説明

エレクトロルミネッセンス素子、画素回路、表示装置、および露光装置

【課題】長寿命化を実現する画素回路およびその画素回路を備える表示装置を提供する。
【解決手段】互いに交差するように配列された複数のゲートラインおよび複数のソースラインの交点に対応してそれぞれ配設される画素回路10は、第1の発光素子103および第2の発光素子103と、第1の発光素子103および第2の発光素子105の陽極にそれぞれ接続され、第1の発光素子103および第2の発光素子105のそれぞれを駆動する第1のトランジスタ104および第2のトランジスタ106と、第2の発光素子105の陰極、および第1のトランジスタ104の第1の発光素子103と接続されていない側と接続される第1の電源ライン101と、第1の発光素子103の陰極、および第2のトランジスタ106の第2の発光素子105と接続されていない側と接続され、第1の電源ライン101とはその極性が異なる第2の電源ライン102とを備えており、第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性が所定の時間間隔で切り替えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス(EL)素子、エレクトロルミネッセンス素子などの自発光素子を具備する画素回路、その画素回路を備える表示装置、および露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、CRT(Cathode Ray Tube)に代わり、FPD(Flat Panel Display)に対する関心が高まってきている。代表的なFPDとしては、LCD(Liquid Crystal Diplay)およびPDP(Plasma Display Panel)が既に実用化されている。しかし、これらのFPDには、次のような問題点があることが指摘されている。
【0003】
すなわち、LCDはそれ自体が非発光であるため、高輝度のバックライトを必要とし、その結果、消費電力が高くなる傾向がある。また、視野角および応答速度に関しても、CRTと比べて、LCDは劣っている。他方、PDPは自発光素子を用いており、しかも、視野角および応答速度についてもCRTと同等以上の性能を有している。しかしながら、PDPの場合、駆動するために高電圧が必要となるため、低消費電力化を実現することが困難であるという問題がある。
【0004】
LCDおよびPDPが上記のような問題を有しているのに対して、有機ELデバイスは、これらの問題を解決しうる可能性がある。そのため、次世代のFPDの候補として、有機ELデバイスを備える表示装置が注目されている。
【0005】
有機ELデバイスは、通常、次のような方法で作成される。まず、洗浄されたガラス、石英、またはプラスティックなどの支持基板上に、陽極(アノード)を形成し、パターニングを行う。一般的に、陽極としては、仕事関数の大きいITO(Indium Tin Oxide)が選ばれるが、その他の金属であってもよい。陽極の形成には、通常、スパッタ法が用いられる。
【0006】
このようにして陽極を形成した後、有機EL層の形成を行う。一般的に、低分子有機ELの場合であれば、真空蒸着法により有機EL層が形成され、他方、高分子有機ELの場合であれば、スピンコート法またはインクジェット法により形成される。ここで、インクジェット法は、有機ELの塗り分けが必要な場合に選択される。
【0007】
なお、有機EL層を形成する前後において、発光効率を高めるために、中間層(インターレイヤー)を形成する場合もある。
【0008】
有機EL層の形成後、陰極(カソード)を真空蒸着などによって形成し、封止する。これにより、有機ELデバイスが完成する。
【0009】
このようにして作成される有機ELデバイスを表示装置に適用する場合、一般的には、有機ELデバイスがマトリクス状に配設される。有機ELデバイスとともに薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を形成し、このTFTによって有機ELを駆動するものをアクティブマトリクス駆動型の表示装置と呼び、TFTを形成せずに電極のみで駆動するものをパッシブマトリクス駆動型の表示装置と呼ぶ。
【0010】
有機ELデバイスの場合、陽極に対して陰極よりも高い電圧を印加することによって、有機ELに電流が流れて発光する。陰極に対して陽極よりも高い電圧を印加した場合では、電流がほとんど流れず発光しないという、いわゆるダイオード特性を示す。そのため、有機ELデバイスは、直流電圧により駆動されるのが一般的である。
【0011】
有機EL素子が、その優れた特性にも関わらず、実用化が困難とされている理由の一つとして、寿命が短いことが挙げられる。有機EL素子の寿命が短いことの原因は、直流駆動に伴って、有機EL素子に電荷が蓄積されることであると一般的に考えられている。そこで、有機EL素子の寿命を延ばすために、1つの画素に2つの有機EL素子を設け、一方が発光している場合には他方を発光させないようにし、その発光していない方の有機EL素子に逆バイアスをかけるような交流駆動を行う駆動方法および表示装置が提案されている。
【0012】
例えば、2つの有機EL素子を逆並列に接続し、これら2つの有機EL素子間で、順方向電圧と逆バイアス電圧とを交互に印加する駆動装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、共通の交流電源回路から、一方の有機EL素子の対向電源端子と他方の有機EL素子の対向電源端子とに、逆極性の交流電圧を印加するように構成された表示装置が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【特許文献1】特開2001−203077号公報
【特許文献2】特開2005−50797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記のような従来の駆動方法および表示装置の場合、次のような問題があった。すなわち、特許文献1に開示されている駆動方法の場合、パッシブマトリクス駆動型の表示装置に適用することはできるものの、アクティブマトリクス駆動型の表示装置に適用する点については、特許文献1に何ら明確に示されておらず、したがって、どのような構成にすべきかが不明であるという問題がある。
【0014】
また、特許文献2に開示されている表示装置の場合、直流で駆動する場合と比べて、有機ELパネルの配線数が増加するという問題がある。このような配線数の増加は、開口率の低下をもたらすとともに、歩留まりの低下をもたらす一因となり得る。
【0015】
さらに、有機ELパネルを交流で駆動することによって、消費電力が増加するという問題、および駆動する周波数によっては画像表示のときにフリッカとして認識されるおそれがあるという問題も生じる。
【0016】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、配線数の増加、消費電力の増加、およびフリッカの発生を伴うことなく、有機EL素子を始めとする発光素子の寿命を直流駆動の場合と比べて延ばすことができる画素回路、およびその画素回路を備えるアクティブマトリクス駆動型の表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決するために、本発明の画素回路は、互いに交差するように配列された複数のゲートラインおよび複数のソースラインの交点に対応してそれぞれ配設される画素回路において、第1の発光素子および第2の発光素子と、前記第1の発光素子および前記第2の発光素子の陽極にそれぞれ接続され、前記第1の発光素子および前記第2の発光素子のそれぞれを駆動する第1のトランジスタおよび第2のトランジスタと、前記第2の発光素子の陰極、および前記第1のトランジスタの前記第1の発光素子と接続されていない側と接続される第1の電源ラインと、前記第1の発光素子の陰極、および前記第2のトランジスタの前記第2の発光素子と接続されていない側と接続され、前記第1の電源ラインとはその極性が異なる第2の電源ラインとを備え、前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性が切り替えられるように構成されている。
【0018】
このように構成することにより、第1の発光素子および第2の発光素子の何れか一方に順バイアスがかかり、他方に逆バイアスがかかることになるため、その一方が発光し、他方では蓄積された電荷が解放されることにより低下した特性を回復させることができる。その結果、長寿命化を図ることができる。
【0019】
上記発明に係る画素回路は、所定の時間間隔で、前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性が切り替えられるように構成されていてもよい。
【0020】
また、上記発明に係る画素回路は、電源が投入された場合に、前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性が、前回電源が切断された場合とは異なる極性となるように構成されていてもよい。
【0021】
また、上記発明に係る画素回路は、前記第1の発光素子および前記第2の発光素子の劣化状態に応じて、前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性が切り替えられるように構成されていてもよい。
【0022】
また、上記発明に係る画素回路は、前記第1の発光素子および前記第2の発光素子の輝度の低下に応じて、前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性が切り替えられるように構成されていてもよい。
【0023】
また、上記発明に係る画素回路は、前記第1の発光素子および前記第2の発光素子を流れる電流の低下に応じて、前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性が切り替えられるように構成されていてもよい。
【0024】
また、本発明の表示装置は、互いに交差するように配列された複数のゲートラインおよび複数のソースラインと、当該複数のゲートラインおよび当該複数のソースラインの交点に対応してそれぞれ配設される画素回路とを備えており、前記画素回路のそれぞれは、第1の発光素子および第2の発光素子と、前記第1の発光素子および前記第2の発光素子の陽極にそれぞれ接続され、前記第1の発光素子および前記第2の発光素子のそれぞれを駆動する第1のトランジスタおよび第2のトランジスタと、前記第2の発光素子の陰極、および前記第1のトランジスタの前記第1の発光素子と接続されていない側と接続される第1の電源ラインと、前記第1の発光素子の陰極、および前記第2のトランジスタの前記第2の発光素子と接続されていない側と接続され、前記第1の電源ラインとはその極性が異なる第2の電源ラインとを具備し、前記画素回路のそれぞれが具備する前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性を切り替える切替回路を備える。
【0025】
上記発明に係る表示装置が、電源ラインの極性の切替を指示する切替信号を、所定の時間間隔で前記切替回路に出力するタイマーを更に備え、前記切替回路が、前記切替信号の入力に応じて、前記画素回路のそれぞれが具備する前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性を切り替えるように構成されていてもよい。
【0026】
また、上記発明に係る表示装置において、前記切替回路は、電源が投入された場合に、前回電源が切断された場合とは異なる極性となるように、前記画素回路のそれぞれが具備する前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性を切り替えるように構成されていてもよい。
【0027】
また、上記発明に係る表示装置が、前記画素回路のそれぞれが具備する前記第1の発光素子および前記第2の発光素子の劣化状態を検出する発光素子劣化検出手段を更に備え、 前記切替回路が、前記発光素子劣化検出手段による検出結果に応じて、前記画素回路のそれぞれが具備する前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性を切り替えるように構成されていてもよい。
【0028】
また、上記発明に係る表示装置において、前記発光素子劣化検出手段が、前記画素回路のそれぞれが具備する前記第1の発光素子および前記第2の発光素子の輝度にしたがって、劣化状態を検出するように構成されていてもよい。
【0029】
また、上記発明に係る表示装置において、前記発光素子劣化検出手段が、前記画素回路のそれぞれが具備する前記第1の発光素子および前記第2の発光素子を流れる電流にしたがって、劣化状態を検出するように構成されていてもよい。
【0030】
また、上記発明に係る表示装置における前記画素回路のそれぞれにおいて、前記第1の発光素子および前記第2の発光素子は、列方向(または行方向)に並べて配設されており、前記画素回路が、前記第1の発光素子および前記第2の発光素子のそれぞれが行方向(または列方向)で一列とならないようにマトリクス状に配設されていてもよい。
【0031】
また、本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、第1の発光素子と、この第1の発光素子を駆動する第1のトランジスタから構成される第1の発光単位と、第2の発光素子と、この第2の発光素子を駆動する第2のトランジスタから構成される第2の発光単位と、第1の発光単位の陽極側と第2の発光単位の陰極側に接続された第1の電源ラインと、第1の発光単位の陰極側と第2の発光単位の陽極側に接続された第2の電源ラインとを有し、第1の発光素子と第2の発光素子が1つの画素を構成し、更に、第1の電源ラインおよび第2の電源ラインの極性が切り替えられるように構成したものである。
【0032】
このように構成することにより、第1の発光素子および第2の発光素子の何れか一方に順バイアスがかかり、他方に逆バイアスがかかることになるため、その一方が発光し、他方では蓄積された電荷が解放されることにより低下した特性を回復させることができる。その結果、長寿命のエレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
【0033】
また本発明は、上述のエレクトロルミネッセンス素子によって構成された発光装置、および露光装置を含む。
【0034】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、極めて寿命を長くすることができるため、発光装置や露光装置の製品寿命を長くすることが可能となる。
【0035】
また本発明は、露光装置において電源ラインの極性が、露光の1ラインの単位に切替えられるように構成したものを含む。
【0036】
通常、露光装置の1ライン期間は数百μs程度であるから、これによって発光素子には周期的に逆バイアスが印加されることになり、発光素子の寿命を伸ばすことが可能となる。
【0037】
また本発明は、露光装置において電源ラインの極性が、画像形成の1ページ単位に切替えられるように構成したものを含む。
【0038】
画像形成においては、通常ページ間に所定の間隔が設けられているから、この期間に発光素子の切替を行うことで、切替タイミングを簡易な構成で行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、配線数の増加、消費電力の増加、およびフリッカの発生を伴うことなく、有機EL素子を始めとする発光素子の寿命を直流駆動の場合と比べて延ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0041】
(実施の形態1)
[表示装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る表示装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、表示装置1は、EL表示パネル20と、このEL表示パネル20を駆動するための制御回路12、ゲートドライバ13、ソースドライバ14、切替回路21、およびタイマー22とを備えている。
【0042】
EL表示パネル20は、アクティブマトリクス駆動型の有機EL表示素子である。このEL表示パネル20には、ゲートライン110およびソースライン111が交互に交差するように配設されるとともに、それらのゲートライン110およびソースライン111の交点に対応して画素回路10が配設されている。これにより、複数の画素回路10が、マトリクス状に配設されることになる。
【0043】
ゲートライン110およびソースライン111は、ゲートドライバ13およびソースドライバ14によってそれぞれ駆動される。また、ゲートドライバ13およびソースドライバ14は、制御回路12によってその動作が制御される。
【0044】
切替回路21は、後述するように構成された画素回路10が有する2つの電源ラインの極性を切り替えるための回路である。また、タイマー22は、そのような電源ラインの極性の切替を指示するための切替信号を、所定の時間間隔で切替回路21に対して出力するように構成されている。
【0045】
[画素回路の構成]
次に、上述したようにしてマトリクス状に配設されている画素回路10の構成について説明する。
【0046】
図2は、本発明の実施の形態1に係る表示装置1が備える画素回路10の構成の一例を示す回路図である。図2に示すように、画素回路10は、ダイオード特性を有する発光素子である第1の有機EL素子103および第2の有機EL素子105と、これら第1の有機EL素子103および第2の有機EL素子105の陽極にそれぞれ接続され、それらの有機EL素子のそれぞれを駆動する第1のトランジスタ104および第2のトランジスタ106と、これら第1のトランジスタ104および第2のトランジスタ106の動作を制御する制御用トランジスタ107とを備えている。この制御用トランジスタ107は、ゲートライン110およびソースライン111と接続されている。
【0047】
また、画素回路10は、第1の電源ライン101および第2の電源ライン102を備えている。この第1の電源ライン101には、第2の有機EL素子105の陰極、および第1のトランジスタ104の第1の有機EL素子103と接続されていない側が接続され、また、第2の電源ライン102には、第1の有機EL素子103の陰極、および第2のトランジスタ106の第2の有機EL素子105と接続されていない側が接続されている。
【0048】
これらの第1の電源ライン101および第2の電源ライン102は、表示装置1の動作中において、常にその極性が異なるように構成される。すなわち、第1の電源ライン101がHighの場合は第2の電源ライン102がLowとなり、第1の電源ライン101がLowの場合は第2の電源ライン102がHighとなる。
【0049】
即ち、この構成を発光素子の観点でみると、第1の発光素子(有機EL素子103)と、この第1の発光素子を駆動する第1のトランジスタ104から構成される第1の発光単位と、第2の発光素子(有機EL素子105)と、この第2の発光素子を駆動する第2のトランジスタ106から構成される第2の発光単位と、第1の発光単位の陽極側と第2の発光単位の陰極側に接続された第1の電源ライン101と、第1の発光単位の陰極側と前記第2の発光単位の陽極側に接続された第2の電源ライン102とを有し、第1の発光素子(有機EL素子103)と第2の発光素子(有機EL素子105)が1つの画素を構成し(図12を参照)、更に、第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性が切り替えられるように構成されている。
【0050】
なお、上述した構成に対して、容量素子を追加するようにしてもよい。図3は、本発明の実施の形態1に係る表示装置1が備える画素回路10の構成の他の例を示す回路図である。図3に示すように、第1のトランジスタ104と第1の電源ライン101との間に容量素子108が、第2のトランジスタ106と第2の電源ライン102との間に容量素子109がそれぞれ設けられている。
【0051】
このように構成された画素回路10において、容量素子108は、制御用トランジスタ107のドレインと第1のトランジスタ104のゲートとの間の電圧を保持することができればよく、したがって、第1のトランジスタ104と第2の電源ライン102との間に設けられるようにしてもよい。この点については容量素子109の場合も同様であり、容量素子109は、第2のトランジスタ106と第1の電源ライン101との間に設けられるようにしてもよい。
【0052】
なお、これらの容量素子108および109を設けるか否かについては、設計の際の必要に応じて決定される。
【0053】
また、トランジスタ104,106,および107の半導体層は、例えばアモルファスシリコン、ポリシリコン、単結晶シリコン、無機化合物、または有機化合物などから構成される。
【0054】
ところで、本実施の形態において、トランジスタ104,106,および107は、ホールがキャリアであるPチャネル型のトランジスタにより構成されている。しかし、これに限定されるわけではなく、図4に示すように、電子がキャリアとなるNチャネル型のトランジスタによってこれらのトランジスタが構成されていてもよい。
【0055】
図4は、本発明の実施の形態1に係る表示装置1が備える画素回路10の構成の他の例を示す回路図である。図4に示すとおり、この場合の画素回路10は、Nチャネル型の第1のトランジスタ204、第2のトランジスタ206、および制御用トランジスタ207を備えている。そして、第1のトランジスタ204は第1の有機EL素子203を、第2のトランジスタ206は第2の有機EL素子205を駆動し、また、制御用トランジスタ207がこれらの第1のトランジスタ204および第2のトランジスタ206の動作を制御する。制御用トランジスタ207は、ゲートライン210およびソースライン211と接続されている。
【0056】
また、この画素回路10は、第1の電源ライン201および第2の電源ライン202を備えている。
【0057】
なお、Pチャネル型のトランジスタで構成されている場合と同様に、容量素子208、209を追加した構成としてもよい。そのような構成を示す回路図は図5に示されている。
【0058】
このように、Pチャネル型およびNチャネル型の何れのトランジスタも用いることが可能である。ただし、製造プロセスを考慮した場合、Pチャネル型およびNチャネル型の両方で構成するよりも、何れか一方のみで構成する方が、製造コスト、タクトタイム、および歩留まり等の観点から好ましい。
【0059】
[表示装置の動作]
以上のように構成された表示装置1において、制御回路12は、外部の装置から入力される映像信号に基づいて、ソースドライバ14に対して出力する映像信号を生成する。そして、制御回路12は、そのようにして生成された映像信号をソースドライバ14に出力すると共に、ゲートドライバ13及びソースドライバ14に制御信号を出力する。その結果、ゲートドライバ13が、各画素回路10が備える制御用トランジスタ107をオンにするための電圧に対応する走査信号を、ゲートライン110に出力することにより、各画素回路10の制御用トランジスタ107を順次オンにする。他方、ソースドライバ14が、そのタイミングに合わせて、ソースライン111を介し、各画素回路10に映像信号を書き込む。その結果、各画素回路10の第1の有機EL素子103または第2の有機EL素子105に対し、映像信号に応じた電流が流れる。これにより、各画素回路10の第1の有機EL素子103または第2の有機EL素子105が発光し、その結果、EL表示パネル20において、映像信号に対応する画像が表示される。
【0060】
第1の有機EL素子103および第2の有機EL素子105の何れに映像信号に応じた電流が流れ、そして、こられのうちの何れの有機EL素子が発光するのかは、第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性により異なる。以下、第1の有機EL素子103および第2の有機EL素子105の何れがどのようなタイミングで発光するのかについて説明する。
【0061】
図6は、本発明の実施の形態1に係る表示装置1の動作例を示すタイミングチャートである。図6に示すように、期間P1において、第1の電源ライン101の極性はHighに、第2の電源ライン102の極性はLowに、それぞれ設定されている。そして、この期間P1において、ゲートドライバ13がゲートライン110に走査信号を出力することによって、各画素回路10の制御用トランジスタ107をオンにする。なお、本実施の形態においては、制御用トランジスタ107はPチャネル型であるため、ゲートライン110がLow電圧となるように走査信号の出力がなされる。そして、このタイミングに合わせて、ソースドライバ14がソースライン111に映像信号を出力することによって、画素回路10に映像信号が書き込まれる。
【0062】
ここで、第1の有機EL素子103の陰極と第2の電源ライン102とは同電位であり、期間P1において、その陰極の電位は陽極の電位と比べて低くなるため、第1の有機EL素子103に順バイアスがかかり、電流が流れる。その結果、第1の有機EL素子103が発光する。他方、第2の有機EL素子105の陰極と第1の電源ライン101とは同電位であり、期間P1において、その陰極の電位は陽極の電位と比べて高くなるため、第2の有機EL素子105に逆バイアスがかかる。その結果、第2の有機EL素子105に蓄積されている電荷が解放されることになるため、電荷の蓄積に起因して低下した特性を回復させることができる。
【0063】
このような期間P1が所定時間続いた後、タイマー22が、切替回路21に対して切替信号を出力する。切替回路21は、この切替信号の入力を受けた場合、第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性を切り替える。その結果、第1の電源ラインの極性がLowとなり、第2の電源ライン102の極性がHighとなる。これらの動作が、期間P2においてなされる。
【0064】
期間P2の終了後、第1の電源ラインの極性がLowに、第2の電源ライン102の極性がHighに設定される期間P3が開始される。この期間P3においては、第1の有機EL素子103に逆バイアスがかかり、その結果、第1の有機EL素子103の低下した特性が回復される。他方、第2の有機EL素子105に順バイアスがかかり、その結果、第2の有機EL素子105に電流が流れる。これにより、第2の有機EL素子105が発光する。
【0065】
タイマー22は、期間P1の場合と同様に、期間P3が所定時間続いた後に切替信号を切替回路21に対して出力する。これ以降、表示装置1は同様に動作する。その結果、第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性の切替が、所定の時間間隔で行われ、第1の有機EL素子103と第2の有機EL素子105とが交互に発光することになる。
【0066】
なお、図6に示す期間P1および期間P3が、1フレーム時間よりも長い時間となるように、タイマー22が、切替回路21に対して切替信号を出力することが好ましい。これにより、フリッカの発生を防止することができる。
【0067】
[比較例]
図7は、比較例である従来の表示装置が備える画素回路の構成を示す回路図である。図7に示すとおり、比較例の表示装置が備える画素回路300は、有機EL素子313と、この有機EL素子313を駆動するトランジスタ314と、トランジスタ314の動作を制御するための制御用トランジスタ315と、保持用の容量素子316とから構成される。トランジスタ314の有機EL素子313と接続されていない側は第1の電源ライン311と接続されており、また、有機EL素子313の陰極は第2の電源ライン312と接続されている。さらに、制御用トランジスタ315は、ゲートライン317およびソースライン318と接続されている。
【0068】
比較例の表示装置は、以上のように構成された画素回路300をマトリクス状に配置したEL表示パネル、並びに、そのEL表示パネルを駆動するための周知のゲートドライバおよびソースドライバなどを備えている。
【0069】
図8は、比較例の表示装置の動作例を示すタイミングチャートである。図8に示すように、第1の電源ライン311はHighに設定され、第2の電源ライン312はLowに設定されている。この場合、有機EL素子313に順バイアスがかかることになるため、電流が流れ、その結果、有機EL素子313が発光することになる。
【0070】
制御用トランジスタ315はPチャネル型であるため、ゲートライン317がLow電圧のときに導通状態となり、ソースライン318の電圧がトランジスタ314に印加される。その結果、その電圧に応じた電流が、トランジスタ314を介して、有機EL素子313に供給され、有機EL素子313が発光する。
【0071】
このように、比較例の表示装置の場合、発光するのは有機EL素子313のみであるため、使用時間にしたがって有機EL素子313に電荷が蓄積され、有機EL素子313の劣化が進むことになる。
【0072】
これに対し、本実施の形態の表示装置1の場合、上述したように、ある期間において、一方の有機EL素子が発光し、他方が蓄積された電荷を解放することにより低下した特性を回復させることになる。これにより、表示装置の寿命が、従来の表示装置と比べて、著しく延びることになる。
【0073】
また、有機EL素子を2つ備える本実施の形態の表示装置1の場合であっても、比較例の表示装置の場合と同一の配線数で足りる。そのため、開口率および歩留まりの低下を招くようなことはない。
【0074】
さらに、従来の交流駆動による表示装置の場合のように、消費電力の増加およびフリッカの発生という問題が生じることもない。
【0075】
(実施の形態2)
上述したように、実施の形態1に係る表示装置は、所定の時間間隔で、第1の電源ラインおよび第2の電源ラインの極性を切り替えるように構成されている。これに対し、実施の形態2に係る表示装置は、電源が投入された場合に、後述するとおり、前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性が、前回電源が切断された場合とは異なる極性となるように構成されている。
【0076】
図9は、本発明の実施の形態2に係る表示装置の構成を示すブロック図である。図9に示すように、実施の形態2に係る表示装置2は、第1の電源ライン101と第2の電源ライン102とに接続され、これらの第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性を切り替える切替回路31を備えている。この切替回路31は、表示装置2の電源切断時における第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性を示す極性情報を記憶する不揮発性メモリ31aを具備している。
【0077】
なお、実施の形態2に係る表示装置2のその他の構成は、実施の形態1の場合と同様であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0078】
以上のように構成された表示装置2において、切替回路31は、電源が投入されたときに、不揮発性メモリ31aに記憶されている極性情報を読み出す。そして、切替回路31は、その読み出した極性情報に示されている第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性、すなわち前回電源切断時の第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性とは異なる極性となるように、第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性を設定する。
【0079】
これにより、電源投入毎に、第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性が切り替えられ、これに伴って、各画素回路10が具備する第1の有機EL素子と第2の有機EL素子とが交互に発光することになる。その結果、表示装置2は、実施の形態1の場合と同様に、従来の表示装置と比べてその寿命を著しく延ばすことができる。
【0080】
なお、本実施の形態において、切替回路31は、不揮発性メモリ31aを具備しているが、これに限定されるわけではなく、電源が切断された場合であっても記憶内容を保持できるメモリであればよい。したがって、不揮発性メモリ31aの代わりに、例えばROM(Read Only Memory)などを用いてもよい。
【0081】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る表示装置は、後述するように、第1の発光素子および第2の発光素子の輝度の低下に応じて、第1の電源ラインおよび第2の電源ラインの極性を切り替えるように構成されている。
【0082】
図10は、本発明の実施の形態3に係る表示装置の構成を示すブロック図である。図10に示すように、実施の形態3に係る表示装置3は、第1の電源ライン101と第2の電源ライン102とに接続され、これらの第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性を切り替える切替回路41、EL表示パネル20の四隅付近に配設された4つのフォトディテクタ43、並びにこれらのフォトディテクタ43の出力電流と予め設定された基準電流とを比較する比較回路42を備えている。
【0083】
上述したように、本実施の形態では、フォトディテクタ43をEL表示パネル20の四隅に配設しているが、本発明はこれに限定されるわけではない。使用環境などに応じて、フォトディテクタの数および位置が決定される。フォトディテクタの数を増やすことによって検出感度を向上させることができる反面、それらのフォトディテクタを配置するための面積が多く必要になり、しかもコストが増大するなどの問題が生じることになる。
【0084】
また、第1の有機EL素子および第2の有機EL素子の輝度を検知することができる構成であれば、上述したようなフォトディテクタを用いる構成以外のものであってもよい。
【0085】
なお、実施の形態3に係る表示装置3のその他の構成は、実施の形態1の場合と同様であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0086】
以上のように構成された表示装置2において、比較回路42は、フォトディテクタ43の出力電流と基準電流との比較を繰り返し行う。そして、フォトディテクタ43の出力電流が基準電流を下回ったとき、すなわち、表示装置3のEL表示パネル20の明るさが、基準とされている明るさを下回ったときに、比較回路42は、切替回路41に対して切替信号を出力する。
【0087】
切替回路41は、比較回路42から出力された切替信号の入力を受けた場合、第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性を切り替える。
【0088】
上記のとおり動作することによって、各画素回路10が具備する有機EL素子の輝度の低下に応じて、第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性が切り替えられ、これに伴って、第1の有機EL素子と第2の有機EL素子とが交互に発光することになる。その結果、表示装置3は、実施の形態1の場合と同様に、従来の表示装置と比べてその寿命を著しく延ばすことができる。
【0089】
(実施の形態4)
上述したように、実施の形態3に係る表示装置は、有機EL素子の輝度の低下に応じて、第1の電源ラインおよび第2の電源ラインの極性の切替を行うように構成されている。これに対し、実施の形態4に係る表示装置は、有機EL素子を流れる電流の低下に応じて、これらの電源ラインの極性の切替を行うように構成されている。
【0090】
図11は、本発明の実施の形態4に係る表示装置の構成を示すブロック図である。図11に示すように、実施の形態4に係る表示装置4は、第1の電源ライン101と第2の電源ライン102とに接続され、これらの第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性を切り替える切替回路51、第1の電源ライン101および第2の電源ライン102を流れる電流をそれぞれ検知するための2つの電流モニタ52、並びにこれらの電流モニタ52で検知した電流と予め設定された基準電流とを比較する比較回路53を備えている。
【0091】
上述したように、本実施の形態では、2つの電流モニタ52を備えているが、このような構成に限られるわけではなく、第1の有機EL素子および第2の有機EL素子の電流特性を検知することができる構成であれば他のものでもよい。
【0092】
なお、実施の形態4に係る表示装置4のその他の構成は、実施の形態1の場合と同様であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0093】
以上のように構成された表示装置4において、比較回路53は、電流モニタ52で検知した電流と基準電流との比較を繰り返し行う。そして、電流モニタ52で検知した電流が基準電流を下回ったとき、すなわち、表示装置4のEL表示パネル20の明るさが、基準とされている明るさを下回ったときに、比較回路53は、切替回路51に対して切替信号を出力する。
【0094】
切替回路51は、比較回路53から出力された切替信号の入力を受けた場合、第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性を切り替える。
【0095】
上記のとおり動作することによって、各画素回路10が具備する有機EL素子の電流特性の低下に応じて、第1の電源ライン101および第2の電源ライン102の極性が切り替えられ、これに伴って、第1の有機EL素子と第2の有機EL素子とが交互に発光することになる。その結果、表示装置4は、実施の形態1の場合と同様に、従来の表示装置と比べてその寿命を著しく延ばすことができる。
【0096】
なお、上述したように、実施の形態3においては、有機EL素子の輝度の低下に応じて、また、実施の形態4においては、同じく有機EL素子を流れる電流の低下に応じて、第1の電源ラインおよび第2の電源ラインの極性の切替を行っているが、本発明はこれらに限定されるわけではない。これら以外にも、例えば、有機EL素子にかかる電圧の変化、または有機EL素子における抵抗の変化などに応じて、2つの電源ラインの極性の切替を行うようにしてもよい。
【0097】
(実施の形態5)
上述したように、本発明において、各画素回路は第1の有機EL素子および第2の有機EL素子を備えており、これらの2つの有機EL素子が交互に発光するように構成されている。ここで、第1の有機EL素子および第2の有機EL素子の配置については、種々の態様が考えられる。例えば、第1の有機EL素子および第2の有機EL素子が、EL表示パネルに対して鉛直方向に並べて設けられたり、または、EL表示パネルに対して平行な方向に並べて設けられたりすることが考えられる。
【0098】
以下、本発明において、第1の有機EL素子および第2の有機EL素子の好ましい配置について説明する。
【0099】
図12は、本発明の表示装置が備えるEL表示パネルの構成の一例を示す概念図である。 図12に示すとおり、EL表示パネル60は、複数の画素70がマトリクス状に配設されて構成されている。この画素70は、第1の有機EL素子が設けられた第1のサブピクセル71と、第2の有機EL素子が設けられた第2のサブピクセル72とから構成される。なお、説明の便宜上、第1のサブピクセル71にはハッチングを施してある。
【0100】
各画素70において、第1のサブピクセル71と第2のサブピクセル72とは、列方向に並べられている。この場合、第1の有機EL素子と第2の有機EL素子とが列方向に並べて配設されていることになる。
【0101】
また、各画素70は、第1の発光素子および第2の発光素子のそれぞれが行方向で一列とならないようにマトリクス状に配設されている。そのため、図12に示すとおり、行方向に見た場合、第1のサブピクセル71と第2のサブピクセル72とが交互に並べられることになる。
【0102】
なお、本実施の形態の表示装置において、このように並べられた第1のサブピクセル71および第2のサブピクセル72以外の構成については、実施の形態1の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0103】
以上のように構成された本実施の形態の表示装置が、実施の形態1にて説明したとおりに動作して画像表示が行われる場合、各画素70においては第1のサブピクセル71および第2のサブピクセル72の何れかが点灯し、これらのサブピクセル71および72が同時に発光することはない。そのため、点灯しているサブピクセルが直線状に並ぶことがなく、ポリシリコンTFTを用いた場合などに特に問題となるいわゆる縦スジのムラを目立たなくすることが可能となる。
【0104】
なお、上述した場合と異なり、第1の有機EL素子と第2の有機EL素子とが行方向に並べて配設され、且つ、各画素70が、第1の発光素子および第2の発光素子のそれぞれが列方向で一列とならないようにマトリクス状に配設されていてもよい。そのような構成を図13に示す。このように構成された場合、いわゆる横スジのムラを目立たなくすることが可能となる。
【0105】
以上のように、各画素に設けられる第1の発光素子および第2の発光素子のそれぞれが一列とならないように配されることによって、良好な画像表示を実現することができる。
【0106】
なお、上述した各実施の形態においては、画素回路が備える発光素子として有機EL素子を例示したが、本発明はこれに限られるわけではなく、自発光の素子であればその他の素子を用いることが可能である。そのような発光素子としては、例えば無機EL素子および発光ダイオード(LED)などを挙げることができる。
【0107】
(実施の形態6)
実施の形態1から5では表示装置を中心に説明したが、以降、本発明に係るエレクトロルミネッセンス素子、画素回路を画像形成装置へ適用した例について詳細に説明する。
【0108】
図14は、本発明の実施の形態6の画像形成装置の構成図である。
【0109】
図14の画像形成装置501は、縦方向に階段状に配列されたイエロー現像ステーション502Y、マゼンタ現像ステーション502M、シアン現像ステーション502C、ブラック現像ステーション502Kと、トナーボトル517と、各現像ステーション502Y、502M、502C、502Kの下部に配置された露光装置513Y、513M、513C、513Kと、給紙トレイ504と、給紙トレイ504から供給された記録紙503の搬送路となる記録紙搬送路505と、給紙ローラ518と、入口側のニップ搬送手段を構成するレジストローラ519、ピンチローラ520対と、出口側のニップ搬送手段を構成する定着器523と、記録紙搬送ドラム533と、フェイスダウン排紙部534と、蹴り出しローラ535と、排紙トレイ539とを備える。
【0110】
また、画像形成装置501は、駆動源538と、コントローラ541と、エンジン制御部542とを備える。さらに、画像形成装置501は、給紙ローラ518と、入口側のニップ搬送手段との間に配置された記録紙通過検出センサ521と、記録紙搬送ドラム533の下方に配置された記録紙後端検出センサ528と、記録紙搬送ドラム533の側方に配置されたトナー像検出センサ532とを備える。
【0111】
現像ステーション502Y〜502Kは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーボトル517から供給されるトナーを利用してトナー像を形成する。トナーボトル517は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーを格納しており、各現像ステーション502Y〜502Kにトナーを供給するものである。トナーの供給は、トナーボトル517と各現像ステーション502Y〜502Kとの間に配設されたトナー搬送用のパイプ(図示せず)を介して行われる。
【0112】
イエロー現像ステーション502Yには感光体508Y、マゼンタ現像ステーション502Mには感光体508M、シアン現像ステーション502Cには感光体508C、ブラック現像ステーション502Kには感光体508Kがそれぞれ含まれる。感光体508Y〜508Kは、露光装置513Y〜513Kにより露光され、その表面には静電潜像が形成される。また、各現像ステーション502Y〜502Kには後に説明する現像スリーブ、帯電器等、一連の電子写真プロセスにおける現像工程を実現する部材が含まれている。
【0113】
なお、現像ステーション502Y〜502Kは、現像する色が異なるだけで構成は同一であるため、以降の説明を簡単にするため特に明示する必要がある場合を除いて現像ステーション502と記述して色を特定せずに説明する。また、対応する感光体508Y〜508K、及び露光装置513Y〜513Kについても、同様に感光体508、露光装置513と記述して説明する。
【0114】
なお、実施の形態1などで説明した第1の有機EL素子103、第2の有機EL素子105、画素回路10(いずれも図2参照)は、露光装置513に含まれている。
【0115】
なお以降の説明において、これら2つの有機EL素子をまとめて説明する際は、有機EL素子103、105のように呼称する。
【0116】
図15は、本発明の実施の形態6の画像形成装置501における現像ステーション502の周辺構成図である。
【0117】
図15の現像ステーション502は、攪拌パドル507a、507b、感光体508、帯電器509、現像スリーブ510、薄層化ブレード511を含んで構成され、攪拌パドル507a、507bが収容される容器内部には、キャリアとトナーの混合物である現像剤506が充填されている。現像ステーション502の下方には、露光装置513が配置されるとともに、記録紙搬送路505を挟んで感光体508と対向する位置には、転写ローラ516が配置されている。
【0118】
攪拌パドル507a、507bは、現像剤506を攪拌する部材であり、攪拌パドル507aと507bの回転によって現像剤506中のトナーはキャリアとの摩擦によって所定の電位に帯電される。また、トナーとキャリアは現像ステーション502の容器内部を巡回することで十分に攪拌混合される。
【0119】
感光体508は、露光装置513による露光によって形成される像を担持する像担持体であり、アルミニウム等の基材上に電荷発生層と電荷輸送層(いずれも図示せず)を積層させ、少なくとも電荷輸送層を有機物で構成した、いわゆる有機感光体ドラムである。感光体508は図示しない駆動源によって方向D3に回転する。帯電器509は、感光体508の表面を所定の電位に帯電するものである。
【0120】
現像スリーブ510は、内部に複数の磁極が形成されたマグネットロール512を有しており、図示しない駆動源によって方向D4に回転する。この回転及びマグネットロール512の磁極の作用によって、現像剤506は現像スリーブ510の表面に供給される。薄層化ブレード511は、現像スリーブ510の表面に供給される現像剤506の層厚を規制するものである。現像スリーブ510表面の現像剤506は、後述する露光装置513によって感光体508に形成された静電潜像を現像するとともに、感光体508に転写されなかった現像剤506は現像ステーション502の容器内部に回収される。
【0121】
露光装置513は、感光体508を1ライン単位に露光するものであり、実施の形態1などで詳細に説明した有機EL素子103、105(図2参照)を1200dpi(dot per inch)の解像度で列状に配置した発光素子列(図17参照)を有している。
【0122】
感光体508を露光するための光を出射する発光部を構成するこの有機EL素子103、105を、画像データに応じて選択的にON/OFFすることにより、帯電器509によって所定の電位に帯電した感光体508に最大A4サイズの静電潜像を形成することができる。すなわち露光装置513は、露光装置513と相対移動する感光体508に対して、1ライン単位の露光を複数回行うことで、感光体508の表面に二次元の静電潜像を形成する。そして、この静電潜像部分に現像スリーブ510の表面に供給された現像剤506のうちトナーのみが付着し静電潜像が顕画化される。
【0123】
転写ローラ516は、記録紙搬送路505を挟んで感光体508と対向する位置に設けられており、図示しない駆動源により方向D5に回転する。転写ローラ516には所定の転写バイアスが印加されており、感光体508上に形成されたトナー像を、記録紙搬送路505を搬送されてきた記録紙503に転写する。
【0124】
図14に戻って説明を続ける。
【0125】
給紙トレイ504は、縦方向に階段状に配列された現像ステーション502Y〜502Kの上方に配置され、記録紙503が収容される。給紙トレイ504から供給された記録紙503は、記録紙搬送路505を上方から下方に縦方向に搬送される。
【0126】
給紙ローラ518は、図示しない電磁クラッチを制御することで方向D1に回転し、給紙トレイ504に装填された記録紙503を記録紙搬送路505に送り出すものである。
【0127】
レジストローラ519、ピンチローラ520対は、入口側のニップ搬送手段を構成するものであり、給紙ローラ518と最上流のイエロー現像ステーション502Yの転写部位との間に位置する記録紙搬送路505に設けられている。レジストローラ519、ピンチローラ520対は、給紙ローラ518により搬送された記録紙503を一時的に停止させ、所定のタイミングでイエロー現像ステーション502Yの方向に搬送する。この一時停止によって記録紙503の先端がレジストローラ519、ピンチローラ520対の軸方向と平行に規制され、記録紙503の斜行を防止する。
【0128】
記録紙通過検出センサ521は、記録紙503の通過を検出するものである。記録紙通過検出センサ521は反射型センサ(フォトリフレクタ)によって構成され、反射光の有無で記録紙503の先端及び後端を検出する。
【0129】
記録紙503の給紙機構は、以上のように構成されているので、図示しない電磁クラッチ等によって動力伝達を制御してレジストローラ519の回転を開始すると、一時的に停止されていた記録紙503は、記録紙搬送路505に沿ってイエロー現像ステーション502Yの方向に搬送される。そして、レジストローラ519の回転開始のタイミングを起点として、各現像ステーション502Y〜502Kの近傍に配置された露光装置513Y〜513Kによる静電潜像の書込みタイミング、現像バイアスのON/OFF、転写バイアスのON/OFF等がそれぞれ独立して制御される。
【0130】
出口側のニップ搬送手段を構成する定着器523は、最下流のブラック現像ステーション502Kの更に下流側に位置する記録紙搬送路505に設けられている。定着器523は加熱ローラ524、加圧ローラ525、温度センサ527を含んで構成される。
【0131】
温度センサ527は、加熱ローラ524の温度を検出するためのものである。温度センサ527は、金属酸化物を主原料とし、高温で焼結して得られるセラミック半導体であり、温度に応じて負荷抵抗が変化することを応用して接触した対象物の温度を計測するものである。温度センサ527の出力は後述するエンジン制御部542に入力され、エンジン制御部542は温度センサ527の出力に基づいて加熱ローラ524に内蔵された熱源に供給する電力を制御し、加熱ローラ524の表面温度が約170℃となるように制御する。
【0132】
この定着器523にトナー像が形成された記録紙503が通紙されると、記録紙503上のトナー像は温度制御がされた加熱ローラ524と加圧ローラ525によって加熱及び加圧され、トナー像が記録紙503上に定着される。
【0133】
記録紙後端検出センサ528は、記録紙503の排出状況を監視するものである。トナー像検出センサ532は、トナー像の位置、濃度等を検出するものである。トナー像検出センサ532は、発光スペクトルの異なる複数の発光素子(共に可視光)と単一の受光素子を用いた反射型センサユニットであり、記録紙503の地肌と画像形成部分とで、画像色に応じて吸収スペクトルが異なることを利用して画像濃度を検出するものである。またトナー像検出センサ532は画像濃度のみならず画像形成位置も検出できるため、画像形成装置501では、トナー像検出センサ532を画像形成装置501の幅方向に2ヶ所設け、記録紙503上に形成した画像位置ずれ量検出パターンの検出位置に基づき画像形成タイミングを制御している。
【0134】
記録紙搬送ドラム533は、定着後の記録紙503を搬送するものである。記録紙搬送ドラム533は、表面を200μm程度の厚さのゴムで被覆した金属製ローラであり、定着後の記録紙503は記録紙搬送ドラム533に沿って方向D2に搬送される。その後、記録紙503は蹴り出しローラ535によって方向D6に搬送され、排紙トレイ539に排出される。
【0135】
フェイスダウン排紙部534は、支持部材536を中心に回動可能に構成され、フェイスダウン排紙部534を開放状態にすると、記録紙503は方向D7に排紙される。このフェイスダウン排紙部534は、閉状態では記録紙搬送ドラム533とともに記録紙503の搬送をガイドするように、背面に搬送経路に沿ったリブ537が形成されている。
【0136】
駆動源538は、画像形成装置501に含まれる各駆動部を駆動するものであり、ステッピングモータを採用している。駆動源538によって駆動される駆動部には、給紙ローラ518、レジストローラ519、ピンチローラ520、感光体508Y〜508K及び転写ローラ516(図15参照)を含む各現像ステーション502Y〜502Kの周辺部の駆動部、定着器523、記録紙搬送ドラム533、蹴り出しローラ535が含まれる。
【0137】
コントローラ541は、図示しない外部のコンピュータ等からの画像データを、外部のネットワーク等を介して受信し、受信した画像データを展開してプリント可能な画像データを生成するものである。またコントローラ541は、有機EL素子103、105を極性を変えて駆動するための電源を含んでいる。
【0138】
エンジン制御部542は、画像形成装置501全般の制御を行うものである。エンジン制御部542が行う制御には、コントローラ541から転送された画像データに基づいて記録紙503にカラー画像を形成するための画像形成装置501のハードウェアやメカニズムの制御、定着器523の加熱ローラ524の温度制御などが含まれる。
【0139】
以上のように構成された画像形成装置501について、図14と図15を用いてその動作について説明する。以降の説明において、画像形成装置501の構成及び動作全般に関わる説明については、主に図14を用い、現像ステーション502Y〜502K、感光体508Y〜508K、露光装置513Y〜513Kのように色を区別して説明する。また、露光や現像過程等単色に関わる説明については、主に図15を用い、簡単のために現像ステーション502、感光体508、露光装置513のように色を区別せずに説明する。
【0140】
コントローラ541に例えばネットワークで接続されたコンピュータ等から画像データが転送されると、コントローラ541は画像データを印字可能な例えば2値画像データとしてイメージメモリ(図示せず)に展開する。画像データの展開が完了すると、コントローラ541に搭載されたコントローラCPU(図示せず)は、エンジン制御部542に対して起動要求を発する。この起動要求は、エンジン制御部542に搭載されたエンジン制御CPU(図示せず)によって受信され、起動要求を受信したエンジン制御CPUは、直ちに駆動源538を回転させて画像形成の準備を開始する。
【0141】
画像形成の準備が完了すると、エンジン制御部542に搭載されたエンジン制御CPUは、電磁クラッチ(図示せず)を制御して給紙ローラ518を回転させ記録紙503の搬送を開始する。給紙ローラ518は、例えば全周の一部を欠いた半月ローラであり、記録紙503をレジストローラ519の方向に搬送するとともに、一回転するとその回転を停止する。エンジン制御CPUは、搬送された記録紙503の先端が記録紙通過検出センサ521で検出されると、所定のディレイ期間を設けた上で電磁クラッチを制御してレジストローラ519を回転させる。このレジストローラの回転に伴って記録紙503は記録紙搬送路505に供給される。
【0142】
エンジン制御CPUは、このレジストローラ519の回転開始のタイミングを起点として、各露光装置513Y〜513Kによる静電潜像の書込みタイミングをそれぞれ独立に制御する。静電潜像の書込みタイミングは、画像形成装置501における色ずれ等に直接的に影響する。従ってディレイの発生を前提とするリアルタイムOSによってタスクを制御するエンジン制御CPUが直接発生させることはない。具体的にはエンジン制御CPUは、図示しないハードウェアであるタイマ等に各露光装置513による静電潜像の書込みタイミングを予め設定しておき、上述したレジストローラ519の回転を起点として各露光装置513Y〜513Kに対応するタイマの動作を同時に開始する。各タイマは予め設定された時間が経過すると、コントローラ541に対して画像データ転送要求を出力する。
【0143】
画像データ転送要求を受信したコントローラ541のコントローラCPU(図示せず)は、コントローラ541のタイミング生成部(図示せず)で生成されたタイミング信号に同期して画像データを各露光装置513Y〜513Kに独立して転送する。このようにして画像データが露光装置513Y〜513Kに送られ、この画像データに基づき露光装置513Y〜513Kを構成する有機EL素子の点灯/消灯が制御され、各色に対応した感光体508Y〜508Kが露光される。
【0144】
露光によって形成された潜像は、図15に示すように現像スリーブ510上に供給された現像剤506に含まれるトナーによって顕画化される。顕画化された各色のトナー像は、記録紙搬送路505を搬送されてきた記録紙503に順次転写される。4色のトナー像の転写を完了した記録紙503は、定着器523に搬送され、定着器523を構成する加熱ローラ524と加圧ローラ525によって挟持搬送される。転写されたトナー像は、加熱ローラ524の熱と加圧ローラの圧力によって記録紙503に定着される。
【0145】
形成されるべき画像が複数ページの場合、エンジン制御CPU(図示せず)は、1ページ目の記録紙503の後端が記録紙通過検出センサ521で検出された後、レジストローラ519の回転を一旦停止し、所定の時間経過後に給紙ローラ518を回転させて次の記録紙503の搬送を開始し、更に所定時間経過後に再度レジストローラ519の回転を開始して、次のページの記録紙503を記録紙搬送路505に供給する。このようにレジストローラ519の回転ON/OFFのタイミング制御によって、複数のページにわたって画像を形成する場合、記録紙503の間の時間間隔を設定することができる。この記録紙503の搬送間隔に伴う時間(以降紙間期間と呼称する)は、画像形成装置501の仕様によっても異なるが、一般に500ms程度を設定することが多い。もちろんこの紙間期間には通常の画像形成動作(すなわち画像形成装置501の外部から供給された画像データに基づく露光装置513による感光体508に対する露光動作)が行われることはない。
【0146】
なお、コントローラ541は、露光装置13に対してクロック信号、ライン同期信号など有機EL素子103、105の点灯制御に関する信号の他に、有機EL素子103、105に対する電源も供給している。即ち、実施の形態1などで説明した有機EL素子103、105の切替回路21(図1参照)は、実施の形態6ではコントローラ541に含まれている。
【0147】
実施の形態6の画像形成装置501では、画像形成時の1ライン単位に第1の有機EL素子103と第2の有機EL素子105の切替を行うようにしている。本実施形態における画像形成装置の1ライン形成時間は約350μsに設定されており、露光装置13を構成する第1の有機EL素子103と第2の有機EL素子105は、350μsの周期で交互に点灯する(ただし画像データが0、即ち非点灯を示す画像データが入力された場合は点灯しない)。これによって有機EL素子103、105には周期的に逆バイアスが印加されることになり、有機EL素子103、105の寿命を伸ばすことが可能となる。
【0148】
また、上述した紙間期間に有機EL素子103、105の切替えを行うようにしてもよい。この場合はページ単位で有機EL素子103、105が切替えられる。
【0149】
画像形成装置501では、ライン数およびページ数のカウントはコントローラ541で行っているため、コントローラ541で電源ラインを切替える構成がもっとも簡易なものとなる。
【0150】
図16は、本発明の実施の形態6の画像形成装置501における露光装置513の構成図である。
【0151】
図16の露光装置513は、ガラス基板550、レンズアレイ551、中継基板552、コネクタA553a、コネクタB553b、筐体A554a、筐体B554bを含んで構成される。
【0152】
ガラス基板550は、露光光源としての有機EL素子103、105(図2参照)、制御回路や駆動回路を構成する薄膜トランジスタが形成された無色透明の基板であり、例えばホウケイ酸ガラスである。ホウケイ酸ガラスは、コスト的に有利であるが、有機EL素子103、105や薄膜トランジスタの放熱を効率的に行う必要がある場合には、MgO、Al3、CaO、ZnO等の熱伝導度加成因子を含有するガラス、または石英を用いてもよい。
【0153】
ガラス基板550の面Aには、第1の有機EL素子103と第2の有機EL素子105が図面と垂直な方向(主走査方向)に、交互に1200dpiの解像度で形成されている。既に説明したように、有機EL素子103、105は2つで1つの画素を構成するから、実施の形態6の画像形成装置501においては、実効解像度は600dpiである。
【0154】
レンズアレイ551は、プラスティックまたはガラスで構成される棒レンズ(図示せず)を列状に配置したものであり、ガラス基板550の面Aに形成された有機EL素子103、105の出射光を正立等倍の像として感光体508の表面に導くためのものである。レンズアレイ551の一方の焦点は、ガラス基板550の面Aであり、もう一方の焦点は感光体508の表面となるようにガラス基板550、レンズアレイ551、感光体508の位置関係が調整されている。すなわち、面Aからレンズアレイ551の近い方の面までの距離L1と、レンズアレイ551の他方の面と感光体508の表面までの距離L2とするとき、L1=L2となるように設定される。
【0155】
中継基板552は、外部から供給される画像データ、有機EL素子103、105の電源ライン、及びその他の制御信号を中継するものであり、例えば、ガラスエポキシ基板の上に電子回路を構成したものである。中継基板552には、少なくともコネクタA553a及びコネクタB553bが実装されている。上述した各種の信号は、フレキシブルフラットケーブル等のケーブル556を介してコントローラ541(図14参照)から供給され、コネクタB553bを介して一旦中継されてガラス基板550に渡される。
【0156】
ガラス基板550の表面にコネクタを直接実装することは、接合強度や多様な環境における信頼性を考慮すると困難であるため、図16の露光装置513では中継基板552のコネクタA553aとガラス基板550との接続手段としてFPC(フレキシブルプリント回路)を採用し(図示せず)、ガラス基板550とFPCの接合は例えばACF(異方性導電フィルム)を用いて、予めガラス基板550上に形成された例えばITO(錫ドープ酸化インジウム)電極に直接接続する構成としている。
【0157】
一般的にACF等による接続は接合強度が問題となる場合が多いが、このように中継基板552上にユーザが露光装置513を接続するためのコネクタB553bを設けることで、ユーザが直接アクセスするインタフェースに十分な強度を確保することができる。
【0158】
筐体A554aは、金属板を例えば折り曲げ加工により成型したものである。筐体A554aの感光体508に対向する側にはL字状部位555が形成されており、L字状部位555に沿ってガラス基板550及びレンズアレイ551が配設されている。筐体A554aの感光体508側の端面とレンズアレイ551の端面を同一面に合わせ、更に筐体A554aによってガラス基板550の一端部を支持する構造とすることで、L字状部位555の成型精度と表面性を確保すれば、ガラス基板550とレンズアレイ551の成す位置関係を精度よく合わせ込むことが可能となる。このように筐体A554aは寸法精度を要求されるため、金属にて構成することが望ましい。また、筐体A554aを金属製とすることで、ガラス基板550上に形成される制御回路及びガラス基板550上に表面実装されるICチップ等の電子部品へのノイズの影響を抑制することが可能である。
【0159】
筐体B554bは、樹脂を成型して得られたものである。筐体B554bのコネクタB553bの近傍には切欠き部(図示せず)が設けられており、ユーザはこの切欠き部からコネクタB553bにアクセスが可能となっている。コネクタB553bに接続されたケーブル556を介して既に説明したコントローラ541(図14参照)から露光装置513に画像データ、有機EL素子103、105の電源ライン、クロック信号やライン同期信号等の制御信号、制御回路の駆動電源等が供給される。図16に示すように、筐体A554aと筐体B554bが形成する空間内に中継基板552が配置される。
【0160】
図17(a)は、本発明の実施の形態6の画像形成装置501における露光装置513に含まれるガラス基板550の上面図であり、図17(b)は同要部拡大図である。以降、図17と図16を用いてガラス基板550の構成について詳細に説明する。
【0161】
ガラス基板550は、厚みが約0.7mmの、少なくとも長辺と短辺を有する長方形形状の基板であり、その長辺方向(主走査方向)には、感光体508に対する露光光源である複数の有機EL素子103、105が1200dpi(21.2μmピッチ)で列状に形成されている。既に説明したように有機EL素子103、105は2つで1画素を構成している。
【0162】
これらの有機EL素子103、105に対して、ガラス基板550面の法線方向には受光素子620が形成されている。すなわち有機EL素子103、105と受光素子620は全体として積層構造を有しており、ガラス基板550に近い方から、受光素子620、有機EL素子103、105が形成されている。なお受光素子620と有機EL素子103、105の間には絶縁層が設けられている。
【0163】
図17のガラス基板550の長辺方向には、少なくともA4サイズ(210mm)の露光に必要な有機EL素子103、105と受光素子620が配置されている。受光素子620は有機EL素子103、105(即ち2つの発光単位)から構成される1画素に対して1つずつ設けられ、実施の形態6の場合、有機EL素子103、105は10240個、受光素子620は5120個が配置されている。ガラス基板550の長辺方向は、後述する制御回路12の配置スペースを含め250mmとしている。
【0164】
なお、図17では、簡単のためにガラス基板550を長方形として説明するが、ガラス基板550を筐体A554aに取り付ける際の位置決め用等のために、ガラス基板550の一部に切り欠きを設けるような変形を伴っていてもよい。また、ガラス基板550上に形成される有機EL素子103、105を一列としているが、有機EL素子103、105は、複数列で構成してもよいし、複数列かつ千鳥状に構成してもよい。
【0165】
有機EL素子103、105及び受光素子620に沿って、ガラス基板550にはTFT(Thin Film Transistor)回路562が設けられ、個々の有機EL素子103、105の点灯及び消灯、発光光量の検出を独立に制御する。このとき実施の形態1などで詳細に説明したように、ガラス基板550の外部から(既に説明したコントローラ541、図14参照)供給される電源ラインの極性を切替えることによって第1の有機EL素子103と、第2の有機EL素子105が選択的に点灯される。
【0166】
なおTFT回路562には、図1などで説明したゲートドライバ13が含まれている。
【0167】
有機EL素子103、105とTFT回路562の一部は、封止ガラス564によって封止されている。有機EL素子103、105は、水分の影響を受けると発光領域の経時的な収縮(シュリンキング)や、発光領域内に非発光部位(ダークスポット)が生じる等して発光特性が極端に劣化するため、封止ガラス564によって水分を遮断している。
【0168】
図17の封止ガラス564は、接着剤を介して貼り付けるベタ封止法によりガラス基板550に貼り付けられている。なお、図17の有機EL素子103、105は、発光領域を成す発光層の材料として高分子材料を採用しており、高分子材料はいわゆるガラス転移温度が明確でなく、高温下にあっても結晶化による特性劣化が少ないことから、封止に際して光硬化性樹脂と比較してガスバリア性が良好な熱硬化性樹脂を採用することができる。
【0169】
ガラス基板550の一端には制御回路12が設けられ、さらにインタフェース手段としてのFPC(フレキシブルプリント回路)560が接続される。
【0170】
制御回路12は、ガラス基板550の外部から供給される画像データ、クロック信号やライン同期信号等の制御信号、および有機EL素子103、105の電源ラインを受け取り、これらの信号に基づいて有機EL素子103、105の駆動を制御するものである。
【0171】
FPC560は、中継基板552のコネクタA553aとガラス基板550とを接続するものであり、コネクタ等を介さずガラス基板550に設けられた図示しない回路パターンに直接接続されている。既に説明した画像データ、クロック信号やライン同期信号等の制御信号、制御回路の駆動電源、有機EL素子103、105の電源ラインは、図16に示す中継基板552を一旦経由した後にFPC560を介してガラス基板550に供給され、上述の回路パターンと接続されている。
【0172】
ソースドライバ14は、有機EL素子103、105の駆動を制御するICチップであり、ガラス基板550上にフリップチップ実装されている。ガラス面へ表面実装を行うことを考慮し、ソースドライバ14はベアチップ品を採用している。ソースドライバ14には露光装置513の外部からFPC560を介して電源、クロック信号、ライン同期信号等の制御関連信号及び例えば8ビットの画像データが供給される。ソースドライバ14は、コントローラ541(図14参照)から出力された画像データに基づいて、個々の有機EL素子103、105を駆動するための駆動電流を設定する。
【0173】
ガラス基板550上に形成されたTFT回路562は、シフトレジスタ、データラッチ部等、有機EL素子103、105(1画素としての)の点灯/消灯のタイミングを制御する論理回路であるゲートドライバを含んでいる。
【0174】
露光装置513の場合は、有機EL素子103、105が列状に配置されるが、各有機EL素子は上述のソースドライバ14と、TFT回路562に含まれるゲートドライバによって駆動され、実施の形態1で説明した表示装置と同様にアクティブマトリクス回路が構成されている。
【0175】
なお、画素回路の構成については実施の形態1などで詳細に説明したので説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子、画素回路および表示装置は、第1の発光素子および第2の発光素子を適宜切り替えて発光させることにより、長寿命化を図ることができるため、コンピュータ用および家電用を始めとする種々のディスプレイに適用することが可能である。
【0177】
また同様に、画像形成装置すなわちMFP(マルチファンクションプリンタ)、複合機、プリンタなどに搭載される露光装置などに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明の実施の形態1に係る表示装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1に係る表示装置が備える画素回路の構成の一例を示す回路図
【図3】本発明の実施の形態1に係る表示装置が備える画素回路の構成の他の例を示す回路図
【図4】本発明の実施の形態1に係る表示装置が備える画素回路の構成の他の例を示す回路図
【図5】本発明の実施の形態1に係る表示装置が備える画素回路の構成の他の例を示す回路図
【図6】本発明の実施の形態1に係る表示装置の動作例を示すタイミングチャート
【図7】比較例である従来の表示装置が備える画素回路の構成を示す回路図
【図8】比較例の表示装置の動作例を示すタイミングチャート
【図9】本発明の実施の形態2に係る表示装置の構成を示すブロック図
【図10】本発明の実施の形態3に係る表示装置の構成を示すブロック図
【図11】本発明の実施の形態4に係る表示装置の構成を示すブロック図
【図12】本発明の表示装置が備えるEL表示パネルの構成の一例を示す概念図
【図13】本発明の表示装置が備えるEL表示パネルの構成の他の例を示す概念図
【図14】本発明の実施の形態6の画像形成装置の構成図
【図15】本発明の実施の形態6の画像形成装置における現像ステーションの周辺構成図
【図16】本発明の実施の形態6の画像形成装置における露光装置の構成図
【図17】(a)は、本発明の実施の形態6の画像形成装置における露光装置に含まれるガラス基板の上面図、(b)は同要部拡大図
【符号の説明】
【0179】
1,2,3,4 表示装置
10 画素回路
12 制御回路
13 ゲートドライバ
14 ソースドライバ
20 EL表示パネル
21 切替回路
22 タイマー
31 切替回路
31a 不揮発性メモリ
41 切替回路
42 比較回路
43 フォトディテクタ
51 切替回路
52 電流モニタ
53 比較回路
60 EL表示パネル
70 画素
71 第1のサブピクセル
72 第2のサブピクセル
101 第1の電源ライン
102 第2の電源ライン
103 第1の有機EL素子
104 第1のトランジスタ
105 第2の有機EL素子
106 第2のトランジスタ
107 制御用トランジスタ
110 ゲートライン
111 ソースライン
501 画像形成装置
502Y,502M,502C,502K 現像ステーション
503 記録紙
508Y,508M,508C,508K 感光体
513Y,513M,513C,513K 露光装置
541 コントローラ
542 エンジン制御部
550 ガラス基板
551 レンズアレイ
552 中継基板
553a コネクタA
553b コネクタB
556 ケーブル
562 TFT回路
564 封止ガラス
620 受光素子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように配列された複数のゲートラインおよび複数のソースラインの交点に対応してそれぞれ配設される画素回路において、
第1の発光素子および第2の発光素子と、
前記第1の発光素子および前記第2の発光素子の陽極にそれぞれ接続され、前記第1の発光素子および前記第2の発光素子のそれぞれを駆動する第1のトランジスタおよび第2のトランジスタと、
前記第2の発光素子の陰極、および前記第1のトランジスタの前記第1の発光素子と接続されていない側と接続される第1の電源ラインと、
前記第1の発光素子の陰極、および前記第2のトランジスタの前記第2の発光素子と接続されていない側と接続され、前記第1の電源ラインとはその極性が異なる第2の電源ラインとを備え、
前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性が切り替えられるように構成されていることを特徴とする、画素回路。
【請求項2】
所定の時間間隔で、前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性が切り替えられるように構成されている、請求項1に記載の画素回路。
【請求項3】
電源が投入された場合に、前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性が、前回電源が切断された場合とは異なる極性となるように構成されている、請求項1に記載の画素回路。
【請求項4】
前記第1の発光素子および前記第2の発光素子の劣化状態に応じて、前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性が切り替えられるように構成されている、請求項1に記載の画素回路。
【請求項5】
前記第1の発光素子および前記第2の発光素子の輝度の低下に応じて、前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性が切り替えられるように構成されている、請求項4に記載の画素回路。
【請求項6】
前記第1の発光素子および前記第2の発光素子を流れる電流の低下に応じて、前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性が切り替えられるように構成されている、請求項4に記載の画素回路。
【請求項7】
互いに交差するように配列された複数のゲートラインおよび複数のソースラインと、当該複数のゲートラインおよび当該複数のソースラインの交点に対応してそれぞれ配設される画素回路とを備える表示装置において、
前記画素回路のそれぞれは、
第1の発光素子および第2の発光素子と、
前記第1の発光素子および前記第2の発光素子の陽極にそれぞれ接続され、前記第1の発光素子および前記第2の発光素子のそれぞれを駆動する第1のトランジスタおよび第2のトランジスタと、
前記第2の発光素子の陰極、および前記第1のトランジスタの前記第1の発光素子と接続されていない側と接続される第1の電源ラインと、
前記第1の発光素子の陰極、および前記第2のトランジスタの前記第2の発光素子と接続されていない側と接続され、前記第1の電源ラインとはその極性が異なる第2の電源ラインとを具備し、
前記画素回路のそれぞれが具備する前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性を切り替える切替回路を備える
ことを特徴とする、表示装置。
【請求項8】
電源ラインの極性の切替を指示する切替信号を、所定の時間間隔で前記切替回路に出力するタイマーを更に備え、
前記切替回路は、前記切替信号の入力に応じて、前記画素回路のそれぞれが具備する前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性を切り替えるように構成されている、請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記切替回路は、電源が投入された場合に、前回電源が切断された場合とは異なる極性となるように、前記画素回路のそれぞれが具備する前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性を切り替えるように構成されている、請求項7に記載の表示装置。
【請求項10】
前記画素回路のそれぞれが具備する前記第1の発光素子および前記第2の発光素子の劣化状態を検出する発光素子劣化検出手段を更に備え、
前記切替回路は、前記発光素子劣化検出手段による検出結果に応じて、前記画素回路のそれぞれが具備する前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性を切り替えるように構成されている、請求項7に記載の表示装置。
【請求項11】
前記発光素子劣化検出手段は、前記画素回路のそれぞれが具備する前記第1の発光素子および前記第2の発光素子の輝度にしたがって、劣化状態を検出するように構成されている、請求項10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記発光素子劣化検出手段は、前記画素回路のそれぞれが具備する前記第1の発光素子および前記第2の発光素子を流れる電流にしたがって、劣化状態を検出するように構成されている、請求項10に記載の表示装置。
【請求項13】
前記画素回路のそれぞれにおいて、前記第1の発光素子および前記第2の発光素子は、列方向(または行方向)に並べて配設されており、
前記画素回路は、前記第1の発光素子および前記第2の発光素子のそれぞれが行方向(または列方向)で一列とならないようにマトリクス状に配設される、請求項7に記載の表示装置。
【請求項14】
第1の発光素子と、この第1の発光素子を駆動する第1のトランジスタから構成される第1の発光単位と、
第2の発光素子と、この第2の発光素子を駆動する第2のトランジスタから構成される第2の発光単位と、
前記第1の発光単位の陽極側と前記第2の発光単位の陰極側に接続された第1の電源ラインと、
前記第1の発光単位の陰極側と前記第2の発光単位の陽極側に接続された第2の電源ラインと、を有し、
前記第1の発光素子と前記第2の発光素子が1つの画素を構成し、
更に、前記第1の電源ラインおよび前記第2の電源ラインの極性が切り替えられるように構成された、エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
請求項14記載のエレクトロルミネッセンス素子によって構成された表示装置。
【請求項16】
請求項14記載のエレクトロルミネッセンス素子によって構成された露光装置。
【請求項17】
請求項16記載の露光装置であって、
前記電源ラインの極性が、露光の1ラインの単位に切替えられるように構成した露光装置。
【請求項18】
請求項16記載の露光装置であって、
前記電源ラインの極性が、画像形成の1ページ単位に切替えられるように構成した露光装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−122836(P2008−122836A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308946(P2006−308946)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】