説明

エレクトロウェッティングディスプレイの製造方法

【課題】注入方式により高品質なエレクトロウェッティングディスプレイを容易に製造できる。
【解決手段】透明電極を有する2枚の基板1のうち一方の基板にシール剤を塗布して枠状のシールパターンを形成する工程、一方の基板と他方の基板とを貼り合わせてシール剤を硬化させ、開口部を有するセルを作製する工程、親水性の液体4中に疎水性の液体5が分散してなるエマルジョンインクを開口部からセル中に注入する工程、及び、開口部を封止する工程を有し、透明電極を有する2枚の基板1のうち1枚は、表面に疎水性中間層2を有するエレクトロウェッティングディスプレイの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注入方式により高品質なエレクトロウェッティングディスプレイを容易に製造することができるエレクトロウェッティングディスプレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロウェッティング効果を利用したエレクトロウェッティングデバイスが注目されている。通常、エレクトロウェッティングディスプレイは画素ピクセル中に親水性の液体と疎水性の液体とを有し、該親水性の液体と誘電率の高い疎水性界面とが電界によって電気二重層を形成するため、該疎水性の液体が該疎水性界面からはじき出されるという特性があり、結果として電解により疎水性の液体(オイル層)が移動するという特性を利用して表示装置等に用いられる。
【0003】
特許文献1には、エレクトロウェッティングディスプレイの製造に好適な、基板の表面に疎水性の液体の層を形成する方法が開示されている。特許文献1に開示されている方法において、当初、基板表面は親水性の液体の層で覆われている。親水性の液体の層の内部かつ基板表面の上部に、ディスペンサーの開口部が配置され、該ディスペンサーに疎水性の液体が充填され、疎水性の液体の液滴がディスペンサーの開口部と基板表面との間に形成される。基板表面は疎水性の第一領域を有し、各第一領域は、親水性の第二領域(画素壁)に囲まれている。基板表面に沿ってディスペンサーを移動させると、疎水性の液体の液滴が第一領域に引き込まれ、第一領域に接していた親水性の液体は疎水性の液体の層に置換され、第二領域に接していた親水性の液体はそのまま残る。
特許文献1に開示されている方法では、エレクトロウェッティングデバイスに充填する目的で開発された処理装置が必要となる。また、比較的時間がかかる方法であるため、大型基板への適用が難しいという問題があった。更に、疎水性の液体の層を形成した後、カバーガラスの貼り合わせを液中で行うことになるため、生産性が低いという問題があった。
【0004】
特許文献2には、液導入口と液排出口とを有する容器を作製し、一方が導電性(親水性)で他方が絶縁性(疎水性)である第1、第2の液体を、第1の液体を容器内部に充填した後第2の液体を導入し、第1、第2の液体間に界面形状を形成する方法が開示されている。しかしながら、特許文献2に開示されている方法では、疎水性の液体が一部分に凝集してしまいムラが発生するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO05/098797号パンフレット
【特許文献2】特開2008−170586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、注入方式により高品質なエレクトロウェッティングディスプレイを容易に製造することができるエレクトロウェッティングディスプレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、透明電極を有する2枚の基板のうち一方の基板にシール剤を塗布して枠状のシールパターンを形成する工程1、上記一方の基板と他方の基板とを貼り合わせて上記シール剤を硬化させ、開口部を有するセルを作製する工程2、親水性の液体中に疎水性の液体が分散してなるエマルジョンインクを上記開口部から上記セル中に注入する工程3、及び、上記開口部を封止する工程4を有し、上記透明電極を有する2枚の基板のうち1枚は、表面に疎水性中間層を有するエレクトロウェッティングディスプレイの製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者は、親水性の液体中に疎水性の液体が分散してなるエマルジョンインクをセル中に注入する方法を用いることにより、生産性が高く、画素ごとにエマルジョンインクを均一に分注し、ムラの発生を抑制することができ、かつ、適切な分散条件を選定することにより、製造後に親水性の液体と疎水性の液体とを相分離させることが可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明のエレクトロウェッティングディスプレイの製造方法においては、透明電極を有する2枚の基板のうち一方の基板にシール剤を塗布して枠状のシールパターンを形成する工程1を有する。
【0010】
上記基板は特に限定されず、例えば、ガラスや樹脂等、通常表示装置のパネル基板として使用されるものを用いることができる。
上記透明電極は特に限定されず、錫ドープ酸化インジウム(ITO)等からなるもの等が挙げられる。
【0011】
上記2枚の基板のうちの1枚は、表面に疎水性中間層を有する。上記透明電極を有する2枚の基板のうちの1枚が上記疎水性中間層を表面に有することにより、エレクトロウェッティングディスプレイの製造後に相分離処理をすることにより、上記疎水性中間層上に疎水性の液体を均一に付着させることができる。
【0012】
上記疎水性中間層は特に限定されず、例えば、フルオロポリマーやETFEやPVDFなどの誘電率が高く、疎水性を有する樹脂等からなるものが挙げられる。
上記疎水性中間層は、画素壁に囲まれた領域(バンプ)を有することが好ましい。エマルジョンインクが、画素壁に囲まれた上記疎水性中間層の領域と接触し、適正なプロセス環境条件で処理されることで、上記疎水性中間層の領域は疎水性の液体の層で覆われ、親水性の透明電極界面は親水性の液体と隣接することとなる。
【0013】
上記シール剤は表面に上記疎水性中間層を有する方の基板に塗布してもよいし、上記疎水性中間層を有さない方の基板に塗布してもよい。
上記シール剤は特に限定されず、硬化性樹脂を含有する公知のシール剤を用いることができる。
上記硬化性樹脂は特に限定されず、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、光熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0014】
上記光硬化性樹脂としては、例えば、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物等が挙げられる。
【0015】
上記ラジカル重合性化合物は特に限定されないが、不飽和二重結合を有する化合物が好適であり、反応性に優れることから、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物がより好適である。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基を意味する。
【0016】
上記シール剤が上記ラジカル重合性化合物を含有する場合、上記シール剤は更に光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光ラジカル重合開始剤は特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル、チオキサントン等が挙げられる。
【0017】
上記カチオン重合性化合物は特に限定されないが、エポキシ基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物等が好適に用いられる。
【0018】
上記シール剤が上記カチオン重合性化合物を含有する場合、上記シール剤は更に光カチオン重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光カチオン重合開始剤は特に限定されず、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が挙げられる。
【0019】
上記熱硬化性樹脂は特に限定されず、エポキシ基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物等が挙げられる。
【0020】
上記シール剤が上記熱硬化性樹脂を含有する場合、上記シール剤は更に熱硬化剤を含有することが好ましい。
上記熱硬化剤は特に限定されず、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。
【0021】
上記光熱硬化性樹脂は、1分子中に光硬化性官能基と熱硬化性官能基とを有する化合物である。このような化合物としては、例えば、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイルオキシ基とをそれぞれ1つ以上有する化合物等が挙げられる。
【0022】
上記シール剤が上記1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイルオキシ基とをそれぞれ1つ以上有する化合物等の光熱硬化性樹脂を含有する場合、上記シール剤は更に上述した光ラジカル重合開始剤及び熱硬化剤を含有することが好ましい。
【0023】
上記シール剤を上記基板に塗布する方法は特に限定されず、ディスペンサー等を用いる公知の方法を用いることができる。
上記枠状のシールパターンは、工程3においてエマルジョンインクを注入するための開口部を設けて形成してもよい。
【0024】
本発明のエレクトロウェッティングディスプレイの製造方法は、上記一方の基板と他方の基板とを貼り合わせて上記シール剤を硬化させ、開口部を有するセルを作製する工程2を有する。
【0025】
上記シール剤を硬化させる方法としては、上記シール剤の含有する硬化性樹脂の種類に応じて、光を照射する方法及び/又は加熱する方法を選択して用いることができる。
【0026】
上記開口部は、上述したように上記工程1においてシールパターンを形成する際に設けていてもよいし、上記シール剤を硬化させた後に設けてもよい。
また、上記セルは上記開口部を1箇所にのみ有していてもよいし、2箇所以上有していてもよい。
【0027】
本発明のエレクトロウェッティングディスプレイの製造方法は、親水性の液体中に疎水性の液体が分散してなるエマルジョンインクを上記開口部から上記セル中に注入する工程3を有する。
【0028】
上記親水性の液体は特に限定されず、例えば、水や、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム等の電解質の水溶液や、メチルアルコール、エチルアルコール、エチレングリコール、グリセリン等の低分子量のアルコール等が挙げられる。これらの親水性の液体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記疎水性の液体は特に限定されず、例えば、デカン、ウンデカン、ドデカン、ヘキサデカン等のアルカンや、シリコーンオイルや、フルオロカーボン等が挙げられる。これらの疎水性の液体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記疎水性の液体は、染料及び/又は顔料を含有して着色したものであることが好ましい。
上記染料又は上記顔料は特に限定されず、例えば、無機系、フタロシアニンやアゾ類等の有機系等、各種の顔料や染料が利用できるが、エレクトロウェッティングに用いられる溶液特性として、疎水性の液体に溶解するが、親水性の液体に溶解しないものである必要があり、適宜表面を疎水性処理されたものが用いられる。
【0031】
上記疎水性の液体中における上記染料及び/又は顔料の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は20重量%である。上記染料及び/又は顔料の含有量が0.5重量%未満であると、得られるエレクトロウェッティングディスプレイがコントラスト不足となり、表示性能に劣るものとなることがある。上記染料及び/又は顔料の含有量が20重量%を超えると、溶液の流動性が低下して、得られるエレクトロウェッティングディスプレイの駆動速度が遅くなることがある。
上記染料及び/又は顔料の含有量のより好ましい下限は1重量%、より好ましい上限は10重量%である。
【0032】
上記エマルジョンインク中における上記親水性の液体と上記疎水性の液体との割合は、具体的な用途、例えば、画素解像度やセルギャップ距離といったディスプレイのパラメータに応じて調整され、得られるエレクトロウェッティングディスプレイにおける疎水性の液体層を所定の厚さにできる。
【0033】
上記エマルジョンインク中おける上記疎水性の液体の液滴径は特に限定されないが、好ましい下限は0.05μm、好ましい上限は10μmである。上記疎水性の液体の液滴径が0.05μm未満であると、基板の疎水性の領域における付着性に劣るものとなることがある。また、疎水性の液体に含有される染料や顔料が析出する。記疎水性の液体の液滴径が10μmを超えると、注入と同時に疎水性の液体が相分離し、基板の疎水性の領域における疎水性の液体の付着が不均一になることがある。上記疎水性の液体の液滴径のより好ましい下限は1μm、より好ましい上限は5μmである。
【0034】
上記エマルジョンインク中における上記疎水性の液体の液滴のCV値は特に限定されないが、好ましい上限は10%である。上記疎水性の液体の液滴のCV値が10%を超えると、基板の疎水性の領域における付着が不均一になることがある。
なお、本明細書において上記CV値は、(σ/D)×100で定義され、式中、σは粒径の標準偏差を表し、Dは平均液滴径を表す。また、上記標準偏差及び上記液滴径は、例えば、顕微鏡で100液滴を測定するか、又は、Malvern Instruments社製のZETASIZER NanoシリーズNano−ZSを用いた動的光散乱法により測定することができる。
【0035】
上記エマルジョンインクは、更に、ノニオン性界面活性剤等を含有してもよい。
イオン性界面活性剤は、電気二重層の形成を阻害するために好ましくない。
【0036】
上記エマルジョンインクは、セルに注入する直前に調製することが好ましい。セルに注入する直前にエマルジョンを調製する場合、エマルジョンは長期保存できなくてもよい。エマルジョンの安定期間が短いほど、得られるエレクトロウェッティングディスプレイの製造後に、相分離が起こりやすい。いいかえると疎水性の中間層の界面への疎水性の液体の付着がおこりやすい。一方で、あまり安定時間が長すぎると、後の相分離過程での疎水性の中間層の界面への疎水性の液体の付着の処理に時間がかかりすぎるため、生産性に悪影響を与え、分離過程で顔料等の析出が起こることがある。
注入過程でセルに注入する直前にエマルジョンを調製する場合、疎水性の液体と親水性の液体は別々に保存していてもよい。
【0037】
上記エマルジョンインクを調製する方法は特に限定されず、例えば、キャピラリー流路、ホモジナイザー、ホモミキサー、ディスパー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、マイルダー、アトライター、(超)高圧ホモジナイザー、ナノマイザーシステム、膜乳化装置、マイクロブレイダイザー等を使用する方法が挙げられる。
【0038】
上記キャピラリー流路を用いた方法では、上記親水性の液体、上記疎水性の液体、及び、界面活性剤等の添加剤を含有する混合液が、ピンチコックを有するキャピラリー流路に送液される。上記キャピラリー流路を用いた方法によれば、エマルジョンインクを連続的に製造できる。
【0039】
上記キャピラリー流路を用いた方法では、キャピラリー流路に送液されることで、上記親水性の液体中に上記疎水性の液体が分散する。上記キャピラリー流路は狭窄部を有し、通過する溶液に充分なせん断力を加えるだけの大きい圧力勾配を生み出す。上記疎水性の液体を上記親水性の液体中に分散させるのに充分なせん断力を加えるため、上記狭窄部の幅は、10μm未満であることが好ましい。
【0040】
上記キャピラリー流路における上記狭窄部以外の流路径は0.5mm未満であることが好ましい。上記狭窄部以外の流路径が0.5mm以上であると、上記疎水性の液体が充分に分散しない恐れがある。
【0041】
混合液が上記狭窄部に送られると、少なくとも1MPaの圧力で充分なせん断力が加えられ、上記疎水性の液体が分散する。上記狭窄部は、流路幅を0〜10μmの間で自動的に調整するような機構を備えていることが好ましい。
【0042】
上記セル中への上記エマルジョンインクの注入時の雰囲気の圧力の好ましい下限は100mmHg、好ましい上限は1000mmHgである。上記エマルジョンインクの注入時の雰囲気の圧力が100mmHg未満であると、疎水性の液体が揮発してエマルジョンインクの濃度が変化することがある。上記エマルジョンインクの注入時の雰囲気の圧力が1000mmHgを超えると、注入時に液の流れが高速となり、バンプ中に気泡が溜まりやすくなることがある。
上記エマルジョンインクの注入時の雰囲気の圧力のより好ましい下限は200mmHg、より好ましい上限は800mmHgである。
【0043】
上記エマルジョンインクの注入には、シリンジを用いることが好ましい。特に、用いられる親水性の液体よりも疎水性であり、かつ疎水性の液体よりも親水性の高い中極性の表面エネルギーを有する材質であることが好ましい。極端に親水性の高い表面を有するシリンジは、エマルジョン中の親水性の液体との親和性が高すぎて、相分離を誘発する。
また、逆に、極端に疎水性の高い表面を有するシリンジは疎水性の液体を付着し、シリンジ内での相分離を誘発する。
【0044】
上記エマルジョンインクと上記透明電極との間に電圧を印加することにより、親水性の液体と表面に疎水性中間層を有さない方の基板とを引きつけることができ、疎水性の液体による疎水性中間層への付着を調整することができる。
上記エマルジョンインクと上記透明電極との間に電圧を印加する場合、上記疎水性中間層に付着した疎水性の液体の量を測定し、その量に従って電圧を決定することが好ましい。上記疎水性中間層に付着した疎水性の液体の量は光学的に測定されてもよく、例えば、反射又は透過により、疎水性の液体層の吸光度を測定する方法を用いることができる。また、上記疎水性中間層に付着した疎水性の液体の量は電気的に測定されてもよく、例えば、疎水性中間層を有する基板に配置された透明電極と親水性の液体との間の静電容量を測定し、得られた値を用いることにより、疎水性の液体の液滴の被覆を局所的又は全体的に制御することができる。
【0045】
上記エマルジョンインクの注入中又は注入後に、基板上又はエマルジョンインク内に気泡が発生することがある。上記気泡は、親水性の液体及び疎水性の液体に超音波を当てることにより除去できる。上記超音波は、親水性の液体及び疎水性の液体が各層に分離する前のエマルジョンインクに対して当ててもよく、分離後の親水性の液体及び疎水性の液体の各層に対して当ててもよい。
【0046】
本発明のエレクトロウェッティングディスプレイの製造方法は、上記開口部を封止する工程4を有する。
上記開口部を封止する方法は特に限定されず、例えば、上記工程1において用いたシール剤と同様のシール剤を上記開口部で硬化させて封止する方法等が挙げられる。
【0047】
本発明のエレクトロウェッティングディスプレイの製造方法により得られるエレクトロウェッティングディスプレイの一例を模式的に示した断面図を図1に示す。
上記エレクトロウェッティングディスプレイにおいて疎水性の液体5は、エレクトロウェッティングデバイスの製造時には親水性の液体4中に安定に分散した状態で存在し、製造後に図1に示したように親水性の液体4と分離して疎水性中間層2に均一に付着する。
【0048】
上記疎水性の液体が上記疎水性中間層に均一に付着して親水性の液体と分離した層を形成するのにかかる時間は、エマルジョンの安定性と、上記疎水性の液体及び上記親水性の液体に対する上記疎水性中間層表面のぬれ性の違いとに左右される。
上記疎水性の液体の密度が上記親水性の液体よりも小さい場合は、疎水性中間層がある面を内側にして遠心処理をすることによってエマルジョンインク中の疎水性の液体の疎水性中間層への付着を促進できる。また、親水性の液体と表面に疎水性中間層を有する基板内の電極との間に電圧を印加し、相分離率を局所的に制御してもよい。疎水性の液体の疎水性中間層を有する基板側への付着を制御することにより、より均一な疎水性の液体層を形成することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、高品質なエレクトロウェッティングディスプレイを容易に製造することを可能とするエレクトロウェッティングディスプレイの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のエレクトロウェッティングディスプレイの製造方法により得られるエレクトロウェッティングディスプレイの一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0052】
(実施例1)
テフロン(登録商標)溶液(デュポン社製)を透明電極に塗布することによって形成された疎水性中間層を有する基板上にSU−8(化薬マイクロケム社製)のフォトレジストによって親水性の画素壁として40μmの高さのバンプを形成した。光硬化性樹脂としてA785(積水化学工業社製)をシール剤として用い、疎水性中間層を有する基板上に枠を描く様にディスペンサーで塗布し、シールパターンを形成し、シールパターンには開口部となる部分を設けた。疎水性中間層及び親水性の画素壁を有さない他方のITOガラス基板を重ね、365nmの中心波長を有する超高圧水銀灯によって、1000mJの光を照射してシール剤を硬化させ、開口部を有するセルを作製した。
【0053】
親水性の液体としてエチレングリコール(和光純薬工業社製)67重量%とグリセリン33重量%の溶液Aを作製し、顔料を混合した疎水性の液体としてアントラキノン顔料5重量%をノルマルデカン(和光純薬工業社製)に溶解した溶液Bを作製した。
溶液A19gと溶液B1gとをサンプル瓶に入れ、振とう攪拌した。その後、超音波処理装置(本多電子社製、「超音波洗浄機W−113」)を用いて、氷でサンプル瓶を冷却しながら、30分間超音波処理し、疎水性の液体と親水性の液体とを均一に混合し、エマルジョンインクを得た。
粒度計で測定したところ、中心粒径は2.43μmであり、ゼータ電位は−5.92mVであった。
【0054】
760mmHgの雰囲気下で、得られたエマルジョンインクを、得られたセルの開口部から疎水性のシリンジを用いてセル内に注入した。次いで、開口部にシール剤を塗布し、超高圧水銀灯で光照射してシール剤を硬化させて開口部を封止し、エレクトロウェッティングディスプレイを作製した。
得られたエレクトロウェッティングディスプレイを顕微鏡で観察したところ、疎水性の液滴は均一に混合されていた。貼りあわされた2枚の基板に0V/100Vのパルス電圧を50ヘルツの周波数で印加したところ、疎水性の粒子が凝集し合着した。そこで、0V/100Vのパルス電圧を1000ヘルツの周波数で10秒間印加したところ、疎水性の粒子が疎水性中間層に付着するのが観察された。
0V/20Vのパルス電圧を30ヘルツの周波数で印加したところ、電圧の上下に応答して、疎水性の液体と親水性の液体との界面形状が変化し、画素領域の開口と閉口とが観察された。
【0055】
(比較例1)
溶液Aと溶液Bを混合したのち超音波分散処理せず、エマルジョンインクにしなかったこと以外は、実施例1と同様にしてエレクトロウェッティングディスプレイを作製した。
得られたエレクトロウェッティングディスプレイを顕微鏡で観察したところ、疎水性中間層に疎水性の液体が多く付着している部分とほとんど付着していない部分が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、高品質なエレクトロウェッティングディスプレイを容易に製造することを可能とするエレクトロウェッティングディスプレイの製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 基板
2 疎水性中間層
3 画素壁
4 親水性の液体
5 疎水性の液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明電極を有する2枚の基板のうち一方の基板にシール剤を塗布して枠状のシールパターンを形成する工程1、
前記一方の基板と他方の基板とを貼り合わせて前記シール剤を硬化させ、開口部を有するセルを作製する工程2、
親水性の液体中に疎水性の液体が分散してなるエマルジョンインクを前記開口部から前記セル中に注入する工程3、及び、
前記開口部を封止する工程4を有し、
前記透明電極を有する2枚の基板のうち1枚は、表面に疎水性中間層を有する
ことを特徴とするエレクトロウェッティングディスプレイの製造方法。
【請求項2】
工程3におけるエマルジョンインクのセル中への注入を、100〜1000mmHgの雰囲気下で行うことを特徴とする請求項1記載のエレクトロウェッティングディスプレイの製造方法。
【請求項3】
工程3におけるエマルジョンインクのセル中への注入を、シリンジを用いて行うことを特徴とする請求項1又は2記載のエレクトロウェッティングディスプレイの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−68506(P2012−68506A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214143(P2010−214143)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(506255669)サムスン エルシーディー ネザーランズ アール アンド ディー センター ビー.ブイ. (12)
【Fターム(参考)】