説明

エレクタ装置及びトンネル掘削機

【課題】軽量かつ省スペースで形状保持装置等の補助装置を搭載することが可能なエレクタ装置及びトンネル掘削機を提供する。
【解決手段】トンネルの内壁面にセグメントSをリング状に組み立てるエレクタ装置17において、掘削機本体1にトンネル周方向に沿って旋回可能に支持された旋回リング20に、トンネル径方向に移動可能に支持されてセグメントSを保持可能な保持グリップ25を備えると共に、該保持グリップ25とトンネル径方向の反対側に位置してトンネル径方向に伸縮可能な伸縮装置28を備え、該伸縮装置28の昇降ロッド32先端部でセグメントSを押圧可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量かつ省スペースで形状保持装置等の補助装置を搭載することが可能なエレクタ装置及びトンネル掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シールド掘削機は、円筒形状をなす掘削機本体の前部に駆動回転可能なカッターヘッドが回転自在に装着され、このカッターヘッドに多数のカッタービット等のカッター類が取り付けられる一方、後部に掘削機本体を推進させる多数のシールド(推進)ジャッキが装着されると共に、トンネルの内壁面にセグメント(覆工部材)をリング状に組み立てるエレクタ装置及び組み立てられたセグメントの形状を保持する形状保持装置が装着されて構成されている(特許文献1参照)。
【0003】
従って、カッターヘッドを回転させながらシールドジャッキを伸長させると、既設セグメントからの掘削反力を得て掘削機本体が推進しカッターヘッドが前方の地盤を掘削する一方、エレクタ装置がトンネル内壁面にセグメントを組み立てると共に形状保持装置が組み立てたセグメントの形状を保持することで、トンネルを連続して構築できる。
【0004】
【特許文献1】特許第3595523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来では、上述したエレクタ装置における補助装置としての形状保持装置は、エレクタ装置とは別に分離して装着されることから、トンネル掘削機の掘削機本体径が例えば5m以下の小型マシンでは、スペース的に取付けが困難であった。即ち、エレクタ装置の旋回動作する、保持グリップや該保持グリップの昇降装置及びカウンタウェイト等との干渉を回避する必要性があるのである。
【0006】
そこで、本発明の目的は、軽量かつ省スペースで形状保持装置等の補助装置を搭載することが可能なエレクタ装置及びトンネル掘削機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るエレクタ装置は、トンネルの内壁面に覆工部材をリング状に組み立てるエレクタ装置において、掘削機本体にトンネル周方向に沿って旋回可能に支持された旋回リングに、トンネル径方向に移動可能に支持されて覆工部材を保持可能な保持グリップを備えると共に、該保持グリップとトンネル径方向の反対側に位置してトンネル径方向に伸縮可能な伸縮装置を備え、該伸縮装置の伸び側先端部で覆工部材を押圧可能としたことを特徴とする。
【0008】
前記伸縮装置は、トンネル長手方向に伸縮又は移動が可能であることを特徴とする。
【0009】
前記伸縮装置は、その伸び側先端部に覆工部材に対しトンネル長手方向に転動可能な転動体を備えることを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るトンネル掘削機は、筒状の掘削機本体と、該掘削機本体を前進させる推進ジャッキと、前記掘削機本体の前部に駆動回転可能に装着されたカッターヘッドと、前記掘削機本体の後部に装着された前述したエレクタ装置と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、覆工部材の形状保持機能を有する伸縮装置が、保持グリップとトンネル径方向の反対側に位置した旋回リングに設けられて、エレクタ装置の旋回動作する、保持グリップや該保持グリップの昇降装置及びカウンタウェイト等と一緒に旋回動作し、これらとの干渉が無いので、掘削機本体内に省スペースで搭載することができる。言い換えれば、小型マシンでも容易に取付けが可能となる。また、伸縮装置がカウンタウェイトの代わりにもなるので、カウンタウェイトを省略でき、エレクタ装置の重量増加も回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るエレクタ装置及びトンネル掘削機を実施例により図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1を示すトンネル掘削機の概略側断面図、図2は同じくトンネル掘削機の背面図、図3は同じく作用状態を示すトンネル掘削機の概略側断面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、泥土圧式シールド掘削機(トンネル掘削機)の筒状をなす掘削機本体1は、球面嵌合部2a,ピン結合部2b,中折れジャッキ2c等の中折れ機構2を介して、前胴1aと後胴1bとに分割され、所要の中折れジャッキ2cの伸縮により急曲線のトンネルが施工可能になっている。
【0015】
前胴1aの隔壁(バルクヘッド)3には、カッターヘッド4が軸受等を介して回転自在に装着される。カッターヘッド4の前面にはその回転中心部から放射状をなして複数本のカッタースポーク(図示せず)がその各々の間に面板(図示せず)を配して固定される。カッタースポーク及び面板には、軟弱な地盤を掘削するカッタービットや岩盤などの硬質な地盤を掘削するディスクカッター等のカッター類5が装着される。
【0016】
また、カッターヘッド4の回転中心部にはフィッシュテールカッター6が装着される。さらに、カッターヘッド4の外周には、径方向へ油圧ジャッキ等により伸縮(出没)可能に、適当数のコピーカッター7が装着される。そして、カッターヘッド4の後部にはリングギア8が固定される。
【0017】
一方、前記隔壁3には、カッターヘッド駆動手段としてのカッター旋回モータ9が取り付けられ、このカッター旋回モータ9の駆動ギア10が前記リングギア8に噛み合っている。従って、カッター旋回モータ9を稼働して駆動ギア10を回転駆動すると、リングギア8を介してカッターヘッド4が回転される。また、隔壁3の中央部には、ロータリージョイント11が組み付けられ、このロータリージョイント11を介して前記コピーカッター7の油圧ジャッキ等に対し図示しない油圧源からの圧油の給,排が行われるようになっている。
【0018】
前記掘削機本体1の内部にはスクリューコンベヤ13が配設され、カッターヘッド4で掘削された土砂をトンネルの後方へ排土可能になっている。即ち、スクリューコンベヤ13の前端部(取出口)が隔壁3の下部に形成した土砂排出口3acに連接されて前記カッターヘッド4と隔壁3とで画成されたカッターチャンバー14に開口すると共に、後下部に設けた排出口(図示せず)がトンネル内の長手方向に配設された図示しないベルトコンベヤ上に対向するのである。
【0019】
前記後胴1bの内周部には、覆工部材としてトンネルの内周面に構築された(組み立てられた)既設のセグメントSに対し伸縮し得る推進ジャッキ15が円周方向へ所定間隔離間して多数本配設される。また、後胴1bの後端部は、テールシール16を介して前記既設セグメントSの外周に嵌合している。さらに、後胴1bには前記セグメントSを組み立てるエレクタ装置17が組み付けられる。
【0020】
前記エレクタ装置17は、後胴1bの支持壁18に複数の旋回ベアリング19を介してトンネル周方向に旋回可能に支持された旋回リング20と、この旋回リング20から掘削機本体1後方へ張り出した左右一対の架台21と、この架台21の張出端部にその左右両端部がそれぞれ昇降ジャッキ22及びガイドロッド23を介してトンネル径方向に昇降可能に支持された昇降アーム24と、この昇降アーム24の中央部にトンネル長手方向に移動可能に組み付けられてセグメントSを保持することが可能な保持グリップ25と、この保持グリップ25に一体的に組み付けられて保持したセグメントSを保持部の両側に位置してサポートすることが可能な左右一対のサポートジャッキ26と、を有する。また、サポートジャッキ26の先端にはトンネル長手方向に転動可能なコロ27が付設されている。
【0021】
前記エレクタ装置17の上述した構成は既に周知の構成であるが、本実施例ではさらに、前記保持グリップ25とトンネル径方向の反対側に位置した旋回リング20に左右一対の伸縮装置28が付設される。
【0022】
前記伸縮装置28は、スライドジャッキ29によりトンネル長手方向に伸縮(摺動)可能なスライダ30と、このスライダ30の後端部に付設されて昇降ジャッキ31によりトンネル径方向に伸縮(昇降)可能な昇降ロッド32と、を有する。この昇降ロッド32の先端には、トンネル長手方向に転動可能なコロ33が付設される。そして、昇降ロッド32の伸長時にはコロ33を介して既設セグメントSに対し押圧可能となっている。
【0023】
次に、上述した泥土圧式シールド掘削機によるトンネル構築作業について説明する。
【0024】
先ず、通常掘削時は、全ての推進ジャッキ15が縮んだ初期位置で、カッター旋回モータ9を稼働させてカッターヘッド4を回転させる。
【0025】
次に、前記状態から全て又は任意の推進ジャッキ15を伸ばして掘削機本体1を1ストローク推進(前進)させる。この際、推進反力は既設セグメントSで受ける。そして、この推進により、カッターヘッド4に装着されたカッター類5が前方の地盤を掘削する。掘削された土砂は加圧状態下にあるカッターチャンバー14からスクリューコンベヤ13及びベルトコンベヤ等によって外部に排出される。
【0026】
また、この推進(掘削)下で、中折れ機構2における所要の中折れジャッキ2cを伸縮することで急曲線のトンネルが施工可能であることは前述した通りである。
【0027】
次に、カッターヘッド4の旋回を止めた状態で、図1に示すように、推進ジャッキ15を部分的に順次縮めながらエレクタ装置17によりセグメントSを組み立てる。即ち、保持グリップ25で保持したセグメントSをサポートジャッキ26でサポートしつつ図示しない駆動源により旋回リング20を旋回させて空いた空間にセグメントSを組み立てていくのである。
【0028】
このようにして、セグメントSを1リング分組み立てた後、保持グリップ25が最下部に位置するように旋回リング20を旋回させ、その後伸縮装置28の昇降ジャッキ31を伸長させて昇降ロッド32先端のコロ33をリング上部に位置する既設セグメントSに押し当ててその真円保持を行う。
【0029】
この状態から、カッターヘッド4の回転下で再び全て又は任意の推進ジャッキ15を伸ばして掘削機本体1を1ストローク推進(前進)させ掘削を再開する。この際、図3に示すように、掘削機本体1の推進に追従してスライドジャッキ29が伸長すると共に保持グリップ25が昇降アーム24に対し後方へ相対移動する。
【0030】
これにより、昇降ロッド32とサポートジャッキ26の既設セグメントSに対する押圧位置が不変となり、良好な真円保持が行われる。尚、前記押圧位置がトンネル長手方向に多少ずれたとしても昇降ロッド32とサポートジャッキ26の先端にコロ33,27が付設されているので不具合は生じない。
【0031】
以降、前述した工程を繰り返して、所定長さのトンネルを掘削・形成していく。
【0032】
このように本実施例では、既設セグメントSの形状保持機能を有する伸縮装置28が、保持グリップとトンネル径方向の反対側に位置した旋回リング20に設けられて、エレクタ装置17の旋回動作する、保持グリップ25や該保持グリップ25を昇降アーム24を介して昇降させる昇降ジャッキ22等と一緒に旋回動作し、これらとの干渉が無いので、掘削機本体1内に省スペースで搭載することができる。言い換えれば、小型マシンでも取付けが容易に可能となる。また、伸縮装置28がカウンタウェイトの代わりにもなるので、カウンタウェイトを省略でき、エレクタ装置17の重量増加も回避できる。
【0033】
尚、本実施例では、伸縮装置28(のスライダ30)が、スライドジャッキ29によりトンネル長手方向に伸縮(摺動)可能に構成されているが、手動で伸縮(摺動)可能に構成されても良い。
【実施例2】
【0034】
図4は本発明の実施例2を示すトンネル掘削機の概略側断面図、図5は同じくトンネル掘削機の背面図である。
【0035】
これは、実施例1における伸縮装置28のスライダ30を廃止する一方、伸縮装置28を車輪34を備えた移動台車35に搭載し、該移動台車35を介して左右の架台21の上面に敷設したレール36上を、架台21又はエレクタ装置17に付設した支柱37に前横向きに取り付けられたスライドジャッキ29により、トンネル長手方向に走行可能に設けた例である。この際、昇降ロッド32の先端に付設したコロ33が既設セグメントSに対して転動することになる。その他の構成は実施例1と同様なので、図1〜図3と同一部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0036】
この実施例によるも、実施例1と同様の作用・効果が得られる。
【実施例3】
【0037】
図6は本発明の実施例3を示すトンネル掘削機の概略側断面図、図7は同じくトンネル掘削機の背面図である。
【0038】
これは、実施例1における伸縮装置28のスライドジャッキ29及びスライダ30を廃止する一方、昇降ジャッキ31と中空筒状に形成された昇降ロッド32を架台21の張出端部寄りにトンネル長手方向に移動不能に設けて、掘削機本体1の推進(前進)時には、掘削機本体1と一体に昇降ジャッキ31及び昇降ロッド32が移動するようにした例である。この際、昇降ロッド32の先端に付設したコロ33が既設セグメントSに対して転動することになる。その他の構成は実施例1と同様なので、図1〜図3と同一部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0039】
この実施例によるも、実施例1と同様の作用・効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係るトンネル掘削機は、泥土圧式シールド掘削機に限らず、土圧式シールド掘削機や泥水式シールド掘削機等のトンネル掘削機にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施例1を示すトンネル掘削機の概略側断面図である。
【図2】同じくトンネル掘削機の背面図である。
【図3】同じく作用状態を示すトンネル掘削機の概略側断面図である。
【図4】本発明の実施例2を示すトンネル掘削機の概略側断面図である。
【図5】同じくトンネル掘削機の背面図である。
【図6】本発明の実施例3を示すトンネル掘削機の概略側断面図である。
【図7】同じくトンネル掘削機の背面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 掘削機本体
2 中折れ機構
3 隔壁
3c 土砂排出口
4 カッターヘッド
5 カッター類
6 フィッシュテールカッター
7 コピーカッター
8 リングギア
9 カッター旋回モータ
10 駆動ギア
11 ロータリージョイント
13 スクリューコンベヤ
14 カッターチャンバー
15 推進ジャッキ
16 テールシール
17 エレクタ装置
18 支持壁
19 旋回ベアリング
20 旋回リング
21 架台
22 昇降ジャッキ
23 ガイドロッド
24 昇降アーム
25 保持グリップ
26 サポートジャッキ
27 コロ
28 伸縮装置
29 スライドジャッキ
30 スライダ
31 昇降ジャッキ
32 昇降ロッド
33 コロ
34 車輪
35 移動台車
36 レール
37 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内壁面に覆工部材をリング状に組み立てるエレクタ装置において、掘削機本体にトンネル周方向に沿って旋回可能に支持された旋回リングに、トンネル径方向に移動可能に支持されて覆工部材を保持可能な保持グリップを備えると共に、該保持グリップとトンネル径方向の反対側に位置してトンネル径方向に伸縮可能な伸縮装置を備え、該伸縮装置の伸び側先端部で覆工部材を押圧可能としたことを特徴とするエレクタ装置。
【請求項2】
前記伸縮装置は、トンネル長手方向に伸縮又は移動が可能であることを特徴とする請求項1に記載のエレクタ装置。
【請求項3】
前記伸縮装置は、その伸び側先端部に覆工部材に対しトンネル長手方向に転動可能な転動体を備えることを特徴とする請求項1に記載のエレクタ装置。
【請求項4】
筒状の掘削機本体と、該掘削機本体を前進させる推進ジャッキと、前記掘削機本体の前部に駆動回転可能に装着されたカッターヘッドと、前記掘削機本体の後部に装着された請求項1乃至3に記載のエレクタ装置と、を備えたことを特徴とするトンネル掘削機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−308952(P2007−308952A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138523(P2006−138523)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(507137634)三菱重工地中建機株式会社 (25)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】