説明

エレクトロルミネッセンス材料の作製方法

【課題】従来に比べより発光輝度や効率、寿命を改善するために、さらには工程を削減や安全性の高い無機EL材料の作製方法を提供する。無機EL材料の合成には必要な要素、あるいは化合物であるが発光機構には不純物となる元素を含む材料を利用する場合の無機EL材料の作製方法を提供する。また、このようにして合成した無機材料を利用した発光装置および電子機器を提供することを課題とする。
【解決手段】封管容器内に蒸気圧の異なる複数の材料を離間して配置させ、少なくとも一の材料を蒸発するように加熱焼成してエレクトロルミネッセンス材料を焼成し作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光素子を形成するための材料に関し、特に無機エレクトロルミネッセンス材料の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ、携帯電話、デジタルカメラ等における表示装置は、平面的で薄型の表示装置が求められており、この要求を満たすための表示装置として、自発光型である発光素子を利用した表示装置が注目されている。自発光型の発光素子の一つとして、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence、以下ELとも記す)を利用する発光素子があり、この発光素子は、発光材料を一対の電極で挟み、電圧を印加することにより、発光材料からの発光を得ることができるものである。
【0003】
このような自発光型の発光素子は、液晶ディスプレイに比べ画素の視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適であると考えられている。また、このような発光素子は、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。また、非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
さらに、このような自発光型の発光素子は膜状に形成することが可能であるため、大面積の素子を形成することにより、面発光を容易に得ることができる。このことは、白熱電球やLED(Light Emitting Diode)に代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0006】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。前者は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有し、後者は、蛍光材料の薄膜からなる発光層を有している点に違いがある。しかし、そのメカニズムは共通しており、高電界で加速された電子による母体材料又は発光中心の衝突励起により発光が得られる。そのため、一般的な無機EL素子で発光を得るためには高い電界が必要であり、発光素子に数百ボルトの電圧を印加する必要がある。例えば、近年フルカラーディスプレイに必要とされる高輝度の青色発光の無機EL素子が開発されたが、100〜200Vの駆動電圧が必要である(例えば、非特許文献1参照)。そのため、無機EL素子は消費電力が大きく、中小型サイズのディスプレイ、例えば、携帯電話等のディスプレイには採用することが難しかった。
【0007】
従来、無機EL素子における発光材料を合成する場合、電気炉での焼成において、母体材料に、発光中心となる不純物元素を含む材料(付活剤として添加される)または、蛍光材料を混合して焼成を行っていた。しかしこのような場合、高温焼成であると母体材料そのものが分解し、焼成後に欠陥を有する材料が作製されてしまう。このような欠陥は無機EL素子の発光輝度等の特性に影響が出る問題があった。
【0008】
このような解決策として、蛍光体原料の上に雰囲気ガス原料の別の坩堝を設ける方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし二硫化炭素(CS)のような沸点の非常に低い材料を使用してその雰囲気を作り出している。さらにこの二硫化炭素は引火点が−30℃、発火点が100℃と非常に低く、非常に蒸発しやすく空気と混合することで爆発性の混合ガスとなる。そのため作業や材料の取り扱いに危険性が増す。
【0009】
また、無機EL素子で利用する無機EL材料、特にその中でも発光材料は不純物に敏感であり、母体材料内の発光中心となる不純物以外の発光機構に関与しない不純物が存在すると発光材料の特性が低下する。発光材料を焼成により合成する際、合成には必要となるが母体材料には含有させたくない元素を含む材料を用いる場合がある。しかし従来知られた発光材料の合成方法では全ての必要な材料を一緒に混合させ、ある必要な温度で焼成が行われる。従ってこのような場合、焼成後には必要とならない不純物や未反応材料、さらには副生成物を除去するために洗浄を行う必要がある。洗浄方法は、除去したい物質によって使い分けられるが、純水、酸洗浄、塩基洗浄等を利用した洗浄も必要となることがある。このような場合は、溶液を利用した洗浄となるため最後には乾燥が必要となる。
【非特許文献1】ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジクス(Japanese Journal of Applied Physics)、1999年、Vol.38、pp.L1291―L1292
【特許文献1】特開平6−192655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記問題に鑑み、本発明は、従来に比べ、発光輝度や発光効率、寿命を改善したエレクトロルミネッセンス材料の作製方法、さらには工程を削減し、また、安全性の高いエレクトロルミネッセンス材料の作製方法を提供する。また、エレクトロルミネッセンス材料の合成には必要だが、発光機構には不純物となる元素を含む材料を利用する場合のエレクトロルミネッセンス材料の作製方法を提供する。また、このようにして合成したエレクトロルミネッセンス材料を利用した発光装置および電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、封管容器内に蒸気圧の異なる複数の材料を離間して配置させ、少なくとも一の材料を蒸発するように加熱焼成してエレクトロルミネッセンス材料を焼成し作製することを要旨とする。
【0012】
本発明のエレクトロルミネッセンス材料の作製方法の一形態は、反応容器内に、第1の坩堝に収容された第1の材料と、焼成時に反応容器内で気体となる第2の坩堝に収容された第2の材料を配設し、反応容器内を減圧状態とし、反応容器内を減圧状態に保った状態で密閉封止し、該密閉封止した反応容器を加熱して、第2の材料を蒸発させつつ、第1の材料を焼成する。
【0013】
また、本発明のエレクトロルミネッセンス材料の作製方法の一形態は、オリフィスによって隔てられた第1の領域と第2の領域とを含む反応容器内に、第1の領域に収容された第1の材料と、焼成時に反応容器内で気体となる第2の領域に収容された第2の材料を配設し、反応容器内を減圧状態とし、反応容器内を減圧状態に保った状態で密閉封止し、該密閉封止した反応容器を加熱して第2の材料を蒸発させつつ、第1の材料を焼成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エレクトロルミネッセンス材料の発光特性に悪影響を及ぼす不純物を極力減らすことができるため、従来よりも発光輝度や発光効率、寿命を改善することができる。また、本発明によりエレクトロルミネッセンス材料を作製するにあたり、作業工程を削減し安全性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で用いることができる発光材料としては、カルコゲナイド化合物(周期表の第16族のカルコゲン元素、つまり酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、またはポロニウム(Po)のいずれかで構成される化合物)やその複合材料を母体材料とし、発光中心として遷移金属や希土類金属とその化合物、さらにハロゲン化合物を添加した蛍光体を用いることができる。例えば酸化亜鉛、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化マグネシウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウムなどが母体材料として挙げられる。さらにSrGa、ZnMgS、ZnSiのようにカルコゲナイド化合物の複合材料を使用してもよい。また、カルコゲナイド化合物でなく、15族(つまり窒素(N)、リン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi))で構成される化合物を母体材料として用いても良い。15族で構成される化合物としては、例えば、窒化シリコン、窒化ガリウム、窒化アルミニウムなどがある。さらに窒化物とカルコゲナイド化合物との複合材料を母体材料に用いても良い。
【0016】
上記のような母体材料を無機エレクトロルミネッセンス材料(以下無機EL材料ともいう)に使用する場合、その母体材料と同じ元素を含む雰囲気で焼成を行うことで欠陥の発生を緩和することができる。例えば母体材料がカルコゲナイド化合物であれば、母体材料と同じ元素を含む雰囲気とは硫黄(S)雰囲気、または、酸素(O)雰囲気等である。焼成する際に、雰囲気にする材料を母体材料とは別に配置させるため、母体材料に、発光中心となる不純物元素を含む材料などの付活剤や、副付活剤を混合させておくこともできる。本発明では雰囲気にする材料としては、母体材料に置換する材料ではなく、母体材料に生じた欠陥を補充する元素を有する材料を用いる。
【0017】
無機EL材料の合成を行う場合、焼成を行うための電気炉としてマッフル炉、横型管状炉、縦型管状炉等が使用できる。また焼成する際に材料を収容するために坩堝のような開管の容器を用いることができる。または材料を容器に収容せずに、石英管の中に直接設けてもよいし、石英管の中に封入してもよい(封管ともいう)。材料を封入する場合は真空状態で封入することもできるし、窒素やアルゴンのような不活性ガスと共に封入することもできる。
【0018】
封管や開管の炉心管として石英材質の管を使用する場合、石英ガラスの耐熱温度を超えないまでの温度である、およそ1300℃以下で焼成を行うことが好ましい。高温で焼成を行うほど、石英管自体に洗浄で取りきれず付着していたアルカリ金属等の付着物が拡散し、石英管の耐熱温度が下がる、または、石英が結晶化しクリストバライトとなることがある。そのため炉心管は目的に応じ、石英だけではなくアルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化珪素(SiC)、窒化ホウ素(BNやPBN)、マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO)、カルシア(CaO)、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)、イットリア(Y)などのセラミックス管を使用することができる。または、タンマン管のように片方が閉じられた管を使用することも可能である。しかし封管では加工の問題上、セラミックスを使用することは難しく石英が好ましい。
【0019】
封管や開管において、材料を収容する容器として坩堝を使用しても良いし、目的に応じて坩堝を使用しなくても良い。坩堝を使用する場合、良く洗浄された、アルミナ(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化珪素(SiC)、窒化ホウ素(BNやPBN)、白金(Pt)、チタン(Ti)、グラファイト(C)、マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO)、カルシア(CaO)、シリカ(SiO)、チタニア(TiO)、イットリア(Y)などが材質に挙げられる。坩堝には同材質の蓋があっても良い。またその蓋には穴や溝が加工されていても良い。材料を坩堝に収容する場合も石英等の管に直接載せる場合も、より管内の雰囲気に曝すために、表面積を広くなるように収容することが好ましい。そのため坩堝の形状は深い坩堝でも良いが、好ましくは浅めの坩堝が良い。
【0020】
管状炉を利用する場合には、縦型管状炉と横型管状炉で母体材料と雰囲気とさせる材料の配置が異なる。横型管状炉では開管でも良いし封管でも使用できる。縦型管状炉では作業性から封管が望ましい。管状炉の有する温度分布の差を利用し、雰囲気とさせる材料が母体材料より沸点や昇華温度が低い場合は、より温度の低い位置に配置すればよい。逆に雰囲気とさせる材料が母体材料よりも沸点や昇華温度が高い場合はより温度の高い位置に配置すればよい。もしくは母体材料が気体となることなく雰囲気となる材料のみが気体となるように配置することもできる。
【0021】
母体材料を構成する元素と同じ元素で雰囲気を作り、炉心管を使用した開管で焼成を行う場合、雰囲気を作る材料が母体材料に近い沸点または昇華温度である必要が出てくる。雰囲気をつくる材料(以下雰囲気材料とも表記する)が母体材料より低い沸点または昇華温度であると、母体材料が反応する前に雰囲気材料の雰囲気となってしまう。また逆に雰囲気をつくる材料が母体材料より高い沸点または高い昇華温度であると完全に雰囲気材料の雰囲気にならないまま焼成が進行してしまう、または、雰囲気になる前に焼成が終了してしまう。封管では、雰囲気材料が母体材料よりある程度低い沸点または低い昇華温度である場合には、特に問題無いため、材料の選択にも幅が広がる。そして硫黄または酸素が母体材料から抜けて欠陥が生じても雰囲気中の硫黄または酸素が補充されるため、欠陥の無い、もしくは欠陥の少ない材料を合成することができる。しかし母体材料よりも沸点や昇華温度が高い雰囲気材料で封管内の雰囲気を作ろうとするとその雰囲気になることなく、合成が完了してしまう。
【0022】
そのため雰囲気をつくる材料には、母体材料よりも沸点や昇華温度が近いながらもある程度低い材料を用いる必要がある。例えば硫化亜鉛を母体材料に用いる場合、硫化亜鉛の沸点は900℃程度であり、昇華温度が1100〜1200℃程度である。そのため、硫黄雰囲気にしたい場合には沸点や昇華温度が上記よりも低い雰囲気材料を用いる必要がある。母体材料自体を雰囲気材料として利用しても良い。それに対し沸点の低すぎる材料、例えば硫黄単体(450℃程度)や二硫化炭素(45℃程度)では温度分布のある管状炉を使用すると低温部で硫黄等が析出してしまう恐れがある。特に硫化物は焼成中の酸化を嫌うため酸素雰囲気を好まない。また硫化水素を使用してしまうと、毒性が強く作業や管理に問題が起こったり注意が必要となり困難になる。そこで、雰囲気材料としては遷移金属や希土類金属の硫化物、その複合化合物が考えられ、Al、CaS、FeS、NaS、GaS、Gaなどが考えられる。その他、窒素雰囲気にしたい場合はCa、GaN、Siなどのような材料が利用できる。また、雰囲気材料のみが気体となり、母体材料は気体とならないような材料を選んでも良い。
【0023】
また無機EL材料の発光材料は、発光中心となる不純物以外の不純物を含まずに純度が高いことが重要である。そこで雰囲気材料としてフラックスを使用し、該フラックス雰囲気を作ることで純度が良く単相の無機EL材料を得ることができる。単相とは目的とする材料に副生成物が混入していない状態を言い、組成が同じ生成物が集まった結晶性の良い状態のことである。また、フラックスは、結晶性を良くするため、もしくは単結晶を生成するために利用する。焼成においてフラックスを使用する場合、フラックスとしては、ハロゲン化合物が多く用いられる。ハロゲン化合物とは遷移金属や希土類金属のハロゲン元素(周期表の17族)、つまりフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、アスタチン(At)で構成される化合物である。例えば塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化鉛、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、塩化バリウム、塩化アンモニウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化バリウム、塩化銅(I)、塩化銅(II)などが挙げられる。
【0024】
このようなフラックスはキャリアガスとして機能し、封管内の低温部に目的の材料を析出させることができる。また、材料を焼成時に配置した場所とは異なる位置に合成することができる。そのためフラックスに発光機構に悪影響を及ぼす不純物が含まれていた場合にも、合成される材料に含まれる不純物濃度は、フラックスよりも低く合成することができる。また、フラックスは母体材料と混合することなく離れた位置に配置されるため、フラックスに含まれる不純物を母体材料に含有させることなくフラックスの雰囲気にすることができる。目的の材料が析出される低温部に、結晶成長させる核として単結晶物質を設置することでより成長を促すこともできる。単結晶とは単結晶基板であっても良いし数百〜数千ミクロン程度の単結晶そのものであっても良い。単結晶とは砒化ガリウムやサファイアの他に、窒化ガリウムや窒化アルミニウムなどの窒化物単結晶、炭化珪素などの炭化物単結晶、アルミナ、マグネシア、酸化亜鉛などの酸化物単結晶、シリコンなどの金属単結晶である。このような単結晶は作製する材料の結晶系を考慮して選択する。結晶成長する目的の材料の結晶系と同じ単結晶を使用することが好ましい。
【0025】
本発明に係るエレクトロルミネッセンス材料の作製方法の一形態は、封管容器内に第1の坩堝に収容された第1の材料と第2の坩堝に収容された焼成時の雰囲気となる第2の材料とをお互いが接しないように設け、焼成することによって第1の材料と第2の材料とは異なる位置に第3の材料を形成する。なお、第2の材料は、発光機構には悪影響を及ぼす不純物を含み、第3の材料に含まれる不純物濃度は第2の材料よりも低い。また、第3の材料は単結晶の状態であってもよい。また、第1の材料と第2の材料とは異なる位置に結晶化を促進する機能を有する単結晶材料を設置してもよい。
【0026】
上記構成において、第2の材料とは周期表第15族、第16族及び第17族から選択された元素を含む化合物であってもよい。また、焼成前の封管された反応容器の雰囲気は真空もしくは不活性ガスであってもよい。また、第1の材料の方が第2の材料よりも蒸気圧が低ければ、温度分布を有する反応容器内で第1の材料よりも温度の低い位置に第2の材料を配置すればよい。逆に、第1の材料の方が第2の材料よりも蒸気圧が高ければ、反応容器内で第1の材料より温度の高い位置に第2の材料を配置すればよい。
【0027】
上記構成において、第1の材料と第2の材料とは、封管された反応容器へ、分離して収容することができる。例えば、第1の材料と第2の材料はオリフィスで隔てられていてもよいし、第1の材料は第1の坩堝に、第2の材料は第2の坩堝に収容されていても良い。
【0028】
上記構成において、第1の材料及び第2の材料とは無機物質を用いることができる。
【0029】
上記構成において作製された材料を使用した発光素子、当該発光素子を有する照明装置のような発光装置を提供することができる。また本発明を用いた発光装置を表示部に用いて電子機器を提供することができる。
【0030】
本発明では、様々な母体材料を使用し、発光中心となる不純物元素を含む様々な材料を添加することでより効率の良い発光材料や寿命の長い発光材料、輝度の高い発光材料とし、さらには発光色を変えることができる。発光材料としては硫化物や酸化物のようなカルコゲナイド化合物、窒化物やそれらの複合材料が使われることが主である。本発明のエレクトロルミネッセンス材料とは、発光素子の中で発光層となる発光材料だけではなく、発光素子内において機能分離を目的として複数の層で構成されるいずれかの層や領域を形成するための材料であれば良い。
【0031】
また、本発明は、上述した発光素子を有する発光装置も範疇に含めるものである。本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を範疇に含む。また、発光素子が形成されたパネルにコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【0032】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更しうることは当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0033】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明に係る無機EL材料の作製方法に関して図1(A)から(D)を用いて説明する。
【0034】
本実施の形態で示す無機EL材料の作製方法は封管を用いた焼成方法である。まず図1(A)にあるように、ある雰囲気で封管した石英などを材質とする封管2100中に、母体材料2103を収容したアルミナなどの坩堝2101と、焼成中の雰囲気で利用する雰囲気材料2104を収容した坩堝2102を離れた状態で配置する。なお、母体材料2103と、雰囲気材料2104としては、それぞれ上記に示した材料を用いればよく、母体材料に発光中心となる不純物元素を付活剤として添加しても良い。坩堝2101と坩堝2102は収容する材料によって適した材質に変更しても良い。ここで封管とは例えば材質を石英とした場合に、石英管の両端を開放することなく、内部を真空にして、あるいは、ある特定の気体を封じ込めて、石英管の両端が密閉するようにバーナー等で封じ切った状態のものを言う。封管は一つの空間ではなく2つの空間を作り別々の空間に母体材料2103と、雰囲気材料2104と、をそれぞれ配置しても良い。
【0035】
また図1(B)のように坩堝を使用せず、母体材料2107と雰囲気材料2108を、直接石英などを材質とする封管2105中に設けることも可能である。その際、材料の収容などの作業によって、または焼成中に、母体材料2107と、雰囲気材料2108とが混合しないように、材料間にオリフィス2106を設けることが好ましい。この場合、石英自体の結晶化温度、または耐熱温度を超えないまでの温度、およそ1300℃以下で焼成を行うことが望ましい。なおオリフィスとは封管2105においてその径が細くなっている部分を指す。
【0036】
さらに、別々の坩堝に収容した3つ以上の材料を封管内に配置することも可能である。例えば、図1(C)のように、封管2109中に、母体材料2113を収容した坩堝2110と、雰囲気材料2114を収容した坩堝2111と、雰囲気材料2115を収容した坩堝2112とを配置することができる。同様に図1(D)のように封管2116にオリフィス2117を複数設け、坩堝を使用せずに直接封管に母体材料または雰囲気材料を収容することもできる。図1(D)では、母体材料2118に対して雰囲気材料は2119と2120になる。
【0037】
図1(B)及び図1(D)のようにオリフィスを設けることによって、母体材料と雰囲気材料とが封管内で混合または接触することによる、焼成後には不要となる不純物や未反応材料、さらには副生成物などの生成を防ぐことができる。また、封管内の所望な場所に焼成物を析出させることができ、得られる焼成物の収率も向上する。
【0038】
このようにして封管内に封じ込めた母体材料と雰囲気材料とは、雰囲気材料が母体材料より先に蒸発し、封管内を特定の雰囲気にした後に、母体材料が焼成するように、封管内の温度及び焼成時間を用いる母体材料及び雰囲気材料によって設定する。具体的には、管状炉の有する温度分布を利用して、母体材料の方が雰囲気材料より蒸気圧が低い場合は、封管内で母体材料の方が雰囲気材料より温度が高い場所に設けるとよい。また、母体材料の方が雰囲気材料より蒸気圧が高い場合は、封管内で母体材料の方が雰囲気材料より温度が低い場所に設けるとよい。例えば図1(A)において、母体材料2103が雰囲気材料2104より蒸気圧が低い場合、母体材料2103を収容した坩堝2101は雰囲気材料2104を収容した坩堝2102より封管2100内で温度が高い場所に設けられる。
【0039】
封管する場合は管状炉の有する温度分布を利用するとしたが、場合によっては封管でも大きな温度差異を無くすために封管自体の大きさや長さを小さくすることもできる。また、管状炉のみならず温度分布の少ないマッフル炉を使用することもできる。または、より封管に掛かる温度を均一にするためにバブル状のセラミックスを回りに配置して焼成することも可能である。
【0040】
このような形態によって無機EL材料を作製することによって母体材料内に余計な不純物を減らすことができ、発光輝度や発光効率、寿命を向上させた無機EL材料を得ることができる。また余計な不純物を含有させないので、洗浄工程を削減することができる。
【0041】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明に係る無機EL材料の作製方法に関して図2(A)から(C)を用いて説明する。
【0042】
本実施の形態で示す無機EL材料の作製方法は開管を用いた焼成方法である。図2(A)にあるように横型管状炉において焼成を行う場合に炉心管2200として石英管を使用し、その中に坩堝2201に収容された母体材料2203と坩堝2202に収容された雰囲気材料2204を設置する。このときキャリアガスとなる不活性ガスで開管中に流れを起こさせる。ここで、開管である炉心管2200内で、雰囲気材料2204をキャリアガスの流れ出る上流に配置することによって、母体材料2203を雰囲気材料2204の雰囲気に曝すことができる。なお、母体材料と、雰囲気材料としては、それぞれ上記に示した材料を用いればよく、母体材料に発光中心となる不純物元素を付活剤として添加しても良い。
【0043】
母体材料2203と雰囲気材料2204の炉心管2200内の配置としては、雰囲気材料2204を、母体材料2203に対して炉心管2200内のキャリアガスの流れの上流であって、管状炉の温度分布を考慮し適当な温度の位置に配置する。例えば雰囲気材料の方が母体材料よりも沸点または昇華温度が低い場合、管状炉で最も温度の高い位置が中央にあれば母体材料は中央に設け、それよりも上流に雰囲気材料を設置する。また、雰囲気材料の方が母体材料よりも沸点や昇華温度が高い場合、管状炉で最も温度の高い位置が中央にあれば雰囲気材料を中央に設け、それよりも下流に母体材料を設置する。この時、より雰囲気下に母体材料を曝すために高さの低く浅い坩堝、もしくは容器を使用することが望ましい。また開管とはいえ雰囲気材料のガスや母体材料からの脱ガスにより大気中にガスが発生するため、炉心管2200はダクトを通し、必要によっては除外装置を通して処理したほうが良い。
【0044】
また、別々の坩堝に収容した3つ以上の材料を炉心管内に配置することもできる。例えば、図2(B)のように炉心管2205内に坩堝2206に収容した母体材料2209と坩堝2207に収容した雰囲気材料2210と坩堝2208に収容した雰囲気材料2211とを配置することができる。このときに、雰囲気材料2210、2211から発生したガスに流れを起こすため不活性ガス等をキャリアガスとして使用し、炉心管2205はダクトを通して処理される。母体材料2209と雰囲気材料2210、2211の炉心管2205内での配置は図2(A)の場合と同じである。2種類の雰囲気材料がある場合はより沸点や昇華温度が低い雰囲気材料を低温部に配置することが望ましい。
【0045】
さらに図2(C)のように材料を収容する坩堝を使用せずに、直接炉心管内に雰囲気材料と母体材料を設けても良い。このような場合は、炉心管2212にオリフィス2213を設け母体材料2214と雰囲気材料2215が直接混合されないようにするのが好ましい。坩堝を使用しない焼成は、炉心管の材質である石英が反応を起こさない1000℃付近で焼成する場合に有効的である。
【0046】
炉心管内に上記のように配置した母体材料と雰囲気材料を、目的の温度、時間で保持して焼成する。なお、開管の場合は、炉心管端部から熱が逃げないようにファイバー状の石英ガラスを炉心管に詰めることもできる。また坩堝を使用する場合には、坩堝全体が温度分布無く均一に熱せられるように、バブルアルミナやバブルジルコニアのように中空のアルミナやジルコニアを使用することもできる。中空であることから熱の保持がより向上し坩堝全体が均一な温度分布になることができる。
【0047】
本実施の形態に示した作製方法を用いて無機EL材料を作製することによって母体内に余計な不純物を減らすことができ、発光輝度や発光効率、寿命を向上させた無機EL材料を得ることができる。また余計な不純物を含有させないので、洗浄工程を削減することができる。
【0048】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明に係る無機EL材料の作製方法に関して図3(A)から(B)を用いて説明する。
【0049】
本実施の形態で示す無機EL材料の作製方法は電気炉内で縦型にサンプルを配置する場合の焼成方法である。図3(A)のように材料が2つの場合には封管2300にオリフィス2301をつけ母体材料2305と雰囲気材料2304を設置する。縦型の場合オリフィスのような引っかかる部分がないと坩堝のような容器が固定できない。まず、片側が封じられた石英管の底部に坩堝2302を配置し、雰囲気材料2304を収容する。次に坩堝2302から離れた位置にオリフィス2301を加工する。加工はバーナー等で熱することによって坩堝2303を乗せることができる引っ掛かり部分を作る。そしてオリフィス2301上に坩堝2303を配置し、母体材料2305を収容する。最後に石英管を真空に引きながら、石英管のもう片方も封じる。これによって封管2300を製作できる。このとき石英管は真空に引きながら行い、封管の中の雰囲気は真空に保たれているが不活性ガスで満たしてもいい。
【0050】
また図3(B)のように封管の中に坩堝を3つ以上配置することもできる。封管2306及びオリフィス2307の作製方法は上記図3(A)と同じであるが、坩堝2309に収容された母体材料2312に対して、封管の下部に坩堝2308に収容された雰囲気材料2311と上部に坩堝2310に収容された雰囲気材料2313が配置される。このとき各材料の配置は各材料の沸点または昇華温度と、縦型管状炉やマッフル炉の温度分布を考慮することによって変えることができる。
【0051】
封管内に上記のように配置した母体材料と雰囲気材料を、目的の温度、時間で保持して焼成する。封管全体を温度分布の無い環境で焼成したいのであればマッフル炉を使用し、意図的に温度分布を利用したいのであれば縦型管状炉を使用すればよい。
【0052】
本実施の形態に示した作製方法で無機EL材料を作製することによって母体内に余計な不純物を減らすことができ、発光輝度や発光効率、寿命を向上させた無機EL材料を得ることができる。また余計な不純物を含有させないので、洗浄工程を削減することができる。
【0053】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明に係るエレクトロルミネッセンス材料の作製方法で作製した無機EL材料を発光層に利用した薄膜型発光素子について図4(A)を用いて説明する。本実施の形態で示す発光素子は、基板100の上に、第1の電極101と第2の電極105を有し、第1の電極と第2の電極との間に、第1の誘電体層102と発光層103と第2の誘電体層104とを有する素子構成である。なお、本実施の形態では、第1の電極101と第2の電極105は陽極、陰極のどちらとしても機能できるものとして以下に説明をする。
【0054】
基板100は発光素子の支持体として用いられる。基板100としては、例えば、ガラス、石英又はプラスチックなどを用いることができる。なお、発光素子の作製工程において支持体として機能するものであれば、これら以外のものでも用いることができる。
【0055】
第1の電極101及び第2の電極105は、金属、合金、導電性化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。具体的には、例えば、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有したインジウム錫酸化物、酸化インジウム酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステンと酸化亜鉛を含む酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリングにより成膜される。例えば、酸化インジウム酸化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いたスパッタリングにより形成することができる。また、酸化タングステンと酸化亜鉛を含む酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いたスパッタリングにより形成することができる。この他、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、又は金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等用いることができる。なお、第1の電極101または第2の電極105を、透光性を有する電極とする場合、可視光の透過率の低い材料であっても、1nm〜50nm、好ましくは5nm〜20nm程度の厚さで成膜することで、透光性の電極として用いることができる。なお、スパッタリング以外にも、真空蒸着法、CVD法、ゾル−ゲル法を用いて電極を作製することもできる。
【0056】
ただし、発光は、第1の電極101もしくは第2の電極105を通って外部に取り出されるため、第1の電極101および第2の電極105のうち、少なくとも一方は透光性を有する材料で形成されている必要がある。また、第2の電極105よりも第1の電極101における仕事関数が大きくなるように材料を選択することが好ましい。さらに第1の電極101と第2の電極105はそれぞれ一層である必要は無く、2層以上の構成を取っていても良い。
【0057】
第1の誘電体層102と第2の誘電体層104は公知の材料であれば問題ないが、特に誘電率の高い材料を利用することが好ましい。この誘電体層としては有機系の材料であっても良いし、無機系の材料であっても良い。例えば有機系材料であればアセタール樹脂、エポキシ樹脂、メチル・メタアクリレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、及びシアノ・エチル・セルロースを用いることができる。無機系材料であれば窒化アルミ(AlN)、窒化ホウ素(BN)などの窒化物、あるいは、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸リチウム(LiTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、五酸化タンタル(Ta)、酸化ビスマス(Bi)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、ニオブ酸カリウム(KNbO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)などの酸化物が挙げられる。またこれら無機材料の複合材料でも良い。また第1の誘電体層102と第2の誘電体層104は1層である必要は無く、それぞれが2層以上あっても良い。さらに第1の誘電体層102と第2の誘電体層104は10nm〜1000nm、好ましくは300nm〜800nm程度の膜厚が好ましい。
【0058】
発光層103は本発明の方法により作製された材料を利用して作製すれば良い。母体材料には、カルコゲナイド化合物が特に利用され、周期表で第2族から第13族に属する金属元素で構成される酸化物、硫化物、セレン化物などが挙げられる。例えば硫化物であれば硫化亜鉛、硫化銅、硫化アルミニウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、硫化セレン、硫化マグネシウムなどが挙げられる。また酸化物では酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化ガリウムなどが挙げられる。セレン化物ではセレン化亜鉛、セレン化カドミウム、セレン化バリウムなどが挙げられる。またこれらカルコゲナイド化合物同士を2種類以上混合した複合材料として利用することもできる。例えば、SrGa、ZnMgS、YS、ZnSiOなどが挙げられる。発光層の膜厚は10nm〜1000nm、好ましくは30nm〜500nmが好ましい。
【0059】
発光層103では母体材料となるカルコゲナイド化合物の他に、発光中心となる不純物元素を含む材料(以下発光中心材料と表記する)を添加する。添加材料としてはハロゲン化合物が挙げられる。周期表の17族のハロゲン元素、つまりフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、またはアスタチン(At)で構成される化合物である。ハロゲン元素で構成される化合物とは、例えば、上記ハロゲン元素と、周期表において遷移金属である第11族の銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、あるいは、希土類元素であるセリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)などを少なくとも一つ以上含む化合物である。銅化合物としてはフッ化銅(CuF)、塩化銅(CuCl)、臭化銅(CuBr)、ヨウ化銅(CuI)、硫酸銅(CuSO)、酢酸銅((CHCOO)Cu)、硝酸銅(Cu(NO)などがある。またアルミニウムやガリウムのような典型金属を利用したハロゲン化合物でも良い。また典型金属、遷移金属や希土類元素で構成されるハロゲン化合物の複合材料を使用してもよい。このハロゲン化合物である発光中心材料はフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)のドナーと、そのハロゲン化合物を構成する遷移金属、もしくは希土類元素がアクセプターとして機能し、このドナーとアクセプターの再結合により発光するという機構を取る。発光層の添加材料として上記のハロゲン化合物を複数、発光層の母体材料に添加しても良い。
【0060】
なお、本実施の形態に示す発光素子の発光層は、上記実施の形態で示したように、発光中心材料を混合した母体材料と、焼成時の雰囲気となる雰囲気材料と、を別々の坩堝に収容して焼成することで作製された材料を使用している。
【0061】
本発明に係わる発光素子は上記に記載した構成だけではなく、電極に接して設けられた誘電体層は第1と第2の電極のどちらか一方のみに接して形成するだけでも良い。また図4(B)のように基板106上に第1の電極107と第2の電極109の間に発光層108のみを有する誘電体層を含まない構成でも良い。さらには誘電体層を含まない構成で第1と第2の電極間にp型半導体層とn型半導体層を積層し、どちらか一方または両方の半導体層が発光層となる構成であっても良い。
【0062】
本発明に係るエレクトロルミネッセンス材料において、母体材料に発光中心材料を添加する場合には固相反応を用いる。例えば、母体材料としての硫化物に、発光中心材料を添加する場合には、硫化物及び発光中心材料を秤量し、乳鉢で十分に粒径が小さく揃い分散されるように混合し、電気炉で加熱して反応させることにより、硫化物に発光中心材料を含有させる。焼成温度は、500〜2000℃が好ましい。温度が500℃より低すぎる場合は固相反応が進まず、温度が2000℃より高すぎる場合は硫化物が分解してしまうからである。なお、粉末状態で焼成を行ってもよいが、ペレット状態で焼成を行うことが好ましい。また、一度高温で仮焼成を行ってからより低温で発光中心材料を加えて焼成を行っても良い。また、1回目の焼成によって母体材料の焼成を行い、2回目の焼成によって母体材料に発光中心材料を加えて焼成することもできる。さらに固相反応を行う場合、大気圧にて、アルゴン(Ar)などの希ガス雰囲気、窒素(N)雰囲気、酸素(O)雰囲気、または硫化水素(HS)雰囲気で行っても良い。さらには真空状態にて行うことが好ましい場合もあり、石英管等に真空雰囲気で材料を封じ込めて焼成することもできる。また石英管に真空状態で材料を封じ込め、焼成電気炉の温度分布を利用した化学輸送法にて焼成することもできる。なお、本実施の形態において、母体材料の焼成、または、母体材料に発光中心材料を加えた焼成は、上記実施の形態1〜3に示した方法で行う。
【0063】
第1の電極、第2の電極、第1の誘電体層、第2の誘電体層を形成する方法としては、例えば抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着(EB蒸着)、ホットウォール法等の真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング法、MEB法等の物理気相成長法(PVD)、有機金属CVD法、ハイドライド輸送減圧CVD法等の化学気相成長法(CVD)、原子層エピタキシ法(ALE)等を用いることができる。また、ウェット法としてインクジェット法、スピンコート法、印刷法、スプレー法、スキージ法、陽極酸化法、ゾルーゲル法等を用いることができる。
【0064】
発光層を形成する方法としては、例えば抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着(EB蒸着)、ホットウォール法等の真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング法、MEB法等の物理気相成長法(PVD)、有機金属CVD法、ハイドライド輸送減圧CVD法等の化学気相成長法(CVD)、原子層エピタキシ法(ALE)等を用いることができる。また、ウェット法としてインクジェット法、スピンコート法、印刷法、スプレー法、スキージ法、陽極酸化法、ゾルーゲル法等を用いることができる。
【0065】
また図4(C)を用いて構成の異なる発光素子を説明する。
【0066】
基板110の上に、第1の電極111と第2の電極116を有し、第1の電極111と第2の電極116との間に、第1の誘電体層112と第1の発光層113と第2の発光層114、そして第2の誘電体層115とを有する素子構成である。なお、本実施の形態では、第1の電極111と第2の電極116は陽極、陰極のどちらを機能としてもよいものとして以下に説明をする。
【0067】
なお、基板110、第1の電極111、第2の電極116、第1の誘電体層112と第2の誘電体層115は上記に記載されている材料、及び形成方法を利用して形成することができる。また、第1の発光層113、第2の発光層114は、上記実施の形態で示したように、発光中心材料を混合した母体材料と、焼成時の雰囲気となる雰囲気材料と、を別々の坩堝に収容して焼成することで作製された材料を使用している。また、母体材料及び、発光中心材料には、上記に示した材料を用いることができる。
【0068】
第1の発光層、第2の発光層の2つの発光層を有する発光素子を構成する場合、同一の発光色を発光することにより発光強度の向上した発光素子が形成できる。また異なる発光色を発光する場合には混色の発光を有する発光素子を、より幅広く発光スペクトルが得られれば白色発光を有する発光素子を得ることができる。発光層は2つに限定することは無く、必要となれば2つ以上の発光層を有する発光素子を形成することもできる。
【0069】
発光層の構成としては、例えば第1の発光層113において母体材料として硫化亜鉛を使用し、発光中心材料として銀イオン(Ag+1)を利用する。また第1の発光層113上に形成される第2の発光層114では母体材料に硫化亜鉛を使用し、発光中心材料としては銅(I)イオン(Cu+1)と塩素イオン(Cl−1)を利用する。こうすることで一つの発光素子から混色の発光を得ることができる。このように複数の発光層に同一の母体材料を使用して発光素子を形成すれば、母体材料の差異による劣化を防ぐことができ、より寿命を向上することができる。但し、第1と第2の発光層の母体材料は必ずしも同一の母体材料である必要はない。
【0070】
また、発光強度を向上させるために第1の発光層113では母体材料に硫化カルシウムを利用し発光中心材料としてユーロピウム(II)イオン(Eu2+)を、第2の発光層114では母体材料に酸化イットリウムを利用し発光中心材料としてユーロピウム(III)イオン(Eu3+)を使用する。こうすることで単色発光でも強度の向上した発光素子を作製することができる。
【0071】
本実施の形態の発光素子は、本発明の作製方法を用いて作製されたエレクトロルミネッセンス材料を有する発光層が設けられているため、発光輝度や発光効率、寿命を向上させることができる。またエレクトロルミネッセンス材料の作製過程において、余計な不純物を含有させないため、洗浄工程を削減することができ、発光素子の生産のスループットが向上する。
【0072】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明に係わる発光素子を有する発光装置について図5を用いて説明する。
【0073】
本実施の形態で示す発光装置は、トランジスタ等の駆動用の素子を発光素子と同一基板上に設けずに、発光素子を駆動させるパッシブマトリクス型の発光装置である。図5(A)には本発明を適用して作製したパッシブマトリクス型の発光装置の斜視図、図5(B)には、図5(A)において線X−Yの断面図の一部を示す。
【0074】
図5(A)(B)において、基板951上には、第1の電極952と第2の電極956が設けられており、第1の電極952と第2の電極956との間には発光層955が設けられている。なお、発光層955は本発明による方法で作製された無機EL材料を用いて形成されている。
【0075】
第1の電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、図5(B)に示すように隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。また、パッシブマトリクス型の発光装置においても、本発明の発光素子を含むことによって、発光輝度や発光効率、寿命を向上させた発光装置とすることができる。また、図5(A)(B)のような形状の隔壁層954が設けられていることによって、自己整合的に発光層955、第2の電極956を形成することができる。
【0076】
本実施の形態では発光素子の一構成を示したが、それにとらわれることなく実施の形態4で示したように、誘電体層を電極上に形成する構成としても良いし、発光層をp型半導体層とn型半導体層の積層構造にしても良い。さらに有機EL素子の機能分離型の発光素子のように、発光層だけではなく発光層の接する下層として層を設けることもできる。この下層としては発光層の配向性を高める役割や、注入層もしくは輸送層のような役割を果たす。
【0077】
本実施の形態で示す発光装置は、発光層に、母体材料内の余計な不純物が減少した無機EL材料を用いるため、発光輝度や発光効率、寿命を向上させることができる。また無機ELの作製工程において、余計な不純物を含有させないので、洗浄工程を削減することができ、当該無機EL材料を用いて作製される発光装置の生産のスループットを向上させることができる。
【0078】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の発光素子を有する発光装置について図6を用いて説明する。
【0079】
本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の発光装置について説明する。本実施の形態では、画素部に本発明の発光素子を有する発光装置について図6を用いて説明する。なお、図6(A)は、発光装置を示す上面図、図6(B)は図6(A)をA−A’およびB−B’で切断した断面図である。点線で示された601は駆動回路部(ソース側駆動回路)、602は画素部、603は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0080】
なお、図6(B)の引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0081】
次に、断面構造について図6(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0082】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するTFTは、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。なお、TFTの構造は、特に限定されない。スタガ型のTFTでもよいし、逆スタガ型のTFTでもよい。また、TFTに用いられる半導体膜の結晶性についても特に限定されない。非晶質半導体膜を用いてもよいし、結晶性半導体膜を用いてもよい。また、半導体材料についても特に限定されず、無機化合物を用いてもよいし、有機化合物を用いてもよい。
【0083】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより絶縁物614を形成する。
【0084】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、光の照射によってエッチャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となるポジ型のいずれも使用することができる。
【0085】
第1の電極613上には、発光層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。発光層616は本発明の作製方法を用いて形成した無機EL材料を含んで形成されている。第1の電極613および第2の電極617の少なくとも一方は透光性を有しており、発光層616からの発光を外部へ取り出すことが可能である。なお、第1の電極613および第2の電極617の両方を透光性の持つ材料で形成すれば素子基板610側と封止基板604側の両側から発光を取り出すことのできる両面発光装置として利用することができる。
【0086】
なお、第1の電極613、発光層616、第2の電極617の形成方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着(EB蒸着)、ホットウォール法等の真空蒸着法、スパッタリング、イオンプレーティング法、MEB法等の物理気相成長法(PVD)、有機金属CVD法、ハイドライド輸送減圧CVD法等の化学気相成長法(CVD)、原子層エピタキシ法(ALE)等を用いることができる。また、ウェット法としてインクジェット法、スピンコート法、印刷法、スプレー法、スキージ法、陽極酸化法、ゾルーゲル法等を用いることができる。また、各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0087】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。
【0088】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、シール材及び充填材はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルフィルム、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0089】
以上のようにして、本発明の発光素子を有する発光装置を得ることができる。
【0090】
本発明の発光装置は、実施の形態4で示した発光素子を有する。
【0091】
本実施の形態に示す発光装置は、発光層に、母体材料内の余計な不純物が減少した無機EL材料を用いるため、発光輝度や発光効率、寿命を向上させることができる。また無機ELの作製工程において、余計な不純物を含有させないので、洗浄工程を削減することができ、当該無機EL材料を用いて作製される発光装置の生産のスループットを向上させることができる。
【0092】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態6に示す発光装置をその一部に含む本発明の電子機器について説明する。本発明の電子機器は、本発明の作製方法で形成した無機EL材料を用いた発光素子を有する。発光素子を構成する無機EL材料の母体材料内に余計な不純物を減らすことができ、発光輝度や発光効率、寿命を向上させた無機EL材料を得ることができる。また余計な不純物を事前に含有させないので、洗浄のような工程を削減することができる。
【0093】
本発明の発光装置を用いて作製された電子機器として、テレビジョン装置(単にテレビ、テレビ装置、又はテレビジョン受信機ともよぶ)ビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を図7に示す。
【0094】
図7(A)は本発明に係るテレビ装置であり、筐体9101、支持台9102、表示部9103、スピーカー部9104、ビデオ入力端子9105等を含む。このテレビ装置において、表示部9103は、本発明の作製方法で形成した無機EL材料を用いた発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。そのため混色や白色発光素子である場合には液晶のようにカラーフィルターを形成する必要がある。
【0095】
図7(B)は本発明に係るコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス9206等を含む。このコンピュータにおいて、表示部9203は、本発明の作製方法で形成した無機EL材料を用いた発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。
【0096】
図7(C)は本発明に係る携帯電話であり、本体9401、筐体9402、表示部9403、音声入力部9404、音声出力部9405、操作キー9406、外部接続ポート9407、アンテナ9408等を含む。この携帯電話において、表示部9403は、本発明の作製方法で形成した無機EL材料を用いた発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。
【0097】
図7(D)は本発明の係るカメラであり、本体9501、表示部9502、筐体9503、外部接続ポート9504、リモコン受信部9505、受像部9506、バッテリー9507、音声入力部9508、操作キー9509、接眼部9510等を含む。このカメラにおいて、表示部9502は、本発明の作製方法で形成した無機EL材料を用いた発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。
【0098】
以上の様に、本発明の発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0099】
また、本発明の発光装置は、照明装置として用いることもできる。本発明の発光素子を照明装置として用いる一態様を、図8を用いて説明する。
【0100】
図8は、本発明の発光装置をバックライトとして用いた液晶表示装置の一例である。図8に示した液晶表示装置は、筐体501、液晶層502、バックライト503、筐体504を有し、液晶層502は、ドライバIC505と接続されている。また、バックライト503は、本発明の発光装置が用いられおり、端子506により、電流が供給されている。
【0101】
本発明の発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることにより、無機EL特有の長寿命なバックライトが得られる。また、本発明の発光装置は、面発光の照明装置であり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化が可能であり、液晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、発光装置は薄型であるため表示装置の薄型化も可能となる。
【0102】
また、自動車、自転車、船などのヘッドライトとして用いることが可能である。図9は、本発明を適用した発光装置を自動車のヘッドライトとして用いた例である。図9(B)は図9(A)のヘッドライト1000の部分を拡大した断面図である。図9(B)において、光源1011として本発明の発光装置が用いられている。光源1011から出た光は、反射板1012により反射され、外部へ取り出される。図9(B)に示すように、複数の光源を用いることで、より高輝度の光を得ることができる。また、図9(C)は、円筒形状に作製した本発明の発光装置を光源として用いた例である。光源1021からの発光は反射板1022により反射され、外部へ取り出される。
【0103】
図10は、本発明を適用した発光装置を、照明装置である電気スタンドとして用いた例である。図10に示す電気スタンドは、筐体2001と、光源2002を有し、光源2002として、本発明の発光装置が用いられている。本発明の発光装置は、高輝度の発光が可能であるため、細かい作業をする場合など、手元を明るく照らすことが可能である。
【0104】
図11は、本発明を適用した発光装置を、室内の照明装置3001として用いた例である。本発明の発光装置は大面積化が可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、本発明の発光装置は、薄型で低消費電力であるため、薄型化、低消費電力化の照明装置として用いることが可能となる。このように、本発明を適用した発光装置を、室内の照明装置3001として用いた部屋に、図7(A)で説明したような、本発明に係るテレビ装置3002を設置して公共放送や映画を鑑賞することができる。このような場合、両装置は低消費電力であるので、電気料金を心配せずに、明るい部屋で迫力のある映像を鑑賞することができる。
【0105】
照明装置としては、図9、図10、図11で例示したものに限られず、住宅や公共施設の照明をはじめ、様々な形態の照明装置として応用することができる。このような場合において、本発明に係る照明装置は、発光媒体が薄膜状であるので、デザインの自由度が高いので、様々な意匠を凝らした商品を市場に提供することができる。
【0106】
本実施の形態に示す発光装置は、発光層に、母体材料内の余計な不純物が減少した無機EL材料を用いるため、発光輝度や発光効率、寿命を向上させることができる。また無機ELの作製工程において、余計な不純物を含有させないので、洗浄工程を削減することができ、当該無機EL材料を用いて作製される発光装置の生産のスループットを向上させることができる。
【0107】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明を適用して作製した発光素子を有する発光装置について説明する。
【0108】
本実施の形態では、発光装置の一態様として表示装置について、図12〜図15を参照して説明する。図12は表示装置の主要部を示す概略構成図である。
【0109】
図12において、基板410には、第1の電極416と、その電極と交差する方向に伸びる第2の電極418が設けられている。少なくとも、第1の電極416と第2の電極418との交差部には、本発明の作製方法で形成された無機EL材料を用いて作製された発光層が設けられ、発光素子を形成している。図12の表示装置は、第1の電極416と第2の電極418を複数本配置して、画素となる発光素子をマトリクス状に配列させ、表示部414を形成している。この表示部414においては、第1の電極416と第2の電極418の電位を制御して個々の発光素子の発光及び非発光を制御して、動画及び静止画を表示することができる。
【0110】
図12に示した表示装置は、基板410の一方向に延設される第1の電極416と、それと交差する第2の電極418のそれぞれに映像を表示する信号を印加して発光素子の発光及び非発光を選択する。すなわち、画素の駆動は、もっぱら外部回路から与えられる信号で行う単純マトリクス型の表示装置である。このような表示装置は、構成が簡単であるので、大面積化をしても容易に作製をすることができる。
【0111】
なお、対向基板412は必要に応じて設ければ良く、表示部414の位置に合わせて設けることで保護部材とすることもできる。また、保護部材は、板状の硬材としなくても、樹脂フィルム若しくは樹脂材料を塗布して代用することもできる。第1の電極416及び第2の電極418は基板410の端部に引き出され、外部回路と接続する端子を形成している。すなわち第1の電極416及び第2の電極418は基板410の端部で第1と第2のフレキシブル配線基板420、422と接続しており、フレキシブル配線基板を介して外部回路と接続している。外部回路としては、映像信号を制御するコントローラ回路の他、電源回路、チューナ回路などが含まれる。
【0112】
図13は、図12に示した表示部414の構成を示す部分拡大図を示す。基板510に形成された第1の電極516の側端部には隔壁層524が形成されている。そして、少なくとも第1の電極516上にはEL層526が形成されている。ここで、EL層526は、第1の誘電体層と、第2の誘電体層と、第1の誘電体層と第2の誘電体層の間に形成された実施の形態4に示した発光層を含む。または、EL層526を、1層の誘電体層と、実施の形態4に示した発光層からなる構成としても良い。更には、EL層526を、誘電体層を設けず、p型半導体層とn型半導体層の積層からなる発光層としても良い。第2の電極518は、EL層526上に設けられている。第2の電極518は、第1の電極516と交差するように形成されている。隔壁層524は、第1の電極516と第2の電極518の間で短絡が起こらないように絶縁材料で形成されている。隔壁層524が第1の電極516の端部を覆う部位では、段差が急峻とならないように隔壁層524の側端部に勾配を持たせ、所謂テーパー形状としている。隔壁層524をこのような形状とすることで、EL層526や第2の電極518の被覆性が向上し、ひび割れや断裂などの不良を無くすことができる。
【0113】
図14は、図12に示した表示部414の平面図であり、基板1210上に第1の電極1216、第2の電極1218、隔壁層1224、EL層1226の配置を示している。補助電極1228は第2の電極1218をインジウム錫酸化物、酸化亜鉛などの透過性を有する酸化物の導電膜で形成する場合に、抵抗損失を低減するために設けると好ましいものである。この場合、補助電極1228はチタン、タングステン、クロム、タンタルなどの高融点金属、若しくは高融点金属とアルミニウム、銀などの低抵抗金属とを組み合わせて形成すると良い。
【0114】
図14において、A−B線及びC−D線に沿った断面図を図15(A)(B)それぞれ示す。図15(A)は図13における第1の電極416が配列する断面図であり、図15(B)は図13における第2の電極418が配列する断面図を示す。基板1210上の第1の電極1216と第2の電極1218の交差部にEL層1226が形成された発光素子が形成されている。図15(B)で示す補助電極1228は隔壁層1224上にあって、第2の電極1218と接触するように設けられている。補助電極1228を隔壁層1224上に設けることにより、第1の電極1216と第2の電極1218の交差部に形成される発光素子を遮光することがないので、発光した光を有効に利用することができる。また、補助電極1228が第1の電極1216と短絡してしまうことを防ぐことができる。
【0115】
図15(B)では、対向基板1212に色変換層1230を配設した一例を示している。色変換層1230は、EL層1226で発光した光を波長変換して発光色を異ならせるためのものである。この場合、EL層1226で発光する光は、エネルギーの高い青色若しくは紫外光であることが好ましい。色変換層1230として、赤色、緑色、青色に変換するものをそれぞれ配列させれば、RGBカラー表示を行う表示装置とすることができる。また、色変換層1230を着色層(カラーフィルタ)に置き換えることもできる。その場合は、EL層1226は白色発光するように構成すれば良い。充填材1232は基板1210と対向基板1212を固定するものであり適宜設ければ良い。
【0116】
本実施の形態に示す発光装置は、発光層に、母体材料内の余計な不純物が減少した無機EL材料を用いるため、発光輝度や発光効率、寿命を向上させることができる。また無機ELの作製工程において、余計な不純物を含有させないので、洗浄工程を削減することができ、当該無機EL材料を用いて作製される発光装置の生産のスループットを向上させることができる。
【実施例1】
【0117】
本実例では、本発明に係る無機EL材料の作製方法に関し図1(A)を利用して具体的に説明する。
【0118】
図1(A)のように封管中に、坩堝に収容した母体材料と雰囲気材料をそれぞれ配置した場合を説明する。母体材料としては硫化亜鉛ZnSと砒化ガリウム(GaAs)を混合したものを用意し坩堝に収容する。雰囲気材料として硫化アルミニウム(Al)を坩堝に収容する。このとき各材料は粒径が大きければ粉砕機等を利用して粒径を細かくする。また、母体材料としてZnSとGaAsを混合しているので、お互いがよく分散した状態にする。
【0119】
石英管に材料が収容された坩堝を配置し、真空に排気しながらバーナーで熱することで封管とする。こうしてできた封管を温度分布のある管状炉において焼成する。ZnSとGaAsとAlの沸点はそれぞれ1830℃、1240℃、1550℃程度である。Alにより硫黄雰囲気にしたいため、一番沸点の高いZnSが母体材料なので、雰囲気材料は低い温度の位置に設けることが好ましい。各材料の蒸気圧を考慮する必要もあるが、雰囲気材料が先に気体となり硫黄雰囲気を作る必要がある。焼成条件は、石英が反応しないような1200〜1300℃程度の温度が好ましい。またこの温度による保持時間は2〜5時間程度が好ましい。こうすることによって亜鉛チオガレート(ZnGa)を作製することができる。
【0120】
雰囲気材料と母体材料は、坩堝を別にして焼成したため、母体材料への雰囲気材料の混入は避けられているはず。しかしながら、母体材料にGaAsを使用していることから焼成後に洗浄をする必要がある。まず純水で洗浄を行い、次に酢酸(CHCOOH)で洗浄する。最後に洗浄で使用した酢酸を除去するため再度純水で洗浄し、乾燥を行う。乾燥は排気しながら100〜200℃で1〜5時間行う。これによって、本発明の無機EL材料を得ることができる。
【0121】
本実施例で作製された無機EL材料では母体材料内に余計な不純物を減らすことができ、発光輝度や発光効率、寿命を向上を得ることができる。
【実施例2】
【0122】
本実施例では、本発明に係る無機EL材料の作製方法に関し図1(A)を利用して具体的に説明する。
【0123】
母体材料には銅(Cu)と塩素(Cl)で活性化された硫化亜鉛(ZnS:Cu,Cl)を用いる。この母体材料をアルミナ坩堝に収容し、雰囲気材料として塩化アンモニウム(NHCl)あるいは塩化カリウム(KCl)を同じくアルミナ坩堝に収容する。この2つの坩堝に収容した材料を石英へ封管する。焼成温度は600〜800℃程度で、保持時間は1〜5時間である。塩化アンモニウムは340℃程度に融点を持ち520℃に沸点を持つ。塩化カリウムは775℃に沸点を持つ。本実施例において、雰囲気材料は、母体材料よりも低温で気体となるため、封管内が雰囲気材料の雰囲気となる。雰囲気材料は母体材料の結晶性を上げるために働き、温度均一性のあるマッフル炉で焼成を行った場合、母体材料はその坩堝内で結晶性が向上する。温度分布のある横型管状炉を使用して焼成した場合、雰囲気材料はキャリアガスとして働き、母体材料は、雰囲気材料より低温部で、結晶性の良い、または単結晶の、ZnS:Cu,Clを得ることができる。
【0124】
これによって母体材料中に雰囲気材料を含有することなく、結晶性が良く単相のZnS:Cu,Clを得ることができる。また、洗浄工程を削減することができる。本発明の作製方法を用いると、結晶性の良い母体材料、または単結晶の母体材料が得られるので、従来の作製方法を用いて焼成されたZnS:Cu,Clよりも配向性が向上し、発光輝度や発光効率、さらには寿命を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の無機EL材料を封管により焼成する方法を説明する図。
【図2】本発明の無機EL材料を開管により焼成する方法を説明する図。
【図3】本発明の無機EL材料を封管により焼成する方法を説明する図。
【図4】本発明の発光素子を説明する図。
【図5】本発明の発光装置を説明する図。
【図6】本発明の発光装置を説明する図。
【図7】本発明の電子機器を説明する図。
【図8】本発明の電子機器を説明する図。
【図9】本発明の照明器具を説明する図。
【図10】本発明の照明器具を説明する図。
【図11】本発明の照明器具を説明する図。
【図12】本発明の発光装置を説明する図
【図13】本発明の発光装置を説明する図。
【図14】本発明の発光装置を説明する図。
【図15】本発明の発光装置を説明する図。
【符号の説明】
【0126】
100 基板
101 電極
102 誘電体層
103 発光層
104 誘電体層
105 電極
106 基板
107 電極
108 発光層
109 電極
110 基板
111 電極
112 誘電体層
113 発光層
114 発光層
115 誘電体層
116 電極
2100 封管
2101 坩堝
2102 坩堝
2103 母体材料
2104 雰囲気材料
2105 封管
2106 オリフィス
2107 母体材料
2108 雰囲気材料
2109 封管
2110 坩堝
2111 坩堝
2112 坩堝
2113 母体材料
2114 雰囲気材料
2115 雰囲気材料
2116 封管
2117 オリフィス
2118 母体材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内に、第1の坩堝に収容された第1の材料と、焼成時に反応容器内で気体となる第2の坩堝に収容された第2の材料を配設し、
前記反応容器内を減圧状態として、密閉封止し、
該密閉封止した反応容器を加熱して、前記第2の材料を蒸発させつつ、前記第1の材料を焼成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料の作製方法。
【請求項2】
オリフィスによって隔てられた第1の領域と第2の領域とを含む反応容器内に、
前記第1の領域に収容された第1の材料と、焼成時に反応容器内で気体となる前記第2の領域に収容された第2の材料を配設し、
前記反応容器内を減圧状態として、密閉封止し、
該密閉封止した反応容器を加熱して、前記第2の材料を蒸発させつつ、前記第1の材料を焼成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料の作製方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1の材料は第1の坩堝に、前記第2の材料は第2の坩堝に収容することを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料の作製方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記第2の材料は、焼成後には不要となる不純物を含み、
該密閉封止した反応容器を加熱して、前記第2の材料を蒸発させつつ、前記第1の材料を焼成することによって、
前記反応容器内の前記第1の材料と前記第2の材料とは異なる位置に、前記不純物の濃度が前記第2の材料よりも低い第3の材料を形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料の作製方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記第3の材料は単結晶であることを特徴とすることを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料の作製方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5において、
前記反応容器内の前記第3の材料を形成する位置に単結晶物質を設置することを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料の作製方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記第2の材料は、周期表第15族、第16族及び第17族から選択された元素を含む化合物であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料の作製方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一において、
焼成前の密閉封止した前記反応容器の雰囲気は真空もしくは不活性ガスであることを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料の作製方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一において、
前記第1の材料の方が前記第2の材料よりも蒸気圧が低く、
前記反応容器内で前記第1の材料よりも温度の低い位置に前記第2の材料を配置することを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料の作製方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか一において、
前記第1の材料の方が前記第2の材料よりも蒸気圧が高く、
前記反応容器内で前記第1の材料よりも温度の高い位置に前記第2の材料を配置することを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料の作製方法。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一において、
前記第1の材料と、前記第2の材料を、分離して前記反応容器内に収容することを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料の作製方法。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一において、
前記第1の材料及び前記第2の材料は無機物質であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス材料の作製方法。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一によって作製された材料を使用したことを特徴とする発光素子。
【請求項14】
請求項1乃至請求項12のいずれか一によって作製された材料を使用した発光素子を有することを特徴とする発光装置。
【請求項15】
請求項14に記載の発光装置は照明装置であることを特徴とする発光装置。
【請求項16】
請求項15に記載の発光装置を表示部に用いたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−7757(P2008−7757A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140978(P2007−140978)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】