説明

エラストマー製造に用いた重合装置からゲル化不飽和エラストマーの除去

【課題】重合装置内の残留重合体を除去するための方法を提供する。
【解決手段】重合装置内の残留重合体の処理方法において、残留重合体と、溶剤と、遷移金属が周期表の8A族の元素である五配位又は六配位の遷移金属カルベン錯体を含む脱ゲル化剤とを化合させるにより、重合装置内の残留重合体の処理が可能になり、脱ゲル化剤の中でもルテニウム系又はオスミウム系脱ゲル化剤が優れた効果を
示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年7月28日に出願した米国仮特許出願第60/490,642号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、重合体を製造するのに用いた装置から残留重合体を除去するための脱ゲル化剤の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
多様な重合体、例えば共役ジエンの重合体又は共役ジエンとビニル芳香族炭化水素の共重合体の製造中に、残留重合体が重合反応器の内壁や関連する管に溜まる傾向がある。その後の能率的な装置の使用のために、残留重合体を除去することが望ましい。しかし、残留重合体の除去は、かかる重合体がしばしばゲル化、即ち高密度に架橋され、極めて高分子量を有することがあるので、困難となり得る。
【0004】
従来、反応器を蒸熱して炭化水素を除去し、増圧下で水を用いて装置内の重合体を物理的に破砕して破壊し、水を排出してゲル化重合体を物理的に除去し、反応器を再状態調整することを含む方法によって、ゲル化重合体を除去していた。この方法は、完了するのに日数がかかることがあり、反応器は該方法を行う二週間までの間使用停止となり得る。
【0005】
モリブデンやタングステンのメタセシス触媒を用いてゲル化重合体を解重合又は破砕して重合反応器からの除去を容易にする。かかる触媒をオレフィン処理剤と適当な溶剤の存在下で用いる。また、該触媒は高価で、空気及び湿気に敏感である。代表的な添加量には、除去すべき重合体100部に対し5〜約100部の触媒が含まれるという事実とあいまって、かかる触媒は技術的に有用ではなかった。
【0006】
従って、当分野においては、重合反応装置からゲル化重合体を除去する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
重合装置内の残留重合体の処理方法であって、該方法は残留重合体と、溶剤と、遷移金属が周期表の8A族の元素である五配位又は六配位の遷移金属カルベン錯体を含む脱ゲル化剤とを化合させることを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明に用いる脱ゲル化剤が本発明の目的を達成するに際して進行すると考えられる機構を説明するのに提案された反応の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、一般に、重合装置内の残留重合体を処理する方法を提供するもので、該方法は残留重合体と、必要な場合の溶剤と、遷移金属が周期表の8A族の元素である五配位又は六配位の遷移金属カルベン錯体を含む脱ゲル化剤とを化合させることを備える。
【0010】
また、本発明は、重合反応器から残留重合体を除去する方法を含むもので、該方法は残留重合体と、溶剤と、遷移金属が周期表の8A族の元素である五配位又は六配位の遷移金属カルベン錯体を含む脱ゲル化剤とを重合反応器中で前記残留重合体の少なくとも一部を脱ゲル化するのに十分な時間化合させる工程と、該反応器からゲル化重合体の少なくとも一部と、溶剤と、脱ゲル化剤とを除去する工程とを備える。
【0011】
更に、本発明は、遷移金属が周期表の8A族の元素である五配位又は六配位の遷移金属カルベン錯体を含む脱ゲル化剤を残留重合体と化合させる工程を備える重合装置からの残留重合体の除去方法を提供する。
【0012】
脱ゲル化剤と溶剤を用いることにより、残留重合体を重合装置から除去することができる。一の好適な実施態様において、脱ゲル化剤はメタセシス触媒を含む。好適な実施態様においては、あらゆる種類のメタセシス触媒を用いることができるが、脱ゲル化剤が遷移金属カルベン錯体を含むとき優れた結果が得られる。一般に、適切な遷移金属カルベン錯体は、五配位又は六配位で正電荷の金属中心(例えば+2又は+4の酸化状態)を含む。
【0013】
上記触媒は、IUPAC慣習法に従う周期表の8A族の遷移金属を含むことが好ましい。該触媒は、ルテニウム系又はオスミウム系メタセシス触媒を含むことがより好ましい。ルテニウム系又はオスミウム系カルベン錯体のメタセシス触媒を、時々グラブス触媒と称する。グラブスメタセシス触媒は、米国特許第5,312,940号、第5,342,909号、第5,831,108号、第5,969,170号、第6,111,121号、第6,211,391号、第6,624,265号、第6,696,597号、及び米国公開特許出願2003/0181609A1、2003/0236427A1、2004/0097745A9に記載されており、これら全てを本願に引用して援用する。
【0014】
適切なRu又はOs系メタセシス触媒は、下記の式:
【化1】

(式中、Mはルテニウム又はオスミウムであり、L及びL’はそれぞれ独立して任意の中性電子供与体配位子を含み、A及びA’はそれぞれ独立して陰イオン置換基を含み、R3及びR4は独立して水素又は有機基を含み、cは0〜約5の整数であるか、或いはR3,R4,L,L’,A及びA’の二種以上が化合して二座の置換基を形成する)で表すことができる化合物を含む。
【0015】
L及びL’は独立してホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスファイト、ホスフィナイト、ホスホナイト、アルシン、スチビン、エーテル、アミン、アミド、イミン、スルホキシド、カルボキシル、ニトロシル、ピリジン、チオエーテル、トリゾリデン又はイミダゾリデン基を含むのが好ましく、或いはL及びL’が一体となって二座配位子を構成してもよい。一の実施態様において、L及び/又はL’は下記の式:
【化2】

で表すことができるイミジゾリデン基を含む。
【0016】
ここで、R5及びR6は独立してアルキル、アリール又は置換アリールを含む。R5及びR6が独立して置換フェニルを含むのが好ましく、R5及びR6が独立してメシチルを含むのがより好ましい。R7及びR8はアルキル又はアリールを含むか、或いはシクロアルキルを形成するのが好ましい。そして、R7及びR8の両方が水素、t-ブチル又はフェニル基であるのが最も好ましい。R5,R6,R7及びR8の二種以上が化合して環状部分を形成することができる。イミダゾリジン配位子の例としては、4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン配位子が挙げられる。A及びA’は独立してハロゲン、水素、C1〜C20アルキル、アリール、C1〜C20アルコキシド、アリールオキシド、C2〜C20アルコキシカルボニル、アリールカルボキシレート、C1〜C20カルボキシレート、アリールスルホニル、C1〜C20アルキルスルホニル、C1〜C20アルキルスルフィニルを含むのが好ましく、それぞれの配位子はC1〜C5アルキル、ハロゲン、C1〜C5アルコキシで、或いはハロゲン、C1〜C5アルキル又はC1〜C5アルコキシで任意に置換したフェニル基で任意に置換される。また、A及びA’が一体となって任意に二座配位子を構成してもよい。
【0017】
3及びR4はそれぞれ独立して水素、C1〜C20アルキル、アリール、C1〜C20カルボキシレート、C1〜C20アルコキシ、アリールオキシ、C1〜C20アルコキシカルボニル、C1〜C20アルキルチオ、C1〜C20アルキルスルホニル及びC1〜C20アルキルスルフィニルから選択されるのが好ましく、R3及びR4はそれぞれC1〜C5アルキル、ハロゲン、C1〜C5アルコキシで、或いはハロゲン、C1〜C5アルキル又はC1〜C5アルコキシで任意に置換したフェニル基で任意に置換される。
【0018】
一の実施態様においては、L又はL’とA又はA’とが化合して一つ以上の二座配位子を形成し得る。この種の錯体の例は、米国特許第6,696,597号でII類触媒と記載されている。他の実施態様においては、R3又はR4とL又はL’或いはA又はA’とが化合して一つ以上の二座配位子を形成し得る。この種の錯体を時々ホヴェイダ(Hoveyda)又はホヴェイダ−グラブス触媒と称する。R3又はR4とL又はL’とで形成し得る二座配位子の例としては、オルトアルコキシフェニルメチレン配位子が挙げられる。
【0019】
他の有用な触媒は、下記の式:
【化3】

(式中、Mはルテニウム又はオスミウムであり、L,L’及びL”はそれぞれ独立して任意の中性電子供与体配位子を含み、A及びA”はそれぞれ独立して前記の陰イオン置換基を含み、R3及びR4は独立して水素又は有機基を含む)で表されるものを含む六価のカルベン化合物である。上述した五価の触媒と同様の方法で、六価の錯体の二種以上の置換基が化合して二座の置換基を形成し得る。
【0020】
ルテニウム系カルベン錯体の例としては、ジクロロ(フェニルメチレン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(フェニルメチレン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(3-メチル-2-ブテニリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(3-メチル-2-ブテニリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(3-フェニル-2-プロペニリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(3-フェニル-2-プロペニリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(エトキシメチレン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(エトキシメチレン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(t-ブチルビニリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(t-ブチルビニリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(フェニルビニリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(フェニルビニリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、[2-(((2,6-ビスメチルエチル)-4-ニトロフェニル)イミノ-kN)メチル-4-ニトロフェノレート-kO]クロロ(フェニルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、[2-(((2,6-ビスメチルエチル)-4-ニトロフェニル)イミノ-kN)メチル-4-ニトロフェノレート-kO]クロロ(フェニルメチレン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、[2-(((2,6-ビスメチルエチル)-4-ニトロフェニル)イミノ-kN)メチル-4-ニトロフェノレート-kO]クロロ(3-メチル-2-ブテニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、[2-(((2,6-ビスメチルエチル)-4-ニトロフェニル)イミノ-kN)メチル-4-ニトロフェノレート-kO]クロロ(3-メチル-2-ブテニリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン][2-(((2,6-ビスメチルエチル)-4-ニトロフェニル)イミノ-kN)メチル-4-ニトロフェノレート-kO]クロロ(フェニルメチレン)ルテニウム、[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン][2-(((2,6-ビスメチルエチル)-4-ニトロフェニル)イミノ-kN)メチル-4-ニトロフェノレート-kO]クロロ(3-メチル-2-ブテニリデン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ジヒドロ-1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2H-イミダゾール-2-イリデン](フェニルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ジヒドロ-1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2H-イミダゾール-2-イリデン](フェニルメチレン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ジヒドロ-1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2H-イミダゾール-2-イリデン](3-メチル-2-ブテニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ジヒドロ-1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2H-イミダゾール-2-イリデン](3-メチル-2-ブテニリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ジヒドロ-1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2H-イミダゾール-2-イリデン](3-フェニル-2-プロペニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ジヒドロ-1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2H-イミダゾール-2-イリデン](3-フェニル-2-プロペニリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ジヒドロ-1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2H-イミダゾール-2-イリデン](エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ジヒドロ-1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2H-イミダゾール-2-イリデン](エトキシメチレン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ジヒドロ-1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2H-イミダゾール-2-イリデン](t-ブチルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ジヒドロ-1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2H-イミダゾール-2-イリデン](t-ブチルビニリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ジヒドロ-1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2H-イミダゾール-2-イリデン](フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ジヒドロ-1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2H-イミダゾール-2-イリデン](フェニルビニリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルメチレン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン](3-メチル-2-ブテニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン](3-メチル-2-ブテニリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン](3-フェニル-2-プロピリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン](3-フェニル-2-プロピリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(エトキシメチレン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(t-ブチルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(t-ブチルビニリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウム、[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルビニリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムが挙げられる。
【0021】
市販のRu系メタセシス触媒としては、ジクロロ(フェニルメチレン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(時々グラブス第一世代触媒と称す)、[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ(フェニルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(時々グラブス第二世代触媒と称す)、ジクロロ[[2-(1-メチルエトキシ)フェニル]メチレン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(時々ホヴェイダ−グラブス第一世代触媒と称す)、[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]ジクロロ[[2-(1-メチルエトキシ)フェニル]メチレン]ルテニウム(時々ホヴェイダ−グラブス第二世代触媒と称す)が挙げられる。これらRu系メタセシス触媒は、マテリア社(カリフォルニア州パサデナ)から入手可能である。
【0022】
処理される残留重合体には、重合後に重合装置内に残存する重合体が含まれる。一の実施態様においては、合成重合体を装置から取り出すのに用いる溶剤洗浄のような従来の処理後に残留重合体が残存する。残留重合体にはゲル化重合体又は通常の溶剤には溶解しない極めて高分子量の重合体が含まれる。一般に、残留重合体は溶剤により膨潤し、強固で非流動性である。
【0023】
架橋及びゲル化前の数平均分子量(M)を指す残留重合体の一次分子量は、非常に広くなることがある。一の実施態様においては、残留重合体の一次分子量が約1kg/モル〜約10Mg/モルであり、約10〜約500,000kg/モルであるのが好ましい。
【0024】
残留重合体は、メタセシス反応性の二重結合を一つ以上含むことが好ましい。該二重結合は内部(即ち重合体主鎖の内部)にあっても外部にあってもよい。好適な実施態様においては、残留重合体がメタセシス反応性の内部二重結合を少なくとも一つ含み、約1,000の単量体単位ごとにメタセシス反応性の内部二重結合を少なくとも一つ含むことがより好ましく、約100の単量体単位ごとにメタセシス反応性の内部二重結合を少なくとも一つ含むことが更に好ましい。
【0025】
好適な実施態様においては、残留重合体が内部と外部の不飽和の両方を含む。残留重合体はメタセシス反応性の外部二重結合を少なくとも一つ含むことが好ましく、約1,000の単量体単位ごとにメタセシス反応性の外部二重結合を少なくとも一つ含むことがより好ましく、約200の単量体単位ごとにメタセシス反応性の外部二重結合を少なくとも一つ含むことが更に好ましく、約100の単量体単位ごとにメタセシス反応性の外部二重結合を少なくとも一つ含むことが一層好ましい。或いは、外部不飽和の好ましい量を少なくとも約0.1モル%として表すことができ、少なくとも約0.5モル%の外部不飽和であることがより好ましく、少なくとも約1モル%の外部不飽和であることが更に好ましい。
【0026】
本発明の方法に従い処理され得る残留重合体には、シクロペンテンのような環状モノオレフィンの不飽和重合体、一分子当り4〜12個の炭素原子を有する共役ジエン単量体の単独重合体、一分子当り4〜12個の炭素原子を有する二種以上のジエン単量体の共重合体、ビニル、α-オレフィン又はエチレン単量体と一分子当り4〜12個の炭素原子を有するジエン単量体との共重合体、一分子当り4〜12個の炭素原子を有するジエン単量体と一分子当り8〜26個の炭素原子を有するビニル芳香族単量体との共重合体、及びこれらの混合物が含まれる。残留重合体が共重合体100重量部当り共役ジエンを少なくとも5重量部含むのが好ましい。
【0027】
残留重合体の例としては、ブタジエンやイソプレンの単独重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、イソプレン−スチレン共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレン共重合体、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合体)、ブタジエン−アクリロニトリル、ブチルゴムが挙げられる。
【0028】
また、残留重合体には、反応体中に存在する不純物、溶剤もしくは重合反応の他の成分のような他の物質、反応器もしくは他の装置からの汚染物又は重合混合物に添加した添加剤が含まれ得ると理解される。例えば、重合反応に用いる代表的な添加剤としては、重合開始剤、触媒、酸化防止剤、アルキルアルミニウム残渣、アルコール停止剤が挙げられる。いくつかの実施態様においては、残留重合体中のこれら他の物質が、残留重合体の全重量に対し約5重量%まで、できる限り約2重量%まで、可能であるなら約1重量%までの分量で存在する場合がある。
【0029】
一の実施態様においては、残留重合体を除去するために残留重合体を有する重合装置に脱ゲル化剤及び溶剤を加える。
【0030】
上記溶剤は有機化合物であるのが好ましく、極性でも無極性でもよい。好適な実施態様においては、溶剤が処理又は脱ゲル化した重合体を溶解するものである。適当な溶剤としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素が挙げられる。適切な溶剤の例としては、テトラヒドロフラン、種々の環式又は非環式のヘキサン、ヘプタン、オクタン、ペンタン、トルエン、キシレン及びこれらのアルキル化誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。一の実施態様において、残留重合体が相当な量の飽和ブロック重合体を含む場合には、該飽和ブロック重合体が可溶である溶剤を加えるのが好ましい。ある意味では、本発明の方法が、溶剤を高純度に精製する必要がない点で従来技術の方法と異なる。一の実施態様においては、本方法が少なくとも1%の不純物を有する溶剤と適合する。他の実施態様においては、本方法が少なくとも2%の不純物を有する溶剤と適合する。更に他の実施態様においては、本方法が少なくとも3%の不純物を有する溶剤と適合する。一の実施態様においては、溶剤中に存在する不純物の一種が水である。他の実施態様においては、溶剤中に存在する不純物の一種がアルコールである。他の実施態様においては、本方法が約10%未満のアミンの不純物と適合する。しかし、必要に応じて溶剤を窒素などの不活性ガスを用いて脱ガス化することができる。
【0031】
残留重合体を除去するのに用いる成分の添加順序は重要でない。一の実施態様においては、脱ゲル化剤と溶剤を予備混合して、溶剤中に脱ゲル化剤を溶解又は懸濁させる。他の実施態様においては、脱ゲル化剤を少量の溶剤と予備混合して高濃度の混合物を形成し、該混合物を溶剤の添加の前後又は一緒に反応器に添加する。更に他の実施態様においては、脱ゲル化剤を粉末固体として反応器又は重合装置に添加する。脱ゲル化剤を粉末固体として添加する場合には、溶剤の前後又は同時に添加することができる。一の実施態様においては、脱ゲル化剤及び/又は脱ゲル化剤/溶剤混合物を連続供給物として重合装置に添加する。必要に応じて脱ゲル化剤を現場で調製してもよい。例えば、Ru又はOs化合物を反応条件の下でアルキン及び適切な配位子と化合して上述したような金属カルベン錯体を形成することができる。
【0032】
残留重合体を処理するのに必要な脱ゲル化剤の量は、特に制限されず、残留重合体の量に基づいて変えることができる。一の実施態様においては、脱ゲル化剤の量を残留重合体の関数として遷移金属のミリモルの形で表す。脱ゲル化剤は残留重合体100g当り金属約0.001〜約20ミリモルの量で存在するのが好ましく、残留重合体100g当り金属約0.005〜約15ミリモルがより好ましく、約0.01〜約10ミリモルが更に好ましく、約0.1〜約5ミリモルが一層好ましい。
【0033】
残留重合体を処理するのに用いる溶剤の量は、特に制限されず、反応器又は重合装置の利用可能な容量に基づいて変えることができる。利用可能な容量とは、残留重合体が占める容量を差し引いた反応器の容積を指す。溶剤又は溶剤/脱ゲル化剤混合物は反応器の利用可能な容量の少なくとも80%まで反応器を満たすことが好ましく、この利用可能な容量の少なくとも約90%までがより好ましく、少なくとも約95%までが更に好ましい。一の実施態様において、重合装置が脱ゲル化処理の間加圧下で作動する反応器である場合には、溶剤又は溶剤/脱ゲル化剤混合物は反応器を完全には満たさない。
【0034】
一の実施態様においては、脱ゲル化剤を少量の溶剤と予備混合して溶液でもスラリーでもよい高濃度の混合物を形成する。該高濃度混合物は、脱ゲル化剤を溶剤と単に混合することにより調製し得る。好適な実施態様においては、高濃度混合物が、高濃度混合物の全重量に対し約0.001〜約75重量%の脱ゲル化剤を含み、約0.05〜約50重量%の脱ゲル化剤を含むのが好ましく、約0.1〜約25重量%の脱ゲル化剤を含むのがより好ましい。
【0035】
脱ゲル化剤と溶剤の両方を重合装置に加えて混合すると、反応器内の溶剤/脱ゲル化剤混合物中の脱ゲル化剤の量が、溶剤1立方メートル当り金属約0.1〜約300ミリモル(ミリモル/m3)であるのが好ましく、約1ミリモル/m3〜約100ミリモル/m3がより好ましく、約10ミリモル/m3〜約50ミリモル/m3が更に好ましい。
【0036】
反応器の充填空積とは、残留重合体、脱ゲル化剤又は溶剤で満たされていない反応器の部分を指す。かかる充填空積には酸素が含まれないことが好ましい。好適な実施態様においては、脱ゲル化剤又は溶剤/脱ゲル化剤混合物の添加の前に窒素等の不活性ガスで反応器をパージする。
【0037】
脱ゲル化剤及び溶剤を周囲条件下で反応器に添加するのが好ましい。好適な実施態様においては、その後窒素等の不活性ガスで反応器を加圧する。反応器を約0.1〜約1.2mPaに加圧するのが好ましく、約0.2〜約1.0mPaに加圧するのがより好ましい。
【0038】
脱ゲル化処理の間に測定した反応器内部の温度は約−20℃〜約120℃であることが好ましく、約0℃〜約100℃であることがより好ましく、約20℃〜約70℃であることが更に好ましい。
【0039】
溶剤/脱ゲル化剤混合物を、反応器を通して、また状況に応じて関連する管を通して循環させ、該混合物と残留重合体との接触を向上させることが好ましい。これを閉ループ系内で達成することが好ましい。好適な実施態様においては、混合物を攪拌する。
【0040】
溶剤/脱ゲル化剤を反応器中に保持する時間(接触時間と称することができる)は、特に制限されない。一般に、接触時間は、残留重合体が溶剤に可溶又は混和し得るように破砕又は解重合(即ち脱ゲル化)させるに十分な時間とすべきであり、この時間は残留重合体の厚みや化学的性質によって変えることができる。接触時間は約10分〜約48時間であるのが好ましく、約1時間〜約24時間であるのがより好ましく、約2時間〜約12時間であるのが更に好ましい。
【0041】
脱ゲル化処理の進行を多数の方法で監視することができる。例えば、反応器中を循環する成分の流速を監視することができる。相当量のゲル化重合体が反応器や管の内部に存在する場合には、流速に負の影響を与える。従って、流速は装置内のゲル化重合体の量に反比例し、残留重合体の存在による閉塞を示すのに用いることができる。
【0042】
他の実施態様においては、混合物を反応器に圧送するのに必要な圧力を監視する。一般に、ゲル化重合体が流動性及び可溶性の成分に分解すると、反応器や関連する管にこれら成分を圧送するのに必要な圧力が低下し、最終的に残留重合体の少なくとも一部の除去を示す平坦域に達することになる。
【0043】
更に他の実施態様においては、反応器内で成分を攪拌するのに必要な力を監視する。代表的には、攪拌機を回転させるのに必要な力は、残留重合体が溶剤中で脱ゲル化して溶解するにつれて強まり、ゲル化重合体の少なくとも一部の除去を示す平坦域に達することになる。
【0044】
脱ゲル化処理の進行を監視する更なる方法は、反応器から採取される溶剤/脱ゲル化剤混合物の試料の固体百分率を定期的に測定することである。溶剤中の固体の量は、重合体が脱ゲル化するにつれて増加し、残留重合体が除去されるにつれて平坦域に達するようになる。
【0045】
好適な実施態様においては、メタセシス反応を経由して残留重合体の重合体鎖を分解し、残留重合体の分子量を低下させる。脱ゲル化した重合体は約300kg/モル未満の数平均分子量を有するのが好ましく、約200kg/モル未満の数平均分子量を有するのがより好ましく、約100kg/モル未満の数平均分子量を有するのが更に好ましい。
【0046】
残留重合体を溶剤/脱ゲル化剤混合物に溶解すると、常法で反応器から除去し得る。好適な実施態様においては、脱ゲル化重合体を含む溶剤混合物を反応器から圧送排出する。重合体から脱ゲル化剤の分離を望む場合には、当技術分野で既知の方法を用いて行うことができる。
【0047】
本発明の洗浄方法の後で反応器を処理する必要がない。このことは、後に反応器を陰イオン又は配位触媒系のような高感度触媒と併せて用い得る事実にもかかわらず、当てはまる。それでもなお、残りの脱ゲル化剤を反応器から除去するか、又は脱ゲル化剤を失活させる工程を採る場合がある。例えば、反応器と供給ラインを一以上の溶剤洗浄で一掃することができる。或いは、アルキルアルミニウム(例えばトリイソブチルアルミニウム)のような薬剤を反応器に添加することができる。一の実施形態においては、中和剤(即ちトリアルキルアルミニウム)を溶剤に溶解し、反応器や供給ラインに通す。
【0048】
従来技術の脱ゲル化処理は、時折オレフィン処理剤と称するオレフィン添加剤の使用をしばしば必要とした。本方法には必要とされていないが、必要に応じてかかる添加剤を用いてもよい。オレフィン添加剤としては、代表的には一分子当り少なくとも2個の炭素原子を有する非三級で非共役の非環式モノエン及びポリエン並びにこれらのシクロアルキル、シクロアルケニル、アリール誘導体;一分子当り少なくとも4個の炭素原子を有する環状モノエン及びポリエン並びにこれらのアルキル、アリール誘導体および上記オレフィンの混合物;そしてエチレンと上記オレフィンの混合物が挙げられる。有用なオレフィン処理剤としては、一分子当り2〜約30個の炭素原子を有する非環式オレフィン及び一分子当り4〜約30個の炭素原子を有する環状オレフィンが挙げられる。非三級オレフィンは、少なくとも一つの二重結合を有するオレフィンで、ここで二重結合によって互いに結合する炭素原子はまた、少なくとも一つの水素原子に結合する。
【0049】
本発明の反応に適した非環式オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、1,4-ヘキサジエン、2-ヘプテン、1-オクテン、2,5-オクタジエン、2-ノネン、1-ドデセン、2-テトラデセン、1-ヘキサデセン、3-メチル-1-ブテン、1-フェニル-2-ブテン、4-オクテン、3-エイコセン、3-ヘプテン、3-ヘキセン、1,4-ペンタジエン、1,4,7-ドデカトリエン、2-メチル-4-オクテン、4-ビニルシクロヘキセン、1,7-オクタジエン、1,5-エイコサジエン、2-トリアコンテン、2,6-ドデカジエン、1,4,7,10,13-オクタデカペンタエン、8-シクロペンチル-4,5-ジメチル-1-デセン、6,6-ジメチル-1,4-オクタジエン、スチレン、置換スチレン及びこれらの混合物が挙げられる。
【0050】
本発明の反応に適した環状オレフィンの具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、5-n-プロピルシクロオクテン、シクロデセン、シクロドデセン、3,3,5,5-テトラメチルシクロノネン、3,4,5,6,7-ペンタエチルシクロデセン、1,5-シクロオクタジエン、1,5,9-シクロドデカトリエン、1,4,7,10-シクロドデカテトラエン、6-メチル-6-エチルシクロオクタジエン-1,4及びこれらの混合物が挙げられる。
【0051】
エチレン、プロピレン、ブテン類、ペンテン類及びヘキセン類等の低分子量オレフィンを最も頻繁に用いるが、オレフィンの選択は処理されるジエン重合体の種類や所期の結果によって支配される。好ましいオレフィン処理剤は2-ブテンである。
【0052】
有益なことに、残留重合体が外部不飽和を含む場合には、本発明の脱ゲル化処理をオレフィン添加剤の不存において行うことができる。従って、オレフィン添加剤を状況に応じて反応器に添加してもよいが、好適な実施態様においては、オレフィン添加剤の量が制限されている。反応器に添加するオレフィンの量は残留重合体の全重量に対し10重量%未満であることが好ましく、約5重量%未満であることがより好ましく、約2重量%未満であることが更に好ましく、約1重量%未満であることが一層好ましい。一の実施態様においては、反応器にオレフィン添加剤が全くない。
【0053】
特定の理論に縛られたくないが、本発明に用いる脱ゲル化剤がオレフィンメタセシスにより残留重合体と反応すると考えられる。これにより、重合装置からの除去を容易にする方法に残留重合体を変える。この変化を脱ゲル化と称する。この変化について一の提案した機構を図1に示す。即ち、脱ゲル化剤が作用する一の方法として、遷移金属カルベン錯体が残留重合体中の重合体不飽和と相互作用し、重合体鎖をより短いつまりより可溶性のセグメントに分解(即ち解重合又は破砕)する結合交換をもたらすと考えられる。
【0054】
具体的には、金属カルベン錯体が残留重合体中のビニル不飽和又は主鎖不飽和と相互作用し、メタラシクロブタン錯体の反応中間体を形成すると考えられる。更なる反応により重合体鎖の破砕をもたらす。例えば、図1に示す模式図において、カルベンと重合体が(Aで)会合してメタロシクロブタンを形成し、メタセシス交換反応が(Bで)起こり原重合体を分解する。特に、新しい金属カルベン単位([M]=C)が重合体断片の一つに形成される(図1において該重合体断片を円枠で囲む)。その後、この新しい金属カルベン単位と重合体中の近傍外部不飽和との間でメタセシス交換反応が起こり、重合体断片の末端で環員を形成させ、更なる反応のために金属カルベン単位を解放する。いくつかの実施態様においては、高分子量の重合体及びゲル化した重合体網状構造をより低分子量の重合体断片にする、つまりより可溶性の物質に変換すると考えられる。
【0055】
別の言い方をすれば、ここで用いる脱ゲル化剤が、外部不飽和の二重結合との相互作用によって不飽和重合体中の二重結合を環化させる。このことは、長鎖で実質的に固体である非流動性のジエン重合体網状構造を分解し、重力の影響又は少なくとも労働力の少ない強力フラッシング技術の下で反応器から排出できる、より短く流動性の高い重合体を製造する。
【0056】
当業者が容易に認識するように、オレフィンを添加して反応器の洗浄を補助する場合、残留重合体の分子量を変化させる機構は、古典的交差メタセシス反応により進行すると考えられる。
【0057】
本発明の方法によって、後の重合反応のために反応器を使用する前に行う通常の重合反応器の蒸気処理、高圧水洗浄及び再状態調整の必要性を減少できる。重合反応が陰イオンで開始した重合からチーグラー触媒の開始への変更又はその逆な場合に、本発明に従い解重合を行った後の再状態調整は一般に必要とされない。有益なことに、適切な溶剤を用いて反応器を洗浄する必要なく、更なる重合反応を任意に行うことができる。また、本発明に用いる脱ゲル化剤を重合の直後に重合触媒の不活化の必要なく使用することができる。
【0058】
本発明の方法を用いて、バッチ重合、半バッチ重合、連続重合及び半連続重合に用いるものを含む重合反応器を洗浄することができる。また、重合反応器と結合する管を洗浄することもできる。更に、本発明の方法を用いて、残留重合体を押出機やミキサー等の重合体処理装置から除去することができる。
【0059】
幾つかの実施態様においては、反応器を洗浄するのに掛かる時間を24時間未満に短縮することができる。脱ゲル化処理は反応器を汚さないので、従来技術で用いられる厄介な再状態調整段階を一般に避けることができる。また、残留重合体を重合反応器から除去するために本発明で用いる脱ゲル化剤の予期しない効率により、少量の脱ゲル化剤で効果的な洗浄を可能にする。このことは、汚染を少なくし、経済効率を改善することを含む多数の利益を生み出す。更に、オレフィンの添加を必要としない。その上、脱ゲル化剤は多数の添加剤、不純物及び汚染物の存在において有効である。
【0060】
本発明の実施を立証するために、下記の実施例を調製し、試験した。しかしながら、これらの実施例は本発明の範囲を制限するものとみなすべきでない。特許請求の範囲が本発明を定義する役目を果たす。
【実施例】
【0061】
(実施例1)
ヘキサン50.0kgに相当する容積容量を有する反応器において、常温で脱ゲル化を行った。反応器内でニッケル触媒を用いてポリブタジエンを合成した後に容積の確認を行うと、ヘキサン48.2kgの自由容積及びヘキサン約1.8kgの溶剤膨潤したゲル体積を示した。乾燥へキサンを用いてほぼ収容能力いっぱいまで反応器を満たした。窒素でパージした乾燥シクロヘキサン200mLに溶解した二塩化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(IV)0.5gの懸濁液を調製した。この溶剤/脱ゲル化剤懸濁液を注入口から反応器に添加し、既に含まれている溶剤と混合した。混合物を攪拌機を用いて攪拌しながら16時間65℃に加熱した。この期間の後で、反応器の内容物を空にし、反応器の新たな容積の確認を行うと、ヘキサン50.0kgを示した。容積の確認の後に、反応器の内容物を空にして、反応器を使えるように戻した。その後、反応器内でネオジム触媒を用いてポリブタジエンを重合することに成功した。
【0062】
(実施例2)
ネオジム触媒を用いたポリブタジエン合成反応を行った後で、重合反応器に通じる管が部分的に塞がれたことを確認した。その結果、物質を系に圧送するときの過剰な圧力に注目した。窒素でパージした乾燥シクロへキサンを用いて管路を満たした。窒素でパージした乾燥シクロヘキサン500mLに溶解した二塩化トリシクロヘキシルホスフィン[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン][ベンジリデン]ルテニウム(IV)2gの懸濁液を管供給路に添加した。この溶剤/脱ゲル化剤懸濁液を連続ループ系に常温で圧送した。三時間以内に、路圧は138kPaに下がり、溶剤ラインフィルタを重合体の残留物と重合触媒の粒子で満たした。該フィルタを洗浄し、再循環処理を続けた。90分以内に69kPaの圧力の降下が観察され、管の圧力を標準的な作業圧力にまで下げた。
【0063】
(実施例3)
ニッケル触媒を用いてポリブタジエンを合成した後、重合反応器の自由容積がヘキサン49.4kgから37.6kgに減少した。反応器をヘキサンで満たし、窒素でパージした乾燥トルエン400mLに溶解した二塩化トリシクロヘキシルホスフィン[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イリデン][ベンジリデン]ルテニウム(IV)2gの溶液を注入口から添加した。反応器の内容物を57℃に加熱し、20時間攪拌した。脱ゲル化処理の間に、ヘキサンの固体含有率は0.5%から3.7%に上昇し、可溶化した残留重合体の存在を示した。反応器の内容物を排出した後、反応器を新しい純へキサンで満たした。新たな容積がヘキサン49.3kgであることを確認し、反応器を使えるように戻した。
【0064】
(実施例4)
容積がヘキサン16.4kgであると確認した重合反応器が、ネオジム触媒を用いたポリブタジエン合成処理の後でゲルを含んでいることを確認した。該反応器は、溶剤膨潤したゲルを17容積%含み、自由容積はヘキサン13.6kgに減少した。ヘキサンに溶解した懸濁液として二塩化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(IV)1gを反応器に添加した。反応器の内容物を攪拌しながら18時間40℃に加熱した。この期間の後で反応器の内容物を排出し、新たな容積の確認を行うと、反応器が完全に脱ゲル化(ヘキサン16.4kg)したことを示した。その後、反応器を温かいヘキサンでフラッシュし、使えるように戻した。次にリチウム触媒を用いたスチレン−ブタジエンゴムを該容器中で合成することに成功した。
【0065】
(実施例5)
ネオジム触媒を用いてポリブタジエンを重合反応器6.5ガロン(ヘキサン16.4kg)内で合成した。処理を完了した後、容積確認(ヘキサン13.1kg)によって反応器が約20%の溶剤膨潤したゲルを含むことを測定した。ヘキサンに溶解した懸濁液として二塩化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(IV)1gを反応器に添加した。反応器の内容物を攪拌しながら24時間40℃に加熱した。この期間の後で反応器の内容物を排出し、新たな容積の確認を行うと、反応器が完全に脱ゲル化(ヘキサン16.4kg)したことを示した。その後、反応器を温かいヘキサンでフラッシュし、使えるように戻した。次にネオジム触媒を用いてポリブタジエンを該容器中で合成することに成功した。
【0066】
(実施例6)
ヘキサン16.4kgに相当する内容積を持つ重合反応器を、リチウム触媒を用いたスチレン−ブタジエンゴムの調製に利用した。処理を完了した後、反応器の容積の確認を行った。自由容積がヘキサン12.3kgに相当し、残りの容積は溶媒膨潤したゲルによって占有されたことを確認した。ヘキサンに溶解した懸濁液として二塩化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(IV)1gを反応器に添加した。反応器の内容物を攪拌しながら24時間45℃に加熱した。この期間の後で反応器の内容物を排出し、新たな容積の確認を行うと、反応器が完全に脱ゲル化(ヘキサン16.4kg)したことを示した。その後、反応器を温かいヘキサンでフラッシュし、使えるように戻した。次にリチウム触媒を用いてスチレン−ブタジエンゴムを該容器中で合成することに成功した。
【0067】
(実施例7)
ヘキサン49.0kgに相当する容積容量を有する反応器において、常温で脱ゲル化を行った。反応器内でニッケル触媒を用いてポリブタジエンを合成した後に容積の確認を行うと、ヘキサン40.8kgの自由容積とヘキサン約8.2kgの溶剤膨潤したゲル体積を示した。乾燥へキサンを用いてほぼ収容能力いっぱいまで反応器を満たした。窒素でパージした乾燥シクロヘキサン830mLに溶解した二塩化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(IV)2gの懸濁液を調製した。この溶剤/脱ゲル化剤懸濁液を注入口を通して反応器に添加し、既に含まれている溶剤と混合した。混合物を攪拌機を用いて攪拌しながら約2時間31℃に加熱した。その後、反応器の温度を約2.5時間上昇させ、脱ゲル化剤を失活させた。この期間の後にトリイソブチルアルコール300mLを添加して、反応器の温度を下げた。反応器の内容物を空にし、反応器の新たな容積の確認を行うと、ヘキサン49.0kgを示した。
【0068】
本発明の範囲と精神から逸脱しない種々の修正及び変更が当業者に明白となる。本明細書に記載した実施態様は本発明を説明するものに過ぎず、本発明を制限するものでない。と考えられる機構を説明するのに提案された反応の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
残留重合体と、溶剤と、遷移金属が周期表の8A族の元素からなる五配位又は六配位の遷移金属カルベン錯体を含む脱ゲル化剤とを化合させることを備える重合装置内の残留重合体の処理方法。
【請求項2】
残留重合体と、溶剤と、遷移金属が周期表の8A族の元素からなる五配位又は六配位の遷移金属カルベン錯体を含む脱ゲル化剤とを重合反応器中で残留重合体の少なくとも一部を脱ゲル化させるのに十分な時間化合させ、該反応器から脱ゲル化した重合体の少なくとも一部と、溶剤と、脱ゲル化剤とを除去することを備える重合反応器からの残留重合体の除去方法。
【請求項3】
重合装置から残留重合体を除去する方法において、遷移金属が周期表の8A族の元素からなる五配位又は六配位の遷移金属カルベン錯体を含む脱ゲル化剤を残留重合体と化合させる工程を備える重合装置からの残留重合体の除去方法。
【請求項4】
脱ゲル化剤がルテニウム系又はオスミウム系脱ゲル化剤である請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
脱ゲル化剤を下記の式:
【化1】

(式中、Mはルテニウム又はオスミウムであり、L及びL’はそれぞれ独立して任意の中性電子供与体配位子を含み、A及びA’はそれぞれ独立して陰イオン置換基を含み、R3及びR4は独立して水素又は有機基を含み、cは0〜約5の整数であるか、或いはR3,R4,L,L’,A及びA’の二種以上が化合して二座の置換基を形成する)で表すことができる請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項6】
脱ゲル化剤の量が、残留重合体100g当り金属約0.001〜約20mmolである請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項7】
残留重合体が、約1,000の単量体単位ごとにメタセシス反応性の外部二重結合を少なくとも一つ含む請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項8】
オレフィンの添加がない請求項7に記載の方法。
【請求項9】
脱ゲル化剤がグラブス又はホヴェイダ−グラブス型メタセシス触媒を含む請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項10】
残留重合体、溶剤及び脱ゲル化剤を化合させる前に該脱ゲル化剤を溶剤の一部と予備混合する工程を備える請求項1、2又は3に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−25963(P2012−25963A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−203543(P2011−203543)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【分割の表示】特願2006−521924(P2006−521924)の分割
【原出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(504396748)ファイヤーストーン ポリマーズ エルエルシー (12)
【Fターム(参考)】