長さlの最小値を得ることを可能にする。
【0021】
粒状物またはペレットの粒度をできる限り減じることを望む場合、粒度ができる限り低い粘着防止剤を使用することが望ましい。例えば、1μm程度の粒度においては、この粒子における最高圧縮度は1500m-1であり、4mmの直径と4mmの長さlを有する円筒状粒状物またはペレットを製造し得る。
【0022】
また、上記の法則の1つの応用も、押出手段に連続する実質的に円筒状のコードを使用して供給するときに有利であることが判明し得ている。この場合、上記コードの長さは、無限であるとみなされ得、その場合、圧縮度Cは2/rに等しい。粘着防止剤の粒度が平均で1μmであるときの1.3mm、粘着防止剤の粒度が平均で100μmであるときの5.3mmの半径rの最低値が、上記から生じている。
【0023】
上記方法に従って製造した粒状物要素は、凝集体を形成することなく容易に取扱いすることができる。上記粒状物要素は、特に、その粒度の最適化故に、粒状物形の形状要素を製造するための装置に、これら装置への装入要素を導入するためのこれら装置の供給の大きな改造を導入することなく、供給することを可能にする。
【0024】
同一の法則は、これらの装置から得られる形状要素製品にも当てはまることが観察されるであろう。上記形状要素を、その最終操作前に、取扱う必要がある場合、本説明の教示は、最終製品が、その質量百分率として、その性質を損ない得る過剰の粘着防止剤を含まないように応用するであろう。
【符号の説明】
【0025】
R、r 半径
l 長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機に供給することを意図し、主要エラストマーとしてのスチレン熱可塑性エラストマーと200phrよりも多い増量剤オイルとを少なくとも含むゲルから形成され、粒状物の各要素が所定の表面積を有する粒状物または連続ストリップの製造方法であって、前記粒状物要素を、前記粒状物要素の圧縮度が1500m-1から375m-1に低下する値よりも低いように採寸すること、および前記粒状物の表面上に粘着防止剤を付着させること、該粘着防止剤は、該粘着防止剤の粒子の平均粒度が1μmから100μmに増大するときに、粒状物表面積のm2当り2cm3から8cm3に増大する値を有することを特徴とする前記製造方法。
【請求項2】
前記粘着防止剤の粒子の平均粒度が、1μmと50μmの間である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記スチレンエラストマーが、下記のようなエラストマーから選ばれる、請求項1記載の製造方法:
スチレン/ブタジエン (SB);
スチレン/イソプレン (SI);
スチレン/イソブチレン (SIB);
スチレン/エチレン/プロピレン (SEP);
スチレン/エチレン/ブチレン (SEB);
スチレン/ブタジエン/スチレン (SBS);
スチレン/イソプレン/スチレン (SIS);
スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン (SBIS)、
スチレン/イソブチレン/スチレン (SIBS);
スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン (SEBS);
スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン (SEPS);
スチレン/エチレン/エチレン/プロピレン/スチレン (SEEPS);および、
これらのコポリマーのブレンド。
【請求項4】
前記粘着防止剤が、80%よりも多い割合のシリカ、雲母、タルクまたはステアリン酸亜鉛を含有する、請求項1および2のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
前記粒状物要素が、実質的に円筒状形状を有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
前記粒状物要素が、概して円筒状形状を有する連続ストリップの断面を切断することによって得られる、請求項5記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−520361(P2012−520361A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553411(P2011−553411)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052896
【国際公開番号】WO2010/102973
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(599093568)ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン (552)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】