説明

エレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法

【課題】 大型化を容易にして生産性を向上したエレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 陰極線23の外側面に発光層24と正孔輸送層25を積層して四角柱状のEL棒22を形成し、複数の前記EL棒22を各画素領域20の陽極21上に配列した。そして、配列したEL棒22を陽極21に押圧する封止基板26を設けて、封止基板26と透明基板11の外縁に、封止基板26と透明基板11との間の空間、すなわち各EL棒22(陰極線23、発光層24、正孔輸送層25)を封止する封止層を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示データに即した画像を表示する表示装置としてエレクトロルミネッセンス装置(以下単に、「EL装置」という。)が知られている。EL装置は、各画素内に設けられた陰極と、陽極と、陰極と陽極の間の発光層とを含む積層体を備え、前記積層体に供給する駆動電流やその駆動時間の制御によって、発光層の発光輝度を階調制御し、表示データに即した画像を表示するようしている。こうしたEL装置には、高輝度化と低消費電力化を図るために、前記積層体を有機系の材料によって構成する、いわゆる有機EL装置が知られている。
【0003】
有機EL装置の製造工程では、フォトリソグラフィ工程における前記有機系材料の耐性が低いため、一般的に、マスクを介した蒸着法によって前記積層体をパターニングしていた。しかし、前記蒸着法では、蒸着粒子(有機低分子)の飛行制御が困難であるために、積層体の加工精度が低くなり、有機EL装置の生産性を著しく低下させる問題があった。
【0004】
そこで、上記有機EL装置では、従来より、こうした積層体のパターニングを容易にして、EL装置の生産性を向上するための提案がなされている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、透明基板上に陽極を囲む撥液性の隔壁を形成し、その隔壁で囲まれる領域(陽極上)に、発光材料を含む液状体の液滴を吐出している。そして、吐出した容量分の液状体を乾燥することによって、所定量の前記発光層(前記積層体)を形成することができ、その発光層を、隔壁で囲まれる領域に自己整合的にパターニングすることができる。これによって、積層体のパターニングを容易にしてEL装置の生産性を向上している。
【特許文献1】特開2005−116313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記EL装置の製造工程では、高い生産性と有機材料の電気的安定性を確保するために、各画素領域に施す成膜プロセス(例えば、前記液滴の吐出工程や前記液滴の乾燥工程等)を共通化して、その工程時間の短縮を図っている。例えば、一回の液滴吐出工程で全ての画素領域に液滴を吐出し、一回の液滴乾燥工程で全ての画素領域の液滴を乾燥するようにしている。
【0006】
しかしながら、EL装置を大型化する、すなわち透明基板のサイズを大型化すると、一回の成膜工程で成膜する積層体の成膜領域が拡大して、積層体内及び積層体間の膜厚の均一性を維持することが困難となる。その結果、上記EL装置の製造工程では、一回で成膜する成膜領域の縮小を余儀なくされて、積層体の成膜工程を複数回にわたって施すことになり、EL装置の生産性と有機材料の電気的安定性を著しく低下させる問題を招いていた。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、大型化を容易にして生産性を向上したエレクトロルミネッセンス装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のエレクトロルミネッセンス装置は、一側面に複数の第1電極を区画形成した基
板と、棒状の第2電極と、前記第2電極の表面に形成された発光層を含む積層体とからなる発光棒と、複数の前記発光棒を保持するとともに、複数の前記発光棒の前記積層体をそれぞれ異なる複数の前記第1電極に接続する接続手段と、を備えた。
【0009】
本発明のエレクトロルミネッセンス装置(以下単に、「EL装置」という。)によれば、基板に取り付ける発光棒の本数を増加するだけで、EL装置のサイズの大型化を図ることができる。従って、積層体の膜厚均一性を維持した状態で、EL装置を大型化することができ、EL装置の大型化を容易にして、その生産性を向上することができる。
【0010】
このEL装置において、前記発光棒は、軸心方向から見て断面矩形状に形成されて、外側面に前記第1電極と面接触する前記積層体を備えるようにしてもよい。
このEL装置によれば、第1電極と発光棒(積層体)を面接触させることができ、EL装置の電気的特性を安定化させることができる。
【0011】
このEL装置において、前記接続手段は、前記発光棒を前記第1電極側に押圧して、前記積層体と前記第1電極との間の電気的接続を保持する保持部材を備えるようにしてもよい。
【0012】
このEL装置によれば、接続手段の保持部材によって、EL装置の電気的特性を安定化させることができる。
このEL装置において、前記基板は、前記発光層からの光を透過する透明基板であり、前記第1電極は、前記光を透過する陽極であり、前記第2電極は、前記光を反射する陰極であってもよい。
【0013】
このEL装置によれば、発光棒の発光した光を透明基板側から取り出す、いわゆるボトムエミッション型のEL装置の大型化を容易にして、その生産性を向上することができる。
【0014】
このEL装置において、前記第2電極は、前記各発光棒に共通する共通電極であって、前記第1電極は、対応する前記発光棒の発光を制御する制御素子を有してマトリックス状に配列された電極であってもよい。
【0015】
このEL装置によれば、いわゆるアクティブマトリックス方式のエレクトロルミネッセンス装置の大型化を容易にして、その生産性を向上することができる。
このEL装置において、前記接続手段は、前記発光棒を封止する封止層を備えるようにしてもよい。
【0016】
このEL装置によれば、接続手段の封止層によって、積層体(発光層)に対する水分や酸素等の侵入を遮断することができ、EL装置の電気的安定性の向上と長寿命化を図ることができる。
【0017】
このEL装置において、前記積層体は、少なくとも正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子障壁層のいずれか1つを含むようにしてもよい。
このEL装置によれば、少なくとも正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子障壁層のいずれか1つを有する分だけ、EL装置の発光特性を向上させることができる。
【0018】
本発明のEL装置の製造方法は、基板の一側面に複数の第1電極を区画形成する第1電極形成工程と、棒状に形成された第2電極の表面に発光層を含む積層体を積層して発光棒を形成する発光棒形成工程と、前記複数の発光棒の前記積層体をそれぞれ異なる複数の前記第1電極に接続する発光棒接続工程と、を備えた。
【0019】
本発明のEL装置の製造方法によれば、発光棒接続工程で接続する発光棒の本数を増加させるだけで、EL装置の大型化を図ることができる。従って、積層体の膜厚均一性を維持した状態でEL装置を大型化することができ、EL装置の大型化を容易にして、その生産性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。
図1に示すように、エレクトロルミネッセンス装置(以下単に、「EL装置」という。)10には、四角形状に形成された透明基板11が備えられている。透明基板11は、無アルカリガラス等の透明無機材料、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート等の透明樹脂材料からなる基板であって、そのサイズ(X矢印方向の幅×Y矢印方向の幅)が、約2400mm×約2200mmで形成される大型の基板であるが、このサイズに限定されるものではない。
【0021】
透明基板11の一側面(素子形成面11a)には、一方向(X矢印方向)に延びる複数の走査線12が等間隔に配列されて、それぞれ透明基板11の一側端に接続されたFPC(フレキシブル基板)13上の走査線駆動回路14に電気的に接続されている。走査線駆動回路14は、図示しない制御回路から供給される走査制御信号に基づいて、複数の走査線12の中から所定の走査線12を所定のタイミングで選択駆動し、その走査線12に走査信号を出力するようになっている。
【0022】
前記素子形成面11aには、前記X矢印方向と直交する方向(Y矢印方向)に延びる複数のデータ線15が等間隔に配列されて、それぞれ前記フレキシブル基板13上のデータ線駆動回路16に電気的に接続されている。データ線駆動回路16は、図示しない制御回路からの表示データに基づいてデータ信号を生成し、生成したデータ信号を対応するデータ線15に所定のタイミングで出力するようになっている。
【0023】
前記素子形成面11aには、前記Y矢印方向に延びる複数の電源線17が各データ線15に併設されて、それぞれ透明基板11の一側に形成された共通電源線18を介して、図示しない制御回路からの電源電圧が供給されるようになっている。
【0024】
これら走査線12とデータ線15の交差する位置には、対応する走査線12、データ線15及び電源線17に接続されてマトリックス状に配列された四角形状の複数の画素領域20が区画形成されている。
【0025】
図2に示すように、各画素領域20の一側には、それぞれ制御素子を構成する第1トランジスタT1、第2トランジスタT2及び保持キャパシタCPが形成されている。
第1トランジスタT1は、素子形成面11a上に形成されたポリシリコン型のTFTであって、そのゲート電極G1及びソース電極S1が、それぞれ走査線12及びデータ線15に接続されている。第2トランジスタT2は、第1トランジスタT1と同じく、ポリシリコン型のTFTであって、そのゲート電極G2及びソース電極S2が、それぞれ保持キャパシタCPの下部電極PB及び上部電極PTに接続されている。保持キャパシタCPは、図示しない層間絶縁膜を容量膜とするキャパシタであって、その下部電極PB及び上部電極PTが、それぞれ第1トランジスタT1のドレイン電極D1及び前記電源線17に接続されている。
【0026】
そして、走査線駆動回路14からの走査信号が対応する第1トランジスタT1のゲート電極G1に供給されると、第1トランジスタT1は、その走査信号を受けてオン状態となり、データ線駆動回路16からのデータ信号に対応する信号をドレイン電極D1に出力す
る。データ信号に対応する信号がドレイン電極D1に出力されると、保持キャパシタCPは、そのデータ信号に対応する信号を受けてドレイン電極D1(下部電極PB)と電源線17(上部電極PT)の電位差に相対する電荷を蓄積する。そして、第1トランジスタT1がオフ状態になっても、第2トランジスタT2は、保持キャパシタCsの蓄積した電荷に相対する駆動電流をドレイン電極D2から出力する。
【0027】
図2に示すように、第2トランジスタT2のドレイン電極D2には、画素領域20の略全体にわたる四角形状の第1電極としての陽極21が接続されている。陽極21は、仕事関数の高い光透過性の導電材料(例えば、ITO(Indium−Tin−Oxide)等)で形成された電極であって、ドレイン電極D2からの駆動電流が供給されるようになっている。
【0028】
各陽極21の上側には、Y矢印方向に延びる発光棒としての複数のエレクトロルミネッセンス棒(以下単に、「EL棒」という。)22が等間隔をおいてX矢印方向に配列されている。各EL棒22は、図3に示すように、四角柱状に形成されて、その中心位置に第2電極としての陰極線23を有している。
【0029】
各陰極線23は、Y矢印方向に延びる四角柱状に形成された陰極であって、仕事関数の低い光反射性の導電材料(例えば、Ag、Cu、Alの金属元素単体等)によって形成されている。各陰極線23は、図示しない共通陰極線に接続された共通電極であって、各画素領域20に所定の共通電位を印加するようになっている。各陰極線23は、そのサイズ(X矢印方向の幅×Y矢印方向の幅×Z矢印方向の幅)が、1mm×2000mm×0.5mmで形成されているが、これに限られるものではない。
【0030】
各陰極線23の外側面には、陰極線23の軸心側から順に、積層体を構成する発光層24と正孔輸送層25が積層されている。
各発光層24は、陰極線23の外側面の全体にわたって均一な膜厚で積層された有機層であって、発光層材料としてのフルオレン−ジチオフェンコポリマー(以下単に、「F8T2」という。)で形成されて、それぞれ対応する陰極線23からの共通電位に対応した電子が注入されるようになっている。
【0031】
尚、発光層材料は、「F8T2」に限らず、以下に示すような公知の低分子系の発光層材料、あるいは高分子系の発光層材料を利用することができる。
低分子系の発光層材料としては、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体物、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等の金属錯体等を利用することができる。
【0032】
高分子系の発光層材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレノン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、ポリビニレンスチレン誘導体、及びそれらの共重合体、トリフェニルアミンやエチレンジアミン等を分子核とした各種デンドリマー等を利用することができる。
【0033】
各正孔輸送層25は、対応する発光層24の外側面の全体にわたって均一な膜厚で積層された有機層であって、正孔輸送層材料としてのポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(以下単に、「PEDOT」という。)で形成されている。正孔輸送層25は、それぞれ対応する陽極21と面接触で接続されて、陽極21から注入された正孔を、対応す
る画素領域20の発光層24まで輸送するようになっている。
【0034】
尚、正孔輸送層材料は、「PEDOT」に限らず、以下に示すような公知の低分子系の発光層材料、あるいは高分子系の発光層材料を利用することができる。
低分子系の正孔輸送層材料としては、ベンジジン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチリルアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、ピラゾリン誘導体、カルバゾール誘導体、ポルフィリン化合物等を利用することができる。
【0035】
高分子系の正孔輸送層材料としては、上記低分子構造を一部に含む(主鎖あるいは側鎖にする)高分子化合物、あるいはポリアニリン、ポリチオフェンビニレン、ポリチオフェン、α−ナフチルフェニルジアミン、「PEDOT」とポリスチレンスルホン酸との混合物(Baytron P、バイエル社商標)、トリフェニルアミンやエチレンジアミン等を分子核とした各種デンドリマー等を利用することができる。
【0036】
各EL棒22の上側には、図3の2点鎖線で示すように、接続手段を構成する保持部材としての封止基板26が配設されている。封止基板26は、ガスバリヤ性を有した基板であって、その透明基板11側の側面(取付面26a)には、Y矢印方向に沿う複数の凹溝(取付溝26b)が、等間隔をおいてX矢印方向に配列形成されている。取付溝26bは、封止基板26が透明基板11と対峙する状態で、その形成位置が前記EL棒22の配列位置と対応するように形成されて、その溝幅が前記EL棒22のX矢印方向の幅と略同じ幅で形成されている。すなわち、取付溝26bは、対応するEL棒22をY矢印方向に沿って案内するように形成されている。
【0037】
封止基板26と透明基板11との間であって、これら封止基板26及び透明基板11の外縁には、図1に示すように、四角枠状に形成された封止層27が形成されている。封止層27は、ガスバリヤ性を有した無機あるいは有機高分子膜等で構成されて、前記封止基板26を前記透明基板11に密着させて、各EL棒22の正孔輸送層25を、それぞれ対応する陽極21に密着させている。そして、封止層27は、封止基板26と透明基板11との間の空間(第1トランジスタT1、第2トランジスタT2、保持キャパシタCP及びEL棒22等)を封止して、各画素領域20内への水分や酸素等の侵入を遮断するようになっている。
【0038】
そして、データ信号に応じた駆動電流が第2トランジスタT2を介して陽極21に供給されると、データ信号に対応した陽極21からの正孔と陰極線23からの電子が、対応する画素領域20の発光層24に注入される。正孔及び電子が発光層24に注入されると、各画素領域20に相対する発光層24内では、正孔と電子の再結合によるエキシトンが生成されて、このエキシトンが基底状態に戻るときのエネルギー放出によって、蛍光あるいは燐光の光L(図3参照)が出射される。各画素領域20に相対する発光層24からの光Lは、対峙する陽極21及び透明基板11を通過して、透明基板11の素子形成面11aと相対向する側の面(表示面11b)から出射される。これによって、表示データに基づく表示画像が、EL装置10の表示面11bに表示される。
【0039】
従って、本実施形態のEL装置10では、EL棒22の本数を変更するだけでEL装置10を大型化することができ、各EL棒22(発光層24や正孔輸送層25)の膜厚均一性を維持した状態で、EL装置10のサイズ変更に対応することできる。
【0040】
次に、上記EL装置10を製造する製造方法について、以下に説明する。
まず、透明基板11の素子形成面11aに陽極21を形成する第1電極形成工程としての陽極形成工程を行う。すなわち、図4に示すように、透明基板11の素子形成面11aに、公知のTFT製造技術を利用して、前記第1トランジスタT1、第2トランジスタT
2、保持キャパシタCP、走査線12、データ線15、電源線17等を形成し、各画素領域20を区画形成する。そして、素子形成面11aの全体にわたり、前記「ITO」等の光透過性の導電材料を利用したスクリーン印刷法やインクジェット法等の液相プロセス、あるいは蒸着法やスパッタ法等の気相プロセスを施すことによって透明導電膜を堆積し、その透明導電膜をパターニングすることによって、各画素領域20に対応する陽極21を形成する。
【0041】
陽極21を形成すると、発光棒形成工程を構成する発光層形成工程を行う。すなわち、図5に示すように、陰極線23を、前記「F8T2」を含む液状体(発光層形成液24L)に浸漬して引き出す。そして、陰極線23の外側面23aに堆積した発光層形成液24Lの液状膜24Fを乾燥することによって発光層24を形成する。つまり、発光層24は、透明基板11から独立した製造工程によって形成される。
【0042】
発光層24を形成すると、発光棒形成工程を構成する正孔輸送層形成工程を行なう。すなわち、図6に示すように、前記発光層24を有した陰極線23を、前記「PEDOT」を含む液状体(正孔輸送層形成液25L)に浸漬して引き出す。そして、前記発光層24の外側面24aに堆積した正孔輸送層形成液25Lの液状膜25Fを乾燥することによって正孔輸送層25を形成する。つまり、正孔輸送層25は、前記発光層24と同じく、透明基板11から独立した製造工程によって発光層24の外側面24aに形成されて、EL棒22を透明基板11(各画素領域20)に組み付けることによって機能するようになっている。
【0043】
発光層24及び正孔輸送層25を形成してEL棒22を形成すると、透明基板11にEL棒22を接続する発光棒接続工程としてのEL棒接続工程を行う。すなわち、図7に示すように、まず、封止基板26の取付面26aを上側にして、各取付溝26b内に前記EL棒22を配置する。続いて、封止基板26の外縁に沿って紫外線硬化性樹脂27Lを塗布する。そして、封止基板26及び透明基板11を、不活性ガスの減圧雰囲気下に搬送して、各EL棒22が各陽極21と対峙するように、前記透明基板11を前記封止基板26上に載置して貼り合せる。そして、貼り合せた状態の透明基板11及び封止基板26を大気に解放し、紫外線硬化性樹脂27Lに紫外線を照射して硬化する。
【0044】
これによって、各EL棒22を挟むようにして、透明基板11と封止基板26を密着させることができ、大気圧によって、各EL棒22(正孔輸送層25)を、対応する各陽極21に押圧することができる。そして、正孔輸送層25と各陽極21との間の電気的接続を確保することができ、透明基板11と封止基板26との間に封入した不活性ガスによって、各EL棒22の電気的安定性を確保することができる。
【0045】
従って、EL装置10を大型化する場合であっても、EL棒22の本数を増加することによって対応することができ、各EL棒22の膜厚均一性を維持して、EL装置10の全体にわたる発光層24や正孔輸送層25の膜厚均一性を確保することができる。
【0046】
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)上記実施形態によれば、陰極線23の外側面に発光層24と正孔輸送層25を積層して四角柱状のEL棒22を形成し、複数の前記EL棒22を各画素領域20の陽極21上に配列した。そして、配列したEL棒22を陽極21に押圧する封止基板26を設けて、封止基板26と透明基板11の外縁に、封止基板26と透明基板11との間の空間、すなわち各EL棒22(陰極線23、発光層24、正孔輸送層25)を封止する封止層27を形成した。
【0047】
従って、配列するEL棒22の本数を増加するだけで、発光層24と正孔輸送層25の
膜厚の均一性を損なうこと無くEL装置10の大型化を図ることができる。その結果、アクティブマトリックス方式のEL装置10の大型化を容易にすることができ、その生産性を向上することができる。
【0048】
(2)また、各EL棒22の発光層24や正孔輸送層25等を、それぞれ陰極線23毎に形成するため、EL棒22を製造するための製造装置や付帯設備等を同じくして、EL装置10の大型化を図ることができる。
【0049】
(3)しかも、各EL棒22を、透明基板11、封止基板26及び封止層27によって封止するため、EL棒22内への水分や酸素等の浸入を遮断することができ、EL装置10の電気的安定性の向上とその長寿命化を図ることができる。
【0050】
(4)上記実施形態によれば、陰極線23(EL棒22)を四角柱状に形成するため、正孔輸送層25と陽極21とを面接触させることができ、正孔輸送層25と陽極21との電気的接続を安定させることができる。ひいては、EL装置10の電気的特性を安定させることができる。
【0051】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、積層体を、発光層24及び正孔輸送層25によって構成した。これに限らず、例えば正孔輸送層25を省略する構成にしてもよく、あるいは正孔輸送層25と陽極21との間に、対応する発光層24への正孔の注入効率を高めるための正孔注入層を形成する構成にしてもよい。さらには、正孔輸送層25と発光層24との間に、電子の移動を抑制する電子障壁層を形成する構成にしてもよい。
【0052】
あるいは、発光層24と陰極線23との間に、陰極線23から注入された電子を発光層24まで輸送する電子輸送層を形成する構成にしてもよい。さらには、発光層24と対応する前記電子輸送層との間に、正孔の移動を抑制する正孔障壁層を形成する構成であってもよい。
・上記実施形態では、積層体を、発光層24及び正孔輸送層25によって構成した。これに限らず、例えば正孔輸送層25の外側面に、陽極21との間の密着性を向上させるための密着層や導電性を向上させるための導電層(例えば、透明金属膜)を形成する構成にしてよい。これによれば、陽極21とEL棒22との間の電気的特性を、さらに安定化することができる。
・上記実施形態では、EL棒22に発光層24を一層のみ形成する構成にした。これに限らず、例えばEL棒22は、対応する発光層24と電荷発生層からなるユニットを複数積層した、いわゆるマルチフォトン構造であってもよい。
・上記実施形態では、陰極線23の外側面全体に発光層24及び正孔輸送層25を形成する構成にした。これに限らず、例えば、発光層24及び正孔輸送層25を陰極線23の外側面であって陽極21側の側面にのみ形成する構成であってもよく、表示面11b側に光Lを出射する位置であればよい。
・上記実施形態では、接続手段を、保持部材としての封止基板26及び封止層27に具体化した。これに限らず、例えば接続手段は、隣接するEL棒22の間に充填されて各EL棒22の位置を維持可能にする樹脂等であってもよく、積層体と陽極21との間の電気的接続を保持可能にする部材であればよい。
・上記実施形態では、隣接するEL棒22の間の空間を不活性ガスで充填する構成にした。これに限らず、例えば、隣接するEL棒22の間の空間を遮光性の樹脂で充填し、各EL棒22間の光のクロストークを回避する構成にしてもよい。
・上記実施形態では、EL棒22を四角柱状に具体化したが、これに限らず、例えば断面が三角形や五角形以上の多角形であってもよく、さらには断面が楕円形状や円形状であってもよい。
・上記実施形態では、EL棒22の軸心を陰極線23によって構成したが、これに限らず、例えばガラスや樹脂等からなる棒部材を別途軸体として利用し、当該軸体の外側面に陰極を積層する構成にしてもよい。
・上記実施形態では、EL装置10を、透明基板11側に光Lを出射するボトムエミッション方式に具体化した。これに限らず、各EL棒22の封止基板26側を透明部材で構成して、EL棒22からの光Lを封止基板26側に出射するトップミッション方式に具体化してもよい。
・上記実施形態において、EL棒22の発光層24を、それぞれ赤色に対応した波長領域の光を発光する赤色発光層、緑色に対応した波長領域の光を発光する緑色発光層、青色に対応した波長領域の光を発光する青色発光層によって構成してもよい。あるいは、カラーフィルタを配設する構成にして、表示面11bにフルカラーの画像を表示するようにしてもよい。
・上記実施形態では、発光層24及び正孔輸送層25を液相プロセスによって形成する構成したが、これに限らず、例えば蒸着成膜やスパッタ成膜等の気相プロセスによって形成する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明を具体化したエレクトロルミネッセンス装置を示す概略斜視図。
【図2】同じく、エレクトロルミネッセンス装置を示す拡大平面図。
【図3】同じく、エレクトロルミネッセンス装置を示す拡大斜視図。
【図4】同じく、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する説明図。
【図5】同じく、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する説明図。
【図6】同じく、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する説明図。
【図7】同じく、エレクトロルミネッセンス装置の製造方法を説明する説明図。
【符号の説明】
【0054】
10…エレクトロルミネッセンス装置、11…透明基板、20…画素領域、21…第1電極としての陽極、22…発光棒としてのエレクトロルミネッセンス棒、23…第2電極としての陰極線、24…積層体を構成する発光層、25…積層体を構成する正孔輸送層、26…接続手段を構成する保持部材としての封止基板、27…接続手段を構成する封止層、T1…制御素子を構成する第1トランジスタ、T2…制御素子を構成する第2トランジスタ、L…光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側面に複数の第1電極を区画形成した基板と、
棒状の第2電極と、前記第2電極の表面に形成された発光層を含む積層体とからなる発光棒と、
複数の前記発光棒を保持するとともに、複数の前記発光棒の前記積層体をそれぞれ異なる複数の前記第1電極に接続する接続手段と、
を備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記発光棒は、軸心方向から見て断面矩形状に形成されて、外側面に前記第1電極と面接触する前記積層体を備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記接続手段は、前記発光棒を前記第1電極側に押圧して、前記積層体と前記第1電極との間の電気的接続を保持する保持部材を備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記基板は、前記発光層からの光を透過する透明基板であり、
前記第1電極は、前記光を透過する陽極であり、
前記第2電極は、前記光を反射する陰極であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記第2電極は、前記各発光棒に共通する共通電極であって、
前記第1電極は、対応する前記発光棒の発光を制御する制御素子を有してマトリックス状に配列された電極であることを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記接続手段は、前記発光棒を封止する封止層を備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のエレクトロルミネッセンス装置において、
前記積層体は、少なくとも正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子障壁層のいずれか1つを含むことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置。
【請求項8】
基板の一側面に複数の第1電極を区画形成する第1電極形成工程と、
棒状に形成された第2電極の表面に発光層を含む積層体を積層して発光棒を形成する発光棒形成工程と、
複数の前記発光棒の前記積層体をそれぞれ異なる複数の前記第1電極に接続する発光棒接続工程と、
を備えたことを特徴とするエレクトロルミネッセンス装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−73482(P2007−73482A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262476(P2005−262476)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】